特許第6352114号(P6352114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352114
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20180625BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20180625BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20180625BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F01N3/08 BZAB
   F01N3/025 201C
   F01N3/24 L
   F01N3/20 L
   F01N3/08 G
   B01D53/86 222
   B01D53/90
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-176158(P2014-176158)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50522(P2016-50522A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信也
(72)【発明者】
【氏名】細谷 満
(72)【発明者】
【氏名】高倉 隆
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−068424(JP,A)
【文献】 特表2002−531743(JP,A)
【文献】 特開2010−038034(JP,A)
【文献】 特開2008−298036(JP,A)
【文献】 特表2010−513773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/025
F01N 3/20
F01N 3/24
B01D 53/86
B01D 53/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流れる排気通路と、
前記排気通路内に位置する選択還元型触媒と、
前記排気通路において前記選択還元型触媒よりも上流に位置する添加弁と、
前記排気通路において前記添加弁よりも上流に位置するバーナーであって、前記バーナーにおける燃料の燃焼空間が前記排気通路内の空間の一部である前記バーナーと、
前記添加弁に接続されて前記添加弁に向けて尿素水が流れる接続通路であって、前記接続通路の一部が、前記燃焼空間を通る前記接続通路と、を備え
前記排気通路は、
前記燃焼空間が形成された燃焼部を備える第1排気通路と、
前記選択還元型触媒が位置する空間が形成された選択還元部を備える第2排気通路と、を含み、かつ、
前記第1排気通路における排気ガスの出口から前記第2排気通路における排気ガスの入口に向けて折り返された形状を有し、
前記バーナーにおける前記燃料の燃焼による熱が前記燃焼部から前記選択還元部に伝達可能に、前記燃焼部と前記選択還元部とが互いに並設されている
排気浄化システム。
【請求項2】
前記排気通路において前記バーナーよりも下流であって、かつ、前記添加弁よりも上流に位置するDPFを備える
請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項3】
前記バーナーの駆動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記選択還元型触媒の温度を取得し、前記取得された温度が前記選択還元型触媒の活性温度未満である場合に前記バーナーを駆動する
請求項1または2に記載の排気浄化システム。
【請求項4】
前記選択還元型触媒が第1の選択還元型触媒であり、
前記添加弁が第1の添加弁であり、
前記接続通路が第1の接続通路であり、
前記バーナーの下流であって、かつ、前記第1の添加弁よりも上流に位置する第2の選択還元型触媒と、
前記バーナーの下流であって、かつ、前記第2の選択還元型触媒よりも上流に位置する第2の添加弁と、
前記第1の接続通路とは異なる第2の接続通路であって、前記第2の添加弁に接続され、前記第2の添加弁に向けて尿素水が流れる前記第2の接続通路であって、前記第2の接続通路の一部が、前記燃焼空間を通る前記第2の接続通路と、をさらに備える
