特許第6352125号(P6352125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352125
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/24 20060101AFI20180625BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B05B7/24
   B05B7/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-188748(P2014-188748)
(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-59857(P2016-59857A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】竹内 徹
(72)【発明者】
【氏名】中岡 豊人
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−216571(JP,A)
【文献】 特開平09−225366(JP,A)
【文献】 特開平10−230200(JP,A)
【文献】 特開2012−196605(JP,A)
【文献】 特表2011−514234(JP,A)
【文献】 特開2011−098305(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0045289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−3/18;7/00−9/08;12/00−13/06
B05D1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環式の塗料供給装置と、
前記塗料供給装置から供給された塗料を霧化して吐出するハンドガンと、
前記ハンドガンに供給される霧化エアが流通する霧化エア経路と、
前記ハンドガンに供給される内部洗浄用の溶剤と洗浄エアが流通する洗浄流体経路と、
前記溶剤を供給する溶剤供給源と、
前記溶剤供給源と前記洗浄流体経路との間で前記溶剤の流れを開閉する第1開閉弁と、
圧縮空気供給源と、
前記圧縮空気供給源と前記洗浄流体経路との間で前記洗浄エアの流れを開閉する第2開閉弁とを備え、
前記ハンドガンは、前記塗料供給装置から塗料を導入する塗料導入部と、前記霧化エア経路から霧化エアを導入する霧化エア導入部と、塗料および霧化エアを吐出する複数のノズルが設けられたヘッド部とを備え、
前記塗料供給装置は、塗料供給源と、前記塗料供給源から塗料を圧送するポンプと、前記塗料導入部に接続可能な第1カプラと、前記塗料供給源から前記第1カプラに向かう塗料往路と、前記第1カプラから前記塗料供給源に戻る塗料復路と、前記塗料往路に設けられて前記第1カプラに供給される塗料の圧力を減少させる減圧弁と、前記塗料復路に設けられて前記第1カプラにおける塗料の圧力を保持する背圧弁とを備え、
前記霧化エア経路は、前記霧化エア導入部に接続可能な第2カプラを有し、
前記洗浄流体経路は、第1開閉弁および前記第2開閉弁に対してそれぞれ継手を介して分離可能であり、さらに、前記洗浄流体経路は、前記塗料導入部にも前記霧化エア導入部にも接続可能な第3カプラを有し、
前記ポンプの駆動と、前記霧化エアの供給と、前記溶剤の流通と、前記洗浄エアの供給とが、前記圧縮空気供給源から供給される圧縮エアにより行われることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記複数のノズルが、前記ヘッド部の面上で一方向に並列して設けられ、
前記ヘッド部は、前記ハンドガンの本体部に対して前記複数のノズルの並列方向を変更できるように回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
少なくとも、前記塗料供給源、前記ポンプ、前記溶剤供給源、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁が、移動車両に搭載されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記ポンプは、圧縮空気の圧力により塗料を圧送するダイアフラムポンプまたはプランジャーポンプであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環式に塗料を供給する塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吹き付け塗装の塗着効率は、刷毛塗りやローラー塗装と比較すると非常に低く、50〜60%程度である。塗着効率を向上させるには、塗装パターンを極力絞り、塗料粒子の被塗装物方向への慣性力を高くする必要がある。その一つの手段として至近距離で塗料を吹き付けることが有効である。すなわち、ノズルを塗装面から数センチメートルの距離で移動させながら吹き付け塗装することで、霧化された塗料粒子を高い塗着速度で塗装面へ衝突させることが可能となり、その結果、塗着効率を90%以上確保することが可能となる。
