(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352040
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】医療台
(51)【国際特許分類】
A61G 13/00 20060101AFI20180625BHJP
A61G 13/04 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
A61G13/00 Q
A61G13/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-94754(P2014-94754)
(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-211721(P2015-211721A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年2月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】松原 一雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 照巳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智美
(72)【発明者】
【氏名】川上 秀生
【審査官】
小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−113301(JP,A)
【文献】
特開平07−289592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00
A61G 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の背部を支持可能な背板と、患者の臀部を支持可能な腰板と、前記腰板を水平姿勢と傾斜姿勢との間で回動する駆動機構とを備え、前記駆動機構は、直線駆動機構と、該直線駆動機構による直線駆動を前記腰板の回動に変換する運動変換機構とを有し、
前記運動変換機構は前記腰板の下方に設けられ、
前記運動変換機構は、前記直線駆動機構により前後方向に沿って直線駆動され、先端から後方に向かうにしたがって上り勾配とされ、かつ、前記腰板の幅方向にわたって長尺状に形成された傾斜板と、前記腰板から下方に突出して前記傾斜板の上面に接触し、前記傾斜板の直線移動による該傾斜板との接触位置の変化に追従して前記腰板を回動する従動体とを有し、
前記傾斜板は、前記直線駆動機構を構成する送りねじの先端に連結され該送りねじとともに進退させられるロッドの先端に固定されており、
前記傾斜板と前記従動体との接触位置は、腰板が水平姿勢にある状態で、該腰板を回動自在に支持する軸の直下の位置又はその位置よりも前方であることを特徴とする医療台。
【請求項2】
前記従動体に、前記傾斜板の表面に接触する転動体が回転自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の医療台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産科・婦人科における医療行為に用いられる検診台や手術台、分娩台等の医療台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産科・婦人科において、分娩、診察、治療等の際に患者の体を支える医療台が用いられている。医療台は、患者の胴体を支持する背板(背もたれ)、臀部を支持する腰板等を備え、これらの角度や位置を必要に応じて変更できる構成により、患者の姿勢を安定して保つことを可能にしている。
【0003】
例えば、特許文献1の医療台は、患者の背部を支持する背板と、臀部を支持する腰板(座板)とを有し、背板を水平姿勢から起立姿勢に傾動することができる。この医療台の場合は、腰板を傾動させる構成は備えていない。
一方、特許文献2の産婦人科用分娩台では、患者の臀部を受ける座部と、この座部に対して起伏する背凭れ部とを有し、背凭れ部は座部側を支軸としてアクチュエータにより起伏可能に設けられ、また、座部も背凭れ側を支軸として油圧シリンダにより起伏可能に設けられている。
このような医療台では、分娩や診療等の医療行為の実施時に患者が楽な体勢で臨めるように、また、医師や看護士などにとっても患者の体勢を診療しやすい状態に調節可能にすることが望まれており、その場合に、医療行為の支障になることなく円滑に動作することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−342291号公報
【特許文献2】特開2001−29404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1の医療台の場合には、腰板が水平姿勢に固定されているため、この腰板を傾けて患者の臀部の角度を調節することはできない。そのため、患者の姿勢に制約が生じ、医師や看護士にとっても医療行為に支障をきたすおそれがある。
