特許第6352223号(P6352223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6352223-ペロブスカイト型太陽電池の製造方法 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352223
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ペロブスカイト型太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   H01L31/04 112Z
   H01L31/04 130
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-134570(P2015-134570)
(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公開番号】特開2017-17252(P2017-17252A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年6月12日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】593204292
【氏名又は名称】株式会社昭和
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 暹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 整
(72)【発明者】
【氏名】高安 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】小野田 金児
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/103815(WO,A1)
【文献】 特開2004−319873(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/064774(WO,A2)
【文献】 特開2014−026903(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139310(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/165830(WO,A2)
【文献】 国際公開第2014/045021(WO,A1)
【文献】 特開2016−139805(JP,A)
【文献】 特開2015−056430(JP,A)
【文献】 特開2004−071682(JP,A)
【文献】 J. TROUGHTON et al.,Highly efficient, flexible, indium-free perovskite solar cells employing metallic substrates,JOURNAL OF MATERIALS CHEMISTRY A,2015年 5月 7日,Vol. 3,pp. 9141-9145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H01G 9/20
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極、正孔ブロック層、ペロブスカイト層、正孔輸送層及び正極が順に形成されているペロブスカイト型太陽電池の製造方法であって、
当該ペロブスカイト型太陽電池は前記正極側から光照射がなされることを特徴とし、
前記負極が、金属チタン、チタン合金、表面処理した金属チタン及び表面処理したチタン合金からなる群から選ばれる少なくとも一種のチタン材料で構成されており、
(1)負極のチタン材料を、チタンに対してエッチング作用を有しない電解液中で、10〜50Vの電圧で、陽極酸化処理の表面処理を行い、更に四塩化チタン水溶液を用いて表面処理することで、
(2)チタンの酸化皮膜の正孔ブロック層を形成すること、
(3)ペロブスカイト層を形成すること、
(4)正孔輸送層を形成すること、及び
(5)正極を成膜することを含む
ペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項2】
(6)前記正孔ブロック層とペロブスカイト層との間に、メソポーラス金属酸化物層を形成することを含む、
請求項1に記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記ペロブスカイト型太陽電池が、負極、正孔ブロック層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、正極及び反射防止膜が順に形成されているペロブスカイト型太陽電池であり、
(7)反射防止膜を成膜することを含む、
請求項1又は2に記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
(8)集光装置を正極側に配置することを含む、
請求項1〜3のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項5】
(9)蓄電装置を配置することを含む、
請求項1〜4のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記メソポーラス金属酸化物層の厚さが5〜5,000 nmであり、該メソポーラス金属酸化物層が酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化ニオブからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されている、請求項2に記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記ペロブスカイト層の厚さが5〜10,000 nmであり、該ペロブスカイト層がRNH3PbX3、R(NH2)2PbX3、RNH3SnX3及びR(NH2)2SnX3(Rはアルキル基であり、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである)からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されている、請求項1〜のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記RNH3PbX3が、CH3NH3PbI3である、請求項に記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記RNH3PbX3が、CH3NH3PbI3-nCln(nは0から3である)である、請求項に記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記正孔輸送層の厚さが1〜5,000 