(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気ガスに添加された尿素水は、排気ガスの熱や選択還元型触媒の熱によって加水分解されてアンモニアへと変換される。このため、排気ガスの温度や選択還元型触媒の温度が低い場合には、尿素水がアンモニアに変換されにくいばかりか尿素水に含まれる尿素が結晶化してしまうため、尿素水の添加量を制限せざるを得ない。こうした尿素水の制限は、NOxの低減量の低下を招く。
本発明は、NOxの低減量を高めることが可能な排気浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような課題を解決する排気浄化システムは、排気ガスが流れる排気通路と、前記排気通路に配置されたバーナーであって、前記バーナーにおける燃料の燃焼空間が前記排気通路内の一部である前記バーナーと、前記排気通路において前記燃焼空間よりも下流に位置して前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸着するNOx吸着材と、前記排気通路において前記NOx吸着材よりも下流に位置する選択還元型触媒と、前記排気通路において前記選択還元型触媒と前記燃焼空間との間に位置する添加弁と、前記添加弁に接続されて前記添加弁に向かう尿素水が流れる接続通路であって、前記接続通路の一部が前記燃焼空間を通る前記接続通路とを備える。
【0006】
上記構成によれば、触媒温度が活性温度より低くとも、排気ガスに対して、バーナーの駆動によって燃焼空間で加熱された尿素水や加水分解されたアンモニアを供給可能である。その結果、NOxの低減量が高まる。また、選択還元型触媒の上流に位置するNOx吸着材によって、選択還元型触媒の触媒温度が活性温度より低くとも、NOxを吸着できる。したがって、選択還元型触媒が活性化する活性温度よりも低い冷間始動時や軽負荷運転時にあっても、NOxが大気中に放出されることを防止することができる。
【0007】
上記排気浄化システムにおいて、更に、前記排気通路には、前記バーナーと前記NOx吸着材との間に、DPF(Diesel Particulate Filter)が設けられていてもよい。
【0008】
上記構成によれば、DPFで、エンジンにおける燃料の燃焼によって発生した粒子性物質を捕捉することができる。
【0009】
上記排気浄化システムにおいて、更に、前記選択還元型触媒が下流側選択還元型触媒であり、前記添加弁が下流側添加弁であり、前記接続通路が前記下流側添加弁用の接続通路である。そして、前記DPFには、前記排気通路において前記下流側選択還元触媒よりも上流に位置する上流側選択還元型触媒が一体化されていてもよい。この場合、更に、前記排気通路において前記上流側選択還元型触媒よりも上流に位置する上流側添加弁と、前記上流側添加弁に接続されて前記上流側添加弁に向かう尿素水が流れる前記上流側添加弁用の接続通路であって、前記上流側の接続通路の一部が前記燃焼空間を通る前記上流側添加弁用の接続通路とを備える。
【0010】
上記構成によれば、NOx吸着材や下流側選択還元型触媒の上流側で、NOxを低減することができ、NOx吸着材や下流側選択還元型触媒の負担を軽減することができる。前記DPFには、上流側の面に、前記上流側選択還元型触媒を一体的に設け、下流側の面に、前記NOx吸着材を一体的に設けることで、構成の簡素化や部品点数の削減を図ることができる。
【0011】
上記排気浄化システムにおいて、前記排気通路は、前記燃焼空間を形成する燃焼空間形成壁を備え、前記燃焼空間形成壁が、前記選択還元型触媒が位置する空間と前記燃焼空間とを区画し、前記選択還元型触媒は、前記バーナーによって前記燃料が燃焼することにより、前記燃焼空間形成壁を介して加熱されるようにしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、バーナーを駆動して尿素水を加熱するときに、選択還元型触媒が前記燃焼空間形成壁を介して加熱される。これにより、前記選択還元型触媒の触媒温度が活性温度に到達するまでに要する時間を短縮することができる。
【0013】
上記排気浄化システムにおいて、更に、前記選択還元型触媒の触媒温度を取得し、前記取得された触媒温度が前記選択還元型触媒の活性温度未満である場合に前記バーナーを駆動する制御装置を備えるようにしてもよい。
【0014】
上記構成によれば、バーナーで尿素水を加熱するための燃料消費を最低限に抑えることができる。
【0015】
