(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上スロッタナイフ(23)として、段ボールシート(7)の進行方向の前後一対のコーナー部(61,67)のうち前側のコーナー部(61)を切断除去するものを有し、この上スロッタナイフ(23)は、前記スロット屑(63)とフラップ屑(64)との間を完全に切り離すように形成されている請求項1に記載のスロッタ。
前記上スロッタナイフ(24)として、段ボールシート(7)の進行方向の前後一対のコーナー部(61,67)のうち後側のコーナー部(67)を切断除去するものを有し、この上スロッタナイフ(24)は、前記スロット屑(68)とフラップ屑(69)との間を完全には切り離さずに繋がった部分を残すように形成されている請求項1または2に記載のスロッタ。
【背景技術】
【0002】
一般に、段ボール箱を製造するにあたっては、まず、コルゲータにおいて、段に直角な2本の罫線(段ボール箱のフラップの付け根の罫線)の入った段ボールシートを製造する。次に、製函工程において、段に平行な罫線(段ボール箱の幅面と長さ面とを区画する罫線)と、切り込み溝(段ボール箱の隣り合うフラップの間を切り離す溝)とを段ボールシートに形成する。このとき、段ボールシートの前後一対のコーナー部を切断除去することで、段ボールシートの側縁中央部に継ぎ代が形成される。その後、継ぎ代に糊付けして、段ボールシートを筒状に折りたたみ、段ボール箱が完成する。
【0003】
ここで、段ボールシートのコーナー部を切断除去して継ぎ代を形成するスロッタとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1のスロッタは、互いに逆回転する上下一対のスロッタ軸と、そのスロッタ軸の間を通過する段ボールシートに段ボールシートの進行方向と平行な切り込み溝を形成する上スロッタナイフと、段ボールシートの進行方向と交差する方向の切断線を形成する角切りナイフとを有する。角切りナイフは、上スロッタナイフと交差するように上スロッタナイフの側面に隣接して取り付けられている。そして、段ボールシートが上下一対のスロッタ軸の間を通過したときに、上スロッタナイフで形成される切り込み溝と、角切りナイフで形成される切断線とで段ボールシートの前後のコーナー部を切断除去し、これにより段ボールシートの側縁中央部に継ぎ代を形成するようになっている。
【0005】
ところで、上スロッタナイフと角切りナイフとで切断除去されたコーナー部は、切り込み溝に対応する領域(すなわちスロッタナイフで切断される領域)であるスロット屑と、このスロット屑の側方の領域であるフラップ屑とで構成される。
【0006】
このスロット屑とフラップ屑のうち、スロット屑の部分は、比較的容易に段ボールシートから分離させることができる。すなわち、上スロッタナイフは、下側のスロッタ軸の周囲に設けられた円環状の嵌合溝に嵌合し、この嵌合溝と上スロッタナイフの間で段ボールシートを剪断することで切り込み溝を形成する。そして、このとき生じるスロット屑は、上スロッタナイフで下側のスロッタ軸の嵌合溝内に押し込まれ、スロット屑の両側の縁が嵌合溝の内面に接触した状態となる。このスロット屑は、嵌合溝の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸と一緒に回転移動し、下側に引っ張られることで、段ボールシートから分離する。
【0007】
一方、スロット屑とフラップ屑のうち、フラップ屑の部分は、スロット屑のように嵌合溝内に押し込まれるということがないため、段ボールシートから切断された後も、フラップ屑自体の慣性によって段ボールシートと一緒に前方に移動する傾向にあり、段ボールシートから分離しにくいという問題がある。そのため、糊付けした継ぎ代にフラップ屑が付着して、継ぎ代の接着が生じたり、フラップ屑が製品に混入したりする問題があった。
【0008】