nmであり、該正孔輸送層がp型半導体で構成されている、請求項1〜のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記正孔輸送層が、spiro-OMeTAD誘導体、酸化モリブデン、酸化バナジウム、ヨウ化銅、チオシアン酸銅、ポリチオフェン及びポリトリフェニルアミンからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されている、請求項1〜10のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記正孔輸送層が、酸素、リチウム化合物、コバルト化合物、バナジウム化合物及びモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を用いてドープされることで調製された正孔輸送層である、請求項1〜11のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記正極が、金、銀、アルミニウム、錫ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化錫、酸化錫、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、アルミドープ亜鉛、PEDOT:PSS、グラフェン、ポリアニリン及びカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されており、該正極が、薄膜形状、ナノワイヤー形状又はグリッド形状である、請求項1〜12のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記反射防止膜が、酸化モリブデン、フッ化マグネシウム及びフッ化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることを特徴とする、請求項3に記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【請求項15】
前記チタンに対してエッチング作用を有しない電解液が、無機酸、有機酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する電解液である、請求項1〜14のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属チタン材料を使用し、光電変換層として有機無機ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子の製造方法及びその製造方法にて作製したペロブスカイト型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、単結晶型シリコン太陽電池、多結晶型シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、非シリコン系の化合物半導体を用いた太陽電池等に広汎に使用されている。しかしながら、これらの太陽電池は、高真空下で製造することが必要であり、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0003】
これらの太陽電池を置き換える次世代太陽電池として、低コストで製造可能な有機系太陽電池が期待されている。この有機系太陽電池の一つとして、色素増感太陽電池が提案されている。色素増感太陽電池は、(i)導電性基板上、二酸化チタンのナノ粒子からなる層が形成されており、これに増感色素を吸着させた光電極と、(ii)導電性基板上に、白金等の還元性層が形成された対極とを互いに対向配置し、(iii)それら基板間に電解質溶液を注入し、この電解液を封止した構造である。色素増感太陽電池は製造プロセスが簡単であり、低コストにて製造できる。しかしながら、従来の色素増感太陽電池では、電解液として有機溶媒等の液体を使用するので、耐久性を向上させることが求められている。また、色素増感太陽電池では、シリコン太陽電池等と比べて、変換効率が低いことも改善が求められている。
【0004】
上記問題点を解決するために、特許文献1においては、透明導電膜をコーティングしたガラス板やプラスチックス材を負極基板として用い、増感剤として有機、無機ペロブスカイト結晶を用いた新たな太陽電池が提案されている。これをペロブスカイト型太陽電池という。ペロブスカイト型太陽電池は、色素増感太陽電池に比べて変換効率が高いこと、シリコン太陽電池に比べて可視光の利用効率が高いこと、薄膜形状の太陽電池でありフレキシブル化が可能なこと、作製コストが低いこと等の利点あり、注目されている。しかしながら、従来のペロブスカイト型太陽電池では、透明導電膜の電気抵抗が大きいために、大面積化すると光電変換効率の低下を招くことについて、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-72327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、色素増感太陽電池で懸念されている増感色素が光劣化すること、電解液の揮散すること、漏洩による耐久性が低いこと、シリコン系太陽電池及び化合物半導体系太陽電池で懸念されている製造コストが高いこと等の課題を解決することを目的とする。
【0007】
本発明は、負極基板に金属チタンを使用し、光電変換層に有機無機ペロブスカイト化合物を用いる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討をした処、特定の構造を備えるペロブスカイト型太陽電池が上記目的を達成できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記のペロブスカイト型太陽電池である。
【0010】
項1.
負極、正孔ブロック層、ペロブスカイト層、正孔輸送層及び正極が順に形成されているペロブスカイト型太陽電池であって、
前記負極が、金属チタン、チタン合金、表面処理した金属チタン及び表面処理したチタン合金からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されており、
前記正極側から光照射がなされることを特徴とする、ペロブスカイト型太陽電池。
【0011】
項2.
前記正孔ブロック層とペロブスカイト層との間に、メソポーラス金属酸化物層が形成されていることを特徴とする、前記項1に記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0012】
項3.
前記正孔ブロック層の厚さが1〜500nmであり、該正孔ブロック層がn型半導体、電子輸送性導電性高分子及び電子輸送性無機塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることを特徴とする、前記項1又は2に記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0013】
項4.
前記正孔ブロック層が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸セシウム、フラーレン誘導体、グラフェン誘導体及びペリレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることを特徴とする、前記項1〜3のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0014】
項5.
前記酸化チタンが、金属チタン又はチタン合金を表面処理することで調製された酸化チタンであることを特徴とする、前記項4に記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0015】
項6.
前記表面処理が、金属チタン又はチタン合金を、大気酸化処理及び陽極酸化処理からなる群から選ばれる少なくとも一種の表面処理であることを特徴とする、前記項5に記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0016】
項7.
前記酸化チタンが、酸化チタン前駆体であるチタニウムアルコキシド化合物を加水分解処理及び加熱処理することで調製された酸化チタンであることを特徴とする、前記項4〜6のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0017】
項8.
前記酸化チタンが、更に四塩化チタン水溶液を用いて表面処理することで調製された酸化チタンであることを特徴とする、前記項4〜7のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0018】
項9.
