特許第6352107号(P6352107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352107
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20180625BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20180625BHJP
   H01L 41/313 20130101ALI20180625BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H01L41/047
   H01L41/083
   H01L41/313
   H01L41/053
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-169237(P2014-169237)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-46366(P2016-46366A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文久
(72)【発明者】
【氏名】波多野 桂一
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−101283(JP,A)
【文献】 特開2006−287725(JP,A)
【文献】 特開平04−208557(JP,A)
【文献】 特開2002−368299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047
H01L 41/053
H01L 41/083
H01L 41/313
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する支持体と、
第1の主面とその反対側の第2の主面を有し、前記第1の主面が前記支持体に接合された圧電素子と、
多孔質金属材料からなり、前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくともいずれか一方に積層され、空気に接触する金属層と
を具備する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記金属層は、前記第2の主面より大きい面積を有する
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は、圧電材料が電極によって挟まれた構造を有し、電極に電圧が印加されると圧電材料に変形が生じる素子であり、アクチュエータやセンサ、発振回路等に利用されている。近年、圧電素子をディスプレイのパネルに実装し、振動触感の再生や音響用途の応用が期待されている。
【0003】
このような用途においては、圧電素子に比較的大きい電圧を印加する必要があり、圧電素子の発熱が問題となる。特に、圧電素子が実装される部材の熱伝導性が小さいガラスや合成樹脂である場合には圧電素子の放熱が妨げられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ディスプレイのパネルに実装されるアクチュエータが開示されている。当該アクチュエータは、振動源であるボイスコイルが冷却フィンを有するフレームに支持されており、冷却フィンによってボイスコイルの熱が放熱される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−198217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような構成では、放熱効果を発生させるためには、冷却フィンを一定以上の大きさにする必要があり、アクチュエータを小型化、軽量化することが困難である。また、ボイスコイルがフレームに支持されているため、ボイスコイルの振動がフレームによって抑制されてしまう。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、圧電素子を効果的に放熱することが可能な構造を有する電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子機器は、支持体と、圧電素子と、金属層とを具備する。
上記支持体は、光透過性を有する。
上記圧電素子は、第1の主面とその反対側の第2の主面を有し、上記第1の主面が上記支持体に接合されている。
上記金属層は、金属材料からなり、上記第1の主面及び上記第2の主面の少なくともいずれか一方に積層され、空気に接触する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2】同電子機器の側面図である。
図3】同電子機器が備える圧電素子の斜視図である。
図4】同電子機器が備える金属層の配設位置を示す模式図である。
図5】同電子機器が備える圧電素子の動作を示す模式図である。
図6】比較例に係る電子機器の放熱の態様を示す模式図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る電子機器の放熱の態様を示す模式図である。
図8】同電子機器が備える金属層の他の構造を示す模式図である。
図9】同電子機器が備える金属層の他の構造を示す模式図である。
図10】同電子機器が備える金属層の他の構造を示す模式図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図12】同電子機器の側面図である。
図13】同電子機器の上面図である。
図14】同電子機器の放熱の態様を示す模式図である。
図15】同電子機器が備える金属層の配設位置を示す模式図である。
図16】本発明の実施例及び比較例についての支持体の温度測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る電子機器は、支持体と、圧電素子と、金属層とを具備する。
上記支持体は、光透過性を有する。
上記圧電素子は、第1の主面とその反対側の第2の主面を有し、上記第1の主面が上記支持体に接合されている。
上記金属層は、金属材料からなり、上記第1の主面及び上記第2の主面の少なくともいずれか一方に積層され、空気に接触する。
【0011】
光透過性を有する部材(ガラスや合成樹脂)は金属に比較して熱伝導性が小さいため、このような支持体に圧電素子が実装されると、圧電素子の放熱が支持体によって阻害される。上記構成によれば、圧電素子において発生した熱は金属層を介して空気中に放熱されるため、効果的に圧電素子の熱を放出し、圧電素子の発熱による支持体の温度上昇を防止することが可能である。
【0012】
上記金属層は、多孔質であってもよい。
【0013】
金属層が多孔質であると、単位体積あたりの表面積が大きいため、放熱性を維持したまま金属層を薄型化、軽量化することが可能である。また、多孔質金属は柔らかいため、金属層が圧電素子の変形を妨げることが防止される。
【0014】
上記金属層は、上記第2の主面より大きい面積を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、圧電素子の大きさによらず、金属層の面積を大きくすることが可能であり、金属層による放熱性を確保することが可能である。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電子機器について説明する。
【0017】
[電子機器の構成]
図1は、本実施形態に係る電子機器10の斜視図であり、図2は、電子機器10の側面図である。これらの図に示すように、電子機器10は、支持体11、圧電素子12、金属層13、接着材層14及び接着材層15を備える。図1に示すように、支持体11には二つの圧電素子12が設けられているものとすることができる。また一つ又は三つ以上の圧電素子12が支持体11に設けられてもよい。
【0018】
支持体11は、光透過性を有する板状の部材である。支持体11は、ディスプレイのパネルであり、液晶素子や有機EL(Electro-Luminescence)素子等の画像表示素子の上層に積層されるものとすることができる。支持体11の大きさは、電子機器10が設けられる装置、例えばスマートフォンやタブレット型端末、液晶ディスプレイ等の大きさに応じて決定され、例えば短辺が30mm以上200mm以下、長辺が70mm以上300mm以下とすることができる。また、支持体11の形状は矩形に限られない。
【0019】
支持体11は光透過性を有する材料からなり、例えば、ガラスや合成樹脂からなるものとすることができる。これらの材料は金属等に比較して熱伝導性が小さい。
【0020】
圧電素子12は、電圧が入力されると変形を生じる素子である。図3は、圧電素子12の構造を示す模式図である。同図に示すように、圧電素子12は、圧電材料層121、第1内部電極122、第2内部電極123、第1外部電極124及び第2外部電極125を備える。
【0021】
圧電材料層121は、圧電材料からなる層である。圧電材料は、PZT(Pb(Zr,Ti1−X)O:チタン酸ジルコン酸鉛)であり、Nb、Zn、Ni、La、Sr、Ca及びBaのうち一種又は複数種の添加物を含むものであってもよい。また、圧電材料はこの他にも鉛系圧電材料等の圧電性を有する材料からなるものとすることができる。なお、圧電材料には、変形量及び発熱量が大きいソフト材と、変形量及び発熱量小さいハード材があるが、本発明は特に圧電材料がソフト材である場合に好適である。
【0022】
第1内部電極122は、圧電材料層121中に配設され、第1外部電極124に導通する。第1内部電極122は、導電性材料からなり、その材料は特に限定されない。第2内部電極123は、圧電材料層121中に配設され、第2外部電極125に導通する。第2内部電極123は、導電性材料からなり、その材料は特に限定されない。
【0023】
圧電材料層121、第1内部電極122及び第2内部電極123は、図3に示すように、第1内部電極122及び第2内部電極が圧電材料層121を介して交互となるように積層されている。図3においては、圧電材料層121が4層となっているが、その積層数は4層に限られず、2層以上100層以下とすることができる。第1内部電極122及び第2内部電極123は、圧電材料層121の積層数に応じた数が配設されるものとすることができる。圧電材料層121、第1内部電極122及び第2内部電極123の積層体の厚さは5μm以上150μm以下とすることができる。
【0024】
第1外部電極124は、圧電材料層121の側面及び両主面に配設され、第1内部電極122に導通する。第1外部電極124は、導電性材料からなり、その材料は特に限定されない。第2外部電極125は、圧電材料層121の側面及び両主面に配設され、第2内部電極123に導通する。第2外部電極125は、導電性材料からなり、その材料は特に限定されない。
【0025】
第1外部電極124及び第2外部電極125は、圧電材料層121の両主面において互いに離間し、絶縁されている。第1外部電極124及び第2外部電極125には、図示しない配線又は端子を介して電源が接続され、第1外部電極124及び第2外部電極125は正極又は負極として機能する。なお、第1外部電極124及び第2外部電極125はいずれが正極又は負極であってもよい。
【0026】
圧電素子12は以上のような構成を有する。図2に示すように、圧電素子12は、接着材層14によって支持体11に接合されているものとすることができる。接着材層14は、耐熱性が高い合成樹脂等からなるものとすることができる。以下、圧電素子12の主面のうち、支持体11に配設される側の主面を第1の主面12aとし、その反対側の主面を第2の主面12bとする。
【0027】
なお、圧電素子12の大きさは特に限定されないが、例えば短辺が3mm以上15mm以下、長辺が20mm以上100mm以下、厚さが0.1mm以上1mm以下とすることができる。また、圧電素子12の支持体11における配設位置は、支持体11の周縁から0.3mm以上12mm以下とすることができる。
【0028】
金属層13は、金属材料からなり、圧電素子12の第2の主面12bに積層されている。図4は、圧電素子12に対する金属層13の配設位置を示す模式図である。金属層13を構成する金属材料は、熱伝導性が高いものが好適であり、例えば銅やアルミニウムであるものとすることができる。金属層13は、金属材料からなる層であればよく、金属箔やスパッタ膜、金属粒子を含有したペーストを塗布して形成された膜等とすることができる。金属層13は短辺が3mm以上15mm以下、長辺が20mm以上100mm以下とすることができ、厚さは0.1mm以上0.5mm以下が好適である。
【0029】
金属層13は、図4に示すように、接着材層15によって第2の主面12bに接合されているものとすることができる。接着材層15は、耐熱性が高い合成樹脂等からなるものとすることができる。また、金属層13は、接着材層15を介さずに、直接に第2の主面12bに積層されてもよい。
【0030】
[圧電素子の動作]
圧電素子12の動作について説明する。図5は、圧電素子12の動作を示す模式図である。同図に示すように、第1外部電極124及び第2外部電極125を介して第1内部電極122及び第2内部電極123に電圧を印加する。図5では第1内部電極122が正電位であり、第2内部電極123が負電位であるが、逆でもよい。
【0031】
第1内部電極122と第2内部電極123の間に電圧を印加すると、圧電材料層121は逆圧電効果により変形を生じ、電圧の印加を停止すると、変形が元に戻る。第1内部電極122と第2内部電極123の間に交流電圧又はパルス電圧を印加すると、変形が連続的に発生し、圧電素子12が振動する。図5に、圧電素子12の振動方向を矢印で示す。
【0032】
同図に示すように、圧電素子12の振動方向は圧電材料層121、第1内部電極122及び第2内部電極123の積層方向に直交する方向(主面に平行な方向)である。このような振動方向を有する圧電素子はd31型と呼ばれ、積層方向に垂直な方向を振動方向とするd33型とは異なる。
【0033】
圧電素子12が上記のように振動すると、支持体11がそれに伴って振動する。これにより、支持体11において振動触感を再生することができる。例えば、支持体11にユーザの指が接触した際に、支持体11を振動させ、ユーザに接触を感知させることができる。また、圧電素子12の振動数を調整することによって、支持体11を振動板として利用し、音声を発生させることも可能である。
【0034】
ここで、圧電素子12に電圧が印加されると、圧電素子12において熱が発生する。熱は、圧電素子12への印加電圧の大きさや電圧印加時間に応じて大きくなる。特に圧電材料層121がソフト材である場合には、圧電材料層121の変形量が大きい一方、発熱も大きくなる。
【0035】
[金属層による効果]
金属層13の効果について、比較例との比較の上で説明する。図6は、比較例に係る電子機器30の放熱の態様を示す模式図である。電子機器30は、支持体31、圧電素子32及び接着材層33から構成されている。支持体31、圧電素子32及び接着材層33は本実施形態と同様の構成を有するが、電子機器30においては金属層は設けられていないものとする。
【0036】
圧電素子32に電圧が印加され、熱が発生すると、図6に矢印で示すように熱は空気中に放熱される。しかしながら、圧電素子32は支持体31に接合されているため、支持体31によって放熱が阻害される。支持体31はガラスや合成樹脂等の光透過性を有する部材であり、熱伝導性が小さいためである。圧電素子32において発生した熱は十分に放熱されずに支持体31に伝達され、支持体31が加熱される。
【0037】
支持体31が加熱されると、支持体31に接触するユーザは不快に感じるおそれがある。また、熱によって圧電素子32が破壊され、あるいは、他の電子部品に不具合を生じさせるおそれもある。
【0038】
図7は、本実施形態に係る電子機器10の放熱の態様を示す模式図である。圧電素子12に電圧が印加され、熱が発生すると、同図に矢印で示すように熱は空気中に放熱される。ここで電子機器10には金属層13が設けられているため、圧電素子12において放出された熱は金属層13に伝達され、空気中に放熱される。これにより、支持体11によって放熱が阻害されていても、金属層13によって圧電素子12の放熱が促進され、支持体11の加熱が防止される。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る電子機器10においては、圧電素子12の効果的な放熱が可能である。なお、金属層13の厚さは0.1mm以上0.5mm以下が好適であるとしたが、0.1mm未満であると放熱性が不足し、0.5mmを超えると圧電素子12の変形が阻害されるためである。
【0040】
[金属層の各種構造]
金属層13は、上述した構成のものに限られず、各種構成を有するものとすることが可能である。図8乃至図10は、各種構成を有する金属層13を備える電子機器10の模式図である。
【0041】
図8に示すように、金属層13は、多孔質金属であってもよい。多孔質金属は、金属に酸処理を施したもの又は焼結金属とすることができる。気孔の大きさは例えば直径0.03mm以上0.07mm以下とすることができる。金属層13が多孔質金属からなる場合、単位体積あたりの表面積が大きいため、通常の金属に比べて放熱性を向上させることが可能である。換言すれば、放熱性を維持したまま金属層13を薄型化、軽量化することが可能である。また、多孔質金属は通常の金属より柔らかいため、圧電素子12の変形を阻害せず、この点でも好適である。
【0042】
また、図9に示すように、金属層13は、複数層が積層されて構成されていてもよい。この場合、同図に示すように、上層の面積(支持体12に垂直な方向からみた面積)を下層の面積よりを大きくすることにより、金属層13が空気に接触する面積が増大し、放熱性を向上させることが可能である。
【0043】
さらに、図10に示すように、金属層13は、互いに離間する複数の金属層であってもよい。この場合も、金属層13が空気に接触する面積が増大し、放熱性を向上させることが可能である。それぞれの金属層13の形状は特に限定されないが、例えば短冊状やタイル状とすることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る電子機器について説明する。
【0045】
[電子機器の構成]
図11は、本実施形態に係る電子機器20の斜視図であり、図12は、電子機器20の側面図である。これらの図に示すように、電子機器20は、支持体21、圧電素子22、金属層23及び接着材層24を備える。図11に示すように、支持体21には二つの圧電素子22が設けられているものとすることができる。また一つ又は三つ以上の圧電素子22が支持体21に設けられてもよい。
【0046】
支持体21は、第1の実施形態に係る支持体11と同様の構成を有し、即ちガラスや合成樹脂からなる光透過性を有する板状の部材である。
【0047】
圧電素子22は、電圧が入力されると変形を生じる素子である。圧電素子22は、第1の実施形態に係る圧電素子12と同様の構成を有するd31型の圧電素子である。圧電素子22は、図12に示すように接着材層24によって支持体21に接合されているものとすることができる。接着材層24は、耐熱性が高い合成樹脂等からなるものとすることができる。以下、圧電素子22の主面のうち、支持体21に配設される側の主面を第1の主面22aとし、その反対側の主面を第2の主面22bとする。
【0048】
金属層23は、金属材料からなり、圧電素子22の第1の主面22aに積層されている。図13は、圧電素子22に対する金属層23の配設位置を示す模式図である。同図に示すように、金属層23は支持体21に垂直な方向からみた圧電素子22の面積(第2の面22bの面積)より大きい面積を有する。金属層23を構成する金属材料は、熱伝導性が高いものが好適であり、例えば銅やアルミニウムであるものとすることができる。金属層23は、支持体21上にスパッタにより形成してもよく、支持体21に金属箔を貼付して形成してもよい。金属層23の厚さは0.1mm以上0.5mm以下が好適である。
【0049】
電子機器20は以上のような構成を有する。上述のように圧電素子22は第1の実施形態に係る圧電素子12と同様の構成であり、第1内部電極及び第2内部電極に電圧が印加されると、圧電材料層の積層方向に直交する方向(主面に平行な方向)を振動方向として振動すると共に発熱する。
【0050】
[金属層による効果]
図14は、本実施形態に係る電子機器20の放熱の態様を示す模式図である。圧電素子22に電圧が印加され、熱が発生すると、同図に矢印で示すように熱は空気中に放熱される。ここで電子機器20には金属層23が設けられているため、圧電素子22において放出された熱は金属層23に伝達され、空気中に放熱される。これにより、支持体21によって放熱が阻害されていても、金属層23によって圧電素子22の放熱が促進され、支持体21の加熱が防止される。つまり金属層23により、効率よく放熱できるため、安定して圧電素子22が駆動でき、また指で支持体21に接しても、温度が高くならないため不快感を抑制することができる。
【0051】
[金属層の配設態様]
金属層23は、上記のように支持体21上に形成されるため、圧電素子22の大きさによらずに面積を大きくすることが可能である。上述のように支持体21はディスプレイのパネルであり、その周縁にはベゼルが配置される。金属層23は、このベゼル内に納まるように配設することができる。
【0052】
図15は、ベゼルの配設領域B(破線の外周側領域)内に配設された金属層23を示す模式図である。ベゼルの配設領域Bは縦幅2mm以上10mm以下、横幅0.5mm以上5mm以下とすることができる。金属層23をベゼル配設領域B内に配設することにより、ディスプレイの画像表示領域を減少させることなく圧電素子22の放熱性を向上させることが可能である。
【0053】
なお、電子機器20は、第1の主面22aに積層された金属層23に加え、第1の実施形態において説明したような第2の主面22b上に積層された金属層を備えてもよい。
【実施例】
【0054】
本発明の実施例及び比較例について説明する。実施例として上記第1の実施形態に係る電子機器を作製し、電子機器の発熱を測定した。
【0055】
支持体はゴリラガラス(コーニング社製化学強化ガラス)からなり、サイズは短辺66mm、長辺136mm、厚さ0.55mmとした。筐体とパネル支持の幅は1mm、ベゼルは横幅2mm、縦幅4.9mmとした。
【0056】
支持体上に接着材層を介して圧電素子を配設した。圧電素子のサイズは短辺6mm、長辺53mm、厚さ0.3mmとした。圧電材料層はPZTからなり、圧電材料層の積層数は4層とした。支持体における圧電素子の搭載位置は、支持体の周縁から5mmとした。
【0057】
圧電素子上に、接着材層を介して金属層を積層した。金属層は銅箔からなり、短辺5mm、長辺45mm、厚さ0.3mmとした。
【0058】
また、比較例として、金属層及び金属層を電子機器に接着するための接着材層を有しない電子機器を作製した。その他の構成は実施例と同一である。
【0059】
実施例及び比較例に係る圧電素子に交流電圧(40kHz)を印加し、支持体の温度を測定した。図16は測定結果を示すグラフである。
【0060】
いずれの印加電圧の場合も、実施例と比較例を比較すると、実施例の方が支持体の温度が低いことがわかる。例えば、印加電圧25Vppの実施例と、印加電圧20Vppの比較例では支持体の温度の推移が同程度である。このため、実施例に係る電子機器は、金属層が設けられていることによって、比較例に係る電子機器に比べて圧電素子の発熱を効果的に放熱できていることがわかる。
【符号の説明】
【0061】
10、20…電子機器
11、21…支持体
12、22…圧電素子
12a、22a…第1の主面
12b、22b…第2の主面
13、23…金属層
14、24…接着材層
15…接着材層
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