この問題を解消するため、特許文献1では、上スロッタナイフの切れ刃の一部を切り欠くことによって、スロット屑とフラップ屑の間が完全に切り離されずに繋がった部分が残るようにしている。このようにすると、スロット屑とフラップ屑の間が一部繋がるので、スロット屑が嵌合溝の内面との摩擦によって下側に引っ張られたときに、そのスロット屑を介してフラップ屑も下側に引っ張られることとなり、その結果、フラップ屑が段ボールシートから分離しやすくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のように、上スロッタナイフの切れ刃の一部を切り欠いて、スロット屑とフラップ屑の間が一部繋がるようにしても、フラップ屑が段ボールシートから分離しないことがある。特に、フラップ屑の寸法が大きいときには、フラップ屑の慣性も大きくなるため、スロット屑と嵌合溝の内面との摩擦だけではフラップ屑を十分に下側に引き込むことができず、フラップ屑が段ボールシートから分離しないことがあった。
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、フラップ屑を段ボールシートから確実に分離させることが可能なスロッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明では、以下の構成をスロッタに採用した。
互いに逆方向に回転する上下一対の回転軸と、
その一対の回転軸の間を通過する段ボールシートに段ボールシートの進行方向と交差する方向の切断線を形成するように前記一対の回転軸の一方に設けられた角切りナイフと、
前記一対の回転軸に対して下流側に設けられ、互いに逆方向に回転する上下一対のスロッタ軸と、
その一対のスロッタ軸の間を通過する段ボールシートに段ボールシートの進行方向と平行な切り込み溝を形成し、その切り込み溝と前記切断線とで段ボールシートのコーナー部が切断除去されるように前記上側のスロッタ軸に設けられた上スロッタナイフと、
その上スロッタナイフが嵌合するように前記下側のスロッタ軸の周囲に円環状に設けられた第1の嵌合溝と、
前記段ボールシートのコーナー部の、前記切り込み溝に対応する領域であるスロット屑と、そのスロット屑の側方の領域であるフラップ屑とのうち、前記フラップ屑となる領域から、段ボールシートの進行方向と平行な帯状の案内片を下側に切り起こすように前記上側のスロッタ軸に設けられた案内片形成ナイフと、
その案内片形成ナイフが嵌合するように前記下側のスロッタ軸の周囲に円環状に設けられた第2の嵌合溝と、
を有するスロッタ。
【0013】
このようにすると、段ボールシートのコーナー部を切断除去するときに、スロット屑が第1の嵌合溝の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸と一緒に回転移動し、下側に引っ張られるとともに、フラップ屑から切り起こされた帯状の案内片も、第2の嵌合溝の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸と一緒に回転移動し、下側に引っ張られる。そのため、スロット屑とフラップ屑の両者を単一の嵌合溝だけで下側に引っ張るようにした場合と比較して、確実にフラップ屑を段ボールシートから分離させることが可能である。
【0014】
前記上スロッタナイフとして、段ボールシートの進行方向の前後一対のコーナー部のうち前側のコーナー部を切断除去するものを有するとき、この上スロッタナイフは、前記スロット屑とフラップ屑との間を完全に切り離すように形成すると好ましい。
【0015】
このようにすると、フラップ屑とスロット屑との間が上スロッタナイフで完全に切り離されるので、フラップ屑とスロット屑とを別々のタイミングで段ボールシートから分離することが可能となり、案内片の後端位置とスロット屑の後端位置とが前後にずれているときでも、フラップ屑およびスロット屑の両者を確実に段ボールシートから分離させることが可能となる。
【0016】
前記上スロッタナイフとして、段ボールシートの進行方向の前後一対のコーナー部のうち後側のコーナー部を切断除去するものを有するとき、この上スロッタナイフは、前記スロット屑とフラップ屑との間を完全には切り離さずに繋がった部分を残すように形成すると好ましい。
