特許第6352160号(P6352160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352160
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】積層剥離容器の液体ブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20180625BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B29C49/22
   B65D1/02 111
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-240348(P2014-240348)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-101672(P2016-101672A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】陶山 賢一
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069441(JP,A)
【文献】 特開2014−088004(JP,A)
【文献】 特開平08−175568(JP,A)
【文献】 特開2009−148951(JP,A)
【文献】 特開2010−082916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/80
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層と内側層とを備えるとともに前記外側層と前記内側層との間に連なる外気導入孔を前記外側層に備える樹脂製の容器素材から、外層体と該外層体の内側に剥離可能に積層配置された内層体とを有する積層剥離容器を成形する、積層剥離容器の液体ブロー成形方法であって、
前記容器素材の内部に加圧した液体を供給して、該容器素材を前記積層剥離容器に成形する容器成形工程と、
前記積層剥離容器の内部に充填されている液体を該積層剥離容器の外部に吸い出して前記内層体を前記外層体から剥離させる内層体剥離工程と、を有することを特徴とする積層剥離容器の液体ブロー成形方法。
【請求項2】
前記内層体剥離工程の後に、前記内層体が前記外層体から剥離された状態の前記積層剥離容器の内部に再度液体を供給して前記内層体を前記外層体の内面に積層させる内層体戻し工程を有する、請求項1に記載の積層剥離容器の液体ブロー成形方法。
【請求項3】
前記容器成形工程において前記容器素材の内部に供給する液体の量よりも、前記内層体戻し工程において前記積層剥離容器の内部に供給する液体の量を少なくする、請求項2に記載の積層剥離容器の液体ブロー成形方法。
【請求項4】
前記容器成形工程において、プランジャーポンプを正方向に作動させて前記容器素材の内部に加圧した液体を供給し、
前記内層体剥離工程において、前記プランジャーポンプを逆方向に作動させて前記積層剥離容器の内部に充填されている液体を該積層剥離容器の外部に吸い出し、
前記内層体戻し工程において、前記プランジャーポンプを再度正方向に作動させて前記積層剥離容器の内部に液体を供給する、請求項2または3に記載の積層剥離容器の液体ブロー成形方法。
【請求項5】
前記容器素材が有底筒状のプリフォームである、請求項1〜4の何れか1項に記載の液積層剥離容器の液体ブロー成形方法。
【請求項6】
前記容器成形工程の前に、延伸ロッドにより前記プリフォームを軸方向に延伸させる延伸工程を有し、
前記積層剥離容器から前記延伸ロッドを離脱させた後に前記内層体剥離工程を行う、請求項5に記載の積層剥離容器の液体ブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側層と内側層とを備えるとともに外側層と内側層との間に連なる外気導入孔を外側層に備える樹脂製の容器素材から、外層体と該外層体の内側に剥離可能に積層配置された内層体とを有する積層剥離容器を成形する、積層剥離容器の液体ブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水などの化粧料や、シャンプーやリンスあるいは液体石鹸、また飲料や食品調味料などを収納する容器として、デラミ容器とも呼ばれる積層剥離容器が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような積層剥離容器は、筒状の口部を備えるとともに外層体と外層体の内側に剥離可能に積層配置される内層体とを備えた二重構造を有しており、外層体をスクイズ(圧搾)することにより内層体の内部に収容された内容液を口部から外部に注出させることができる一方、外層体のスクイズが解除されると、外層体に設けた外気導入孔から外層体と内層体との間に外気が導入されて、内層体を減容させたまま外層体を元の形状に復元させることができるようになっている。したがって、積層剥離容器では、内容液を外気と置換することなく注出を行うことができ、これにより容器内に残った内容液を空気と触れづらくして、その劣化や変質を抑制することができる。
