【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
電子機器には、各種の電子部品が使用されている。このような電子部品は、電子基板などに実装された状態で、電子機器の内部に設置される。
【0013】
そして、電子基板に対する電子部品の実装構造として、
図1(または
図2)に示すように、電子部品パッケージ1の側辺部1a〜1d(のうちの少なくとも1つ)から突設された端子2を、電子基板3上に設けられたランド4に重ねてリフロー方式でハンダ接合する。また、上記電子部品パッケージ1の底面に設けられたチップ放熱用部材5を上記電子基板3上に設けられた放熱金属パターン6に重ねてリフロー方式でハンダ接合する。
【0014】
ここで、電子部品パッケージ1は、ICやLSIなどの集積回路を構成する半導体チップなどをパッケージ用樹脂で包み込んだものである。電子部品パッケージ1は、通常、平面視でほぼ四角形状のものとされる。そして、端子2は四角形状の電子部品パッケージ1における、対向する一対の側辺部1a,1c(
図1参照)や、二対の側辺部1a〜1d(
図2参照)から突設される。
【0015】
電子基板3は、
図3に示すように、ベース材11の表面に絶縁層10を介して配線パターンを設けたものである。ランド4は、この場合、配線パターンのうちの、端子2に対してハンダ接合を行う部分を示すものとする。また、放熱金属パターン6は、この場合、配線パターンのうちの、チップ放熱用部材5に対してハンダ接合を行う部分を示すものとする。ランド4や放熱金属パターン6は、溶融したハンダに対する親和性を有する。よって、ハンダは、溶融するとランド4や放熱金属パターン6の上で表面張力によって盛り上がることになる。なお、ベース材11の表面における配線パターン以外の部分などには、レジスト12などの絶縁性保護皮膜が形成される。このレジスト12は、溶融したハンダを弾く性質を有するものである。よって、余剰のハンダが電子部品パッケージ1の外側へハミ出すと、このレジスト12で弾かれることによって、
図5に示すようなハンダボール13が形成されることになる。
【0016】
リフロー方式とは、図示しないマスクを用いてハンダペースト14を塗布した電子基板3のランド4や放熱金属パターン6の上に、
図3(a)(b)に順に示すように、電子部品パッケージ1の端子2やチップ放熱用部材5をそれぞれ載せるように設置し、その後、ハンダペースト14を熱で溶かすことにより、
図3(c)に示すように、ハンダ接合を行う方式のことである。電子部品パッケージ1は、ハンダペースト14の上に僅かに浮いた状態に設置され、ハンダペースト14が溶けると、電子部品パッケージ1が自重で沈み込むことにより、電子部品パッケージ1に押されたハンダペースト14は電子部品パッケージ1の外へ溢れ出ようとする。ハンダペースト14の溶融は、例えば、電子部品パッケージ1を設置した電子基板3をコンベヤなどを用いてリフロー炉へ通しながら電子基板3全体を加熱することなどによって行われる。なお、リフロー炉で加熱する他に、温風や、加熱蒸気や、赤外線や、レーザーなどを用いてハンダペースト14を溶融することもできる。
【0017】
ハンダペースト14は、細かいハンダの粉末をペーストに混ぜたものである。ハンダペースト14を溶融すると、内部に含まれるハンダの粉末どうしが結合して成長することにより、ハンダ接合が行われる。なお、ペーストには空気が含まれているので、ハンダ接合を行った部分に、上記した空気が集まって気泡ができたり、気泡が成長して
図5に示すような空隙部15(ハンダボイド)となったりする傾向がある。なお、空隙部15の発生原因については、完全に解明されていないが、上記の他にも、ハンダペースト14にハンダの粉末が均等に分散されていないことや、ハンダ接合の補助剤として使用されるフラックスが気化してできるガスが抜け切らないことなども原因として考えられている。空隙部15は、例えば、ハンダがリング状に溶融して内部に気泡が閉じ込められることなどによっても形成される。
【0018】
チップ放熱用部材5は、ボトムパッドやヒートスプレッタなどと呼ばれる金属パッドである。このチップ放熱用部材5は、電子部品パッケージ1におけるパッケージ樹脂の底面に対して面一または若干下方へ突出された面などとされている。