【0017】
このようにすると、フラップ屑とスロット屑との間が一部繋がっているので、フラップ屑を、案内片とスロット屑の両方で下側に引っ張ることが可能となり、フラップ屑の寸法が大きいときでも、フラップ屑およびスロット屑の両者を確実に段ボールシートから分離させることが可能となる。また、段ボールシートの進行方向の後側のコーナー部においては、案内片の後端位置とスロット屑の後端位置とが前後に一致する(いずれも段ボールシートの後端位置となる)ので、スロット屑とフラップ屑との間が一部繋がっていても、スロット屑およびフラップ屑の両者を確実に段ボールシートから分離させることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
この発明のスロッタを用いると、段ボールシートのコーナー部を切断除去するときに、スロット屑が第1の嵌合溝の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸と一緒に回転移動し、下側に引っ張られるとともに、フラップ屑から切り起こされた帯状の案内片も、第2の嵌合溝の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸と一緒に回転移動し、下側に引っ張られる。そのため、スロット屑とフラップ屑の両者を単一の嵌合溝だけで下側に引っ張るようにした場合と比較して、確実にフラップ屑を段ボールシートから分離させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施形態のスロッタを段ボールシートの進行方向と直交する方向から見た断面図
【
図2】
図1に示すスロッタを段ボールシートの通過位置に沿って上側から見た断面図
【
図4】
図1に示す回転方向の前側の上スロッタナイフの近傍の拡大図
【
図5】
図4に示す上スロッタナイフおよび案内片形成ナイフを外径側から見た図
【
図6】
図1に示す回転方向の後側の上スロッタナイフの近傍の拡大図
【
図7】
図6に示す上スロッタナイフおよび案内片形成ナイフを外径側から見た図
【
図8】
図3に示す上スロッタナイフおよび案内片形成ナイフが、第1の嵌合溝および第2の嵌合溝に嵌合した状態を示す断面図
【
図9】段ボールシートの進行方向の前側のコーナー部を切断除去したときに、スロット屑およびフラップ屑が第1の嵌合溝および第2の嵌合溝にそれぞれ押し込まれた状態を示す図
【
図10】段ボールシートの進行方向の後側のコーナー部を切断除去したときに、スロット屑およびフラップ屑が第1の嵌合溝および第2の嵌合溝にそれぞれ押し込まれた状態を示す図
【
図11】
図1に示すスロッタで耳ありタイプの継ぎ代を段ボールシートに形成する過程を示す図であり、(a)は段ボールシートの進行方向の前側部分と後側部分に段ボールシートの進行方向に交差する方向の切断線が形成された状態を示す図、(b)は(a)に示す段ボールシートの進行方向の前側部分に段ボールシートの進行方向に平行な切り込み溝が形成された状態を示す図、(c)は(b)に示す段ボールシートの進行方向の後側部分に段ボールシートの進行方向に平行な切り込み溝が形成された状態を示す図、(d)は段ボールシートの進行方向の前側と後側のコーナー部がそれぞれ切断除去された結果、段ボールシートの側縁中央部に耳ありタイプの継ぎ代が形成された状態を示す図
【
図12】耳ありタイプの継ぎ代を有する段ボールシートを示す図
【
図13】
図1に示すスロッタで耳なしタイプの継ぎ代を段ボールシートに形成する過程を示す図であり、(a)は段ボールシートの進行方向の前側部分と後側部分に段ボールシートの進行方向に交差する方向の切断線が形成された状態を示す図、(b)は(a)に示す段ボールシートの進行方向の前側部分に段ボールシートの進行方向に平行な切り込み溝が形成された状態を示す図、(c)は(b)に示す段ボールシートの進行方向の後側部分に段ボールシートの進行方向に平行な切り込み溝が形成された状態を示す図、(d)は段ボールシートの進行方向の前側と後側のコーナー部がそれぞれ切断除去された結果、段ボールシートの側縁中央部に耳なしタイプの継ぎ代が形成された状態を示す図
