特許第6352180号(P6352180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352180副鼻腔の経鼻拡張及び灌注のための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352180
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】副鼻腔の経鼻拡張及び灌注のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20180625BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20180625BHJP
   A61B 17/24 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61M25/10
   A61M25/00 534
   A61M25/00 552
   A61B17/24
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-522870(P2014-522870)
(86)(22)【出願日】2012年7月16日
(65)【公表番号】特表2014-521438(P2014-521438A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012046964
(87)【国際公開番号】WO2013016056
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2015年7月16日
(31)【優先権主張番号】61/511,256
(32)【優先日】2011年7月25日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506353574
【氏名又は名称】アクラレント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】チャウ・ミナ・ウェイ−ビン
(72)【発明者】
【氏名】ハ・フン・ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ムニ・ケタン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドファーブ・エリック・エイ
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/033629(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0183128(US,A1)
【文献】 特表2008−513125(JP,A)
【文献】 特表2003−521353(JP,A)
【文献】 特開平8−38607(JP,A)
【文献】 特開平8−155033(JP,A)
【文献】 特開2003−275318(JP,A)
【文献】 実開平2−23555(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61B 17/24
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副鼻腔開口部の治療のための医療装置であって、前記医療装置は、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端との間に、膨張内腔、ガイドエレメント内腔及び灌注内腔を有するシャフトシステムであって、近位シャフト区分及び遠位シャフト区分を有する、シャフトシステムと、
前記遠位シャフト区分上にあり、前記遠位端に近位のインフレータブルバルーンと、
前記遠位シャフト区分上にあり、前記インフレータブルバルーンに遠位の灌注先端部であって、先端開口部及び1つ又は2つ以上の半径方向を向く開口部を含む、灌注先端部と、を含み、
前記灌注先端部が非外傷性先端部を備え、前記灌注先端部における前記非外傷先端部が55未満のデュロ硬度を備える柔軟性であり、前記外傷先端部以外の箇所が55〜70のデュロ硬度を備える柔軟性である、
前記ガイドエレメント内腔は、前記シャフトシステムの前記遠位シャフト区分において、前記灌注内腔に統合される、医療装置。
【請求項2】
前記1つ又は2つ以上の半径方向を向く開口部が、3つの開口部を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記半径方向を向く開口部が、0.051cm〜0.127cm(0.020インチ〜0.050インチ)の直径を有する、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記半径方向を向く開口部が、0.066cm(0.026インチ)の直径を有する、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記半径方向を向く開口部が、前記灌注先端部の周方向に沿って120度離間される、請求項2に記載の医療装置。
【請求項6】
前記膨張内腔及び前記灌注内腔が、隣接する内腔である、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記灌注先端部が、前記非外傷性先端部の近位の灌注先端部内腔を有し、前記灌注先端部内腔が、灌注先端部内腔直径を有し、
前記先端開口部が、先端開口部直径を有し、
前記灌注先端部内腔直径が、前記先端開口部直径より大きい、請求項に記載の医療装置。
【請求項8】
前記先端開口部直径が、0.094cm(0.037インチ)であり、前記灌注内腔直径が、0.107cm(0.042インチ)である、請求項に記載の医療装置。
【請求項9】
前記近位シャフト区分が、補強部材を更に含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
前記補強部材がハイポチューブを含む、請求項に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には医療装置に関し、具体的には、副鼻腔の状態の治療のための医療装置及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
