特許第6352046号(P6352046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352046
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】DCTのクラッチ特性の補正方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20180625BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20180625BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20180625BHJP
   F16H 61/688 20060101ALI20180625BHJP
   F16H 59/14 20060101ALI20180625BHJP
   F16D 13/46 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F16D48/02 640J
   F16H61/02
   F16H61/68
   F16H61/688
   F16H59/14
   F16D13/46 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-99614(P2014-99614)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-117822(P2015-117822A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年12月12日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0157635
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100176603
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 允史
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン、チョル
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−158063(JP,A)
【文献】 特開2013−044373(JP,A)
【文献】 米国特許第6364809(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00− 39/00
F16D 48/00− 48/12
F16D 13/46
F16H 59/00− 61/12
F16H 61/16− 61/24
F16H 61/66− 61/70
F16H 63/40− 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クラッチと第2クラッチのうちいずれか一つ又は両方にトルクが印加される状況であるか判断するトルク状況判断段階と、
トルクが印加されるクラッチのスリップ量が所定の基準値以上であるかを判断するスリップ判断段階と、
前記スリップ判断段階の遂行結果、前記クラッチのスリップ量が前記基準値以上の場合には前記トルク状況判断段階で判断された状況に応じて別途に備えられた補正値を適用してクラッチのトルク−ストロークカーブを補正する補正段階と、を含んで構成され
前記補正値は、状況別の温度に伴う伝達トルク特性をそれぞれ反映することができるように、状況別に別途に設定しておいたものであることを特徴とするDCTのクラッチ特性補正方法。
【請求項2】
前記補正段階では、状況別の前記補正値によって該当クラッチのトルク−ストロークカーブの傾きを変更することを特徴とする、請求項に記載のDCTのクラッチ特性補正方法。
【請求項3】
前記トルク状況判断段階では、
第1クラッチにトルクが印加される状況であるかを判断する第1判断過程と、
前記第1判断過程の遂行結果、第1クラッチにトルクが印加される状況の場合、第2クラッチにもトルクが印加される状況であるか判断する第2判断過程と、
前記第1判断過程の遂行結果、第1クラッチにトルクが印加されない場合、第2クラッチにトルクが印加される状況であるかを判断する第3判断過程と、
を遂行して、前記第2判断過程で第2クラッチにもトルクが印加される状況であれば、第1クラッチと第2クラッチが両方ともトルクが印加される状況と判断し、第2クラッチにはトルクが印加されない状況ならば第1クラッチだけトルクが印加される状況と判断し、前記第3判断過程で前記第2クラッチにトルクが印加される状況ならば第2クラッチにのみトルクが印加される状況と判断して、総3種の状況で判断することを特徴とする、請求項1に記載のDCTのクラッチ特性補正方法。
【請求項4】
前記スリップ判断段階で、前記基準値は、トルク−ストロークカーブの補正が必要な水準のエネルギーが該当クラッチに印加されたかを示す値で設定されることを特徴とする、請求項1に記載のDCTのクラッチ特性補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCTのクラッチ特性の補正方法に関する。より詳しくは、クラッチに加えられるエネルギーを考慮してクラッチ特性を補正する技術に関する。
