特許第6352073号(P6352073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴの特許一覧

特許6352073GaN膜中におけるドーパント種の電気的活性化方法
<>
  • 特許6352073-GaN膜中におけるドーパント種の電気的活性化方法 図000002
  • 特許6352073-GaN膜中におけるドーパント種の電気的活性化方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352073
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】GaN膜中におけるドーパント種の電気的活性化方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20180625BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H01L21/265 601A
   H01L21/02 B
   H01L21/265 601H
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-132136(P2014-132136)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-15467(P2015-15467A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2017年4月6日
(31)【優先権主張番号】1356481
(32)【優先日】2013年7月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレア アグラフィル
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−135700(JP,A)
【文献】 特開2010−192872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaNの膜(3)中のドーパント種を電気的活性化する方法において、下記のステップ、つまり、
支持基板(2)と、ドーパント種を含むGaNの膜(3)とを含む積層体(1)を準備するステップ(a)と、
厚さ2μmを越える遮蔽層(6)を前記GaNの膜(3)の表面に直接接合によって接合し、活性化構造(7)を形成するステップ(b)と、
前記ドーパント種の少なくとも一部を電気的活性化する条件に従って、前記活性化構造(7)に対して熱履歴を加えるステップ(c)と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、
熱履歴を印加する前記ステップ(c)は、1000℃よりも高温にて、数分から数日の期間、少なくとも1つの熱処理を行うことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法において、
熱履歴を印加する前記ステップ(c)は、連続した複数の熱処理を行うことを含み、個々の熱処理は、同一の又は異なる温度において、同一の又は異なる時間、行われることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの方法において、
前記ステップ(a)の前に、前記支持基板(2)上にGaNの膜(3)をエピタキシャル成長させるステップ(i)を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4の方法において、
前記GaNの膜(3)は、エピタキシャル成長の前記ステップ(i)の間にドーピングされることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つの方法において、
前記ステップ(a)の前に、前記GaNの膜(3)に前記ドーパント種を注入することを含むステップ(j)を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6の方法において、
注入の前記ステップ(j)は、n型ドーパント及びp型ドーパントの両方の注入を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つの方法において、
前記支持基板(2)はサファイアからなり且つ前記遮蔽層(6)はサファイア又はアルミナからなるか、又は、前記支持基板(2)はシリコンからなり且つ前記遮蔽層(6)はシリコン又はガラスからなることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つの方法において、
前記遮蔽層(6)は、結晶性材料からなることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの方法において、