【0004】
このような積層剥離容器は、例えば、射出成形やダイレクトブロー成形、押出し成形等により外側層と内側層とを備えた有底筒状に形成されたプリフォーム(容器素材)を二軸延伸ブロー成形することにより得ることができる。
【0005】
また、積層剥離容器では、その製造過程において、予め内層体を外層体から剥離させる初期剥離処理が施されるのが一般的である。このような内層体の初期剥離処理は、プリフォームに加圧したエアを供給して積層剥離容器にブロー成形した後、積層剥離容器の内部の空気を吸い出して内層体の内部を負圧にすることで行われる。初期剥離処理を施した後、積層剥離容器に再度エアを吹き込んで内層体を外層体に積層させた状態に戻してから、当該容器内に内容液を充填することにより、内容液の注出時に内層体を外層体から確実に剥離させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−116516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
積層剥離容器のブロー成形は、プリフォームの内部に加圧したエアを供給して行われるのが一般的であるが、プリフォームの内部に、加圧エアに替えて加圧した液体を供給して行うようにした方法も知られている。この場合、液体として飲料、化粧品、薬品等の最終的に製品として積層剥離容器に充填される内容液を使用することにより、積層剥離容器への内容液の充填工程を省略して、その生産工程やブロー成形装置の構成を簡略化することができる。
【0008】
しかしながら、加圧した液体を用いた液体ブロー成形では、ブロー成形後の積層剥離容器の内部に内容液が充填された状態となるので、内層体に初期剥離処理を施すことが困難であり、そのため内容液の注出時に内層体が外層体から剥離し難くなるという問題点があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内容液の注出時に内層体を外層体から確実に剥離させることができる積層剥離容器を成形可能な積層剥離容器の液体ブロー成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のブロー成形方法は、外側層と内側層とを備えるとともに前記外側層と前記内側層との間に連なる外気導入孔を前記外側層に備える樹脂製の容器素材から、外層体と該外層体の内側に剥離可能に積層配置された内層体とを有する積層剥離容器を成形する、積層剥離容器の液体ブロー成形方法であって、前記容器素材の内部に加圧した液体を供給して、該容器素材を前記積層剥離容器に成形する容器成形工程と、前記積層剥離容器の内部に充填されている液体を該積層剥離容器の外部に吸い出して前記内層体を前記外層体から剥離させる内層体剥離工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のブロー成形方法は、上記構成において、前記内層体剥離工程の後に、前記内層体が前記外層体から剥離された状態の前記積層剥離容器の内部に再度液体を供給して前記内層体を前記外層体の内面に積層させる内層体戻し工程を有するのが好ましい。
【0012】
本発明のブロー成形方法は、上記構成において、前記容器成形工程において前記容器素材の内部に供給する液体の量よりも、前記内層体戻し工程において前記積層剥離容器の内部に供給する液体の量を少なくするのが好ましい。
【0013】
本発明のブロー成形方法は、上記構成において、前記容器成形工程において、プランジャーポンプを正方向に作動させて前記容器素材の内部に加圧した液体を供給し、前記内層体剥離工程において、前記プランジャーポンプを逆方向に作動させて前記積層剥離容器の内部に充填されている液体を該積層剥離容器の外部に吸い出し、前記内層体戻し工程において、前記プランジャーポンプを再度正方向に作動させて前記積層剥離容器の内部に液体を供給するのが好ましい。
【0014】
本発明のブロー成形方法は、上記構成において、前記容器素材が有底筒状のプリフォームであるのが好ましい。
【0015】