前記メソポーラス金属酸化物層の厚さが5〜5,000nmであり、該メソポーラス金属酸化物層が酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化ニオブからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることを特徴とする、前記項2に記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0019】
項10.
前記ペロブスカイト層の厚さが5〜10,000nmであり、該ペロブスカイト層がRNH3PbX3、R(NH2)2PbX3、RNH3SnX3及びR(NH2)2SnX3(Rはアルキル基であり、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである)からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることを特徴とする、前記項1〜9のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0020】
項11.
前記RNH3PbX3(Rはアルキル基であり、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである)が、CH3NH3PbI3であることを特徴とする、前記項10に記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0021】
項12.
前記RNH3PbX3(Rはアルキル基であり、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである)が、CH3NH3PbI3-nCln(nは0から3である)であることを特徴とする、前記項10に記載のペロブスカイト型太陽電池の製造方法。
【0022】
項13.
前記正孔輸送層の厚さが1〜5,000 nmであり、該正孔輸送層がp型半導体で構成されていることを特徴とする、前記項1〜12のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0023】
項14.
前記正孔輸送層が、spiro-OMeTAD誘導体、酸化モリブデン、酸化バナジウム、ヨウ化銅、チオシアン酸銅、ポリチオフェン及びポリトリフェニルアミンからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることを特徴とする、前記項1〜13のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0024】
項15.
前記正孔輸送層が、酸素、リチウム化合物、コバルト化合物、バナジウム化合物及びモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を用いてドープされることで調製された正孔輸送層であることを特徴とする、前記項1〜14のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0025】
項16.
前記正極が、金、銀、アルミニウム、錫ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化錫、酸化錫、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、アルミドープ亜鉛、PEDOT:PSS、グラフェン、ポリアニリン及びカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されており、該正極が、薄膜形状、ナノワイヤー形状又はグリッド形状であることを特徴とする、前記項1〜15のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0026】
項17.
前記ペロブスカイト型太陽電池が、負極、正孔ブロック層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、正極及び反射防止膜が順に形成されていることを特徴とする、前記項1〜16のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0027】
項18.
前記反射防止膜が、酸化モリブデン、フッ化マグネシウム及びフッ化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることを特徴とする、前記項17に記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0028】
項19.
集光装置が正極側に配置されているものであることを特徴とする、前記項1〜18のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【0029】
項20.
蓄電装置が配置されているものであることを特徴とする、前記項1〜19のいずれかに記載のペロブスカイト型太陽電池。
【発明の効果】
【0030】
本発明のペロブスカイト型太陽電池は、チタンやチタン合金を負極基板とすることにおいて大面積な太陽電池においても高い光電変換特性を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のペロブスカイト型太陽電池の一実施形態を示す概略図(断面図)である。具体的には、負極、正孔ブロック層、メソポーラス金属酸化物層、ペロブスカイト層、正孔輸送層及び正極が順に形成されており、正極側から光照射をすることを示す概略図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0033】
ペロブスカイト型太陽電池
本発明のペロブスカイト型太陽電池は、以下の部材にて構成される。
【0034】
本発明のペロブスカイト型太陽電池は、負極、正孔ブロック層、ペロブスカイト層、正孔輸送層及び正極が順に形成されているであって、前記負極が、金属チタン、チタン合金、表面処理した金属チタン及び表面処理したチタン合金からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されており、前記正極側から光照射がなされることを特徴とする。
