(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置特定部は、前記保持部に取り付けられた複数のセンサからの出力に基づいて、前記保持部の位置を特定し、前記寝台に取り付けられた複数のセンサからの出力に基づいて、前記寝台の複数の位置を特定すること、
を特徴とする請求項2記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら第1、第2、第3及び第4実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。第1実施形態に係るX線診断装置は、アーム架台部2、天板架台部3、及びデータ処理装置4を有する。なお、本発明を実施するための第1、第2及び第3実施形態では、可搬型のアーム架台部2と可搬型の天板架台部3とで構成されたX線診断装置について説明する。ここでの可搬型のアーム架台部2及び天板架台部3は、検査室内を架台部毎に自由に移動させることができるものをいう。つまり、アーム架台部2の一部が検査室に対して固定されたり、天板架台部3の一部が検査室に固定されたりしない。しかし、本実施形態は、アーム架台部2及び天板架台部3のうち、少なくとも一方が可搬性を有するX線診断装置に対しても適用が可能である。
【0009】
次に、第1実施形態に係るX線診断装置のアーム架台部2及び天板架台部3の構成について、
図2、
図3A及び
図3Bを参照して説明する。
【0010】
図2は、アーム架台部2及び天板架台部3の構成を示すブロック図である。すでに述べたように、アーム架台部2、天板架台部3及びデータ処理装置4は、それぞれ独立した装置である。アーム架台部2及び天板架台部3各々は、データ処理装置4からの制御信号に従った動作を行う。データ処理装置4は撮影制御部50を有する。アーム架台部2は、アーム制御部501を有する。天板架台部3は、天板制御部502を有する。撮影制御部50、アーム制御部501及び天板制御部502各々は、図示しない無線通信ユニットを有し、LAN(Local Area Network)や公衆電子通信回線等のネットワークを介して、それぞれ他の装置とデータ通信が可能である。以下、アーム制御部501及び天板制御部502は、撮影制御部50からの制御信号に従って、各制御を行うとする。
【0011】
アーム制御部501は、撮影制御部50から出力された制御信号に基づいて、アーム架台部2の各部を制御する。例えば、アーム制御部501は、X線撮影条件に従ってX線撮影が実行されるために、C形アーム21の移動、X線の発生、及びX線の検出が連動するように、高電圧発生部25、X線検出部26、C形アーム駆動部503及びC形アーム支持台車駆動部504を制御する。具体的には、アーム制御部501は、X線撮影条件に含まれる管電流、管電圧及び照射時間等に従って、高電圧発生部25を制御する。このとき、アーム制御部501は、高電圧発生部の制御と同期して、X線検出部26を制御する。アーム制御部501は、X線検出部26から出力された電気信号を、撮影制御部50に対して出力する。アーム制御部501は、撮影制御部50から出力された移動制御信号に基づいて、C形アーム駆動部503及びC形アーム支持台車駆動部504を制御する。アーム架台部2は、C形アーム駆動部503及びC形アーム支持台車駆動部504が駆動されることにより、移動される。なお、ここでの移動とは、回転移動及び平行移動を含む。以下、アーム架台部2の動作について
図3Aを参照して説明する。また、天板架台部3の動作について
図3Bを参照して説明する。
【0012】
図3Aは、第1実施形態に係るX線診断装置のアーム架台部2の外観の一例を示す図である。アーム架台部2は、C形アーム21、C形アーム支持部22、C形アーム支持台車23、X線発生部24、高電圧発生部25(図示しない)及びX線検出部26を有する。C形アーム21は、C形アーム支持部22により、移動可能に支持される。C形アーム支持部22は、C形アームホルダ221、第1移動機構222、第1支持部223、第2移動機構224、及び第2支持部225を有する。なお、X線発生部24及びX線検出部26を支持する機構、例えば、C形アーム支持部22及びC形アーム支持台車23各々を保持部とも言う。
【0013】
C形アーム21は、複数の回転軸を有する。C形アーム21は、C形アーム駆動部503が駆動されることにより、複数の回転軸まわりに回転可能である。
【0014】
C形アーム駆動部503は、図示しないスライド移動機構駆動部、第1移動機構駆動部、第2移動機構駆動部及び第3移動機構駆動部を有する。C形アーム21は、スライド移動機構を介して、C形アームホルダ221に支持される。スライド移動機構は、スライド移動機構駆動部が駆動されることにより、C形アーム21の形状に沿って、円弧状にC形アーム21をスライド回転させる。このスライド回転の回転軸Raは、床面に対して平行な軸となる。
【0015】
C形アームホルダ221は、第1移動機構222を介して、第1支持部223により支持される。第1移動機構222は、第1移動機構駆動部が駆動されることにより、床面に平行で、かつスライド回転軸Raと直交する回転軸Rb回りに回転される。これにより、C形アーム21は、回転軸Rb回りに回転可能となる。
【0016】
第1支持部223は、第2移動機構224を介して、第2支持部225により支持される。第2移動機構224は、第2移動機構駆動部が駆動されることにより、床面に垂直な回転軸Rc回りに回転される。これにより、C形アーム21は、回転軸Rc回りに回転可能となる。また、第2移動機構224は、第3移動機構駆動部が駆動されることにより、第1支持部223を、床面に垂直な方向に昇降移動させる。撮影軸Rdは、X線発生部24のX線焦点とX線検出部26のX線検出面の中心位置とを結んだ軸である。回転軸Ra,回転軸Rb及び撮影軸Rdは、アイソセンタで交わる。
【0017】
C形アーム支持部22は、C形アーム支持台車23により、床面に平行な方向に移動可能に支持される。C形アーム支持台車23は、床面を移動するための車輪を有する。C形アーム支持台車23は、C形アーム支持台車駆動部504が駆動され、車輪が回転されることにより移動される。そして、C形アーム21は、C形アーム支持台車23とともに移動される。なお、C形アーム支持部22は、上述の移動機構以外の他の移動機構を有してもよい。例えば、第1移動機構222は、伸縮動作をする移動機構を有してもよい。これにより、C形アーム21を床面に平行な一方向に移動させることができる。
【0018】
以上まとめると、C形アーム21は、回転軸Ra及び回転軸Rbの回転動作により、撮影軸Rdを、アイソセンタに対してあらゆる角度に傾けることができる。また、C形アーム21は、C形アーム支持台車23の移動及び第2移動機構224の昇降動作等により、3軸方向に平行移動が可能である。
【0019】
アーム制御部501は、撮影制御部50から受け取った移動制御信号に含まれる平行移動量、平行移動方向、回転角度及び回転方向に応じて各駆動部を制御する。移動量及び移動方向は、アーム架台部2の座標系で表される。アーム架台部2の座標系を機械座標系と呼ぶ。説明を簡単にするため、機械座標系の原点をアーム架台部2が初期状態におけるアイソセンタ、X軸を回転軸Rbと平行な軸X1、Z軸を回転軸Raと平行な軸Z1、及びY軸をX軸X1とZ軸Z1とに直交する軸Y1とする。アーム架台部2の初期状態とは、各機構が基準位置に戻された状態である。
【0020】
例えば、移動制御信号に、「X1方向に50mm移動」を指示する信号が含まれている場合、アーム制御部501は、C形アーム支持台車駆動部504を制御し、C形アーム21とともにC形アーム支持台車23をX1方向に50mm移動させる。また、移動制御信号に、「スライド回転軸Ra回りに+20°回転」を指示する信号が含まれている場合、アーム制御部501は、スライド移動機構駆動部を制御し、C形アーム21とともにスライド移動機構を+20°回転させる。
【0021】
図3Bは、第1実施形態に係るX線診断装置の天板架台部3の外観の一例を示す図である。天板架台部3は、天板31、寝台32、及び寝台台車33を有する。寝台32は、天板31を移動可能に支持する。天板31は、天板駆動部505が駆動されることにより、移動される。例えば、天板31は、床面に垂直な方向に昇降移動される。また、天板31は、床面に平行な面上を平行移動される。なお、天板31は、天板の長軸及び短軸を軸にそれぞれ傾斜される。寝台32は、寝台台車33により、床面に平行な面上に平行移動可能に支持される。寝台台車33は、床面を移動するための車輪を有する。寝台台車33は、寝台台車駆動部506が駆動され、車輪が回転されることにより、寝台32を天板31とともに移動させる。
【0022】
天板制御部502は、撮影制御部50から受け取った移動制御信号に含まれる平行移動量及び平行移動方向に応じて各駆動部を制御する。移動量及び移動方向は、天板架台部3の座標系で表される。天板架台部3の座標系を天板座標系と呼ぶ。天板座標系のX軸を天板31の短軸に平行な軸X2、Y軸を天板31面(または床面)に直交する軸Y2、及びZ軸を天板31の長軸に平行な軸Z2とする。天板座標系の原点は、天板架台部3が初期状態における所定の位置に設定される。例えば、天板座標系の原点は、天板31が基準位置に戻されたときの、天板31の1つの角に設定される。
【0023】
例えば、移動制御信号に、「X2方向に30mm移動」を指示する信号が含まれている場合、天板制御部502は、天板駆動部505を制御し、天板31をX2方向に30mm移動させる。なお、天板制御部502は、寝台台車駆動部506を制御し、寝台32とともに天板31をX2方向に30mm移動させてもよい。天板制御部502は、移動制御信号に駆動対象が含まれている場合において、駆動対象を制御する。例えば、移動制御信号に「天板駆動部505を制御して、天板31をZ2方向に30mm移動」を指示する信号が含まれている場合、天板制御部502は、天板駆動部505を制御し、天板31をZ2方向に30mm移動させる。
【0024】
C形アーム21は、その一端にX線発生部24を保持する。X線発生部24は、X線管、X線フィルタ、及びX線絞り器を有する。X線管は、高電圧発生部25からの高電圧(管電圧)の印加及び管電流の供給を受けて、焦点からX線を発生する。X線フィルタは、被検体のX線被曝量の低減や画質の向上等を目的に、X線の線質を変更するもので、焦点から発生されたX線の連続スペクトルに関して、診断に必要のない長波長成分を除去する。X線絞り器は、焦点から放射され、X線フィルタを透過したX線の、X線検出部26の検出面上のX線照射範囲を限定するための、独立に制御可能な複数の絞り羽根を有する。複数の絞り羽根は、システム制御部49の制御に従って、それぞれが独立に移動される。