本発明のブロー成形方法は、上記構成において、前記容器成形工程の前に、延伸ロッドにより前記プリフォームを軸方向に延伸させる延伸工程を有し、前記積層剥離容器から前記延伸ロッドを離脱させた後に前記内層体剥離工程を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器素材を液体ブロー成形して形成された積層剥離容器に、内層体を外層体から剥離させる初期剥離処理を行うことができるので、内容液の注出時に内層体を外層体から確実に剥離させることができる積層剥離容器を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態である積層剥離容器の液体ブロー成形方法に用いられるプリフォームの一例を示す一部切り欠き正面図である。
図2】本発明の一実施の形態である積層剥離容器の液体ブロー成形方法により成形された積層剥離容器の一例を示す一部切り欠き正面図である。
図3】本発明の一実施の形態である積層剥離容器の液体ブロー成形方法を実施可能な液体ブロー成形装置の一例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態である積層剥離容器の液体ブロー成形方法のタイミングチャート図である。
図5図4に示す積層剥離容器の液体ブロー成形方法の変形例を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
【0019】
本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法は、樹脂製の容器素材の内部に加圧した液体を供給することにより、外層体と該外層体の内側に剥離可能に積層配置された内層体とを有する積層剥離容器に液体ブロー成形するものである。
【0020】
容器素材は、外側層と内側層とを備えるとともに外側層と内側層との間に連なる外気導入孔を外側層に備えた構成とされる。なお、容器素材は、外側層と内側層とを備えた2重構造に限らず、例えば外側層と内側層との間にこれらとは別材質の中間層(剥離層)を設けた構成とすることもできる。
【0021】
図1に容器素材の一例としてのプリフォーム1を示し、図2に本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法により成形した積層剥離容器10の一例を示す。
【0022】
容器素材として図1に示すプリフォーム1を採用することができる。この場合、プリフォーム1は、例えば、射出成形やダイレクトブロー成形、押出し成形、圧縮成形等により形成されたものとすることができる。プリフォーム1は、円筒状の口部2と、この口部2に連なる本体部3とを備えた有底筒状(試験管形状)に形成されている。プリフォーム1は外側層4と内側層5とを備え、外側層4と内側層5との間には中間層(剥離層)6が設けられている。外気導入孔7は外側層4のプリフォーム1の口部2を構成する部分に設けられている。このプリフォーム1の材質としては、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)等の加熱により延伸性が発現する種々の樹脂材料を用いることができる。
【0023】
一方、本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法により成形された積層剥離容器10は、プリフォーム1におけるのと同じ形状に維持される口部11と胴部12とを有する。積層剥離容器10は、それぞれプリフォーム1の外側層4、内側層5、中間層6に対応する外層体13、内層体14および中間体15を備えている。
【0024】
次に、本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法の手順について説明する。
【0025】
本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法では、まず、容器成形工程が行われる。容器成形工程においては、延伸性を発現する温度にまで加熱されてブロー成形用の金型に装着された状態の容器素材の内部(内側層の内部)に所定の圧力にまで加圧した液体を供給して液体ブロー成形を行う。このような容器成形工程により、容器素材を液体の圧力によって金型のキャビティの形状に沿った形状の積層剥離容器に成形することができる。
【0026】
液体ブロー成形に用いる液体としては、飲料、化粧品、薬品、シャンプーやリンスなどのトイレタリー等の最終的に製品として積層剥離容器に充填される内容液を用いるのが好ましいが、水等の最終的に製品として積層剥離容器に充填されない液体を用いることもできる。
【0027】
容器成形工程を行う前に、延伸ロッドによりプリフォームを軸方向に延伸させる延伸工程を行うこともできる。つまり、容器素材を二軸延伸ブロー成形で積層剥離容器に成形することもできる。このように延伸工程を行うことにより、容器素材をより大きな延伸倍率で確実に所望の形状の積層剥離容器に成形することができる。