【
図14】耳なしタイプの継ぎ代を有する段ボールシートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、この発明の実施形態のスロッタを示す。このスロッタは、上下一対の回転軸1,2と、回転軸1,2の下流側に設けられた上下一対のスロッタ軸3,4と、回転軸1,2とスロッタ軸3,4の間に設けられた上下一対の送りローラ5,6とを有する。
【0021】
上下一対の回転軸1,2は、上流側から供給される段ボールシート7をスロッタ軸3,4の側に送り出すように互いに逆方向に回転する。また、上下一対のスロッタ軸3,4は、回転軸1,2の側から送り込まれた段ボールシート7を下流側に送り出すように互いに逆方向に回転する。ここで、段ボールシート7は、段に直角な2本の罫線(
図12および
図14に示すフラップ8の付け根の罫線9)と段に平行な罫線(
図12および
図14に示す幅面10と長さ面11とを区画する罫線12)があらかじめ形成された矩形の段ボールシート7であり、段ボールシート7の進行方向が、段と平行な方向となる向きで一対の回転軸1,2の間に1枚ずつ供給される。
【0022】
上側の回転軸1には、円板状の刃物台ホルダ13と、この刃物台ホルダ13に取り付けられた一対の刃物台14,15と、この一対の刃物台14,15にそれぞれ固定された一対の角切りナイフ16,17とが設けられている。刃物台ホルダ13は、回転軸1と一体に回転するように回転軸1に固定されている。一対の刃物台14,15は、円周方向に間隔をおいて刃物台ホルダ13に固定されており、それぞれ刃物台ホルダ13への固定位置を円周方向に調整することが可能となっている。下側の回転軸2には、円筒状の刃受け面18を外周に有するアンビルローラ19が設けられている。
【0023】
角切りナイフ16は、アンビルローラ19の外周の円筒状の刃受け面18に接触する切れ刃を先端に有する。角切りナイフ16の先端の切れ刃は、回転軸1の回転方向に対して交差する方向(例えば軸方向または軸方向に対して傾斜する方向)に延びるように形成され、この切れ刃と刃受け面18の間で段ボールシート7を挟み込むことで、一対の回転軸1,2の間を通過する段ボールシート7に段ボールシート7の進行方向と交差する方向の切断線20(
図2参照)を形成するようになっている。回転軸1の回転方向の後側に配置された角切りナイフ17も、前側の角切りナイフ16と同様に構成されている。
【0024】
上側のスロッタ軸3には、円板状の上刃ホルダ22と、この上刃ホルダ22に取り付けられた一対の上スロッタナイフ23,24および一対の案内片形成ナイフ25,26とが設けられている。上刃ホルダ22は、スロッタ軸3と一体に回転するようにスロッタ軸3に固定されている。一対の上スロッタナイフ23,24は、それぞれ円弧状の外周をもつ扇形の部材であり、円周方向に間隔をおいて上刃ホルダ22に固定されている。一対の案内片形成ナイフ25,26も、上スロッタナイフ23,24と同様、円弧状の外周をもつ扇形の部材であり、円周方向に間隔をおいて上刃ホルダ22に固定されている。スロッタ軸3の回転方向の前側の案内片形成ナイフ25は、スロッタ軸3の回転方向の前側の上スロッタナイフ23と軸方向に対向して配置されている。スロッタ軸3の回転方向の後側の案内片形成ナイフ26も、スロッタ軸3の回転方向の後側の上スロッタナイフ24と軸方向に対向して配置されている。
【0025】
図3に示すように、上側のスロッタ軸3は、転がり軸受27を介して上フレーム28で支持されている。上スロッタナイフ23と案内片形成ナイフ25の間には、両者の間隔を一定に保つ上スペーサ29が組み込まれている。スロッタ軸3の回転方向の後側の上スロッタナイフ24と案内片形成ナイフ26の間にも、両者の間隔を一定に保つ上スペーサ30(
図7参照)が組み込まれている。
【0026】