【0035】
本明細書では、金属チタン、チタン合金、表面処理した金属チタン及び表面処理したチタン合金からなる群から選ばれる材料を単にチタン材料と記すこともある。
【0036】
(1)負極
負極は、金属チタン、チタン合金、表面処理した金属チタン及び表面処理したチタン合金からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されている。金属チタンやチタン合金等の金属チタン材料や、これらの金属チタン材料を表面処理した材料を用いることができる。
【0037】
チタン合金材料を使用する場合、その種類については、特に限定されない。当該チタン合金として、Ti-6Al-4V、Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo、Ti-0.5Pd等が好ましい。
【0038】
チタン材料として、金属チタンやチタン合金材料を、バフ研磨や電解研磨等を実施することで、鏡面処理した材料が更に好ましい。
【0039】
負極基板の厚みは、通常0.01〜10mm程度が好ましく、0.01〜5mm程度より好ましく、0.05〜1mm程度が更に好ましい。
【0040】
従来の透明導電膜を形成させた負極と比較して、チタン材料は電気抵抗値が低い。そのため、従来の透明導電膜を用いたペロブスカイト型太陽電池と比較すると、チタン材料はセル面積が大きい割に、光電変換効率が高くなり、結果として高電力を発生させることが可能となる。
【0041】
従来のペロブスカイト型太陽電池では、光照射は、透明導電膜を形成させた負極から実施している。
【0042】
本願発明のペロブスカイト型太陽電池では、負極に使用するチタン材料は、光透過性がないことから、正極から光照射を実施することが特徴である。
【0043】
また金属チタン又はチタン合金を、鏡面処理等の物理的研磨、化学エッチング等の化学的研磨等の表面処理を実施することが好ましい。
【0044】
(2)正孔ブロック層
正孔ブロック層は、光電変換層の有機無機ペロブスカイト化合物にて電荷分離して生じた正孔が負極側に移動することなく、電荷分離した電子だけが負極側に移動するために重要な役割を果たす層となる。
【0045】
電荷分離にて生成した正孔を負極側に移動することを防ぎ、電子だけを負極基板側に移動させるためには、緻密な正孔ブロック層が必要となる。
【0046】
正孔ブロック層は、その厚さが1〜500nm程度であることが好ましい。正孔ブロック層の厚みは、1〜100 nm程度であることがより好ましい。
【0047】
正孔ブロック層は、n型半導体、電子輸送性導電性高分子及び電子輸送性無機塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることが好ましい。正孔ブロック層は、n型半導体であることが好ましい。
【0048】
正孔ブロック層は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸セシウム、フラーレン誘導体、グラフェン誘導体及びペリレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることが好ましい。
【0049】
前記酸化チタンは、金属チタン又はチタン合金を表面処理することで調製された酸化チタンであることが好ましい。
【0050】
前記表面処理は、金属チタン又はチタン合金を、大気酸化処理及び陽極酸化処理からなる群から選ばれる少なくとも一種の表面処理であることが好ましい。
【0051】
正孔ブロック層は、金属チタンを大気酸化処理、陽極酸化処理等の酸化処理することにおいて形成される酸化チタン層が好ましい。この大気酸化処理温度としては、300〜700℃程度が好ましく。400〜600℃程度で大気酸化処理するのが好ましい。
【0052】
また陽極酸化処理としては、金属チタンに対してエッチング作用を有しない無機酸及び有機酸よりなる群から選択される少なくとも一種の酸やこれらの塩化合物を含有する電解液中で、陽極酸化を行い、チタンの酸化皮膜を形成する工程のことである。
【0053】
陽極酸化時の電圧値と酸化チタン皮膜厚には比例関係があることから、印加電圧をコントロールすることにより、正孔ブロック層の厚みを容易にコントロールできるので、好ましい。陽極酸化電圧としては、1〜200V程度が好ましく、10〜100V程度が更に好ましい。
【0054】
チタンに対してエッチング作用を有しない電解液としては、無機酸、有機酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物(以下無機酸等とも記す)を含有する電解液であることが好ましい。前記無機酸等を含有する電解液は、リン酸、リン酸塩等の希薄な水溶液であることが好ましい。チタンに対してエッチング作用を有しない有機酸としては、酢酸、アジピン酸、乳酸等が好ましい。またこれらの酸の塩である、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、乳酸ナトリウム等を用いることもできる。
【0055】
その他、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の電解質を含有する電解液を用いることが好ましい。
【0056】
前記無機酸等としては、リン酸及びリン酸塩が最も好ましい。
【0057】
電解液は、無機酸等の希薄な水溶液であることが好ましい。電解液中の無機酸等の濃度は、経済性等の理由から、1重量%程度の範囲であることが好ましい。例えば、リン酸が含まれる電解液では、0.01〜10重量%程度の濃度範囲が好ましく、0.1〜10重量%程度の濃度範囲がより好ましく、1〜3重量%程度の濃度範囲が更に好ましい。
【0058】
これらの酸は、一種単独で使用してもよく、また有機酸、無機酸の別を問わず、これらの酸を二種以上任意に組み合わせて使用してもよい。二種以上の酸を含有する電解液の好ましい態様の一例として、リン酸塩及びリン酸を含有する水溶液が挙げられる。
