特許第6352122号(P6352122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352122シリンジ用組立体、針付き外筒用シールキャップ、プレフィルドシリンジおよび針付き外筒用シールキャップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352122
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】シリンジ用組立体、針付き外筒用シールキャップ、プレフィルドシリンジおよび針付き外筒用シールキャップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/28 20060101AFI20180625BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61M5/28
   A61M5/32 500
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-185430(P2014-185430)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-55050(P2016-55050A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】福士 景子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 吉彦
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−507308(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0171719(US,A1)
【文献】 特開2008−125560(JP,A)
【文献】 特開2003−062782(JP,A)
【文献】 特表2004−527361(JP,A)
【文献】 特開昭55−94257(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114917(WO,A1)
【文献】 特開昭64−70055(JP,A)
【文献】 特開2010−131153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/28
A61M 5/32
A61L 31/10
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に筒状の穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、
前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に延び、前記穿刺針固定部を収納可能な筒状の中空部と、前記中空部内に挿入された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、少なくとも前記外筒への装着時に内部より押圧される部分の外面がポリパラキシリレン被膜により覆われていることを特徴とするシリンジ用組立体。
【請求項2】
前記ポリパラキシリレン被膜は、前記シールキャップの外側面の全体に被覆されている請求項1に記載のシリンジ用組立体。
【請求項3】
前記シールキャップの形成材料は、オゾンとの接触により劣化する可能性がある材料である請求項1または2に記載のシリンジ用組立体。
【請求項4】
前記ポリパラキシリレン被膜は、前記シールキャップの外面および内面に被覆されている請求項1ないし3のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【請求項5】
前記シールキャップは、高圧蒸気滅菌のための外面側からの水蒸気透過性を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【請求項6】
前記シールキャップの中空部の少なくとも一部は、前記中空部に収納された前記穿刺針固定部により外側に押し広げられた状態となっている請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【請求項7】
先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒に装着されるシールキャップであって、
前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に延び、前記穿刺針固定部を収納可能な筒状の中空部と、前記中空部内に挿入される前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、少なくとも前記外筒への装着時に内部より押圧される部分の外面がポリパラキシリレン被膜により覆われていることを特徴とする針付き外筒用シールキャップ。
【請求項8】
前記ポリパラキシリレン被膜は、前記シールキャップの外側面の全体に被覆されている請求項7に記載の針付き外筒用シールキャップ。
【請求項9】
前記シールキャップの形成材料は、オゾンとの接触により劣化する可能性がある材料である請求項7または8に記載の針付き外筒用シールキャップ。
【請求項10】
前記シールキャップは、高圧蒸気滅菌のための外面側からの水蒸気透過性を備えている請求項7ないし9のいずれかに記載の針付き外筒用シールキャップ。
【請求項11】
請求項1ないし6のいずれかに記載のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項12】
先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える針付き外筒に装着される針付き外筒用シールキャップの製造方法であって、
前記製造方法は、前記針付き外筒の前記穿刺針固定部を収納する筒状の中空部と、前記中空部内に挿入される前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、外面にポリパラキシリレン被膜を有するシールキャップを準備する工程と、前記ポリパラキシリレン被膜を備えたシールキャップをオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程とを行うことを特徴とする針付き外筒用シールキャップの製造方法。
【請求項13】
前記オゾン高濃度環境下は、コロナ放電方式の静電気除去環境である請求項12に記載の針付き外筒用シールキャップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、外筒用シールキャップ、プレフィルドシリンジおよび針付き外筒用シールキャップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インシュリンシリンジなどの少量の薬剤投与用シリンジとして、外筒先端部に穿刺針が固定されているものが使用されている。そして、このようなタイプのシリンジを用いて、予め内部に薬剤を充填したプレフィルドシリンジを構成する場合、針先をシールする必要がある。このような、針先シール可能なシールキャップとしては、例えば、特許文献1(特表2010−534546)、特許文献2(USP6719732)のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−534546