前記ステップ(b)の前に、ソース基板(8)にイオン種を注入して脆化面(9)を形成し、その両側を前記遮蔽層(6)と、前記ソース基板(8)の残部(10)とに区切るステップ(k)を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つの方法において、
接合の前記ステップ(b)の前に、前記遮蔽層(6)上に被覆層を堆積することを含むステップ(m)を備え、
前記被覆層は、SiO2、Si3N4、AlN、Al2O3及びアモルファスSiから選ばれた少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10の方法において、
接合の前記ステップ(b)の前に、前記脆化面(9)において前記ソース基板(8)を破断させるための破断熱処理を行うステップ(n)を備え、
前記破断熱処理は、前記熱履歴を与える前記ステップ(c)と同時に行うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つの方法において、
熱履歴を与える前記ステップ(c)の後に、前記遮蔽層(6)を除去し、前記ドーピングされたGaNの膜(3)の上面を露出させるステップ(d)と、
前記ステップ(d)の後に、前記ドーピングされたGaNの膜(3)から、光電子工学又はパワーデバイスの分野における装置を製造するステップ(e)とを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN膜中におけるドーパント種の電気的活性化に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNは、大きなバンドギャップを有する半導体材料である。そのため、GaNは光電子工学(LED)及び高電子移動度トランジスター(HEMT)の分野において有効に用いられている。そのバンドギャップの大きさ(300Kにおいて3.43 eV)、高い臨界電界(3.3×106 V・cm-1)及び高い電子の移動度(3×107 cm・s-1)から、GaNはパワーマイクロエレクトロニクスの分野において優れた材料となる将来性を有する。しかしながら、材料の調製において鍵となる幾つかのステップ、例えば注入によるドーピングは、更に制御されなければならない。実際、GaNは高温における熱処理、例えば注入されたドーパントの電気的活性化に必要な熱処理に敏感な材料である。この熱的な不安定さは、特に、約850℃から、GaNから窒素分子が蒸発して材料が分解することに関係する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、Mg、Zn、Ca(p型ドーパント)又はSi、Ge、O(n型ドーパント)のようなドーパントを活性化するためには、1000℃以上の温度における熱処理を適用する必要がある。そこで、保護層(キャップ層)をGaN層の表面に堆積し、窒素の蒸発を避けることが提案されている。このような保護層は、一般にSiO2、Si3N4又はAlNからなり、次のような方法、つまりPVD (Physical Vapor Deposition;物理的気相成長)、PEVCD (Plasma Enhanced Vapor Chemical Deposition;プラズマ化学気相成長)、噴き付け、パルスレーザー(PLD)、AlNの場合にはエピタキシャル成長等により堆積される。膜厚は数nmから約1μmの範囲である。しかし、これらの保護膜は、完全に満足の行く結果を出しているわけではない。熱処理が一定の温度及び/又は一定の時間を超えると、保護層は劣化するか又はGaN層から剥離する。これは、主にGaN層と堆積した材料との格子パラメータの違い、GaNの分解により発生した窒素、及び低温(典型的には800℃未満)にて堆積された保護層の低い品質による。更に、得られたGaNの表面は、窒素の蒸発に起因して強く粗面化されていることが多い。このような欠点の発生を最小限にするために、活性加熱処理の時間又は温度は減じられ、結果としてドーパントの電気的活性化は限定されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、GaN中のドーパント種を活性化する方法であって、前記の欠陥の少なくとも1つを克服する方法を提供することが求められている。この目的のために、本発明は、以下のGaN膜中のドーパント種の電気的活性化方法を提案し、これは、
支持基板と、ドーパント種を含むGaN膜とを含む積層体を準備するステップ(a)、
厚さ2μmを超える遮蔽層をGaN膜の表面に直接接合によって接合し、活性化構造を形成するステップ(b)、
前記ドーパント種の少なくとも一部を電気的に活性化する条件に従って、前記活性化構造に対して熱履歴を加えるステップ(c)、
を含む。
【0005】