請求項1〜のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択還元型触媒を備えた排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1のように、排気に含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)を低減する排気浄化システムとして、尿素水添加装置と選択還元型触媒とを用いた尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが知られている。尿素SCRシステムでは、尿素水添加装置によって尿素水が添加された排気ガスが選択還元型触媒に流入する。尿素水は、加水分解によりアンモニアに変換される。選択還元型触媒では、アンモニアによってNOxが窒素と水とに還元される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−11193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気ガスに添加された尿素水は、排気ガスの熱や選択還元型触媒の熱によって加水分解されてアンモニアへと変換される。そのため、排気ガスの温度や選択還元型触媒の温度が低い場合には、尿素水がアンモニアに変換されにくいばかりか尿素水に含まれる尿素が結晶化してしまうため、尿素水の添加量を制限せざるを得ない。こうした尿素水の制限は、NOxの低減量の低下を招く。
【0005】
本発明は、NOxの低減量を高めることが可能な排気浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する排気浄化システムは、排気ガスが流れる排気通路と、前記排気通路内に位置する選択還元型触媒と、前記排気通路において前記選択還元型触媒よりも上流に位置する添加弁と、前記排気通路において前記添加弁よりも上流に位置するバーナーであって、前記バーナーにおける燃料の燃焼空間が前記排気通路内の空間の一部である前記バーナーと、前記添加弁に接続されて前記添加弁に向けて尿素水が流れる接続通路であって、前記接続通路の一部が、前記燃焼空間を通る前記接続通路と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、バーナーの駆動によって、接続通路を流れる尿素水が加熱されるとともに排気ガスが昇温されることから、尿素水がアンモニアに変換されやすくなる。これにより、排気ガスの温度や選択還元型触媒の温度が低い場合であっても排気通路に対する還元剤の添加が可能となる。その結果、NOxの低減量が高められる。
【0008】
上記排気浄化システムは、前記排気通路において前記バーナーよりも下流であって、かつ、前記添加弁よりも上流に位置するDPFを備えることが好ましい。
上記構成によれば、エンジンにおける燃料の燃焼によって発生した粒子性物質、及び、バーナーにおける燃料の燃焼によって発生した粒子性物質がDPFで捕捉される。また、バーナーの駆動によって排気ガスが昇温されることから、尿素水の加熱を行いつつ、DPFの再生を行うことが可能である。
【0009】
上記排気浄化システムにおいて、前記排気通路は、前記燃焼空間が形成された燃焼部を備える第1排気通路と、前記選択還元型触媒が位置する空間が形成された選択還元部を備える第2排気通路と、を含み、かつ、前記第1排気通路における排気ガスの出口から前記第2排気通路における排気ガスの入口に向けて折り返された形状を有し、前記バーナーにおける前記燃料の燃焼による熱が前記燃焼部から前記選択還元部に伝達可能に、前記燃焼部と前記選択還元部とが互いに並設されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、バーナーの駆動により選択還元型触媒が加熱されることで、選択還元型触媒が活性温度に到達するまでに要する時間が短縮される。
上記排気浄化システムは、前記バーナーの駆動を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記選択還元型触媒の温度を取得し、前記取得された温度が前記選択還元型触媒の活性温度未満である場合に前記バーナーを駆動することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、選択還元型触媒の温度が活性温度未満である場合にバーナーが駆動されることから、尿素水の加熱による燃料消費量が抑えられる。
