(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転体の前記媒体非保持部が、前記媒体積載部に積載される前記一部媒体の端部を下方から上方に保持する方向に回転するものであることを特徴とする請求項2に記載の媒体供給装置。
前記回転体は、媒体搬送指令を受ける毎に、前記媒体積載部に積載される前記一部媒体の端部を下方から上方に保持する方向に回転するものであることを特徴とする請求項3に記載の媒体供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る媒体供給装置の主たる実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態に係る媒体供給装置の構成を示す斜視図である。
図1において、実施形態に係る媒体供給装置50は、1対のフロントガイド部2、1対のサイドガイド部3、ドライブシャフト4、1対のドライブプーリ5、1対のドライブプーリのそれぞれに設けられた搬送ベルト6、1対の分離片7、1対の保持部材8を有する。
【0011】
なお、
図1には、図示されていないが、1対の搬送ベルト6のそれぞれを、1対のドライブプーリ5と張架する1対のアイドルプーリと、1対のアイドルプーリと連結しているアイドルシャフトが設けられている。
【0012】
媒体供給装置50は、フロントガイド部2と1対のサイドガイド部3とにより形成される空間(積載スペース)に媒体1を積載している。媒体供給装置50は、前記積載スペースの下部に、1対のドライブプーリ5及び1対のアイドルプーリにより架け渡されている1対の搬送ベルト6を有している。1対のドライブプーリ5はドライブシャフト4で連結しており、ドライブシャフト4が図示しないモータからの駆動力で回転することにより1対のドライブプーリ5が回転し、又アイドルシャフトに連結している1対のアイドルプーリも追従して回転し、これにより各搬送ベルト6が搬送方向に回動する。各搬送ベルト6は積載されている最下位の媒体1と接触しており、各搬送ベルト6が回動することで、最下位の媒体1を搬送方向(矢印Cの方向)に搬送して、印刷装置等に媒体1を供給する。
【0013】
各サイドガイド部3は、ドライブシャフト4に対して媒体1の幅方向に移動可能に取り付けられている。また、各フロントガイド部2は、各サイドガイド部3に対してネジ等で固定されており、フロントガイド部2の位置は媒体積載方向に調整可能となっており、フロントガイド部2と搬送ベルト6との間の間隙長を調整することができる。そのため、搬送ベルト6により搬送された媒体1の通過枚数を規制することができる。また、搬送ベルト6により複数枚の媒体1が搬送されたときには、分離片7は、2枚目以降の媒体1(すなわち、最下位の媒体1の上に重なって搬送される媒体1)の搬送を堰き止めるように構成されている。このようにして、最下位の媒体1のみが搬送可能となっている。
【0014】
ここで、
図1において、ドライブシャフト4に対して、各サイドガイド部3と各フロントガイド部2と搬送ベルト6とドライブプーリ5と分離片7とアイドルプーリ等が、媒体1の左右の幅側にそれぞれアッセンブリ化されたユニットとして設けられている。そのため、フロントガイド部2、サイドガイド部3、ドライブプーリ5、搬送ベルト6、分離片7及びアイドルプーリが、ドライブシャフト4にガイドされながら、媒体1の幅方向に移動可能に設けられている。つまり、フロントガイド部2はサイドガイド部3に対して固定されており、更に分離片7は搬送ベルト6の上部にネジ等で固定されている。また、ドライブシャフト4に連結されているドライブプーリ5及びアイドルシャフトに連結しているアイドルプーリは、媒体1の幅方向にスライド自在に取り付けられている。これにより、セットする媒体1の大きさ(媒体1の幅長)が異なる場合でも、その媒体1の幅長に合わせてスライドさせて調整することができる。
【0015】
1対のサイドガイド部3は、媒体1の両端部(幅方向の端部)をそれぞれ規制するものである。フロントガイド部2は、媒体1の搬送方向側の先端部を揃えるために、搬送方向側の媒体1の先端部を規制するものである。フロントガイド部2は、各サイドガイド部3の一方の端面(搬送方向側の端面)と垂直に固定されており、フロントガイド部2及びサイドガイド部3で形成される積載スペースに媒体1が収納される。
【0016】
