(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態のメカニカルシール10を示す。このメカニカルシール10は、流体機械(例えば高温流体を扱うボイラー給水用のポンプ)のケーシング1に固定されるハウジング12を備える。このハウジング12には、ケーシング1に配設した回転軸2が貫通され、その周囲に回転環22と固定環24とが配設されている。メカニカルシール10は、回転環22と固定環24の摩擦熱を除去(強制冷却)するために、封止液(揚水)を冷却液で冷却するクーリング部材37を備える。本実施形態のメカニカルシール10は、クーリング部材37に形成した複数(本実施形態では12個)の冷却液流路42A〜42Lに対して冷却液を直列に通水し、冷却液による封止液の熱交換効率を向上する。
【0016】
詳しくは、回転軸2には、筒状のスリーブ11が嵌められている。このスリーブ11は、図示しない固定部材によって回転軸2に固定され、回転軸2と一体に回転する。ケーシング1には、スリーブ11の外周部に位置するようにハウジング12が固定されている。ハウジング12は、回転軸2側に配置される径方向内側の内環部材13と、内環部材13の径方向外側に配置される外環部材14と、これらの大気側(ケーシング1の逆側)端部を閉塞するカバー15とを備える。内環部材13、外環部材14およびカバー15はボルトで固定され、互いの間がシールパッキンによりシールされている。このハウジング12には、スリーブ11と内環部材13との間に封止液が充填される環状の封止液室16が形成されている。封止液室16の径方向外側(外周部)である内環部材13と外環部材14との間には、冷却液と封止液とを熱交換させる環状の熱交換室17が形成される。
【0017】
封止液室16は、ポンピングリング19によってケーシング1内からの揚水の流入が阻止されている。詳しくは、スリーブ11には、ケーシング1側の端部に径方向外向きに突出するフランジ部18が設けられている。このフランジ部18の外周には、ポンピングリング19が固定されている。ポンピングリング19は、ラビリンスを備える外周部が内環部材13の内周部に密接する。ポンピングリング19は、内環部材13の内周部に沿って大気側へ軸方向に延びる羽根部20を備え、封止液を循環させる循環手段の機能を兼ね備える。この羽根部20には、径方向内側の封止液を径方向外側に送水する送水孔21が設けられている。
【0018】
スリーブ11のフランジ部18には、封止液室16内に位置するように回転環22が配置されている。この回転環22は、フランジ部18に対して周方向に回転不可能かつ軸方向に移動不可能に固定され、スリーブ11を介して回転軸2と一体に回転する。また、カバー15には、封止液室16内に位置するようにホルダ23が固定され、このホルダ23の内部に固定環24が配置されている。固定環24は、回転軸2の軸線を中心として周方向に回転不可能に配置されている。本実施形態の固定環24は、ホルダ23内に配置された第1リング部材25と、第1リング部材25に連結された第2リング部材26とを備える。第1リング部材25は、図示しないスプリングによって回転環22側へ付勢されている。第2リング部材26は、第1リング部材25に固定され、第1リング部材25を介して付勢されることで、回転環22に対して弾性的に押し付けられる。回転環22と固定環24の当接部分は、封止液室16の内部(内環部材13側)と外部(スリーブ11側)をシールする摺動面27である。即ち、スリーブ11と内環部材13の間において、回転環22および固定環24の外周部が封止液室16である。
【0019】
封止液室16と熱交換室17とは、内環部材13により区画されている。また、封止液室16と熱交換室17とは、封止液流入路28と封止液流出路29により連通されている。封止液流入路28は、内環部材13を貫通するように設けた孔であり、ポンピングリング19の送水孔21の径方向外側に位置する。封止液流入路28は、内環部材13に対して周方向に所定間隔をあけて形成されている。封止液流出路29は、カバー15の径方向に延びるように設けられた孔である。詳しくは、外環部材14の内面側(クーリング部材37の外側)に位置するように形成された環状の第1流路部30と、径方向内向きに延びるように形成された第2流路部31と、内環部材13の内面側に位置するように形成された環状の第3流路部32とを備える。これにより封止液室16内の封止液は、径方向外向きに流動された後、封止液流入路28からクーリング部材37および封止液流出路29を経て封止液室16内へ循環される。