副鼻腔は、副鼻腔口として知られる小さな開口部によって鼻の導管に接続されている頭蓋骨の中空穴である。副鼻腔と鼻腔との間の1層の粘膜組織によって覆われた骨によってそれぞれの副鼻腔口は形成されている。通常、空気は副鼻腔口を通り抜けて副鼻腔を出入りする。また、粘液は副鼻腔のライニングによって連続して形成され、副鼻腔口を通って排出され、鼻の導管に入る。
【0003】
副鼻腔炎は、1つ以上の副鼻腔の炎症を指す一般用語である。急性副鼻腔炎に伴って生じ得る上気道感染又はアレルギー状態は組織を膨潤し、副鼻腔口からの正常な排液及び副鼻腔の換気を一時的に妨害する場合があり、その結果、副鼻腔穴の内部にいくらかの粘液が溜まること、及び場合によっては副鼻腔穴の内部の感染をもたらすことがある。慢性副鼻腔炎は、1つ以上の副鼻腔口の慢性的な狭窄又は閉塞を特徴とする長期的状態であり、結果的に副鼻腔の慢性の感染及び炎症がもたらされる。慢性副鼻腔炎には、長年にわたる呼吸器系アレルギー、鼻のポリープ、鼻介骨肥大、及び/又は鼻中隔湾曲がしばしば伴う。典型的には、急性副鼻腔炎は単一の病原体(例えば1つの細菌型、1つのウィルス型、1つの真菌型など)による感染によって引き起こされるが、慢性副鼻腔炎には複数の病原体感染(例えば複数の細菌型又は複数の微生物属)が関わることがしばしばである。
【0004】
治療をせずに慢性副鼻腔炎を放置すると、副鼻腔の生体構造の組織及び/又は骨構造の修復不能の損傷に至る場合がある。通常、慢性副鼻腔炎の初期の治療には、充血除去剤、ステロイド類鼻スプレー及び抗生物質(細菌感染の場合)のような薬剤の使用が関わる。薬剤治療のみで永久的な改善ができない場合は、外科的介入が指示される場合がある。
【0005】
慢性副鼻腔炎を治療するための最も一般的な外科的処置は、内視鏡下副鼻腔手術(「FESS」)である。FESSは一般には患者の鼻孔を通して挿入される内視鏡及び多様な堅い器具類を用いて行われる。内視鏡は位置決めを可視化するために使用され、鼻腔及び副鼻腔口から組織を除去して鼻腔の排液を改善するために多様な堅い器具類が使用される。
【0006】
Balloon Sinuplasty(商標)処置として知られる技術、及びこの処置を実施するためのシステムが、副鼻腔炎の治療のために、Acclarent,Inc.(Menlo Park,CA)によって開発されてきた。米国特許第7645272号、同第7654997号、及び同第7803150号を含む多くの米国特許及び特許出願が、Balloon Sinuplasty(商標)処置の様々な実施形態、並びにかかる処置の実施に有用な様々な装置について説明している。Balloon Sinuplasty(商標)処置では、ガイドカテーテルを鼻に挿入し、患部副鼻腔の副鼻腔口の内部に、又は副鼻腔口に隣接して、配置する。次いで、そのガイドカテーテルを通してガイドワイヤを進め、患部副鼻腔内に挿入する。その後、膨張可能な拡張器(例えばインフレータブルバルーン)を有する拡張カテーテルをそのガイドワイヤの上に前進させ、拡張器が位置づけられている患部副鼻腔の副鼻腔口の内部の位置まで進める。次いで拡張器を拡張し、粘膜の切開又は骨の除去を必要とせずに、副鼻腔口の拡張及び副鼻腔口に隣接する骨の再形成を引き起こす。次いで、カテーテル及びガイドワイヤを取り外すと、拡張された副鼻腔口によって、患部副鼻腔からの排液及び換気の改善が可能となる。
【0007】
FESS又はBalloon Sinuplasty(商標)処置の実施後、副鼻腔を灌注することが有用であり得るか、又は必要となる場合がある。米国特許出願公開第2008/0183128号に記載の装置は、副鼻腔を灌注するのに有用であり得る。例えば灌注、吸引、物質の送達、及び培養物回収の目的のために、副鼻腔口又は副鼻腔内にガイドカテーテルによって灌注カテーテルを前進させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
副鼻腔の治療のための改善された方法及び装置に対する継続的な必要がある。上記の灌注カテーテルは使用が容易であるが、Balloon Sinuplasty(商標)処置時に副鼻腔の灌注を提供することが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一態様では、本発明は副鼻腔開口部の治療のための医療装置に関し、この装置は、近位端と、遠位端と、近位端と遠位端との間に、膨張内腔及び灌注内腔を有するシャフトシステムと、を有する。シャフトシステムは、近位シャフト区分及び遠位シャフト区分、遠位シャフト区分上にあり、遠位端に近位のインフレータブルバルーン、並びに遠位シャフト区分上にあり、インフレータブルバルーンに遠位の灌注先端部を有する。灌注先端部は、先端開口部及び1つ又は2つ以上の半径方向を向く開口部を有する。
【0010】
一実施形態において、医療装置は、3つの半径方向を向く開口部を有し得る。半径方向を向く開口部は、0.051cm〜0.127cm、又は0.066cm(0.020インチ〜0.050インチ、又は0.026インチ)の直径を有し得る。
【0011】
他の実施形態では、医療装置の膨張内腔及び灌注内腔は隣接する内腔である。更なる実施形態では、医療装置は、ガイドエレメント内腔を含む。
【0012】
更に別の実施形態では、灌注先端部は、非外傷性先端部の近位の灌注先端部内腔を有する。灌注先端部内腔は、灌注先端部内腔直径を有し、先端開口部は、先端開口部直径を有し、灌注先端部内腔直径は先端開口部直径より大きい。別の実施形態では、先端開口部直径は、0.094cm(0.037インチ)であり、灌注内腔直径は、0.107cm(0.042インチ)である。
【0013】
更なる実施形態では、医療装置の近位シャフト区分は、補強部材を含む。別の実施形態では、補強部材はハイポチューブである。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、副鼻腔にアクセスし、副鼻腔を拡張し、かつ副鼻腔を灌注するためのシステムであって、本システムは、副鼻腔ガイドカテーテルと、ガイドエレメントと、医療装置と、を有するシステムに関する。医療装置は、膨張内腔、灌注内腔、インフレータブルバルーン、及び灌注先端部を有する。膨張内腔及び灌注内腔は、隣接する内腔であり、灌注先端部は、先端開口部及び少なくとも1つの半径方向を向く開口部を有する。
【0015】
一実施形態では、医療装置は、1つ又は2つ以上の直接可視化マーカ、あるいは1つ又は2つ以上のX線撮影マーカを有する。
【0016】
別の実施形態では、本システムの医療装置は3つの半径方向を向く開口部を有する。半径方向を向く開口部は、0.051cm〜0.127cm、又は0.066cm(0.020インチ〜0.050インチ、又は0.026インチ)の直径を有してもよい。