下側のスロッタ軸4は、転がり軸受31を介して下フレーム32で支持されている。下側のスロッタ軸4には円板状の下刃ホルダ33が固定され、この下刃ホルダ33に第1の丸ナイフ34、第2の丸ナイフ35、第3の丸ナイフ36が取り付けられている。第1の丸ナイフ34と第2の丸ナイフ35の間には、両者の間隔を一定に保つ第1の下スペーサ37が組み込まれ、この第1の丸ナイフ34と第2の丸ナイフ35の対向面間に上スロッタナイフ23,24が嵌合する第1の嵌合溝38が形成されている。また、第2の丸ナイフ35と第3の丸ナイフ36の間には、両者の間隔を一定に保つ第2の下スペーサ39が組み込まれ、この第2の丸ナイフ35と第3の丸ナイフ36の対向面間に案内片形成ナイフ25,26が嵌合する第2の嵌合溝40が形成されている。このようにして、下側のスロッタ軸4の周囲には、上スロッタナイフ23,24が嵌合する第1の嵌合溝38と、案内片形成ナイフ25,26が嵌合する第2の嵌合溝40とが設けられている。
【0027】
第1の嵌合溝38の両縁(すなわち第1の丸ナイフ34の外周の第2の丸ナイフ35の側の縁と、第2の丸ナイフ35の外周の第1の丸ナイフ34の側の縁)は、全周にわたって途切れずに連続する切れ刃を構成している。第2の嵌合溝40の両縁(すなわち第2の丸ナイフ35の外周の第3の丸ナイフ36の側の縁と、第3の丸ナイフ36の外周の第2の丸ナイフ35の側の縁)も、全周にわたって途切れずに連続する切れ刃を構成している。
【0028】
図4および
図5に示すように、スロッタ軸3の回転方向の前側の上スロッタナイフ23は、円弧状に延びる一対の平行な溝切り刃41と、この一対の溝切り刃41の後端に設けられた突切り刃42とを外周に有する。突切り刃42は、一対の平行な溝切り刃41で段ボールシート7から切り起こされる帯状の部分(
図11(b)のスロット屑63の部分)を切り離すように、その先端が溝切り刃41よりも外径側に突出して設けられている。一対の溝切り刃41は、いずれも上スロッタナイフ23の周方向の前端から後端にわたってとぎれないように連続して形成されている。
【0029】
スロッタ軸3の回転方向の前側の案内片形成ナイフ25も、円弧状に延びる一対の平行な平行刃43を有する。平行刃43は、その回転方向の後端43aの位置が突切り刃42の位置よりも前側にずれた配置となるように形成されている。一対の平行刃43の回転方向の後端43aには、一対の平行刃43で段ボールシート7から切り起こされる帯状の部分(
図11(b)の案内片65の部分)の根元が切り離されずに繋がった状態となるように突切り刃が設けられていない。
【0030】
上スロッタナイフ23の側面に形成された貫通孔44と、案内片形成ナイフ25の側面に形成された貫通孔45とに共通のボルト46が挿入され、このボルト46の締め込みによって上スロッタナイフ23と案内片形成ナイフ25の両者が上刃ホルダ22に固定されている。貫通孔44,45は、それぞれ円周方向に沿って円弧状に延びる長孔であり、この長孔とボルト46の間に形成された遊びの範囲で、上スロッタナイフ23および案内片形成ナイフ25の上刃ホルダ22への固定位置を円周方向に調整することが可能となっている。
【0031】
図6および
図7に示すように、スロッタ軸3の回転方向の後側の上スロッタナイフ24は、円弧状に延びる一対の平行な溝切り刃47と、この一対の溝切り刃47の前端に設けられた突切り刃48とを外周に有する。突切り刃48は、一対の平行な溝切り刃47で段ボールシート7から切り起こされる帯状の部分(
図11(c)のスロット屑68の部分)の前端を形成するように、その先端が溝切り刃47よりも外径側に突出して設けられている。
【0032】
ここで、一対の平行な溝切り刃47のうち、段ボールシート7の中央に近い側(すなわち案内片形成ナイフ26から遠い側)の溝切り刃47は、上スロッタナイフ24の周方向の前端から後端にわたってとぎれないように連続して形成されているが、段ボールシート7の中央から遠い側(すななち案内片形成ナイフ26に近い側)の溝切り刃47は、上スロッタナイフ24の周方向の途中に切れ刃が形成されていない不連続部49を有する。