上記排気浄化システムにおいて、更に、前記バーナーは、前記排気通路において前記NOx吸着材よりも上流に位置する上流側のバーナーである。そして、更に、前記排気通路において、前記NOx吸着材と前記選択還元型触媒との間に下流側のバーナーを更に設けてもよい。この場合、前記制御装置は、前記取得された触媒温度が前記選択還元型触媒の活性温度未満であるとき、前記下流側のバーナーを駆動する。
【0016】
上記構成によれば、選択還元型触媒の触媒温度が活性温度よりも低いときに下流側のバーナーが駆動されることによって、選択還元型触媒を加熱することができるとともに、選択還元型触媒に供給する尿素水を加熱し加水分解によりアンモニアに変換する。したがって、下流側の選択還元型触媒の触媒温度が活性温度に到達するまでに要する時間を更に短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜
図6を参照して、排気浄化システムの実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
【0019】
図1に示すように、排気浄化システム1は、エンジン2から排気ガスが供給され、供給された排気ガスを浄化して排出するものであり、内筒3と、内筒3の外側に配設される外筒4とから構成される二重管構造を備えている。外筒4は、有底の筒構造を有しており、内筒3の有する2つの端部のうちでエンジン2に近い端部とは反対側の端部である先端部は、外筒4内に挿入され、外筒4の底面5から離間している。これにより、内筒3の内部空間は、内筒3の外面と外筒4の内面との間の外側空間と連通し、これら内筒3と外筒4との全体で、排気通路10を構成する。
【0020】
具体的に、排気通路10は、内筒3の内面から構成される第1排気通路11と、内筒3の外面と外筒4の内面とから構成される第2排気通路12と、外筒4の底面5と外筒4の内面とから構成されて、第1排気通路11と第2排気通路12とを連通する第3排気通路13とを有している。更に、排気通路10は、第2排気通路12を通過した排気ガスを排出する第4排気通路14を有している。この排気通路10において、エンジン2からの排気ガスは、第1排気通路11に供給され、次いで、第3排気通路13で折り返されて第2排気通路12に供給され、最後に、第4排気通路14から排出される。このような、排気通路10は、第3排気通路で排気ガス流路を折り返すようにし、第1排気通路11の外側に第2排気通路12が位置するように構成することで、排気ガス流路を長く形成しつつ、内筒3や外筒4の延びる方向において小型化を実現している。
【0021】
第1排気通路11において最もエンジン2側に位置する部分には、バーナー20によって燃料が燃焼する燃焼空間15が形成されている。この燃焼空間15は、内筒3の一部である燃焼空間形成壁16によって囲まれている。バーナー20は、燃料を燃焼空間15に供給する燃料供給部21と、燃焼空間15に供給された燃料を着火する点火プラグ22とを備える。バーナー20は、上流側選択還元型触媒29の触媒温度が活性温度よりも低いときや、排気の流れる方向において上流側選択還元型触媒29よりも下流に位置する下流側選択還元型触媒51の触媒温度が活性温度より低いときに駆動される。バーナー20の駆動は、上流側選択還元型触媒29や下流側選択還元型触媒51を加熱するとともに、尿素水をアンモニアに加水分解される程度にまで加熱する。
【0022】
燃料供給部21は、燃料タンク24と燃焼空間形成壁16に設けられた噴射ノズル23との間をパイプ等の燃料通路25で接続し、燃料ポンプ26によって、燃料タンク24の燃料を噴射ノズル23に圧送する。燃料通路25には、噴射ノズル23と燃料ポンプ26との間に燃料開閉弁27が設けられている。燃料開閉弁27は、バーナー20を駆動するときに限って、燃料通路25を開放し、噴射ノズル23に燃料を供給する。点火プラグ22は、例えばスパークプラグやグロープラグであって、燃焼空間形成壁16に設けられ、噴射ノズル23から噴射された燃料に着火する。燃料は、排気ガスに残存する酸素を酸化剤として燃焼する。なお、噴射ノズル23は、燃料開閉弁27の機能が内蔵されるインジェクターであってもよい。
【0023】
第1排気通路11には、燃焼空間15の下流側に、排気ガスに含まれる粒子性物質(PM:Particulate Matter)を捕捉するDPF(Diesel Particulate Filter)30が設けられている。DPF30は、例えば耐熱性に優れたセラミックやステンレスを素材としたウォール・フロー・フィルターであり、排気ガスに含まれる粒子性物質を、壁を濾過する際に捕捉する。
