(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4本の構成部材を含む部材により正面視で四角形に形成されている四角形フレームを有し、この四角形フレームの内側に配設された制振具が、この制振具から放射状に延出している4本のブレースにより前記四角形フレームに連結され、前記四角形フレームが変形する振動エネルギを、この振動エネルギが前記ブレースを介して伝達される前記制振具の塑性変形によって吸収して振動を抑制する制振装置付き構造物において、
前記4本の構成部材のうち、互いに対向して配置されている2本の構成部材の間に架け渡し部材が架け渡されているとともに、この架け渡し部材の一部が前記正面視で前記制振具と重複した重複箇所となっており、この重複箇所が、前記正面視と直角をなす方向からの直角視で前記制振具との干渉が回避されている干渉回避部となって構成されており、
前記架け渡し部材に、前記制振具が収納される凹部が設けられており、この凹部が前記干渉回避部となっており、
前記架け渡し部材は、長さ方向と直交する断面形状がこの長さ方向に同一断面形状となって連続している架け渡し部材用素材の前記長さ方向の途中箇所に、前記正面視で前記架け渡し部材用素材の幅方向両側の2つの面まで達していて、前記架け渡し部材用素材の表面から奥行き方向の深さを有している切欠部を切欠加工により形成したものとなっており、この切欠部が前記凹部となっており、
前記正面視で前記架け渡し部材の幅方向両側の2つの面のうち、少なくとも1つの面には補強部材が結合されていることを特徴する制振装置付き構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物である建築物のうち、ツーバイフォー工法による建築物については、左右の支柱と、これらの支柱の上下に配設された上枠部材及び下枠部材とが前述の4本の構成部材となっている前記四角形フレームの強度を向上させるために、左右の支柱の間の中央位置に中柱を配置することがある。このような中柱は、互いに上下に対向して配置された2本の構成部材となっている上枠部材と下枠部材の間に架け渡された架け渡し部材となり、この架け渡し部材を四角形フレームの内側に配設すると、制振装置の前記制振具が正面視で架け渡し部材の一部と重複する箇所に配設されるため、制振具と架け渡し部材との干渉をなくすための工夫が求められる。
【0005】
本発明の目的は、制振装置の制振具と、四角形フレームの内側に設けられる架け渡し部材とが干渉することをなくすことができるようになる制振装置付き構造物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制振装置付き構造物は、4本の構成部材を含む部材により正面視で四角形に形成されている四角形フレームを有し、この四角形フレームの内側に配設された制振具が、この制振具から放射状に延出している4本のブレースにより前記四角形フレームに連結され、前記四角形フレームが変形する振動エネルギを、この振動エネルギが前記ブレースを介して伝達される前記制振具の塑性変形によって吸収して振動を抑制する制振装置付き構造物において、前記4本の構成部材のうち、互いに対向して配置されている2本の構成部材の間に架け渡し部材が架け渡されているとともに、この架け渡し部材の一部が前記正面視で前記制振具と重複した重複箇所となっており、この重複箇所が、前記正面視と直角をなす方向からの直角視で前記制振具との干渉が回避されている干渉回避部となっていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る制振装置付き構造物では、架け渡し部材の一部が、正面視では、制振装置の制振具と重複した重複箇所となっているが、この重複箇所は、正面視と直角をなす方向からの直角視では、制振具との干渉が回避されている干渉回避部となっているため、制振装置の制振具と、四角形フレームの内側に設けられた架け渡し部材とが互いに干渉することはなく、これらの制振具と架け渡し部材を、互いに干渉させることなく四角形フレームの内側に配設することができる。
【0008】