【0003】
しかしながら、ノズルから塗装面までの距離を近づけると塗装パターンが極端に小さくなってしまう。このとき、塗膜を適度に薄くするには、塗料の吐出量を小さくする必要がある。生産速度を落とさず塗装面積を拡大するために、等間隔に配置された複数のノズルを具備した多ノズル式のスプレーが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−167446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプレー塗装は、塗装効率が高いが、塗料ダストの飛散が多いため、十分な養生(マスキング)が必要である。スプレー塗装には、多くの付帯設備が必要であり、準備や洗浄作業に工数を要する。
塗着効率を高くする方法として静電塗装がある。しかし、静電塗装を行うためには、静電気発生器が必要になるため、設備が大掛かりになる。また静電気を使用することによる発火の危険性もある。また、屋外で静電塗装する場合、作業者が地面や床面を通じて接地(アース)されているので、静電気のかかった塗料が人に付着するため、塗着効率が下がる場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塗装時および洗浄時の作業性を向上することが可能な塗装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、循環式の塗料供給装置と、前記塗料供給装置から供給された塗料を霧化して吐出するハンドガンと、前記ハンドガンに供給される霧化エアが流通する霧化エア経路と、前記ハンドガンに供給される内部洗浄用の溶剤と洗浄エアが流通する洗浄流体経路と、前記溶剤を供給する溶剤供給源と、前記溶剤供給源と前記洗浄流体経路との間で前記溶剤の流れを開閉する第1開閉弁と、圧縮空気供給源と、前記圧縮空気供給源と前記洗浄流体経路との間で前記洗浄エアの流れを開閉する第2開閉弁とを備え、前記ハンドガンは、前記塗料供給装置から塗料を導入する塗料導入部と、前記霧化エア経路から霧化エアを導入する霧化エア導入部と、塗料および霧化エアを吐出する複数のノズルが設けられたヘッド部とを備え、前記塗料供給装置は、塗料供給源と、前記塗料供給源から塗料を圧送するポンプと、前記塗料導入部に接続可能な第1カプラと、前記塗料供給源から前記第1カプラに向かう塗料往路と、前記第1カプラから前記塗料供給源に戻る塗料復路と、前記塗料往路に設けられて前記第1カプラに供給される塗料の圧力を減少させる減圧弁と、前記塗料復路に設けられて前記第1カプラにおける塗料の圧力を保持する背圧弁とを備え、前記霧化エア経路は、前記霧化エア導入部に接続可能な第2カプラを有し、前記洗浄流体経路は、第1開閉弁および前記第2開閉弁に対してそれぞれ継手を介して分離可能であり、さらに、前記洗浄流体経路は、前記塗料導入部にも前記霧化エア導入部にも接続可能な第3カプラを有し、前記ポンプの駆動と、前記霧化エアの供給と、前記溶剤の流通と、前記洗浄エアの供給とが、前記圧縮空気供給源から供給される圧縮エアにより行われることを特徴とする塗装装置を提供する。
【0008】
前記複数のノズルが、前記ヘッド部の面上で一方向に並列して設けられ、前記ヘッド部は、前記ハンドガンの本体部に対して前記複数のノズルの並列方向を変更できるように回転可能であることが好ましい。
少なくとも、前記塗料供給源、前記ポンプ、前記溶剤供給源、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁が、移動車両に搭載されていることが好ましい。
前記ポンプは、圧縮空気の圧力により塗料を圧送するダイアフラムポンプまたはプランジャーポンプであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1〜第3カプラを使用することにより、ハンドガンに対する塗料供給装置の接続と洗浄流体経路の接続を容易に切り替えることができる。また、洗浄流体経路は、第3カプラと継手を操作することにより、塗装時には洗浄流体経路を取り外すことができ、塗装時の作業性が向上する。ハンドガンのヘッド部には、塗料および霧化エアを吐出する複数のノズルが設けられているので、エアスプレーガンと比較して塗着効率が圧倒的に向上し、塗料の飛散を少なくして、塗装時の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】塗装時における塗装装置の一例を示す概略構成図である。