【0025】
C形アーム21は、その他端に、X線発生部24と対向するように、X線検出部26を保持する。X線検出部26は、複数のX線検出素子を有する。複数のX線検出素子は、2次元のアレイ状に配列される。2次元のアレイ状の検出器はFPD(Flat Panel Display:平面検出器)と呼ばれる。FPDの各素子は、X線発生部24から放射され被検体を透過したX線を検出する。FPDの各素子は、検出したX線強度に対応した電気信号を出力する。なお、ここでは、X線発生部24とX線検出部26とを保持する機構としてC形アーム21を記載しているが、X線発生部24とX線検出部26とを保持できる機構であれば、保持機構はC形アーム21に限定されない。例えば、C形アーム21は、Ω形アームでの代替が可能である。
【0026】
データ処理装置4は、前処理部41、画像発生部42、位置特定部43、干渉データ発生部45、記憶部46、入力部47、表示部48、システム制御部49、及び撮影制御部50を有する。
【0027】
前処理部41は、X線検出部26から出力された電気信号に対して前処理を実行する。前処理とは、例えば、各種補正処理、増幅処理、及びA/D変換処理等である。
【0028】
画像発生部42は、前処理を実行された電気信号に基づいて、X線画像のデータを発生する。X線画像を構成する各画素に割り付けられた画素値は、X線の透過経路上の物質に関するX線減弱係数に応じた値等である。
【0029】
入力部47は、第1実施形態に係るX線診断装置に対して、ユーザによる指示情報を入力するための、インターフェースとして機能する。指示情報とは、アーム架台部2及び天板架台部3の移動指示、プリセットの登録指示、オートポジショニング機能の実行指示、及び制御優先度の設定指示等である。入力部47は、ユーザが所望する位置にアーム架台部2及び天板架台部3各々を移動させるための操作コンソールを備える。操作コンソールは、ボタン、ハンドル、及びトラックボール等を有する。操作コンソールは、アーム架台部2及び天板架台部3の共通の操作コンソールである。なお、操作コンソールは、アーム架台部2の専用の操作コンソールと天板架台部3の専用の操作コンソールとを備えてもよい。ユーザは、操作コンソールを操作することにより、自在にアーム架台部2及び天板架台部3を移動させることができる。
【0030】
操作コンソールは、オートポジショニング機能に対応する複数のプリセットボタンを有する。プリセットボタンは、X線診断装置がオートポジショニング機能を実行する契機となるボタンである。オートポジショニング機能は、アーム架台部2と天板架台部3との間の位置合わせを自動的に行う機能である。オートポジショニング機能により、手動での位置合わせを行う手間を小さくすることができるため、撮影に関わる一連のワークフローを改善できる。なお、ここでの位置合わせとは、天板31に対する撮影軸の位置合わせである。これにより、アーム架台部2及び天板架台部3各々を所望の撮影位置に自動的に配置することができる。なお、位置合わせとは、アーム架台部2を構成する複数の機構と天板架台部3を構成する複数の機構との間の位置合わせであってもよい。つまり、この場合、C形アーム支持台車23と寝台台車33との間の位置合わせも行われる。以下の説明では、アーム架台部2及び天板架台部3各々の配置自由度がより高い、天板31に対する撮影軸の位置合わせをする場合を例に実施形態を説明する。
【0031】
複数のプリセットボタンは、それぞれ複数の相対位置に対応する。相対位置とは、天板31に対する撮影軸の位置に関する。ユーザは、プリセットボタンを押すだけで、天板31に対する撮影軸の位置合わせを行うことができる。
【0032】
制御優先度は、オートポジショニング機能実行時における、移動させる機構の優先順位を表す。例えば、ユーザは積極的に天板架台部3を移動させたくないとき、アーム架台部2を制御優先度「高」、天板架台部3を制御優先度「低」に設定する。ここでは、アーム架台部2と天板架台部3との間の制御優先度について述べているが、ユーザは、アーム架台部2及び天板架台部3各々を構成する複数の駆動部毎に制御優先度を設定できる。
【0033】
記憶部46は、半導体記憶素子であるFlash SSD(Solid State Disk)などの半導体記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等である。記憶部46は、画像発生部42により発生されたX線画像のデータ等を記憶する。また、記憶部46は、後述の干渉データ発生部45により発生されたアーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係に関する干渉データを記憶する。さらに、記憶部46は、複数のプリセットボタンにそれぞれ対応する複数の相対位置のデータを記憶する。相対位置のデータは、天板31に対する撮影軸の位置と方向とを表すデータである。例えば、天板31に対する撮影軸の位置と方向とが分かるためには、天板31の所定位置に対する、X線発生部24の位置とX線検出部26の位置とが分かればよい。予め、X線発生部24の位置とX線検出部26の位置と撮影軸との間の位置関係が登録されていれば、X線発生部24の位置とX線検出部26の位置とが特定されることで、天板31に対する撮影軸の位置と方向とが分かる。相対位置のデータは、例えば、X線発生部24の所定位置とX線検出部26の所定位置とを天板座標系で表したデータである。なお、相対位置のデータは、機械座標系で表されてもよい。
【0034】
また、天板31に対する撮影軸の位置と方向とを表すデータであれば、相対位置のデータは前述のデータに限定されない。例えば、相対位置のデータは、アーム架台部2の位置及び天板架台部2の位置を検査室座標系で表したデータであってもよい。検査室座標系は、アーム架台部2及び天板架台部3が配置された検査室における、所定の位置を原点とした固定座標系である。さらに、相対位置のデータは、アーム架台部2と天板架台部3とが相対位置関係にある時に、カメラにより撮影された画像のデータであってもよい。相対位置のデータは、後述の位置特定部43から出力される。
【0035】
位置特定部43は、アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を特定する。言い換えると、位置特定部43は、天板架台部3を構成する複数の機構各々の位置に対する、アーム架台部2を構成する複数の機構各々の位置を特定する。アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を特定する方法には第1の方法と第2の方法とがある。
【0036】
まず、第1の方法について説明する。
第1の方法において、位置特定部43は、検査室におけるアーム架台部2の位置と天板架台部3の位置を特定することにより、アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を特定する。位置特定部43は、C形アーム位置特定部431と天板位置特定部432とを有する。C形アーム位置特定部431は、検査室内のアーム架台部2の位置を特定する。具体的には、C形アーム位置特定部431は、アーム架台部2の複数の位置各々の検査室座標を特定する。天板位置特定部432は、検査室内の天板架台部3の位置を特定する。具体的には、天板位置特定部432は、天板架台部3の複数の位置各々の検査室座標を特定する。以下、検査室内の特定の位置に対応する検査室座標を特定方法について説明する。この説明において、重複する説明を省くために、C形アーム位置特定部431によるアーム架台部2の位置Pの特定方法について主に説明する。
【0037】
特定方法には、(1)カメラ画像を用いる方法、(2)GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を用いる方法、及び(3)超音波システムを用いる方法等がある。以下、それぞれの方法について、
図4、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図4、
図5及び
図6は、検査室内にアーム架台部2と天板架台部3とが配置されている状態を表している。
【0038】
(1)カメラを用いる方法
C形アーム位置特定部431は、検査室座標上のアーム架台部2の位置を特定するための複数のカメラを有する。複数のカメラは、アーム架台部2を複数の方向から撮影可能な位置に設けられるのが好適である。カメラにより撮影された検査室内の画像を検査室画像と呼ぶ。複数のカメラは、C形アーム位置特定部431と天板位置特定部432とで共用であってもよい。なお、複数のカメラは、外部のカメラであってもよい。この場合、第1実施形態に係るX線診断装置は、外部のカメラから検査室画像のデータを受信するための受信部(図示しない)を含むように構成される。
【0039】
図4Aは、第1の方向に対応する検査室画像の一例を示す図である。検査室座標系の原点を、検査室内の位置O3とする。第1の方向は、検査室座標系のX3方向とする。このとき、カメラは撮影方向がX3方向になるように、検査室内に配置されている。C形アーム位置特定部431は、
図4Aに示す検査室画像pixから、閾値処理等の画像処理によりアーム架台部2の位置Pを抽出することにより、検査室座標上の位置PのY座標PyとZ座標Pzとを特定する。位置Pは、アーム架台部2における特徴的な位置である。特徴的な位置とは、例えば、アーム架台部2のエッジ及びコーナー等のアーム架台部2の外形を捉えることのできる位置であってもよいし、アーム架台部2の特徴的な部品の位置であってもよい。なお、特徴的な位置は、アーム架台部2に取り付けられたマークであってもよい。マークは、検査室画像から閾値処理で抽出可能なマークである。例えば、マークはユーザ等によりアーム架台部2に取り付けられる。
【0040】
図4Bは、第2の方向に対応する検査室画像の一例を示す図である。第2の方向は、検査室座標系のZ3方向とする。このとき、カメラは撮影方向がZ3方向になるように、C形アーム位置特定部431は、
図4Bに示す検査室画像pizに基づいて、検査室座標上の位置PのX座標PxとY座標Pyとを特定する。
【0041】
以上の処理により、C形アーム位置特定部431は、検査室画像に基づいて、アーム架台部2の位置Pの検査室座標(Px、Py、Pz)を特定することができる。なお、検査室画像に、検査室内に居る医師や、検査室に配置された点滴やインジェクター装置等が写ってしまう場合、C形アーム位置特定部431は、検査室画像から、アーム架台部2の位置P(特徴点)を抽出できない可能性がある。そのため、撮影方向の異なる検査室画像の種類が多くなればなる程、C形アーム位置特定部431は、位置Pを高い精度で特定することが可能である。