なお、上述した正面視と直角をなす方向からの直角視とは、側面視又は平面視又は底面視のことである。
【0009】
以上の本発明において、前記重複箇所を、正面視と直角をなす方向からの直角視では制振具との干渉が回避されている干渉回避部とすることは、各種の態様によって実現することができる。
【0010】
その第1番目の例は、架け渡し部材に、制振具が収納される凹部を設け、この凹部を前記干渉回避部とすることである。
【0011】
また、第2番目の例は、架け渡し部材を制振具の配置箇所で分断し、分断された架け渡し部材の両方の部材を、制振具からずれた位置に配設した連結部材により連結し、架け渡し部材の分断箇所を前記干渉回避部とすることである。
【0012】
また、第1番目の例のように架け渡し部材に、制振具が収納される凹部を設け、この凹部を前記干渉回避部とする場合には、架け渡し部材を、長さ方向と直交する断面形状がこの長さ方向に同一断面形状となって連続している架け渡し部材用素材の長さ方向の途中箇所に、正面視で架け渡し部材用素材の幅方向両側の2つの面まで達していて、架け渡し部材用素材の表面から奥行き方向の深さを有している切欠部を切欠加工により形成されたものとし、この切欠部を前記凹部としてもよい。
【0013】
これによると、長さ方向と直交する断面形状がこの長さ方向に同一断面形状となって連続している架け渡し部材用素材の長さ方向の途中箇所に上記切欠部を切欠加工により形成するという簡単な構成により、架け渡し部材の一部と制振具とが干渉することをなくすことができる。
【0014】
そして、架け渡し部材を、前記干渉回避部となる切欠部を設けたものとすることは、制振具を、正面視で四角形フレームの奥行き方向の寸法の中央位置から、架け渡し部材用素材の前記表面である前記架け渡し部材の表面の側へずれた位置に配置することにより、一層有効に実現することができる。
【0015】
また、上述のように架け渡し部材用素材に切欠部を形成したものを架け渡し部材とする場合には、正面視で架け渡し部材の幅方向両側の2つの面のうち、少なくとも1つの面に補強部材を結合してもよい。
【0016】
これによると、架け渡し部材に切欠部を形成しても、架け渡し部材の強度を補強部材により補強することができる。
【0017】
また、このように正面視で架け渡し部材の幅方向両側の2つの面のうち、少なくとも1つの面に補強部材を結合する場合には、この補強部材を、切欠部が含まれる架け渡し部材の長さ方向の長さ寸法を有するものとし、補強部材には、切欠部と対応する箇所において、この切欠部と同じ形状の窪み部を形成してもよい。
【0018】
これによると、切欠部が形成されている架け渡し部材の箇所の強度を補強部材により補強できるとともに、補強部材には、切欠部と対応する箇所において、この切欠部と同じ形状の窪み部が形成されているため、補強部材と制振具とが互いに干渉することもなくすことができる。
【0019】
また、本発明において、補強部材は、正面視で架け渡し部材の幅方向両側の2つの面のうち、1つの面だけに設けてもよく、2つの面に設けてもよい。
【0020】
補強部材を、正面視で架け渡し部材の幅方向両側の2つの面に設けた場合には、それだけ架け渡し部材の大きな強度を確保できることになる。
【0021】
また、以上の本発明において、四角形フレームの内側に配設される架け渡し部材は、長さ方向が上下方向となっている柱でもよく、長さ方向が左右方向となっている梁部材等でもよい。
【0022】
すわなち、四角形フレームを構成する4本の構成部材が、左右の支柱と、これらの支柱の上下に配設された上枠部材及び下枠部材である場合において、架け渡し部材を、長さ方向が上下方向となっている柱とするときには、この架け渡し部材を、左右の支柱の間の中央位置に配置された中柱としてもよく、また、架け渡し部材を、長さ方向が左右方向となっている梁部材等とするときには、この架け渡し部材を、上枠部材と下枠部材の間の中間に配置された横架部材等としてもよい。
【0023】
また、本発明は、任意の構造物に適用することができ、この構造物は、建築物や地下建造物、橋梁等でもよい。
【0024】