【0059】
当該電解液における上記酸の配合割合については、使用する酸及び酸の塩の種類、陽極酸化条件等によって異なるが、通常、上記酸の総量で0.01〜10重量%程度が好ましく、0.1〜10重量%程度がより好ましく、1〜3重量%程度が更に好ましい。
【0060】
前記酸化チタンは、酸化チタン前駆体であるチタニウムアルコキシド化合物を加水分解処理及び加熱処理することで調製された酸化チタンであることが好ましい。この正孔ブロック層は、金属チタンを処理しないものの上に酸化チタン前駆体であるチタニウムアルコキシド化合物をコーティングした後、加水分解及び加熱処理にて形成したものでもよい。
【0061】
前記酸化チタンは、更に四塩化チタン水溶液を用いて表面処理することで調製された酸化チタンであることが好ましい。酸化処理にて得られた酸化チタン層上に、四塩化チタン水溶液で表面処理をすることにより、更に緻密な正孔ブロック層が形成され、正孔ブロック効果は高くなる。
【0062】
該正孔ブロック層は、フラーレン誘導体等の電子輸送性導電性高分子及び炭酸セシウム等の電子輸送性無機塩らなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることが好ましい。
【0063】
また酸化チタン以外に、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸セシウム等の無機n型半導体、フラーレン誘導体、グラフェン誘導体、ペリレン誘導体等の有機n型半導体で構成されるものであっても良い。
【0064】
(3)メソポーラス金属酸化物層
ペロブスカイト型太陽電池で、正孔ブロック層とペロブスカイト層との間に、メソポーラス金属酸化物層が形成されていることが好ましい。
【0065】
メソポーラス金属酸化物層は、微細孔をもつ多孔質な構造を有している。このため、メソポーラス金属酸化物層の内部にも均一に光電変換層である有機無機ペロブスカイト化合物を担持させることが好ましい。
【0066】
メソポーラス金属酸化物層は、その厚さは5〜5,000nm程度であることが好ましく、100〜500nm程度であることがより好ましい。このメソポーラス金属酸化物は、メソポーラス金属酸化物層は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化ニオブからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることが好ましい。
【0067】
平均粒子径が好ましくは1〜1,000nm程度、より好ましくは10〜50nm程度の酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等の粉末を、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等の溶媒に混合させてペースト剤を調製することが好ましい。
【0068】
次いで、このペースト剤をスピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、エアスプレー等のコーティング処理の後、100〜600℃で加熱処理することが好ましい。
【0069】
また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ粉末のペースト剤をスピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、エアスプレー等のコーティング処理の後、100〜600℃加熱処理することで、正孔ブロック層とペロブスカイト層との間に、メソポーラス金属酸化物を形成させることも可能である。
【0070】
(4)ペロブスカイト層
ペロブスカイト層は電荷分離層である。ペロブスカイト層は、その厚さが5〜10,000nm程度であることが好ましく、50〜500nm程度であることがより好ましい。
【0071】
ペロブスカイト層は、RNH3PbX3、R(NH2)2PbX3、RNH3SnX3及びR(NH2)2SnX3(Rはアルキル基であり、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである)からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることが好ましい。
【0072】
RNH3PbX3、R(NH2)2PbX3、RNH3SnX3及びR(NH2)2SnX3のRは、アルキル基であり、直鎖又は分岐構造を有するものが好ましい。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0073】
RNH3PbX3、R(NH2)2PbX3、RNH3SnX3及びR(NH2)2SnX3のXはハロゲンであり、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲンが好ましく、それから選ばれる複数のハロゲンを組み合わせたものが好ましい。
【0074】
RNH3PbX3(Rはアルキル基であり、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである)は、CH3NH3PbI3であることが好ましい。ペロブスカイト層として、より好ましくは濃い褐色を呈しており、300nmから800nmの可視光の領域を全吸収するCH3NH3PbI3である。
【0075】
RNH3PbX3(Rはアルキル基であり、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである)が、CH3NH3PbI3-nCln(nは0から3である)であることが好ましい。更に好ましく、CH3NH3PbI3-nCln(nは0から3である)を使用すると、コーティング手法が簡素化できるだけではなく、光吸収によってペロブスカイト結晶内で生じた電子や正孔の拡散長が長くなり、光電変換効率が向上する。
【0076】