【0017】
別の実施形態では、本システムのガイドエレメントは、ガイドワイヤ又は副鼻腔照明システムからなる群から選択される。更なる実施形態では、本システムの医療装置は、ガイドエレメント内腔を含む。
【0018】
他の実施形態では、本システムの医療装置は、非外傷性先端部の近位の灌注先端部内腔を備える灌注先端部を有する。灌注先端部内腔は、灌注先端部内腔直径を有し、先端開口部は、先端開口部直径を有し、灌注先端部内腔直径は先端開口部直径より大きい。別の実施形態では、先端開口部直径は、0.094cm(0.037インチ)であり、灌注先端部内腔直径は、0.107cm(0.042インチ)である。
【0019】
更なる実施形態では、本システムの医療装置は、補強部材を含む近位シャフト区分を有する。別の実施形態では、補強部材はハイポチューブを含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、副鼻腔開口部を治療するためのパッケージ化されたキットに関する。本キットは、膨張内腔、灌注内腔、インフレータブルバルーン、及び灌注先端部を含む医療装置を有する医療装置であって、膨張内腔及び灌注内腔は隣接する内腔であり、灌注先端部は、少なくとも1つの半径方向を向く開口部を有する、医療装置と、この医療装置を副鼻腔ガイドカテーテル内に挿入するための、バルーン挿入スタイレットと、医療装置を灌注流体源に接続するための灌注配管と、を含む。
【0021】
更に別の態様では、本発明は、鼻の生体構造における標的空間を治療するための方法に関する。本方法は、膨張内腔、灌注内腔、インフレータブルバルーン、及び灌注先端部を有する医療装置を提供することを含む。膨張内腔及び灌注内腔は隣接する内腔であり、灌注先端部は、先端開口部及び少なくとも1つの半径方向を向く開口部を有する。本方法は、医療装置を副鼻腔ガイドカテーテル内に挿入することと、灌注内腔を通じてガイドエレメントを医療装置内に挿入することと、ガイドカテーテルを鼻の生体構造において位置決めすることと、ガイドエレメントを、鼻の生体構造の標的空間内に前進させることと、ガイドエレメントにわたって医療装置を鼻の生体構造の標的空間内に前進させることと、バルーンを膨張させて副鼻腔開口部を拡張することと、バルーンを収縮させることと、ガイドエレメントを医療装置から回収することと、灌注配管を医療装置に接続することと、先端開口部及び少なくとも1つの半径方向を向く開口部を通じて流体を標的空間に送達することと、を含む。
【0022】
一実施形態では、流体を送達することは、50mL/分〜200mL/分の流量で、又は75mL/分〜125mL/分の流量で生じ、副鼻腔開口部は、前頭洞開口部、上顎洞開口部、篩骨洞開口部、及び蝶形骨洞開口部であり得る。
【0023】
他の実施形態では、流体は、水、食塩水、造影剤、抗菌剤、抗炎症剤、鬱血除去剤、粘液希釈化剤、麻酔剤、鎮痛薬、抗アレルギー剤、アレルゲン、抗増殖剤、止血剤、細胞毒性剤、生物学的薬剤又は上記のいずれかの組合せであり得る。
【0024】
本発明の新規特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の特徴及び利点は、次の、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態、並びに同様の数表示が同様の要素を示す添付の図面を参照することによって、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態による医療装置の簡易化された側面図である。
図1A図1の線1A−1Aの断面図である。
図1B図1の線1A−1Aの断面図の別の実施形態である。
図2図1の医療装置の遠位端の拡大図である。
図3】本発明の副鼻腔バルーンカテーテルの位置決めに有用な副鼻腔ガイドカテーテルのコレクションを示す。
図4】本発明の医療装置の位置決め用のスタイレットを示す。
図5】本発明に係る医療装置と共に有用な灌注配管を示す。
図6】本発明の医療装置と共に使用するためのガイドワイヤの斜視図である。
図7】本発明の医療装置と共に使用するための副鼻腔照明システムの斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る医療装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明は、図面を参照しつつ読まれるべきもので、異なる図面中、同様の要素は同様の参照符号にて示してある。図面は、必ずしも実寸ではなく、あくまで説明を目的とした例示的な実施形態を図示したものであり、本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。詳細な説明は本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例として説明するものである。この説明文は、当業者による発明の製造及び使用を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例、並びに使用例を述べるものである。
【0027】
本明細書で任意の数値や数値の範囲について用いる「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその所望の目的に沿って機能することを可能とするような適当な寸法の許容誤差を示すものである。
【0028】
本発明の実施形態による医療装置は、例えば、それらの構成が、患者の副鼻腔開口部の準備及び治療を特に効率的にするものであり、また機械的にも簡潔であるという点で有利である。更に、医療装置の簡潔性により、これらの医療装置は費用効果的な方式で製造される。更に、本発明の実施形態に係る医療装置は十分硬く、副鼻腔の生体構造へアクセスし、続いて副鼻腔の簡便なリモデリング及び灌注に有益に用いることができる。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る、副鼻腔開口部(例えば前頭洞開口部、上顎洞開口部、篩骨洞、又は蝶形骨洞開口部)の処置のための医療装置100の簡略化された斜視図である。副鼻腔開口部に関して説明したが、本明細書で説明する本発明はまた、エウスタキオ管の拡大、頭蓋骨の骨折の修復、声門下狭窄の拡大などの気道の処置、並びに耳、鼻及び喉の他の処置にも有用となり得る。医療装置100は、一体型シャフトシステム102、及び灌注先端部106付近に高圧バルーン104を備える、副鼻腔のリモデリング及び灌注カテーテルである。