本書面において、「直接接合」とは、介在する接着性材料、バインダー又は接着剤無しに直接接合が行われることを意味する。しかし、本書面において、「直接接合」は、「分子付着による接合」又は「分子結合」を意味する場合があり、これは、直接の接触又は遮蔽層とGaN膜との間接的接触によって生じる。実際に、1つ又はそれ以上の個別の層を挿入することは可能であり、例えば遮蔽層とGaN膜との接合を容易にする層を挿入しても良い。
【0006】
「ドーパント種の少なくとも一部を電気的に活性化する」とは、少なくとも一部のドーパント種がGaN結晶のガリウムサイト(置換サイト)に位置することを意味する。ドーパント種の活性化率は非常に変化が大きく、材料に顕著な影響が見られる。つまり、Mg注入の場合、1%から20%の注入種が活性化されれば十分である(典型的には1%から5%のオーダーである)。シリコンドーパントの場合、注入したシリコンの少なくとも90%を活性化する必要がある。仮に、ドーピングがGaN膜のエピタキシャル成長中に行われた(これに続く注入によってドーピングされたのではない)とすると、ドーパント種の100%を活性化することもできる。
【0007】
このように、本発明の方法により、GaN層の劣化を制限しながら、イオン種の活性化に適合する熱履歴を加えることができる。実際、直接接合により、GaN膜上に層を堆積することにより得られた結合の機械的強度に比べて、遮蔽層とGaN膜との結合の機械的強度は強化されている。本発明の方法により、遮蔽層を剥離させる条件は、到達できるよりも極端である。従って、堆積層を設けて熱履歴を加えることで活性化する場合に比べ、剥離のおそれ無しに活性化のための熱履歴を増加させることができる。
【0008】
加えて、遮蔽層を直接接合することにより、非常に大きい層の厚さを選択することができる。これは、特に格子パラメータの違いが原因となっており、層を堆積する場合には不可能である。遮蔽層が十分に厚く、結晶の品質が高ければ、剥離のおそれは顕著に低減されることが分かっていた。しかし、そのような厚さ(典型的には2μmよりも厚く、更には5μm又は10μmよりも厚い)を堆積により高い結晶の品質で達成するのは困難であった。堆積は、GaNの存在に適合する温度(典型的には800℃前後)にて行わねばならず、そのせいで高い結晶の品質は得られなかった。
【0009】
実施方法の1つによると、熱履歴を加えるステップ(c)は、少なくとも1つの熱処理を1000℃よりも高温、更には1200℃よりも高温にて、数分から数日の期間行うステップを含む。特に、これらの温度よりも更に上げることもでき、例えば1300℃、更には1350℃もシリコン支持基板を用いれば可能であり、サファイア支持基板を用いれば1600℃まで上げても良いが、この場合は非常に短い熱処理時間とする。
【0010】
熱履歴を加える条件は、活性化するドーパント種の性質及びGaN膜内における濃度と、ドープされたGaNの予期される電気的性質とに依存すると理解される。例えばドーパント種がシリコンである場合、活性加熱処理の時間は、1250℃において5分であっても良い。これにより、90%を超えるドーパントが活性化される。ドーパント種がマグネシウムである場合、熱処理は1250℃において48時間であっても良い。これにより、典型的にはドーパントの5%を活性化させる。
【0011】
他の実施方法によると、熱履歴を加えるステップ(c)は、連続した複数の熱処理を行うことを含み、個々の熱処理は、同一又は異なる温度において、同一又は異なる時間、行う。出願人の観測によると、実際、熱処理を複数回行うことにより、加えることのできる熱履歴の総和を増やすことができる。GaNの劣化を起こすことなく、1100℃で4時間を4回繰り返すことができた。
【0012】
望ましくは、本件の方法は、ステップ(a)の前に、支持基板の表面にGaN膜をエピタキシャル成長させるステップ(i)を含む。これにより結晶性のGaN、更には単結晶GaNさえ得られ、欠陥はほとんど無い。この結晶性の品質により、当該膜から形成される電子部品又は装置の性能を最適化することができる。
【0013】
1つの可能性として、ドーピングは、ステップ(i)のエピタキシャル成長の間に行うことができる。
【0014】
典型的には、本発明の方法は、ステップ(a)の前に、GaN膜内のドーパント種を拡散させるステップ(k)を備えている。
【0015】
他の可能性によると、本件方法は、ステップ(a)の前に、GaN膜にドーパントを注入するステップ(j)を備えている。これにより、後に行う装置又は電子部品の製造に望ましい、局在化されたドーピングが可能となる。また、これにより(エピタキシャル成長中のドーピングとは異なり)、その箇所に実現される装置に応じて局在化された場所に対し、逆の型(n及びp)のドーピング領域を容易に実施できる。このために、例えば、異なるマスクを通じて注入を行うこともできる。種(n及びp)は、同時に活性化することもできる。
【0016】