有機無機ペロブスカイト層を形成させるためには、先ずハロゲン化アルキルアミン、ハロゲン化鉛、ハロゲン化錫を溶媒に溶解する。ハロゲンはCl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。次いで、その溶解物を、スプレー法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ダイコート法等にてコーティングした後、乾燥させることが好ましい。或いは蒸着して製膜した電荷分離層であるペロブスカイト層を成膜することも可能である。
【0077】
前記溶媒として、γ-ブチルラクトン、メチルホルメート、エチルアセテート等のエステル類;アセトン、ジメチルケトン類等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソピルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;塩化エチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。
【0078】
(5)正孔輸送層
正孔輸送層は、光電変換層に有機無機ペロブスカイト化合物にて電荷分離して生じた電子を正極に移動させることなく、正孔が正極側に移動させるための重要な役割を果たす層となる。
【0079】
正孔輸送層は、p型半導体であることが好ましく、その厚さが1〜5,000nm程度であることが好ましく、1〜300nm程度であることがより好ましい。
【0080】
該正孔輸送層はp型半導体で構成されていることが好ましい。
【0081】
正孔輸送層は、spiro-OMeTAD誘導体、酸化モリブデン、酸化バナジウム、ヨウ化銅、チオシアン酸銅、ポリチオフェン及びポリトリフェニルアミンからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることが好ましい。spiro-OMeTAD誘導体とは、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン及び同化合物の誘導体である。
【0082】
正孔輸送層をドープしたものを使う方が好ましい。
【0083】
正孔輸送層は、酸素、リチウム化合物、コバルト化合物、バナジウム化合物及びモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を用いてドープされることで調製された正孔輸送層であることが好ましい。このドープするものとして、更に好ましくは、バナジウム化合物及びモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料である。
【0084】
正孔輸送層を形成するためには、正孔輸送層を形成させる成分を溶媒に溶解させたものをスプレー法、スピンコーティング法、ディップコーティング法等にてコーティングした後、乾燥させることで正孔輸送層を成膜することが好ましい。
【0085】
前記溶媒としては、γ-ブチルラクトン、メチルホルメート、エチルアセテート等のエステル類;アセトン、ジメチルケトン類等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソピルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;塩化エチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン等の炭化水素溶媒等を好ましく用いることができる。
【0086】
(6)正極
正極は、金、銀、アルミニウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化錫(SnO2)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミドープ亜鉛(AZO)、PEDOT:PSS、グラフェン、カーボンナノチューブ及びポリアニリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されることが好ましい。PEDOT:PSSとは、高分子電解質であるポリエチレンスルホン酸(PSS)を、良好な導電特性を示すPEDOT (poly -3-4- ethylenedioxythiophene)に添加した混合物である。
【0087】
正極は、薄膜形状、ナノワイヤー形状又はグリッド形状であることが好ましい。
【0088】
正極は、その厚みは、1〜1,000nm程度が好ましく、1〜300nm程度がより好ましい。
【0089】
正極の成膜方法として、蒸着、スパッタリング、スプレー法、スピンコーティング法、ディップコーティング法等でコーティングすることが好ましい。
【0090】
本願発明のペロブスカイト型太陽電池は、負極に光透過性のないチタン材料を用いているために、光照射を正極側から実施する。
【0091】
正極から光照射することから、正極は開口部を有することが好ましい。正極の開口部の面積は、正極の面積に対して50〜99%程度であることが好ましく、90〜99%程度であることがより好ましい。
【0092】
(7)反射防止膜
ペロブスカイト型太陽電池は、光透過性を向上させるに反射防止膜加工を施すことが好ましい。ペロブスカイト型太陽電池は、負極、正孔ブロック層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、正極及び反射防止膜が順に形成されていることが好ましい。
【0093】
反射防止膜は、酸化モリブデン(MoOx)、フッ化マグネシウム(MgF2)及びフッ化リチウム(LiF)からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料で構成されていることが好ましい。
【0094】
反射防止膜の成膜方法として、蒸着、スパッタリング、スプレー法、スピンコーティング法、ディップコーティング法等にてコーティングすることが好ましい。
【0095】
(8)集光装置
本願発明のペロブスカイト型太陽電池は、光照射を正極側から実施する。ペロブスカイト型太陽電池は、集光装置が正極側に配置されているものが好ましい。ペロブスカイト型太陽電池において、正極又は反射防止膜の側に集光装置を配置されているものであることが好ましい。更に高い光電変換効率に相当する高い発電が可能である。