【0020】
熱交換室17には、図示しない外部の冷却液供給部から冷却水(冷却液)を循環供給される。ハウジング12には、冷却液流入路33と冷却液流出路34とが設けられている。冷却液流入路33は、外環部材14を貫通するように設けた孔であり、一端が外環部材14の外周部に位置し、他端が径方向に延びて外環部材14の内周部に位置する。冷却液流出路34は、カバー15の径方向に延びるように設けた構成である。詳しくは、熱交換室17を画定するカバー15のケーシング1側端面に形成された第1流路部35Fと、第1流路部35Fから径方向外向きに延びるように形成された第2流路部36とを備える。
図2に示すように、第1流路部35Fは、所定角度で形成された円弧状の窪みである。この第1流路部35Fは、周方向に所定間隔をあけて複数(本実施形態では6個)設けた第1流路部35A〜35Fの1つである。第2流路部36は、一端が第1流路部35Fに位置し、他端が径方向外向きに延びて外環部材14の外周部に位置する。これによりハウジング12外から供給された冷却液は、冷却液流入路33からクーリング部材37および冷却液流出路34を経てハウジング12外へ排出される。なお、第1流路部35A〜35F内の冷却液は、封止液流出路29の第3流路部32内の封止液と、カバー15を介して熱交換される。
【0021】
図1および
図3に示すように、本実施形態の熱交換室17には、封止液が径方向に流動され、冷却液が軸方向に流動される。これら封止液と冷却液とを混合することなく区画して流動させるために、熱交換室17内には熱交換器であるクーリング部材37が移動不可能に配置されている。クーリング部材37は、円筒形状であり、銅合金等の熱伝導性に優れた材料により形成される。クーリング部材37には、内周部に内環部材13との間をシールするシールパッキンが配設され、外周部に外環部材14との間をシールするシールパッキンが配設されている。
【0022】
図3に最も明瞭に示されるように、クーリング部材37は、径方向に延びて貫通する複数の封止液流路38A〜38Lと、軸方向に延びて貫通する複数の冷却液流路42A〜42Lとを備える。封止液流路38A〜38Lおよび冷却液流路42A〜42Lは、周方向に交互に位置するように等間隔で隣接配置されている。
【0023】
第1から第12の封止液流路38A〜38Lは、封止液流路38A〜38Lの両端であるクーリング部材37の径方向の内周部および外周部で連通している。詳しくは、クーリング部材37の内周部には、環状をなすように径方向外向きに窪み、封止液流入路28と全ての封止液流路38A〜38Lを連通させる第1連通部39が設けられている。クーリング部材37の外周部には、環状をなすように径方向内向きに窪み、全ての封止液流路38A〜38Lと封止液流出路29を連通させる第2連通部40が設けられている。本実施形態の外環部材14には、第2連通部40に連通するように、環状をなすように径方向外向きに窪む連通部41が設けられている。この連通部41に連通するように、封止液流出路29の第1流路部30が設けられている。
【0024】
図4および
図5に示すように、第1から第12の冷却液流路42A〜42Lは、冷却液流入路33から冷却液流出路34に向けて直列に連通されている。詳しくは、クーリング部材37には、第1の冷却液流路42Aと外環部材14の冷却液流入路33とを連通させる流入孔43が設けられている。また、冷却液流路42A〜42Lの両端であるクーリング部材37の軸方向の両端部には、一対の冷却液流路42A〜42Lだけを連通させ、他の冷却液流路42A〜42Lを非連通状態とする連通部45A〜45F,46A〜46Eを有する連通路44が一体に設けられている。
【0025】
図1および
図4に示すように、カバー15側に形成した第1連通部45A〜45Fは、軸方向内向きに窪む円弧状の凹溝からなる。そのうち、第1連通部45Aは、第1および第2の冷却液流路42A,42Bを連通させ、他の冷却液流路42C〜42Lを非連通状態に区画する。第1連通部45Bは、第3および第4の冷却液流路42C,42Dを連通させ、他の冷却液流路42A,42B,42E〜42Lを非連通状態に区画する。第1連通部45Cは、第5および第6の冷却液流路42E,42Fを連通させ、他の冷却液流路42A〜42D,42G〜42Lを非連通状態に区画する。第1連通部45Dは、第7および第8の冷却液流路42G,42Hを連通させ、他の冷却液流路42A〜42F,42I〜42Lを非連通状態に区画する。第1連通部45Eは、第9および第10の冷却液流路42I,42Jを連通させ、他の冷却液流路42A〜42H,42K,42Lを非連通状態に区画する。第1連通部45Fは、第11および第12の冷却液流路42K,42Lを連通させ、他の冷却液流路42A〜42Jを非連通状態に区画する。