【特許文献2】USP6719732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシールキャップ(シールド10)は、注射器(特許文献1の図2に一部が示される)の末端を覆うようになっている。注射器3の末端は、針6が固定されるハブ2を備える。シールド10は、開口した基端11と、閉塞した末端12と、基端11から閉塞した末端12まで延在する壁13とを有する。壁13の内面14は、注射器3の末端の一部を収容する空洞15を画定する。例えば、使用前、注射装置を輸送する間、該末端を保護するためにシールド10が注射器の末端に固定される場合、内面14の一部14aは、注射器3の末端のハブ2と接触するようになっている。
【0005】
特許文献2のシールキャップ(シリンジ針を保護する装置)は、特許文献2の図1〜5に示すように、開放基端22と閉鎖末端24の間に長手方向に伸びる弾性針キャップ20は、横方向の壁28および端壁30によって区切られる内部ハウジング26を有する。さらに、第1および第2の部分40とハウジング26のうちの第2部分42との間に、近位端22に向かっている第2部分42の端に、内側に膨張するように形成された環状ビード70(リブ)が設けられている。そして、この環状ビード70の変形性を改善するため、およびに加圧水蒸気の通過を容易にするために、ビード70には長手方向に伸びる4つのスロット72が設けられている。
【0006】
このタイプの針付きのプレフィラブルシリンジは、シリンジ内に薬液が充填されたいわゆるプレフィルドシリンジとして提供されることが多い。このため、外筒の針先を封止する機能を備えた上記のようなシールキャップが装着される。シールキャップは、針先のシールのため、針先により穿刺可能な弾性を備えたゴム材により成形される場合が多い。そして、プレフィルドシリンジの生産工程では、製品への異物付着に対する対策として静電気除去装置(イオナイザ)を設置しており、イオナイザよりオゾンが発生することが知られている。シールキャップの材質によっては、オゾンに対する耐性が低い場合が有り、上記のような生産工程では、シールキャップが劣化する恐れがある。また、通常の環境中にもオゾンは約20〜40ppb程度存在しているため、通常の環境下においても、オゾンによる劣化が発生する可能性がある。実際に、オゾン存在下での保存により、特に、外筒との嵌合部等ストレスのかかっている部分が劣化し、ヒビ割れや、亀裂を生じることが有ることを本発明者が知見した。劣化防止のためゴムに添加剤を加えることも検討したが、添加剤に起因するプレフィルドシリンジ内の薬剤変性の可能性も否定できない。よって、添加剤をできるだけ用いることなく、オゾン耐性を付与することが望ましい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、添加剤をできるだけ用いることなく、オゾン耐性を有するシリンジ用組立体、針付き外筒用シールキャップ、プレフィルドシリンジおよび針付き外筒用シールキャップの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 先端に筒状の穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に延び、前記穿刺針固定部を収納可能な筒状の中空部と、前記中空部内に挿入された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、少なくとも前記外筒への装着時に内部より押圧される部分の外面がポリパラキシリレン被膜により覆われているシリンジ用組立体。
(2) 前記ポリパラキシリレン被膜は、前記シールキャップの外側面の全体に被覆されている上記(1)に記載のシリンジ用組立体。
(3) 前記シールキャップの形成材料は、オゾンとの接触により劣化する可能性がある材料である上記(1)または(2)に記載のシリンジ用組立体。
(4) 前記ポリパラキシリレン被膜は、前記シールキャップの外面および内面に被覆されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
(5) 前記シールキャップは、高圧蒸気滅菌のための外面側からの水蒸気透過性を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
(6) 前記シールキャップの中空部の少なくとも一部は、前記中空部に収納された前記穿刺針固定部により外側に押し広げられた状態となっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(7) 先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒に装着されるシールキャップであって、前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に延び、前記穿刺針固定部を収納可能な筒状の中空部と、前記中空部内に挿入される前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、少なくとも前記外筒への装着時に内部より押圧される部分の外面がポリパラキシリレン被膜により覆われている針付き外筒用シールキャップ。
(8) 前記ポリパラキシリレン被膜は、前記シールキャップの外側面の全体に被覆されている上記(7)に記載の針付き外筒用シールキャップ。
(9) 前記シールキャップの形成材料は、オゾンとの接触により劣化する可能性がある材料である上記(7)または(8)に記載の針付き外筒用シールキャップ。
(10) 前記シールキャップは、高圧蒸気滅菌のための外面側からの水蒸気透過性を備えている上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の針付き外筒用シールキャップ。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(11) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ。
【0011】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(12) 先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える針付き外筒に装着される針付き外筒用シールキャップの製造方法であって、
前記製造方法は、前記針付き外筒の前記穿刺針固定部を収納する筒状の中空部と、前記中空部内に挿入される前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、外面にポリパラキシリレン被膜を有するシールキャップを準備する工程と、前記ポリパラキシリレン被膜を備えたシールキャップをオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程とを行う針付き外筒用シールキャップの製造方法。