なお、DPF30が捕捉した粒子性物質は、バーナー20における燃料の燃焼よって昇温した排気ガスが流入することにより焼却される。
【0024】
このようなDPF30を構成するフィルタには、ゼオライト、アルミナ、ジルコニア等の上流側選択還元型触媒29を担持されることによって、DPF30に、選択還元型システムの機能を持たせることができる。ゼオライトとしては、銅ゼオライト、鉄ゼオライト、銀ゼオライト、亜鉛ゼオライト、コバルトゼオライト等を挙げることができる。排気に含まれるNOxの還元に際して、この上流側選択還元型触媒29は、後述の第2排気通路12に設けられる下流側選択還元型触媒51の補助的な役割を果たす。すなわち、NOxの還元性能は、選択還元型触媒の量が多いほど高くなる。一方で、フィルタの選択還元型触媒を多く、すなわち厚く設け過ぎると、排気ガスが排気通路を流れにくくなり、フィルタの圧力損失が増大する。そこで、ここでの上流側選択還元型触媒29は、下流側選択還元型触媒51の還元に対して補助的な役割を果たす。上流側選択還元型触媒29は、排気ガスによって活性温度以上に加熱されるとともに、冷間始動時や軽負荷運転時において活性温度より低いときにはバーナー20によって活性温度以上に加熱される。
【0025】
このDPF30に設けられた上流側選択還元型触媒29に用いられる還元剤としては、尿素水が用いられる。このため、第1排気通路11のDPF30の上流側、すなわち燃焼空間15には、尿素水をDPF30の上流側に供給する尿素水供給部31が設けられている。尿素水供給部31は、燃焼空間15からの排気ガスに対して還元剤となる尿素水や加水分解されたアンモニアを添加する上流側添加弁32を備える。上流側添加弁32は、燃焼空間形成壁16に設けられ、排気ガスの流れ方向に尿素水やアンモニアを添加する。
【0026】
尿素水供給部31は、尿素水タンク33と燃焼空間形成壁16に設けられた上流側添加弁32との間をパイプ等の接続通路34で接続し、尿素水ポンプ35によって、尿素水タンク33の尿素水を上流側添加弁32に圧送する。接続通路34には、上流側添加弁32と尿素水ポンプ35との間に開閉弁36が設けられている。開閉弁36は、接続通路34を開放して上流側添加弁32に尿素水を供給し、また、接続通路34を遮断して上流側添加弁32に対する尿素水の供給を停止する。
【0027】
尿素水を上流側添加弁32に供給する接続通路34において開閉弁36の下流に位置する部分は、DPF30の選択還元型触媒に添加する尿素水を加熱する上流側用加熱部37として機能する。上流側用加熱部37は、第1排気通路11内の燃焼空間15に位置し、燃焼空間15内での流路の長さが長くなるように、熱伝導性が高い銅やステンレス等のパイプがコイル状や千鳥状に形成された通路であって、尿素水を効率的に加熱する。上流側用加熱部37は、燃焼空間15における燃料がバーナー20によって燃焼することにより、尿素水がアンモニアに加水分解される程度にまで加熱する。上流側添加弁32からは、バーナー20が駆動しているとき、加熱された尿素水又はアンモニアがDPF30よりも上流に添加される。
【0028】
更に、第1排気通路11には、燃焼空間15に流入する排気ガスのNOx濃度を検出する上流側NOx濃度センサー42と、DPF30の上流側選択還元型触媒29に流入する排気ガスの温度を選択還元型触媒の触媒温度として検出する上流側温度センサー43とが設けられている。
【0029】
第1排気通路11には、排気の流れる方向においてDPF30の下流側に、排気ガスに含まれるNOxを吸着するNOx吸着材50が設けられている。NOx吸着材50は、NOxを物理的に吸着するフィルタであって、NOx吸着材50を形成する材料は希土類系、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、ゼオライト等である。このNOx吸着材50は、所定温度まで加熱されたときにNOxを放出する。例えば、このNOx吸着材50は、例えば150〜250℃程度の温度でNOxを放出する。NOx吸着材50を通過したNOxや再生処理で放出したNOxは、下流側の第2排気通路12に設けられる下流側選択還元型触媒51によって、窒素に変換される。このNOx吸着材50は、選択還元型触媒が活性化する活性温度より低い温度においてもNOxを物理的に吸着することができ、選択還元型触媒が活性化する温度よりも低い冷間始動時や軽負荷運転時にあっても、NOxが大気中に放出されることを防止することができる。
【0030】