【発明の背景となる技術】
【0002】
AMT(AUTOMATED MANUAL TRANSMISSION)やDCT(DOUBLE CLUTCH TRANSMISSION)等のような自動化手動変速機は、手動変速機の変速メカニズムを自動的に制御するようにするシステムで、トルクコンバータと湿式多板クラッチを使用する一般A/Tとは異なり、乾式クラッチを用いてエンジントルクを変速メカニズムに伝達するように構成される場合が多い。
【0003】
前記乾式クラッチはアクチュエータによって制御されるが、通常はアクチュエータのストロークに対する乾式クラッチの伝達トルク変化を図示したT−Sカーブによって前記アクチュエータを制御するようにする。
【0004】
一方、前記乾式クラッチは、構成要素の単品公差と耐久進行に伴う摩耗度、高温による熱変形及びディスクの摩擦系数の変化等、数多くの因子によって乾式クラッチの伝達トルクが大きく変化する特性を有しており、乾式クラッチの伝達トルクを一定の状態でデータ化することは難しい。
【0005】
しかし、前記乾式クラッチは、制御時に前記伝達トルクの特性変化をちゃんと反映することができずに前記アクチュエータを足りなく又は過度に制御すれば、乾式クラッチの過度なスリップが発生したり、衝撃を誘発するようになるので、アクチュエータのストロークに伴う乾式クラッチの伝達トルク特性を正確に割り出してアクチュエータの制御に使用するようにする技術が必要である。
【0006】
参考に、図1は本発明が適用できるDCTのクラッチ構造を図示したもので、中央のセンタープレート500を中心に両側に第1クラッチと第2クラッチが構成されるところ、第1クラッチは前記センタープレート500に加圧されて動力の伝達を受ける第1クラッチプレート502と、前記第1クラッチプレート502を前記センタープレート500に加圧する第1圧力板504を含み、第2クラッチは第2クラッチプレート506と第2圧力板508を含み、前記第1圧力板504は第1エンゲージベアリング510が左側に移動すれば第1クラッチプレート502を前記センタープレート500に加圧し、第2エンゲージベアリング512が左側に移動すれば第2圧力板508が第2クラッチプレート506を前記センタープレート500に加圧するように構成される。
【0007】
前記の発明の背景になる技術として説明された事項は、本発明の背景についての理解増進のためのものであるだけで、この技術分野で通常の知識を有する者にすでに知られた従来技術に該当することを認めるものとして受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】KR1020090061752B
【発明の概要】
【解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、DCTを構成する二つのクラッチに加えられるエネルギーに伴う各クラッチの伝達トルク特性の変化を考慮して各クラッチの伝達トルク特性を補正できるようにすることにより、より適切なクラッチの伝達トルク特性の確保によってクラッチの不要なスリップや衝撃を防止して、クラッチの耐久性を向上させ変速品質を向上させることができるようにしたDCTのクラッチ特性の補正方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような目的を達成するための本発明のDCTのクラッチ特性の補正方法は、第1クラッチと第2クラッチのうちいずれか一つ又は両方にトルクが印加される状況であるか判断するトルク状況判断段階と、トルクが印加されるクラッチのスリップ量が所定の基準値以上であるかを判断するスリップ判断段階と、前記スリップ判断段階の遂行結果、前記クラッチのスリップ量が前記基準値以上の場合には、前記トルク状況判断段階で判断された状況に応じて別途に備えられた補正値を適用してクラッチのトルク−ストロークカーブを補正する補正段階と、を含んで構成され、前記補正値は、状況別の温度に伴う伝達トルク特性をそれぞれ反映することができるように、状況別に別途に設定しておいたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、DCTを構成する二つのクラッチに加えられるエネルギーに伴う各クラッチの伝達トルク特性の変化を考慮して、各クラッチの伝達トルク特性を補正できるようにすることにより、より適切なクラッチの伝達トルク特性の確保によってクラッチの不要なスリップや衝撃を防止して、クラッチの耐久性を向上させ変速品質を向上させることができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用できる従来のDCTのクラッチ構造を図示した概念図である。
図2】本発明によるDCTのクラッチ特性の補正方法の実施例を示した順序図である。
図3】第1クラッチにのみトルク印加時の第1クラッチの伝達トルク特性を示したグラフである。
図4】第1クラッチと第2クラッチ両方にトルク印加時の第1クラッチの伝達トルク特性を示したグラフである。
図5】第2クラッチにのみトルク印加時の第1クラッチの伝達トルク特性を示したグラフである。
【発明を実施するための具体的な内容】
【0013】
