特許第6352207号(P6352207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352207
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】注出キャップ及びそれを備える容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20180625BHJP
   B65D 49/02 20060101ALI20180625BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B65D47/20 111
   B65D49/02
   B65D1/02 111
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-38176(P2015-38176)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159915(P2016-159915A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一男
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−136712(JP,A)
【文献】 特開2006−321542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 1/02
B65D 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部を取り囲み、該口部に係合保持される筒壁を有し、該筒壁に連結する頂壁に、該容器本体に収容される内容物の取出口が形成されたベースと、該口部の開口を覆うとともに貫通孔を備える天壁を有し、該ベースの内側で該口部に抜け止め保持される中栓と、該頂壁と該天壁との間で該中栓に抜け止め保持され、該貫通孔を開閉する逆止弁と、を備え、
前記中栓は、前記口部の外周面に設けた第1被係合部に係合する第1係合部と、前記筒壁の内周面に設けた第2被係合部に係合する第2係合部とを有し、
該第1係合部の該第1被係合部に対する係合強度が、該第2係合部の該第2被係合部に対する係合強度よりも大きいことを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
前記第1係合部が、前記天壁の外縁部から垂下する爪部であり、
前記第1被係合部が、前記口部の外周面に設けられた環状凹部である、請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の注出キャップを前記容器本体に装着した容器であって、該容器本体は、外気導入孔を有する外層体と、該外層体の内側に設けられ、収容した内容物の注出に伴って該外気導入孔から該外層体との間に空気を取り込んで減容変形する内層体と、を備える容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に収容された内容物を注出する注出キャップ、及びこの注出キャップを容器本体に装着した容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器本体に装着して内容物を注出する注出キャップにおいては、内部に逆止弁を組み込んだものが知られている(例えば特許文献1参照)。このような注出キャップによれば、容器本体内への外気導入を阻止できることから、内容物と空気との接触を抑制して内容物の鮮度を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−31921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのような注出キャップは、容器本体の口部に対してねじ付け等により着脱可能に取り付けられており、容器本体から取り外すことができるため、使い切り用の内容物を入れた場合であっても、その使用後に内容物の再充填が行われるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、容器本体に対して着脱可能に取り付けられた注出キャップを備える容器において、内容物の再充填を防止することができる、新たな注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の注出キャップは、容器本体の口部を取り囲み、該口部に係合保持される筒壁を有し、該筒壁に連結する頂壁に、該容器本体に収容される内容物の取出口が形成されたベースと、該口部の開口を覆うとともに貫通孔を備える天壁を有し、該ベースの内側で該口部に抜け止め保持される中栓と、該頂壁と該天壁との間で該中栓に抜け止め保持され、該貫通孔を開閉する逆止弁と、を備え、
