(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352078
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】監視装置
(51)【国際特許分類】
B65H 75/38 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
B65H75/38 J
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-136470(P2014-136470)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-13893(P2016-13893A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】寺田 一貴
【審査官】
西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−166409(JP,A)
【文献】
特開2007−152500(JP,A)
【文献】
特開昭62−260512(JP,A)
【文献】
特開2011−126650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/34 − 75/50
B25J 1/00 − 21/02
H02G 11/00 − 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外側ケースと、該外側ケースよりも径の小さな円筒状の内側ケースと、を備え、前記内側ケースを前記外側ケースの内側に同軸的に配置し、前記内側ケースと前記外側ケースとの間に生じる空間を、前記内側ケースの周囲にケーブルが水平方向に重ならず螺旋状に捲回された状態で収納可能なケーブル収納部とするケーブル収納装置であって、
前記内側ケースおよび前記外側ケースの軸方向の長さは前記ケーブルの高さの2倍以上であり、前記内側ケースの外周面または前記外側ケースの内周面には、前記ケーブルの高さよりも大きな間隔をおいて、複数の扇形の仕切り部材が前記内側ケースの軸と直交する面上に形成され、前記複数の扇形の仕切り部材で仕切られた複数の空間のうちいずれか一つは、前記ケーブルの高さの2倍よりも高く設定されているケーブル収納装置と、
駆動手段を備え、前記内側ケースを前記外側ケースに対して所定の角度の範囲内で相対的に往復回動させる搖動機構と、
前記内側ケースまたは前記外側ケースのうち回動される側のケースの一部に装着されたヘッド部と、
を備え、
前記ヘッド部にはセンサが搭載され、前記ケーブルの一方の端部は前記ヘッド部に接続され、前記ケーブルの他方の端部は固定側に設けられている制御部に接続されていることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記複数の扇形の仕切り部材のうち最も端に位置する仕切り部材の角度は180度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記複数の扇形の仕切り部材のうち前記最も端に位置する仕切り部材以外の仕切り部材の角度は180度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記最も端に位置する仕切り部材の角度は240度〜300度であることを特徴とする請求項2または3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記複数の扇形の仕切り部材は2つであり、一方の扇形の仕切り部材の角度は180度よりも大きく、他方の扇形の仕切り部材の角度は180度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項6】
前記最も端に位置する仕切り部材以外の仕切り部材の角度は80度〜100度であることを特徴とする請求項5に記載の監視装置。
【請求項7】
前記一方の扇形の仕切り部材と前記他方の扇形の仕切り部材は、ケーブル巻取り方向に対して後端側となる端が一致した状態で互いに重なり合う位置に形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の監視装置。
【請求項8】
前記2つの扇形の仕切り部材で仕切られた空間は前記ケーブルの1段分の高さを有し、前記2つの扇形の仕切り部材で仕切られた空間以外の空間の高さは前記ケーブルの2段分の高さを有することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の監視装置。
【請求項9】
前記ケーブル収納部に前記ケーブルがn段n巻き(nは2以上の整数)にした状態で収納できるように、前記内側ケースおよび前記外側ケースの軸方向の長さが設定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の監視装置。
【請求項10】
