(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352042
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】遅延回路、発振回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 5/13 20140101AFI20180625BHJP
H03K 17/22 20060101ALI20180625BHJP
H03K 3/0231 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
H03K5/13
H03K17/22 C
H03K3/0231
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-95316(P2014-95316)
(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公開番号】特開2015-29257(P2015-29257A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2017年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-136989(P2013-136989)
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 洋太朗
(72)【発明者】
【氏名】横山 朋之
【審査官】
工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−271526(JP,A)
【文献】
特開2003−8410(JP,A)
【文献】
特開平7−312542(JP,A)
【文献】
特開平6−224705(JP,A)
【文献】
特公昭59−12218(JP,B2)
【文献】
特開昭58−12422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K3/0231
H03K5/04−5/07
H03K5/13−5/145
H03K17/00−17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースがグラウンド端子に接続され、ゲートに入力信号が入力される第一のNMOSトランジスタと、
前記第一のNMOSトランジスタのドレインとグラウンド端子の間に接続された容量と、
前記容量に電流を流す定電流回路と、
入力が前記定電流回路の出力端子に接続された第一のインバータと、
入力が前記第一のインバータの出力端子に接続された第二のインバータと、
ゲートとバックゲートがグラウンド端子に接続され、ソースが前記第一のNMOSトランジスタのドレインに接続された第一のデプレッション型NMOSトランジスタと、
ソースがグラウンド端子に接続され、ドレインが前記定電流回路の出力端子に接続され、ゲートに前記入力信号が入力される第二のNMOSトランジスタと、
ゲートが前記第一のインバータの出力端子に接続され、ソース及びバックゲートが前記第一のデプレッション型NMOSトランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記定電流回路の出力端子に接続された第三のNMOSトランジスタと、
ソースがグラウンド端子に接続され、ゲートが前記第二のインバータの出力端子に接続され、ドレインが前記第一のNMOSトランジスタのドレインに接続された第四のNMOSトランジスタと、を備え、
前記定電流回路は、第二のデプレッション型NMOSトランジスタと、前記第二のデプレッション型NMOSトランジスタのゲート及びバックゲートとソースの間に接続された抵抗と、を備えたことを特徴とする遅延回路。
【請求項2】
請求項1に記載の遅延回路と、
前記遅延回路の出力する信号によって制御される回路と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
入力端子と第一出力端子と第二出力端子を備えた遅延回路であって、
前記遅延回路は、
入力端子が電源端子に接続され、出力端子が前記第一出力端子に接続された定電流回路と、
ゲートとバックゲートがグラウンド端子に接続され、ドレインが前記定電流回路の出力端子に接続された第一のデプレッション型NMOSトランジスタと、
前記第一のデプレッション型NMOSトランジスタのソース及び前記第二出力端子とグラウンド端子の間に接続された容量と、
前記入力端子がゲートに接続さ、ドレインが前記定電流回路の出力端子に接続された第一のNMOSトランジスタと、
前記入力端子がゲートに接続され、ドレインが前記第一のNMOSトランジスタのソースに接続され、ソースがグラウンド端子に接続された第二のNMOSトランジスタと、を備え、
前記定電流回路は、