DPF30で粒子性物質が除去された排気ガスは、第3排気通路13で流れの向きが折り返され、次いで、第2排気通路12に供給される。第2排気通路12は、第1排気通路11の外側に位置し、第3排気通路13で折り返された排気ガスが第2排気通路12に流入する。この第2排気通路12は、内筒3の外面と外筒4の内面との間の空間により構成されており、特に燃焼空間15の外側は、上述したDPF30の補助的な上流側選択還元型触媒29に対して、主となる下流側選択還元型触媒51を配設する空間となる。
【0031】
下流側選択還元型触媒51は、モノリス触媒であって、例えばコージェライト製のハニカム担体に、ゼオライト、バナジウム系、ジルコニア系等をコーティングして構成される。ゼオライトとしては、銅ゼオライト、鉄ゼオライト、亜鉛ゼオライト、コバルトゼオライト等が挙げられる。一般に、下流側選択還元型触媒51は、活性温度より低いときに活性化せず、十分なNOxの浄化能力を有しない。下流側選択還元型触媒51は、排気ガスによって活性温度以上に加熱されるとともに、冷間始動時や軽負荷運転時において、活性温度より低いときにはバーナー20によって活性温度以上に加熱されることになる。下流側選択還元型触媒51は、バーナー20が駆動されると、内筒3の一部である燃焼空間形成壁16を介して加熱或いはバーナー20で加熱された排気ガスにより加熱されることになる。
【0032】
この下流側選択還元型触媒51にも、還元剤として、例えば尿素水が用いられる。このため、第2排気通路12の下流側選択還元型触媒51の上流側には、還元剤を下流側選択還元型触媒51に供給する尿素水供給部52が設けられている。尿素水供給部52は、第3排気通路13からの排気ガスに対して尿素水や加水分解されたアンモニアを添加する下流側添加弁53を備える。下流側添加弁53は、第2排気通路12を構成する外筒4に設けられ、排気ガスの流れ方向に尿素水又はアンモニアを添加する。
【0033】
尿素水供給部52は、上述した尿素水供給部31と一部、構成部材を共通化しており、尿素水ポンプ35より上流側は、尿素水供給部31と共通で、尿素水ポンプ35より下流側は、パイプ等の接続通路54で下流側添加弁53と接続される。接続通路54には、下流側添加弁53と尿素水ポンプ35との間に開閉弁55が設けられる。開閉弁55は、接続通路54を開放して、下流側添加弁53の方向に尿素水を供給する。
【0034】
尿素水を下流側添加弁53に供給する接続通路54の一部は、開閉弁55の下流において、下流側選択還元型触媒51に添加する尿素水を加熱する下流側用加熱部56として機能する。下流側用加熱部56は、上述の上流側用加熱部37と同様に、第1排気通路11内の燃焼空間15に位置している。下流側用加熱部56は、燃焼空間15においてバーナー20によって燃料が燃焼することにより、尿素水を、アンモニアに加水分解される程度にまで加熱する。下流側添加弁53からは、バーナー20が駆動しているとき、加熱された尿素水又は加水分解されたアンモニアが下流側選択還元型触媒51よりも上流に添加される。
【0035】
更に、第2排気通路12には、下流側選択還元型触媒51の上流側に、下流側選択還元型触媒51に流入する排気ガスのNOx濃度を検出する下流側NOx濃度センサー44と、下流側選択還元型触媒51に流入する排気ガスの温度を下流側選択還元型触媒51の触媒温度として検出する下流側温度センサー45とが設けられている。また、第2排気通路12に設けられた下流側選択還元型触媒51の下流となる第4排気通路14には、最終的に、排気ガス中に含まれるNOx濃度を検出する排出NOx濃度センサー46が設けられる。
【0036】
図2に示すように、以上のように構成された排気浄化システム1は、マイコン等で構成された制御装置47によって制御される。制御装置47は、ROM、RAM、CPUといった構成を備えている。制御装置47は、ROMに格納された制御プログラムに従って各種センサー41,42,43,44,45,46等から入力された入力値を用いた演算を行って、バーナー20の点火プラグ22の点火制御や尿素水供給部31,52の開閉弁36,55の開閉制御や燃料ポンプ26や尿素水ポンプ35の駆動制御等を行う。
【0037】
図3を参照して、尿素水を添加する処理の一例について説明する。この処理は、冷間始動時や軽負荷運転時に開始されるとともに繰り返し実行される。
ステップS1において、制御装置47は、エンジン2の吸気通路に設けられた吸入空気量センサー41からの吸入空気量Ga、NOx濃度センサー42,44,46からのNOx濃度Cx1,Cx2,Cx3、温度センサー43,45からの触媒温度Tc1,Tc2を取得する。
【0038】