【0033】
スロッタ軸3の回転方向の後側の案内片形成ナイフ26は、円弧状に延びる一対の平行な平行刃50を有する。平行刃50は、その回転方向の前端50aの位置が突切り刃48の位置よりも後側にずれた配置となるように形成されている。一対の平行刃50の回転方向の前端50aには、一対の平行刃50で段ボールシート7から切り起こされる帯状の部分(
図11(c)の案内片70の部分)の根元が切り離されずに繋がった状態となるように突切り刃が設けられていない。
【0034】
上スロッタナイフ24の側面に形成された貫通孔51と、案内片形成ナイフ26の側面に形成された貫通孔52とに共通のボルト53が挿入され、このボルト53の締め込みによって上スロッタナイフ24と案内片形成ナイフ26の両者が上刃ホルダ22に固定されている。貫通孔51,52は、それぞれ円周方向に沿って円弧状に延びる長孔であり、この長孔とボルト53の間に形成された遊びの範囲で、上スロッタナイフ24および案内片形成ナイフ26の上刃ホルダ22への固定位置を円周方向に調整することが可能となっている。
【0035】
図8に示すように、第1の嵌合溝38の内部には、段ボールシート7の切断により生じるスロット屑63を第1の嵌合溝38から排出するスロット屑排出ガイド54が設けられている。また、第2の嵌合溝40の内部にも、段ボールシート7の切断により生じた帯状の案内片65を第2の嵌合溝40から排出する案内片排出ガイド55が設けられている。
【0036】
図1に示すように、案内片排出ガイド55は、上側のスロッタ軸3と下側のスロッタ軸4の対向位置よりも回転方向の後方から第2の嵌合溝40に入り込み、第2の嵌合溝40の溝底に沿って円弧状に延びた後、上側のスロッタ軸3と下側のスロッタ軸4の対向位置よりも回転方向の前方で第2の嵌合溝40から抜け出る形状とされている。スロット屑排出ガイド54も、案内片排出ガイド55と同様の形状を有する。
【0037】
上述のスロッタで段ボールシート7の側縁中央部に継ぎ代60(
図12参照)を形成する動作を説明する。
【0038】
図1に示すように、スロッタの上流側から供給された矩形の段ボールシート7が、上下一対の回転軸1,2の間を通過するとき、
図11(a)に示すように、回転軸1の回転方向の前側の角切りナイフ16が、段ボールシート7の進行方向の前側部分に、進行方向と交差する方向の切断線20を形成し、続いて、回転軸1の回転方向の後側の角切りナイフ17が、段ボールシート7の進行方向の後側部分に、進行方向と交差する方向の切断線21を形成する。ここで切断線20,21は、いずれもその一端が段ボールシート7の側縁に開放するように形成される。
【0039】
その後、段ボールシート7は、
図1に示す上下一対のスロッタ軸3,4の間を通過し、このとき
図8に示すように、上スロッタナイフ23が第1の嵌合溝38に嵌合し、この上スロッタナイフ23と第1の嵌合溝38の間で段ボールシート7の進行方向の前側部分が剪断され、
図11(b)に示すように、段ボールシート7の進行方向と平行な切り込み溝62が形成される。このとき、段ボールシート7の進行方向の前縁から延びる切り込み溝62と、段ボールシート7の側縁から延びる切断線20とが繋がることで、段ボールシート7の進行方向の前側のコーナー部61が切断除去される。切断除去されたコーナー部61は、切り込み溝62に対応する領域(すなわち上スロッタナイフ23で切断される領域)であるスロット屑63と、このスロット屑63の側方の領域(すなわちスロット屑63と段ボールシート7の側縁の間で挟まれる領域)であるフラップ屑64とで構成され、スロット屑63とフラップ屑64との間が完全に切り離された状態となっている。
【0040】
また、
図8に示すように、上スロッタナイフ23が第1の嵌合溝38に嵌合するとき、上スロッタナイフ23と軸方向に並んで配置された案内片形成ナイフ25が第2の嵌合溝40に嵌合し、この案内片形成ナイフ25と第2の嵌合溝40の間で段ボールシート7が剪断され、