図2】塗料流路の洗浄時における塗装装置の一例を示す概略構成図である。
図3】霧化エア流路の洗浄時における塗装装置の一例を示す概略構成図である。
図4】ハンドガンを垂直方向に移動させて塗装する状態の説明図である。
図5】ハンドガンを水平方向に移動させて塗装する状態の説明図である。
図6】ハンドガンのヘッド部の一例を示す配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1〜3に、塗装装置の一実施形態を示す。この塗装装置は、循環式の塗料供給装置10と、塗料供給装置10から供給された塗料を霧化して吐出するハンドガン20と、ハンドガン20に供給される霧化エアが流通する霧化エア経路31と、ハンドガン20に供給される内部洗浄用の溶剤と洗浄エアが流通する洗浄流体経路50を含む。
【0012】
ハンドガン20は、本体部21の上部に設けられたバルブユニット22と、バルブユニット22の前面に設けられたヘッド部23と、ヘッド部23の前面に設けられた複数のノズル24と、本体部21の前側に設けられたハンドレバー25と、塗料供給装置10から塗料を導入する塗料導入部26と、霧化エア経路31から霧化エアを導入する霧化エア導入部27を備える。
【0013】
ヘッド部23には、塗料および霧化エアを吐出する複数のノズル24が設けられている。塗料および霧化エアは、それぞれ本体部21の下部に設けられた塗料導入部26および霧化エア導入部27からバルブユニット22を経てヘッド部23に供給される。バルブユニット22の内部には、塗料の流路を開閉する弁と、霧化エアの流路を開閉する弁(図示せず)が形成されている。これらの弁は、ハンドレバー25の操作に応じて開閉可能である。弁の開閉状態として、例えば(a)塗料の流路および霧化エアの流路が閉じた休止状態、(b)塗料の流路が閉じて霧化エアの流路が開いた準備状態、(c)塗料の流路および霧化エアの流路が開いた運転状態が挙げられる。
【0014】
塗料供給装置10は、塗料供給源11と、塗料供給源11から塗料を圧送するポンプ12と、ハンドガン20の塗料導入部26に接続可能な第1カプラ17と、塗料供給源11から第1カプラ17に向かう塗料往路13と、第1カプラ17から塗料供給源11に戻る塗料復路14を含む。
【0015】
ポンプ12は、駆動エア流路34から供給される圧縮空気により駆動される。ダイアフラムポンプは、圧縮空気の圧力により塗料を圧送することができるので、ポンプ12として好適である。プランジャーポンプも同様にポンプ12として使用可能である。プランジャーポンプは、塗料が高粘度の場合でも圧縮比を高くすることができる点で好ましい。圧縮空気は、圧縮空気供給源30から供給されている。圧縮空気供給源30としては、例えばエアコンプレッサーにより空気を圧縮して供給するシステムが挙げられる。圧縮空気供給源30は、水分、油分、異物等を除去するフィルターや、圧縮空気を一時的に貯留する補助タンク等を備えることもできる。
【0016】
塗料供給源11としては、例えば金属製石油缶、ペール缶、ポリ容器、タンク等の容器が挙げられる。塗料往路13および塗料復路14は、チューブ、ホース、パイプなどから構成することができる。顔料等の配合量が多い塗料を供給する場合、塗料の吐出の有無にかかわらず、塗料供給源11から供給される塗料を塗料往路13及び塗料復路14で循環させることにより、配合物の沈降を抑制することができる。
【0017】
塗料往路13には、第1カプラ17に供給される塗料の圧力を減少させて所定の設定圧力に保持する減圧弁15が設けられている。減圧弁15は、ポンプ12と第1カプラ17との間に配置されている。塗料復路14には、第1カプラ17における塗料の圧力を保持する背圧弁16が設けられている。設定圧力を手元で調節するため、第1カプラ17や減圧弁15等をハンドガン20と一体的に取り付け可能なガンマウントレギュレータ18として構成してもよい。
【0018】
霧化エア経路31には、霧化エアの圧力を調整するエアレギュレータ32と、ハンドガン20の霧化エア導入部27に接続可能な第2カプラ33が設けられている。霧化エアは、圧縮空気供給源30から供給される。霧化エア経路31は、霧化エアの流通が可能な管路であり、例えば、チューブ、ホース、パイプなどから構成することができる。
【0019】
図1に示すように、塗装時は、ハンドガン20の塗料導入部26には塗料供給装置10の第1カプラ17が接続され、霧化エア導入部27には霧化エア経路31の第2カプラ33が接続されている。これにより、ハンドガン20に塗料および霧化エアが導入され、各ノズル24から霧化された塗料が吐出される。