【0096】
光照射手段は、集光装置を介して正極又は反射防止膜の側から配置されている。正極と光源との間に集光装置を設置することにより、無駄に使用されている光を集光し、高い光電変換効率に相当する高電力が達成される。
【0097】
集光装置を用いて入射光を収束させる際の集光率は、110〜5,000%程度が好ましく、200〜4,000%程度が更に好ましく、300〜3,000%程度が更に好ましく、500〜900%程度が特に好ましい。例えば集光率を500%に設定することは、集光装置を用いて元の入射光を5倍に収束させることである。
【0098】
集光装置としては、特に限定されるものではないが、ガラスやPMMA(Polymethyl methacrylate)、PET(Polyethylene terephthalate)、PEN(Polyethylene naphthalate)等の透明プラスチックス製のリニアフレネルレンズ等の集光レンズを用いることが好ましい。
【0099】
(9)蓄電装置
ペロブスカイト型太陽電池は、蓄電装置が配置されていることが好ましい。
【0100】
ペロブスカイト型太陽電池にて発電した多量の直流電力を蓄電池に蓄えることによって、安定した電力の達成を確保することができる。太陽電池と蓄電池機能を併用することにより、従来の太陽電池にて問題となっている天候や時刻等によって発電量が大きく影響することを未然に防ぐことが可能である。
【0101】
ぺロブスカイト型太陽電池で発電する直流電力を蓄える蓄電池として、正極に二酸化鉛(PbO2)、負極に鉛(Pb)、電解液に希硫酸(H2SO4)を用いた二次電池である鉛蓄電池;正極にオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、負極に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウムのアルカリ水溶液を用いた二次電池であるニッケル水素電池;正極にリチウム含有金属酸化物、負極にグラファイト等の炭素材、電解液に有機電解液を用いた二次電池であるリチウム電池;正極に硫黄、負極にナトリウム、電解質にβ-アルミナを用いた二次電池であるNAS電池;等の電池から任意に選択することが好ましい。
【0102】
ぺロブスカイト太陽電池で発生した電力を、水の電気分解にて水素に転換して保存することが好ましい。貯め易く、運び易い水素の特徴を活かすことができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
[実施例1]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。次いでエタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン製)内で酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施した。次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0105】
(2)正孔ブロック層の作製
グローブボックス(美和製作所製)内で調製したチタンテトラプロポキシド(和光純薬工業製)10μLをエタノール(和光純薬工業製)1mLに溶解させた。次いでこの溶液を、スピンコータ(ミカサ製、MS-A100)を用いて、チタン材料上に正孔ブロック層をコーティングした。
【0106】
スピンコーティング条件は、チタンテトラプロポキシドエタノール溶液50μLをチタン材料に滴下した後、スピンコータを用いて1,000rpmにて40秒間コーティングした。次いで、125℃、1分間乾燥する操作を5回実施した。次いで500℃で20分間加熱処理し、正孔ブロック層を作製させた。
【0107】
(3)メソポーラス金属酸化物層の作製
酸化チタンペースト(Dyesol 18NR-T)をエタノールに2:7の重量比にて分散させた。次いでこの溶液50μLを、上記正孔ブロック層を形成させたチタン材料上に滴下し、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。次いで500℃で15分間加熱処理し、メソポーラス金属酸化物層を作製した。
【0108】
(4)ペロブスカイト層の作製
400 mgのヨウ化鉛PbI2(アルドリッチ製)を1mLのジメチルホルムアミド(DMF 和光純薬工業製)に溶解させた。次いでこの溶液を、上記したメソポーラス金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた。次いでスピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。次いで70℃にて30分間乾燥させた。
【0109】
次いでヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃、2時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。次いでジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。
【0110】
上記処理にて得られた10mgのヨウ化メチルアミンCH3NH3Iを1mLの2-プロパノール(和光純薬工業製)に溶解させた。次いでこの溶液150μLを滴下させた後、30秒間放置後スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。その後、70℃にて30分間乾燥させ、ペロブスカイト層を作製した。
【0111】
(5)正孔輸送層の作製
2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD、メルク製)クロロベンゼン溶液(80mg/mL)を調整した。添加剤としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li-TFSI、東京化成工業製)アセトニトリル(アルドリッチ製)溶液( 520mg/mL) 17.5μLとtert-ブチルピリジン(アルドリッチ製)28.8μLを加えた。