(13) 前記オゾン高濃度環境下は、コロナ放電方式の静電気除去環境である上記(12)に記載の針付き外筒用シールキャップの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリンジ用組立体は、先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、外筒に装着されたシールキャップとからなる。そして、シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、開口基端部より先端側に延び、穿刺針固定部を収納可能な筒状の中空部と、中空部内に挿入された穿刺針の穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、少なくとも外筒への装着時に内部より押圧される部分の外面がポリパラキシリレン被膜により覆われている。このシリンジ用組立体では、オゾンとの接触に起因する劣化、ヒビ割れ、亀裂の発生が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態のプレフィルドシリンジの正面図である。
図2図2は、図1のA−A線断面図である。
図3図3は、図1および図2のプレフィルドシリンジに用いられている本発明のシリンジ用組立体の拡大断面図である。
図4図4は、図1および図2のプレフィルドシリンジおよび図3のシリンジ用組立体に用いられている外筒用シールキャップの拡大正面図である。
図5図5は、図4に示した外筒用シールキャップの底面図である。
図6図6は、図4のB−B線拡大断面図である。
図7図7は、図1および図2のプレフィルドシリンジおよび図3のシリンジ用組立体に用いられている針付き外筒の正面図である。
図8図8は、図7に示した針付き外筒の斜視図である。
図9図9は、図3に示したシリンジ用組立体の先端部の拡大断面図である。
図10図10は、本発明のシリンジ用組立体の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の外筒用シールキャップ、針付き外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体を用いたプレフィルドシリンジを図面に示す実施形態を用いて説明する。
本発明のプレフィルドシリンジ1は、シリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤7とからなる。
【0015】
そして、本発明のシリンジ用組立体(言い換えれば、キャップが装着された穿刺針付き外筒)10は、先端に穿刺針固定部22を有する外筒本体21と、先端に穿刺用針先61を有し、穿刺針固定部22に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える外筒2と、外筒2に装着されたシールキャップ3とからなる。
そして、シールキャップ3は、閉塞先端部31と、開口基端部32と、開口基端部32より先端側に延び、穿刺針固定部22を収納可能な筒状の中空部30と、中空部30内に挿入された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33とを備える。そして、シールキャップ3の少なくとも外筒2への装着時に内部より押圧される部分の外面が、ポリパラキシリレン被膜8により覆われている。
【0016】
また、本発明のシールキャップ3は、閉塞先端部31と、開口基端部32と、開口基端部32より先端側に位置し、穿刺針固定部22を収納する穿刺針固定部収納部35と穿刺針固定部収納部35の先端に連続する穿刺針収納部34とを備える中空部30と、穿刺針収納部34に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33と、穿刺針固定部収納部35の内面に形成された突出部36とを備える。そして、穿刺針固定部収納部35は、外筒2への装着時に、外筒2の穿刺針固定部により外部より押圧される部分であり、少なくとも、この穿刺針固定部収納部35部分の外面が、ポリパラキシリレン被膜8により被覆されている。
なお、ポリパラキシリレン被膜は、シールキャップの外側面の全体に被覆されていることが好ましい。さらには、シールキャップの先端面および底面を含む外面の全体に被覆されていてもよい。
【0017】
プレフィルドシリンジ1は、図1および図2に示すように、外筒2と、穿刺針の針先をシールするように外筒2に装着されたシールキャップ3とからなるシリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤7と、ガスケット4に取り付けられたもしくは使用時に取り付けられるプランジャー5とからなる。
【0018】
そして、薬剤7は、外筒2とガスケット4とシールキャップ3内により形成される空間内に充填されている。
充填される薬剤7としては、どのようなものでもよいが、例えば、高濃度塩化ナトリウム注射液、ミネラル類、ヘパリンナトリウム水溶液、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インスリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正用電解質、抗ウイルス剤、免疫賦活剤等、いかなるものでも良い。
【0019】
外筒2は、外筒本体21と、外筒本体21の先端部に設けられた筒状(中空状)の穿刺針固定部22と、外筒本体21の基端部に設けられたフランジ23と、基端部が穿刺針固定部22内に挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える。穿刺針6は、先端に穿刺用針先61を有する。穿刺針6の基端部は、穿刺針固定部22の中空部内に挿入されかつ固定されるとともに、穿刺針6の内部は、外筒2の内部空間20と連通している。なお、穿刺針6は、予め成形した外筒2の穿刺針固定部22の中空部内に挿入し、接着剤、熱溶着等により穿刺針固定部22に固定してもよい。また、外筒2に穿刺針6を直接インサート成形することで固定してもよい。インサート成形の場合、外筒2を成形することで、穿刺針固定部22は、穿刺針6が挿入された筒状(中空状)となり、穿刺針6は、その基端部が穿刺針固定部22の中空部内に挿入されかつ固定されたものとなる。
【0020】
外筒2は、透明もしくは半透明である。外筒本体21は、ガスケット4を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分である。また、穿刺針固定部22は、外筒本体の先端部(肩部)より、前方に突出するとともに、外筒本体より小径の中空筒状となっている。また、穿刺針固定部22は、図7および図8に示すように、先端に設けられた環状頭部24と、環状頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径する短いテーパー状縮径部25と、テーパー状縮径部25の基端部と外筒本体21の先端部とを連結する連結部27とを有し、テーパー状縮径部25により、環状凹部が形成されている。環状頭部24には、先端面から基端側に向かって窪んだ凹所26と、凹所26内に位置し、先端側に頂点を有する中空の円錐状部とが形成されている。