上記排気浄化システムにおいて、前記選択還元型触媒が第1の選択還元型触媒であり、前記添加弁が第1の添加弁であり、前記接続通路が第1の接続通路であり、前記バーナーの下流であって、かつ、前記第1の添加弁よりも上流に位置する第2の選択還元型触媒と、前記バーナーの下流であって、かつ、前記第2の選択還元型触媒よりも上流に位置する第2の添加弁と、前記第1の接続通路とは異なる第2の接続通路であって、前記第2の添加弁に接続され、前記第2の添加弁に向けて尿素水が流れる前記第2の接続通路であって、前記第2の接続通路の一部が、前記燃焼空間を通る前記第2の接続通路と、をさらに備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、バーナーの駆動によって、第1及び第2の接続通路を流れる尿素水が加熱される。そのため、排気ガスの温度や選択還元型触媒の温度が低い状態からNOxの還元を段階的に行うことが可能である。その結果、NOxの低減量がさらに高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における排気浄化システムの概略構成を示す図。
図2】第1実施形態において還元剤を添加する処理の一例を示すフローチャート。
図3】第1実施形態において触媒温度に対するNOx低減率の一例を示すグラフ。
図4】第2実施形態における排気浄化システムの概略構成を示す図。
図5】第2実施形態において触媒温度に対するNOx低減率の一例を示すグラフ。
図6】変形例における排気浄化システムの概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1図3を参照して、排気浄化システムの第1実施形態について説明する。
図1に示されるように、排気浄化システムは、エンジンから排気ガスが供給され、供給された排気ガスを浄化して排出するものであり、内筒3と、内筒3の外側に配設される外筒4とから構成される二重管構造を備えている。外筒4は、有底の筒構造を有しており、内筒3の有する2つの端部のうちでエンジンに近い端部とは反対側の端部である先端部は、外筒4内に挿入され、外筒4の底面5から離間している。これにより、内筒3の内部空間は、内筒3の外面と外筒4の内面との間の外側空間と連通し、これら内筒3と外筒4との全体で、排気通路10を構成する。
【0015】
具体的に、排気通路10は、内筒3の内面から構成される第1排気通路11と、内筒3の外面と外筒4の内面とから構成される第2排気通路12と、外筒4の底面5と外筒4の内面とから構成されて、第1排気通路11と第2排気通路12とを連通する第3排気通路13とを有している。排気通路10は、第2排気通路12を通過した排気ガスを排出する第4排気通路14を有している。この排気通路10において、エンジンからの排気ガスは、第1排気通路11に供給され、次いで、第3排気通路13で折り返されて第2排気通路12に供給され、最後に、第4排気通路14から排出される。このように、排気通路10は、第3排気通路で排気ガス流路が折り返され、かつ、第1排気通路11の外側に第2排気通路12が位置するように構成されることで、排気ガス流路を長く形成しつつ、内筒3や外筒4の延びる方向において小型化を実現している。
【0016】
排気浄化システムは、バーナー20を備える。バーナー20は、第1排気通路11内に燃料を供給する燃料供給部21と、第1排気通路11内に供給された燃料を着火する点火プラグ22と、を備える。
【0017】
燃料供給部21は、第1排気通路11内に燃料を噴射する噴射ノズル23と、燃料タンク24内の燃料を噴射ノズル23に供給するための燃料通路25と、を備える。燃料供給部21は、燃料通路25にポンプ26と開閉弁27とを備える。ポンプ26は、エンジンを動力源とするポンプであって、燃料タンク24内の燃料を所定圧力で開閉弁27に圧送する。開閉弁27は、燃料通路25を開閉する。点火プラグ22は、例えばスパークプラグやグロープラグであって、噴射ノズル23から噴射された燃料に着火する。燃料は、排気ガスに残存する酸素を酸化剤として燃焼する。噴射ノズル23による燃料噴射量、開閉弁27の開閉、及び、点火プラグ22の駆動、すなわちバーナー20の駆動は、制御装置50によって制御される。なお、噴射ノズル23は、開閉弁27の機能が内蔵されるインジェクターであってもよい。
【0018】
第1排気通路11の一部は、燃焼部29として機能し、燃焼部29は、第1排気通路11なかで、排気の流れる方向において噴射ノズル23よりも下流に位置している。燃焼部29には、第1排気通路11の内部空間の一部である燃焼空間28が形成され、噴射ノズル23から噴射された燃料は燃焼空間28において燃焼して燃料の燃焼にともなう火炎を生成する。排気の流れる方向において燃焼部29の上流端には、点火プラグ22が位置している。排気の流れる方向において燃焼部29の下流端には、加熱部41が位置している。排気の流れる方向において第1排気通路11のなかで燃焼部29の占有する範囲は、点火プラグ22と加熱部41の下流端との間であり、図1において範囲Aで示されている。