【0026】
図1および
図5に示すように、ケーシング1側に形成した第2連通部46A〜46Eは、軸方向内向きに窪む円弧状の凹溝からなる。第2連通部46Aは、第2および第3の冷却液流路42B,42Cを連通させ、他の冷却液流路42A,42D〜42Lを非連通状態に区画する。第2連通部46Bは、第4および第5の冷却液流路42D,42Eを連通させ、他の冷却液流路42A〜42C,42F〜42Lを非連通状態に区画する。第2連通部46Cは、第6および第7の冷却液流路42F,42Gを連通させ、他の冷却液流路42A〜42E,42H〜42Lを非連通状態に区画する。第2連通部46Dは、第8および第9の冷却液流路42H,42Iを連通させ、他の冷却液流路42A〜42G,42J〜42Lを非連通状態に区画する。第2連通部46Eは、第10および第11の冷却液流路42J,42Kを連通させ、他の冷却液流路42A〜42I,42Lを非連通状態に区画する。なお、本実施形態のクーリング部材37には、ケーシング1側端部に第1および第12の冷却液流路42A,42Lに位置する円弧状の凹部47A,47Bが形成されている。なお、連通部45A〜45F,46A〜46Eおよび凹部47A,47B内の冷却液は、径方向の内側および外側を流動する封止液と、クーリング部材37を介して熱交換される。
【0027】
図1および
図2に示すように、クーリング部材37とカバー15との間には第1シール部材48が配設されている。第1シール部材48は、クーリング部材37の端部に一致する円環状である。第1シール部材48には、各第1連通部45A〜45Fに対応する位置に連通孔49が設けられている。各連通孔49の縁は、第1連通部45A〜45Fの縁の内側に位置する。また、クーリング部材37と外環部材14との間には第2シール部材50が配設されている。
図5を参照すると、第2シール部材50にも第2連通部46A〜46Eおよび凹部47A,47Bに対応する連通孔51が設けられている。
【0028】
クーリング部材37の第1連通部45A〜45Fと、カバー15の第1流路部35A〜35Fとは、各連通孔49を通して連通している。そのため、冷却液は、冷却液流入路33から第1の冷却液流路42A、第1連通部45A、第2の冷却液流路42B、第2連通部46A、第3の冷却液流路42C、第1連通部45B、…、第11の冷却液流路42Kおよび第1連通部45Fを経て、連通孔49、第1流路部35Fを通して冷却液流出路34から外部へ排出される。なお、本実施形態の第12の冷却液流路42Lは、冷却液を流動させていないが、流動させるようにしてもよい。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のメカニカルシール10は、流体機械の回転軸2が回転されると、スリーブ11を介してポンピングリング19が回転する。これにより、羽根部20によって封止液室16内の封止液が封止液流入路28から熱交換室17内に流入される。封止液は、クーリング部材37の各封止液流路38A〜38Lを通って径方向外向きに流動した後、封止液流出路29を通って封止液室16内に流入する。そして、回転環22と固定環24とを冷却し、再び封止液流入路28に循環される。この際、封止液は、回転環22と固定環24とが摺接する摺動面27により、大気側への漏れが阻止される。
【0030】
一方、本実施形態のメカニカルシール10は、冷却液供給部から冷却液を供給されると、冷却液が冷却液流入路33から熱交換室17内に流入される。冷却液は、流入孔43から第1の冷却液流路42A内に流入し、連通部45A〜45F,46A〜46Eによって、第1から第12の冷却液流路42A〜42Lへ順番に、軸方向に流動される。そして、第1連通部45Fから第1流路部35Fを経て冷却液流出路34から外部へ排出される。
【0031】
このように、クーリング部材37には、熱を吸着した封止液が径方向に流動され、冷却液が軸方向に流動される。そして、封止液流路38A〜38Lと冷却液流路42A〜42Lは、交互に位置するように設けられているため、高温の封止液を低温の冷却液によって確実に冷却(熱交換)できる。
【0032】
しかも、本実施形態では、複数の冷却液流路42A〜42Lに対して冷却液を直列に通水するため、冷却液を通水させる流速を速くすることができる。よって、熱交換する流路の全長(伝熱面積)が同一であれば、熱伝達率を向上できる。その結果、メカニカルシール10を大型にすることなく、封止液と冷却液の熱交換効率を向上できる。