ドライブシャフト4は、1対のドライブプーリ5と連結するものであり、モータ等からの駆動力を受けて搬送方向に回転することで、各ドライブプーリ5を回動させるものである。ドライブシャフト4が回転することにより、各ドライブプーリ5が搬送方向に回動し、各ドライブプーリ5が各搬送ベルト6を回転させる。
【0017】
各ドライブプーリ5は、ワンウェイクラッチと嵌合しており、ワンウェイクラッチを介してドライブシャフト4と結合している。そのため、ドライブシャフト4が搬送方向に回転する際には、各ドライブプーリ5は、ワンウェイクラッチを介してドライブシャフト4と連結し、ドライブシャフト4の駆動を受けて搬送ベルト6を回動させる。一方、ドライブシャフト4が非搬送方向に回転する際、ドライブシャフト4の駆動力(回転力)が各ドライブプーリ5に伝達されてない構造となっている。
【0018】
各搬送ベルト6は、各ドライブプーリ5と各アイドルプーリとにより架橋されている無端ベルトである。各搬送ベルト6は、積載スペースに積載されている媒体1の幅方向の両端部付近に配置されており、各搬送ベルト6の上面が最下位の媒体1の下面と接触して配置されている。これにより、各搬送ベルト6の回動により、最下位に位置する媒体1を搬送方向に繰り出すことができる。
【0019】
次に、各サイドガイド部3の構造を説明する。
【0020】
図2は、
図1の矢印Aの方向から見たときの構成を示す構成図である。
図3は、
図1の矢印Bの方向から見たときの構成を示す構成図である。
図4は、実施形態に係る保持部材8の側面から見たときの構造を示す構造図である。
【0021】
それぞれのサイドガイド部3の搬送ベルト6近傍の所定の高さの位置に、回転自在に取り付けられた、回転体としての保持部材8が設けられている。また保持部材8はギヤ列9を介してドライブシャフト4と連結している。各保持部材8は、積載スペースに積載されている媒体1の端部を保持して、上下方向に積載されている1又は複数の媒体1を区分するものである。
【0022】
図4に示すように、保持部材8は、最大外径Dに対して一部に最小外径dを有しており、最大外径Dが媒体1側にある際は、保持部材8の表面はサイドガイド部3に設けられた開口部から媒体1側に突出し、最小外径dが媒体1側にある際は、保持部材8の表面はサイドガイド部3に設けられた開口部から媒体1側に突出しない。
【0023】
図2及び
図3において、保持部材8を回動させる回動機構9は、ギヤ列として、ドライブシャフト4に嵌合するギヤ9a、前記ギヤ9aと嵌合するギヤ9b、前記ギヤ9bと嵌合するウォームギヤ9eを有する。
【0024】
ギヤ9a及び9bは、ドライブシャフト4と連結しており、ドライブシャフト4の駆動力をウォームギヤ9eに伝達するものである。
【0025】
ドライブシャフト4と嵌合するギヤ9aは、ドライブプーリ5と同様に、媒体1の搬送方向にスライド可能である。また、ギヤ9aは、サイドガイド部3により位置規制によりサイドガイド部3に追従して動くことができる。さらに、ギヤ列を構成している全てのギヤ(ギヤ9a、9b、9e)及び後述するスリット板10も、サイドガイド部3に追従して動くものである。
【0026】
さらに、ギヤ9aの内部にはワンウェイクラッチが取り付けられており、ドライブシャフト4が媒体1の搬送方向に回転するとき、ギヤ9aは空転する。一方、ドライブシャフト4が非搬送方向に回転したとき、キヤ9aはドライブシャフト4と連結して、保持部材8側に駆動力を伝達する。
【0027】
ギヤ列後方にはウォームホイール9cとウォーム9dとを有するウォームギヤ9eが取り付けられており、ウォームギヤ9eは、ギヤ9a及び9bから伝達された駆動力の回転軸方向を垂直方向に切り替え、ドライブシャフト4が非搬送方向に回転したときに、保持部材8を積載している媒体1に対して下から持ち上げる方向(すなわち、媒体1を下方から上方に保持する方向)に回転させる。なお、図示しない反対側のサイドガイド部3に取り付けられたギヤ列においては、ウォームギヤ9eの捻じれ方向が逆になっており、ドライブシャフト4が非搬送方向に回転した際に、保持部材8を媒体1に対して下から持ち上げる方向に回転させる。
【0028】
各保持部材8のウォーム9dと連結する端部と反対側には、各保持部材8の回転軸にスリット板10が取り付けられている。
【0029】
また、サイドガイド部3に取り付けられた回転位置検知部としての光学センサ11は、保持部材8の最大外径D及び最小外径dと、サイドガイド部3の位置関係を検知するため、各保持部材8に取り付けられているスリット板10を検知するものである。
【0030】