【0019】
排気浄化システムは、第1排気通路11における燃焼空間28の下流に、DPF30(Diesel Particulate Filter)を備える。DPF30は、排気ガスに含まれる粒子性物質(PM:Particulate Matter)を捕捉する。DPF30が捕捉した粒子性物質は、DPF30に流入する排気ガスがバーナー20によって昇温されることにより焼却可能である。
【0020】
排気浄化システムは、排気ガスのNOxを還元するための還元剤を供給する還元剤供給装置35を備える。還元剤供給装置35は、DPF30を通過した排気ガスに対して還元剤を添加する添加弁36を備える。添加弁36は、第3排気通路13において、第1排気通路11から流出した直後の排気ガスが有する流れ方向に沿った第1排気通路11の延長上にて還元剤を添加する。
【0021】
還元剤供給装置35は、所定濃度の尿素水を貯留する尿素水タンク37と、尿素水タンク37と添加弁36とを接続する接続通路38と、を備える。還元剤供給装置35は、接続通路38にポンプ39と開閉弁40とを備える。ポンプ39は、尿素水タンク37内の尿素水を所定圧力で開閉弁40に圧送する。開閉弁40は、接続通路38を開閉する。添加弁36による添加量、及び、開閉弁40の開閉、すなわち還元剤供給装置35の駆動は、制御装置50によって制御される。
【0022】
接続通路38は、第1排気通路11の一部である燃焼空間28に引き回された部分を備える。燃焼空間28に位置する部分は、尿素水を加熱するための加熱部41として機能する。加熱部41は、尿素水の圧送される方向において開閉弁40の下流に位置している。
【0023】
加熱部41は、重力方向に沿って延びるコイル形状の部分を有し、尿素水の流れる方向において上流に位置する部位ほど重力方向側に位置している。加熱部41は、排気ガスを熱媒体としてバーナー20の駆動により加熱され、加熱部41を流れる尿素水に火炎の有する熱を伝える。接続通路38は、尿素水タンク37と添加弁36とを接続していればよく、加熱部41と、接続通路38において加熱部41以外の部分とが相互に異なる材質を有していてもよいし、相互に同じ材質を有していてもよい。なお、加熱部41は、熱伝導率の高い材料が好ましく、例えば銅やステンレスが好ましい。
【0024】
排気浄化システムは、第2排気通路12に選択還元型触媒43を備える。第2排気通路12の一部は、選択還元部45として機能し、選択還元部45は、選択還元型触媒43が位置する空間である触媒空間44を形成する。選択還元部45は、内筒3のうちで選択還元型触媒43と対向する部分である内側通路壁3Bと、外筒4のうちで選択還元型触媒43と対向する部分である外側通路壁4Bとから構成されている。内筒3の軸方向において選択還元部45の占有する範囲は、選択還元型触媒43の厚さに相当し、図1において範囲Bによって示されている。内筒3において選択還元部45を構成する部分は、燃焼空間28と触媒空間44とを仕切る仕切壁3Sである。
【0025】
排気浄化システムは、吸入空気量センサー46、NOx濃度センサー47、温度センサー48を備える。吸入空気量センサー46は、エンジンの吸入空気量Qaを検出する。NOx濃度センサー47は、燃焼空間28に流入する排気ガスのNOx濃度Cx1を検出する。温度センサー48は、選択還元型触媒43に流入する排気ガスの温度を選択還元型触媒43の温度である触媒温度Tc1として検出する。各センサー46,47,48は、各々の検出値を示す信号を制御装置50に出力する。
【0026】
制御装置50は、CPU、各種制御プログラムや各種データが格納されたROM、各種演算における演算結果や各種データが一時的に格納されるRAM等によって構成され、ROMに格納された各制御プログラムに基づいて各種処理を実行する。
【0027】
制御装置50は、吸入空気量センサー46からの信号に基づく吸入空気量Qa、NOx濃度センサー47からの信号に基づくNOx濃度Cx1、温度センサー48からの信号に基づく触媒温度Tc1を取得する。制御装置50は、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx1、触媒温度Tc1に基づいて、還元剤供給装置35の駆動とバーナー20の駆動とを制御する。
【0028】
制御装置50は、吸入空気量QaとNOx濃度Cx1とに基づき、還元剤供給装置35の駆動を制御する。制御装置50は、吸入空気量QaとNOx濃度Cx1とに基づき排気ガスに含まれるNOx量Gx1を演算し、その演算したNOx量Gx1の分のNOxを還元するために必要な還元剤の量である添加量Gu1を演算する。制御装置50は、開閉弁40の開閉を制御し、排気ガスに対して添加量Gu1の分の還元剤を添加弁36から添加する。