第二のデプレッション型NMOSトランジスタと、
前記第二のデプレッション型NMOSトランジスタのゲート及びバックゲートとソースの間に接続された抵抗と、
を備えたことを特徴とする遅延回路。
【請求項4】
請求項3に記載の遅延回路と、
前記遅延回路の第一出力端子と第二出力端子から出力される出力信号を受けて、前記遅延回路を制御する信号を前記遅延回路の入力端子に出力する論理回路と、
を備えた発振回路。
【請求項5】
請求項4に記載の発振回路を備えることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延回路、その遅延回路を備えた発振回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遅延回路について説明する。
図4は、従来の遅延回路を示す回路図である。
従来の遅延回路は、インバータ611、617、618と、NMOSトランジスタ612と、PMOSトランジスタ615、616と、容量613と、定電流回路614と、入力端子VINと、出力端子VOUTと、電源端子101と、グラウンド端子100を備えている。
【0003】
図5は、従来の遅延回路の動作を説明したタイミングチャートである。
電源端子101の電源電圧VDDを立ち上げ後、入力端子VINの電圧がLoのときは、ノード631の電圧はHighとなってNMOSトランジスタ612がオンされ、PMOSトランジスタ616はオフされる。NMOSトランジスタ612がオンされることで容量613は放電され、ノード632はLoとなる。このとき、インバータ617の反転出力はHighであるので、ノード633の電圧はHighとなる。よって、PMOSトランジスタ615はオフされており、出力端子VOUTの電圧はLoとなる。
【0004】
入力端子VINの電圧がHighに変化すると、ノード631の電圧はLoとなってNMOSトランジスタ612はオフされ、PMOSトランジスタ616はオンされる。NMOSトランジスタ612がオフされることで容量613は充電を開始しノード632は上昇する。そして、ノード632の電圧がインバータ617の検知電圧VR1を超えると、ノード633の電圧はLoルとなってPMOSトランジスタ615がオンされ、出力端子VOUTの電圧はHighに変化する。このようにして、入力端子VINの電圧がLoからHighに変化した時点からノード632の電圧が検知電圧VR1を超えるまでの時間(Td)を遅延して、出力端子VOUTの電圧がLoからHighに変化する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−260730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の遅延回路は、ノード632の電圧が検知電圧VR1を超えるまでの時間(Td)がばらつき、入力端子VINの電圧がLoからHighに変化してから出力端子VOUTの電圧がLoからHighに変化するまでの遅延時間を正確に設定する事が困難という課題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、入力端子VINの電圧が変化してから出力端子VOUTの電圧が変化するまでの遅延時間を正確に設定することができる遅延回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の課題を解決するため、本発明の遅延回路及び半導体装置は以下のような構成とした。
デプレッション型NMOSトランジスタとそのゲート及びバックゲートとソースの間に設けられた抵抗からなる定電流回路と、容量と、の間に、ゲートとバックゲートがグラウンド端子に接続されたデプレッション型NMOSトランジスタを備えて構成した遅延回路。
【発明の効果】
【0008】
本発明の遅延回路は、定電流回路と容量の間に、ゲートとバックゲートがグラウンド端子に接続されたデプレッション型NMOSトランジスタを備えたので、定電流回路の抵抗と容量のみで正確に遅延時間を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態の遅延回路の動作を示すタイミングチャートである。
【
図3】本実施形態の遅延回路を用いた半導体装置の一例を示す回路図である。
【
図5】従来の遅延回路の動作を示すタイミングチャートである。
【
図6】本実施形態の遅延回路を用いた発振回路の一例を示す回路図である。
【
図7】
図6の発振回路の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態の遅延回路を示す回路図である。
本実施形態の遅延回路は、インバータ111、119、120と、NMOSトランジスタ112、118、114、121と、デプレッション型NMOSトランジスタ113、116と、容量117と、抵抗115と、入力端子VINと、出力端子VOUTと、電源端子101と、グラウンド端子100で構成されている。