前記中栓は、前記口部の外周面に設けた第1被係合部に係合する第1係合部と、前記筒壁の内周面に設けた第2被係合部に係合する第2係合部とを有し、
該第1係合部の該第1被係合部に対する係合強度が、該第2係合部の該第2被係合部に対する係合強度よりも大きいことを特徴とするものである。
【0007】
なお、本発明の注出キャップにあっては、前記第1係合部が、前記天壁の外縁部から垂下する爪部であり、
前記第1被係合部が、前記口部の外周面に設けられた環状凹部であることが好ましい。
【0008】
また、このような注出キャップを容器本体に装着した容器にあっては、該容器本体は、外気導入孔を有する外層体と、該外層体の内側に設けられ、収容した内容物の注出に伴って該外気導入孔から該外層体との間に空気を取り込んで減容変形する内層体と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器本体に取り付けられた注出キャップを備える容器において、内容物の再充填を防止することができる、新たな注出キャップを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従う注出キャップの一実施形態を容器本体に装着した状態で示す側面視の断面図である。
図2図1に示す注出キャップにおいて、容器本体からベースを螺脱した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。図1において、符号1は、本発明に従う注出キャップの一実施形態を示す。本実施形態の注出キャップ1は、ベース2と、中栓3と、逆止弁4と、蓋体5とを備えている。
【0012】
ベース2は、円筒状をなし、後述する容器本体6の口部7aを取り囲む筒壁2aを備えている。筒壁2aの内周面には、口部7aに設けられた雄ねじ部7bに係合する雌ねじ部2bが設けられていて、ベース2は、ねじ係合により口部7aに対して係合保持される。
【0013】
筒壁2aの上部には、頂壁2cを一体に連結している。頂壁2cの中央部には、上下方向に貫通する孔(内容物の取出口)2dが設けられ、この取出口2dを取り囲んで注出筒2eが設けられている。注出筒2eの頂部は径方向外側に拡径してリップを形成している。また頂壁2cの外周部には、孔(通気口)2fが設けられている。また頂壁2cの下面には、下方に向かって突出する環状のシール筒部2gを設けている。
【0014】
ベース2の内側には中栓3が配置される。中栓3は、容器本体6の口部7aの開口を覆う天壁3aを有し、天壁3aの中央部には、貫通孔3bが設けられている。貫通孔3bの径方向外側には、上方に向けて開放させた円環状になる凹部3cを設けている。
【0015】
中栓3は、天壁3aの外縁部から立設する円筒状の環状壁3dと、天壁3aの外縁部から垂下する第1係合部としての爪部3eと、を有する。爪部3eは、軸線方向に延びる板状の突片3fと、突片3fにおける径方向内側の面から突出する突起部3gとで構成される。爪部3eは、口部7aの上端部の外周面に設けられた第1被係合部としての環状凹部7cに突起部3gが入り込むことでアンダーカット係合する。これにより、中栓3は、口部7aに対して抜け止め保持される。本実施形態において爪部3eは、周方向に間隔をあけて複数設けられており、隣接する爪部3eの相互間には間欠部3hが形成されている。また、本実施形態では、爪部3eの上方に、空気の通路となる開口部3mが形成されている。また、爪部3eは所謂喰い切り形状であり、開口部3mは、中栓3を射出成形する際に喰い切り構造の金型が入り込むための空間となる。また、図1に示すように爪部3eにおける突起部3gの下部には、下方に向けて径方向外側に傾斜する傾斜面3iを設けてい
る。なお、爪部3eの形状及び数は特に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0016】