【0029】
制御装置50は、触媒温度Tc1、添加量Gu1に基づきバーナー20の駆動を制御する。制御装置50は、触媒温度Tc1が活性温度Tca未満であるか否かを判断し、触媒温度Tc1が活性温度Tca未満である場合にバーナー20を駆動する。
【0030】
制御装置50は、噴射ノズル23から噴射する燃料量Gfを演算する。燃料量Gfは、燃焼空間28における燃料の燃焼により加熱部41において添加量Gu1の分の尿素水が所定の状態まで昇温される燃料の量であり、例えば、加熱部41において添加量Gu1の分の尿素水がアンモニアに加水分解される燃料の量である。制御装置50は、開閉弁27の開閉を制御し、燃料量Gfの燃料を噴射ノズル23から噴射する。また、制御装置50は、第1排気通路11に対する燃料の噴射が開始されると点火プラグ22を所定時間だけ駆動し、第1排気通路11内に噴射された燃料に着火する。着火後における燃料の燃焼は、燃焼空間28に対する連続的な燃料の供給により維持される。
【0031】
図2を参照して、還元剤を添加する処理の一例について説明する。この処理は、エンジンの始動により開始されるとともに繰り返し実行される。
図2に示されるように、制御装置50は、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx1、触媒温度Tc1を取得する(ステップS11)。続いて、制御装置50は、吸入空気量QaとNOx濃度Cx1とに基づいてNOx量Gx1を演算し(ステップS12)、そのNOx量Gx1に基づき添加量Gu1を演算する(ステップS13)。
【0032】
次のステップS14において、制御装置50は、ステップS11において取得した触媒温度Tc1が活性温度Tca未満であるか否かを判断する。触媒温度Tc1が活性温度Tca以上であった場合(ステップS14:NO)、制御装置50は、開閉弁40の開閉を制御し、添加量Gu1の分の還元剤を添加弁36から排気ガスに添加し(ステップS19)、一連の処理を一旦終了する。
【0033】
触媒温度Tc1が活性温度Tca未満であった場合(ステップS14:YES)、制御装置50は、添加量Gu1に基づく燃料量Gfを演算し(ステップS15)、開閉弁27の開閉を制御して燃料量Gfの燃料を噴射ノズル23から噴射する(ステップS16)。
【0034】
次のステップS17において制御装置50は、燃料量Gfの演算が連続しているか否かを判断する。制御装置50は、燃料量Gfの演算が連続していない場合(ステップS17:NO)にのみ点火プラグ22を駆動し(ステップS18)、添加量Gu1に応じて開閉弁40の開閉を制御して(ステップS19)一連の処理を一旦終了する。
【0035】
図3を参照して第1実施形態の排気浄化システムの作用について説明する。
排気浄化システムでは、添加弁36に接続される接続通路38は、燃焼空間28に位置する加熱部41を備える。そのため、バーナー20が駆動されると、排気ガスが昇温されるとともに、接続通路38を流れる尿素水が加熱部41にて加熱される。これにより、尿素水がアンモニアに変換されやすくなることから、排気ガスの温度や触媒温度Tc1が低い場合であっても排気通路10に対する還元剤の添加が可能となる。
【0036】
図3は、触媒温度Tc1とNOx低減率との関係の一例を示すグラフであって、NOx低減率について行った実験の結果を示すグラフである。図3において、実施例は上記排気浄化システムであり、比較例は加熱部41を有していない排気浄化システムである。
【0037】
図3に示されるように、実施例では、触媒温度Tc1が100℃〜180℃の温度範囲である冷間始動時や軽負荷運転時において、NOx低減率が比較例よりも著しく高いことが認められた。また、触媒温度Tc1が200℃以下の温度範囲において、各温度におけるNOx低減率が比較例よりも高いことが認められた。すなわち、実施例は、NOxの低減量が比較例よりも格段に高められることが認められた。
【0038】
第1実施形態の排気浄化システムによれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)バーナー20の駆動によって尿素水がアンモニアに変換されやすくなることから、触媒温度Tc1が活性温度Tcaより低くとも排気通路10に対して還元剤が添加可能である。その結果、NOxの低減量が高まる。
【0039】
(2)バーナー20の下流にDPF30が配設されていることで、バーナー20の駆動にともなう粒子性物質をDPF30にて捕捉することができる。その結果、バーナー20の駆動に起因した粒子性物質の排出量の増加が抑えられる。