【0019】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えている。
【0020】
(1)
図1(または
図2)に示すように、上記チップ放熱用部材5は、上記電子部品パッケージ1を構成するパッケージ用樹脂によって四方を囲まれる大きさに形成される。
そして、上記放熱金属パターン6は、少なくともその一部が上記電子部品パッケージ1よりも大きくなるように、放熱金属パターン6と連続して電子部品パッケージ1からハミ出すように延びて余剰のハンダ21を電子部品パッケージ1の外部へ導くパターン延長部22を一体に有するものとする。
【0021】
ここで、チップ放熱用部材5は、平面視四角形状をした電子部品パッケージ1の底面に、電子部品パッケージ1とほぼ相似形となるように設置された平面視四角形状の放熱板とされる。また、放熱金属パターン6は、放熱のために電子基板3の回路パターンに形成されたものであり、電子部品パッケージ1よりは小さく、また、チップ放熱用部材5よりは一回り程度大きくなるように形成される。なお、ハンダペースト14は、放熱金属パターン6よりも小さ目の範囲に塗布するのが好ましい。パターン延長部22は、余剰のハンダ21を電子部品パッケージ1の外側へ導くことを目的としたものであり、放熱金属パターン6の一辺(短辺など)の幅よりも狭い幅を有して、放熱金属パターン6から真っ直ぐに延びるものなどとされる。パターン延長部22は、後述するように、ランド4の無い部分へ向けて延ばされる。例えば、四角形状の放熱金属パターン6に対して、パターン延長部22は、旗竿状や持ち手状に延びるものなどとされる。
【0022】
(2)
図1に示すように、上記パターン延長部22は、上記電子部品パッケージ1の上記端子2を設けた側辺部1a,1cとは異なる別の側辺部1b,1dに設けられるようにする。
または、
図2に示すように、上記パターン延長部22は、上記電子部品パッケージ1の上記端子2を設けた側辺部1a〜1d間の角部31a〜31dの位置に設けられるようにする。
【0023】
ここで、
図1の場合の、別の側辺部1b,1dとは、例えば、対向する一対の側辺部1a,1cに端子2が設けられた四角形状の電子部品パッケージ1における、残りの一対の側辺部1b,1dのうちの少なくとも一方のことである。なお、この場合には、側辺部1dとなっているが、側辺部1bとしても、両方の側辺部1b,1dとしても良い。
【0024】
また、
図2の場合の、角部31a〜31dとは、例えば、対向する二対の側辺部1a〜1dに端子2が設けられた四角形状の電子部品パッケージ1における、4つの角部31a〜31dのうちの少なくとも一つのことである。なお、この場合には、角部31dとなっている。
【0025】
(3)
図4に示すように、上記放熱金属パターン6およびパターン延長部22に空隙部抑制用のスリット部41を設ける。
【0026】
ここで、スリット部41は、放熱金属パターン6に対するパターン延長部22の延設方向(或いは、端子2の側へ向かわない方向)へ延びるものとするのが好ましい。これにより、スリット部41は、放熱金属パターン6やパターン延長部22を、細長い幾つかの小領域42に区分けするものとなる。そして、このスリット部41には、溶融したハンダを弾く性質を有するレジスト12などの絶縁性保護皮膜が形成される。これにより、溶融したハンダは、スリット部41内のレジスト12によってスリット部41から弾かれると共に、その表面張力によってスリット部41で区分けされた小領域42の上でそれぞれ盛り上がることになる。この際、スリット部41の幅は、溶融したハンダがスリット部41を介して隣接する小領域42へ移動しないぎりぎりの間隔に形成されるのが好ましい。なお、スリット部41の幅を上記よりも僅かに狭くしても良いが、このようにすると、各小領域42上のハンダが互いに繋がると共に、繋がったハンダ内におけるスリット部41の位置に空気層のトンネルが形成されることになる。
【0027】
スリット部41の形状は、例えば、
図4(a)に示すように、放熱金属パターン6およびパターン延長部22の延設方向全体に亘って延びるように形成されて、放熱金属パターン6およびパターン延長部22を、幅の狭い複数の(ほぼ短冊状の)小領域42に完全に分割するものとしても良い。
【0028】
また、スリット部41は、例えば、
図4(b)または