【0033】
また、環状の熱交換室17に円筒状のクーリング部材37を配設する簡素な構成であるため、ハウジング12およびクーリング部材37の製造が容易であるうえ、組立時およびメンテナンス時の作業性を向上できる。しかも、連通部45A〜45F,46A〜46Eをクーリング部材37に一体に設けているため、熱交換室17の形状を簡素化でき、製造コストが高くなることを防止できる。
【0034】
(第2実施形態)
図6A,Bは第2実施形態のメカニカルシール10のクーリング部材37を示す。この第2実施形態では、流入孔43(第1の冷却液流路42A)から流入された冷却液を分流し、2系統(方向)の通水経路で冷却液流出路34に連通する第7の冷却液流路42Gに至るようにした点で、第1実施形態と相違する。
【0035】
詳しくは、クーリング部材37には、軸方向に延びる12本の冷却液流路42A〜42Lが設けられている。上側頂部に位置する第1の冷却液流路42Aには、冷却液流入路33に連通する流入孔43が設けられている。また、下側頂部に位置する第7の冷却液流路42Gには、冷却液流出路34が連通されている。
【0036】
図6Aに示すように、クーリング部材37のカバー15側端部には、1個の第1の冷却液流路42Aと両側に位置する一対の第2の冷却液流路42B,42Lを、連通させる第1連通部45Aが設けられている。また、一対の第3の冷却液流路42C,42Kと一対の第4の冷却液流路42D,42Jを、それぞれ連通させる一対の第1連通部45B,45Bが設けられている。また、一対の第5の冷却液流路42E,42Iと一対の第6の冷却液流路42F,42Hを、それぞれ連通させる一対の第1連通部45C,45Cが設けられている。
【0037】
図6Bに示すように、クーリング部材37のケーシング1側端部には、一対の第2の冷却液流路42B,42Lと一対の第3の冷却液流路42C,42Kを、それぞれ連通させる一対の第2連通部46A,46Aが設けられている。また、一対の第4の冷却液流路42D,42Jと一対の第5の冷却液流路42E,42Iを、それぞれ連通させる一対の第2連通部46B,46Bが設けられている。また、一対の第6の冷却液流路42F,42Hと1個の第7の冷却液流路42Gを、連通させる第2連通部46Cが設けられている。
【0038】
この第2実施形態のメカニカルシール10は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、分流した2系統の通水経路を設けているため、各封止液流路38A〜38Lでの封止液の熱交換効率のバラツキを抑制(平均化)できる。即ち、冷却液は、封止液と熱交換することで昇温するため、最初の冷却液流路42Aから下流側の冷却液流路42B…に進むに従って次第に温度が高くなる。そのため、下流側の冷却液流路42Lでの熱交換効率は、上流側の冷却液流路42Aでの熱交換効率より低くなる。よって、冷却液を通水する経路を2以上設けることにより、熱交換効率を更に向上できる。
【0039】
(第3実施形態)
図7A,Bは第3実施形態のメカニカルシール10のクーリング部材37を示す。この第3実施形態では、回転軸2の軸線に対して線対称に位置するように各一対の冷却液流入路33A,33Bおよび冷却液流出路34A,34Bをハウジング12に設けるとともに、クーリング部材37に独立した2系統の通水経路を設けた点で、第1実施形態と相違する。
【0040】
詳しくは、クーリング部材37には、軸方向に延びる12本の冷却液流路42A〜42Lが設けられている。上側頂部と下側頂部に位置する第1の冷却液流路42A,42Gには、冷却液流入路33A,33Bに連通する流入孔43A,43Bが設けられている。第1の冷却液流路42A,42Gに隣接した第6の冷却液流路42F,42Lには、冷却液流出路34A,34Bが連通されている。
【0041】
図7Aに示すように、クーリング部材37のカバー15側端部には、第1の冷却液流路42A,42Gと第2の冷却液流路42B,42Hを、それぞれ連通させる一対の第1連通部45A,45Aが設けられている。また、第3の冷却液流路42C,42Iと第4の冷却液流路42D,42Jを、それぞれ連通させる一対の第1連通部45B,45Bが設けられている。また、第5の冷却液流路42E,42Kと第6の冷却液流路42F,42Lを、それぞれ連通させる一対の第1連通部45C,45Cが設けられている。
【0042】