【0021】
連結部27の外面には、外筒2の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。なお、環状凹部は、テーパー状でなく、環状頭部24の基端との間に段差が形成されるように単に縮径した形状であってもよい。また、連結部27を省略し、環状凹部(テーパー状縮径部25)の基端部と外筒本体21の先端部とが直接連結されていてもよい。また、環状頭部24は、凹所26および円錐状部を省略した中空の円柱形状(円筒形状)でもよい。
【0022】
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような樹脂が好ましい。
穿刺針6としては、先端に穿刺用針先61を有する中空状のものが用いられる。穿刺針6の形成材料としては、金属が一般的である。金属としては、ステンレス鋼が好適である。
【0023】
ガスケット4は、図1および図2に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施形態では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒2の内面に液密に接触する。また、ガスケット4の先端面は、外筒2の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒2の先端内面形状に対応した形状となっている。
【0024】
ガスケット4の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、イソプレンゴム、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
【0025】
そして、ガスケット4には、その基端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部は、雌ねじ状となっており、プランジャー5の先端部に形成された突出部52の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャー5は、ガスケット4より離脱しない。なお、プランジャー5は、取り外しておき、使用時に取り付けるようにしてもよい。また、プランジャー5は、先端の円盤部より前方に筒状に突出する突出部52を備え、突出部の外面にはガスケット4の凹部と螺合する雄ねじが形成されている。また、プランジャー5は、断面十字状の軸方向に延びる本体部51と、基端部に設けられた押圧用の円盤部53を備えている。
【0026】
本発明の外筒用シールキャップ3は、外筒本体21と、外筒本体21の先端部に設けられ、かつ、環状頭部24と環状頭部24の基端に形成された環状凹部25とを有する筒状の穿刺針固定部22と、先端に穿刺用針先61を有し、穿刺針固定部22に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える外筒に装着されて用いられるものである。
【0027】
シールキャップ3は、図6に示すように、閉塞先端部31と、開口基端部32と、開口基端部32より先端側に位置し穿刺針固定部22を収納する穿刺針固定部収納部35と穿刺針固定部収納部35の先端に連続する穿刺針収納部34とを備える中空部30と、穿刺針収納部34に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33と、穿刺針固定部収納部35の内面に形成された突出部36とを備える。また、この実施例のものでは、外筒2に装着されたシールキャップ3は、中空部30の少なくとも一部(具体的には、中空部の一部である穿刺針固定部収納部35およびその付近)が、図9および図10に示すように、中空部30に収納された穿刺針固定部22により外側に押し広げられた状態となっている。
【0028】
そして、少なくとも、外筒2への装着時に内部より押圧される部分の外面が、ポリパラキシリレン被膜8により覆われている。具体的には、少なくとも、穿刺針固定部収納部35部分の外側となる部分の外面には、ポリパラキシリレン被膜8が設けられている。なお、この実施例では、ポリパラキシリレン被膜は、シールキャップの外側面の全体に被覆されており、このような形態であることが好ましい。また、本発明は、シールキャップの形成材料が、オゾンとの接触により劣化する可能性がある材料、特に、劣化性の高い材料である場合に、特に有効である。
【0029】
シールキャップ3の形成材料としては、少なくとも刺入可能部33が、穿刺針の刺入可能な弾性材料により形成されていることが必要である。穿刺針の刺入可能な弾性材料としては、例えば、ブチルゴム、イソプレンゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなどのゴム、特に、主鎖に二重結合を有する架橋ゴム(例えば、イソプレンゴム)を用いる場合に特に、有効である。なお、弾性材料としては、合成樹脂エラストマー(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなどのエラストマーを用いてもよい。
【0030】
特に、良好な弾性と可撓性を有することより、シールキャップの形成材料としては、イソプレンゴムなどの主鎖に二重結合を有するジエン系ゴム材料が好適に用いられる。このようなジエン系のゴムは、オゾンの影響を受けやすい、いわゆる、オゾンとの接触により劣化する可能性がある材料である。しかし、このような材料を用いても、本発明のシールキャップ3は、ポリパラキシリレン被膜8を有するため、オゾンによる劣化が少ない。
【0031】
また、この実施形態のシールキャップ3では、少なくとも穿刺針固定部収納部35および刺入可能部33(この実施形態においては、シールキャップの全体)が上述の穿刺針の刺入可能な弾性材料により形成されたものとなっている。このため、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、穿刺針固定部収納部35の内面が、穿刺針固定部22の環状頭部24の外面に合わせて弾性変形する。これにより、穿刺針固定部収納部35の内面と穿刺針固定部22の環状頭部24の外面とが、密着した状態となり、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱がより少なくなる。また、このとき、少なくとも穿刺針固定部収納部35は、穿刺針固定部22により外側に押し広げられた状態となっている。
【0032】
被膜を形成するポリパラキシリレンとしては、下記化学式により示されるものが好適に使用できる。
【0033】
【化1】
【0034】
本発明に使用されるポリパラキシリレンとしては、芳香族環に官能基が置換していないポリ(パラキシリレン)、芳香族環もしくはメチレン基に官能基が導入されたものいずれでもよい。例えば、芳香族環に塩素が置換されたポリ(クロロパラキシリレン)、芳香族環にメチル基が置換されたポリメチルパラキシリレン、メチレン基にフッ素が置換されたポリフルオロパラキシリレンなどのいずれでもよい。また、上記のポリパラキシリレン単独で構成されるホモポリマーだけでなく、パラキシリレンモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。特に、好ましくは、芳香族環に官能基が置換していないポリ(パラキシリレン)、ポリ(クロロパラキシリレン)である。なお、ポリパラキシリレン被膜8は、上記ポリパラキシリレンもしくは共重合体の単層で形成されていてもよく、上記ポリパラキシリレンおよび/もしくは共重合体の多層で形成されていてもよい。