【0028】
なお、延伸工程を行う場合には、延伸ロッドが容器素材を軸方向に最大限に延伸させた状態で容器成形工程を行うのが好ましい。
【0029】
また、延伸工程を行う場合には、積層剥離容器から離脱した後に内層体剥離工程を行うのが好ましい。これにより、内層体剥離工程において外層体から剥離した内層体が延伸ロッドに絡み付くことを防止して、延伸ロッドを確実に積層剥離容器から離脱させることができる。
【0030】
次に、容器成形工程で成形された積層剥離容器に対して内層体剥離工程が行われる。内層体剥離工程においては、容器成形工程において容器素材つまり積層剥離容器の内部(内層体の内部)に充填された液体を積層剥離容器の外部に吸い出す。これにより、内層体の内部を負圧にして、内層体を外層体から剥離させることができる。このとき、内層体の積層剥離容器の口部を除いた大部分の範囲を外層体から剥離するのが好ましい。
【0031】
このように、本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法では、容器成形工程の後に内層体剥離工程を行うようにしたので、成形後の積層剥離容器の内層体を外層体から剥離させる初期剥離処理を行うことができる。つまり、本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法により成形された積層剥離容器を、その成形後に内層体が外層体から剥離された状態とすることができる。したがって、この積層剥離容器に内容液が充填されて製品化された後において、この積層剥離容器から内容液を注出する際に、内層体を外層体から確実に剥離させることができる。
【0032】
本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法は、内層体剥離工程の後に内層体戻し工程を行うこともできる。内層体戻し工程においては、内層体剥離工程において内層体が外層体から剥離された状態の積層剥離容器に対して、その内部(内層体の内部)に再度液体を供給する。これにより、外層体から剥離して外層体の内部で減容変形している内層体を、その内部に供給した液体の圧力により膨らませて外層体の内面に積層させることができる。
【0033】
このように、本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法では、内層体剥離工程の後に内層体戻し工程を行うことにより、積層剥離容器を、初期剥離処理が施された内層体を外層体に積層配置した状態に成形することができる。
【0034】
内層体戻し工程を行う場合には、容器成形工程および内層体戻し工程で用いる液体として、最終的に製品として積層剥離容器に充填される内容液を用いるのが好ましい。
【0035】
容器成形工程および内層体戻し工程で用いる液体として、最終的に製品として積層剥離容器に充填される内容液を用いる場合には、容器成形工程において容器素材の内部に供給する液体の量よりも、内層体戻し工程において積層剥離容器の内部に供給する液体の量を少なくするのが好ましい。これにより、容器成形工程において容器素材の内部に当該容器素材をブロー成形するのに十分な量および圧力の液体を供給することができるとともに、積層剥離容器の内部から所定量の液体を抜き出すサックバック工程を行うことなく、積層剥離容器の内部に最終的に製品として充填される液体を所望の量だけ充填することができる。
【0036】
本発明の一実施の形態である積層剥離容器の液体ブロー成形方法は、例えば図3に示す液体ブロー成形装置20を用いて実施することができる。以下では、まず液体ブロー成形装置20の構成について説明する。
【0037】
液体ブロー成形装置20は、ブロー成形用の金型21を有している。この金型21のキャビティ22は壜形状となっており、金型21の上面において上方に向けて開口している。詳細は図示しないが、金型21は左右に型開きすることができるようになっており、金型21を開くことで成形後の製品を金型21から取り出すことができる。
【0038】
金型21には、この液体ブロー成形装置20により液体ブロー成形されて積層剥離容器を形成する容器素材としてのプリフォームを装着することができる。図3においては、金型21に図1に示すプリフォーム1を装着した状態を示す。
【0039】
金型21の上側には、金型21に対して上下方向に相対移動自在にノズルユニット23が設けられ、このノズルユニット23の下端にはブローノズル24が設けられている。ノズルユニット23を下端にまで下げることにより、金型21に装着されたプリフォーム1の口部2にブローノズル24を嵌合させることができる。