【0020】
ハンドガン20内部の洗浄時には、図2または図3に示すように、ハンドガン20に洗浄流体経路50が接続される。洗浄流体経路50は、内部洗浄用の溶剤(洗浄溶剤)を流通させる洗浄溶剤経路51と、洗浄エアを流通させる洗浄エア経路52を含む。洗浄溶剤経路51および洗浄エア経路52は、例えば、チューブ、ホース、パイプなどから構成することができる。
【0021】
洗浄溶剤は、溶剤供給源40から供給される。溶剤供給源40としては、例えば金属製石油缶、ペール缶、ポリ容器、タンク等の容器が挙げられる。洗浄溶剤としては、例えばシンナー等の有機溶剤、水、混合物や溶液等が挙げられる。溶剤供給源40と洗浄流体経路50との間には、洗浄溶剤の流れを開閉する第1開閉弁42が設けられる。溶剤供給源40と第1開閉弁42との間は、溶剤流路41により接続されている。第1開閉弁42と洗浄溶剤経路51との間は、継手43,53により接続されている。
【0022】
洗浄エアは、圧縮空気供給源30から供給される。圧縮空気供給源30と洗浄流体経路50との間には、洗浄エアの流れを開閉する第2開閉弁36が設けられる。圧縮空気供給源30と第2開閉弁36との間は、洗浄エア流路35により接続されている。第2開閉弁36と洗浄エア経路52との間は、継手37,54により接続されている。
【0023】
洗浄流体経路50は、継手43,53を取り外すことにより、第1開閉弁42から分離可能である。また、洗浄流体経路50は、継手37,54取り外すことにより、第2開閉弁36から分離可能である。さらに、洗浄流体経路50は、ハンドガン20の塗料導入部26にも霧化エア導入部27にも接続可能な第3カプラ55を有する。塗装時には、図1に示すように、洗浄流体経路50をハンドガン20から取り外すことができる。これにより、塗装時の作業性を向上することができる。
【0024】
図2に示すように、第3カプラ55を塗料導入部26に接続した場合には、塗料導入部26からハンドガン20内部の塗料流路に洗浄溶剤および洗浄エアが導入されて、塗料流路が洗浄される。また、図3に示すように、第3カプラ55を霧化エア導入部27に接続した場合には、霧化エア導入部27からハンドガン20内部の霧化エア流路に洗浄溶剤および洗浄エアが導入されて、霧化エア流路が洗浄される。洗浄時にはバルブユニット22内部の流路を開くことにより、洗浄溶剤および洗浄エアをノズル24から外に放出することもできる。第1開閉弁42および第2開閉弁36は、押しボタン等の手動式であると、電力が不要であるので、好ましい。
【0025】
塗料供給装置10は、ハンドガン20に接続されていない状態(第1カプラ17を塗料導入部26から取り外した状態)でも、ポンプ12の動力により塗料往路13から塗料復路14を通じて塗料供給源11に塗料を戻し、塗料の循環を維持することができる。これにより、塗料中の顔料の沈降等による変質を防ぐことができる。
【0026】
本実施形態の塗装装置では、ポンプ12の駆動と、霧化エア経路31を通じた霧化エアの供給と、洗浄溶剤経路51を通じた洗浄溶剤の流通と、洗浄エア経路52を通じた洗浄エアの供給は、圧縮空気供給源30から供給される圧縮エアにより行われる。これにより、圧縮空気供給源30のコンプレッサー)の電源を確保する以外は、すべて圧縮空気により駆動させることができるので、複雑な電気配線が不要になる。
【0027】
また、本実施形態の塗装装置では、図1〜3に示すように、作業者がハンドガン20を携帯して移動するときに、一緒に移動させる必要のない装置は、移動車両100に搭載されている。移動車両100に搭載することが好ましい装置は、塗料供給源11、ポンプ12、溶剤供給源40、第1開閉弁42および第2開閉弁36等である。圧縮空気供給源30は、移動車両100に搭載してもよく、移動車両100の外に置いてもよい。
【0028】
移動車両100からハンドガン20までの距離は10〜15m程度にすることも可能であり、この間で塗料やエア等の流体を移送するため、ホース等の管路が用いられる。移動車両100を移動させなくても、ハンドガン20を所持した作業者は広い範囲で行動することができるので、狭い場所が高所など様々な場所で塗装が可能になる。作業者の負担を軽減するには、ハンドガン20を例えば1kg程度に軽量化することが好ましい。
【0029】
図4及び図5に、ハンドガン20の好適な一例を示す。このハンドガン20では、複数のノズル24が、ヘッド部23の面上で一方向に並列して設けられている。このため、各ノズル24から塗料が吐出する方向に広がり角を与えなくても、霧化した塗料28を広い幅で放出することができるので、塗料の飛散を低減することができる。