また、建築物は、ツーバイフォー工法による建築物でもよく、パネル工法による建築物でもよく、ユニット工法による建築物でもよく、鉄骨軸組み式の鉄骨建築物でもよく、木軸組み式の木造建築物でもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、四角形フレームの内側に制振装置の制振具と架け渡し部材とを配設しても、これらの制振具と架け渡し部材が互いに干渉することをなくすことができるという効果を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、構造物である建築物の一部の正面視が示されている。この建築物の部分は、4本の構成部材1〜4が主要部材となって形成されている四角形フレーム7の部分である。本実施形態に係る建築物は、ツーバイフォー工法による建築物であるため、
図1で正面視の形状が示されている四角形フレーム7の主要部材は、左右2本の支柱1,2と、これらの支柱1,2の上下に配設された上枠部材3及び下枠部材4であり、また、本実施形態では、正面視で支柱1,2の左右方向外側には、これらの支柱1,2に沿って添え柱5,6が配置されており、それぞれ木製部材である支柱1,2、上枠部材3、下枠部材4及び添え柱5,6により、四角形フレーム7が形成されているとともに、支柱1,2、上枠部材3、下枠部材4及び添え柱5,6のうち、互いに隣接している部材同士は、釘打ち等により結合されている。
【0028】
四角形フレーム7の内側には制振装置10が配設され、この制振装置10は、制振具11と、この制振具11から正面視で放射状に延出している4本のブレース12とを有するものとなっており、それぞれのブレース12は、四角形フレーム7のそれぞれの角部に配設されたブレース用ブラケット13を介して、四角形フレーム7に連結されている。
【0029】
図2には、制振具11の拡大された正面視の形状が示されている。四角形フレーム7の内側中央部に配設されているこの制振具11は、アルミ製又はアルミ合金製又は軟鉄製であり、また、制振具11は、正面視で4個の角部11Bを有する四角形又は略四角形となっている本体部11Aと、この本体部11Aのそれぞれの角部11Bに、本体部11Aからブレース12の延出方向に突出して形成された突出部11Cとからなる。それぞれの突出部11Cは、ブレース12を連結するためのリング状部11Dと、このリング状部11Dを本体部11Aに連結している連結部11Eとからなる。それぞれのリング状部11Dには、孔14が貫通形成され、また、本体部11Aには、四角形又は略四角形の空洞部11Fが貫通形成されている。
【0030】
図3は、
図1のS3−S3線断面図であり、この
図3から分かるように、制振具11の突出部11Cの厚さ寸法は、言い換えると、
図1及び
図2で示されている正面視での突出部Cの奥行き寸法は、本体部11Aよりも小さくなっている。
図1に示されているように、それぞれのブレース12は、パイプ材による棒状のブレース本体15と、このブレース本体15の制振具11側の端部に溶接で結合された連結部材16とを含んで形成されており、
図3に示されているように、板金の折り曲げによりU字状となっているこの連結部材16は制振具11の突出部11Cの外側に嵌合されているとともに、これらの連結部材16に形成されている孔と突出部11Cの孔14とにピン17が挿入されることにより、それぞれのブレース12が制振具11にピン17を中心に回動自在に連結されている。
【0031】
なお、
図3に示されているように、U字状の連結部材16の幅寸法は、言い換えると、
図2で示されている正面視での連結部材16の奥行き寸法は、制振具11の本体部11Aと同じ又は略同じであり、このため、制振具11の突出部11Cの外側に嵌合されたときの連結部材16は、制振具11の本体部11Aと面一(つらいち)又は略面一となっている。
【0032】
図2及び
図3に示されているように、制振具11のそれぞれの突出部11Cには、押しねじ18をねじ込むためのねじ孔が形成されており、この押しねじ18をピン17に接するまでねじ込むことにより、ピン17が連結部材16及び突出部11Cから抜け出ることが防止されている。
【0033】
図5には、ブレース12を四角形フレーム7に連結するための前述したブレース用ブラケット13の正面視の形状が示されており、