環状壁3dの上端部の外周面には、径方向外側に向けて突出する第2係合部としてのフランジ3jを有する。フランジ3jは、筒壁2aの内周面に設けた第2被係合部としての環状凸部2hに対して係合する。ここで、爪部3eの環状凹部7cに対する係合強度は、フランジ3jの環状凸部2hに対する係合強度よりも大きくなるよう設定されている。また、天壁3aには、当該天壁3aから垂下し、口部7aの内周面に当接する環状の内筒壁3kが設けられており、当該内筒壁3kと爪部3eで口部7aの上端部を挟み込むようにして、さらに係合強度を高めている。なお、フランジ3j及び環状凸部2hの形状は特に限定されず、周方向に間隔を開けて設けられた複数の突出部としてもよい。
【0017】
なお、中栓3の構成は図示例の形状に限定されるものではなく、例えば、所謂サックバック機構を設けることも可能である。この場合には、天壁3aに、上下を貫通させた筒状壁を設けるとともに、その内側に、例えば球状等の移動弁体を筒状壁の軸線方向に移動可能、且つ、抜けだし不能に配置する。これにより、倒立姿勢で液体を注出した後、容器を正立姿勢に戻すことで、移動弁体が注出筒2e側から容器本体6側に移動し、これに伴って注出筒2e内の内容物を筒状壁側に引き込むことができ(サックバック)、注出筒2eからの液だれを防止することができる。
【0018】
頂壁2cと天壁3aとの間には、貫通孔3bを開閉する逆止弁4が設けられている。逆止弁4は、円環状になる基部4aを有し、基部4aの内側に設けた単数或いは複数の弾性片4bを介して円板状の弁体4cを一体に設けている。本実施形態の逆止弁4は、3つの弾性片4bによって弁体4cを保持する、所謂3点弁の形態をなすものである。なお3点弁の他、1点弁、2点弁やボール弁等としてもよく、特に形状は限定されない。
【0019】
図1に示すように、基部4aの下端部が凹部3cに嵌まり込むことにより、逆止弁4は中栓3に抜け止め保持される。また、基部4aの上端部はシール筒部2gの径方向外側に配置される(外嵌される)ことで位置決めされている。またこの状態において、取出口2dと通気口2fとは、基部4aによって遮断されている。そして貫通孔3bは、これを覆う弁体4cが天壁3aに着座することで閉鎖される。基部4aの外周面には、薄肉環状の外側弁体4dが設けられている。外側弁体4dは、通常、頂壁2cの下面に着座して通気口2fを閉鎖している。
【0020】
ベース2の上方には、蓋体5を設けている。蓋体5は、板状の上壁5aと、上壁5aに一体に連結するとともに筒壁2aに連なる外周壁5bとを備えている。また外周壁5bには、筒壁2aに一体に連結するヒンジ5cを設けている。ヒンジ5cに対向する位置には、径方向外側に突出する指掛け部5dを設けている。また上壁5aの下面には、注出筒2eに入り込む円筒状(円柱状でもよい)のシール部5eを設けている。
【0021】
このような構成になる注出キャップ1は、例えば図1に示す容器本体6に装着することができる。本実施形態の容器本体6は、外層体7と内層体8によって構成された二重容器(積層剥離容器)である。
【0022】
外層体7は、円筒状の口部7aに、図示を省略する胴部及び底部を順に連結したものであり、復元自在な可撓性を有している。口部7aには、外気導入孔7dを設けていて、更に、外気導入孔7dを設けた外周面には、上下方向に雄ねじ部7bを切り欠く縦溝7eを設けている。内層体8は、薄肉の減容変形可能な袋状に形成されていて、その内側に内容物を充填可能とする充填空間Sを備えている。
【0023】
以下に、注出キャップ1を容器本体6に装着する方法について説明する。注出キャップ1を容器本体6に装着する場合には、予め、ベース2に対して中栓3及び逆止弁4を組み込む。ベース2に対する中栓3及び逆止弁4の組み込みは、先に中栓3の凹部3cに対して逆止弁4の基部4aを嵌め込み、これをベース2の下方から挿入し、中栓3のフランジ3jと環状凸部2hが係合するまで押し込むことで、中栓3がベース2に対して抜け止め保持される。この時、逆止弁4は、基部4aの上端部がシール筒部2gの径方向外側に配置されて位置決めされる。その後、口部7aに対してベース2を螺着方向に回転させていくことで、注出キャップ1を容器本体6に装着することができる。ベース2が口部7aに螺着されると、中栓3の爪部3eは環状凹部7cにアンダーカット係合する。この過程で、爪部3eの傾斜面3iは口部7aの上端に当接して、中栓3を口部7aに対して適切な
位置に誘導する。これにより、口部7aに対する中栓3の嵌め込みを容易にしている。
【0024】
充填空間Sの内容物を注出するにあたっては、蓋体5を開いて外層体7の胴部を押圧する。これによって充填空間Sが加圧され、天壁3aに着座していた弁体4cが天壁3aから離反し、充填空間S内の内容物は、貫通孔3b、弁体4cと天壁3aとの隙間、弾性片4bと弁体4cとの隙間を通り、取出口2dを経て注出筒2eから注出される。