【0040】
(3)触媒空間44と燃焼空間28とが内筒3の仕切壁3Sによって仕切られていることで燃焼部29と選択還元部45とが互いに隣接している。そのため、バーナー20の駆動により上記仕切壁3Sが加熱され、その加熱された仕切壁3Sによって選択還元型触媒43が加熱される。すなわち、バーナー20の駆動により、燃焼部29を介して選択還元型触媒43が加熱される。その結果、触媒温度Tc1が活性温度Tcaに到達するまでに要する時間が短縮される。
【0041】
(4)バーナー20は、触媒温度Tc1が活性温度Tca未満である場合に駆動される。これにより、バーナー20で尿素水を加熱するうえでの燃料消費量が抑えられる。
(5)燃料量Gfは、添加量Gu1の尿素水が加熱部41において所定の状態まで昇温される燃料の量である。そのため、バーナー20の駆動中は、排気通路10に対して添加される還元剤が尿素水ではなくアンモニアである確率が高まる。
【0042】
(6)加熱部41がコイル状の形状を有する。そのため、加熱部41の表面積が大きくなるとともに加熱部41の流路長が長くなる。その結果、加熱部41における尿素水の加熱が効率よく行われることから、添加量Gu1に関する自由度が向上する。
【0043】
(7)加熱部41は、上流の部位ほど重力方向側に位置する。そのため、尿素水から変換されたアンモニアが加熱部41から排出されやすい。
(8)添加弁36は、第1排気通路11から流出した直後の排気ガスが有する流れ方向における第1排気通路11の延長上にて還元剤を添加する。すなわち、第1排気通路11から流出した排気ガスは、添加弁36に向かって流れたのちに第2排気通路12に流入する。そのため、排気ガスのうちで、還元剤が添加されてから第2排気通路12に向かって流れる排気ガスの割合が高まる。これにより、排気ガスにおいて還元剤が分散されやすくなり、選択還元型触媒43によるNOxの還元が効率よく行われる。
【0044】
(第2実施形態)
図4及び図5を参照して、排気浄化システムの第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の排気浄化システムは、第1実施形態の排気浄化システムと主要な構成が同じであるため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0045】
図4に示されるように、排気浄化システムは、排気の流れる方向において第2排気通路12における選択還元型触媒43よりも上流に選択還元型触媒56を備える。還元剤供給装置35は、選択還元型触媒56と選択還元型触媒43との間を流れる排気ガスに還元剤を添加する複数の添加弁57を備える。還元剤供給装置35は、尿素水タンク37と添加弁57とを接続する接続通路58を備える。接続通路58は、尿素水の流れる方向においてポンプ39の下流、かつ、開閉弁40の上流において接続通路38から分岐する。接続通路58は、開閉弁59を備える。添加弁57による添加量、及び、開閉弁59の開閉は、制御装置50によって制御される。接続通路58の一部は、接続通路38と同じく、燃焼空間28に位置する加熱部60として機能する。加熱部60は、加熱部41と同じく、反重力方向に沿って延びるコイル形状を有し、尿素水の流れる方向において上流の部位ほど重力方向に位置する。
【0046】
排気浄化システムは、選択還元型触媒56に流入する排気ガスの温度を選択還元型触媒56の触媒温度Tc2として検出する温度センサー62と、選択還元型触媒56を通過した排気ガスのNOx濃度Cx2を検出するNOx濃度センサー63と、を備える。各センサー62,63は、各々の検出値を示す信号を制御装置50に出力する。
【0047】
制御装置50は、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx1、触媒温度Tc1に加えて、NOx濃度センサー63からの信号に基づくNOx濃度Cx2、温度センサー62からの信号に基づく触媒温度Tc2を取得する。
【0048】
制御装置50は、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx1に基づいて開閉弁40の開閉を制御する。制御装置50は、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx1に基づいて、選択還元型触媒56に流入するNOx量Gx1を演算し、そのNOx量Gx1だけのNOxを還元するために必要な還元剤の量である添加量Gu1を演算する。制御装置50は、開閉弁40の開閉を制御し、添加量Gu1の分の還元剤を添加弁36から排気ガスに添加する。
【0049】