図6の(A)と(B)は、板金の折り曲げ等により形成されているこのブラケット13の正面図と底面図である。ブラケット13は、鉛直方向に延びる鉛直部20と、水平方向に延びる水平部21とを有するとともに、鉛直部20の長さ方向の両端部のうち、水平部21側の端部と、水平部21の長さ方向の両端部のうち、鉛直部20側の端部とを斜めに連結している傾斜連結部22を有している。鉛直部20は、底部20Aと、この底部20Aの幅方向両側、言い換えると、
図5及び
図6で示されている正面視では、底部20Aの奥行き方向両側から立ち上がった一対のフランジ部20Bとからなり、また、傾斜連結部22は、鉛直部20の底部20Aと連続している底部22Aと、
図5及び
図6で示されている正面視でこの底部22Aの奥行き方向両側から立ち上がっていて、鉛直部20の一対のフランジ部20Bと連続している一対のフランジ部22Bとからなる。さらに、水平部21は、傾斜連結部22の底部22Aと連続している板状のものとなっている。
【0034】
図6の(B)に示されているように、水平部21には、ブラケット13を四角形フレーム7に止着するための止着具である釘を挿入するための釘孔23が複数形成されており、このような釘孔は鉛直部20の底部20Aにも形成されている。
【0035】
図1に示されているように、ブレース用ブラケット13は四角形フレーム7の4個の角部に配置され、これらのブラケット13の鉛直部20は、
図5から分かるように、四角形フレーム7を構成する主要の構成部材となっている支柱1,2、上枠部材3及び下枠部材4のうち、上下方向に延びる鉛直部材となっている支柱1,2に、鉛直部20の底部20Aに形成されている上記釘孔に挿入された釘24により止着され、また、ブラケット13の水平部21は、水平方向に延びる水平部材となっている上枠部材3、下枠部材4に、水平部21に形成されている上記釘孔23に挿入された釘25により止着される。
【0036】
なお、本実施形態では、
図5から分かるように、ブラケット13の鉛直部20を支柱1,2に止着するための釘24は、支柱1,2を貫通する長さを有しており、この釘24は、前述した添え柱5,6まで達しているため、支柱1,2と添え柱5,6の両方に達する長さを有する釘24により、ブラケット13が支柱1,2と添え柱5,6との両方に止着されるようになっている。このため、四角形フレーム7へのブレース用ブラケット13の取付強度を大きくできるようになっている。
【0037】
図8は、
図1のS8−S8線断面図である。この
図8、及び
図5から分かるように、それぞれのブレース12のブレース本体15の四角形フレーム7側の端部は、ブラケット13の鉛直部20を形成している一対のフランジ部20Bの間に挿入されている。この端部には、ピン26が挿通される孔が形成されている連結部材27が結合されており、ピン26が、一対のフランジ部20Bに形成された孔29A(
図6の(A)を参照)と連結部材27の孔とに挿入されることにより、それぞれのブレース本体15の四角形フレーム7側の端部は、ブラケット13を介して四角形フレーム7にピン26を中心に回動自在に連結されている。
【0038】
なお、
図8に示されているように、連結部材27には、押しねじ28をねじ込むためのねじ孔が形成されているため、この押しねじ28をピン26に当接するまでねじ込むことにより、ピン26が連結部材27及び一対のフランジ部20Bから抜け出ることが防止されている。
【0039】
そして、ブラケット13は、
図5及び
図6で説明したように、鉛直部20と水平部21とを有し、鉛直部20は、四角形フレーム7を構成する主要の構成部材のうち、上下方向に延びる鉛直部材となっている支柱1,2に釘24により止着され、水平部21は、水平方向に延びる水平部材となっている上枠部材3、下枠部材4に釘25により止着されているため、四角形フレーム7に対するブラケット13の取付強度は大きくなっている。
【0040】
以上により、制振装置10の主要部材である制振具11は、この制振具11から放射状に延びる4本のブレース12と、これらのブレース12ごとに設けられたブラケット13を介して四角形フレーム7に連結されていることになり、四角形フレーム7における制振具11の配設位置は、