一方、特許文献2においては座部が起伏可能に設けられているが、その動作は座部に直接取り付けられた油圧シリンダにより行われる構成である。このため、座部に加わる患者の体重が直接油圧シリンダに加わることになり、この油圧シリンダへの負荷が大きくなって故障の可能性も高くなる。また、座部の下方位置に医療器具等の何らかの障害物がある場合、この座部を起伏状態から水平方向に動作させたときにその下部に障害物が挟まれて油圧シリンダに大きな負荷が加わって故障につながることもある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、患者の臀部を支持する腰板の角度を任意に調節可能とするとともに、故障の発生が少ない医療台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医療台は、患者の背部を支持可能な背板と、患者の臀部を支持可能な腰板と、前記腰板を水平姿勢と傾斜姿勢との間で回動する駆動機構とを備え、前記駆動機構は、直線駆動機構と、該直線駆動機構による直線駆動を前記腰板の回動に変換する運動変換機構とを有し、前記
運動変換機構は前記腰板の下方に設けられ、前記運動変換機構は、前記直線駆動機構により前後方向に沿って直線駆動され、先端から後方に向かうにしたがって上り勾配とされ
、かつ、前記腰板の幅方向にわたって長尺状に形成された傾斜板と、前記腰板から下方に突出して前記傾斜板の上面に接触し、前記傾斜板の直線移動による該傾斜板との接触位置の変化に追従して前記腰板を回動する従動体とを有し、
前記傾斜板は、前記直線駆動機構を構成する送りねじの先端に連結され該送りねじとともに進退させられるロッドの先端に固定されており、前記傾斜板と前記従動体との接触位置は、腰板が水平姿勢にある状態で、該腰板を回動自在に支持する軸の直下の位置又はその位置よりも前方である。
【0008】
この医療台は、腰板を駆動機構によって回動することができるとともに、その駆動機構を直線駆動機構と運動変換機構とにより構成したので、腰板が傾斜した姿勢であっても直線駆動機構の駆動源に患者の体重が直接作用することがなく、駆動源の負荷が少なくなり、故障が生じにくい。
また、前述の特許文献2記載の産婦人科用分娩台の場合、油圧シリンダの位置が座部に近接することになるため、分娩時等の汚水で汚れやすく、座部付近の清掃等も困難になるという問題があるが、本発明の医療台の場合は、運動変換機構により直線駆動機構の駆動源と腰板とを離間して配置することができるので、分娩時の汚水等により駆動源が汚れることが防止される。また、腰板のみを回動することが可能であるので、腰板周囲の清掃やメンテナンスが容易になる。
腰板に設けた従動体を傾斜板に接触させ、その傾斜板を直線駆動して腰板を回動する構成であるので、駆動停止中は、腰板が傾斜状態であっても、患者の体重が直線駆動機構に作用することはない。
また、腰板の従動体は傾斜板に接触しているだけであるので、傾斜姿勢の腰板を水平姿勢に戻す際に、万一腰板の下方に障害物があった場合でも、直線駆動機構の作動に抵抗となることはなく、より故障しにくい構造である。
【0011】
本発明の医療台において、前記従動体に、前記傾斜板の表面に接触する転動体が回転自在に設けられているとよい。
【0012】
この医療台においては、従動体と傾斜板との間に生じる摩擦を転動体により軽減でき、直線駆動機構からカム機構を介して腰板に効率的に駆動力を伝達し、軽い駆動力で腰板を回動することができる。このため、モータ等の駆動源の小型化を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の医療台によれば、患者の臀部の角度を変えられることで、患者の姿勢を必要に応じて適切に変更することができ、しかも、運動変換機構を介して直線駆動機構の駆動力を伝達する構成であるので、腰板が傾斜した姿勢でも患者の体重が直接駆動源に作用することがなく、駆動源の故障の発生も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療台において腰板を水平に配置した状態の斜視図である。
【
図3】
図1の背板を取り外した状態の平面図である。
【
図4】
図3のA−A線に沿う部分拡大断面図である。
【
図5】
図1の医療台において腰板を傾斜姿勢とした斜視図である。
【
図7】
図5の背板を取り外した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る医療台の実施形態について図を参照しながら説明する。
[全体構成]
図1及び
図5に全体を示すように、医療台1は、床上に配置されるベース2と、ベース2に設けた昇降機構(図示略)により上下移動させられる台本体部3とを備えており、台本体部3には、患者の背部を支持して水平姿勢から起立姿勢まで回動可能な背板4と、起立状態の背板4の下方に配置されるように取り付けられ、患者の臀部を支持可能な腰板(腰板と称される場合もある)5と、必要時に腰板5の前方に配置可能な補助台6とが設けられている。
図1には、背板4及び腰板5を同一水平面上に配置したベッドポジション時の形態を示しているが、背板4が腰板5に対して起立した椅子ポジション等に姿勢を変えることができるようになっている。また、補助台6を若干引き出した状態で示しているが、台本体部3内に収納することも可能である。
ベース2はキャスタ11を備え、診察室などの床上に設置される。
なお、この医療台1において、水平姿勢の腰板5の上面が向く方向を上方向、その反対方向を下方向とし、腰板5から背板4に向かう水平方向を後方、背板4から腰板5に向かう水平方向を前方、この前後方向に直交する方向を左右方向とする。
【0016】
ベッドポジションにおいては、前述したように背板4と腰板5とが同一水平面上に設置され、台本体部3の上面は、この水平状態の背板4と腰板5とにより形成されており、これら背板4及び腰板5と、側面から下面を形成するハウジング12とにより、台本体部3の内部は空洞が形成されている。そして、この台本体部3の空洞内に、背板4を傾斜させる背板駆動機構、腰板5を傾斜させる腰板駆動機構7、補助台6を移動するための補助台駆動機構(図示略)等が収納されている。