本明細書において、ポリパラキシリレンは、芳香族環に官能基が置換していないポリ(パラキシリレン)のみを示すものではなく、上記の化学式1によって示されるものを意味する。
【0035】
そして、本発明に使用されるポリパラキシリレンは、上記化学式1で示されるパラキシリレンダイマーを原料とし、このパラキシリレンダイマーを熱分解させて得られるパラキシリレンモノマーが重合することにより形成される積層膜であることが好ましい。このようなものであれば、被膜として、ピンホールの発生がなく、膜厚の安定したものとなる。ポリパラキシリレン被膜におけるポリパラキシリレンの厚さは、0.5μm〜10μmが好ましく、特に、1μm〜6μmが好ましい。
そして、ポリパラキシリレン被膜8を有するシールキャップ3は、高圧蒸気滅菌のための外面側からの水蒸気透過性を備えていることが好ましい。特に、ポリパラキシリレン被膜の膜厚が、上記のものであれば、高圧蒸気滅菌のための外面側からの水蒸気透過性に影響を与えない。
【0036】
次に、ポリパラキシリレン被膜形成工程について説明する。
ポリパラキシリレンからなる被膜の形成は、シールキャップの外面に上述した化学式1のパラキシリレンモノマーを重合させて形成することが好ましい。また、被膜形成工程としては、化学蒸着法(C.V.D.法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより、ポリパラキシリレンの薄膜を形成することにより行うことが好ましい。特に、パラキシリレンモノマーを用いて、シールキャップの外面に化学蒸着することにより、重合と被膜形成が同時において行われる。このため、化学蒸着により形成されるポリパラキシリレン被膜は、シールキャップの外面に対しても均一に形成される。
【0037】
ポリパラキシリレン膜形成装置としては、パラキシリレンダイマー気化室、パラキシリレンダイマー熱分解室およびポリパラキシリレン蒸着室を備えるものが用いられる。ポリパラキシリレン膜の製膜は、例えば、蒸着室にシールキャップを入れ、装置内を5〜50mTorr、好ましくは、10〜30mTorrに減圧し、原料であるパラキシリレンダイマーを気化室にて100〜200℃で気化させ、次に熱分解室で650〜700℃の加熱によりパラキシリレンダイマーをパラキシリレンモノマーに熱分解させたものを蒸着室に流入させることにより、シールキャップにモノマーが接触すると、その界面で重合し、ポリパラキシリレン膜が形成される。このようにして得られたポリパラキシリレン膜は、耐薬品性、ガスバリア性に優れており、均一かつ連続的に形成されており、またピンホールも発生しない。また、ポリパラキシリレン層の厚さは、減圧度、気化室の温度および蒸着時間により制御することができる。
【0038】
また、ポリパラキシリレン被膜形成工程は、ポリパラキシリレンの液状物もしくはペースト状物をシールキャップ3の外面に薄く塗布して薄膜を形成することにより行ってもよい。また、ポリパラキシリレン被膜形成工程は、ポリパラキシリレンにより作製されたフィルムもしくは薄膜を熱融着、高周波融着、接着剤等によりシールキャップの外面に貼り付けることにより行ってもよい。
【0039】
さらに、この実施例のシールキャップ3では、図6に示すように、穿刺針固定部収納部35の内面には、外筒2の穿刺針固定部22との張付きを抑制する張付抑制面9が形成されている。そして、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入しシールされ、さらに、突出部36と外筒2の穿刺針固定部22の環状凹部25とが係合し、かつ、穿刺針固定部収納部35の内面と穿刺針固定部22の外面とが張付抑制面9を介して密着した状態となる。
【0040】
なお、張付抑制面9は、穿刺針固定部収納部35の内面全体ではなく、穿刺針固定部22の外面と密着する部分のみに形成されていてもよい。張付抑制面9は、張付抑制面となる部分への張付抑制物質の被覆または/および非粘着性を付与する表面処理などにより形成することが好ましい。張付抑制物質の被覆としては、例えば、張付抑制重合被膜、張付抑制付与液状物質(例えば、液状シリコーンオイル)の塗布などが挙げられる。非粘着性を付与する表面処理としては、例えば、エポキシ化、ハロゲン化などが挙げられる。これらの中でも、張付抑制重合被膜は、経年劣化し難く、外筒2に充填される薬剤7と相互作用(例えば、薬剤の吸着)を起こし難くいため、張付抑制面として特に好ましい。また、張付抑制重合被膜は、シールキャップ3の中空部30の内面を形成する材料と相溶性もしくは接着性を有し、剥離しないものが好ましい。
【0041】
張付抑制面(内面被覆層)9は、外面被覆層であるポリパラキシリレン被膜と同じものが好ましい。このようにすることにより、二つの被覆層を同時に形成することができる。なお、内面被覆層9は、ポリパラキシリレン被膜8と異なる材料を用いてもよい。異なる材料を用いる場合には、内面被覆層が、摺動性が高いものを選択することが好ましい。
【0042】
そして、この実施形態のシールキャップ3のように、張付抑制面(内面被覆層)9は、穿刺針収納部34の内面にも形成されていることが好ましい。このようにすることにより、穿刺針6の穿刺用針先61が、穿刺針収納部34の内面と接触しても張付くことがない。これにより、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3を装着する際に、穿刺針収納部34内に進入した穿刺針6の穿刺用針先61は、穿刺針収納部34の内面に張付くことなく穿刺針収納部34の先端(小径先端部34a)まで誘導され、確実に刺入可能部33に刺入される。
【0043】
さらに、この実施形態のシールキャップ3では、張付抑制面9は、穿刺針固定部導入部38の内面にも形成されている。このため、穿刺針固定部22が穿刺針固定部導入部38に進入した際に、穿刺針固定部22の外面が穿刺針固定部導入部38の内面に張付くことがない。これにより、シールキャップ3を外筒2の穿刺針固定部22にスムーズに装着することができる。
【0044】
そして、本発明のシリンジ用組立体10では、図3に示すように、外筒2の先端部(穿刺針固定部22)にシールキャップ3が装着され、かつ、穿刺針6の穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入し、液密状態にシールされ、かつ、穿刺針固定部22の環状凹部25と穿刺針固定部収納部35の内面に形成された突出部36とが係合し、かつ、穿刺針固定部収納部35の内面と穿刺針固定部22の外面とが張付抑制面9を介して密着した状態となっている。また、このとき、少なくとも穿刺針固定部収納部35は、穿刺針固定部22により外側に押し広げられた状態となっている。
【0045】
この実施例のシールキャップ3の内面形態について説明する。