シャフトシステム102は、隣接する二重の内腔配管(図1Aを参照)を含む。「隣接する二重の内腔配管」とは、二重の内腔配管は、内腔が互いに隣合っているが、互いから離間されているということを意図する。膨張内腔108は、膨張ポート150を通じてバルーンを水、造影剤、又は食塩水を用いて膨張させるのに使用され、灌注内腔110は、ガイドワイヤ又は副鼻腔照明システムの経路を可能にし、標的部位まで医療装置100が前進するのを促進し、更に灌注流体(水又は食塩水)の流れを可能にする。代替の実施形態では、第3の内腔である、ガイドエレメント内腔111、例えば膨張内腔108及び灌注内腔110(図1Bを参照)に隣接している内腔が提供されてもよい。灌注内腔110及びガイドエレメント内腔111は、装置の遠位シャフト部分118において、バルーン104の近位で単一の灌注内腔110に統合する。医療装置100は、前方を向く先端開口部114と半径方向を向く開口部112a、112b、及び112cとの両方を備える灌注先端部106を有し、灌注内腔110を通じて灌注送達を促進する。医療装置100は、診断及び治療目的で、副鼻腔口及び副鼻腔空洞部内の空間を拡張し、並びに標的の副鼻腔内部からの灌注する手段を提供することを意図する。医療装置100は、副鼻腔口及び副鼻腔空洞部内の空間の拡張前、拡張中、又は拡張後に、灌注内腔110を介して送達のために流体を送達することによって、灌注先端部106において先端開口部114並びに3つの半径方向を向く開口部112a、112b及び112cを通じて副鼻腔を灌注するように設計される。更に、灌注内腔110を通じて流体を送達する代わりに、真空を採用してもよく、並びに、培養物は、先端開口部114又は半径方向を向く開口部112a、112b及び112cを通じて吸引することによって得ることができる。「半径方向を向く開口部」によって、開口部を通じる流れが、先端開口部を通じる流れから90度であってもよいということが意図されるが、30度、45度又は60度であってもよく、あるいは0度〜90度の他の角度であってもよく、開口部は、楕円若しくはスロット形状などの円形又は非円形であってもよい。
【0030】
副鼻腔バルーン104は、非コンプライアンス型又はセミコンプライアンス型であるように設計される。非コンプライアンス型バルーンの直径は、膨張圧力で著しく変化せず、セミコンプライアンス型バルーンの直径は、標的部位の付近で「砂時計」すなわち「ドッグボーン」の程度で変化するのみである。バルーン自体は、円形、三角形、楕円形、又は正方形など任意の形状であってもよい。図1に示される実施形態では、バルーンは円形かつセミコンプライアンス型である。以下に詳述されるように、補強部材(この場合では、ハイポチューブ116)が、医療装置の近位端(近位シャフト部分122の遠位端において)に組み込まれ、副鼻腔ガイドカテーテルを通じた挿入時に剛性をもたらす。
【0031】
図1に示されるように、一部の実施形態では、直接可視化マーカ及び/又はX線撮影マーカが、一体型シャフトシステム102に沿って配置されてもよい。概して、「直接可視化マーカ」は、肉眼又は内視鏡の使用によって、使用時に見ることができるマーカを指し、一方、「X線撮影マーカ」は、X線不透過性材料を含み、手術中にX線透視検査などのX線撮影装置を使用して見ることができる。一実施形態では、遠位端において、第1遠位X線撮影マーカ120aが存在し、これはバルーン104の近位テーパ部140aが、バルーン104の有効長142の近位端と接触する位置と整列する近位縁を有する。第2の遠位X線撮影マーカ120bも存在し、これは遠位テーパ部140bがバルーン104の遠位端有効長142と接触する位置と整列する遠位縁を有する。遠位マーカ120a及び120bのこの外側縁にわたる距離は、バルーン104の有効長142を表す。遠位マーカ120a及び120bは、プラチナマーカバンドであってもよい。この実施形態では、遠位マーカは、装置搭載及び準備中に、医療装置100がガイド内部で確実に直線位置にあるようにするのに役立つ。追加のX線撮影マーカが、カテーテルのシャフトに沿って、及び/又は遠位先端部において含まれてもよい。
【0032】
直接可視化マーカは、一体型シャフトシステム102に沿って多くの位置において位置決めされてもよい。一実施形態は図1及び2に関して本明細書に説明されているが、他の変形例が代替実施形態において置き換えられてもよい。一実施形態において、シャフトシステム102は、黒、紺青色、濃い灰色などの暗色を有してもよく、マーカは、白、緑色、赤色などの明色を有してもよい。一部の実施形態では、マーカは、使用時にマーカを互いに見分けるのを容易にするために、異なる色及び/又は異なる幅を有してもよい。この色のコントラストは、血液の存在下で、暗い手術室において、及び/又は患者内部で内視鏡を使用するときに、マーカを見るのを容易にすることができる。
【0033】
一実施形態において、ある位置において、シャフトシステム102の遠位シャフト部分118上に配置された第1遠位シャフトマーカ128(又は、使用時に内視鏡を介して一般的に見られるので、「内視鏡マーカ」)であってもよく、これによってその遠位縁は、バルーン104の近位テーパ部140aがシャフトシステム102に接触する位置と整列する。伸ばされたバルーンネック134は、第1内視鏡マーカ128がシャフト上に配置され、バルーンネックの近位端をシャフトに固定するのに使用されたいずれかの接着剤結合から離れるのを可能にする。第1内視鏡マーカ128は、ユーザにバルーン104の終端位置を示し、並びに、処置中にバルーンがガイドを出たということを示す。一実施形態では、第1内視鏡マーカ128は約2mmの幅であってもよい。
【0034】
第2遠位シャフトマーカ130は、マーカの遠位縁がバルーン104の近位テーパ部140aがシャフトシステム102と接触する位置から、1cm±0.2cmであるように、シャフトシステム102上に配置される。このマーカは、シャフト位置が、バルーンの端部から1cm離れているということをユーザに示し、これは、バルーンが処置中にガイドから伸びたことを示す。一実施形態では、第2遠位シャフトマーカは約2mmの幅及び白色であってもよく、一方、第1マーカは約2mmであり、緑色である。当然、任意の数の異なる寸法及び色の組み合わせが別の方法として使用されてもよい。
【0035】