【0040】
ノズルユニット23の内部には上下方向に延びる供給路Fsが設けられている。供給路Fsは導入ポート25aと排出ポート25bとを有するとともに、その下端に設けられた供給孔26を介してブローノズル24に連通している。
【0041】
供給路Fsの内部にはブローノズル24を開閉するためのシール体27が配置されている。供給路Fsの内部には供給路Fsの軸心に沿って延びる細長い円筒棒状の軸体28が配置されており、シール体27はこの軸体28の下端に同軸に固定されている。軸体28は供給路Fsの内部で上下に移動自在となっており、軸体28が下方のストローク端にまで移動するとシール体27が供給孔26に配置されてブローノズル24が閉塞されるようになっている。
【0042】
軸体28は中空となっており、その内側には延伸ロッド29が摺動自在に装着されている。延伸ロッド29は軸体28に対して軸方向に相対移動可能となっており、その下端はシール体27の下端から突出している。延伸ロッド29は下方に向けて移動することにより、プリフォーム1を金型21の内部において縦方向(軸方向)に延伸させることができる。
【0043】
ノズルユニット23にはプランジャーポンプ30および液体循環部31が接続されている。
【0044】
プランジャーポンプ30は、シリンダ30aとこのシリンダ30a内に軸方向に沿って移動自在に装着されたプランジャー30bとを備えており、プランジャー30bが作動することにより配管P1を介して導入ポート25aから供給路Fs内に加圧した液体Lを供給することができる。図示する場合では、プランジャーポンプ30は、駆動源として正逆回転可能な電動モータ30cを備えたサーボプランジャータイプとなっており、プランジャー30bは電動モータ30cにより駆動されてシリンダ30a内で軸方向に正方向および逆方向に作動するようになっている。なお、電動モータ30cには制御装置32が接続され、この制御装置32により電動モータ30cの作動が制御される。
【0045】
液体循環部31は、液体Lを配管R1から新たに補給しながら所定の温度に調整して配管R2を通してプランジャーポンプ30に供給するとともに、液体Lを所定の温度に調整しながらプランジャーポンプ30と供給路Fsとの間を循環させる機能を有する。すなわち、液体Lを必要に応じて、供給路Fs→排出ポート25b→配管R3→液体循環部31→配管R2→プランジャーポンプ30→配管P1→導入ポート25a→供給路Fsと云うように構成される循環路CRを循環させることができる。
【0046】
循環路CRには2つの電磁式のバルブV1,V2が設けられ、液体ブロー成形の各工程に対応して所定の流路が対応するバルブV1,V2により開閉される。
【0047】
次に、上記液体ブロー成形装置20を用いた場合の本発明の一実施の形態である積層剥離容器の液体ブロー成形方法の手順について図2を参照しつつ説明する。
【0048】
上記の液体ブロー成形装置20を用いて本発明の積層剥離容器の液体ブロー成形方法を行う場合には、容器素材として図1に示すプリフォーム1が用いられる。
【0049】
プリフォーム1が金型21に装着されると、図4に破線で示すように、まず延伸工程が行われ、プリフォーム1が延伸ロッド29により軸方向に延伸される。
【0050】
延伸ロッド29がストローク端にまで移動してプリフォーム1が所定の長さにまで軸方向に延伸されると、次に、プランジャーポンプ30が正方向に作動し、プランジャー30bが図3中下方に移動して容器成形工程が行われる。つまり、容器成形工程においては、シール体27がブローノズル24を開いた状態で、図4に実線で示すように、プランジャーポンプ30のプランジャー30bが下方に移動することにより、プランジャーポンプ30から供給路Fsを介してブローノズル24に加圧された液体Lが供給される。これにより、ブローノズル24を通して加圧された液体Lがプリフォーム1の内部に供給され、プリフォーム1が金型21のキャビティ22に沿った形状の積層剥離容器つまり図2に示す積層剥離容器10に液体ブロー成形される。
【0051】
このとき、図4に一点鎖線で示すように、プリフォーム1に供給される液体Lの圧力はプランジャーポンプ30の作動により所定の圧力にまで急激に高められる。
【0052】
容器成形工程において積層剥離容器10が成形され、延伸ロッド29が成形された積層剥離容器10から離脱すると、次に、内層体剥離工程が行われる。内層体剥離工程においては、プランジャーポンプ30が逆方向に作動してプランジャー30bが図3中上方に移動し、積層剥離容器10の内部に充填された液体Lが当該積層剥離容器10の口部11から外部に吸い出される。つまり、プランジャーポンプ30が、容器成形工程のときとは逆方向に作動することにより、積層剥離容器10の内部に充填された液体Lが供給路Fsを介してプランジャーポンプ30に吸い出される。これにより、容器成形工程で成形された積層剥離容器10の内層体14が外層体13から剥離され、減容変形した状態とされる。