なお、位置特定部43は、検査室画像から、アーム架台部2及び天板架台部3以外の、人の位置及び物の位置の検査室座標を特定してもよい。これにより特定されたデータは、後述の干渉データ発生部45による干渉データの発生に用いられる。
【0042】
(2)GPSを用いる方法
図5は、GPSを用いた場合のC形アーム位置特定部431によるアーム架台部2の位置の特定方法を説明するための説明図である。GPSにおいて、GPS受信機が、複数のGPS衛星GTx各々から送信された電波を受信することで、GPS受信機が配置された位置の経度、緯度及び高度等が割り出される。C形アーム位置特定部431は、アーム架台部2の位置Pに配置されたGPS受信機の出力に基づいて、位置Pの座標を特定する。このときの位置Pの座標は、GPSの座標系で表される。位置Pの座標をGPSの座標系から、検査室座標系に変換するためには、変換テーブル等が用いられる。変換テーブルは、GPS座標を検査室座標に変換するためのテーブルであり、予め記憶部46に記憶されている。また、検査室内の1つの固定点を基準位置とし、その基準位置からの経度、緯度及び高度等の差を取ることで、位置Pの検査室座標(Gx1,Gy1,Gz1)を特定できる。このときの固定点は、例えば、検査室座標系の原点である。
【0043】
(3)超音波システムを用いる方法
超音波システムでは、超音波発信装置と超音波受信装置とが用いられる。超音波発信装置から発信された超音波を超音波受信装置が受信する。そして、発信から受信までの時間に基づいて、超音波発信装置から超音波受信装置までの距離が特定される。超音波発信装置から発信された超音波を3個以上の超音波受信装置で受信することで、超音波発信装置の3次元座標の特定が可能である。
【0044】
図6は、超音波システムを用いた場合のC形アーム位置特定部431によるアーム架台部2の位置の特定方法を説明するための説明図である。
図6において、アーム架台部2には超音波発信タグが位置Pに取り付けられている。また、検査室内の3つの位置(R1、R2及びR3)にそれぞれ超音波受信装置が取り付けられている。C形アーム位置特定部431は、超音波受信装置R1,R2及びR3からの出力に基づいて、アーム架台部2の位置Pの座標(Tx1,Ty1,Tz1)を特定する。具体的には、超音波受信装置R1,R2及びR3各々は、アーム架台部2の位置Pに配置された超音波発信タグから発信された超音波を受信する。そして、超音波受信装置R1,R2及びR3各々は、超音波発信タグまでの距離を特定する。C形アーム位置特定部431は、超音波受信装置各々からの出力に基づいて、三辺測量を行い位置Pの検査室座標(Tx1,Ty1,Tz1)を特定する。
【0045】
以上説明した3種類の第1の方法によれば、位置特定部43は、検査室内の特定の位置の検査室座標を特定することができる。位置特定部43は、アーム架台部2の複数の位置各々の検査室座標と、天板架台部3の複数の位置各々の検査室座標に基づいて、アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を特定する。
【0046】
次に、
図7及び
図8を参照して、複数の位置各々がどのようにアーム架台部2及び天板架台部3に設けられるのかを説明する。複数の位置各々は、アーム架台部2を構成する複数の機構のうち、1つの機構に設けられてもよいし、複数の機構に複数の位置が設けられてもよい。
【0047】
図7Aは、第1実施形態に係るX線診断装置のアーム架台部2における複数の位置の第1例を表した図である。
図7Aにおいて、C形アーム位置特定部431は、C形アーム21上の3つの位置(位置C1,C2及びC3)各々の検査室座標を特定する。3つの位置のうち、位置C1はC形アーム21の上端、位置C2はC形アーム21の中心、及び位置C3はC形アーム21の下端に設けられる。位置特定部43は、C形アーム21上の3つの位置各々の検査室座標に基づいて、C形アーム21の位置を特定する。そして、位置特定部43は、C形アーム21の位置に基づいて、アーム架台部2を構成する複数の機構各々の位置を特定することができる。これは、位置特定部43は、アーム架台部2における、複数の機構各々の位置関係をデータとして保持しているためである。具体的には、アーム制御部501に出力に基づいて、位置特定部43は、C形アーム21が基準位置からどれだけ回転した状態にあるか、C形アーム21が基準位置からどれだけ昇降した位置に配置されているか等を把握している。これは、各駆動部の回転量や移動量等が、アーム制御部501により管理されているためである。そのため、複数の位置は、アーム架台部2を構成する複数の機構のうち、少なくとも1つの機構に設けられればよい。
図7Bは、第1実施形態に係るX線診断装置のアーム架台部2における複数の位置の第2例を表した図である。
図7Bにおいて、3つの位置(位置C4,C5及びC6)各々は、複数の機構に分散して設けられる。位置C4はC形アームホルダ221に、位置C5は第1支持部223に、位置C6はC形アーム支持台車23にそれぞれ設けられる。先に述べたように、C形アーム位置特定部431は、アーム架台部2を構成する複数の機構の位置関係を把握している。そのため、位置特定部43は、3つの位置各々の検査室座標が特定されることで、アーム架台部2を構成する複数の機構各々の位置を特定することができる。
【0048】
図8は、第1実施形態に係るX線診断装置の天板架台部3における複数の位置の一例を表した図である。
図7Bにおいて、天板位置特定部432は、天板31上の3つの位置(位置C7,C8及びC9)各々の検査室座標を特定する。3つの位置は、それぞれ天板31の異なる角に設けられる。位置特定部43は、天板31上の3つの位置各々の検査室座標に基づいて、天板31の位置を特定する。そして、位置特定部43は、天板31の位置に基づいて、天板架台部3を構成する複数の機構各々の位置を特定することができる。これは、位置特定部43は、天板架台部3における、複数の機構各々の位置関係をデータとして保持しているためである。具体的には、天板制御部502に出力に基づいて、位置特定部43は、天板31が基準位置からどれだけ回転した状態にあるか、天板31が基準位置からどれだけ昇降した位置に配置されているか等を把握している。これは、各駆動部の回転量や移動量等が、天板制御部502により管理されているためである。そのため、複数の位置は、天板架台部3を構成する複数の機構のうち、少なくとも1つの機構に設けられればよい。なお、上述したように、複数の位置各々は、天板架台部3を構成する複数の機構のうち、1つの機構に複数の位置が設けられてもよいし、複数の機構に分散して設けられてもよい。
【0049】
以上まとめると、C形アーム位置特定部431は、検査室座標上のアーム架台部2の複数の位置各々の検査室座標を特定することができる。これにより、位置特定部43は、検査室座標上のアーム架台部2を構成する複数の機構各々の位置を特定することができる。また、アーム架台部2は、アーム架台部2の動作方向を決める基準となる機械座標系を有する。そのため、C形アーム位置特定部431は、検査室座標系と機械座標系との間の位置関係を特定することができるともいえる。これにより、C形アーム位置特定部431は、検査室座標上の撮影軸の位置と方向とを特定することができる。
また、天板位置特定部432は、検査室座標上の天板架台部3の複数の位置各々の検査室座標を特定することができる。これにより、位置特定部43は、検査室座標上の天板架台部3を構成する複数の機構各々の位置を特定することができる。また、天板架台部3は、天板架台部3の動作方向を決める基準となる天板座標系を有する。そのため、天板位置特定部432は、検査室座標系と天板座標系との間の位置関係を特定することができるともいえる。これにより、天板位置特定部432は、検査室座標上の天板31の位置と方向とを特定することができる。
【0050】
すなわち、位置特定部43は、アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を特定することができる。言い換えると、位置特定部43は、検査室座標系、機械座標系及び天板座標系の間の位置関係を特定することができる。これにより、位置特定部43は、天板31に対する撮影軸の位置と方向とを特定することができる。
【0051】
次に、第2の方法について説明する。第2の方法は、天板架台部3に対するアーム架台部2の相対位置を特定する方法である。
図6で説明した超音波システムは、超音波受信装置が検査室内に配置され、超音波発信タグがアーム架台部2及び天板架台部3に配置されている構成である。しかしながら、超音波システムの構成はこれに限定されない。例えば、超音波システムは、天板架台部3の複数の位置各々に超音波発信タグが配置され、アーム架台部2の複数の位置各々に超音波受信装置が配置される構成であってもよい。このような超音波システムによれば、位置特定部43は、アーム架台部2に配置された複数の超音波受信装置各々の出力に基づいて、アーム架台部2の複数の位置各々に対する天板架台部3の複数の位置各々を特定することができる。これにより、位置特定部43は、天板架台部3を構成する複数の機構各々に対する、アーム架台部2を構成する複数の機構各々の位置を特定することができる。すなわち、第1の方法と同様に、アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を特定することができる。言い換えると、位置特定部43は、機械座標系及び天板座標系の間の位置関係を特定することができる。これにより、位置特定部43は、天板31に対する撮影軸の位置と方向とを特定することができる。
【0052】
なお、ここまでの説明において、例えば、C形アーム位置特定部431は、アーム架台部2の複数の位置を特定している。これは、1つの位置であると、アーム架台部2がどの方向に向いているかを特定できないためである。したがって、アーム架台部2がどの方向に向いているのかを特定できるのであれば、アーム架台部2には複数の位置が設けられなくてもよい。例えば、アーム架台部2の1箇所に、3軸方向を特定できるようなマーク(以下、3次元マークと呼ぶ。)が配置されていればよい。C形アーム位置特定部431は、検査室座標上のアーム架台部2の3次元マークの位置を特定することにより、検査室座標上のアーム架台部2の位置を特定することができる。天板位置特定部432についても同様である。すなわち、位置特定部43は、アーム架台部2及び天板架台部3各々に取り付けられた3次元マークの検査室座標上の位置に基づいて、しかしながら、位置特定部43は、アーム架台部2及び天板架台部3各々の1つの位置に基づいて、アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を特定することができる。