第3遠位シャフトマーカ132は、マーカの遠位縁が、第2遠位シャフトマーカ130の遠位縁から1cm±0.1cmであるように、シャフトシステム102上に配置される。図1に示されるように、第3遠位シャフトマーカは、第2遠位シャフトマーカ130と第3遠位シャフトマーカ132を互いから区別するための二重マーカである。第3遠位シャフトマーカ132は、バルーン104の近位端の端部から2cm離れたシャフト位置を示し、したがってバルーンが処置中にガイドから伸びた距離を示す。一実施形態では、第3遠位シャフトマーカ132を形成する2つのマーカは、それぞれ幅0.75mm及び白色であるが、代替の実施形態ではマーカ寸法及び色は変更されてもよい。第1遠位シャフトマーカ、第2遠位シャフトマーカ、及び第3遠位シャフトマーカの色、長さ及びマーカの数における差は、内視鏡下で可視である、バルーンの近位の相対位置を示す。ユーザである医師は、内視鏡を使用して、ガイドカテーテルから外に前進し、後退したカテーテルの長さを特定することができ、並びに/あるいは、副鼻腔口、他の副鼻腔開口部、又は耳、鼻若しくは喉の他の開口部など、患者の生体構造におけるバルーン104の位置を概算することができる。バルーン位置のこの概算は、バルーン104が、もはや内視鏡を介して見ることができないほど十分遠くに、バルーン104が生体構造の位置まで前進した際の状況において非常に有用である。バルーンの近位部分がもはや可視でないとき、例えば、3つの内視鏡マーカを使用して、ユーザは内視鏡で、カテーテルが前頭凹部内に前進した距離を測定することができる。当然ながら、代替の実施形態では、カテーテルシャフトに沿って異なる数、寸法、色、及び位置を有する遠位シャフトマーカが使用されてもよい。
【0036】
一部の実施形態では、1つ又は2つ以上の遠位シャフトマーカに加えて、1つ又は2つ以上の近位シャフトマーカが、シャフトシステム102の近位部分122に沿って配置されてもよい。概して、(これを通じて医療装置100は前進される)ガイドカテーテル(すなわち、図3のカテーテル200aを参照)に対する、医療装置100のバルーン104の位置を医師に示すために、かかる近位シャフトマーカは、内視鏡を使用せずに医師によって直接見られてもよい。遠位シャフトマーカと同様に、近位シャフトマーカは任意の好適な幅、色、数、位置などを有してもよい。一実施形態では、例えば図1に示されているように、2つの近位シャフトマーカ124、126は、暗色のシャフトシステム102と対照をなし、かつ暗い手術室で視感度を高めるために明色を有してもよい。より近位な近位マーカ124(又は「第1近位シャフトマーカ」)は、医療装置100の先端部がガイドカテーテル200の遠位端にあるということ、並びに、マーカ124がガイドカテーテルの近位端204内を通るとき、バルーン104がガイドカテーテルの遠位端202を出たということを示すことができる。より遠位な近位マーカ126(又は「第2近位シャフトマーカ」)は、マーカ126がガイドカテーテルの近位端204において配置されているとき、バルーン104はガイドカテーテルにおける湾曲部206に直近位にあるということをユーザに示すことができる。
【0037】
一実施形態では、近位バルーンテーパ部140aの近位端から、第1シャフトマーカ124の近位端までの長さが13.1cm±0.2cmであるように、第1近位シャフトマーカ124は、シャフトシステム102上に配置される。第1近位シャフトマーカ124の長さは、バルーンカテーテルの寸法によって変化してもよく、並びに、灌注先端部106の長さ、バルーン104の有効長若しくは作業長142、並びに2つのバルーンテーパ区分140a及び140bの長さを追加することによって決定されてもよい。また、第1近位シャフトマーカ124は白色であるのが好ましいが、灰色など他の明色が同様に使用されてもよい。
【0038】
第2近位シャフトマーカ126は、第1近位シャフトマーカ124から遠位に、シャフトシステム102上に配置される。第2近位シャフトマーカ126は、医療装置100の灌注先端部106が、第2近位シャフトマーカ126の遠位縁から11.4cm±0.2cmであるように位置決めされる。また、第2近位シャフトマーカ126は、3mm±2mmの長さを有する。第2シャフト近位マーカ126が白色であるのが好ましいが、灰色など他の明色が同様に使用されてもよい。
【0039】
医療装置100が、ガイドカテーテル200a内に挿入されるとき、副鼻腔ガイドカテーテル200aに対する灌注先端部106及び医療装置100のバルーン104の位置を決定するために、ユーザは第1近位シャフトマーカ124及び第2近位シャフトマーカ126を可視化してもよい。例えば、第2近位シャフトマーカ126は、ガイドカテーテルの近位開口部204と整列するとき、ユーザは、バルーン104がガイドカテーテルの湾曲部206に近位であるということが分かる。第2近位シャフトマーカ126の位置は、医療装置100が副鼻腔ガイドカテーテル200a内に正確に搭載されているということを視覚的に確認にするのに役立つ。第1近位シャフトマーカ124の遠位縁が、ガイドカテーテル200aの近位開口部204と整列するとき、ユーザは、医療装置100の灌注先端部106が、ガイドカテーテル200aを出始めるということが分かり、並びに、第1近位シャフトマーカの近位縁がガイドカテーテル200aの近位開口部204と整列するとき、ユーザは、バルーンが完全にガイドカテーテル200aの外にあるということが分かる。
【0040】
可視可能なマーカ124、126、128、130及び132は、シャフトシステム102の暗色(これは黒色であるのが好ましい)と対照をなすために、上記で示したように白などの明色であることが好ましい。これらの可視可能なマーカとシャフトとのハイコントラストは、微光環境においてマーカを見るのに役立つ。また、この高コントラストにより、ユーザが内視鏡を用いて直接マーカを見ること、及び副鼻腔洞に対してどこにバルーン104が配置されているかを知ることが可能になる。更にこの色のコントラストは、処置中に領域が血液及び/又は粘液で満ちているとき、マーカを見てバルーンの位置を知るのに有用である。当然ながら、任意の他の好適な対照をなす色の組み合わせが使用されてもよい。一実施形態では、例えばシャフトシステム102は明色であってもよく、マーカ124、126、128、130、及び132は暗色であってもよい。
【0041】