ステップS2において、制御装置47は、取得した吸入空気量Ga、第1排気通路11の上流側NOx濃度センサー42から取得したNOx濃度Cx1、第1排気通路11の上流側温度センサー43から取得した触媒温度Tc1に基づいて、第1排気通路11のNOx量Gx1を算出する。ステップS3において、NOx量Gx1に基づき、上流側選択還元型触媒29に供給する上流側添加弁32の方向に供給する尿素水の添加量Gu1を算出する。
【0039】
また、制御装置47は、吸入空気量Ga、第2排気通路12の下流側NOx濃度センサー44から取得したNOx濃度Cx2、第2排気通路12の下流側温度センサー45から取得した触媒温度Tc2に基づいて、第2排気通路12のNOx量Gx2を算出する。ステップS3において、NOx量Gx2に基づき、下流側選択還元型触媒51に供給する上流側添加弁32の方向に供給する尿素水の添加量Gu2を算出する。
【0040】
ステップS4において、制御装置47は、ステップS1において第1排気通路11の上流側温度センサー43から取得した触媒温度Tc1と第2排気通路12の下流側温度センサー45から取得した触媒温度Tc2の少なくとも1つが活性温度Tca未満であるか否かを判断する。そして、触媒温度Tc1,Tc2の少なくとも1つが活性温度Tca未満のとき、尿素水を加熱するための処理であるステップS5に進む。また、活性温度Tca未満でない場合、すなわち触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tca以上のとき、尿素水をバーナー20で加熱しないステップS9に進む。制御装置47は、このような判断を行うことで、活性温度未満の下流側選択還元型触媒51や上流側選択還元型触媒29に尿素水が供給されてしまい、尿素水に含まれる尿素が結晶化してしまうことを防止する。
【0041】
触媒温度Tc1,Tc2の少なくとも1つが活性温度Tca未満の場合は、ステップS5において、尿素水の添加量Gu1,Gu2に応じたバーナー20を駆動するための燃料量Gfを算出する。ステップS6において、制御装置47は、燃料の燃料開閉弁27を開弁し、燃料ポンプ26を駆動し、燃料量Gfの分の燃料を噴射ノズル23から噴射する。そして、点火プラグ22を駆動して燃料に着火する。
【0042】
ステップS7において、制御装置47は、燃料量Gfの演算が連続しているか否かを判断する。すなわち、制御装置47は、燃料量Gfの演算が連続しているか否かを判断することで、バーナー20が駆動し続けているかを判断する。制御装置47は、燃料量Gfの演算が連続しているとき、ステップS8に進み、連続していないとき、ステップS4に戻る。連続していないとき、制御装置47は、ステップS4からの処理(演算)を繰り返す。
【0043】
ステップS8において、制御装置47は、開閉弁36を開弁し、上流側用加熱部37で加熱された尿素水又は尿素水が加水分解されて生成されたアンモニアを、上流側添加弁32より、DPF30の上流側選択還元型触媒29の手前に添加する。また、開閉弁55を開弁し、下流側用加熱部56で加熱された尿素水又は尿素水が加水分解されて生成されたアンモニアを、下流側添加弁53より、下流側選択還元型触媒51の手前に添加する。
【0044】
かくして、バーナー20が駆動されることで、尿素水が、燃焼空間15の下流側用加熱部56や上流側用加熱部37において加水分解が促進するように加熱される。更に、DPF30の上流側選択還元型触媒29が活性温度以上に加熱され、第2排気通路12の下流側選択還元型触媒51も燃焼空間形成壁16を介して活性温度以上に加熱される。これにより、尿素水がアンモニアに変換されやすくなり、又は、尿素水が加水分解されてアンモニアが生成されることから、排気ガスの温度や下流側選択還元型触媒51の触媒温度Tc1や上流側選択還元型触媒29の触媒温度Tc2が活性温度Tcaより低い場合であっても、加熱された尿素水やアンモニアの添加が可能となる。これにより、冷間始動時や軽負荷運転時において、NOxが大気中に放出されることを防止することができる。
【0045】
制御装置47は、ステップS4で既に触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tca以上と判断した場合、ステップS9において、バーナー20を駆動することなく、バーナー20で加熱していない尿素水を添加弁32,53より、上流側選択還元型触媒29や下流側選択還元型触媒51に添加する。このような場合は、既に、下流側選択還元型触媒51や上流側選択還元型触媒29が活性温度以上に十分に加熱されており、バーナー20を駆動するまでもなく、尿素水を添加するだけで加水分解が進み、上流側選択還元型触媒29や下流側選択還元型触媒51にアンモニアが供給されるからである。