ドーパント種は、n型又はp型であって良く、例えば、順にnドーピングのためのシリコンでも良いし、pドーピングのためのマグネシウム、Ca、Beでも良いし、Mgと、P、Ca、O又はNとの共注入でも良い。注入は、どのような工業的注入装置によって行っても良い。ドーパントの性質により、室温、低温(典型的には-15℃)又は高温(500℃まで)にて行う。注入パラメータ、例えばエネルギー及びドーズ量は、最終的に望む電気的性質に基づいて決められる。エネルギーは、所望の注入深さの関数である。典型的には、Mg又はSiの注入については、エネルギーは200 keVの範囲であり、これによって約400 nmの深さの注入が行われる。注入量は、Mg又はSiについて2×1015at/cm2程度であり、これにより電子部品又は装置を製造するために十分なn又はpの電気特性を得ることができる。
【0017】
他の選択肢によると、注入のステップ(j)は、n型及びp型の両方のドーパントの注入を含む。
【0018】
支持基板の熱膨張係数は、遮蔽層の熱膨張係数に近い値であることが望ましく、これにより、破損のおそれなく該構造に高温(典型的には1200℃又は更に上)の活性化アニールを行うことができる。
【0019】
支持基板の材料は、遮蔽層と同一であることが望ましい。この実施形態によると、構造の活性化時の温度変化による収縮又は伸長の違いから生じる制約の発生を限定できる。つまり、遮蔽層の脆化のおそれは限定される。遮蔽層の接着性は弱められず、従って遮蔽層の剥離のおそれは低減される。
【0020】
1つの実施方法では、支持基板はサファイアからなり、且つ、遮蔽層はサファイア又はアルミナからなる。この場合、ドーパントの活性化のための熱処理を1400℃と1600℃との間で行うことができ、望ましい。
【0021】
他の実施方法では、支持基板はシリコンからなり且つ遮蔽層はシリコン又はガラス(後者については、加えようとしている熱履歴に適応した熱膨張係数を有する場合)からなる。この場合、ドーパントの活性化のための熱処理は、1000℃から1350℃、望ましくは1000℃から1250℃にて行われる。
【0022】
望ましくは、遮蔽層は結晶性材料からなる。結晶性材料は非結晶性材料よりも優れた耐熱性を有するので、熱履歴を加える際に遮蔽層が損傷を受けるおそれは限定される。
【0023】
1つの可能性によると、本件方法は、ステップ(c)の前に、GaN膜上及び/又は遮蔽層上に接合層を堆積するステップを備え、接合層は、SiO2、Si3N4、AlN、Al2O3及びアモルファスSiから選ばれた少なくとも1つの材料を含む。
【0024】
遮蔽層とGaN膜表面との間に挟まれたこの接合層により、直接接合と、高い接合エネルギーを実現しやすくなる。「接合層」は、接着剤又は接着性材料を構成する材料の層を意味するのではなく、直接接合を促進する層を意味すると理解される。
【0025】
望ましくは、接合層はAlN層及びSiO2層を含む。この場合、AlN層は汚染の拡散に対する障壁として有効に働く。実際、ステップ(c)において加える熱履歴の温度において、遮蔽層に含まれる元素、例えばシリコンは、GaN膜に拡散し得る。このような元素は、GaNを汚染して電気的特性を変えることがある。特にp型ドーピングの場合、遮蔽層のシリコン(n型ドーパント)が拡散してくると、GaN膜のp型ドーピングを相殺してしまう。
【0026】
1つの可能性によると、本件方法は、接合のステップ(b)の前に、イオン種をソース基板に注入して脆化面を形成し、その両側を遮蔽層と、ソース基板の残部とに区切るステップ(k)を含む。
【0027】
このステップ(k)により、GaN膜上の厚さ2μmを超える遮蔽層を容易に移動することができる。更に、ソース基板の残部を再利用することができるので、特に結晶化ソース基板を用いる場合に、費用を節約することができる。ステップ(k)におけるソース基板を脆化させるイオン種の注入は遮蔽層を通して行われ、それが次にGaN膜に接合されて活性化構造を形成する。
【0028】
1つの可能性によると、本件方法は、接合のステップ(b)の前に、遮蔽層上に被覆層を堆積するステップ(m)を備え、被覆層は、SiO2、Si3N4、AlN、Al2O3及びアモルファスSiから選ばれた少なくとも1つの材料を含む。
【0029】
この被覆層により、例えば安価な材料によって遮蔽層の厚さを増加させることができ、それにより剛性を増すことができる。被覆層は、典型的には5から10μmの範囲の最大厚さを有する。GaN膜上に直接行われる堆積膜と比較すると、被覆層の堆積が促進されるので(特に、遮蔽層がシリコンからなる場合)、結晶性の良い堆積膜が得られ、より重要な後に続く熱履歴を考慮することができる。
【0030】
望ましくは、被覆層を堆積するステップ(m)は、注入のステップ(k)と接合のステップ(b)との間に行われる。これにより、被覆層により厚くなり且つ2μmよりも厚い遮蔽層を得ることができる。例えば、厚さは5から10μmであり、非常に高価である非常に深い注入条件を用いる必要は無い。
【0031】
他の可能性によると、被覆層はGaN膜に接合されるか、又は、遮蔽層におけるGaN膜に接合された面とは反対側の面に堆積されている。得られた遮蔽層は(特に、遮蔽と保護とにおいて)効率を発揮すると共に、改善された剛性を有する。