図1に示されているように、正面視で四角形フレーム7の上下方向及び左右方向の中央位置である。
【0041】
本実施形態では、正面視で四角形フレーム7の上下方向及び左右方向の中央位置に制振具11を配設できるようにするために、それぞれのブレース12は、
図1で示されている長さ調整手段30を備えたものになっている。この長さ調整手段30はターンバックル式のものであるため、ブレース12のパイプ材で形成されているブレース本体15は、長さ調整手段30の箇所で分断された2個の分断部材15A,15Bからなるとともに、長さ調整手段30は、分断部材15A,15Bの内部に刻設されている右ねじ孔と左ねじ孔に螺入された右ねじ軸と左ねじ軸が両端部に設けられている回転部材31を有し、この回転部材31を右回転、左回転させることにより、ブレース本体15は伸縮してブレース12の長さが調整され、これにより、四角形フレーム7におけるそれぞれのブレース用ブラケット13の取付位置等に誤差が存在していても、この誤差を解消して制振具11の配設位置を、正面視で四角形フレーム7の上下方向及び左右方向の中央位置とすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、制振具11をブレース12を介して四角形フレーム7に連結するためのブラケット13は、鉛直部20と水平部21とを斜めに連結する傾斜連結部22を有しているため、
図5に示されているように、このブラケット13を釘24,25により四角形フレーム7に止着しても、四角形フレーム7のそれぞれの角部には、直角三角形の空間部Sが残されることになる。このため、本実施形態によると、この空間部Sに、四角形フレーム7を構成する構成部材となっている支柱1,2、上枠部材3及び下枠部材4のうち、上下方向に延びる鉛直部材となっている支柱1,2と、水平方向に延びる水平部材となっている上枠部材3、下枠部材4とを結合するための四角形フレーム用ブラケット33を配置することができ、この四角形フレーム用ブラケット33により、支柱1,2と上枠部材3、下枠部材4との結合強度を大きくすることができる。
【0043】
すなわち、本実施形態によると、ブレース用ブラケット13は、四角形フレーム用ブラケット33を配置できる形状となっているため、ブレース用ブラケット13を四角形フレーム7のそれぞれの角部に配置しても、これらの角部に、四角形フレーム用ブラケット33をブレース用ブラケット13と干渉させることなく配置することができる。
【0044】
図7には、四角形フレーム用ブラケット33の全体の形状が示されている。板金の折り曲げ品又は鋳造品であるこのブラケット33も、ブレース用ブラケット13と同様に、鉛直方向に延びる鉛直部34と、水平方向に延びる水平部35と、これらの鉛直部34と水平部35を斜めに連結する傾斜連結部36とからなり、傾斜連結部36には、鉛直部34と水平部35まで達する補強用リブ部36Aが設けられている。鉛直部34と水平部35には釘孔37,38が形成されており、鉛直部34の釘孔37に挿入される
図5の釘39により、鉛直部34は支柱1,2に止着され、水平部35の釘孔38に挿入される
図5の釘40により、水平部35は上枠部材3、下枠部材4に止着される。
【0045】
なお、このように釘39,40により四角形フレーム用ブラケット33を四角形フレーム7に止着する作業は、制振装置10のブレース用ブラケット13を前述の釘24,25により四角形フレーム7に止着する前に行われる。
【0046】
また、釘39も、釘24と同様に、支柱1,2を貫通して添え柱5,6まで達する長さのものとしてもよい。
【0047】
さらに、本実施形態では、前述したように、正面視で支柱1,2の左右方向外側に添え柱5,6が配置されていたが、正面視で支柱1,2の左右方向内側に添え柱5,6を配置し、釘24,39を、添え柱5,6を貫通して支柱1,2まで達する長さのものとしてもよい。
【0048】
図8には、ブレース用ブラケット13と四角形フレーム用ブラケット33とを四角形フレーム7に止着した後の状態が示されている。
図1が正面視であるのに対して、