制御装置50は、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx2に基づいて開閉弁59の開閉を制御する。制御装置50は、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx2に基づいて、選択還元型触媒43に流入するNOx量Gx2を演算し、そのNOx量Gx2だけのNOxを還元するために必要な還元剤の量である添加量Gu2を演算する。制御装置50は、開閉弁59の開閉を制御し、各添加弁57を通じて添加量Gu2の還元剤を排気ガスに添加する。
【0050】
制御装置50は、触媒温度Tc1,Tc2、添加量Gu1,Gu2に基づいてバーナー20の駆動を制御する。制御装置50は、触媒温度Tc1,Tc2の双方が活性温度Tcaに到達しているか否かを判断し、触媒温度Tc1,Tc2の少なくとも一方が活性温度Tca未満である場合にバーナー20を駆動する。制御装置50は、加熱部41において添加量Gu1の分の尿素水が所定の状態まで昇温され、かつ、加熱部60において添加量Gu2の分の尿素水が所定の状態まで昇温される燃料の量を燃料量Gfとして演算する。燃料量Gfは、例えば、加熱部41にて添加量Gu1の尿素水がアンモニアに加水分解され、かつ、加熱部60にて添加量Gu2の尿素水がアンモニアに加水分解される分の燃料の量である。
【0051】
第2実施形態において、選択還元型触媒43は第1の選択還元型触媒、添加弁57は第1の添加弁、接続通路58は第1の接続通路、加熱部60は第1の加熱部である。また、選択還元型触媒56は第2の選択還元型触媒、添加弁36は第2の添加弁、接続通路38は第2の接続通路、加熱部41は第2の加熱部である。
【0052】
図5を参照して第2実施形態の排気浄化システムの作用について説明する。
排気浄化システムでは、選択還元型触媒56にて還元しきれなかったNOxが選択還元型触媒43で還元される。すなわち、選択還元型触媒によるNOxの還元が段階的に行われる。そして、こうした段階的なNOxの還元がバーナー20の駆動により冷間始動時から行うことが可能である。その結果、NOxの低減量がさらに高まる。
【0053】
図5は、触媒温度Tc1とNOx低減率との関係の一例を示すグラフであって、NOx低減率について行った実験結果を示すグラフである。図5において、実施例は、第2実施形態の排気浄化システムである。比較例は、接続通路が加熱部を有していない排気浄化システムである。参考例は、第1実施形態の排気浄化システムである。
【0054】
図5に示されるように、実施例では、NOxの低減量が比較例よりも格段に高められること、また、第1実施形態の排気浄化システムである参考例よりも、NOxの低減量が高まること、これらが認められた。
【0055】
第2実施形態の排気浄化システムによれば、第1実施形態に記載した(1)〜(7)に準ずる効果に加えて、以下に列挙する効果が得られる。
(9)触媒温度Tc1,Tc2の少なくとも一方が活性温度Tca未満である場合にバーナー20が駆動される。そのため、選択還元型触媒43,56の少なくとも一方が活性温度Tca未満でも段階的なNOxの還元を行うことが可能である。その結果、NOxの低減量がさらに高まる。
【0056】
(10)また、添加弁36,57の双方からアンモニアが添加される確率が高まる。その結果、選択還元型触媒43,56の双方が活性温度Tcaに到達するまでに要する時間が短縮される。
【0057】
なお、上記第1及び第2実施形態は、以下のように変更してもよい。
・触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tcaに到達しているか否かに関わらず、バーナー20が駆動されてもよい。こうした構成においても、燃料量Gfは、添加量Gu1,Gu2に応じて制御されることが好ましい。
【0058】
・添加量Gu1,Gu2に関わらず燃料量Gfが一定であってもよい。こうした構成であっても、加熱部41,60で尿素水が加熱されるため、尿素水がアンモニアに変換されるやすくなる。
【0059】
・DPF30の搭載位置は、排気通路10におけるバーナー20の下流に限らず、例えばバーナー20の上流であってもよい。
・尿素水タンク37内の尿素水の温度を検出するセンサーの検出値に基づいて燃料量Gfが調整されてもよい。こうした構成によれば、バーナー20の駆動にともなう燃料消費量がさらに抑えられる。
【0060】
・加熱部41,60は、燃焼空間28に位置することの可能な形状を有していればよく、その形状はコイル状の形状に限られるものではなく、また、尿素水タンク37に対する上流側の部位ほど重力方向側に位置する形状に限られるものでもない。