図2を参照すると、本発明のDCTのクラッチ特性の補正方法の実施例は、第1クラッチと第2クラッチのうちいずれか一つ又は両方にトルクが印加される状況であるか判断するトルク状況判断段階(S10)と、トルクが印加されるクラッチのスリップ量が所定の基準値以上であるかを判断するスリップ判断段階(S20)と、前記スリップ判断段階(S20)の遂行結果、前記クラッチのスリップ量が前記基準値以上の場合には、前記トルク状況判断段階(S10)で判断された状況に応じてクラッチのT−Sカーブを補正する補正段階(S30)を含んで構成される。
【0014】
すなわち、本発明は、DCTを構成する第1クラッチと第2クラッチ各々にトルクが印加される状況又は両方にトルクが印加される状況を区分して、その区分される状況に応じてクラッチのT−Sカーブを補正するようにすることにより、車両の走行状況に応じたより正確なT−Sカーブを獲得して、クラッチの耐久性を向上させ変速品質を向上させて、窮極的には車両の商品性を増大させることができるようにするものである。
【0015】
本実施例で、前記トルク状況判断段階(S10)は、第1クラッチにトルクが印加される状況であるかを判断する第1判断過程(S10−1)と、前記第1判断過程(S10−1)の遂行結果、第1クラッチにトルクが印加される状況の場合に第2クラッチにもトルクが印加される状況であるか判断する第2判断過程(S10−2)と、前記第1判断過程(S10−1)の遂行結果、第1クラッチにトルクが印加されない場合に第2クラッチにトルクが印加される状況であるかを判断する第3判断過程(S10−3)を遂行して、前記第2判断過程(S10−2)で第2クラッチにもトルクが印加される状況ならば、第1クラッチと第2クラッチが両方ともトルクが印加される状況と判断し、第2クラッチにはトルクが印加されない状況ならば第1クラッチのみトルクが印加される状況と判断し、前記第3判断過程(S10−3)で前記第2クラッチにトルクが印加される状況ならば第2クラッチにのみトルクが印加される状況と判断して、総3種の状況で判断するように構成している。
【0016】
ここで、前記第1クラッチにのみトルクが印加される状況、又は第2クラッチにのみトルクが印加される状況は、車両の発進又はキックダウン変速等の場合であって、二つのクラッチのうちいずれかのクラッチをスリップ制御して該当クラッチにのみエネルギーが印加される状況であり、前記第1クラッチ及び第2クラッチ両方にトルクが印加される状況は変速状況であって、二つのクラッチのうちいずれか一つはトルクを減少させて解除させる方向に制御し、他の一つはトルクを増加させて締結させる方向に制御して、二つのクラッチ両方でスリップが発生する状況をいう。
【0017】
上述したように、トルクがクラッチに加えられる状況に応じて該当クラッチのT−Sカーブ補正を異にする理由は、図3ないし図5に示されたように、いずれかのクラッチのストロークに対する伝達トルクの特性が温度だけではなく、前記トルクがクラッチに加えられる状況によって変わるので、このような差を反映してT−Sカーブの補正がなされるようにするためのものである。
【0018】
すなわち、図3ないし図5は、第1クラッチのストロークに対するクラッチの伝達トルク特性を温度に従って示したグラフであって、図3は、第1クラッチにのみトルクが印加される時の第1クラッチの伝達トルク特性を示したもので、図4は、第1クラッチと第2クラッチ両方にトルクが印加される時の第1クラッチの伝達トルク特性を示したものであり、図5は、第2クラッチにのみトルクが印加される時の第1クラッチの伝達トルク特性を示したもので、全て第1クラッチに対する伝達トルク特性を示していながらも、上述したように、トルクがクラッチに加えられる状況によってその特性が異なって現われるため、これを反映して前記トルク状況判断段階(S10)で判断された状況別に第1クラッチのT−Sカーブを補正するようにすれば、より適切な補正がなされることができるということである。
【0019】
したがって、前記補正段階(S30)では、前記トルク状況判断段階(S10)で判断された状況に応じて別途に備えられた補正値を適用してクラッチのT−Sカーブを補正する。
【0020】
ここで、前記補正値は、前記図3ないし図5に示されたような状況別の温度に伴う伝達トルク特性をそれぞれ反映することができるように、状況別に別途に設定しておいたものを使用するのである。
【0021】
すなわち、もし前記トルク状況判断段階(S10)で前記第2クラッチにのみトルクが印加される状況と判断されたら、その状況に合うようにあらかじめ設定された補正値を適用して前記第1クラッチのT−Sカーブを補正するようにするのである。
【0022】
一方、前記補正段階(S30)では、前記状況別補正値によって該当クラッチのT−Sカーブの傾きを変更する方法等で補正を行うことができるのである。
【0023】
また、前記スリップ判断段階(S20)での前記基準値は、T−Sカーブの補正が必要な水準のエネルギーが該当クラッチに印加されたかを示す値で設定されるところ、多数の試験等によってあらかじめ決定することができるものである。
【0024】
本発明は、特定の実施例に関して図示して説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を逸脱しない限度内で、本発明が多様に改良及び変化することができるということは、当業界で通常の知識を有する者において自明なことである。
【符号の説明】
【0025】
S10;トルク状況判断段階
S20;スリップ判断段階
S30;補正段階
S10−1;第1判断過程
S10−2;第2判断過程
S10−3;第3判断過程
図1
図2
図3
図4
図5