【0032】
選択肢によると、被覆層は、接合の前に、遮蔽層とGaN膜との界面のどちらに配置されていても良い。以上の全ての被覆層に関する選択肢は、組み合わせてもよい。
【0033】
望ましくは、本件方法は、注入のステップ(k)及び接合のステップ(b)の後に、脆化面においてソース基板を破断させるための破断熱処理を行うステップ(n)を備える。
【0034】
1つの可能性によると、破断熱処理を行うステップ(n)は、熱履歴を加えるステップ(c)と同時に行う。これにより、同じ炉において適切な温度傾斜を加えることによって破断の熱処理と活性化とを行うことができる。
【0035】
1つの選択肢によると、遮蔽層は自己保持層であって、且つ、望ましくは遮蔽層はバルク基板である。「自己保持層」という言葉は、取り扱えるだけの機械的強度を備え、特に、巻き上がることがない厚さを有することを意味する。この厚さは材料の性質に依存する。一般に、自己保持層は15μmを超える厚さを有し、望ましくは50μmを超える厚さである。
【0036】
「バルク基板」という言葉は、単一材料であり且つ50μmを超える厚さを備える基板を意味し、厚さは、商業的に入手できるほとんどの基板のように、典型的には750μm程度である。バルク基板を本発明にて用いると、商業的に入手可能な基板の利点を活用できる。つまり、安価であり且つ使用前に重要な準備が不要である。
【0037】
従って、この遮蔽層を得る方法によると、2μmを超える厚さを選択することができ、10μm、20μm又は100μm、更にそれ以上の厚さを選択することもできる。これにより、遮蔽層の厚さをドーパント種の活性化熱履歴に適応させることができる。
【0038】
更なる実施方法によると、本件方法は、熱履歴を加えるステップ(c)の後に、遮蔽層を除去してドープされたGaN膜の上面を露出させるステップ(d)を備える。従って、この方法により、特に、パワーマイクロエレクトロニクス及び光電子工学の分野において用いる準備のできたGaN膜を得ることができる。
【0039】
望ましくは、本方法は、ステップ(d)の後に、光電子工学又はパワーデバイスの分野のためにドープされたGaN膜から電子部品又は装置を製造するステップ(e)を備える。
【0040】
本発明の他の面、目的及び利点は、以下の2つの実施形態の説明を読めばより明らかになるだろう。説明は非限定的な例示であり、また、対応する図を参照している。読みやすさを高めるために、図は必ずしも寸法通りには描かれていない。図において破線は脆化面を示すために用いられている。以下の説明では、単純化のために、異なる実施形態における同一、類似又は等価な構成要素は同じ符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるドーパント種の活性化方法のステップを示す。
図2図2は、本発明の第2の実施形態によるドーパント種の活性化方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1のAは、支持基板2及びGaN膜3を含む積層体1の準備(ステップ(a))からなる第1のステップを示す。支持基板2はサファイアからなるバルク基板であって、その上に単結晶GaNの膜3がエピタキシャル成長により厚さ約1μmに堆積される(ステップ(i))。GaNのエピタキシャル成長の前に、例えばAlGaN(厚さは例えば1μm)であるバッファ層(通常、バッファ層と呼ばれる)をエピタキシャル成長させて、格子パラメータの相違を取り扱い易くすることにより、後に形成される電気素子又は装置の絶縁破壊電圧を大きくすることができる。その後、ドーパント種の注入に進む前に、表面を調整するステップを随意で行う。例えば、60℃のNH4OH/H2O溶液若しくはHFの希薄溶液による洗浄、又は、GaN表面の脱酸素化ステップである。その後、保護層4をGaN膜3上に堆積し、ドーパント種の注入により生じる結晶欠陥の発生を限定すると共に、特に、ドーパントの無作為な拡散を促進することによりイオン注入時におけるチャネリング効果を限定する。この保護層4は、典型的にはシリコン酸化物、シリコン窒化物、AlN、アルミナ又はアモルファスシリコンからなる。
【0043】
図1のBは、ドーパント種、例えばMgのGaN膜3に対するドーズ量2×1015at/cm2の注入を含むステップを示す(ステップ(j))。この注入は、どのような種類の注入装置でも実行でき、特に、NV8200型の工業的な注入装置により実行できる。
【0044】
無論、最終的に期待されるGaNの電気的性質によって注入条件は異なる。
【0045】
表面の洗浄と、随意でCMP(chemical-mechanical polishing;化学的機械研磨)とのステップを接合層5、例えばSiO2層又はシリコン窒化物層の堆積の前に行うことが望ましい。我々はまた、随意でプラズマ処理工程を行い、露出表面を活性化すると共に接合を促進した。
【0046】