【0053】
位置特定部43により特定されたアーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係に関するデータは、後述の干渉データの発生、及びオートポジショニング機能実行時における、アーム架台部2と天板架台部3との間の位置合わせ、プリセットの登録時等に応用される。
【0054】
干渉データ発生部45は、位置特定部43からの出力に基づいて、干渉データを発生する。干渉データは、アーム架台部2と天板架台部3との間の機械的な位置関係を表すデータである。具体的には、干渉データは、アーム架台部2を構成する複数の機構各々の検査室座標上の位置データ、及び天板架台部3を構成する複数の機構各々の検査室座標上の位置データである。また、干渉データは、アーム架台部2を構成する複数の機構各々から、天板架台部3を構成する複数の機構各々までの距離と方向とを表したデータであってもよい。また、アーム架台部2及び天板架台部3以外の、人及び物等の障害物の検査室座標上の位置が特定されている場合、干渉データは、アーム架台部2と障害物、天板架台部3と障害物の間の機械的な位置関係を表すデータであってもよい。干渉データは、アーム架台部2及び天板架台部3の移動範囲を限定するために用いられるデータである。アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動範囲が限定されることで、アーム架台部2と天板架台部3、アーム架台部2と障害物、及び天板架台部3と障害物が互いに接触してしまうことを防げる。したがって、干渉データは、アーム架台部2及び天板架台部3各々が移動可能な範囲を表したデータであってもよい。アーム架台部2及び天板架台部3の移動可能な範囲とは、アーム架台部2を構成する機構と天板架台部3を構成する機構とが接触しないための移動範囲である。
【0055】
表示部48は、画像発生部42で発生されたX線画像を表示画面に表示する。また、表示部48は、撮影制御部50からの出力に基づいて、表示画面にメッセージを表示する。
【0056】
システム制御部49は、入力部47から入力された情報を受け取り、一時的にメモリ回路に入力情報を記憶する。そして、システム制御部49は、この入力情報に基づいて本X線診断装置の各部を制御する。
【0057】
撮影制御部50は、入力部47の撮影スイッチが押されたのを契機に、X線撮影を行うために、各部を制御する。具体的には、撮影制御部50は、ユーザにより設定された撮影条件に従って、被検体を撮影するために、高電圧発生部25とX線検出部26とを制御する。撮影制御部50の制御に従って、高電圧発生部25とX線検出部26とが連動することにより、撮影動作が実行される。
【0058】
また、撮影制御部50は、入力部47を介したユーザ指示に従って、アーム架台部2及び天板架台部3を移動させるために、各駆動部を制御する。このとき、撮影制御部50は、干渉データ発生部45により発生された干渉データに基づいて、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動範囲を制限する。撮影制御部50は、アーム架台部2と天板架台部3とが接触する前に、アーム制御部501及び天板制御部502のうち、少なくとも一方に対して、移動停止信号を出力する。接触する前とは、アーム架台部2を構成する複数の機構各々と天板架台部3を構成する複数の機構各々との間の距離が閾値以下になったタイミング等である。また、撮影制御部50は、移動を停止した旨及びこれ以上動かしたら接触してしまう旨を通知するメッセージのデータを表示部48に対して出力する。なお、撮影制御部50は、アーム架台部2と天板架台部3とが接触しないように、入力部47を介したユーザ操作を無効にしてもよい。なお、干渉データに検査室内の障害物に関するデータが含まれていれば、撮影制御部50は、アーム架台部2及び天板架台部3が、検査室内の障害物と接触しないように、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動範囲を制限してもよい。
【0059】
撮影制御部50は、プリセットボタンが押されたのを契機に、以下のオートポジショニング処理を実行する。以下、第1実施形態に係るX線診断装置のオートポジショニング処理を説明する。
【0060】
(オートポジショニング機能の準備)
ユーザは、アーム架台部2及び天板架台部3の位置関係をプリセット登録する。プリセット登録の手順は、以下の通りであう。
まず、ユーザは、入力部47を介してアーム架台部2と天板架台部3とをプリセット登録したい位置に移動させる。そして、入力部47に設けられたプリセットボタンを長押しすることで、天板31に対する撮影軸の位置と方向とを表す相対位置のデータが、長押しされたプリセットボタンに対応付けて登録される。記憶部46は、プリセットボタンと対応する相対位置のデータとを関連付けて記憶する。
【0061】
(オートポジショニング機能の実行)
第1の実施形態に係るオートポジショニング機能は、無造作に別々に配置されたアーム架台部2及び天板架台部3の位置関係を、ユーザにより押されたプリセットボタンに対応する相対位置の関係になるように自動的に移動させる機能である。オートポジショニング機能に係る処理(以下、オートポジショニング処理と呼ぶ)について、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0062】
図9は、第1実施形態に係るX線診断装置のオートポジショニング処理の流れを説明するフローチャートである。
図9では、オートポジショニング機能により、天板31に対して撮影軸が
図10Bの位置から
図10Aの位置になるように、アーム架台部2及び天板架台部3のうち、少なくとも一方が移動されるまでの流れを説明する。ここでは、アーム架台部2が、医師等のユーザにより、天板架台部3に対してある程度の位置に配置されているものとする。ここでの、ある程度の位置とは、天板31に対するC形アーム21の挿入方向が決められている状態とする。
【0063】
図10Aは、プリセットボタンに登録されている天板31に対する撮影軸Rdpの位置を示した図である。
図10Aにおいて、撮影軸Rdpの位置は、X線発生部24のX線焦点の位置Tp、X線検出部26のX線検出面の中心位置Rpとで表される。位置Tp及び位置Rpはそれぞれ天板31の所定位置を原点とした天板座標系で表される。
図10Bは,現在の天板31に対する撮影軸Rdnの位置を示した図である。
図10Bにおいて、撮影軸Rdnは、X線発生部24のX線焦点の位置Tn、X線検出部26のX線検出面の中心位置Rnとで表される。
以下、
図9のフローチャートに沿って、オートポジショニング処理を説明する。
(ステップS11)
複数のプリセットボタンからユーザにより1つのプリセットボタンが選択される。
(ステップS12)
システム制御部49の制御に従って、選択されたプリセットボタンに対応する相対位置のデータが記憶部46から読み出される。
図10Aにおいて、位置Tpと位置Rpとのデータが記憶部46から読み出される。
【0064】
(ステップS13)
アーム架台部2の位置情報と天板架台部3の位置情報とに基づいて、位置特定部43により、現在のアーム架台部2と天板架台部3との間の位置関係が特定される。具体的には、天板31に対する現在の撮影軸Rdnの位置関係が特定される。これにより、例えば、
図10Bに示す位置Tn及び位置Rnの検査室座標が特定される。
【0065】
(ステップS14)
ステップS13により特定されたアーム架台部2と天板架台部3との間の位置関係に基づいて、干渉データ発生部45により、干渉データが発生される。
【0066】
(ステップS15)
撮影制御部50により、現在の天板31に対する撮影軸Rdnの位置関係が、プリセットボタンに登録されている天板31に対する撮影軸Rdpの位置関係になるためのアーム架台部2及び天板架台部3のうち、少なくとも一方の移動量と移動方向とが特定される。これにより、例えば、
図10Bにおいて、現在の位置Tnと位置Rnと(撮影軸Rdn)を、それぞれプリセットボタンに登録されている位置Tpと位置Rpと(撮影軸Rdp)に一致させるためのパラメータ(移動量及び移動方向)が特定される。このとき、撮影制御部50により、制御優先度と干渉データとに基づいて、アーム架台部2及び天板架台部3のうち、優先する制御対象が決定される。例えば、天板架台部3の制御優先度が「低」に設定されているものとする。これは、天板31に患者が載置されているため、天板架台部3はなるべく移動させない方がよい場合を想定している。これにより、オートポジショニング機能実行時における、患者の安全を確保することができる。このとき、撮影制御部50は、アーム架台部2を構成する複数の機構各々の移動量と移動方向とを特定する。なお、例えば、アーム架台部2を移動できない等の場合、天板架台部3の制御優先度が高く設定される。
【0067】
(ステップS16)
撮影制御部50により、アーム架台部2及び天板架台部3のうち少なくとも一方が移動される。具体的には、撮影制御部50は、ステップS15で決定された特定された移動量及び移動方向に応じた移動制御信号を、アーム制御部501及び天板制御部502のうち、少なくとも一方に出力する。このとき、アーム制御部501に出力される移動制御信号は、機械座標系での移動指示情報を含む。一方、天板制御部502に出力される移動制御信号は、天板座標系での移動指示情報を含む。これにより、アーム制御部501は、アーム架台部2を移動させることができ、天板制御部502は、天板架台部3を移動させることができる。
【0068】
以上ステップS11からステップS16までの処理により、撮影軸の位置合わせが完了し、オートポジショニングが終了される。なお、ここでは、アーム架台部2が、医師等のユーザにより、天板架台部3に対してある程度の位置に配置されている場合を想定している。しかしながら、オートポジショニング機能は、天板31に対してC形アーム21の挿入方向が決められていない状態、つまり、アーム架台部2及び天板架台部3が互いに大きく離れて配置されている場合においても、使用可能である。このとき、ステップS15において、撮影制御部50は、天板31に対するC形アーム21の挿入方向の決定等の処理を行う。以下、
図11を参照して、天板31に対するC形アーム21の挿入方向を決定する方法について説明する。
【0069】
図11は、天板31に対するC形アーム21の挿入方向を決定する方法を説明するための説明図である。
図11は、天板31を正面方向(天板座標系の軸Y2の方向)から見た図である。