このシールキャップ3は、開口基端部32より所定長先端側に位置する内面に設けられた突出部36を備えている。突出部36は、最も突出した頂点部36aと、頂点部36aより先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する傾斜部(テーパー部)36bとを有している。特に、この実施例は、突出部36が、環状突出部となっており、傾斜部36bは、穿刺針固定部収納部35の内径が先端方向に向かって縮径するテーパー部となっている。
【0046】
頂点部36aにおける穿刺針固定部収納部35の内径は、外筒2の穿刺針固定部22の環状凹部25の先端部の外径より若干小さいものとなっている。これにより、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、突出部36と環状凹部25とが係合する。また、先端側傾斜部36bは、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された状態で、環状凹部25よりも先端側まで延びている。そして、先端側傾斜部36bの少なくとも先端部における穿刺針固定部収納部35の内径は、外筒2の穿刺針固定部22の環状頭部24の外径より若干小さいものとなっている。
【0047】
このため、図9および図10に示すように、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、先端側傾斜部36bは、その内面全体が環状頭部24の外面に張付抑制面9を介して押し付けられて密着した状態となる。これにより、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱がより少なくなる。また、先端側傾斜部36bが環状頭部24の外面に張付抑制面9を介して押し付けられているため、少なくとも穿刺針固定部収納部35は、環状頭部24により外側に押し広げられた状態となっている。
【0048】
また、この実施形態のシールキャップ3では、図6に示すように、さらに突出部36は、頂点部36aより開口端(基端)方向に向かって延びかつ突出高さが開口端(基端)方向に向かって漸次低下する基端側傾斜部36cを有している。これにより、シールキャップ3を外筒2の穿刺針固定部22に装着する際、突出部36の頂点部36aが穿刺針固定部22の環状頭部24を先端側から乗り越え易くなる。
【0049】
また、この実施形態のシールキャップ3では、穿刺針固定部収納部35は、突出部36の先端側傾斜部36bの先端部より先端方向に向かって所定長(具体的には穿刺針収納部34の基端部まで)延びる直線部36dを有している。この直線部36dにおける穿刺針固定部収納部35の内径は一定、かつ、外筒2の穿刺針固定部22の環状頭部24の外径より若干小さくなっている。このため、外筒2の穿刺針固定部22にシールキャップ3が装着された際に、直線部36dは、環状頭部24の外面に張付抑制面9を介して押し付けられて密着した状態となる。また、直線部36dが環状頭部24の外面に張付抑制面9を介して押し付けられているため、少なくとも穿刺針固定部収納部35は、環状頭部24により外側により押し広げられた状態となっている。
【0050】
また、この実施例では、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bの基端部は、外筒2の穿刺針固定部22の環状凹部25の周囲に位置し、先端側傾斜部36bの少なくとも基端部近傍における穿刺針固定部収納部35の内径は、環状凹部25の外径より若干小さいものとなっている。よって、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bは、環状凹部25の外面に張付抑制面9を介して押し付けられて密着するものとなっている。これにより、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱をより少なくすることができる。
また、この実施例では、環状凹部25は、環状頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径するテーパー状縮径部からなる。これにより、シールキャップ3を外筒2から離脱させる際、シールキャップ3の突出部36が、環状凹部25に沿って外側に45拡げられ、環状頭部24を乗り越え易くなる。
【0051】
さらに、この実施形態のシールキャップ3では、中空部30は、シールキャップ3の開口基端部32から穿刺針固定部収納部35(突出部36)の基端にかけて形成され、ほぼ同一内径にて延びる穿刺針固定部導入部38を備えている。穿刺針固定部導入部38は、穿刺針固定部収納部35の最大内径よりも若干広い内径を有しており、外筒2の穿刺針固定部22の環状頭部24の外径より若干大きいものとなっている。このため、シールキャップ3を外筒2の穿刺針固定部22に装着する際の穿刺針固定部22の導入部として機能する。
【0052】
また、穿刺針固定部導入部38は、穿刺針固定部収納部35(突出部36)の基端との境界に、開口基端部32方向を向いて起立した環状起立面39を有している。よって、シールキャップ3の穿刺針固定部導入部38内に、外筒2の先端部が挿入されると、外筒2の穿刺針固定部22は、穿刺針固定部導入部38内に進入した後、図10に示すように、穿刺針固定部22の環状頭部24の環状先端面が、上記の環状起立面39に当接するものとなり、この状態にて、穿刺針6は、シールキャップ3の中心軸とほぼ平行なものとなり、穿刺針収納部34の小径先端部34a内に進入する状態となる。
【0053】
また、シールキャップ3の基端部には、外方に環状に突出する把持用のフランジ37が形成されており、さらに、フランジ37には、環状凹部71が設けられている。フランジ37の先端側位置は、中空部30の環状起立面39より先端側に位置し、かつ、突出部36の頂点部36a付近(図6に示すものでは、頂点部36aより若干基端開口部32側)に位置するものとなっている。
【0054】
次に、本発明のシールキャップの製造方法について説明する。
本発明のシールキャップの製造方法は、先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える針付き外筒に装着されるシールキャップの製造方法である。
本発明のシールキャップの製造方法は、針付き外筒の穿刺針固定部を収納する筒状の中空部と、中空部内に挿入される穿刺針の穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、中空部の外面にポリパラキシリレン被膜を有するシールキャップを準備する工程と、外面被覆層を備えたシールキャップをオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程とを行うものである。
【0055】
シールキャップを準備する工程は、例えば、針付き外筒の穿刺針固定部を収納する筒状の中空部と、中空部内に挿入される穿刺針の穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、例えば、図4ないし図6に示すような形態を有するシールキャップ本体を準備し、そのシールキャップ本体の少なくとも中空部の外面に、ポリパラキシリレン被膜8を形成することにより行うことが好ましい。