図11(b)に示すように、段ボールシート7のコーナー部61のフラップ屑64となる領域から、段ボールシート7の進行方向と平行な帯状の案内片65が下側に切り起こされる。ここで、案内片65の後端は、フラップ屑64から切り離されずに繋がった状態となっている。
【0041】
ここで、
図8に示すように、上スロッタナイフ23および案内片形成ナイフ25でスロット屑63および案内片65を形成したとき、上スロッタナイフ23でスロット屑63が第1の嵌合溝38内に押し込まれるとともに、案内片形成ナイフ25で案内片65が第2の嵌合溝40内に押し込まれる。このとき、
図9に示すように、スロット屑63の両側の縁が第1の嵌合溝38の内面に接触するとともに、案内片65の両側の縁が第2の嵌合溝40の内面に接触した状態となる。そして、スロット屑63は、第1の嵌合溝38の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られて、段ボールシート7から分離する。また、フラップ屑64から切り起こされた帯状の案内片65も、第2の嵌合溝40の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られ、これによりフラップ屑64が段ボールシート7から分離する。
【0042】
段ボールシート7から分離したスロット屑63は、スロット屑排出ガイド54に接触して第1の嵌合溝38から排出されて落下する。フラップ屑64から切り起こされた案内片65も、案内片排出ガイド55に接触して第2の嵌合溝40から排出され、これによりフラップ屑64が落下する。
【0043】
その後、
図1に示すスロッタ軸3の回転方向の後側の上スロッタナイフ24が第1の嵌合溝38に嵌合し、この上スロッタナイフ24と第1の嵌合溝38の間で段ボールシート7の進行方向の後側部分が剪断され、
図11(c)に示すように、段ボールシート7の進行方向と平行な切り込み溝66が形成される。このとき、段ボールシート7の進行方向の後縁から延びる切り込み溝66と、段ボールシート7の側縁から延びる切断線21とが繋がることによって、段ボールシート7の進行方向の後側のコーナー部67が切断除去される。切断除去されたコーナー部67は、切り込み溝66に対応する領域であるスロット屑68と、このスロット屑68の側方の領域であるフラップ屑69とで構成され、スロット屑68とフラップ屑69との間が完全には切り離されずに一部繋がった状態となっている。
【0044】
また、
図8に示すように、上スロッタナイフ24が第1の嵌合溝38に嵌合するとき、上スロッタナイフ24(
図6、
図7参照)と軸方向に並んで配置された案内片形成ナイフ26が第2の嵌合溝40に嵌合し、この案内片形成ナイフ26と第2の嵌合溝40の間で段ボールシート7が剪断され、
図11(c)に示すように、段ボールシート7のコーナー部67のフラップ屑69となる領域から、段ボールシート7の進行方向と平行な帯状の案内片70が下側に切り起こされる。ここで、案内片70の前端は、フラップ屑69から切り離されずに繋がった状態となっている。
【0045】
ここで、上スロッタナイフ24および案内片形成ナイフ26でスロット屑68および案内片70を形成したとき、上スロッタナイフ24でスロット屑68が第1の嵌合溝38内に押し込まれるとともに、案内片形成ナイフ26で案内片70が第2の嵌合溝40内に押し込まれる。このとき、
図10に示すように、スロット屑68の両側の縁が第1の嵌合溝38の内面に接触するとともに、案内片70の両側の縁が第2の嵌合溝40の内面に接触した状態となる。そして、スロット屑68は、第1の嵌合溝38の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られるとともに、フラップ屑69から切り起こされた帯状の案内片70も、第2の嵌合溝40の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られる。このフラップ屑69に作用する引張り力と案内片70に作用する引張り力とによって、スロット屑68とフラップ屑69は段ボールシート7から分離する。