【0046】
ところで、上流側選択還元型触媒29やDPF30を透過した排気ガスは、NOx吸着材50によってNOxが物理的に吸着される。このNOx吸着材50は、触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tcaより低くとも、NOxを吸着する。これにより、選択還元型触媒が活性化する活性温度よりも低い冷間始動時や軽負荷運転時にあっても、NOxが大気中に放出されることを防止することができる。一方で、NOx吸着材50には、NOxの吸着量に限界がある。制御装置47は、排気の流れる方向においてDPF30の下流に位置するNOx吸着材50に対してNOxの吸着量を管理し、吸着量が性能限界値に近い閾値になると、NOx吸着材50の再生処理を開始する。
【0047】
具体的に、
図4に示すように、ステップS11及びステップS12では、上述したステップS1及びステップS2と同様に、制御装置47が吸入空気量センサー41からの吸入空気量Ga、NOx濃度センサー42,44からのNOx濃度Cx1,Cx2、温度センサー43,45からの触媒温度Tc1,Tc2を取得する。制御装置47は、取得した吸入空気量Ga、NOx濃度センサー42,44から取得したNOx濃度Cx1,Cx2、温度センサー43,45から取得した触媒温度Tc1,Tc2に基づいて、第1排気通路11のNOx量Gx1と第2排気通路12のNOx量Gx2とを算出する。
【0048】
第1排気通路11のNOx量Gx1は、燃焼空間15のNOx量Gx1であり、エンジン2から供給された排気ガスであって排気浄化システム1による浄化処理前の排気ガスにおけるNOx量である。また、第2排気通路12のNOx量Gx2は、上流側選択還元型触媒29及びNOx吸着材50を通過した後のNOx量となる。
【0049】
ステップS13において、制御装置47は、浄化処理前のNOx量Gx1からNOx吸着材50を通過した後のNOx量Gx2を減算する処理を行い、NOx吸着材50に吸着したNOx量Gx3を算出する。なお、NOx量Gx3を算出するにあたって、上流側選択還元型触媒29で処理されたNOx量を考慮する場合は、NOx量Gx1から、上流側選択還元型触媒29で処理されたNOx量とNOx量Gx2とが減算される。上流側選択還元型触媒29で処理されたNOx量は、例えば、上流側温度センサー43からの触媒温度Tc1等に基づきテーブルを参照して算出することができる。
【0050】
ステップS14において、制御装置47は、前回までのNOx量Gx3の積算値に今回のNOx量Gx3を積算して今回の積算値GxTを算出する。ステップS15において、制御装置47は、今回の積算値GxTが所定の吸着量を超えたか否かを判断し、今回の積算値GxTが所定の吸着量を超えるまで、ステップS11からステップS14までの処理を繰り返す。そして、制御装置47は、今回の積算値GxTが所定の吸着量を超えたと判断したとき、ステップS16に進む。ステップS16において、制御装置47は、バーナー20を駆動し、DPF30を介してNOx吸着材50を加熱し、吸着したNOxをNOx吸着材50から放出する再生処理を行う。なお、放出されたNOxは、下流側選択還元型触媒51によって処理される。
【0051】
図5は、触媒温度とNOx低減率との関係の一例を示すグラフであって、NOx低減率について行った実験の結果を示すグラフである。
図5において、実施例のNOx低減率は、上記排気浄化システム1によって得られた値である。比較例のNOx低減率は、上記排気浄化システム1から加熱部37,56、および、NOx吸着材50が省略された排気浄化システムによって得られた値である。
図5に示すように、比較例においては、冷間始動時や軽負荷運転時における触媒温度の温度範囲である100℃〜180℃の範囲では、NOx低減率が著しく低い。一方、実施例においては、触媒温度が100℃〜180℃の範囲においてもNOxが低減されることが認められる。また、200℃以下の各温度において比較例よりもNOx低減率が高いことが認められた。
【0052】
第1実施形態の排気浄化システム1によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)排気浄化システム1では、バーナー20の駆動によって尿素水が加熱されアンモニアに変換されやすくなる。したがって、選択還元型触媒29,51の触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tcaより低くとも、排気ガスに対して、燃焼空間15の加熱部37、56で加熱された尿素水や加水分解されたアンモニアを供給することができる。その結果、NOxの低減量が高まる。
【0053】
(2)排気浄化システム1では、下流側選択還元型触媒51の上流に位置するNOx吸着材50が触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tcaより低くても、NOxを吸着する。したがって、選択還元型触媒が活性化する活性温度よりも低い冷間始動時や軽負荷運転時にあっても、NOxが大気中に放出されることを防止することができる。
【0054】
(3)バーナー20の下流にDPF30が配設されていることで、バーナー20の駆動に伴う粒子性物質をDPF30にて捕捉することができる。その結果、バーナー20の駆動に起因した粒子性物質の排出量の増加が抑えられる。
【0055】
(4)DPF30には、上流側選択還元型触媒29が一体的に設けられていることから、NOx吸着材50や下流側選択還元型触媒51の上流側で、NOxを低減することができ、NOx吸着材50や下流側選択還元型触媒51の負担を軽減することができる。
【0056】
(5)加熱部37、56で尿素水を加熱するためバーナー20を駆動したときには、同時に、上流側選択還元型触媒29が加熱される。更に、同時に、下流側選択還元型触媒51が燃焼空間形成壁16を介して加熱される。これにより、選択還元型触媒29,51の触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tcaに到達するまでに要する時間を短縮することができる。
【0057】
(6)バーナー20は、選択還元型触媒29,51の触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tca未満に限って駆動される。したがって、バーナー20で尿素水を加熱するための燃料消費を最低限に抑えることができる。
【0058】
(7)触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tca未満のときに選択還元型触媒29,51に供給されたアンモニアは、そのまま選択還元型触媒29,51に保持され、触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tcaに達したとき、直ちに保持されたアンモニアによって窒素に変換することができる。
(第2実施形態)
【0059】
図6を参照して、排気浄化システムの第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の排気浄化システムは、第1実施形態の排気浄化システムと主要な構成が同じであるため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0060】
図6に示すように、この排気浄化システムは、NOx吸着材50の外側に、下流側バーナー60が設けられている。この下流側バーナー60は、燃料を第2排気通路12に供給する燃料供給部61と、第2排気通路12に供給された燃料を着火する点火プラグ62とを備える。燃料供給部61を構成する複数の構成要素の一部は、上述した燃料供給部21と共通である。すなわち、燃料供給部61において燃料ポンプ26よりも上流に位置する構成要素は、燃料供給部21と共通であり、燃料ポンプ26よりも下流に位置するパイプ等の接続通路63は、噴射ノズル64と接続されている。接続通路63において、噴射ノズル64と燃料ポンプ26との間には、燃料開閉弁65が設けられている。燃料開閉弁65は、接続通路63を開放して噴射ノズル64に燃料を供給し、また、接続通路63を遮断して噴射ノズル64に対する燃料の供給を停止する。点火プラグ62は、内筒3の第2排気通路12の部分に設けられ、噴射ノズル64から噴射された燃料に着火する。燃料は、排気ガスに残存する酸素を酸化剤として燃焼する。
【0061】
また、
図6に示すように、DPF30と上流側選択還元型触媒29とを一体化するだけでなく、更に、NOx吸着材50も一体化し、構成の簡素化や部品点数の削減を図ることができる。この場合、DPF30の上流側の面に、上流側選択還元型触媒29を担持させ、下流側の面に、NOx吸着材50を担持させる。そして、DPF30には、上流側選択還元型触媒29とNOx吸着材50が重ならないように形成する。これにより、フィルタの圧力損失の増大を防ぐことができる。
【0062】
第2実施形態の排気浄化システムによれば、第1実施形態に記載した(1)〜(7)に準ずる効果に加えて、以下に列挙する効果が得られる。