シールキャップ本体の準備は、シールキャップの形成材料として上述した弾性材料を用いて、シールキャップ本体を成形することにより行われる。
シールキャップ本体へのポリパラキシリレン被膜の形成は、上述した方法にて、行うことができる。
【0056】
また、本発明の製造方法では、ポリパラキシリレン被膜の形成工程と同時もしくは別個に行われるシールキャップの中空部の内面に穿刺針固定部の外面との張付きを抑制するための内面被覆層形成工程を行うことが好ましい。ポリパラキシリレン被膜の形成と内面被覆層の形成を同時に行う方法としては、上述したポリパラキシリレン被膜の形成工程を行うことにより、外面のみならず内面にもポリパラキシリレン被膜を形成することができる。
【0057】
なお、内面被覆層は、液状コーティング剤をシールキャップ本体の内面にも塗布し、その後、被覆層形成物質を固化させることもしくは液状コーティング剤中の溶媒を揮発させることにより形成することもできる。これは、上述したポリパラキシリレン被膜形成工程の終了後もしくは終了前に、液状コーティング剤をシールキャップ本体の内面に塗布し、その後、被覆層形成物質を固化させることもしくは液状コーティング剤中の溶媒を揮発させることにより形成することができる。
【0058】
次に、シールキャップをオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程が行われる。
オゾン高濃度環境下は、例えば、コロナ放電方式の静電気除去環境、オゾン殺菌器内、オゾン殺菌しているクリーンルーム内、オゾンが発生する空気清浄機を使用している空間(例えば、病院)などである。シールキャップおよびシールキャップ装着済み外筒が静電気に帯電していると、製造工程中の塵等を吸着するおそれがある。このため、製造工程を静電気除去環境とし、静電気の除去が行われる。静電気除去環境は、例えば、コロナ放電式イオナイザを用いて発生させたイオンを、清浄な空気と共に製造工程中に導入することにより形成することができる。コロナ放電時には、イオンと共にオゾンが発生するため、シールキャップ装着済み外筒が、オゾンに接触することになる。しかし、本願発明のシールキャップ装着済み外筒では、上述したように、シールキャップは、耐オゾン性外面被覆層を備えるため、オゾンによる劣化が抑制されている。このため、オゾン接触工程に起因するキャップの劣化がきわめて少ない。なお、静電除去環境は、コロナ放電方式(電圧印加式又は自己放電式のいずれであってもよい)に限定されるものではなく、AC放電方式、DC放電方式、パルス放電方式などであってもよい。
【0059】
次に、本発明のシリンジ用組立体の製造方法について説明する。
本発明のシリンジ用組立体の製造方法は、先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、外筒に装着されたシールキャップとを備えるシリンジ用組立体の製造方法である。
【0060】
本発明のシリンジ用組立体の製造方法は、先端に穿刺針固定部を有する外筒本体と、先端に穿刺用針先を有し、穿刺針固定部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える針付き外筒を準備する工程と、針付き外筒の穿刺針固定部を収納する筒状の中空部と、中空部内に挿入される穿刺針の穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、かつ、中空部の外面に、ポリパラキシリレン被膜を有するシールキャップを準備する工程と、外面被覆層を備えたシールキャップを針付き外筒に装着する工程と、シールキャップおよびシールキャップ装着済み外筒をオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程とを行うものである。
【0061】
針付き外筒の準備工程について説明する。針付き外筒は、例えば、穿刺用針先を有する針6を準備し、この針6を金型内に配置した後、外筒の形成材料として上述した熱可塑性樹脂を射出し、外筒2を形成することにより、成形される。この方法は、いわゆるインサート成形である。なお、針付き外筒は、最初に、穿刺用針先を有する針6、外筒2を準備し、外筒の穿刺針固定部22に、針6の基端部を挿入し、熱融着もしくは接着剤を用いて、針を外筒に固定することにより準備したものであってもよい。
【0062】
ポリパラキシリレン被膜を有するシールキャップを準備する工程は、上述した方法により行われる。そして、この工程では、上述したシールキャップの製造方法と同様に、ポリパラキシリレン被膜の形成工程と同時もしくは別個に行われるシールキャップの中空部の内面に穿刺針固定部の外面との張付きを抑制するための内面被覆層形成工程を行ってもよい。
【0063】
次に、上述のように外面被覆層を備えたシールキャップを針付き外筒に装着する工程が行われる。
成形した針付き外筒2および外面被覆層を備えたシールキャップを、製造工程内に搬入し、図10に示すように、針付き外筒2を穿刺用針先61側より、シールキャップ3の中空部30内に挿入する。そして、外筒2の穿刺針固定部22の先端部が、シールキャップ3内に、収納され、穿刺用針先61が中空部30の先端に到達する。そして、さらに、外筒をシールキャップに押し込むことにより、穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入する。そして、シールキャップ3の突出部36と外筒2の穿刺針固定部22の環状凹部25とが係合し、シールキャップ3の外筒2への装着が完了し、図9の状態となる。
【0064】
そして、この実施形態のシールキャップ3では、穿刺針固定部収納部35の外径は、外筒2の穿刺針固定部22の環状頭部24の外径より若干小さいものとなっている。このため、図9に示す状態(シールキャップ3が外筒2に装着された状態)では、シールキャップ3の穿刺針固定部収納部35部分およびその付近は、収納した穿刺針固定部により外側に押し広げられた状態となっている。さらに、この実施例では、シールキャップ3の突出部36部分も外筒2の環状凹部25により外側に押し広げられた状態となっている。
【0065】
そして、製造工程中は、シールキャップおよびシールキャップ装着済み外筒への塵等の吸着を防止するため、コロナ放電式イオナイザを用いて発生させたイオンを、清浄な空気と共に製造工程中に導入して、シールキャップおよびシールキャップ装着済み外筒の静電気を除去している。このとき、コロナ放電式イオナイザから、イオンと共にオゾンが発生するため、シールキャップおよびシールキャップ装着済み外筒は、オゾン高濃度環境下に暴露される。すなわち、シールキャップおよびシールキャップ装着済み外筒をオゾン高濃度環境下に暴露するオゾン接触工程が行われる。
【0066】
なお、本願におけるオゾン接触工程とは、通常の環境よりもオゾン濃度が高い環境下でシールキャップを保管することも含まれる。このようなオゾン接触工程としては、例えば、空気清浄機が導入されている場所(例えば、病棟)での保管、除菌、消臭などの目的でオゾン処理が施されている冷蔵庫での保管などが挙げられる。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