図3は、医療装置100と共に使用され得る一連の副鼻腔ガイドカテーテル200a〜200fを示す。これらのガイドカテーテル200a〜200fは実質的に剛性であり、それぞれは、0度(200a)、30度(200b)、90度(200d)、70度(200c)、又は110度(200e及び200f)の、予め設定された遠位の湾曲部を有する。異なる湾曲は、副鼻腔及び異なる副鼻腔口にアクセスするのに使用可能である。例えば、70度のガイドは典型的に、前頭洞口にアクセスするのに使用され、90度又は110度のガイドは典型的に上顎洞口などにアクセスするのに使用される。これらのガイドカテーテル200a〜200fはそれぞれ12.7cmの長さを有する。これらの副鼻腔ガイドカテーテルは、本明細書に参照として援用される米国特許出願第10/944,270号及び同第11/355,512号、並びに米国特許第7,654,997号及び同第7,803,150号に記載され、Acclarent,Inc.(Menlo Park,Calif)からRelieva(商標)副鼻腔ガイドとして市販されている。
【0042】
医療装置100は、バルーン挿入スタイレット300(図4を参照)及び灌注配管400(図5を参照)と共にパッケージ化される。スタイレット300は、丸い遠位先端部302、支持シャフト304、及び近位ループ306を含む。挿入スタイレット300は、副鼻腔ガイドカテーテル200a内への医療装置100の挿入を支援し、患者の生体構造内に医療装置100を前進させる前に、装置100から取り外される。灌注配管400は、標準的なルアーコネクタ402及び404を各端部上に組み込み、副鼻腔の灌注のために医療装置100の灌注ポート144に無菌注射器を取り付けるのに使用される。更に、図8に示されているように、医療装置820の挿入を助けるために、ユーザの母指又は指によって操作することができるリング800が提供される。
【0043】
以下の記載において、副鼻腔のガイドカテーテルは200aと見なされるが、図3に示されている任意のガイドカテーテル200b〜fが使用されてもよい。副鼻腔ガイドカテーテル200a内への医療装置100の挿入後、ガイドエレメント、例えば副鼻腔ガイドワイヤ500(すなわちAcclarent Inc(Menlo Park,CA)によって製造され、図6示されているRelieva Vigor(登録商標))又は副鼻腔照明システム600(すなわちAcclarent Inc(Menlo Park,CA)によって製造され、図7示されているRelieva Luma Sentry(商標)Sinus Illumination System)が、医療装置100の灌注ポート144を通じて、かつ副鼻腔ガイドカテーテル200aの遠位先端部まで挿入される。副鼻腔のアクセスは、鼻の生体構造において副鼻腔ガイドカテーテル200aを位置決めし、副鼻腔ガイドワイヤ500又は副鼻腔照明システム600を標的の副鼻腔内に前進させることによって達成される。いったん副鼻腔のアクセスが達成されると、医療装置100は、副鼻腔ガイドワイヤ500又は副鼻腔照明システム600を超えて標的空間内に前進される。バルーンカテーテル上の内視鏡マーカを使用して配置に役立てることができる。医療装置100は次いで、副鼻腔口を拡張するために膨張される。拡張に続いてバルーンが収縮される。ガイドワイヤ500又は副鼻腔照明システム600は鼻の生体構造から取り外される。標準的な注射器が灌注配管400に接続され、これは医療装置100の灌注ポート144に接続される。流体は、灌注先端部106を通じて、医療装置100の遠位端開口部114、並びに3つの半径方向を向く開口部112a、112b及び112cを介して副鼻腔まで手動で送達され、それぞれ側部ポートは0.066cm(0.026インチ)の直径を有する。完了時に、医療装置100は副鼻腔ガイドカテーテル200a内に後退され、生体構造から取り除かれる。医療装置100は、同じ患者において更なる副鼻腔拡張及び/又は灌注のために準備されてもよい。あるいは、吸引システム、例えば標準注射器又は真空ポンプなどの他の真空源が、いずれか直接及び配管システムを通じて灌注ポート144に接続されてもよく、標的副鼻腔は、その治療の前又は後のいずれかで吸引されてもよい。
【0044】
医療装置100の寸法は3.5mm×12mm、6mm×16mm又は7mm×24mmであってもよいが、5mm×16mm、5mm×24mm又は7mm×16mmを含むがこれに限定されない他のものも本発明の範囲内である。装置の遠位シャフト部分又は区分118は、0.094cm(0.037インチ)以上の内径を有し、装置の近位シャフト部分又は区分122は、0.107cm(0.042インチ)の内径を有する。第1内視鏡マーカ128の遠位縁138は、近位バルーンテーパ部140aの近位縁136から10mmに位置し、医療装置の先端開口部114から第1シャフトマーカ124の遠位端124aまでの長さは114mmであり、近位バルーンテーパ部140aの近位端136からシャフトメーカ124の近位端124aまでの長さは131mmである。3.5mmの医療装置の合計長さは、250mmであり、他の医療装置の合計長さは252mmである。医療装置用にバルーンが膨張した直径は以下のとおりである:3.5mm×12mmのものは3.5mm、6mm×16mmのものは6mm、並びに7mm×24mmのものは7mm。医療装置のバルーンが膨張した作業長は、以下のとおりである:3.5mm×12mmのものは12mm、6mm×16mmのものは16mm、並びに7mm×24mmのものは24mm。外側シャフトの最大直径は0.218cm(0.086インチ)以下である。バルーンカテーテルの膨張時間は、5秒以下であることが好ましい。灌注流量はおよそ100mL/分であり、50〜200mL/分、又は75〜125mL/分であってもよく、最大流量は250mL/分を有する。
【0045】