前記内側ケースの揺動範囲は360度以内であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の監視装置。
【請求項11】
前記複数の扇形の仕切り部材のうち少なくとも1つの仕切り部材は、その外縁部の少なくとも一部に起立壁が形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の監視装置。
【請求項12】
前記内側ケースおよび前記外側ケースにはそれぞれ前記ケーブルの端部を前記ケーブル収納部から外部へ引き出すための挿通孔が形成され、該挿通孔に挿通された前記ケーブルは、挿通部において前記内側ケースと前記外側ケースにそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブルにゆとりを持たせた状態で収納するケーブル収納装置および監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災感知器には、炎感知器のような比較的指向性の高い感知器がある。このような感知器は、回転可能な基台に搭載して基台をモータで揺動させることで炎の発生している位置を検出できるように構成する場合がある。
ところで、上記のように感知器を搭載した基台を揺動させる機構を備えた装置においては、基台上のセンサ等の電子部品や電気機器に対して給電を行なったり検出信号を伝送したりするためにケーブルが接続される。
【0003】
一方、検出信号を受ける装置は移動しない部位に設置されることが多い。そのため、揺動する基台と固定側の装置との間を電気的に接続するケーブルは、引き出されたり戻されたりする動作を繰り返す、つまり繰返し変形を起こすこととなる。その結果、ケーブルの被覆が損傷したり心線が金属疲労を起こしてケーブルの寿命が低下し、最悪の場合には短絡や断線を招きおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−212077号公報
【特許文献2】特開2012−201468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来より、回転する基台に搭載されている電子部品や電気機器に接続されるコードを収納する装置として、回転可能なホビンやドラムの周面に螺旋状の溝を形成することでコードを整然と巻き取ったり送り出したりすることができるようにした装置が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1や特許文献2に記載されている巻き取り装置によれば、コードを整然と巻き取ることができるため、コードが損傷したり断線を起こしたりするのを防止することができるものの、ホビンやドラムの周面の溝が螺旋状であるため、溝を形成する複雑な加工が必要であり、コストアップを招くという課題がある。
【0006】
なお、例えば
図8(A)に示すように、センサ等を搭載し揺動する基台44と固定側の基台45に挟まれた回転軸13の周囲の空間をケーブル収納空間として、緩く撓ませた状態でケーブル17を収納する構成や、
図8(B)に示すように回転軸13の周囲を1回転させた状態でケーブル17を収納することにより、電気的接続を保ったまま基台44を揺動可能にする構成も考えられる。
図8の構成では、回定側の基台45は円筒状の支持軸12の上端に固定され、回転軸13は支持軸12に嵌合され、回転軸13の上端に揺動側の基台44が固定される。
しかしながら、
図8(A)に示すような構成の場合には、ケーブルが曲げと伸びを繰り返すため、ケーブルの被覆が損傷したり心線が金属疲労を起こしたりして、短絡や断線を招くおそれがある。また、
図8(B)に示すような構成の場合、基台44を360度のような広い範囲で円滑に揺動できるようにするには、収納空間の径を大きくする必要があり、装置が大型化してしまうという欠点がある。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、螺旋状に収納したケーブルを緩めたり巻き取ったりする動作を繰返し行なっても、ケーブルを再現性良く整然と収納した状態を維持することができ、それによりケーブルの被覆が損傷したり心線が金属疲労を起こすのを回避することができるとともに、複雑な加工が不要でコストアップを回避することができるケーブル収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明
に係る監視装置は、
円筒状の外側ケースと、該外側ケースよりも径の小さな円筒状の内側ケースと、を備え、前記内側ケースを前記外側ケースの内側に同軸的に配置し、前記内側ケースと前記外側ケースとの間に生じる空間を、前記内側ケースの周囲にケーブルが水平方向に重ならず螺旋状に捲回された状態で収納可能なケーブル収納部とするケーブル収納装置であって、
前記内側ケースおよび前記外側ケースの軸方向の長さは前記ケーブルの高さの2倍以上であり、前記内側ケースの外周面または前記外側ケースの内周面には、前記ケーブルの高さよりも大きな間隔をおいて、複数の扇形の仕切り部材が前記内側ケースの軸と直交する面上に形成され