図11では、現在のX線発生部24のX線焦点の位置Rnが、配置目標となる位置Rpに配置された状態を表す複数のパターンの例を示している。撮影軸は、どのパターンも軸Y2に平行な軸とする。パターンp1は、天板31の短軸方向(X2方向)からC形アーム21が挿入された状態を示している。パターンp2は、天板31の長軸方向(Z2方向)からC形アーム21が挿入された状態を示している。パターンp3は、天板31の斜め方向からC形アーム21が挿入された状態を示している。つまり、現在の撮影軸Rdnを配置目標の撮影軸Rdpに配置するために、天板架台部3に対してアーム架台部2を配置するパターンはいくつもある。例えば、撮影制御部50は、アーム架台部2と天板架台部3との間の位置関係に基づいて、アーム架台部2及び天板架台部3の総移動距離が最短になるように、天板架台部3に対してアーム架台部2を配置する位置を決定する。なお、患者の頭側または側面側からC形アーム21を挿入するのが一般的である。そのため、撮影制御部50は、患者の頭側からC形アーム21を挿入するための位置または患者の側面側からC形アーム21を挿入するための位置に配置を決定してもよい。また、ユーザ指示に従ってアーム架台部2を配置する位置が決定されてもよい。このとき、表示部48には、例えば、
図11に示すような、天板31を正面方向から見た模式図に複数の配置候補がマークとして表示される。ユーザは、表示された模式図を見て、天板架台部3に対してアーム架台部2を配置する位置を複数の配置候補から選択することができる。なお、模式図はカメラにより撮影された画像であってもよい。また、撮影制御部50は、干渉データに基づいて、天板架台部3に対するアーム架台部2の配置を決定してもよい。具体的には、撮影制御部50は、医師等のユーザや医療器具等の邪魔にならないように、天板架台部3に対するアーム架台部2の配置を決定する。ここまでの説明は、天板架台部3を現在位置に固定したまま、アーム架台部2を天板架台部3に対して移動する方法、及び、アーム架台部2を現在位置に固定したまま、天板架台部3をアーム架台部2に対して移動する方法を主に説明している。しかしながら、アーム架台部2及び天板架台部3各々を検査室内の所望の位置に移動できる。例えば、このとき、表示部48には、検査室のレイアウト図が表示される。ユーザは、表示された検査室のレイアウト図上で、天板31を配置する位置、C形アーム21の天板31に対する挿入方向を指示することができる。
【0070】
第1実施形態に係るX線診断装置のオートポジショニング機能によれば、以下の効果を得られる。第1実施形態に係るX線診断装置を用いることで、意図的な位置合わせが行われていない状態のアーム架台部2及び天板架台部3を、ユーザにより押されたプリセットボタンに対応する相対位置になるように自動的に移動させることができる。この移動では、天板架台部3を現在位置に固定したまま、アーム架台部2を天板架台部3に対して配置することができる。また、アーム架台部2を現在位置に固定したまま、天板架台部3をアーム架台部2に対して配置することができる。また、検査室内の所望の位置にアーム架台部2及び天板架台部3各々を配置することができる。これらにより、検査室内でのアーム架台部2及び天板架台部3の配置方法の自由度を向上させることができる。また、使用する度に行う、位置合わせを簡単に行うことができるため、ワークフローの改善が見込める。
【0071】
また、第1実施形態に係るX線診断装置は、制御優先度に応じた順番で、アーム架台部2及び天板架台部3を移動させる。制御優先度は、ユーザ指示に従って適宜変更が可能である。制御優先度が設けられることで、ユーザは、アーム架台部2及び天板架台部3のうち、優先的に移動させる機構を指示することができる。したがって、患者を天板31に載置した状態で、天板架台部3を大きく移動させるなどの、危険を伴う移動のリスクを小さくすることができる。また、第1実施形態に係るX線診断装置は、干渉データに応じて、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動範囲を限定する。移動範囲を限定することで、アーム架台部2と天板架台部3、アーム架台部2と障害物、及び天板架台部3と障害物が接触することを防げる。
【0072】
以上のことから、少なくとも可搬型のC形アーム21または可搬型の天板31を備えた第1実施形態に係るX線診断装置は、C形アーム21を所望する位置に容易に移動させることができる。言い換えると、少なくとも可搬型のC形アーム21または可搬型の天板31を備えた第2実施形態に係るX線診断装置は、撮影位置に対する被検体の位置合わせを容易にできる。
【0073】
なお、第1実施形態では、アーム架台部2と天板架台部3の位置関係を予め登録していた相対位置の関係にすることができる。しかしながら、後述の第3実施形態における被検体位置特定部433の構成を第1実施形態に適用することで、アーム架台部2と患者の位置関係を予め登録していた相対位置の関係にすることができる。各構成部の主な処理は、第1実施形態と同様である。このときの差分は、以下のとおりである。記憶部46には、アーム架台部2と患者との間の相対位置の関係を表す相対位置データが記憶されている。また、位置特定部43は、検査室における、アーム架台部2の複数の位置及び患者の複数の位置に基づいて、アーム架台部2と患者との間の位置関係を特定することができる。これにより、撮影制御部50は、プリセットボタンに対応する相対位置の関係になるように、アーム架台部2を患者に対して移動させることができる。これにより、例えば、予め決まった天板架台部3以外の、ストレッチャー等に載置された患者に対して、簡単にアーム架台部2の位置合わせを行うことができる。
【0074】
(変形例)
第1実施形態に係るX線診断装置のオートポジショニング処理では、アーム架台部2及び天板架台部3のうち、少なくとも一方が自動的に移動される。しかしながら、ユーザが手動でアーム架台部2及び天板架台部3のうち、少なくとも一方を移動させてもよい。
【0075】
第1実施形態の変形例に係るX線診断装置は、アーム架台部2と天板架台部3との位置関係をプリセットボタンに対応する位置関係にするための支援画像を表示部48に表示する。支援画像には、アーム架台部2及び天板架台部3が、現在の位置関係からプリセットボタンに対応する相対位置の関係になるための、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動方向と移動量とに関するテキスト情報が含まれる。撮影制御部50は、アーム架台部2の位置情報と、天板架台部3の位置情報と、プリセットボタンに対応する相対位置のデータとに基づいて、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動方向及び移動量を特定する。アーム架台部2の移動方向と移動量とに関する情報は、機械座標系で表される。一方、天板架台部3の移動方向と移動量とに関する情報は、天板座標系で表される。例えば、アーム架台部2が移動された場合、支援画像に表示されているアーム架台部2及び天板架台部3各々に対応する移動方向と移動量とが更新される。既に位置特定部43により、検査室座標系、機械座標系及び天板座標系の位置関係が特定できているため、支援画像に含まれる移動方向と移動量とは、いずれの座標系でも表すことができる。例えば、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動方向と移動量とに関する情報が共通の座標系、例えば、検査室座標系で表されてもよい。個別の座標系で表すか、または共通の座標系で表すかは、ユーザ指示に従って適宜変更が可能である。また、共通の座標系は、ユーザ指示に従って、検査室座標系、機械座標系及び天板座標系から選択される。
【0076】
入力部47は、オートポジショニング機能実行時において、手動モードと自動モードとを選択するための選択スイッチを有する。手動モードが選択された場合において、表示部48には支援画像が表示される(第1実施形態の変形例)。一方、自動モードが選択された場合において、自動的にアーム架台部2及び天板架台部3が移動される(第1実施形態)。
【0077】
第1実施形態の変形例に係るX線診断装置によれば、以下の効果を得られる。第1実施形態の変形例に係るX線診断装置は、アーム架台部2及び天板架台部3がプリセットボタンに対応する位置関係になるための、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動方向及び移動量を表示することができる。ユーザは、支援画像を見ながら、アーム架台部2及び天板架台部3各々を移動させることで、アーム架台部2及び天板架台部3の位置関係を、プリセットボタンに対応する位置関係にすることができる。このとき、支援画像に含まれるアーム架台部2及び天板架台部3各々の移動情報(移動方向及び移動量)は、ユーザ指示に応じた座標系で表示される。例えば、アーム架台部2及び天板架台部3をユーザが手で移動させる場合において、アーム架台部2及び天板架台部3各々の移動情報は共通の座標系、例えば検査室座標系で表された方がよい。これは、ユーザが、アーム架台部2と天板架台部3とを共通の座標上でそれぞれ操作することができるためである。これにより、機械座標系で表された移動情報を見ながらアーム架台部2を移動させ、天板座標系で表された移動情報を見ながら天板架台部3を移動させる場合に比べて、ユーザは簡単にアーム架台部2及び天板架台部3を移動させることができる。また、アーム架台部2をアーム架台部2の操作コンソールを用いて移動させ、天板架台部3を天板架台部3の操作コンソールで移動させる場合において、アーム架台部2の移動情報は機械座標系で、天板架台部3の移動情報は天板座標系で表された方がよい。これにより、ユーザは、アーム架台部2及び天板架台部3各々を、専用の操作コンソールで移動させることができる。
【0078】
以上のことから、少なくとも可搬型のC形アームまたは可搬型の天板を備えた第1実施形態の変形例に係るX線診断装置は、C形アームを所望する位置に容易に移動させることができる。
【0079】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係るX線診断装置は座標変換部60を有する。第1実施形態に係るX線診断装置は、アーム架台部2及び天板架台部3の現在の位置関係を、予め決められた相対位置の関係にするために、自動的にアーム架台部2及び天板架台部3を移動させることができる。一方、第2実施形態に係るX線診断装置は、ユーザにより天板座標系で入力された移動指示に従って、アーム架台部2を移動させることができる。以下、第2実施形態に係るX線診断装置について、第1実施形態に係るX線診断装置からの差分を中心に説明する。