【0061】
・還元剤供給装置35は、加熱部41,60の下流において接続通路38,58の周りに断熱部を有していてもよい。こうした構成によれば、温度低下に起因した還元剤の液化が抑えられる。
【0062】
・排気浄化システムは、排気ガスに含まれる炭化水素や一酸化炭素を酸化するディーゼル酸化触媒をさらに備えてもよい。また、排気浄化システムは、選択還元型触媒43の下流に、アンモニアを酸化するアンモニア酸化触媒をさらに備えてもよい。
【0063】
・バーナー20は、燃料と空気との混合気が生成されるように、噴射ノズル23の上流にて第1排気通路11内に空気を供給する空気供給部をさらに備えていてもよい。また、バーナー20は、第1排気通路11に対して燃料と空気とを予め混合した予混合気を供給する構成であってもよい。
【0064】
・排気通路10は、二重管構造を備えるもの限らず、例えば図6に示されるような構成であってもよい。図6に示されるように、排気通路10の第1排気通路11は、延在方向に沿って延びており、エンジンからの排気ガスが流入する流入口19を第1排気通路11の途中に有する。第1排気通路11は、一方の開口端が基板18で閉塞され、他方の開口端が第3排気通路13に連通する。
【0065】
バーナー20は、基板18に固定された噴射ノズル23と、噴射ノズル23よりも流入口19側に位置する点火プラグ22と、を備える。バーナー20は、第1排気通路11において、点火プラグ22の取付位置から、流入口19を形成する縁のうちで最も基板18寄りの縁までの空間を燃焼空間28として有する。第1排気通路11は、図6において範囲Aで示される部位を燃焼部29として有する。
【0066】
第1排気通路11に流入した排気ガスは、DPF30を通過したのちに第3排気通路13に流入し、第3排気通路にて転回されて第2排気通路12に流入する。第2排気通路12は、第1排気通路11の延在方向に沿って延びており、第1排気通路11から離れた状態で第1排気通路11と互いに隣接する。還元剤供給装置35の添加弁36は、第2排気通路12を流れる排気ガスに対して還元剤を添加する。
【0067】
第2排気通路12は、添加弁36の下流に選択還元型触媒43が位置する空間を形成する選択還元部45を有する。第2排気通路12は、図6において範囲Bで示される部位を選択還元部45として有する。選択還元部45と燃焼部29は、互いに離れた状態で少なくとも一部が対向する。
【0068】
こうした構成によれば、バーナー20の駆動により加熱された燃焼部29の放射熱によって選択還元部45が加熱される。これにより、選択還元型触媒43の触媒温度Tc1が活性温度Tcaに到達するまでに要する時間が短縮される。なお、燃焼部29の放射熱によって選択還元部45を加熱するうえでは、これら燃焼部29と選択還元部45との離間距離dは、10mm以下であることが好ましく、ほぼ0であることがさらに好ましい。
【0069】
・排気通路の有する形状は、燃焼部の機能を有する第1排気通路の出口が、選択還元部の機能を有する第2排気通路の入口に向けて折り返された形状に限らず、例えば、直管形状であってもよい。こうした構成であっても、接続配管の一部が燃焼空間を通る構成であれば、上述した効果を得ることは可能である。
【0070】
・また、排気浄化システムは、図6に示される構成の排気通路10に対し、新たな選択還元型触媒と添加弁とを追加してNOxの還元を段階的に行ってもよい。
・第2実施形態において、触媒温度Tc1,Tc2の双方が活性温度Tca未満である場合にバーナー20が駆動されてもよい。これによれば、バーナー20の駆動による燃料消費量が抑えられる。
【符号の説明】
【0071】
3…内筒、3B…内側通路壁、3S…仕切壁、4…外筒、4B…外側通路壁、5…底面、10…排気通路、11…第1排気通路、12…第2排気通路、13…第3排気通路、14…第4排気通路、18…基板、19…流入口、20…バーナー、21…燃料供給部、22…点火プラグ、23…噴射ノズル、24…燃料タンク、25…燃料通路、26…ポンプ、27…開閉弁、28…燃焼空間、29…燃焼部、30…DPF、35…還元剤供給装置、36…添加弁、37…尿素水タンク、38…接続通路、39…ポンプ、40…開閉弁、41…加熱部、43…選択還元型触媒、44…触媒空間、45…選択還元部、46…吸入空気量センサー、47…NOx濃度センサー、48…温度センサー、50…制御装置、56…選択還元型触媒、57…添加弁、58…接続通路、59…開閉弁、60…加熱部、62…温度センサー、63…NOx濃度センサー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6