【0011】
次に、本実施形態の遅延回路の接続について説明する。
インバータ111は、入力は入力端子VINに接続され、出力はノード131を介しNMOSトランジスタ112のゲートおよびNMOSトランジスタ121のゲートに接続される。NMOSトランジスタ112は、ドレインはノード132に接続され、ソースはグラウンド端子100に接続される。NMOSトランジスタ121は、ドレインはノード133に接続され、ソースはグラウンド端子100に接続される。容量117は、一方の端子はノード132に接続され、他方の端子はグラウンド端子100に接続される。デプレッション型NMOSトランジスタ113は、ゲートおよびバックゲートはグラウンド端子100に接続され、ドレインはNMOSトランジスタ114のソース及びバックゲートに接続され、ソースはノード132に接続される。NMOSトランジスタ118は、ゲートは出力端子VOUTに接続され、ドレインはノード132に接続され、ソースはグラウンド端子100に接続される。NMOSトランジスタ114は、ゲートはインバータ119の出力に接続され、ドレインはノード133に接続される。抵抗115はデプレッション型NMOSトランジスタ116のソースとノード133の間に接続される。デプレッション型NMOSトランジスタ116は、ゲート及びバックゲートはノード133及びインバータ119の入力に接続され、ドレインは電源端子101に接続される。インバータ120は、入力はインバータ119の出力に接続され、出力は出力端子VOUTに接続される。
【0012】
次に、本実施形態の遅延回路の動作について説明する。
図2は、本実施形態の遅延回路の動作を示すタイミングチャートである。
デプレッション型NMOSトランジスタ116と抵抗115で定電流回路を構成している。電源端子101の電源電圧VDDを立ち上げ後入力端子VINの電圧がLoのときは、ノード131の電圧はHighとなってNMOSトランジスタ112がオンされることで容量117は放電され、ノード132はLoとなる。NMOSトランジスタ121もオンされノード133はLoとなり、インバータ119はノード133の電圧を受けてHighを出力しNMOSトランジスタ114をオンさせる。インバータ120はインバータ119からの信号を受けてLoを出力し、出力端子VOUTの電圧はLoになる。
【0013】
入力端子VINの電圧がHighに変化すると、ノード131の電圧はLoとなってNMOSトランジスタ112、121はオフされる。NMOSトランジスタ112、121がオフされることで容量117は充電を開始しノード132およびノード133の電圧が上昇する。デプレッション型NMOSトランジスタ116のゲートソース間電圧をVGS1とすると、ノード132の電圧が上昇しVGS1を上回るとデプレッション型NMOSトランジスタ113がオフしノード133の電圧がHighとなる。インバータ119はノード133の電圧を受けてLoの信号を出力しNMOSトランジスタ114をオフさせる。インバータ120はインバータ119の信号を受けてHighの信号を出力し、出力端子VOUTの電圧をHighにさせる。そして、NMOSトランジスタ118をオンさせ、ノード132の電圧をLoにさせる。このようにして、入力端子VINの電圧がLoからHighに変化した時点からデプレッション型NMOSトランジスタ116のゲートソース間電圧を超えるまでの時間(Td)を遅延して、出力端子VOUTの電圧がLoからHighに変化する。
【0014】
抵抗115の抵抗値をRdly、容量117の容量値をCdlyとすると、容量117を充電する充電電流Ichgは
【0020】
と表される。遅延時間Tdを決めるパラメータは、式3から容量117の容量値と抵抗115の抵抗値のみとなる。従って、遅延時間は、容量117と抵抗115を調整する事で高精度に設定することができる。
【0021】
その後、入力端子VINの電圧がLoに変化し遅延回路の動作が解除されると、ノード131の電圧はHighとなりNMOSトランジスタ112、121をオンさせる。そして、ノード133の電圧がLoとなり出力端子VOUTの電圧がLoに変化する。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の遅延回路は、遅延時間を決めるパラメータを容量117と抵抗115のみにすることができるため、容量117と抵抗115のみを調整する事で高精度な遅延時間を得ることができる。
なお、インバータ111、119、120は、所望の論理が満たされていれば、その有無や接続関係はこの回路に限定されるものではない。
【0023】
図3は、本実施形態の遅延回路を用いた半導体装置の一例を示す回路図である。
図3に示した半導体装置は、電源501と、電源501によって駆動されるマイコン502と、遅延回路503と、を備えている。
【0024】
次に、本実施形態の遅延回路を用いた半導体装置の動作について説明する。