【0025】
内容物を注出した後は、外層体7への押圧を解除する。これによって充填空間S内の圧力が下がり、弁体4cが貫通孔3bを閉鎖するので、充填空間S内への外気導入が有効に防止できる。また、外層体7は、それ自身の復元力により元の形状に戻ろうとするため、外層体7と内層体8との相互間は負圧状態となり、これによって、外側弁体4dが頂壁2cから離反して、通気口2fから開口部3m、縦溝7eを経て、外気導入孔7dより外層体7と内層体8との間に空気が導入され、内層体8を減容させたまま外層体7が復元する。
【0026】
ここで、図1に示す装着状態から、注出キャップ1を取り外そうとしてベース2を口部7aから螺脱させた際には、フランジ3jの環状凸部2hに対する係合強度が爪部3eの環状凹部7cに対する係合強度よりも小さいためフランジ3jと環状凸部2hの間の係合が解除される。これにより、図2に示すように、ベース2が取り外された後も中栓3及び逆止弁4は爪部3eによって抜け止め保持されて容器本体6に留まり、口部7aの開口は閉塞された状態で維持される。
【0027】
以上のように、本実施形態の注出キャップ1にあっては、注出キャップ1を取り外そうとしてベース2を容器本体6から螺脱した場合でも、中栓3及び逆止弁4が口部7aの開口を塞いだ状態で容器本体6に抜け止め保持されるため、内容物の再充填が行われることを防止することができる。
【0028】
また、本実施形態の注出キャップ1にあっては、予めベース2に対して中栓3及び逆止弁4を組み込むことができるとともに、注出キャップ1を容器本体6へ螺着するだけで中栓3を口部7aに組み付けることができるので、簡易なセット作業で、再充填防止の効果を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態の注出キャップ1にあっては、爪部3eを、喰い切り構造の金型により成形される形状としたことにより、金型にスライド機構等を設ける必要がないので、金型構造を簡略化することができる。
【0030】
また、本実施形態の容器にあっては、容器本体6として、外気導入孔7dを有する外層体7と、外層体7の内側に設けられる内層体8とからなるものを採用することで、内容物と外気との接触がより確実に防止できる。
【0031】
本発明に従う注出キャップ及び容器は、本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。例えば、第1係合部及び第1被係合部、並びに、第2係合部及び第2被係合部の形状、数、位置等は上述した実施形態に限定されず、係合して中栓を抜け止め保持する種々の機構を適用することができる。また、外層体7に設けた外気導入孔7dは、口部7aに設ける場合に限られず、胴部や底部に設けてもよく、この場合には、外側弁体4dの構成は不要となる。また、外側弁体4dを設ける代わりに、通気口2fを細く設定して、外層体7を押圧した際には空気が外部に逃げ難く内層体8を減容変形させることができるとともに、外層体7への押圧を解除して外層体7が復元する際には空気を導入可能となるよう通気口2fの大きさを調節することも可能である。また、上記実施形態では、ベース2が容器本体6に対してねじ係合する構成としたが、これに限らず、例えばベース2が容器本体6に対して打栓によりアンダーカット係合する構成としても良い。また、本発明の注出キャップを装着する容器本体は、外層体と内層体を備えた二重容器に限定されず、内容物の注出に伴い減容変形可能な単層構造の容器とすることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 注出キャップ
2 ベース
2a 筒壁
2b 雌ねじ部
2c 頂壁
2d 孔(内容物の取出口)
2e 注出筒
2f 孔(通気口)
2g シール筒部
2h 環状凸部(第2被係合部)
3 中栓
3a 天壁
3b 貫通孔
3c 凹部
3d 環状壁
3e 爪部(第1係合部)
3f 突片
3g 突起部
3h 間欠部
3i 傾斜面
3j フランジ(第2係合部)
3k 内筒壁
3m 開口部
4 逆止弁
4a 基部
4b 弾性片
4c 弁体
4d 外側弁体
5 蓋体
5a 上壁
5b 外周壁
5c ヒンジ
5d 指掛け部
5e シール部
6 容器本体
7 外層体
7a 口部
7b 雄ねじ部
7c 環状凹部(第1被係合部)
7d 外気導入孔
7e 縦溝
8 内層体
S 充填空間
図1
図2