図7Bに示すように、クーリング部材37のケーシング1側端部には、第2の冷却液流路42B,42Hと第3の冷却液流路42C,42Iを、それぞれ連通させる一対の第2連通部46A,46Aが設けられている。また、第4の冷却液流路42D,42Jと第5の冷却液流路42E,42Kを、それぞれ連通させる一対の第2連通部46B,46Bが設けられている。
【0043】
この第3実施形態のメカニカルシール10は、第2実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、別系統の通水経路を設けているため、各冷却液流路42A〜42Lに通水する流速を速くすることが可能になるため、熱伝達率を向上できる。よって、メカニカルシール10を大型にすることなく、封止液と冷却液の熱交換効率を更に向上できる。
【0044】
なお、この第3実施形態では、2系統の冷却液流路42A〜42F,42G〜42Lに対して、同一周方向へ冷却液を通水するようにしたが、時計回りと反時計回り等の周方向逆向きに冷却液を通水するようにしてもよい。即ち、2以上の通水経路を設ける場合、流入孔43の位置と第2流路部36の位置を変更することで、通水方向は希望に応じて変更が可能である。
【0045】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態のメカニカルシール10を示す。この第4実施形態では、各封止液流路38および各冷却液流路42を複数の貫通孔59,60で構成した点で、第1実施形態と大きく相違する。
【0046】
詳しくは、ハウジング12は、ケーシング1に固定されるベース部材52と、大気側に固定されるハウジング本体53と、ハウジング本体53の端部を閉塞するカバー54とを備える。ベース部材52とハウジング本体53の間には、外周側に環状のカバー部材55が配設され、内周側に環状の区画部材56が配設されている。ベース部材52とハウジング本体53は、カバー部材55および区画部材56を介して固定されている。このハウジング12には、スリーブ11と区画部材56との間に封止液室16が形成される。また、ベース部材52、ハウジング本体53、カバー部材55および区画部材56で囲まれた内部に、環状の熱交換室17が形成される。
【0047】
スリーブ11には、ベース部材52の内周部に位置するようにポンピングリング19が配設されている。ポンピングリング19は、ラビリンスを備える外周部がベース部材52の内周部に密接する。本実施形態では、スリーブ11にホルダ23が固定され、このホルダ23内に回転環22の一部が収容されている。回転環22は、ホルダ23に対して回転不可能、かつ、回転軸2の軸方向に沿って移動可能に配置されている。また、回転環22は、コンプレッションリングによって、回転軸2の軸方向に沿って大気側へ付勢されている。固定環24は、ハウジング本体53とカバー54との間に挟み込んで配置されている。固定環24は回転不可能に配置され、回転環22が弾性的に押し付けられる。
【0048】
封止液流入路28は、一端がポンピングリング19の外周部に位置し、他端がクーリング部材37の外周部に位置するように、ベース部材52に対して径方向に延びるように設けられている。封止液流出路29は、一端がクーリング部材37の内周部に位置し、他端が摺動面27の近傍に位置するように、ハウジング本体53の内周側に設けられている。
【0049】
冷却液流入路33は、一端がハウジング本体53の外周部に位置し、他端が固定環24の外周部に位置するように、ハウジング本体53に対して径方向に延びるように設けられている。本実施形態では、冷却液流入路33の内端である固定環24の外周部に、環状の冷却液室57が設けられている。また、冷却液流入路33には、熱交換室17内と軸方向の端部で連通するように連通孔部58が設けられている。冷却液流出路34は、一端が熱交換室17の軸方向の端部に位置し、他端がベース部材52の外周部に位置するように、ベース部材52に対して径方向に延びるように設けられている。
【0050】
クーリング部材37は、第1実施形態と同様に、径方向に延びる封止液流路38と、軸方向に延びる冷却液流路42とを備える。封止液流路38は、軸方向に間隔をあけて延びる3個の貫通孔59を1組とし、周方向に等間隔をあけて設けられている。冷却液流路42は、径方向に間隔をあけて延びる4個の貫通孔60を1組とし、周方向に等間隔をあけて設けられている。そして、封止液流路38と冷却液流路42とは、周方向に交互に配置されている。
【0051】