バルーン104は、膨張バルーンに関して当該技術分野において既知の任意の好適な材料から作製され、ナイロン(セミコンプライアンス型)及びポリエチレンテレフタレート(PET)(非コンプライアンス型)など、コンプライアンス型、セミコンプライアンス型又は非コンプライアンス型材料から構成されてもよい。具体的な実施形態では、バルーンは、ナイロンなどセミコンプライアンス型から構成される。非外傷性先端部分146もナイロンで作製され、約55D(多くの場合、約40D)未満のジュロ硬度を備える柔軟性である。灌注先端部の残部は、先端部分146よりも柔軟性が小さく(約55D超、しばしば約70Dのジュロ硬度を備える)、並びに、半径方向を向く開口部112a、112b及び112cを収容するために、既知の技術のバルーン先端部よりも長く、可撓性である。このように、医療装置100は、ガイドカテーテル200a内及び蛇行している副鼻腔の生体構造を通って、より容易に挿入される。非外傷性先端部分146は、20%の硫酸バリウムを伴なったナイロンで、長さがおよそ1mmのマーカを更に含んでもよく、又は蛍光透視化用のいずれか他の種類のX線不透過性マーカ、又は患者の生体構造の直接視覚化用の着色されたマーカを更に含んでもよい。図1Aに示されている具体的な実施形態では、医療装置100の外側シャフト148はpebaxから作製される。第1内部シャフト150(膨張内腔を含む)及び第2内側シャフト152(灌注内腔を含む)は、ナイロン及びpebaxから作製される。外側シャフト148を包囲するハイポチューブシャフト116は、ステンレス鋼304である。材料の組み合わせ(ナイロンバルーン及び隣接する二重内腔設計)は、ガイドカテーテル200a内への医療装置の挿入の容易さ、及びガイドカテーテル200aからの取り外し(少なくとも部分的に、ナイロンバルーンの、より小さな外形による)、並びに蛇行する副鼻腔の生体構造を通じたナビゲーションを提供する。ガイドカテーテル200a内への挿入及び蛇行する生体構造を通じたナビゲーションはまた、長く、柔軟で可撓性の非外傷性先端部によって向上される。
【0046】
医療装置100は、副鼻腔内深く、並びに副鼻腔空間内の他の領域の流体を灌注する、又は流体を吸引するように構成される。医療装置100は、上顎洞、蝶形骨洞、篩骨洞、及び前頭洞など、成人並びに小児の副鼻腔内に送達されるように適切な寸法にされている。更に、本発明の装置は、耳管の治療又は中耳にアクセスするための切開による治療に有用であり得る。医療装置100は、また副鼻腔内又は副鼻腔空間における他の領域内に診断物質又は治療物質を送達するのに使用されてもよい。かかる診断物質又は治療物質の例には、これらに限定されないが、造影剤、薬剤として許容される塩又は抗菌剤の剤形(例えば、抗生物質、抗ウィルス剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤など)、コルチコステロイド又は他の抗炎症剤(例えば、NSAID)、鬱血除去剤(例えば、血管収縮剤)、粘液希釈化剤(例えば、去痰剤又は粘液溶解剤)、血管収縮を伴う、又は伴わない麻酔剤(例えばエピネフリンを使用する又は使用しないキシロカイン、エピネフリンを使用する又は使用しないテトラカイン)、鎮痛剤、アレルギー反応の変化を予防する薬剤(例えば、抗ヒスタミン剤、サイトカイン阻害物質、ロイコトリエン阻害物質、IgE阻害物質、免疫賦活剤)、アレルゲン、又は組織による粘液の分泌を引き起こす別の物質、抗増殖剤、出血を止めるための止血剤、細胞毒性剤(例えば、アルコール)、並びに、タンパク質分子、幹細胞、遺伝子、又は遺伝子治療調整物といった生物学的薬剤が挙げられる。
【0047】
ここで図1を参照すると、一実施形態において、医療装置は、前方を向く先端開口部114並びに、灌注端部106上で120度離間される半径方向を向く開口部112a、112b、及び112cを含んでもよく、前方を向く先端開口部の内径は0.094cm(0.037インチ)であり、側部開口部のそれぞれは、0.066cm(0.026インチ)の直径を有し、非外傷性先端部の近位の灌注内腔の内径は約0.107cm(0.042インチ)である。別の実施形態は、螺旋状パターンなど、任意の好適なパターンで分布している、任意の好適な選択的な数の側部開口部を含んでもよい。一実施形態では、第1側部開口部は、医療装置100の遠位端から約2.5mmにおいて配置されてもよく、第2側部開口部は、医療装置100の遠位端から約3.5mmにおいて配置されてもよく、第3側部開口部は、医療装置100の遠位端から約4.5mmにおいて配置されてもよく、これらの測定のそれぞれは遠位端から側部開口部それぞれのおよその中心までである。医療装置100の遠位端から、バルーン104の遠位端までの灌注先端部の長さは、およそ7mmである。側部開口部はそれぞれが、様々な別の実施形態において任意の好適な直径を有してもよい。例えば、一実施形態では、非外傷性先端部に近位の灌注先端部の灌注内腔直径が、前方を向く先端開口部直径より大きい場合に限り、各側部開口部は約0.051cm〜約0.127cmの、又は約0.076cm〜約0.102cmの、及び又は約0.084cm(約0.020インチ及び約0.050インチ及び/又は約0.030インチ〜約0.040インチ、及び又は約0.033インチ)の直径を有してもよい。
【0048】
代替の実施形態では、医療装置100は、装置の遠位端からの灌注が存在しないが、半径方向を向く開口部からのみ灌注が存在するような一体型のガイドワイヤを含んでもよい。
【0049】
本発明は、本発明の特定の実施例又は実施形態に関して上記に述べられているが、本発明の目的とする要旨及び範囲から逸脱することなく、これらの実施例及び実施形態に様々な追加、削除、修正及び変更を行うことが可能である。例えば、ある実施形態又は実施例の任意の要素若しくは属性は、特に断らないかぎり、あるいはそうすることによって当該実施形態又は実施例がその目的とする使用に適さないものとならないかぎりにおいて、別の実施形態又は実施例に取り入れるか、又は別の実施形態又は実施例と共に使用することが可能である。また、方法又はプロセスの各工程が特定の順序で述べられているか又は列記されている場合、こうした各工程の順序は、特に断らないかぎり、あるいはそうすることによって当該方法又はプロセスがその目的において機能しないものとならないかぎりにおいて、変更することが可能である。すべての妥当な追加、削除、改変及び変更は、述べられた例及び実施形態の均等物とみなし、以下の「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) 副鼻腔開口部の治療のための医療装置であって、前記医療装置は、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端との間に、膨張内腔及び灌注内腔を有するシャフトシステムであって、近位シャフト区分及び遠位シャフト区分を有する、シャフトシステムと、
前記遠位シャフト区分上にあり、前記遠位端に近位のインフレータブルバルーンと、
前記遠位シャフト区分上にあり、前記インフレータブルバルーンに遠位の灌注先端部であって、先端開口部及び1つ又は2つ以上の半径方向を向く開口部を含む、灌注先端部と、を含む、医療装置。
(2) 前記1つ又は2つ以上の半径方向を向く開口部が、3つの開口部を含む、実施態様1に記載の医療装置。
(3) 前記半径方向を向く開口部が、0.051cm〜0.127cm(0.020インチ〜0.050インチ)の直径を有する、実施態様2に記載の医療装置。