マイコン502は、電源501を立ち上げ後に内部回路がすぐに動作を開始できない様な構成であると、電源電圧が入力されているだけであると、正常に動作を開始することが出来ず、暴走する可能性がある。遅延回路503は、出力端子が例えばマイコン502のリセット端子に接続されている。遅延回路503は、
図2で示したように動作する。すなわち、入力端子VINの電圧がHighに変化すると、所定の遅延時間の後に出力端子VOUTの電圧がLoからHighに変化する。マイコン502は、リセット端子の電圧がHighになると、リセットが解除される。所定の遅延時間をマイコン502が安定して動作を開始することが出来る時間に設定しておくと、マイコン502は正常に動作を開始することが出来る。
【0025】
以上説明したように、
図3に示した半導体装置は、電源501を立ち上げ後、遅延回路503で発生する遅延信号を受けてマイコン502が動作を開始する構成としたので、安定して動作を開始することが可能となり、誤動作を防止できる。
なお、
図3では、マイコンを用いた半導体装置を例に説明したが、電源立ち上げ後に動作開始までに遅延時間を必要とする回路であれば、マイコンに限定されるものではない。
【0026】
図6は、本実施形態の遅延回路を用いた発振回路の一例を示す回路図である。
図6に示した発振回路は、遅延回路701と、コンパレータ702と、論理回路703と、出力端子OSCOUTと、を備えている。
【0027】
発振回路に用いる遅延回路701は、
図1の遅延回路からインバータ111、119、120と、NMOSトランジスタ112、114と、を削除してある。そして、端子は、入力端子INと、出力端子VO1、VO2と、電源端子101と、グラウンド端子100を備えている。NMOSトランジスタ121は、接続関係が異なるものの、機能が同じであるので同じ符号を付してある。
【0028】
遅延回路701は、ノード133が出力端子VO1に接続され、ノード132が出力端子VO2に接続され、入力端子INがNMOSトランジスタ118、121のゲートに接続される。遅延回路701の出力端子VO1、VO2はコンパレータ702の入力端子に接続される。コンパレータの出力端子は論理回路703の入力端子に接続される。論理回路703は、発振信号が出力される出力端子が発振回路の出力端子に接続され、制御信号が出力される出力端子が遅延回路701の入力端子INに接続される。
【0029】
ここで、コンパレータ702は、出力端子VO1が接続される第一入力端子にオフセットを設けてあり、出力端子VO2が接続される第二入力端子の電圧よりオフセット電圧VOF分だけ高くなったときに出力信号が反転する。また、論理回路703は、コンパレータ702の出力信号が反転したときに制御信号が所望のパルス幅を得られるように構成されていて、コンパレータ702の出力信号を分周して所望の周波数の発振信号が出力端子OSCOUTに出力されるように構成されている。
【0030】
図7は、
図6の発振回路の動作を示すタイミングチャートである。
発振回路が起動すると、遅延回路701の入力端子INにHighが入力され、遅延回路701は初期化される。ノード132、133の電圧はLoになるので、出力端子VO1、VO2の電圧はLoになる。コンパレータ702は、第一入力端子にオフセットを設けてあり、例えば出力端子はLoが出力される。コンパレータ702の出力信号と論理回路703の制御信号は同じ論理であるとすると、遅延回路701は入力端子INにLoが入力され、容量117への充電を開始する。
【0031】
抵抗115の両端の電圧をVGS1とすると、電圧VGS1まではノード132、133の電圧は同じ電圧で上昇する。そして、ノード132の電圧が電圧VGS1に達すると、ノード133の電圧は急激に上昇する。ノード132とノード133の電圧の差がオフセット電圧VOF以上になると、コンパレータ702は、出力端子の出力信号が反転する。このとき、論理回路703は、コンパレータ702の出力信号がLoになったときに所望のパルス幅を確保してから制御信号をLoにする。発振回路は、以上の動作を繰り返すことによって、論理回路703がコンパレータ702の出力信号を分周して所望の周波数を発振信号が出力する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の発振回路は、高精度な遅延時間を得ることができる遅延回路を備えているので、簡便な構成でありながら、精度の良い発振回路を提供することができる。
【0033】
なお、本実施形態の発振回路は、
図6のように構成したが、遅延回路701の出力電圧を上述のように検出して制御する回路であれば、コンパレータ702と論理回路703の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
100 グラウンド端子
101 電源端子
103 出力端子
119、120 インバータ
501 電源
502 マイコン
503 遅延回路
702 コンパレータ
703 論理回路