、前記複数の扇形の仕切り部材で仕切られた複数の空間のうちいずれか一つは、前記ケーブルの高さの2倍よりも高く設定されているケーブル収納装置と、
駆動手段を備え、前記内側ケースを前記外側ケースに対して所定の角度の範囲内で相対的に往復回動させる搖動機構と、
前記内側ケースまたは前記外側ケースのうち回動される側のケースの一部に装着されたヘッド部と、
を備え、
前記ヘッド部にはセンサが搭載され、前記ケーブルの一方の端部は前記ヘッド部に接続され、前記ケーブルの他方の端部は固定側に設けられている制御部に接続されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ケーブルを螺旋状に巻いた状態で収納することができるため装置の小型化を図ることができるとともに、複数の扇形の仕切り部材が設けられているため、ケーブルを整然と巻き締めたり、緩めたりすることができる。また、扇形の仕切り部材が内側ケースの軸と直交する面上に形成されるため、仕切り部材を螺旋に沿って設ける場合に比べて、設計および作成が容易となり、コストダウンを図ることができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、センサ等が搭載されたヘッド部を揺動させる際にケーブルを整然と巻き締めたり、緩めたりすることができるコンパクトで長期間故障することなく使用できる監視装置を実現することができる。
【0010】
ここで
、前記複数の扇形の仕切り部材のうち最も端に位置する仕切り部材の角度は180度よりも大きくする。
さらに、前記複数の扇形の仕切り部材のうち前記最も端に位置する仕切り部材以外の仕切り部材の角度は180度よりも小さくする。
【0011】
上記のような構成によれば、ケーブル収納部に、少ない数かつ狭い角度範囲の扇形の仕切り部材を設けるだけで良いため、使用する材料の量を少なくすることができ、軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0012】
さらに、前記最も端に位置する仕切り部材の角度は240度〜300度とする。
また、前記最も端に位置する仕切り部材以外の仕切り部材の角度は80度〜100度とする。
さらに、前記複数の扇形の仕切り部材は2つであり、一方の扇形の仕切り部材の角度は180度よりも大きく、他方の扇形の仕切り部材の角度は180度よりも小さくなるように構成しても良い。
【0013】
さらに、前記一方の扇形の仕切り部材と前記他方の扇形の仕切り部材は、ケーブル巻取り方向に対して後端側となる端が一致した状態で互いに重なり合う位置に形成されているように構成する。
かかる構成によれば、比較的小さな扇形の仕切り部材でケーブルを整然と巻き締めたり緩めたりすることができる。
また、前記2つの扇形の仕切り部材で仕切られた空間は前記ケーブルの1段分の高さを有し、前記2つの扇形の仕切り部材で仕切られた空間以外の空間の高さは前記ケーブルの2段分の高さを有するように構成すると良い。これにより、内側ケースを360度以内で揺動させる場合に、ケーブルを極めて円滑に巻き締めたり緩めたりすることができる。
【0014】
さらに、前記ケーブル
収納部に前記ケーブルがn段n巻き(nは2以上の整数)にした状態で収納できるように、前記内側ケースおよび前記外側ケースの軸方向の長さが設定されているように構成しても良い。
ここで、前記内側ケースの揺動範囲は360度以内とする。
このような構成によれば、内側ケースの揺動範囲は360度以内であるため、ケーブルに対して大きな曲げ応力が作用しないようにすることでき、これによってケーブルの損傷、破断を防止して装置の長寿命化を図ることができる。
なお、揺動範囲を360度以上とする場合には、前記n段n巻きのnを適切に大きな値に設定する事により、前記の揺動範囲を360度以内としたときと同様にケーブルの損傷、破断を防止して装置の長寿命化を図ることができる。
【0015】
さらに、前記複数の扇形の仕切り部材のうち少なくとも1つの仕切り部材は、その外縁部の少なくとも一部に起立壁が形成されているように構成する。
このような構成によれば、ケーブルが緩む方向へ回転軸が回動された際に、一部の巻線部分の径のみが大きくなってケーブルの外側面がアウターケースの内周面に接触した状態となり、その摩擦力で回転軸が回動しにくくなったりケーブルが損傷したりするのを防止することができる。
【0016】
請求項12に記載の発明は、上述したような構成を有する
監視装置において、
前記内側ケースおよび前記外側ケースにはそれぞれ前記ケーブルの端部を前記
ケーブル収納部から外部へ引き出すための挿通孔が形成され、該挿通孔に挿通された前記ケーブルは、挿通部において前記内側ケースと前記外側ケースにそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明によれば、ケーブルを巻き締めたり緩めたりする際に、ケーブル挿通部において内側ケースや外側ケースとケーブルとが擦れて、ケーブルが損傷したり破断したりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケーブルを整然と巻き取ることができ、それにより損傷を回避することができるとともに、複雑な加工が不要でコストアップを回避することができるケーブル収納装置を