(4) 前記半径方向を向く開口部が、0.066cm(0.026インチ)の直径を有する、実施態様3に記載の医療装置。
(5) 前記半径方向を向く開口部が、120度離間される、実施態様2に記載の医療装置。
【0051】
(6) 前記膨張内腔及び前記灌注内腔が、隣接する内腔である、実施態様1に記載の医療装置。
(7) 前記灌注先端部が、非外傷性先端部分を含む、実施態様1に記載の医療装置。
(8) ガイドエレメント内腔を更に含む、実施態様1に記載の医療装置。
(9) 前記灌注先端部が、前記非外傷性先端部の近位の灌注先端部内腔を有し、前記灌注先端部内腔が、灌注先端部内腔直径を有し、
前記先端開口部が、先端開口部直径を有し、
前記灌注先端部内腔直径が、前記先端開口部直径より大きい、実施態様7に記載の医療装置。
(10) 前記先端開口部直径が、0.094cm(0.037インチ)であり、前記灌注内腔直径が、0.107cm(0.042インチ)である、実施態様9に記載の医療装置。
【0052】
(11) 前記近位シャフト区分が、補強部材を更に含む、実施態様1に記載の医療装置。
(12) 前記補強部材がハイポチューブを含む、実施態様11に記載の医療装置。
(13) 副鼻腔にアクセスし、副鼻腔を拡張し、かつ副鼻腔を灌注するためのシステムであって、前記システムは、
副鼻腔ガイドカテーテルと、
ガイドエレメントと、
膨張内腔、灌注内腔、インフレータブルバルーン、及び灌注先端部を含む医療装置と、を含み、
前記膨張内腔及び前記灌注内腔は、隣接する内腔であり、前記灌注先端部は、少なくとも1つの半径方向を向く開口部を含む、システム。
(14) 前記医療装置が、1つ又は2つ以上の直接可視化マーカを更に含む、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記医療装置が、1つ又は2つ以上のX線撮影マーカを更に含む、実施態様13に記載のシステム。
【0053】
(16) 前記少なくとも半径方向を向く開口部が、3つの開口部を含む、実施態様13に記載のシステム。
(17) 前記半径方向を向く開口部が、0.051cm〜0.127cm(0.020インチ〜0.050インチ)の直径を有する、実施態様16に記載のシステム。
(18) 前記半径方向を向く開口部が、0.066cm(0.026インチ)の直径を有する、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記半径方向を向く開口部が、120度離間される、実施態様16に記載のシステム。
(20) 前記ガイドエレメントが、ガイドワイヤ又は副鼻腔照明システムからなる群から選択される、実施態様13に記載のシステム。
【0054】
(21) 前記医療装置が、ガイドエレメント内腔を更に含む、実施態様13に記載のシステム。
(22) 前記医療装置の灌注先端部が、非外傷性先端部の近位の灌注先端部内腔を有し、前記灌注先端部内腔が、灌注先端部内腔直径を有し、
前記先端開口部が、先端開口部直径を有し、
前記灌注先端部内腔直径が、前記先端開口部直径より大きい、実施態様13に記載のシステム。
(23) 前記先端開口部直径が、0.094cm(0.037インチ)であり、前記灌注先端部内腔直径が、0.107cm(0.042インチ)である、実施態様22に記載のシステム。
(24) 前記医療装置の近位シャフト区分が、補強部材を更に含む、実施態様13に記載のシステム。
(25) 前記補強部材がハイポチューブを含む、実施態様24に記載のシステム。
【0055】
(26) 副鼻腔開口部を治療するためのパッケージ化されたキットであって、
膨張内腔、灌注内腔、インフレータブルバルーン、及び灌注先端部を含む医療装置であって、前記膨張内腔及び前記灌注内腔は隣接する内腔であり、前記灌注先端部は、少なくとも1つの半径方向を向く開口部を含む、医療装置と、
前記医療装置を副鼻腔ガイドカテーテル内に挿入するための、バルーン挿入スタイレットと、
前記医療装置を灌注流体源に接続するための灌注配管と、を含む、パッケージ化されたキット。
(27) 副鼻腔開口部を治療するためのパッケージ化されたキットであって、前記キットは、
膨張内腔、灌注内腔、インフレータブルバルーン、及び灌注先端部を含む医療装置であって、前記膨張内腔及び前記灌注内腔は隣接する内腔であり、前記灌注先端部は、少なくとも1つの半径方向を向く開口部を含む、医療装置と、
前記医療装置を副鼻腔ガイドカテーテル内に挿入するための、バルーン挿入スタイレットと、
前記医療装置を真空源に接続するための吸引システムと、を含む、パッケージ化されたキット。
(28) 鼻の生体構造における標的空間を治療する方法であって、
膨張内腔、灌注内腔、インフレータブルバルーン、及び灌注先端部を含む医療装置を提供することであって、前記膨張内腔及び前記灌注内腔は隣接する内腔であり、前記灌注先端部は、先端開口部及び少なくとも1つの半径方向を向く開口部を含む、ことと、
前記医療装置を副鼻腔ガイドカテーテル内に挿入することと、
前記灌注内腔を通じてガイドエレメントを前記医療装置内に挿入することと、
前記ガイドカテーテルを前記鼻の生体構造において位置決めすることと、
前記ガイドエレメントを、前記鼻の生体構造の前記標的空間内に前進させることと、
前記ガイドエレメントにわたって前記医療装置を前記鼻の生体構造の前記標的空間内に前進させることと、
前記バルーンを膨張させて副鼻腔開口部を拡張することと、
前記バルーンを収縮させることと、
前記ガイドエレメントを前記医療装置から回収することと、
前記医療装置に灌注配管を接続することと、
前記先端開口部及び前記少なくとも1つの半径方向を向く開口部を通じて流体を前記標的空間に送達することと、を含む、方法。
(29) 前記流体を送達することが、50mL/分〜200mL/分の流量で生じる、実施態様28に記載の方法。
(30) 前記流量が、75mL/分〜125mL/分である、実施態様29に記載の方法。
【0056】
(31) 前記副鼻腔開口部が、前頭洞開口部、上顎洞開口部、篩骨洞開口部、及び蝶形骨洞開口部からなる群から選択される、実施態様28に記載の方法。
(32) 前記流体が、水、食塩水、造影剤、抗菌剤、抗炎症剤、鬱血除去剤、粘液希釈化剤、麻酔剤、鎮痛薬、抗アレルギー剤、アレルゲン、抗増殖剤、止血剤、細胞毒性剤、及び生物学的薬剤、又は上記のいずれかの組合せからなる群から選択される、実施態様28に記載の方法。
図1
図1A
図1B
図2
図3
図4-5】
図6
図7
図8