クーリング部材37には、ベース部材52側の端部に第1連通部45が設けられ、ハウジング本体53側の端部に第2連通部46が設けられている。第1および第2連通部45,46は、第1実施形態と同様に、冷却液流入路33から冷却液流出路34に向けて全ての冷却液流路42が直列に連通するように、一対の冷却液流路42,42だけを連通させ、他の冷却液流路42は非連通状態になるように設けられている。また、クーリング部材37とベース部材52との間には第1シール部材48が配設され、クーリング部材37とハウジング本体53の間には第2シール部材50が配設されている。
【0052】
このようにした第4実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。即ち、ハウジング12の構成、封止液流路38および冷却液流路42の構成は、希望に応じて変更が可能である。そして、複数設けた冷却液流路42を直列に連通させることにより、封止液と冷却液の熱交換効率を向上できる。
【0053】
なお、第4実施形態のメカニカルシール10においても、第2実施形態のように冷却液を2系統の通水経路に分流してもよいし、第3実施形態のように冷却液を別の2系統の通水経路に通水させてもよい。
【0054】
(第5実施形態)
図9は第5実施形態のメカニカルシール10を示す。この第5実施形態では、クーリング部材37に対して、封止液を軸方向に流動させ、冷却液を径方向に流動させる。そして、クーリング部材37には、封止液流入路28から封止液流出路29に向けて全ての封止液流路38が直列に連通するように、第1および第2連通部45,46を設けた点で、第4実施形態と大きく相違する。
【0055】
封止液流入路28は、一端がポンピングリング19の外周部に位置し、他端がクーリング部材37の第1連通部45に位置するように、ベース部材52に対して径方向に延びるように設けられている。封止液流出路29は、一端がクーリング部材37の第2連通部46に位置し、他端が摺動面27の近傍に位置するように、ハウジング本体53に対して径方向に延びるように設けられている。
【0056】
冷却液流入路33は、一端がハウジング本体53の外周部に位置し、他端が冷却液室57に位置するように、ハウジング本体53に対して径方向に延びるように設けられている。また、冷却液流入路33には、クーリング部材37の内周部に位置するように連通孔部58が設けられている。冷却液流出路34は、一端がクーリング部材37の外周部に位置し、他端がベース部材52の外周部に位置するように、ベース部材52に対して径方向に延びるように設けられている。
【0057】
このようにした第5実施形態では、冷却液は、冷却液流入路33から熱交換室17内に流入され、クーリング部材37の各冷却液流路42を通って径方向外向きに流動した後、冷却液流出路34を通って外部へ排出される。一方、封止液は、ポンピングリング19によって封止液室16内から封止液流入路28を経て熱交換室17内に流入され、全ての封止液流路38を流動した後、封止液流出路29を通って封止液室16内に流入される。よって、封止液を冷却するための伝熱面積を十分に確保できるため、封止液を確実に冷却(熱交換)できる。
【0058】
なお、第5実施形態のメカニカルシール10においても、第2実施形態のように封止液を2系統の通水経路に分流してもよいし、第3実施形態のように封止液を別の2系統の通水経路に通水させてもよい。また、第1から第3実施形態のクーリング部材37においても、封止液が全ての封止液流路38を流動するように構成してもよい。
【0059】
なお、本発明のメカニカルシール10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、第1および第2連通部45,46は、クーリング部材37に一体に設けたが、ハウジング12に設けてもよい。各実施形態では、軸方向に延びる冷却液流路42または封止液流路38を直列に連通させたが、クーリング部材37の外周部および内周部に位置する第1および第2連通部39,40により、径方向に延びる封止液流路38または冷却液流路42を直列に連通させてもよい。
【0061】
また、クーリング部材37には、12個の封止液流路38A〜38Lおよび冷却液流路42A〜42Lを設けたが、少なくとも第1から第3の封止液流路38A〜38Cおよび冷却液流路42A〜42Cを設ければよい。また、回転環22および固定環24の具体的な形状は、摺動面27の構成等の基本的な機能を実現できる限り、実施形態の構成に限定されない。また、封止液の循環手段もポンピングリング19に限らず、封止液の循環を実現できる限り、実施形態の構成に限定されない。