【0080】
座標変換部60は、アーム架台部2及び天板架台部3の位置関係に基づいて、アーム架台部2に関する、天板座標系で入力された指示情報を機械座標系に変換する。言い換えると、座標変換部60は、天板座標系と機械座標系の位置関係に基づいて、アーム架台部2に関する、天板座標系で入力された指示情報を機械座標系に変換する。この目的は、アーム架台部2の動作に関わる座標系と、天板架台部3の動作に関わる座標系とが異なるため、例えば、アーム架台部2が天板座標系で入力された移動指示に従って動作した場合に、ユーザの意図する方向にアーム架台部2が移動できないためである。ここでの指示情報とは、回転指示及び平行移動指示等である。座標変換部60は、天板座標系の座標を機械座標系に変換するための変換条件を特定する。例えば、変換条件は、座標変換行列等である。なお、ここでは、天板座標系から機械座標系への変換のみ説明しているが、検査室座標系、天板座標系及び機械座標系の位置関係がわかっているため、座標変換部60は、機械座標系、検査室座標系及び天板座標系で入力された移動指示情報を、他の座標系に変換することもできる。
【0081】
撮影制御部50は、座標変換部60により、機械座標系に変換された指示情報を、アーム制御部501に対して出力する。
図13は、第2実施形態に係るX線診断装置の座標変換部60の処理を説明するための説明図である。天板座標系は、天板31の短軸方向がX軸X2、天板31の天板面の直交方向がY軸Y2、及び長軸方向がZ軸Z2とする。天板座標系の原点は、例えば、
図13に示す位置に予め固定されている。機械座標系は、X軸を回転軸Rbと平行な軸X1、Z軸を回転軸Raと平行な軸Z1、及びY軸をX軸X1とZ軸Z1とに直交する軸Y1とする。機械座標系の原点は、アイソセンタとする。ここでは、説明の便宜上、機械座標系の原点及び天板座標系の原点をそれぞれの装置における固定点としているが、実際には、固定点でなくてもよい。ただし、機械座標系における3軸方向及び天板座標系における3軸方向各々は、所定の位置を基準に決められている必要がある。言い換えると、アーム架台部2を動作させる基準となる3軸方向は、アーム架台部2の所定の位置を基準に固定されており、天板架台部3を動作させる基準となる3軸方向は、天板架台部3の所定の位置を基準に固定されている。
【0082】
図13Aは、C形アーム21を天板31の長軸方向から挿入した状態を模式的に表した図である。
図13Bは、C形アーム21を天板31の短軸方向から挿入した状態を模式的に表した図である。
図13Cは、C形アーム21を天板31の長軸方向と短軸方向とに対して斜めの方向から挿入した状態を模式的に表した図である。
【0083】
図13A、
図13B及び
図13Cは、患者の同一部位を撮影する姿勢である。
図13A、
図13B及び
図13Cは、天板31に対するC形アーム21の挿入位置が異なる状態をそれぞれ模式的に表している。なお、以下の説明において、患者の正面方向がY軸Y2に平行となるように、患者が天板31に載置されているものとする。また、アーム架台部2の制御優先度は、天板架台部3よりも高いものとする。
【0084】
例えば、天板座標系でZ2方向に20mm移動が指示された場合、撮影制御部50及び座標変換部60は、以下の処理を行う。
図13Aにおいて、座標変換部60は、天板座標系で入力された「Z2方向に20mm」の移動指示を機械座標系に変換する。変換後の移動指示は、「Z1方向に20mm」となる。撮影制御部50は、アーム架台部2を機械座標系でZ1方向に20mm移動させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。
図13Bにおいて、座標変換部60は、天板座標系で入力された「Z2方向に20mm」の移動指示を機械座標系に変換する。変換後の移動指示は、「X1方向に20mm」となる。撮影制御部50は、アーム架台部2を機械座標系でX1方向に20mm移動させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する、
図13Cにおいて、座標変換部60は、天板座標系で入力された「Z2方向に20mm」の移動指示を機械座標系に変換する。変換後の移動指示は、「D1方向に20mm」となる。撮影制御部50は、アーム架台部2を機械座標系でD1方向に20mm移動させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。D1方向は、天板座標系のZ2方向に平行な方向であり、機械座標系のX1方向とZ1方向とで表される。つまり、
図13Cの場合、撮影制御部50は、2軸方向(X1方向及びZ1方向)にアーム架台部2を移動させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。アーム制御部501は、撮影制御部50から出力された移動制御信号に従って、アーム架台部2をD1方向に移動させる。
【0085】
同様に、天板座標系でRAO20°の回転が指示された場合、撮影制御部50及び座標変換部60は、以下の処理を行う。
図13Aにおいて、座標変換部60は、天板座標系で入力された「RAO20°」の回転指示を機械座標系に変換する。変換後の回転指示は、「回転軸Ra回りの+X1方向に20°」となる。撮影制御部50は、C形アーム21を機械座標系で回転軸Ra回りの+X1方向に20°回転させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。
図13Bにおいて、座標変換部60は、天板座標系で入力された「RAO20°」の回転指示を機械座標系に変換する。変換後の回転指示は、「回転軸Rb回りの−Z1方向に20°」となる。撮影制御部50は、C形アーム21を機械座標系で回転軸Rb回りの−Z1方向に20°回転させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。
図13Cにおいて、座標変換部60は、天板座標系で入力された「RAO20°」の回転指示を機械座標系に変換する。変換後の回転指示は、「回転軸Ra回りにXX°と回転軸Rb回りにYY°」となる。撮影制御部50は、C形アーム21を機械座標系で回転軸Ra回りにXX°、回転軸Rb回りにYY°回転させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。なお、XX°及びYY°は、天板31に対するC形アーム21の挿入角度等により決定される。アーム制御部501は、撮影制御部50からの移動制御信号に従って、C形アーム21を2軸回りに回転させる。その結果、C形アーム21は、RAO20°回転される。以上のように、第2実施形態に係るX線診断装置を用いることで、天板座標系で入力された移動指示情報に基づいて、アーム架台部2を移動させることができる。
【0086】
図14は、第2実施形態のX線診断装置を用いた場合の一連のワークフローを示した図である。
図13において、アーム架台部2の制御優先度は、天板架台部3よりも高いものとする。
【0087】
(ステップS21)
ユーザにより、セットボタンが押される。セットボタンは、ユーザが天板座標系でアーム架台部2の移動指示を入力することを可能とするためのボタンである。言い換えると、セットボタンが押されたのを契機に、変換条件が特定される。
(ステップS22)
位置特定部43により、アーム架台部2及び天板架台部3の位置関係が特定される。
(ステップS23)
座標変換部60により、変換条件が特定される。
(ステップS24)
ユーザにより、天板座標系で移動指示情報が入力される。
(ステップS25)
座標変換部60により、ステップS24で入力された移動指示情報が、変換条件に従って、機械座標系に変換される。
(ステップS26)
ステップS25で機械座標系に変換された移動指示情報が、撮影制御部50によりアーム制御部501に出力される。
(ステップS27)
アーム制御部501は、撮影制御部50から出力された移動指示信号を受信する。そして、アーム制御部501は、機械座標系に変換された移動指示情報に従って、アーム架台部2を移動させる。
(ステップS28)
ユーザにより、入力部47の撮影スイッチが押された場合、ステップS29に処理が移行される。撮影スイッチが押されない場合は、ステップS30に処理が移行される。撮影スイッチは、X線撮影の契機となるスイッチである。
(ステップS29)
撮影制御部50の制御に従って、X線撮影が行われる。
【0088】
(ステップS30)
X線撮影が終了されるまで、ステップS24からステップS29までの手順が繰り返し実行される。
以上のステップS21乃至ステップS30の手順により、第2実施形態に係るX線診断装置を用いたX線撮影が行われる。なお、
図14の一連のフローにおいて、セットボタンが押されたのを契機に、アーム架台部2の移動操作を天板座標系で入力できる状態になる旨を記載しているが、位置特定部43により、検査室における天板架台部3の位置の変化が検出されたのを契機に、自動的にステップS22及びステップS23の処理が行われてもよい。
【0089】
第2実施形態に係るX線診断装置によれば、以下の効果を得られる。
第2実施形態に係るX線診断装置は、天板座標系で入力された移動指示情報を機械座標系に変換することができる。また、機械座標系、検査室座標系及び天板座標系で入力された移動指示情報を、他の座標系に変換することができる。したがって、第2実施形態に係るX線診断装置は、ユーザが天板座標系で入力した移動指示情報に従って、アーム架台部2を移動させることができる。例えば、
図13A,
図13B及び
図13Cに示すように、天板31に対してC形アーム21が、様々な方向から挿入された場合においても、ユーザは、アーム架台部2の移動を天板座標系で入力することができる。これにより、ユーザは、アーム架台部2と天板架台部3との間の位置関係を気にすることなく、アーム架台部2を天板架台部3に対して移動させることができる。言い換えると、第2実施形態に係るX線診断装置は、C形アーム21を所望する位置に容易に移動させることができる。
【0090】
したがって、少なくとも可搬型のC形アーム21または可搬型の天板31を備える第2実施形態に係るX線診断装置は、撮影位置に対する被検体の位置合わせを容易にできる。
【0091】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。第2実施形態に対する第3実施形態の差分は、第3実施形態に、被検体位置特定部433が追加されている点である。第1実施形態に係るX線診断装置は、アーム架台部2及び天板架台部3の現在の位置関係を、予め決められた相対位置関係にすることができる。第2実施形態に係るX線診断装置は、天板座標系で入力された移動指示に従って、アーム架台部2を移動させることができる。このとき、予め、天板31上に患者が決められた姿勢(例えば、仰向け等)で載置されていることを想定すれば、移動角度が臨床角で入力された場合でも、アーム架台部2を移動させることができる。