図4に示すように、保持部材8は、当該保持部材8の回転により、サイドガイド部3の開口部から露出して積載スペースに収納されている媒体1の端部を下方から上方に保持する媒体保持部81と、サイドガイド部3の開口部から露出しない媒体非保持部82とを有する。
【0031】
また、保持部材8は、中心8aから保持部材8の表面までの距離が一定でない円筒形状のローラを適用することができる。保持部材8は、中心8aからの最大距離である最大外径Dを含む領域と、中心8aからの最小距離である最小外径d(D>d)を含む領域とを有する周面となっている。最大外径Dを含む領域が媒体保持部81であり、最小外径dを含む領域が媒体非保持部82である。
【0032】
保持部材8の最小外径dは、保持部材8の一部にある最大外径Dの円弧の反対側にある。
図4に示すように、保持部材8の最小外径dとなる位置が水平になるときに、保持部材8の表面の一部(媒体非保持部82)は、最小外径dを含む水平面に対して垂直な面となっている。
【0033】
最大外径Dの保持部材8の周面が媒体1側(積載スペース側)に位置するとき、保持部材8の表面の一部領域が、サイドガイド部3の開口部からサイドガイド部3の内側(積載スペース側)に突出する。一方、最小外径dの保持部材8の周面が媒体1側(積載スペース側)に位置するとき、保持部材8の表面の一部領域は、サイドガイド部3の開口部からサイドガイド部3の内側(積載スペース側)に突出しない。
【0034】
媒体保持部81は、保持部材8の回転により、保持部材8の周面が積載スペース内の媒体1と接する位置から、周面が媒体1に接しなくなるまでの領域である。周面が媒体1に接する位置(点)での回転中心との間の距離が、最大外径D以下であることが望ましく、保持部材8の回転に伴い、サイドガイド部3からの突出量が多くなり、媒体1を下から上に向けて持ち上げる。そして、媒体1に接する位置が最大外径Dのときに最も媒体1を強く保持する。
【0035】
これに対して、媒体非保持部82は、保持部材8の周面における媒体保持部81以外の領域である。媒体非保持部82の最小外径dは、サイドガイド部3に設けられる保持部材8の設置状態にもよるが、最小外径dを有する領域が積載スペース側にあるときに、当該保持部材8の周面が媒体1に接しない距離(すなわち、回転中心から媒体1までの距離)とすることが望ましい。従って、最小外径dは、回転中心から媒体1までの距離以下であっても良い。
【0036】
(A−2)実施形態の動作
次に、この実施形態に係る媒体供給装置50における動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図5〜
図10は、実施形態に係る媒体供給装置50の動作を説明する説明図である。
図6〜
図8は、実施形態に係る保持部材8の回転の様子を説明する説明図である。
図6〜
図8では、保持部材8の回転動作の説明に不要な構成部品を省略している。
【0038】
図5は、実施形態に係る媒体供給装置50の媒体搬送前の保持部材8の状態を示す図である。なお、
図5では、媒体供給装置50により繰り出された媒体1を搬送する搬送ローラ12を図示している。
【0039】
媒体搬送前は、保持部材8の最大外径Dの一部領域が、サイドガイド部3の内側に突出していない状態である。ここで、保持部材8の位置調整は、スリット板10を検知する光学センサ11の位置検知情報に基づいて、保持部材8の位置を認識して調整することができる。
【0040】
媒体搬送の指令があると、媒体供給装置50におけるモータ等の駆動部が駆動し、ドライブシャフト4が非媒体搬送方向に回転する。そうすると、ドライブシャフト4の回転力を受けてギヤ9a及び9bが回転し、駆動力がウォームギヤ9eに伝達される。そして、ウォームギヤ9eから駆動力を受けて、保持部材8が回転する。
【0041】
このとき、
図6の左側の一方の保持部材8はE方向に回転し、
図6の右側の他方の保持部材8はF方向に回転する。このとき、保持部材8の最大外径Dの表面はサイドガイド部3の開口部から露出していない状態である。
【0042】
そして、
図7に示すように、保持部材8が更に回転すると、保持部材8の最大外径Dを含む領域(媒体保持部81)がサイドガイド部3の開口部から露出し、保持部材8の媒体保持部81が積載スペースの媒体1の端部を下方から上方に向けて持ち上げる方向に回転する。これにより、
図7に示すように、媒体1の両端部を持ち上げることになる。
【0043】