図4(c)に示すように、放熱金属パターン6およびパターン延長部22の延設方向の一部に対して延びるように形成されて、放熱金属パターン6およびパターン延長部22を、一部がつながった幅の狭い複数の小領域42を画成するものとしても良い(連結部43)。
【0029】
或いは、スリット部41は、例えば、
図4(d)に示すように、放熱金属パターン6およびパターン延長部22の延設方向へ延びるものの他に、延設方向に対して僅かに傾斜して延びるものを有して、放熱金属パターン6およびパターン延長部22を、電子部品パッケージ1の外側へ向けて広がる幅の狭い複数の鋭角三角形状の小領域42に画成するものなどとしても良い。
【0030】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0031】
電子部品パッケージ1の実装構造は、電子部品パッケージ1の側辺部1a〜1d(のいずれか)から突設された端子2を、電子基板3上に設けられたランド4に重ねてリフロー方式でハンダ接合すると共に、電子部品パッケージ1の底面に設けられたチップ放熱用部材5を電子基板3上に設けられた放熱金属パターン6に重ねてリフロー方式でハンダ接合したものである。
【0032】
このように、チップ放熱用部材5を放熱金属パターン6にハンダ接合することにより、電子部品パッケージ1で発生した熱を電子基板3へ効率良く逃がすことができる。
【0033】
(1)この際、放熱金属パターン6にパターン延長部22を設けるようにした。これにより、例えば、チップ放熱用部材5と放熱金属パターン6とを接合するハンダの量が多過ぎる場合に、放熱金属パターン6からハミ出した余剰のハンダ21を、パターン延長部22を逃げ道として、電子部品パッケージ1の外部へ突出されたパターン延長部22の側へと積極的に導くことができる。これにより、余剰のハンダ21が電子部品パッケージ1の側辺部1a〜1dからランダムに飛び出して(電子基板3の表面を覆うレジスト12に弾かれることで)ハンダボール13となることが防止される。その結果、ハンダボール13が、端子2やランド4などと接触してショートを引き起こすことなどが防止される。
【0034】
(2)パターン延長部22を、電子部品パッケージ1の端子2を設けた側辺部1a,1cとは異なる別の側辺部1b,1dに設けた(
図1)。または、パターン延長部22を、電子部品パッケージ1の端子2を設けた側辺部1a〜1d間の角部31a〜31dの位置に設けた(
図2)。これにより、電子基板3に対して、ランド4と干渉することなくパターン延長部22を形成することができる。よって、パターン延長部22へ導かれる余剰のハンダ21を、ランド4から確実に遠避けることができる。
【0035】
(3)放熱金属パターン6およびパターン延長部22に、空隙部抑制用のスリット部41を設けた。このスリット部41によって放熱金属パターン6およびパターン延長部22が、幅の狭い複数の小領域42などに小分けされたり、スリット部41の分だけ放熱金属パターン6およびパターン延長部22の総面積が小さくなったりするので、塗布されたハンダペースト14の量が少なかった場合であっても、放熱金属パターン6に対して溶融したハンダが行き渡り易くなるため、ハンダに空隙部15が形成され難くなる。また、上記した空隙部15は小領域42の幅よりも大きく成長することができないので、空隙部15を小さく抑えることができる。或いは、空隙部15を小領域42やスリット部41に沿ってパターン延長部22へ向けて追い出し易くすることができる。よって、大きな空隙部15が存在することによる放熱性能の低下(または放熱抵抗の増大)を防止して、電子部品パッケージ1の温度上昇を防止することができる。
【0036】
なお、スリット部41に傾斜して延びるものを設けることにより、小領域42が鋭角三角形状となるので、空隙部15を小領域42の幅の狭い部分から幅の広い部分へ向けて案内することができる。
【0037】
また、小領域42やスリット部41がパターン延長部22へ向けて余剰のハンダ21を案内することにより、塗布されたハンダペースト14の量が多かった場合における、端子2の周辺でのハンダボール13の発生をより効果的に抑制することができる。
【0038】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。