備えた監視装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るケーブル収納装置を使用した監視装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】ケーブル収納装置の詳細な構造を示す一部断面側面図である。
【
図3】
図2のケーブル収納装置を構成するインナーケースの具体例を示す斜視図である。
【
図4】
図2のケーブル収納装置の組み立て前の状態を示す斜視図である。
【
図5】ケーブル収納装置におけるインナーケースの動作を示す平面図である。
【
図6】ケーブル収納装置におけるケーブルの収納状態を示す側面図である。
【
図7】
図2のケーブル収納装置を構成するインナーケースの他の例を示す斜視図である。
【
図8】従来のケーブル収納装置の構成例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係るケーブル収納装置を、一例として炎感知器のようなセンサを搭載した基台を揺動動作させながら監視を行う監視装置に適用した場合の実施形態を示す。なお、本明細書においては、「ケーブル」には、給電を行うために使用される電源コードの他、フラットケーブルや同軸ケーブルのような心線とそれを覆う被覆とからなる断面が丸形のものが含まれるものとする。
【0023】
この実施形態の監視装置10は、建物の壁面や設備の筐体などに固定される取付けベース11と、該取付けベース11に固定された円筒状の支持軸12と、該支持軸12の内側に一部が挿入された円筒状の回転軸13と、支持軸12の外周面に装着されたケーブル収納装置14と、回転軸13の先端部に装着されたセンサ等の電子部品を有するヘッド部15と、取付けベース11に固定された制御部16などから構成されている。
上記ケーブル収納装置14内には、ヘッド部15と制御部16とを電気的に接続するケーブル17が螺旋状に巻かれた状態で収納されており、ケーブル17の一方の端部17aが制御部16に接続され、他方の端部17bがヘッド部15に接続されている。
【0024】
本実施形態の監視装置10においては、図示しないが、例えば回転軸13の内周面に設けられた内歯車と、支持軸12の内側に配置されたモータおよびその回転軸に固着され上記内歯車に直接あるいは他の歯車を介して間接的に噛み合わされた外歯車によって、ヘッド部15を揺動させる揺動機構が構成される。ヘッド部15にモータを搭載するとともに、回転軸13と支持軸12との間に該モータの回転力を伝える歯車伝達機構を構成するようにしてもよい。また、ヘッド部15には、回転軸13を回動させるモータとは別個にセンサの向きを変えるモータを搭載しても良い。
本実施形態のケーブル収納装置14は、支持軸12および回転軸13が中空であるので、軸の内側に消火用の水を供給するパイプを配設することが可能であり、ヘッド部15に放水用のノズルを設け、回転軸13を回動させて所望の方向に放水させるように構成することができる。
【0025】
図2には、ケーブル収納装置14の詳細が示されている。
図2に示すように、ケーブル収納装置14は、一方の面(図では上面)が開口した円筒状をなすアウターケース41Aと、該アウターケース41Aよりもひとまわり径の小さな円筒状をなすインナーケース41Bとを有し、インナーケース41bをアウターケース41Aの内側に位置させることでインナーケース41Bとアウターケース41Aとの間にケーブル収納空間が形成されるように構成されている。
【0026】
そして、アウターケース41Aの下面を閉塞する円板状壁体(以下、底板と称する)には、支持軸12を挿通可能な開口が形成され、該開口の一部に沿って支持軸12と平行をなす取付け片41aが設けられ、アウターケース41Aは該取付け片41aにてビス等により支持軸12の外周面に固定されている。一方、インナーケース41Bの上面を閉塞する円板状壁体(以下、上板と称する)には、回転軸13を挿通可能な開口が形成され、該開口の一部に沿って回転軸13と平行をなす取付け片41bが設けられ、インナーケース41Bは該取付け片41bにてビス等により回転軸13の外周面に固定されている。なお、取付け片41aと取付け片41bは、それぞれ支持軸12と回転軸13を挟んで対向する部位に2個設けられている。
【0027】
さらに、アウターケース41Aの底板にはケーブル17を挿通するための挿通孔が形成されており、該挿通孔にはグロメット18Aが係合され、該グロメット18Aの内側をケーブル17が貫通し所定量だけ突出した状態で接着剤やクランプ機構等で固定することで、ケーブル17がアウターケース41Aの底板に固定されている。一方、インナーケース41Bの上板にも同様にケーブル17を挿通するための挿通孔が形成されており、該挿通孔にグロメット18Bが係合され、該グロメット18Bの内側をケーブル17が貫通し所定量だけ突出した状態で接着剤やクランプ機構等で固定することで、ケーブル17がインナーケース41Bの上板に固定されている。