図1のCに示す通り、サファイア基板をGaN膜3と接触させて、膜3上及びサファイア基板上に堆積された接合層5を介して直接接合させる。サファイア基板は結晶性で且つ厚く、遮蔽層6を構成して、活性化熱履歴を与える際に効果的にGaN膜3を保護する。直接接合が行われると、ドーパント種Mgの電気的活性化を行う熱処理(ステップ(c))に耐えられる活性化構造7が得られる。
【0047】
ここで、サファイア基板は、先の準備、例えばステップ(b)の前に行う典型的にはRCA型の処理及び表面のプラズマ活性化処理を行えることに注意するべきである。
【0048】
サポート基板2の熱膨張係数は、同じ材料からなる遮蔽層6のそれと同一である。従って、印加される温度が変化した際の膨張の違いに起因して、層の剥離により活性化構造7が損傷する危険、又は、異なる層の材料中に欠陥が生じる危険は、軽減される。
【0049】
図1のDは、活性化構造7に約1400℃で30分の熱履歴を印加して、注入されたマグネシウムの1から10%程度を電気的活性化させるステップ(c)を示す。
【0050】
p型にドープされたGaN膜3の表面は、その後、装置を製造するためにサファイア遮蔽層6から外される(ステップ(d))。その後、サファイア基板6は調整(rectification)ステップにより部分的に、特に厚さが約20μmに達するまで除去される(図1のE)。その後、残りのサファイアの選択的ウェットエッチングが行われる。例えば、TMAH(TetraMethylAmmonium Hydroxide;水酸化テトラメチルアンモニウム)を用い、SiO2である接合層5においてエッチングを停止できるウェットエッチングである。その後、HFの希薄溶液によるウェットエッチングを行い、SiO2である接合層5の全体を除去して、p型にドープされたGaNの表面を露出させる(図1のG)。他の技術、特に、リフトオフ、ブレードの挿入又はレーザーリフトオフを用いることもできる。
【0051】
図示しない選択肢によると、遮蔽層6に接触させる前にGaN膜3に堆積された接合層5は、最終的には起こる汚染種の拡散を避けるための例えばAlNである拡散防止層を含む。
【0052】
図2のHからNは、熱処理の適用方法に関する第2の実施形態を示す。図2のHは、シリコン支持基板2と、ドーパント種であるシリコンが注入されるGaN膜3とを含む積層体1を示す。SiO2からなる接合層5が、遮蔽層6と接合するために膜3の表面上に堆積される。
【0053】
図2のIは、ステップ(k)を示す。ここでは、200keVのエネルギーで且つ1016から1017at/cm2のドーズ量にて、水素等のイオン種をシリコンソース基板8に注入する。これにより、脆化面9を形成して、その両側を約2μmの遮蔽層6とシリコンソース基板8の残部10とに区切る。
【0054】
通常通り、様々な表面処理ステップ及び保護層4の形成が、注入に進む前に行われる。注入されたイオン種は、遮蔽層6を越えて、ソース基板8における特に注入エネルギーによって決まる深さに脆化面9を形成することが理解される。
【0055】
例えばSiO2である接合層5は、GaN膜3と直接接合させるステップ(b)(図2のJ)を行う前に、脆化されたソース基板8上に堆積される。
【0056】
その後、破断熱処理を400℃から500℃の温度範囲にて行い、遮蔽層6から残部10を脱離させる(図2のK、ステップ(n))。
【0057】
得られた活性化構造7に対し、Si中のドーパントの電気的活性化のために、約1200℃にて少なくとも30分の熱履歴が印加される(図2のL、ステップ(c))。これにより、ドーパント種の70%、更には100%の電気的活性化が実現する。
【0058】
最後に、シリコンからなる遮蔽層6が、調整ステップにより部分的に、特に厚さが20μmに達するまで除去される。その後、残りのシリコンの選択的ウェットエッチングが行われる。例えば、TMAH(TetraMethylAmmonium Hydroxide;水酸化テトラメチルアンモニウム)を用い、SiO2である接合層5においてエッチングを停止できるウェットエッチングである(図2のM、ステップ(d))。その後、HFの希薄溶液によるウェットエッチングを行い、SiO2である接合層5の全体を除去して、p型にドープされたGaNの表面を露出させる(図2のN)。
【0059】
実施形態の選択肢によると、図示はしていないが、接合のステップ(b)の前に遮蔽層6上に被覆層を堆積し、遮蔽層6の厚さ及び硬さを増加させる。
【0060】
以上のように、本発明は、GaN膜3中のドーパント種を電気的活性化させる方法であって、効果的で且つ得られるGaN膜3の表面における損傷を限定できる方法を提供することにより、従来技術に対して決定的な進歩をもたらす。この膜3は、その後電気素子、光電気工学装置又は性能の向上したパワーデバイスの製造に有効に用いられる。
【0061】
言うまでも無く、本発明は上記に例として説明した実施形態には限定されず、あらゆる技術的な等価物及び説明した手段の代替手段、更にはそれらの組み合わせを含む。
図1
図2