【0092】
一方、第3実施形態に係るX線診断装置は、臨床座標系で入力された移動指示に従って、アーム架台部2を移動させることができる。したがって、天板31上に患者を任意の姿勢で載置することができる。以下、第3実施形態に係るX線診断装置を、第1実施形態及び第2実施形態との差分を中心に説明する。
【0093】
図16は、臨床座標系を示した図である。
図16において、臨床座標系の原点O4、患者の正面方向に平行な軸Y4、患者の体軸に平行な軸Z4、及び軸Y4と軸Z4とに直交する軸X4とする。
【0094】
臨床座標系において、患者の正面方向(軸Y4)を基点として、患者の右手側への回転角度は、第1斜位(Right Anterior Oblique view:以下、RAOと呼ぶ。)、左手側への回転角度は、第2斜位(Left Anterior Oblique view:以下、LAOと呼ぶ。)とで表される。また、患者の正面方向(軸Y4)を基点として、患者の頭尾方向の回転角度は、頭の方向(CRAnial:以下、CRAと呼ぶ。)と尾の方向(CAUdal:以下、CAUと呼ぶ。)とで表される。なお、RAO、LAO、CRA、CAU(以下、まとめて臨床角度と呼ぶ。)は、正面方向(軸Y4)を0°とした角度(臨床角度)で表される。
【0095】
位置特定部43は、C形アーム位置特定部431、天板位置特定部432及び被検体位置特定部433を有する。第1実施形態で説明したように、位置特定部43は、アーム架台部2と天板架台部3との間の位置関係を特定することができる。第3実施形態の位置特定部43は、アーム架台部2と患者との間の位置関係を特定することができる。言い換えると、機械座標系と臨床座標系との間の位置関係を特定することができる。この特定方法には、2つの方法がある。
【0096】
第1の方法は、第1実施形態と同じように、検査室座標上のアーム架台部2の位置及び患者の位置を特定することにより、アーム架台部2と患者との間の位置関係を特定する方法である。このとき、被検体位置特定部433は、検査室画像に基づいて、患者の位置及び方向を特定する。ここでの患者の方向とは、患者の姿勢も含まれる。具体的には、被検体位置特定部433は、複数の検査室画像各々から、患者の特徴点の位置を特定する。特徴点は、患者の顔、肩、腕及び足等のどの部位であってもよい。これにより、被検体位置特定部433は、検査室画像における患者の複数の特徴点の位置に基づいて、検査室座標上の患者の位置、及び患者の方向を特定することができる。すでに検査室座標上のアーム架台部2及び天板架台部3の位置が特定されているため、位置特定部43は、アーム架台部2及び患者の間の位置関係を特定することができる。言い換えると、位置特定部43は、検査室座標系、機械座標系、天板座標系、及び臨床座標系の間の位置関係を特定することができる。
【0097】
第2の方法は、天板座標上の患者の位置及び方向を特定することにより、アーム架台部2と患者との間の位置関係を特定する方法である。このとき、被検体位置特定部433は、天板31に敷かれたマットに配置された複数の圧力センサ各々の出力に基づいて、天板31上の患者の位置及び方向を特定する。具体的には、被検体位置特定部433は、複数の圧力センサからの出力に基づいて、マットに触れる患者の位置(頭、肩、ひじ、尻、かかと)を検出する。これにより、被検体位置特定部433は、天板座標上の患者の位置及び方向を特定することができる。言い換えると、被検体位置特定部433は、天板架台部3及び患者の間の位置関係を特定することができる。すでに、アーム架台部2及び天板架台部3の間の位置関係がわかっている。そのため、位置特定部43は、アーム架台部2及び患者の間の位置関係を特定することができる。言い換えると、位置特定部43は、検査室座標系、機械座標系、天板座標系、及び臨床座標系の間の位置関係を特定することができる。
【0098】
図17Aは、臨床座標系と天板座標系との間の位置関係の第1例を示した図である.
図17Aに示すように、患者が天板31に仰向けに、かつ体軸が天板31の長軸に平行になるように載置されていると特定されているものとする。このとき、臨床座標系と天板座標系との間の位置関係は
図17Aに示す通りになる。臨床座標系における正面方向(軸Y4)は天板座標系の軸Y2に平行となる。また、臨床座標系における患者の体軸(軸Z4)は、天板31の長軸(軸Z2)に平行となる。したがって、臨床角度が
図17Aに示すように割り当てられる。
【0099】
図17Bは、臨床座標系と天板座標系との間の位置関係の第2例を示した図である。
図17Bに示すように、患者が天板31に横向きに、かつ体軸が天板31の長軸に平行になるように載置されていると特定されているものとする。このとき、臨床座標系と天板座標系との間の位置関係は
図17Bに示す通りになる。臨床座標系における正面方向(軸Y4)は天板座標系の軸X2に平行となる。また、臨床座標系における患者の体軸(軸Z4)は、天板31の長軸(軸Z2)に平行となる。したがって、臨床角度が
図17Bに示すように割り当てられる。以上、
図17A及び
図17Bに示すように、天板31上の患者の姿勢が変われば、臨床座標系の正面方向及び臨床角の割り当てが変化する。位置特定部43は、患者の姿勢の変化、天板31に患者を載置する向きの変化に応じて、複数種類の座標系の間の位置関係を特定することができる。
【0100】
座標変換部60は、アーム架台部2及び患者の間の位置関係に基づいて、臨床座標系で入力された指示情報を機械座標系に変換する。言い換えると、座標変換部60は、機械座標系と臨床座標系との間の位置関係に基づいて、臨床座標系で入力された指示情報を機械座標系に変換する。ここでの指示情報とは、C形アーム21の回転指示及び平行移動指示等である。座標変換部60は、臨床座標系の座標を機械座標系に変換するための変換条件を特定する。例えば、変換条件は、座標変換行列等である。
【0101】
図18は、第3実施形態に係るX線診断装置の座標変換部60の処理を説明するための説明図である。天板座標系は、天板31の短軸方向がX軸X2、天板31の天板面の直交方向がY軸Y2、及び長軸方向がZ軸Z2とする。天板座標系の原点は、例えば、
図18に示す位置とする。機械座標系は、X軸を回転軸Rbと平行な軸X1、Z軸を回転軸Raと平行な軸Z1、及びY軸をX軸X1とZ軸Z1とに直交する軸Y1とする。機械座標系の原点は、アイソセンタとする。臨床座標系は、患者の正面方向に平行な軸Y4、患者の体軸に平行な軸Z4、及び軸Y4と軸Z4とに直交する軸X4とする。臨床座標系の原点、例えば、
図18に示す位置とする。ここでは、説明の便宜上、機械座標系の原点、天板座標系の原点、及び臨床座標系の原点を
図18に示す位置とする。しかしながら、実際には、臨床座標系の原点は、例えば、被検体の撮影中心位置等の変動点である。また、他の座標系の原点は、任意に設定することもできる。ここでは、機械座標系における3軸方向、天板座標系における3軸方向、及び臨床座標系の3軸方向各々は、それぞれの装置で予め決められている必要がある。言い換えると、アーム架台部2を動作させる基準となる3軸方向は、アーム架台部2の所定の位置を基準に固定されており、天板架台部3を動作させる基準となる3軸方向は、天板架台部3の所定の位置を基準に固定されている。臨床座標系の3軸方向は、
図16で示した通りである。
【0102】
干渉データ発生部45は、アーム架台部2と患者との間の位置関係を表す干渉データを発生する。具体的には、干渉データは、アーム架台部2を構成する複数の機構各々の検査室座標上の位置データ、及び患者の検査室座標上の位置データを含む。また、干渉データは、アーム架台部2を構成する複数の機構各々から、患者までの距離と方向とを表したデータであってもよい。この干渉データは、アーム架台部2の移動範囲を限定するために用いられるデータである。アーム架台部2の移動範囲が限定されることで、アーム架台部2が患者に接触することを防ぐことができる。したがって、干渉データは、アーム架台部2が移動可能な範囲を表したデータであってもよい。
【0103】
撮影制御部50は、座標変換部60により、機械座標系に変換された指示情報を、アーム制御部501に対して出力する。
図18Aは、患者が載置された天板31の短軸方向からC形アーム21を挿入した状態を模式的に表した図である。
図18Bは、
図18Aにおける患者の位置を天板31に対して逆さまにした状態を模式的に表した図である。
図18A及び
図18Bは、患者の同一部位を撮影する姿勢である。しかしながら、
図18Aと
図18Bとの間で、天板31上の患者の向きが異なる。
図18Aにおいて、患者の体軸(Z4)の向きが天板31の長軸(Z2)の向きと一致するように、患者は天板31に載置されている状態である。一方、
図18Bにおいて、患者の体軸(Z4)の向きが天板31の長軸(Z2)の向きと逆になるように、患者は天板31に載置されている状態である。したがって、
図18A及び
図18Bに示すように、例えば、臨床角RAOの向きは互いに逆の方向に割り当てられる。そのため、例えば、臨床座標系でRAO20°の回転が指示された場合、撮影制御部50及び座標変換部60は、以下の処理を行う。
図18Aにおいて、座標変換部60は、臨床座標系で入力された「RAO20°」の回転指示を機械座標系に変換する。変換後の移動指示は、「回転軸Ra回りの+X1方向に20°」となる。撮影制御部50は、C形アーム21を機械座標系で回転軸Ra回りの+X1方向に20°回転させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。一方、
図17Bにおいて、標変換部60は、臨床座標系で入力された「RAO20°」の回転指示を機械座標系に変換する。変換後の移動指示は、「回転軸Ra回りの−X1方向に20°」となる。撮影制御部50は、C形アーム21を機械座標系で回転軸Ra回りの−X1方向に20°回転させるための移動制御信号をアーム制御部501に出力する。
【0104】
以上の撮影制御部50及び座標変換部60の処理により、臨床座標系で入力された移動指示に従って、アーム架台部2が移動される。
【0105】
第3実施形態に係るX線診断装置によれば、以下の効果を得られる。
第3実施形態に係るX線診断装置は、臨床座標系で入力された移動指示情報を機械座標系に変換することができる。また、第3実施形態に係るX線診断装置は、機械座標系、検査室座標系、天板座標系及び臨床座標系で入力された移動指示情報を、他の座標系に変換することができる。したがって、第3実施形態に係るX線診断装置は、ユーザが臨床座標系で入力した移動指示情報に従って、アーム架台部2を移動させることができる。例えば、