(8)下流側バーナー60は、第2排気通路12の下流の下流側選択還元型触媒51の触媒温度が活性温度より低いときに駆動され、下流側選択還元型触媒51を加熱することができるとともに、下流側添加弁53から添加された尿素水を加熱し加水分解によりアンモニアに変換する。したがって、下流側選択還元型触媒51の触媒温度Tc2が活性温度Tcaに到達するまでに要する時間を更に短縮することができる。
【0063】
(9)下流側バーナー60は、下流側選択還元型触媒51を再生するときに、内筒3を介してNOx吸着材50を加熱する。これにより、NOx吸着材50に吸着したNOxが下流側に放出される。放出されたNOxは、下流側選択還元型触媒51によって除去することができる。
【0064】
(10)DPF30には、上流側選択還元型触媒29とNOx吸着材50とが一体的に設けられていることから、部品点数の削減とともに小型化を実現することができる。DPF30に上流側選択還元型触媒29とNOx吸着材50とを一体的に設けた場合であっても、上流側選択還元型触媒29とNOx吸着材50とは重ならないように設けられているので、フィルタの圧力損失を防ぐことができる。
【0065】
なお、上記第1及び第2実施形態は、以下のように変更してもよい。
・NOx吸着材50の位置は、排気の流れる方向において、DPF30よりも下流であれば特に限定されるものではない。例えば、NOx吸着材50は、第2排気通路12において、下流側選択還元型触媒51の直前に配置することもできる。
【0066】
・排気通路10は、内筒3と外筒4とで構成された二重管構造に限定されるものではない。例えば、排気通路10は、1本の筒体によって構成されて、排気通路10の一端部がエンジン2に接続されて、排気の流れる方向において上流側から順に、バーナー20、DPF30、NOx吸着材50、下流側選択還元型触媒51が配置される構成であってもよい。この際、排気通路10を構成する筒体は、直線状をなしていてもよいし、少なくとも一部が湾曲したものであってもよい。
【0067】
・DPF30に上流側選択還元型触媒29を担持させた構成を説明したが、NOx吸着材50や下流側選択還元型触媒51が十分にNOxを除去する構成であれば、排気浄化システムにおいて上流側選択還元型触媒29が省略されてもよい。
【0068】
・NOx吸着材50は、NOxを物理的に吸着するものではなく、DPNR触媒(Diesel Particulate−NOx Reduction)を用いたものであってもよい。この場合、THC、COに加え微粒子とNOxとを同時低減することができ、DPF30を省略することも可能である。なお、NOx吸着材50は、NOxを物理的に吸着する構造体と、DPNR触媒を用いた構造体との組み合わせであってもよい。
【0069】
・DPF30の上流に酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)を配置するようにしてもよい。下流側選択還元型触媒51の下流に、アンモニアを酸化するアンモニア酸化触媒をさらに備えてもよい。
【0070】
・触媒温度Tc1,Tc2が活性温度Tcaに到達しているときに、バーナー20が駆動されてもよい。こうした構成においても、燃料量Gfは、尿素水の添加量Gu1,Gu2に応じて制御されることが好ましい。
・尿素水の添加量Gu1,Gu2に関わらず燃料量Gfが一定であってもよい。こうした構成であっても、尿素水がアンモニアに変換されるやすくなる。
【0071】
・尿素水タンク33内の尿素水の温度を検出するセンサーの検出値に基づいて燃料量Gfが調整されてもよい。こうした構成によれば、バーナー20の駆動にともなう燃料消費量がさらに抑えられる。
・加熱部37、56は、燃焼空間15に位置していればよく、その形状はコイル状や螺旋状の形状に限られるものではない。
【0072】
・尿素水供給部31,52は、加熱部37,56と添加弁32,53との間にパイプを覆うように断熱材を設け、加熱された尿素水の温度低下を防止してもよい。
【0073】
・バーナー20,60には、燃料と空気との混合気が生成されるように、噴射ノズル23,64の上流にて空気を供給する空気供給部を設けてもよい。また、バーナー20,60は、燃料と空気とを予め混合した予混合気を供給する構成であってもよい。
【0074】
・
図1の排気浄化システム1において、
図6に示すように、DPF30と上流側選択還元型触媒29とNOx吸着材50とを一体化したフィルタを用いてもよい。また、
図6の排気浄化システム1において、上流側選択還元型触媒29が一体化されたDPF30とNOx吸着材50とを別体としてもよい。