【0030】
また、ヘッド部23は、ハンドガン20の本体部21に対して複数のノズル24の並列方向を変更できるように、ワンタッチで回転可能である。これにより、霧化した塗料28のパターン(塗装パターン)を容易に変更することができる。塗装面の向きは、水平面、鉛直面、傾斜面が挙げられる。ノズルから塗装面に塗料を吹き付ける向きは、横向き、上向き、下向き、斜め向き等、任意である。
【0031】
作業者が手にする本体部21(詳しくは握り部)の向きを変えなくてもヘッド部23の向きを回転できるように、本体部21とヘッド部23との間に、回転機構を設けることが好ましい。回転機構は、ヘッド部23の向きを2通り、またはそれ以上の有限の数から選択させるものでもよく、回転軸の周りの任意の角度でヘッド部23の向きを設定できるものでもよい。例えば、図4では、ハンドガン20の移動方向29を垂直方向とするとき、複数のノズル24の並列方向を水平方向としている。図5では、ハンドガン20の移動方向29を水平方向とするとき、複数のノズル24の並列方向を垂直方向としている。この場合、手の動かし方が水平方向でも垂直方向でも塗装作業が可能になり、作業性が向上する。
【0032】
ヘッド部23の内部における流路パターンの一例を、各ノズル24が設けられた面に略平行な面上の配置図として、図6に示す。ヘッド部23内には、単一の塗料供給口に連なる塗料導入流路201から分岐して各ノズル24に至る塗料供給多岐流路200が形成される。この流路パターンは、ヘッド部23を構成する複数の部材(例えば、本体部と蓋部)が対向する箇所において一方または両方の部材の面上に形成してもよい。
【0033】
塗料供給多岐流路200は、単一の塗料導入流路201の下流端から分岐して互いに同一の流路長で延びる一対の一次分岐流路202と、各一次分岐流路202の下流端から分岐して互いに同一の流路長で延びる一対の二次分岐流路203と、各二次分岐流路203の下流端から分岐して互いに同一の流路長で延びる一対の三次分岐流路204と、各三次分岐流路204の下流端から分岐して互いに同一の流路長で延びる一対の四次分岐流路205とを有する。四次分岐流路205は各ノズル24に接続される。一次〜四次の分岐流路は、それぞれ相互に同等な流路断面積を均等に有するので、各ノズル24の噴射流量の均等化を図ることができる。なお、分岐の段数が4より多く、または少なくてもよい。
【0034】
ハンドガン20を作業員が保持する場合、塗装停止時等にヘッド部23が水平から傾き、塗料流路の内部に溜まった塗料が重力で垂れることがある。このような液垂れは、塗料が周囲に付着し、汚染する等の問題があることから、液垂れを抑制、解消する対策を施すことが好ましい。
【0035】
液垂れ対策として、例えば、次の各態様が挙げられる。
(1)塗料流路を細径化して、塗料流路の内容積を削減する。
(2)ノズルの先端を絞り(噴出口を細くする)、表面張力を上げる。
(3)サックバックバルブを設け、ノズルの先端から塗料を引き込む。
(4)ノズルの先端を突出させ、エアにより塗料はじきを行う。
【0036】
これらの中でも、(1)塗料流路の細径化は、塗装条件への影響が少なく、ハンドガンの軽量化やヘッド部の薄型化に適するため、効果的である。例えば一次分岐流路や二次分岐流路のように、下流側の分岐流路よりも径が太くて塗料の分岐性能への影響が少ない部分で、流路幅を細くしてもよい。流量は流路の深さ調整で維持することができる。塗料流路の内容積削減は、塗料流路の細径化だけでなく、ノズルの短縮によっても実現可能である。塗料流路の内容積削減に加えて、塗装停止時に捨て吹きを数回程度行うと、より効果的に液垂れを抑制、解消することができる。
【0037】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0038】
上述の実施形態の場合、塗料供給装置は、ハンドガンの塗料導入部に接続可能な第1カプラを1つ有し、1台のハンドガンに対して塗料を供給するものとしている。その代りに、1台の塗料供給装置に2台以上のハンドガンを接続することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…塗料供給装置、11…塗料供給源、12…ポンプ、13…塗料往路、14…塗料復路、15…減圧弁、16…背圧弁、17…第1カプラ、20…ハンドガン、21…本体部、23…ヘッド部、24…ノズル、26…塗料導入部、27…霧化エア導入部、30…圧縮空気供給源、31…霧化エア経路、33…第2カプラ、36…第2開閉弁、40…溶剤供給源、42…第1開閉弁、50…洗浄流体経路、55…第3カプラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6