図18A及び
図18Bに示すように、患者に対してC形アーム21が、様々な方向から挿入された場合においても、ユーザは、アーム架台部2の移動を臨床座標系で入力することができる。これにより、ユーザは、天板31に対する患者の位置関係を気にすることなく、臨床座標系で移動指示を入力するだけで、アーム架台部2を移動させることができる。言い換えると、第2実施形態に係るX線診断装置は、C形アーム21を所望する位置に容易に移動させることができる。
したがって、少なくとも可搬型のC形アーム21または可搬型の天板31を備える第3実施形態に係るX線診断装置は、撮影位置に対する被検体の位置合わせを容易にできる。
【0106】
(第4実施形態)
第1、第2及び第3実施形態では、可搬型のアーム架台部2と可搬型の天板架台部3を備えるX線診断装置を例に説明した。しかしながら、ここまで説明してきた第1、第2及び第3実施形態は、検査室内の固定位置から所定の範囲内で移動可能な撮影系統と可搬型の天板架台部3を備えるX線診断装置に対しても適用が可能である。そこで、第4実施形態では、検査室内の固定位置から所定の範囲内で移動可能な撮影系統と可搬型の天板架台部3を備えるX線診断装置を例に説明する。
【0107】
図19は、第4実施形態に係るX線診断装置の外観の一例を示す図である。
図19に示すように、撮影系統は保持部により保持される。保持部は、第1保持部7と第2保持部8を有する。第1保持部7は、X線検出部26を天井の固定位置に対して所定の範囲内で移動可能に支持する。第2保持部8は、X線検出部26を床面の固定位置に対して所定の範囲内で移動可能に支持する。
【0108】
第1保持部7は、吊下げ土台77、第1吊下げアーム連結部76、第1吊下げアーム75、第2吊下げアーム連結部74、第2吊下げアーム73、第3吊下げアーム72及び第3吊下げアーム連結部71で構成される。
【0109】
吊下げ土台77は、天井に固定される。第1吊下げアーム連結部76は、吊下げ土台77に対して、第1吊下げアーム75を回転自在に支持する。第1吊下げアーム連結部76は、例えば、Z3軸に平行な回転軸と、第1吊下げアーム75の中心線とZ3軸とに直交する回転軸とを有する。第2吊下げアーム連結部74は、第1吊下げアーム75に対して、第2吊下げアーム73を回転自在に支持する。第2吊下げアーム連結部74は、例えば、Z3軸に平行な回転軸と、第2吊下げアーム73の中心線とZ3軸とに直交する回転軸とを有する。第2吊下げアーム73は、第3吊下げアーム72を
図19中A方向に伸縮自在に支持する。第3吊下げアーム連結部71は、第3吊下げアーム72に対して、X線検出部26を回転自在に支持する。第3吊下げアーム連結部71は、例えば、第3吊下げアーム72の中心線に直交する回転軸を有する。
【0110】
第2保持部8は、床面アーム土台87、第1床面アーム連結部86、第1床面アーム85、第2床面アーム連結部84、第2床面アーム83、第3床面アーム82及び第3床面アーム連結部81で構成される。床面アーム土台87は、床面に固定される。第1床面アーム連結部86は、床面アーム土台87に対して、第1床面アーム85を回転自在に支持する。第1床面アーム連結部86は、例えば、Z3軸に平行な回転軸と、第1床面アーム85の中心線とZ3軸とに直交する回転軸とを有する。第2床面アーム連結部84は、第1床面アーム85に対して、第2床面アーム83を回転自在に支持する。第2床面アーム連結部84は、例えば、Z3軸に平行な回転軸と、第2床面アーム83の中心線とZ3軸とに直交する回転軸とを有する。第2床面アーム83は、第3床面アーム82を
図19中B方向に伸縮自在に支持する。第3床面アーム連結部81は、第3床面アーム82に対して、X線発生部24を回転自在に支持する。第3床面アーム連結部81は、例えば、第3床面アーム82の中心線に直交する回転軸を有する。
【0111】
なお、
図19で説明した複数の連結部各々は、撮影制御部50の制御に従って、図示しない駆動部が駆動されることで、独立に制御される。また、撮影制御部50は、第1保持部7及び第2保持部8のうち、一方に対する移動指示情報に従って、他方を制御してもよい。これにより、X線発生部24とX線検出部26とが対向させることができる。ここで説明した第1保持部7の構成により、X線検出部26は、天井の固定位置に対して所定の範囲内で移動可能に支持される。また、第2保持部8の構成により、X線発生部24は、床面の固定位置に対して所定の範囲内で移動可能に支持される。これらの所定の範囲は、各アームの長さ、各連結部の回転方向及び回転範囲、及び第3吊下げアーム72(第3床面アーム82)の伸縮動作の範囲等に応じて決まる範囲である。
【0112】
なお、
図19では、X線検出部26が第1保持部7により天井の固定位置に対して移動可能に支持され、X線発生部24が第2保持部8により床面の固定位置に対して移動可能に支持される例を説明した。しかしながら、X線発生部24及びX線検出部26がそれぞれ検査室内の固定位置に対して移動可能に支持できるのであれば、その固定位置は、検査室内の天井、床及び壁等のどこであってもよい。例えば、X線検出部26が第1保持部7により検査室の壁の固定位置に対して移動可能に支持され、X線発生部24が第2保持部8により検査室の壁の固定位置に対して移動可能に支持されてもよい。
【0113】
また、X線発生部24及びX線検出部26が共通の保持部により、検査室内の天井、床及び壁等の固定位置に対して移動可能に支持されてもよい。共通の保持部は、例えば、天井吊下げ式のΩ形アームであってもよいし、壁に固定されたC形アームであってもよい。
【0114】
第1実施形態で説明したように、位置特定部43は、カメラで撮影された検査室画像、GPS,及び超音波システムを用いることにより、検査室における天板架台部3の位置を特定することができる。また、同様の方法を用いることで、検査室におけるX線検出部26の位置及びX線発生部24各々の位置を特定することができる。
【0115】
なお、位置特定部43は、撮影制御部50からの出力に基づいて、検査室におけるX線発生部24及びX線検出部26各々の位置を特定できる。具体的には、撮影制御部50は、各駆動部の基準位置からの回転量や基準位置からの移動量等を管理している。したがって、位置特定部43は、撮影制御部50からの出力に基づいて、第1保持部7の固定位置に対するX線検出部26の位置と第2保持部8の固定位置に対するX線発生部24の位置とを特定することができる。そして、位置特定部は、検査室における第1保持部7の固定位置と、固定位置に対するX線検出部26の位置とに基づいて、検査室におけるX線検出部26の位置を特定する。同様に、位置特定部は、検査室における第2保持部8の固定位置と、固定位置に対するX線発生部24の位置とに基づいて、検査室におけるX線発生部24の位置を特定する。
【0116】
以上の処理により、位置特定部43は、検査室におけるX線発生部24、X線検出部26、及び天板架台部3の位置に基づいて、X線発生部24、X線検出部26、及び天板架台部3の間の機械的な位置関係を特定することができる。言い換えると、位置特定部43は、検査室座標系、天板座標系、第1保持部7の座標系(以下、第1機械座標系と呼ぶ。)、及び第2保持部8の座標系(以下、第2機械座標と呼ぶ。)の間の位置関係を特定することができる。
【0117】
これにより、第4実施形態に係るX線診断装置は、第1、第2及び第3実施形態に係るX線診断装置と同様の効果を得られる。つまり、第4実施形態に係るX線診断装置によれば、意図的な位置合わせが行われていない状態のX線発生部24、X線検出部26及び天板架台部3を、ユーザにより押されたプリセットボタンに対応する相対位置になるように自動的に移動させることができる。
【0118】
また、第4実施形態に係るX線診断装置は、X線発生部24、X線検出部26及び天板架台部3がプリセットボタンに対応する相対位置にそれぞれ手動で移動させるための支援画像を表示することができる。支援画像には、ユーザ指示に応じた座標系で表記されたX線発生部24、X線検出部26及び天板架台部3各々の移動情報(移動方向及び移動量)が含まれる。これにより、ユーザは、支援画像を見ながら、天板架台部3を直接手で移動させたり、操作コンソールを用いてX線発生部24及びX線検出部26を移動させたりできる。
【0119】
また、第4実施形態に係るX線診断装置は、天板座標系で入力された移動指示情報を第1機械座標系と第2機械座標系に変換することができる。具体的には、第4実施形態に係るX線診断装置は、天板座標系で入力されたX線発生部24に関する移動指示情報を第2機械座標系に変換し、天板座標系で入力されたX線検出部26に関する移動指示情報を第1機械座標系に変換することができる。これにより、ユーザが天板座標系で入力した移動指示情報に従って、第1保持部7及び第2保持部8各々を移動させることができる。
【0120】
また、第4実施形態に係るX線診断装置は、臨床座標系で入力された移動指示情報を第1機械座標系と第2機械座標系に変換することができる。具体的には、第4実施形態に係るX線診断装置は、臨床座標系で入力されたX線発生部24に関する移動指示情報を第2機械座標系に変換し、臨床座標系で入力されたX線検出部26に関する移動指示情報を第1機械座標系に変換することができる。これにより、ユーザが臨床座標系で入力した移動指示情報に従って、第1保持部7及び第2保持部8各々を移動させることができる。
【0121】
以上まとめると、第4実施形態に係るこれにより、ユーザは、X線発生部24、X線検出部26及び天板架台部3の間の位置合わせを簡単にできる。
【0122】
以上まとめると、第4実施形態に係るX線診断装置は、X線発生部24、X線検出部26、及び天板架台部3の間の機械的な位置関係を特定することができる。これにより、X線発生部24、X線検出部26、及び天板架台部3の間の位置合わせを上述の種々の方法により、簡単に行うことができる。
【0123】
したがって、少なくとも可搬型のC形アーム21または可搬型の天板31を備える第4実施形態に係るX線診断装置は、撮影位置に対する被検体の位置合わせを容易にできる。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態及びその変形例を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や趣旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものある。