特許第6352108号(P6352108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000002
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000003
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000004
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000005
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000006
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000007
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000008
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000009
  • 特許6352108-磁気共鳴イメージング装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352108
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61B5/05 355
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-169539(P2014-169539)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-61594(P2015-61594A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】14/033,767
(32)【優先日】2013年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】濱村 良紀
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−203036(JP,A)
【文献】 特開2012−130700(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0176601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が載置される寝台と、
RFコイルが装着された被検体を前記寝台上で覆うカバー部とを備え、
前記カバー部は、前記RFコイルに配置された送信機から近距離無線通信により送信されるデジタル信号を受信し、受信したデジタル信号を前記寝台に伝送する受信機を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記受信機は、前記送信機の配置密度と比較して高い密度で前記カバー部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記受信機は、前記被検体上に前記カバー部が配置され、かつ、前記カバー部の付近に前記RFコイルが配置された際に、前記送信機との間で前記近距離無線通信を確立することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
可撓性を有する通信線を介して前記受信機に接続され、前記デジタル信号として伝送される磁気共鳴データを処理するデータ処理システムをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記カバー部は、前記RFコイルを制御する制御コマンドを前記RFコイルに配置された受信機へ近距離無線通信により送信する送信機をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記カバー部は、スキャンの間、前記寝台上の定位置に前記被検体を保持する固定ベルトであることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記通信線は、前記受信機に接続される第1の通信線と、シリアルデータ通信ケーブルを含む第2の通信線とを有し、プロトコル変換後に、前記第1の通信線から前記データ処理システムへシリアルにデータを送信することを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記カバー部に配置され、前記プロトコル変換を実行するコントローラをさらに有することを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記寝台に配置され、前記プロトコル変換を実行するコントローラをさらに有することを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記受信機と前記送信機との間の近距離無線通信プロトコルと、有線のパラレルバスデータプロトコルとの間の変換を行う第1のプロセッサと、
前記有線のパラレルバスデータプロトコルとシリアルデータプロトコルとの間の変換を行う第2のプロセッサとをさらに備え、
前記第1のプロセッサ及び前記第2のプロセッサの少なくとも一方は、前記カバー部に配置されることを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記通信線は、前記寝台の表面に沿って、前記カバー部と前記データ処理システムとの間に設けられることを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記被検体がMRIガントリの内外へ移動される際に、前記被検体に近い場所に過不足なく柔軟に前記通信線を保持するケーブルリトラクタをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
少なくとも1つの受信機を、当該受信機と前記送信機との間の距離に基づいて、通信する受信機として選択することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記受信機と前記送信機とは、近距離無線通信プロトコルに従って相互に通信することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記カバー部は、前記受信機を含む送受信機を有し、
前記RFコイルは、前記送信機を含む送受信機を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージングに関し、特に、RF(Radio Frequency)コイルを配置するため、及び、RFコイルとデータ処理システムとの間を接続するためのシステム、方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置では、被検体から発生する磁気共鳴信号(Magnetic Resonance:MR)を受信するRFコイルが、スキャン中に被検体に装着される場合がある。このような場合に、例えば、被検体に装着されたRFコイルと、受信されたMR信号を処理するデータ処理システムとの間は、電線を介して接続される。しかし、RFコイルとデータ処理システムとの間を電線で接続すると、被検体の安全性及びRFコイルの配置の柔軟性が低下する場合があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7391214号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、MRI画像を収集する際の被検体の安全性及びRFコイルの配置の柔軟性を向上することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、寝台と、カバー部とを備える。寝台は、被検体が載置される。カバー部は、RFコイルが装着された被検体を前記寝台上で覆う。また、カバー部は、前記RFコイルに配置された送信機から近距離無線通信により送信されるデジタル信号を受信し、受信したデジタル信号を前記寝台に伝送する受信機を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る、寝台に取り付けられた固定ベルトに無線アンテナが組み込まれたMRI装置の一例を示す概略ブロック図である。
図2A図2Aは、実施形態に係る、磁気共鳴信号データを受信するための無線信号受信機が組み込まれた固定ベルトを使用して、被検体の腕をMRI装置の寝台に固定した状態の一例を示す概略図である。
図2B図2Bは、実施形態に係る固定ベルトの一部と当該固定ベルトが上に配置されたRFコイルの一部の一例を示す概略図である。
図3図3は、実施形態に係る寝台の一例を示す概略図である。
図4図4は、実施形態に係る、MR信号データを受信するための無線信号受信機が組み込まれた2つの固定ベルトを使用して寝台に固定された被検体の状態の一例を示す概略図である。
図5図5は、実施形態に係る、固定ベルトに組み込まれた無線信号受信機からMRデータを転送するための構成要素の一例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態に係る、MR信号データを転送するために無線信号送信機と無線信号受信機との間の接続を確立するのに使用されるプロトコル構成要素の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るMRIスキャン方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係るMRIスキャンによって収集されたMR信号データをデータ処理システムへ転送するための方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係るMRI装置は、寝台と、カバー部とを備える。寝台は、被検体が載置される。カバー部は、RFコイルが装着された被検体を前記寝台上で覆う。また、カバー部は、前記RFコイルに配置された送信機から近距離無線通信により送信されるデジタル信号を受信し、受信したデジタル信号を前記寝台に伝送する受信機を有する。
【0008】
なお、以下で説明する実施形態では、カバー部が、スキャンの間、寝台上の定位置に被検体を保持する固定ベルトである場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、カバー部は、スキャンの間、寝台上に置かれた被検体を覆うブランケットなどでもよい。
【0009】
図1に示すMRI装置は、MRIガントリ10(概略断面で示す)と、これに接続された各種の関連システムの構成要素20とを含む。一般的に、少なくともMRIガントリ10は、シールドルーム内に配置される。図1に示すMRI装置の構造は、実質的に同軸の円筒形に配置された、静磁場B磁石12と、Gx,Gy及びGzの傾斜磁場コイルセット14と、大型の全身用RF(Radio Frequency)コイル(Whole Body Coil:WBC)16とを含む。この円筒形に配列された要素の水平軸に沿って、寝台11によって支持された被検体(例えば、患者)9の上半身の一部を実質的に取り囲むイメージングボリューム18が形成される。固定ベルト(「被検体固定ベルト」とも呼ばれる)52は、被検体9を寝台11に固定可能な位置に配置される。小型のアレイRFコイル(Array Coil:AC)19は、少なくとも部分的に固定ベルト52の下に置かれた被検体9の一部に、より近接して装着される。アレイRFコイル19を使用してスキャンされる被検体9の一部は、本明細書では例えば、イメージングボリューム18における「スキャン対象の被写体」又は「被写体」と呼ぶ。当業者には自明であるように、全身用RFコイルと比較して小さい表面RFコイル等のコイルやアレイRFコイルは、特定の身体部分(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、背骨等)に合わせて設計されることが多い。そのような小型のRFコイルを、本明細書では、アレイコイル(Array Coil:AC)又はフェーズドアレイコイル(Phased Array Coil:PAC)と呼ぶ。これらのコイルには、イメージングボリューム内にRF信号を送信するように構成された少なくとも1つの送信コイル、及び、上記の例における被検体上半身等のイメージングボリューム内の被写体からRF信号を受信するように構成された少なくとも1つの受信コイルが含まれてもよい。
【0010】
固定ベルト52は、1つ又は複数の制御側無線アンテナ(無線信号受信機及び/又は無線信号送受信機)54を有する。複数の制御側無線アンテナ54は、アレイRFコイル19とMRIデータプロセッサ42との間で行われる通信のために、1つ以上の電線58を介して、MRIデータプロセッサ42に接続される。1つ以上の制御側無線アンテナ54は、MRI装置のスキャン動作中は、対応するコイル側無線アンテナ(無線信号送信機及び/又は無線信号送受信機、図1では図示せず)との接続を確立する。コイル側無線アンテナは、アレイRFコイル19に物理的に接続される。
【0011】
MRIシステムコントローラ22は、ディスプレイ24、キーボード26、及びプリンタ28に接続される入出力ポートを有する。当業者には自明であるように、ディスプレイ24は、制御入力もできるようにタッチスクリーンタイプのものでもよい。
【0012】
また、MRIシステムコントローラ22は、Gx,Gy及びGzの傾斜磁場コイルドライバ32、並びに、RF送信部34及び送信/受信(T/R)スイッチ36(同じRFコイルが送信及び受信の両方に使用される場合)を制御するMRIシーケンスコントローラ30に接続される。MRIシーケンスコントローラ30は、MRIイメージング(核磁気共鳴イメージング、又は、NMRイメージングとしても知られる)技術を実行するための適切なプログラムコード構造38を含む。MRIイメージング技術には、例えば、パラレルイメージングや、その他のイメージングシーケンスが含まれる。
【0013】
MRI装置の構成要素20は、ディスプレイ24に出力される処理画像データを作成するための入力データをMRIデータプロセッサ42へ送るRF受信部40を含む。MRIデータプロセッサ42は、MRI画像メモリ46に記憶された設定パラメータ、画像処理プログラムコード構造44、及び、プログラム記憶装置50に記憶されたMRI画像再構成のためのプログラムコードへのアクセス用に構成される。画像処理プログラムコード構造及びMRI画像再構成のためのプログラムコードは、MRI画像を再構成するための制御ロジックに加え、全身用RFコイル16及び/又はアレイRFコイル19からMRデータを得るための制御ロジックを含んでもよい。
【0014】
なお、図1では、RF送信部34、送信/受信スイッチ36、及びRF受信部40は、全身用RFコイル16及びアレイRFコイル19から離れて配置されているが、実施形態によっては、いずれかが全身用RFコイル16及びアレイRFコイル19のどちらか又は両方に近接して配置されてもよいし、又は、その表面上に配置されてもよい。
【0015】
また、図1には、MRI装置のプログラム記憶装置50の一般的な説明を示している。プログラム記憶装置50では、記憶されたプログラムコード構造(例えば、画像再構成のためのプログラム構造や、グラフィカルユーザーインタフェースを規定して、それに対する操作者の入力を受け取るためのプログラム構造など)が、MRI装置の様々なデータ処理構成要素へアクセス可能な非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶される。当業者には自明であるように、プログラム記憶装置50を分割して、そのうちの少なくとも一部を、(通常のように記憶して、MRIシステムコントローラ22に直接接続するのではなく)構成要素20の処理コンピュータのうち通常動作において当該プログラムコード構造を最優先で必要とする別のコンピュータに直接接続してもよい。
【0016】
実際に、図1の説明は、当業者には自明であるように、後述する例示的な実施形態を実施するために変更された典型的なMRI装置の非常に高度な概略図を示したものである。システムの構成要素は、様々な論理集合の「ボックス」に分割することができ、通常、多数のデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)と、マイクロプロセッサと、専用処理回路(例えば、高速A/D変換用、高速フーリエ変換用、アレイ処理用等)とを含む。これらのプロセッサの各々は、通常、クロック制御された「ステートマシン」であり、物理的なデータ処理回路は、クロックサイクル(または、所定数のクロックサイクル)毎に、ある物理状態から別の物理状態に移る。
【0017】
処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、演算装置等)の物理状態が、動作の過程で、あるクロックサイクルから別のクロックサイクルに徐々に変化するだけでなく、関連付けられたデータ記憶媒体(例えば、磁気記憶媒体内のビット記憶場所)の物理状態が、このようなシステムの操作過程において、ある状態から別の状態に変換される。例えば、画像再構成の工程や、場合によっては、コイル感度マップ生成の工程の終わりに、物理的な記憶媒体内におけるコンピュータ可読でアクセス可能なデータ値の記憶場所の配列は、ある先行状態(例えば、全て一様に「0」値、又は全て「1」値)から、そのような配列の物理的な場所の物理状態が最小値と最大値との間で変化して、実世界の物理的事象及び条件(例えば、イメージングボリューム空間にわたる被検体の内部物理構造)を表す新しい状態に変換される。当業者には自明であるように、そのような記憶データ値の配列は、命令レジスタに順次読み込まれ、MRI装置の構成要素20の1つ以上のCPUによって実行されたとき、MRI装置内で特定のシーケンスの動作状態を引き起こし遷移させるコンピュータ制御プログラムコードの特定構造が物理的構造を表し構成するのと同様に、物理的構造を表し構成する。
【0018】
以下に説明する例示的な実施形態は、RFコイルと制御システムと間の改良された通信方法を提供する。例示的な実施形態は、特に、MRI画像を収集する際の被検体の安全性及びRFコイルの配置の柔軟性を向上することができる。
【0019】
スキャン工程の間、被検体がMRIガントリに配置された状態で、被検体の身体の特定の部分において核スピンを励起するために、全身用RFコイル16及び/又はアレイRFコイル19等の1つ以上のRFコイルが、RFパルスを被検体の選択された部分に送信する。例えば、MRIガントリ内に配置された全身用RFコイル16を用いて、特にその領域における核スピンを励起する。続いて、先の励起の結果として生成されたMR信号(例えば、エコー信号)が、1つ以上の受信RFコイルによって受信される。RFパルスの送信及びMR信号の受信は、同じRFコイル(例えば、RF励起パルスの送信と対応するMR信号の受信との両方を行うように構成された全身用RFコイル16)で行われてもよいし、異なるRFコイルによって行われてもよい(例えば、全身用RFコイル16がRFパルスを送信し、アレイRFコイル19が、対応するMR信号を受信する)。診断等の用途のMRI画像を生成するためには、MR信号に対応するデータが、例えば、MRIデータプロセッサ42を含む処理装置等の制御システムへ処理のために通信される必要がある。MR信号に対応するデータは「MR信号データ」と呼ばれ、デジタル化されたMR信号を表す。
【0020】
スキャンを繰り返す間に収集されるMR信号のデータ量は、大きい可能性がある。MR信号データの送信における比較的高いデータ速度要件及び信頼性要件を満たすために、RFコイルからデータ処理システムまでの経路のほぼ全ての距離で、通常、電線又は光ファイバーが用いられる。
【0021】
しかし、受信RFコイルからデータ処理システムまでの経路を電線にすると、被検体の配置やRFコイルの配置に利用できる選択肢を大幅に制限してしまう可能性がある。例えば、被検体の付近に電線があると、それが被検体と接触したり、励起パルスが送信される際に生成される高いRF場の経路になったりすることにより、火傷の危険性が伴う。被検体及びRFコイルの電線上に誘導されるRFパルスに関連するRFエネルギーは、被検体が適切にセットアップされていない場合には、被検体の組織を加熱し、損傷を与える可能性がある。さらに、RFコイルを被検体上に配置するという選択肢は、電線が被検体の動き等と干渉を起こす可能性があるため、被検体の安全性に関する要件のために、制限される可能性がある。受信RFコイルからのデータが、受信RFコイルに電線で接続された無線信号送信機から無線で送信される際にも、同様の懸念が存在しうる。なぜなら、無線信号送信機と寝台に固定された無線信号受信機との間で無線接続を確立するために、RFコイルからの電線を寝台上の位置まで引き延ばさなくてはならない場合があり得るからである。
【0022】
本明細書に記載の実施形態は、被検体の安全性、RFコイルの配置の選択肢の可用性、及びスキャン工程の効率を向上させるために、無線通信を利用する。被検体の安全性は、露出した電線によって起こり得る火傷の危険性を低減することによって改善される。例えば、無線信号送信機が、受信RFコイルの表面に直接取り付けられるか、少なくとも非常に近接して取り付けられることによって、受信RFコイルに接続された無線信号送信機との間の露出した電線に起因する危険性を、完全に又は実質的に排除する。さらに、RFコイルから無線信号送信機までの電線を短くするか排除することができるようにするために、RFコイルから離れた位置まで無線信号送信機を引き離さなくても無線接続が確立できるように、複数の無線信号受信機を適宜に配置し、それにより、電線の露出を減少させる。RFコイルの配置の選択肢の可用性は、無線信号送信機と無線信号受信機との間の接続を、固定ベルトが配置できる任意の位置で確立できるようにすることによって改善される。さらに、少なくともいくつかの実施形態では、RFコイルからの電線をMRI制御システムまで延びるケーブル配線に手動で接続する必要性が排除又は削減され、それによって、スキャン工程の効率が改善される。
【0023】
図2Aは、実施形態に係る、MR信号データを受信するための無線信号受信機206が組み込まれた固定ベルト204を使用して、被検体212の腕214をMRI装置の寝台216に固定した状態の例を示す概略図である。固定ベルト204と腕214との間には、RFコイル202が配置される。パッド210は、RFコイル202と腕214との間や、RFコイル202と被検体212の身体の残りの部分との間等、様々な位置に配置される。例えば、固定ベルト204は、図1に示す固定ベルト52に対応し、RFコイル202は、図1に示すアレイRFコイル19に対応する。
【0024】
なお、ここでは、RFコイル202が固定ベルト204と腕214との間に配置される場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、RFコイル202は、固定ベルト204とは別の固定手段によって被検体212に配置されてもよい。その場合には、固定ベルト204は、被検体212のみを覆い、RFコイル202は、別の固定手段によって被検体212に配置されて固定される。
【0025】
パッド210は、被検体やRFコイルの位置決めを改善するために使用されてもよく、また、被検体とRFコイル202とが直接接触するのを防ぐために使用されてもよい。例えば、パッド210は、ポリウレタン、発泡体、又は同様の材料を使用して形成される。
【0026】
RFコイル202は、腕等の領域をスキャンするために特別に設計されたアレイRFコイル又は表面RFコイルであってもよい。その他の実施形態では、RFコイル202は、身体のその他の部分をスキャンするために設計されたが、腕をスキャンするために使用されているコイルであってもよい。実施形態によっては、RFコイル202は、2つ以上のコイル(例えば、別個の後面コイル及び前面コイル)を有してもよい。RFコイル202は、その外側に配置される1つ以上の無線信号送信機(図示せず)を有する。例えば、1つ以上の無線信号送信機は、RFコイル202と固定ベルト204との間に配置されてもよい。無線信号送信機は、電線による被検体の火傷の危険性が生じないように、RFコイル202に直接取り付けられてもよく、又は、非常に短い電線を介してRFコイル202に取り付けられてもよい。例えば、1つの実施形態では、無線信号送信機は、RFコイル202の外側表面に取り付けられるが、別の実施形態では、RFコイル202上の任意の位置に短い電線で取り付けられる。当業者には自明であるように、無線信号送信機は、必ずしもRFコイル202の物理的なコイル要素に取り付けられなくてもよく、通常は、カバー等のように、RF信号を受信する物理的なコイル要素を収容する別の構造物に取り付けられる。
【0027】
RFコイル202は、無線信号送信機だけでなく、アナログ/デジタル変換器、パラレル/シリアル変換器、変調器等のように、受信したMR信号を送信可能なデジタル化されたMR信号データに変換するために必要となるその他の構成要素を有してもよい。ここで、アナログ/デジタル変換器は、ダイレクトサンプリング方式でMR信号をデジタル信号に変換してMR信号データを生成する機能を有してもよい。ダイレクトサンプリング方式とは、周波数変換を行わずに、アナログ信号を直接アナログ/デジタル変換して検波する信号処理方式である。MR信号に対してダイレクトサンプリングを実行する場合、ダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS: direct digital synthesizer)により生成されたMR信号の検波用キャリアを用いて、デジタル信号の検波が実行される。なお、ここでいうダイレクトデジタルシンセサイザは、任意の波形や周波数をデジタル的に生成する回路又はシステムである。さらに、RFコイル202は、電力を供給するための再充電電池(図示せず)、又は、受電装置(図示せず)を有してもよい。電池の再充電や受電装置への電力供給は、例えば、無線充電等の任意の既知の技術を使用して行われてもよい。
【0028】
実施形態によっては、RFコイル202には、基準信号(例えば、サンプリングクロック)、及び、アナログ/デジタル変換を開始又は停止するためのトリガー信号が、無線で供給される。例えば、固定ベルト204の制御側無線アンテナ206は、無線信号受信機に加え、1つ以上の無線信号送信機を有してもよい。それに応じて、コイル側無線アンテナは、無線信号送信機に加え、1つ以上の無線信号受信機を有してもよい。ここで、無線信号送信機及び無線信号受信機の両方がコイル側無線アンテナ及び制御側無線アンテナにある場合、互いの送信機と受信機とからなる2つのペアの間で、別個の無線接続が確立されてもよい。例えば、通信を行うコイル側無線アンテナと制御側無線アンテナ206とのペアごとに、2つの別個の無線接続が確立されてもよい。なお、基準信号、アナログ/デジタル変換のトリガー信号等のように、RFコイル202の制御や設定等に関する情報は、例えばMRIシーケンスコントローラ30から伝達されてもよい。
【0029】
固定ベルト204は、被検体又は被検体の一部を実質的に寝台216上の定位置に保持するために使用される。固定ベルト204は、スキャンの間に被検体が動かないようにするために、多くのMRI装置において利用可能となっている。図示されているように、実施形態では、固定ベルト204は複数の制御側無線アンテナ206を組み込んで構成される。
【0030】
複数の制御側無線アンテナ(例えば、近距離無線通信(Near Field Wireless Communication:NFC)アンテナ)206は、固定ベルト204の外側又は内側のどちらの表面に配置されてもよい。実施形態によっては、制御側無線アンテナ206は、固定ベルト204の内部、例えば、外側表面と内側表面の間に組み込まれてもよい。複数の制御側無線アンテナ206は、任意のパターンにより設定されたレイアウトで配置されてもよい。例えば、制御側無線アンテナ206のレイアウト(例えば、空間的な配置)は、実質的に固定ベルト204の全長にわたって、又は、選択された局所領域において、固定ベルト204の制御側無線アンテナ206が、固定ベルト204と被検体の腕214との間に位置するRFコイル202に配置されたコイル側無線アンテナ(図示せず)の配置密度と比較して高い密度で固定ベルト204に配置される。制御側無線アンテナ206をコイル側無線アンテナよりも高い密度で配置することによって、RFコイルの配置の柔軟性が向上するため、例えば、制御側無線アンテナ206とコイル側無線アンテナとの間の位置関係を気にせずに、最適な画像を得ることができる位置となるようにRFコイルの位置を微調整することができる。
【0031】
複数の制御側無線アンテナ206は、例えば、図2Aに示される固定ベルト204の外側表面の長さ方向に沿って配置されてもよい。複数の制御側無線アンテナ206は、例えば、図1に示されるMRIデータプロセッサ42等のデータ処理システムに、可撓性を有する電線(通信線)208を介して接続されてもよい。
【0032】
固定ベルト204は、寝台216に取り付けられるように構成されており、寝台216に着脱可能に取り付けられてもよく、取り外しできないように取り付けられてもよい。寝台216への取り付け箇所は、寝台216の側端であってもよい。実施形態によっては、固定ベルト204、又は、固定ベルト204の寝台216への取り付け箇所は、寝台216の定位置に固定されてもよい。別の実施形態では、固定ベルト204の取り付け箇所は、寝台216の対応する側面にわたって移動可能(例えば、スライド可能)であってもよい。実際に、固定ベルト204(及びその取り付け場所、又は、その一方)を動かすことによって、固定ベルト204が被検体を拘束する位置を寝台216の側面に沿って変えてもよい。
【0033】
固定ベルト204の表面上に配置されるか、又は、固定ベルト204の内部に組み込まれる電線208は、1つ以上の個別のデータ通信線を有してもよい。1つの実施形態によれば、電線208は、固定ベルト204に配置された複数の制御側無線アンテナ206のそれぞれに対して少なくとも1つの個別の電線を含む。別の実施形態によれば、それぞれの電線は、2つ以上の制御側無線アンテナ206によってアクセスされるように構成されてもよい。電線208には、適切なシールド等が施されてもよい。
【0034】
別の実施形態では、(例えば、プロトコル変換のための)1つ以上のコントローラが、電線208に組み込まれてもよい。コントローラは、固定ベルト204又は寝台216に配置される。電線208は、寝台216の表面に沿って、固定ベルト204とデータ処理システムとの間に設けられる。電線208は、寝台216の端部で他のデータ伝送ケーブルへと続くか接続され、MR信号又はMR信号に対応するデータをMRIデータプロセッサ42へ伝送する。
【0035】
図2Bは、図2Aに示す構成において無線信号送信機220と無線信号受信機206との間の接続又は近接続が確立される領域の一例を拡大した概略図である。図に示す領域では、固定ベルト204の3つの無線信号受信機206がRFコイル202に近接しており、2つの無線信号送信機220がRFコイルの外側表面に取り付けられている場合の例を示している。図2Bに示されるように、無線信号送信機220は、無線信号受信機206よりも低い空間密度(例えば、2つの無線信号送信機220の間の距離が、より大きい)で配置されている。図に示す例では、無線接続は、図に示す中段の無線信号受信機206と、それに最も近い無線信号送信機220(図の例では、下側の無線信号送信機220)との間の空間224で、最も良好に確立されうる。
【0036】
1つの実施形態では、無線信号受信機及び無線信号送信機は、相互に近接する物体間での無線接続をサポートする。いくつかの例示的な実施形態で使用されるNFCプロトコルでは、対応する送信機及び受信機のペアの距離が、数cm程度(例えば、2cm)以下であることが要求される。実施形態における無線接続にNFCを使用すると、送信機と受信機との間の距離が非常に小さいため、他の多くの無線接続技術で伴う電力、信頼性、干渉、安全性等の問題の多くが生じない。図6に関連して、以下に例示的なNFC接続を説明する。
【0037】
無線信号受信機206及び無線信号送信機220の数は、例えば、対応すべきデータ転送速度、RFコイルの寸法、RFコイル1つ当たりのチャネル数、RFコイルや被検体の位置決めにおける所望の柔軟性、固定ベルトの位置、及び、データ転送プロトコルの転送速度等を考慮して決定してもよい。実施形態によっては、例えば、16チャネルのRFコイルは、少なくとも2つの接続を要し、各接続がコイル側無線アンテナと制御側無線アンテナ間との間の接続を要する。それにより、転送プロトコルの転送速度が375メガビット/秒である場合に、1チャネル当たり32メガバイト/秒のイメージングデータ速度を提供することができる(例えば、11チャネルのそれぞれに対して1対のコイル側無線アンテナ及び制御側無線アンテナ)。
【0038】
その全体を参照することにより本明細書に援用される、2013年7月18日に出願された同時係属中の米国特許出願第13/945,370号明細書には、NFC接続に使用可能な無線信号受信機及び無線信号送信機の例がさらに記載されている。
【0039】
図3は、実施形態に係る寝台314の一例を示す図である。寝台314は、図2Aに示す寝台216、及び、図1に示す寝台11に対応する。寝台314は、MRIガントリ326を出入り自在に構成される。例えば、寝台314が完全にMRIガントリ326の外にあるか、又は、部分的にMRIガントリ326の外にある状態で、被検体を寝台314に位置決めしてスキャンの準備をしてもよい。被検体の準備は、例えば、寝台314上に被検体を位置決めすること、被検体の選択された部位に1つ以上のRFコイルを配置すること、及び、1つ以上の固定ベルト304を使用して被検体を寝台に固定することを含む。被検体の準備が完了した後に、被検体が実質的に動かない状態で寝台314に配置された状態で、寝台314がスキャンの行われるMRIガントリ326へ移動される。
【0040】
寝台314には、それぞれに複数の無線信号受信機306が組み込まれた2つの固定ベルト304が取り付けられている。固定ベルト304の無線信号受信機306は、電線308を介して、データ処理システムに接続される。
【0041】
例えば、寝台314の下端部には、1つ以上の(電線308用の)ケーブルリトラクタ322が配置される。また、寝台314の片側には、ケーブルハウジング324が配置される。ケーブルリトラクタ322及びケーブルハウジング324は、被検体に火傷の危険性を与え得るような露出した電線があったとしても、それを最小限に抑えられるように、電線が柔軟に接続されるようにするものである。例えば、ケーブルリトラクタ322は、寝台314がMRIガントリ326の内外へ移動される際に、被検体に近い場所に過不足なく柔軟に電線を保持してケーブルハウジング324内に引き込めるように、ばね仕掛けで構成されてもよい。
【0042】
図4は、実施形態に係る、MR信号データを受信するための無線信号受信機406が組み込まれた2つの固定ベルト404を使用して寝台に固定された被検体の状態の一例を示す概略図である。図4に示すように、RFコイル402(図に示す例では、「身体中央部コイル」)が、2以上の固定ベルト404によって被検体上に保持されてもよい。図示していないが、無線信号送信機は、少なくとも固定ベルト404によって覆われた領域の下の位置で、RFコイル402の表面上に配置される。
【0043】
図5は、実施形態に係る、固定ベルトに組み込まれた無線信号受信機からMRデータを転送するための構成要素の一例を示すブロック図である。
【0044】
502、520及び526のブロックは、例えば、図1に示す固定ベルト52の制御側無線アンテナ54からMRIデータプロセッサ42への転送等のように、NFC受信機からデータ処理システムへのMR信号転送に関わる処理の構成要素を表す。
【0045】
例えば、Transferjet(登録商標)受信機等のNFC送受信機502は、受信RFコイルに取り付けられたNFC送信機から誘起電場を使用して送られたMR信号データを受信するように作動する。例えば、MR信号データは、カプラ512における無線信号受信機によって受信されてもよい。RFフィルタ514の後、受信されたMR信号は、NFC通信プロトコルを実装して無線信号受信機がカプラ512を介して対応する無線信号送信機と接続できるようにするコントローラ516によって、ホストシステム520へ転送される。コントローラ516は、受信したデータを、例えばセキュアデジタル入力・出力(Secure Digital Input Output:SDIO)等の高速データ転送フォーマットに変換する。
【0046】
ホストシステム520は、コントローラ516と連携して、SDIO等のパラレル転送フォーマットのMR信号データを受信し、受信したMR信号データを、(受信機からホストシステムへの短距離と比べて)比較的長距離の転送により適した第2のプロトコルフォーマットに適合させて、MRIデータプロセッサへ届けるよう作動する。図5に示す例では、SDIOホスト522が通信を確立し、SDIOインターフェース518上で受信機と通信して、MR信号をSDIOフォーマットで受信する。SDIOインターフェース518の転送速度(例えば、400メガビット/秒のバス速度)に基づいて、Transferjet送受信機の1対につき1つの個別のケーブルが必要となる可能性がある。ホストシステム520の別の構成要素であるSDIO/ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)プロセッサ524は、受信したSDIOデータストリームをUSBフォーマットに適合させ、かつ/又は必要となるケーブルの数を削減できるようにする。USBフォーマットはパラレルであり、コイルからMRIデータプロセッサへの距離に、より適している。ホストシステム520は、MRI処理システム526に対してよりも、NFCプロトコルプロセッサ516に対して近接して配置される。1つの実施形態では、ホストシステム520は、固定ベルトに、無線信号受信機とともに配置されてもよい。別の実施形態では、ホストシステム520は、寝台の、例えば対応する固定ベルトが取り付けられた場所に近い位置に配置される。USBフォーマットのMR信号データは、その後、インターフェース528上でMRI処理システム526へ転送されて、処理されて診断画像となる。診断画像はその後、別のインターフェース532上でディスプレイ又はその他の出力装置へ転送される。
【0047】
図6は、実施形態に係る、MR信号データを転送するために無線信号送信機と無線信号受信機との間の接続を確立するのに使用されるプロトコル構成要素600の一例を示す図である。例えば、図6は、Transferjetプロトコルによる無線信号送信機と無線信号受信機との間の接続を説明するものである。図6は、その全体を参照することにより本明細書に援用される、Transferjetコンソーシアムにより出版された、TransferjetTM Overview:Concept and Technology, Rev 1.1., February 2010(Transferjet概説:概念と技術、改定1.1.、2010年2月)の対応する図(図4−4)が出典となっている。
【0048】
例えば、図2Bに示す無線信号送信機220等の近距離送信機(NFC通信送信機)602と、例えば、図2Bに示す無線信号受信機206等の近距離受信機(NFC通信受信機)604との間に、通信が確立される。
【0049】
Transferjetプロトコルは、例えば、前述した無線信号受信機206及び無線信号送信機220等の2つのTransferjetデバイスが通信する物理層及び接続層を特定する。物理層及び接続層に加え、Transferjetは、図6に対応するプロトコル変換層についても規定している。プロトコル変換層は、上層との基本的な通信のために必要な制御機能(例えば、MRIデータプロセッサ42がMR信号の収集を制御するための(単数又は複数の)アプリケーション)、及び、下層を上位アプリケーション及びシステムインターフェースにマップするアダプター機能を提供する。プロトコルコントローラにより、初期化や上位層への基本的な通信(接続のセットアップ、接続の解放、及びデバイスの認証)等の共通のサービスが可能となる。例示のMRI装置では、プロトコルコントローラを含むTransferjetプロトコルは、固定ベルト上に配置されたNFC受信機とともに備えられるTransferjetプロセッサ516によって実装されてもよい。第2のTransferjetプロセッサが、NFC受信機が接続を確立する際に使用するNFC無線信号送信機とともに備えられてもよい。
【0050】
通信を確立するために、近距離送信機602及び近距離受信機604は、例えば、接続ステージ612、デバイス認証ステージ614、サービスネゴシエーションステージ616、及び、サービス実行ステージ618等のいくつかのプロトコルステージを実装してもよい。通信は、対になった受信コントローラと送信コントローラとの間の2地点間接続として確立される。
【0051】
接続ステージ612により、例えば、無線信号送信機220と、無線信号送信機220との通信範囲にある無線信号受信機206との間の接続が確立できる。また、このステージは、送信機及び受信機のペアが複数可能である場合に、相互に最も近接しており、及び/又は、最も安定した相互通信が可能な送信機及び受信機のペアの間で、通信が選択的に確立されることを含んでもよい。例えば、固定ベルト上での受信機の配置密度が、RFコイル上での送信機の配置密度を超える実施形態では、2つ以上の受信機が特定の送信機とともにNFC通信範囲内にあってもよい。接続を確立することで、送信機とペアになるように選択された受信機として、受信機の1つを選択するようにしてもよい。その選択は、送信機と各受信機との間の距離及び/又は信号強度に基づいてなされてもよい。
【0052】
デバイス認証ステージ614は、送信機及び受信機を相互に認証するために提供される。実施形態によっては、このステージは、例えば、送信機1式及び受信機1式が通常は特定のMRI装置によって変化しないため、縮小されるか又は回避されてもよい。
【0053】
接続が確立かつ認証されて、アプリケーションサービスが開始かつ遂行されると、サービスネゴシエーションステージ616及びサービス実行ステージ618が受信機及び送信機のために提供される。例えば、アプリケーションサービスは、MRデータがRFコイルから受信されてMRIデータ処理へ送信されるための、送信機及び受信機における処理の開始に向けられてもよい。例示的な実施形態では、ホストシステム(例えば、ホストシステム520)がアプリケーションサービスであってもよく、基準信号を接続されたRFコイルへ提供する、MR信号データ受信を開始する、対応するNFC送信と受信の対の間の通信を自動で確立する等の操作を含んでもよい。
【0054】
図7は、実施形態に係るMRIスキャン方法700の一例を示すフローチャートである。例えば、MRIスキャン方法700は、MR信号を受信するRFコイル上に配置された無線信号送信機と、MRI装置の寝台に取り付けられた固定ベルトに配置された無線信号受信機の間のNFC接続を含む通信経路上で、MR信号データをRFコイルからデータ処理システムへ送信するように構成されたMRI装置を使用して、被検体のMRIスキャンを行う際に実行される一連のイベントを示す。
【0055】
ステップ702では、被検体(例えば被写体)が、MRI装置の寝台に配置される。上述したように、被写体の位置決めは、スキャンの準備工程の一部であってもよい。
【0056】
ステップ704では、アレイRFコイル19等のRFコイルが、被写体に対して選択された位置に配置される。上述したように、RFコイルはMR信号を受信するように構成され、NFCを使用して受信したMR信号を送信するための少なくとも1つの無線アンテナを有する。ある例示的な実施形態では、RFコイル及び無線送信アンテナは、図2A及び図2Bに関連して説明したように構成される。実施形態によっては、アレイRFコイル19はMR信号の受信だけでなく、RF励起パルスの送信も行ってよい。
【0057】
ステップ706では、RFコイルが、寝台の片側から反対側へと続く固定ベルトによって被写体に固定される。固定ベルトは、複数の無線受信アンテナで、RFコイルに配置された無線送信アンテナによって送信されるMR信号データを受信するように構成される。固定ベルトを含む例示固定ベルトは、図2A及び図2Bに関連して説明される。
【0058】
ステップ708では、固定ベルト上の少なくとも1つの無線信号受信機と、RFコイル上の少なくとも1つの送信機との間で接続が確立される。例えば、システムは、受信機及び送信機の1つのペアを、利用可能と考えられる複数のペアの中から自動的に選択する。受信機及び送信機のペアの間で例示的なNFC接続を確立するための例示的なプロトコル処理は、図6を参照して既に説明した。確立された接続は、RFコイル上、固定ベルト上、及び/又は、MRIガントリ上のディスプレイ内に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)、又は、その他の種類の表示手段をONにすることによって、操作者に示されてもよい。
【0059】
ステップ710では、被写体が、スキャンのためにMRIガントリ内に移動される。例えば、被検体が寝台に対して動かない状態で、寝台がMRIガントリ内に移動される。同様に、被写体を寝台に固定するRFコイル及び固定ベルトも、相互に動かない状態であってもよい。
【0060】
ステップ712では、MRイメージングが開始される。
【0061】
ステップ714では、ステップ708で確立された接続により、MR信号データがRFコイルからMRIデータプロセッサへ転送される。MR信号データの転送については、図8を参照して、以下にさらに説明される。
【0062】
ステップ716では、MRI画像が、受信されたMR信号データに基づいて形成される。画像はその後、表示及び/又は格納されてもよい。
【0063】
図8は、実施形態に係るMRIスキャンによって収集されたMR信号データをデータ処理システムへ転送するための方法800の一例を示すフローチャートである。1つの実施形態では、方法800は、上述したステップ714を実行する際に使用されてもよい。
【0064】
ステップ802では、固定ベルトの受信機において、MR信号データが受信される。受信されたMR信号データは、受信RFコイルに取り付けられた送信機によって送信される。例示的なNFC接続は、上述したTransferjetプロトコルによって確立されてもよい。
【0065】
ステップ804では、第1のプロセッサ(例えば、図5に示すコントローラ516)は、NFC接続によって受信されたMR信号データを、例えばSDIO等のパラレルバスデータフォーマットに変換する。NFCプロトコルプロセッサは、固定ベルトに配置されていてもよい。
【0066】
ステップ806では、第2のプロセッサ(例えば、図5に示すホストシステム520)が、MR信号データをパラレルバスデータフォーマットで受信し、第2のプロセッサが配置されている位置からMRIデータプロセッサまでの比較的長距離により適したフォーマットへ変換する。1つの実施形態では、USBフォーマット等のシリアルデータフォーマットが、第2のプロセッサからMRIデータプロセッサへの送信に使用されてもよい。
【0067】
ステップ808では、シリアルフォーマットのMR信号データが、電線を介して、データ処理システムへ送信される。
【0068】
当業者には自明であるように、上記の実施形態により、MR信号データが受信RFコイルからMRIデータプロセッサへ無線接続を含む経路を介して送信されるMRイメージングが改良される。該無線接続では、無線接続のための受信機は、寝台上に配置された被写体のイメージングのためにMRI装置が作動中に、固定ベルトが被写体の少なくとも一部の上に配置され、かつ、受信RFコイルが固定ベルトと被写体の間に配置される際に、固定ベルト上に配置された複数の無線信号受信機から選択される。
【0069】
特定の実施態様について説明してきたが、これらの実施態様は例示を目的に提示されているに過ぎず、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。本明細書に記載の新規な実施形態は、他の様々な形態で具現化することができる。さらに、本開示の精神から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態の形態に、種々の省略、置換、及び改変を行うことができる。添付の請求項及びそれらの均等物は、本発明の範囲及び趣旨に含まれるような諸形態又は変更形態を対象として含むように意図されている。
【符号の説明】
【0070】
11 寝台
52 固定ベルト
54 制御側無線アンテナ(無線信号受信機)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8