【0028】
また、特に限定されるものではないが、本実施例では、上記収納空間内にケーブル17を螺旋状にしてインナーケース41Bの周囲にほぼ4段4巻きに捲回した状態で収納できるようにアウターケース41aとインナーケース41Bの軸方向長さが設定されている。なお、ここで、4段4巻きとは、インナーケース41Bの外周面にケーブル17の内側面が接触するように捲回した初期状態の場合であり、この状態から、回転軸13をケーブル17が緩む方向へ360度回動させると、3段3巻きの状態になる。
そして、上記ケーブル17の螺旋状態を維持させるために、インナーケース41Bの外周面には、2枚の仕切り板42A,42Bが設けられている。
なお、本実施例で使用を想定しているケーブル17は、6本のコードを束ねた3Pコードと、2本のコードを束ねた1Pコードとを、ペット樹脂等の合成樹脂製チューブで被覆した構造を有し断面形状が長円形をなすケーブルである。
【0029】
次に、
図3を用いて、インナーケース41Bの外周面に設けられる仕切り板42A,42Bの詳細について説明する。
図3に示すように、インナーケース41Bは円筒を縦に割った2個の半円筒状部品41B1,41B2の端面同士を突き合わせてビスや溶接等により結合することで形成されるように構成されている。
そして、2個の半円筒状部品41B1,41B2のうち、
図3(A)に示す半円筒状部品41B1には180度の扇形をなす鍔部42a1が端部から距離L1の位置に形成されている。また、
図3(B)に示す半円筒状部品41B2には90度の扇形をなす鍔部42a2と42bが端部から距離L1とL2の位置に形成されている。
【0030】
ここで、距離L1はケーブル17の高さよりも若干大きな値とされ、距離L2はL1の約2倍の値とされている。なお、鍔部42a1と42a2,42bは、それぞれ半円筒状部品41B1,41B2の軸が沿直方向を向くような姿勢にした際に水平となるように形成されている。
また、90度の扇形をなす鍔部42a2と42bが、上方から見たときに重なる位置になるように形成されている。
【0031】
上記のように、鍔部42a1を有する半円筒状部品41B1と鍔部42a2,42bを有する半円筒状部品41B2とを結合すると、
図3(C)に示すように、270度の扇形をなす仕切り板42Aと、90度の扇形をなす仕切り板42Bとを有するインナーケース41Bが構成されるようになっている。
そして、上記のように構成されたインナーケース41Bが、
図4に示すようにアウターケース41Aの内側に収納される。このとき、ケーブル17が挿通されたグロメット18Bが、仕切り板42Aの鍔部42a2と42bが重ならない側の端部近傍の上方に来るように組み付けが行われる。円筒部に捲回されるケーブル17は、上側の仕切り板42Aに生じる90度の扇形をなす開口部を通って、仕切り板42Aの上段から下段へ向うように巻かれることとなる。
【0032】
なお、
図4では、インナーケース41Bの上板44とインナーケース41Bの円筒状の本体部が分離されているが、インナーケース41Bの上板44と円筒状本体部とは一体に形成されている。
また、
図1の実施例では、回転軸13の端部にセンサ等を有するヘッド部15を設けたものを示しているが、
図4では、インナーケース41Bの上板44に、センサ等を有するヘッド部15が固定されているものを示した。従って、
図1では、回転軸13がセンサ等の電子部品を搭載する基台として機能し、
図4ではインナーケース41Bの上板44がセンサ等の電子部品を搭載する基台として機能する。
【0033】
次に、上記のように構成されたケーブル収納装置14の動作について説明する。
なお、以下の説明では、インナーケース41Bの周囲に、ケーブル17が、上方から見て時計回り方向に巻かれているものとして説明するが、ケーブル17の巻方向は逆すなわち反時計回りであっても良い。
本実施例のケーブル収納装置14は、約360度の範囲でインナーケース41Bを円滑に揺動させることができるように構成されている。
【0034】
具体的には、
図5(A)に示すようにケーブル17の内側の側面がインナーケース41Bの外周面に接触した状態(初期状態)から、回転軸13を時計回りに360度回転させると、インナーケース41Bの周囲のケーブル17が巻き取られてその径が小さくなり、
図5(B)に示すように、インナーケース41Bの周囲のケーブル17が緩んでその径が大きくなり、ケーブル17の外側の側面がアウターケース41Aの内周面に近接した状態となる。一方、この状態から回転軸13を反時計回りに360度回転させると、
図5(A)に示すようにケーブル17の内側の側面がインナーケース41Bの外周面に接触した状態に戻ることとなる。
【0035】
そして、インナーケース41Bに仕切り板42A、42Bが設けられているため、上記のような動作をする際に、ケーブル17が仕切り板42A、42Bに案内されて相対的に移動することとなるため、インナーケース41Bが揺動を繰り返しても重なった状態が崩れることなく整然と巻き取ったり緩めたりすることができる。