図1のS8−S8線断面図であるこの
図8は、正面視と直角をなす方向からの直角視となっている側面視である。これらのブラケット13,33は、
図8に示されているように、この側面視では互いに重複する箇所を有するものとなっているが、正面視のブレース用ブラケット13は、
図5で説明したように、四角形フレーム7との間で直角三角形の空間部Sが形成される形状となっていて、四角形フレーム用ブラケット33は、この空間部Sに配置されるものとなっているため、正面視では、2個のブラケット13,33は互いに干渉していない。
【0049】
図1で正面視が示されている四角形フレーム7は、前述したようにツーバイフォー工法による建築物の一部であるため、四角形フレーム7を構成する構成部材のうち、上下に互いに対向して配設された2本の部材となっている上枠部材3と下枠部材4との間には、中柱45が設けられている。四角形フレーム7の強度を大きくするために、上枠部材3と下枠部材4の間に架け渡された架け渡し部材となっているこの中柱45は、支柱1,2、上枠部材3、下枠部材4及び添え柱5,6と同じく、木製であり、中柱45は上枠部材3と下枠部材4に釘打ちにより結合されている。四角形フレーム7の内側における中柱45の配置位置は、
図1に示されているように、左右の支柱1,2の間の中央位置であるため、これらの支柱1,2の間隔寸法をL1とした場合、中柱45は、支柱1,2からL1の半分である寸法L2分離れた位置に配置されており、L1が910mmである場合、L2は455mmである。
【0050】
このように中柱45を左右の支柱1,2の間の中央位置に配置すると、制振装置10の制振具11は、前述したように四角形フレーム7の上下方向及び左右方向の中央位置に配置されるため、
図1に示されているように、正面視では、中柱45の一部が制振具11と重複した重複箇所となってしまう。
【0051】
このため、本実施形態の中柱45には、
図3に示されているように、制振具11との干渉を回避するための干渉回避部46が設けられており、この干渉回避部46は、中柱45の上下方向の中央箇所において、制振具11を内部に収納するために上下の長さをもって形成されている凹部47となっている。そして、
図3は、側面視であり、この側面視は、
図1の正面視と直角をなす方向からの直角視である。このため、側面視では、中柱45に凹部47が、この中柱45を制振具11と干渉させないための干渉回避部46として形成されていることになる。
【0052】
本実施形態の凹部47は、中柱45の一部が切欠加工(切除加工)されることにより形成された切欠部48であり、この切欠部48は、
図1及び
図2から分かるように、正面視で中柱45の幅方向両側の2つの面、言い換えると、中柱45の左右両側の側面まで達しており、また、側面視である
図3から分かるように、切欠部48は、正面視で中柱45の表面45Aから奥行き方向の深さを有している。切欠部48が形成される以前の中柱45は、中柱用素材であり、架け渡し部材用素材であるこの中柱用素材は、長さ方向と直交する断面形状がこの長さ方向に同一断面形状となって連続しているものである。この中柱用素材の長さ方向の途中箇所である長さ方向中央箇所に、正面視で中柱用素材の幅方向両側の2つの面まで達していて、中柱用素材の表面から奥行き方向の深さを有する切欠部48を、中柱用素材の一部に切欠加工を行うことによって形成することにより、中柱用素材は中柱45になっているとともに、切欠部48は、制振具11の上下寸法よりも大きい上下の長さを有する凹部47となっている。
【0053】
図1で正面視が示されている四角形フレーム7の奥行き方向の寸法は、
図3で示されているTであり、この
図3から分かるように、制振装置10の構成部材となっている制振具11、ブレース12及びブレース用ブラケット13は、奥行き方向の寸法Tの中央位置Nに配置されておらず、この中央位置Nから、前述の中柱用素材の表面である中柱45の表面45Aの側へずれた位置に配置されている。このため、中柱45を、この中柱45の表面45Aからの深さを有する切欠部48が形成されているものにして、この切欠部48を、内部に制振具11を収納できる凹部47とすることができ、また、中柱に切欠部48を設けるという簡単な構成により、側面視で中柱45を、制振具11と干渉させることなく四角形フレーム7に配設することができる。