つまり、保持部材8が媒体1の両端部を下方から上方に持ち上げる方向に回転すると、保持部材8の媒体保持部81が媒体1の両端部を持ち上げると同時に、保持部材8の回転により、保持部材8の媒体保持部81が媒体1を内側に押し込む。そのため、媒体1のコシにもよるが、概ね積載スペースの下部にある複数枚の媒体1は、両端部が持ち上げられ、中央部が下側に撓む(
図7参照)。
【0044】
さらに、保持部材8が回転すると、保持部材8の最大外径Dの領域が突出してくるため、保持部材8が媒体1の両端を更に強く保持する。つまり、保持部材8が媒体1を持ち上げると同時に、保持部材8と媒体1との接点が媒体1の内側に押し込んだ後、保持部材8の最大外径Dの部分が突出した後に、保持部材8が媒体1を持ち上げると同時に、保持部材8と媒体1との接点が媒体1の外側に変化することで、保持部材8が媒体1を外側に引っ張ることになる。そのため、媒体1の中央部の撓み部分も持ち上げられ、
図8に示すように、媒体1の全体が保持部材8により持ち上げられる。これにより、媒体搬送の際に、積載スペースにある媒体1を、上下方向に区分(分割)することができる。
【0045】
図8のように、積載されている媒体1を分割した後、媒体供給装置50は最下部の媒体1を搬送する。すなわち、媒体供給装置50において、駆動部が駆動し、ドライブシャフト4が媒体搬送方向に回転する。
【0046】
このとき、
図9に示すように、搬送ベルト6が媒体1を搬送する際、積層スペースの媒体1は上下方向に分割されている。そのため、最下位に位置している媒体1に係る上部積載媒体の重量が軽減されるため、媒体搬送のミスフィードを回避できる。
【0047】
そして、
図10に示すように、最下位の媒体1が搬送ベルト6により搬送されると、最下位の媒体1は搬送ローラ12に送られる。搬送終了後、駆動部は回転を停止する。
【0048】
その後、駆動部がドライブシャフト4を非搬送方向に駆動する。これにより、
図10に示すように、保持部材8は、最小外径dを有する領域が媒体1側(積載スペース側)に位置まで回転する。これにより、上下方向に分割されていた媒体1は、元の状態に戻る。
【0049】
以後、媒体搬送指令を受ける毎に、上記の動作を繰り返す。なお、搬送ローラ12は搬送媒体の後端部が媒体セットエリア内にあり、積載媒体の重量を受けた状態でも媒体搬送が可能な十分な搬送能力を有している。
【0050】
(A−3)実施形態に係る効果
以上のように、この実施形態によれば、保持部材の外径差を利用し、積載媒体を上下方向に分割(又は分離)し、最下位媒体に掛かる重量を軽減し、媒体搬送時のミスフィードを防ぐことができる。
【0051】
また、この実施形態によれば、積載媒体を斜めに傾けることなく、媒体搬送部(保持部材下部)への媒体補充が可能で、積載スペースの有効利用と媒体変形を防ぐ効果が得られる。
【0052】
更に、従来の特許文献2の記載技術は保持ローラを双方向に回転させるための専用のアクチュエータが必要であるが、この実施形態によれば、保持部材の回転方向が一方向のため、1個の駆動部(モータ)で媒体搬送、最下位媒体への重量軽減、搬送部への媒体補充が可能であるという効果も得られる。
【0053】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0054】
(B−1)上述した実施形態では、外径差を設けた保持部材を用いる場合を例示した。しかし、保持部材は、回転軸を偏心させた真円ローラやアーム状の部品で代用しても同様の効果を得ることが可能である。
【0055】
また、保持部材は、サイドガイド部の開口部から露出して媒体を保持する保持部と、サイドガイド部の開口部から露出しない非保持部とを有するものであれば良い。保持部材の断面形状は、例えば、半円弧状であっても良い。
【0056】
(B−2)また、上述した実施形態では、媒体搬送が終わる毎に保持部材を回転させ、媒体積載状態に戻した後(搬送部への媒体補充)、次の媒体搬送指令を受けてから保持部材を回転し、積載媒体を再分割する場合を例示した。
【0057】
しかし、一度の媒体分割動作において、媒体厚と保持部材位置より定められる複数枚の媒体が搬送ベルト上に残るため、媒体補充動作は任意に設定される媒体搬送回数毎でも良く、更には光学センサ等で保持部材下部の媒体残量を検出し、その検出結果により行っても良い。
【0058】
(B−3)上述した実施形態では、印刷装置等の媒体を供給する媒体供給装置に本発明を適用する場合を例示した。しかし、本発明は、積載スペースに積載される媒体を最下位から順に搬送して分離する搬送装置に広く適用することができ、上述した実施形態に限定されるものではない。