【0046】
このように、段ボールシート7の前後一対のコーナー部61,67を切断除去することで、
図11(d)、
図12に示すように、段ボールシート7の側縁中央部に継ぎ代60が形成される。
【0047】
上述のスロッタを用いると、段ボールシート7の進行方向の前側のコーナー部61を切断除去するときに、スロット屑63が第1の嵌合溝38の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られるとともに、フラップ屑64から切り起こされた帯状の案内片65も、第2の嵌合溝40の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られる。そのため、スロット屑63とフラップ屑64の両者を単一の嵌合溝だけで下側に引っ張るようにした場合と比較して、確実にフラップ屑64を段ボールシート7から分離させることが可能である。
【0048】
同様に、段ボールシート7の進行方向の後側のコーナー部67を切断除去するときも、スロット屑68が第1の嵌合溝38の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られるとともに、フラップ屑69から切り起こされた帯状の案内片70も、第2の嵌合溝40の内面との摩擦によって下側のスロッタ軸4と一緒に回転移動し、下側に引っ張られる。そのため、スロット屑68とフラップ屑69の両者を単一の嵌合溝だけで下側に引っ張るようにした場合と比較して、確実にフラップ屑69を段ボールシート7から分離させることが可能である。
【0049】
また、上述のスロッタは、段ボールシート7の進行方向の前側のコーナー部61を切断除去する上スロッタナイフ23として、スロット屑63とフラップ屑64との間を完全に切り離すように形成したものを用いている。これにより、フラップ屑64とスロット屑63とを別々のタイミングで段ボールシート7から分離することが可能となり、
図11(b)のように、案内片65の後端位置とスロット屑63の後端位置とが前後にずれているとき(すなわち、
図11(d)のように継ぎ代60の両端にフラップ60fがあるタイプの段ボール箱を製造するとき)でも、フラップ屑64およびスロット屑63の両者を確実に段ボールシート7から分離させることが可能となっている。
【0050】
また、上述のスロッタは、段ボールシート7の進行方向の後側のコーナー部67を切断除去する上スロッタナイフ24として、スロット屑68とフラップ屑69との間を完全には切り離さずに繋がった部分を残すように形成したものを用いている。これにより、フラップ屑69とスロット屑68との間が一部繋がるので、
図11(c)のように、フラップ屑69を、案内片70とスロット屑68の両方で下側に引っ張ることが可能となり、フラップ屑69の寸法が大きいときでも、フラップ屑69およびスロット屑68の両者を確実に段ボールシート7から分離させることが可能となる。ここで段ボールシート7の進行方向の後側のコーナー部67においては、案内片70の後端位置とスロット屑68の後端位置とが前後に一致する(いずれも段ボールシート7の後端位置となる)ので、スロット屑68とフラップ屑69との間が一部繋がっていても、スロット屑68およびフラップ屑69の両者を確実に段ボールシート7から分離させることが可能である。
【0051】
上記実施形態では、
図11(d)に示すように、継ぎ代60の両端にフラップ60fがあるタイプ(いわゆる耳ありタイプ)の段ボール箱を製造する場合を例に挙げて説明したが、この発明は、
図13(a)〜
図13(d)および
図14に示すように、継ぎ代60の両端にフラップ60fがないタイプ(いわゆる耳なしタイプ)の段ボール箱を製造する場合にも適用することができる。この場合、
図1に示す回転軸1の回転方向の前側の角切りナイフ16と後側の角切りナイフ17との間隔を狭めるとともに、スロッタ軸3の回転方向の前側の案内片形成ナイフ25と後側の案内片形成ナイフ26との間隔を狭めることで、耳なしタイプの段ボール箱を製造することが可能である。