【0054】
さらに、このように制振具11、ブレース12及びブレース用ブラケット13を奥行き方向の寸法Tの中央位置Nに配置せず、この中央位置Nから中柱45の表面45Aの側へずれた位置に配置することにより、凹部47の深さを浅くすることができ、これにより、中柱45の強度を確保することができる。
【0055】
図4には、中柱45の長さ方向の中央箇所の斜視図が示されている。正面視で中柱45の幅方向両側の2つの面となっている2つの側面45B,45Cには、すなわち、中柱45の左右両側の2つの側面45B,45Cには、板状の補強部材50が結合されている(
図2も参照)。これらの補強部材50は、木製の中柱45よりも強度が大きいスチール等の金属製であるとともに、それぞれの補強部材50は、切欠部48が含まれる中柱45の長さ方向の長さ寸法を有し、また、それぞれの補強部材50には、切欠部48と対応する箇所において、この切欠部48と同じ形状の窪み部51が形成されている。そして、それぞれの補強部材50は、中柱45に釘等の止着具52により結合されている。
【0056】
このため、本実施形態によると、木製の中柱45に、制振具11を収納するための凹部47としての切欠部48を形成しても、中柱45の強度を補強部材50によっても確保することができ、これにより、四角形フレーム7の強度を、中柱45により所定どおり向上させることができる。
【0057】
図9には、四角形フレーム7に地震等による横荷重が作用した場合における制振装置10の制振具11が示されている。横荷重による四角形フレーム7の変形は、前述したそれぞれのブレース用ブラケット13とそれぞれのブレース12を介して制振具11に伝達され、この制振具11が、
図9に示されているように、正面視で菱形状又は略菱形状に塑性変形することにより、四角形フレーム7の変形による振動エネルギが制振具11で吸収されて四角形フレーム7の振動は抑制される。
【0058】
このように制振具11が正面視で菱形状又は略菱形状に塑性変形しても、中柱45の切欠部48と補強部材50の窪み部51は、制振具11の上下寸法よりも大きい上下の長さを有しているため、塑性変形後の制振具11を、塑性前と同様に、切欠部48及び窪み部51の内部に収納させておくことができ、これにより、制振具11の塑性変形の前後をとおして、制振具11が中柱45及び補強部材50と干渉することをなくすことができる。
【0059】
また、本実施形態では、
図6の(A)に示されているように、四角形フレーム7に制振装置10のブレース12を連結するための前述のブレース用ブラケット13には、前述の孔29Aだけではなく、この孔29Aから上下方向にずれた箇所において、孔29Bも設けられている。これらの孔29A,29Bは、ブラケット13とブレース12とを連結するための連結部材となっている
図5のピン26と共に、ブラケット13とブレース12とを連結する連結部を形成するものとなっており、このため、ブラケット13には、孔29Aと孔29Bにより、ブレース12を連結するための連結箇所が上下方向にずれて2個設けられている。
【0060】
したがって、本実施形態に係るブレース用ブラケット13は、ブレース12との連結箇所を上下方向に変更できるものとなっている。
【0061】
図10は、
図1と比較してブレース12との連結箇所を上下方向に変更した場合のブラケット13が示されている。この
図10で示されている四角形フレーム7’は、
図1の四角形フレーム7の支柱1,2及び添え柱5,6よりも上下長さが長くなっている支柱1’,2’及び添え柱5’,6’が用いられて形成されている。
【0062】
ブラケット13とブレース12とを連結するためのピン26を、ブラケット13に上下方向のずれをもって形成されている2個の孔29A,29Bのうち、孔29Bに挿入することにより、
図1の四角形フレーム7よりも鉛直方向の寸法が大きい四角形フレーム7’に対処できるようになり、このため、ブラケット13は、それぞれの四角形フレーム7,7’に対する兼用性を有している。