また、ハウジング12の下部には、患者から排泄される汚物等を受けるための汚物受け13が水平方向にスライド可能に設けられる場合もある。
【0017】
[腰板及び腰板駆動機構の細部構成]
腰板5は、背板4側の端部が台本体部3に水平な軸21を介して垂直回動自在に取り付けられており、腰板駆動機構7は、この腰板5を
図1及び
図2に示す水平姿勢と
図5及び
図6に示す傾斜姿勢との間で回動することができる。
この腰板駆動機構7は
、直線駆動機構22とカム機構23とから構成されている。
直線駆動機構22は、本実施形態では送りねじ機構によって構成され、その送りねじ24の先端に水平なロッド25が連結され、送りねじ24の基端部に螺合している雌ねじ部材26をモータ等の駆動部27によって回転することにより、送りねじ24とともにロッド25を進退させる構成である。この場合、
図3及び
図7に示すように、駆動部27は台本体部3の最後部に設けられ、送りねじ24、ロッド25は前後方向に沿って設置されている。
【0018】
一方、カム機構23は、
図3、
図4、
図7、
図8に示すように、ロッド25の先端に固定された傾斜板31と、この傾斜板31に接触する従動体32とから構成される。
傾斜板31は、先端から後方に向かうにしたがって所定の角度の上り勾配となるように傾斜しており、腰板5の下方に幅方向にわたって設けられ、直線駆動機構22によって前後方向に移動させられる。
従動体32は、
図4及び
図8に示す例では傾斜板31の上面に接触するカムフロア33を備えており、腰板5の下面の左右両側部に下方に突出するブラケット34が固定され、両ブラケット34にカムフロア33がそれぞれ回転自在に取り付けられている。この場合、腰板5を回動可能に支持している軸21よりも下方かつ前方位置に離間してカムフロア33が配置されている。この従動体32としては、カムフォロア等の転動体を有していなくてもよいが、後述するように傾斜板31上を接触したまま移動するので、そのときの摩擦力を軽減できる材料等のものが好ましい。
なお、腰板5が水平姿勢の際には、腰板5は
図1及び
図2に示すように台本体部3のハウジング12の上面に当接して支持される。
【0019】
このように構成した医療台1は、
図8に矢印で示したように、直線駆動機構22のロッド25を水平方向に進退することにより、腰板5を軸21を中心に垂直回動することができる。
まず、水平姿勢に配置した腰板5を傾斜姿勢に回動する場合は、直線駆動機構22の駆動部27を駆動すると、雌ねじ部材26が回転し、この雌ねじ部材26に螺合している送りねじ24がロッド25を前進させることにより、ロッド25の先端の傾斜板31が前進し、この傾斜板31の上面に接触している従動体32が押されて、傾斜板31の勾配にしたがって押し上げられる。この従動体32は、腰板5の軸21よりも下方かつ前方に離間して配置されていることから、従動体32が傾斜板31上を移動するにしたがって、その接触位置の変化に追従するように腰板5が軸21を中心に回動する。
この場合、傾斜板31と従動体32との接触位置は、腰板5が水平姿勢にある状態で、腰板5の軸21の直下の位置か、その位置よりも前方であれば、傾斜板31の前進移動に伴って腰板5を回動させることが可能である。
また、腰板5は、水平方向に対して例えば30°の傾斜角度まで傾斜することができるが、30°に限らず、他の角度に設定してよい。
【0020】
そして、この腰板5を適宜の角度で傾斜姿勢にして診察、治療等の処置を施すことができる。このとき、腰板5に支持される患者の体重が従動体32を介して傾斜板31上に作用するが、直線駆動機構22の駆動部27には傾斜板31での分力としてわずかな力が作用するだけで、患者の体重が直接的に作用することはない。したがって、腰板5を傾斜姿勢で長時間保持しても、駆動部27への負荷は小さく、故障の発生を少なくすることができる。
なお、傾斜板31は、少なくとも従動体32のカムフロア33と接触可能なように腰板5の左右両側付近に設けられていればよいが、本実施形態では腰板5の幅方向にわたって長尺状に形成されている。このため、この傾斜板31の後方に配置されている直線駆動機構22等が
図5に示すように傾斜板31により隠された状態となり、汚物等が直線駆動機構22等に付着することを防止することができる。また、傾斜板31の表面に汚物等が付着したとしても、平坦面であり、清掃は容易である。
【0021】
一方、腰板5を傾斜姿勢から水平姿勢に戻す場合は、直線駆動機構22の駆動部27を逆方向に駆動すれば、前進していた傾斜板31が後退し、それに伴い従動体32が傾斜板31上を下降し、腰板5が回動して台本体部3のハウジング12上面に当接して水平姿勢に保持される。
この下降途中に、万一腰板5と台本体部3のハウジング12との間に障害物が挟まった場合には、腰板5の従動体32は傾斜板31上に載置されているだけであるので、直線駆動機構22により傾斜板31のみが後退し、障害物が挟まったことによる負荷が直線駆動機構22の駆動部24に作用することはなく、安全に医療台1を使用することができる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、運動変換機構としては、実施形態の傾斜板によるカム機構の他に、腰板の軸に固定したピニオンを直進移動するラックによって回転する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 医療台
2 ベース
3 台本体部
4 背板
5 腰板
6 補助台
7 腰板駆動機構
12 ハウジング
21 軸
22 直線駆動機構
23 カム機構(運動変換機構)
24 送りねじ
25 ロッド
26 雌ねじ部材
27 駆動部
31 傾斜板
32 従動体
33 カムフロア(転動体)
34 ブラケット