なお、
図6(A)には
図5(A)の状態を側方から見た様子を、
図6(B)には
図5(B)の状態を側方から見た様子を示す。
上記説明では、
図5(A)の状態を初期状態したが、
図5(A)と
図5(B)の中間の状態すなわち
図5(A)の状態から回転軸13を時計回りに180度回転させた状態を初期状態として、この状態から回転軸13を時計回りと半時計回り方向にそれぞれ180度ずつ回転させて、インナーケース41Bを巻き取る方向と緩める方向へ揺動させるように構成しても良い。
【0036】
また、
図5には、回転軸13を360度の範囲で回転させる場合を示したが、搖動範囲は220度や320度等であってもよい。また、回転軸13やインナーケース41Bの径などの寸法を適宜設計してやることで、360度以上の範囲で回転させることも可能である。ただし、回転軸13を360度以上回転させると、ケーブル17の曲がる量が大きくなる、つまりケーブル17に対して大きな曲げ応力が繰返し働くようになるので、360度以内で搖動させるように構成するのが望ましい。
【0037】
次に、上記実施形態の変形例を、
図7を用いて説明する。なお、
図7は
図3に対応するものである。
図7の変形例においては、
図3に示すインナーケース41Bを構成する2個の半円筒状部品41B1,41B2のうち、半円筒状部品41B1は
図7(A)に示すように、
図3(A)に示すものと同様に形成されている。一方、半円筒状部品41B2は、
図7(B)に示すように、90度の扇形をなす鍔部42a2と42bのうち上側の鍔部42a2の外縁に沿って起立壁42a3が形成されている。
【0038】
このように、鍔部42a2の外縁に沿って起立壁42a3を形成することにより、半円筒状部品41B1,41B2を突き合わせて結合すると、
図7(C)に示すように、仕切り板42Aに生じる90度の扇形をなす開口部の近傍に起立壁42a3が存在することとなる。
この起立壁42a3がない場合には、ケーブルが緩む方向へ回転軸13が回動された際に、最上段の巻線部分の径のみが大きくなってケーブルの外側面がアウターケース41Aの内周面に接触した状態となり、その摩擦力で回転軸13が回動しにくくなるが、起立壁42a3があることによって、最上段のケーブルの外側面がアウターケース41Aの内周面に接触して回転軸13が回動しにくくなるのを防止することができる。
【0039】
なお、上記のような起立壁42a3は、仕切り板42A全体すなわち鍔部42a1と42a2の両方の縁部に形成しても良いが、上記のように鍔部42a1のみに設けることで充分に機能することを試作によって確かめることができた。そして、このように、起立壁42a3を鍔部42a1のみに設けることで、仕切り板42A全体に設ける場合に比べて材料の量を減らして、コストダウンおよび軽量化を図ることができる。
【0040】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、円筒状の支持軸12の内側に回転軸13を挿入して支持するように構成したが、支持軸12の径よりも回転軸13の径を大きくして支持軸12の外側に回転軸13を嵌合させる構成としても良い。
【0041】
また、前記実施形態では、インナーケース14Bの外周面に仕切り板として機能する扇形の鍔部を形成したものを示したが、アウターケース14Aの内周面に仕切り板として機能する鍔部を形成するようにしてもよい。また、実施例では、270度の扇形の仕切り板42Aと90度の扇形の仕切り板42Bを設けたものを示したが、扇形の角度は270度と90度に限定されず、収納対象となるケーブルの種類等に応じて任意の角度(例えば240度〜300度と240度〜300度)とすることができる。
【0042】
さらに、前記実施形態では、ケーブル収納空間にケーブルを約4段4巻きにした状態で収納できるようにアウターケース14Aとインナーケース14Bの軸方向の長さを設定したが、収納するケーブルの径(高さ)やインナーケース14Bの大きさ、揺動範囲の大きさによっては、3段3巻きや2段2巻きあるいは5段5巻き以上であっても良い。
なお、揺動範囲を360度以上とする場合には、n段n巻きのnを適切に大きな値に設定する事により、前記の揺動範囲を360度以内としたときと同様にケーブルの損傷、破断を防止して装置の長寿命化を図ることができる。
また、以上の説明では、本発明を、炎感知器を搭載した監視装置のケーブル収納装置に適用した場合を例にとって説明したが、監視カメラを搭載した監視装置その他、揺動可能な基台に電子部品や電機機器を搭載している装置のケーブル収納装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
12 支持軸
13 回転軸
14 ケーブル収納装置
14A アウターケース(外側ケース)
14B インナーケース(内側ケース)
42A,42B 仕切り板(仕切り部材)
15 ヘッド部
16 制御部
17 ケーブル