シールキャップ材料としてイソプレンゴム(IR)(過酸化物架橋)製のものを準備し、ポリパラキシリレンとしては、モノクロロパラキシレンダイマー[ジクロロ−(2, 2)−パラシクロファン]、(商品名:dix−c、第三化成株式会社製)を用いて、図6に示すような外面にポリパラキシリレン被膜を有するシールキャップを作製した。
具体的には、気化室、熱分解炉、蒸着チャンバーから構成される化学蒸着装置(型式S、タンブラー容量25L、第三化成株式会社株式会社製)を用い、図2に示した形状を有し、イソプレンゴム(IR)で作製されたシールキャップ材の表面にポリ(クロロパラキシリレン)の皮膜を形成させた。
【0068】
詳細には、ダイマーであるジクロロ−(2,2)−パラシクロファンを気化室に投入し、装置内を30mTorrの真空度に調整した。次に、150〜170℃に加熱して気化室のダイマーであるジクロロ−(2,2)−パラシクロファンを昇華させ、続いてダイマーを650〜690℃の熱分解炉を通過させモノマーに熱分解させ、最終的にはシールキャップ材500個が入っているタンブラーを具備した蒸着チャンバー(室温)にモノマーを誘導させ、25分間処理し、張付抑制層の形成を行った。なお、タンブラーは2rpmで回転させ、シールキャップ材を攪拌しながら、外面および内面へのポリパラキシリレン被膜の形成を行った。ポリパラキシリレン被膜の形成後、シールキャップ材を任意に30個選択し、ポリパラキシリレン被膜の厚みを測定したところ、平均厚みは1μmであった。以上の方法によりシールキャップを作製した。
【0069】
(実施例2)
チャンバー内での処理時間を125分とした以外は、実施例1と同様に行った。ポリパラキシリレン被膜の形成後、シールキャップ材を任意に30個選択し、ポリパラキシリレン被膜の平均厚みを測定したところ、平均厚みは5μmであった。
【0070】
(実施例3)
上述のシールキャップ材料として架橋系を変更したイソプレンゴム(硫黄架橋)を投入した以外は、実施例1と同様に行った。ポリパラキシリレン被膜の形成後、シールキャップ材を任意に30個選択し、ポリパラキシリレン被膜の平均厚みを測定したところ、平均厚みは1μmであった。
【0071】
(実施例4)
パラキシリレン用材料としては、モノクロロパラキシレンダイマー[1,4-ビス(ジクロロメチル)ベンゼン]、(商品名:dix−d、第三化成株式会社製)を使用した以外は、実施例3と同様に行った。ポリパラキシリレン被膜形成後、シールキャップ材を任意に30個選択し、ポリパラキシリレン被膜の厚みを測定したところ、平均厚みは5μmであった。
【0072】
(比較例1)
ポリパラキシリレン被膜の形成を行わない以外は、実施例1と同様にしてシールキャップを作製した。
【0073】
(比較例2)
ポリパラキシリレン被膜の形成を行うことなく、実施例1にて用いたシールキャップ材100個の外面に、反応性シリコーンオイルを主成分とする液状コーティング剤を塗布し、常温または加熱により重合(架橋を含む)してシリコーン重合被膜を形成した。シールキャップ材を任意に30個選択し、シリコーン重合被膜の厚みを測定したところ、平均厚みは1μmであった。
【0074】
(実験1:オゾン耐性試験)
JIS K 6249(2004/03/20改定)に記載されている「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に基づき、試験を実施した。実施例1ないし4および比較例1、2のシールキャップを、オゾン濃度500±50ppbの中に24時間暴露させた。暴露後、各シールキャップを確認したとろ、表1のような結果が得られた。なお、表1中における、○は、オゾン耐性あり(オゾン劣化に伴う外観上の劣化が認められなかった)、×は、オゾン耐性なし(オゾン劣化に伴う外観上の劣化が認められた)ことを示す。そして、実施例のシールキャップはオゾン耐性を有することが確認できた。
【0075】
(実験2:滅菌性試験)
図7および図8に示すような形態の穿刺針付き外筒を複数本準備した。BI菌(10CFU/ml)を、実施例1ないし4、および比較例1、2のシールキャップ内に投入後、外筒にシールキャップを所定の位置まで装着した。なお、装着時にシールキャップ内の内圧が上昇する為、シールキャップの開口部付近を変形させることにより外筒、シールキャップ間に隙間を作り、内圧解除を行った。外筒へのシールキャップの装着後、オートクレーブ処理(123℃、10分)を行った。滅菌後、7日間培地処理を行ったところ、表1に示す結果となった。なお、表1中の○は、滅菌できた(全て菌死滅)、×は、滅菌できず(全ての菌が死滅せず)]を示す。実施例のシールキャップはオートクレーブ滅菌性を有することが確認できた。
【0076】
(実験3:耐圧試験)
実験2と同様に、図7および図8に示すような形態の穿刺針付き外筒を複数本と、図2に示すような先端にガスケットが装着されたプランジャーも複数本を準備し、ガスケットを外筒内に挿入して、複数本のシリンジを作成した。そして、JIS T 3210(2011/07/29改定)に記載されている「気密性」試験に基づき、試験を実施した。具体的には、十分水を拭き取った複数本のシリンジに、3/4の位置まで水を吸い入れ、実施例1ないし4および比較例1、2のシールキャップで封止後、プランジャーに400kPaの圧力を加えることにより、耐圧性についての試験を行った。結果は、表1に示す通りであった。なお、表1中の○は、耐圧性あり(漏れなかった)、×は、耐圧性なし(漏れた)を示す。実施例のシールキャップを用いたシリンジが、十分な耐圧性を有することが確認できた。
【0077】
(実験4:刺通抵抗試験)
実験2と同様に、図7および図8に示すような形態の穿刺針付き外筒を複数本準備した。そして、穿刺針の針先にシリコーン塗布した後、外筒に実施例1ないし4および比較例1、2のシールキャップを所定の位置まで装着し、穿刺針の針先がシールキャップ内に刺入したものを作成した。そして、シールキャップが装着された外筒をオートクレーブ処理(123℃、85分)した。続いて、各外筒より、シールキャップを取り外した後、各外筒の穿刺針のシリコーンゴム(t=0.5mm)に対する刺通抵抗をオートグラフを用いて測定した。刺通抵抗は低い方が好ましいと言える。結果を表1に示す。実施例のシールキャップを用いたものにおいて、穿刺後の針先は、十分な刺通性を有することが確認できた。
【0078】
(実験5:水分蒸散性試験)
実験3と同様に、図7および図8に示すような形態の穿刺針付き外筒を複数本と、図2に示すような先端にガスケットが装着されたプランジャーも複数本を準備し、ガスケットを外筒内に挿入して、複数本のシリンジを作成した。そして、新有効性分含有医薬品の安定性試験ガイドライン(2003/06/03医薬審発0603001)に記載されている「半透過性の容器に包装された製剤」の水分損失について試験した。結果は、表1に示す通りであった。なお、○は、医薬品容器として要求される機能を満たす、×は、医薬品容器として要求される機能を満たさない、を示す。実施例のシールキャップは十分な低水分蒸散性を有することが確認できた。
【0079】
【表1】
【符号の説明】
【0080】
1 プレフィルドシリンジ
2 外筒
3 シールキャップ
4 ガスケット
6 穿刺針
8 ポリパラキシリレン被膜
10 シリンジ用組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10