【0053】
このように、本発明の一実施の形態である積層剥離容器の液体ブロー成形方法によれば、容器素材であるプリフォーム1を液体ブロー成形することにより、内層体14が外層体13から剥離された積層剥離容器10を成形することができる。したがって、この積層剥離容器10に後工程等において内容液を充填して製品化すれば、この積層剥離容器10から内容液を注出する際に、内層体14を外層体13から確実に剥離させて、積層剥離容器10としての機能を確実に発揮させることができる。
【0054】
図5図4に示す積層剥離容器の液体ブロー成形方法の変形例を示すタイミングチャート図である。図5に示す変形例では、図3に示す液体ブロー成形装置20を用いて図4に示す場合と同様の手順で延伸工程、容器成形工程および内層体剥離工程を行う一方、内層体剥離工程の後に内層体戻し工程を行うようにしている。
【0055】
内層体戻し工程においては、図5中に実線で示すように、プランジャーポンプ30を逆方向に作動させて内層体剥離工程を行った後、プランジャーポンプ30を再度正方向に作動させることによりプランジャー30bを図3中下方に移動させて、内層体14が外層体13から剥離された状態の積層剥離容器10の内部に再度液体Lを供給する。これにより、外層体13から剥離して外層体13の内部で減容変形していた内層体14を、その内部に供給した液体Lの圧力によって膨らませて外層体13の内面に積層された状態とすることができる。これにより、積層剥離容器10を、その内層体14が外層体13に積層された見栄えのよい状態としつつ、その内部に液体Lが充填された製品を製造することができる。
【0056】
また、内層体戻し工程においては、容器成形工程よりもプランジャー30bの移動量つまりプランジャーポンプ30の作動量が小さくされている。つまり、容器成形工程においてプリフォーム1の内部に供給される液体Lの量よりも、内層体戻し工程において積層剥離容器10の内部に供給される液体Lの量が少なくされている。これにより、容器成形工程においてプリフォーム1の内部にブロー成形を行うのに十分な量および圧力の液体Lを供給しつつ、積層剥離容器10の内部から所定量の液体Lを抜き出すサックバック工程を行うことなく、積層剥離容器10の内部に最終的に製品として充填される液体Lを所望の量だけ充填することができる。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
例えば、前記実施の形態では、プリフォーム1および成形後の積層剥離容器10の内部に液体Lを供給する装置としてプランジャーポンプ30を備えた液体ブロー成形装置20を用いるようにしているが、これに限らず、その他の形式のポンプ等を備えた液体ブロー成形装置を用いることもできる。
【0059】
また、前記実施の形態では、容器素材はプリフォーム1とされているが、これに限らず、例えば共押し出し成形により外側層と内側層とを備えた筒状に形成された積層パリソンを、その一端が金型に食い切られた状態で当該金型の内部に配置した状態ものを容器素材とすることもできる。
【0060】
さらに、前記実施の形態では、内層体剥離構成において、プランジャーポンプ30を逆方向に作動させることにより成形後の積層剥離容器10から液体Lを吸い出して内層体14を外層体13から剥離させるようにしているが、これに限らず、外気導入孔7に差し込んだノズルを介して外層体13と内層体14との間に加圧した空気を導入することにより、積層剥離容器10内の液体Lを押し出しつつ内層体14を外層体13から剥離させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0061】
1 プリフォーム
2 口部
3 本体部
4 外側層
5 内側層
6 中間層
7 外気導入孔
10 積層剥離容器
11 口部
12 胴部
13 外層体
14 内層体
15 中間体
20 液体ブロー成形装置
21 金型
22 キャビティ
23 ノズルユニット
24 ブローノズル
25a 導入ポート
25b 排出ポート
26 供給孔
27 シール体
28 軸体
29 延伸ロッド
30 プランジャーポンプ
30a シリンダ
30b プランジャー
30c 電動モータ
31 液体循環部
32 制御装置
Fs 供給路
P1 配管
L 液体
R1 配管
R2 配管
R3 配管
CR 循環路
V1 バルブ
V2 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5