【0112】
Spiro-OMeTADクロロロベンゼン溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。その後、酸素存在下12時間放置した。
【0113】
(6)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に、蒸着装置(美和製作所製、MSVDE-YSS)を用いて金を25nm蒸着させ、ペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0114】
(7)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表1に示した。
【0115】
【表1】
【0116】
[実施例2]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。次いでエタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン製)内で酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施した。次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0117】
(2)正孔ブロック層の作製
上記のチタン材料を500℃で20分間加熱処理(大気酸化処理)し、正孔ブロック層を作製させた。
【0118】
(3)メソポーラス金属酸化物層の作製
酸化チタンペースト(Dyesol 18NR-T)をエタノールに2:7の重量比にて分散させた。次いでこの溶液50μLを、上記正孔ブロック層を形成させたチタン材料上に滴下し、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングする操作を実施した。次に500℃にて20分間加熱処理し、メソポーラス金属酸化物層を作製した。
【0119】
(4)ペロブスカイト層の作製
400mgのPbI2を1 mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。この溶液を、上記したメソポーラス金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた後、70℃にて30分間乾燥させた。
【0120】
次にヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃2時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。次いでジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。
【0121】
上記処理にて得られた10mgのCH3NH3Iを1mLの2-プロパノールに溶解させた。次いでこの溶液300μLを滴下させた後、30秒間放置後スピンコータを用いて3,000 rpmにて40秒間コーティングさせた。その後、70℃にて30分間乾燥させ、ペロブスカイト層を作製した。
【0122】
(5)正孔輸送層の作製
2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD、メルク製)クロロベンゼン溶液(80mg/mL)を調整した。添加剤としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li-TFSI、東京化成工業製)アセトニトリル(アルドリッチ製)溶液( 520mg/mL) 17.5μLとtert-ブチルピリジン(アルドリッチ製)28.8μLを加えた。
【0123】
Spiro-OMeTADクロロロベンゼン溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。
【0124】
その後蒸着装置を用いて酸化モリブデン(和光純薬工業製)を正孔輸送効率の向上を図るため、またペロブスカイト層の劣化を防ぐために、10nm蒸着させ(ドープ)、正孔輸送層を作製した。
【0125】
(6)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に蒸着装置を用いて銀を10nm蒸着させた。次いで反射防止膜として酸化モリブデンを20nm蒸着させてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0126】
(7)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表2に示した。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例1と比較して、実施例2は、正孔ブロック層は鏡面処理した金属チタンを500℃で20分間加熱処理するという簡易的な手法にて作製した。
【0129】
それにも係らず、実施例1の2倍以上の光電変換効率が得られた。正孔輸送層に酸化モリブデンを蒸着したことや対極として金を銀に変化させたこと、蒸着の膜厚を変化させたこと、反射防止膜として酸化モリブデンを蒸着したこと等による光電変換効率による向上が認められた。
【0130】
[実施例3]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。次いでエタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン(株)製)内で酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施した。次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0131】
(2)正孔ブロック層の作製
上記のチタン材料を500℃にて20分間加熱処理(大気酸化)し、正孔ブロック層を作製させた。
【0132】
(3)メソポーラス金属酸化物層の作製
Al2O3 2-プロパノール分散液(アルドリッチ製)を2-プロパノールに1:2の体積比で分散させた。次いでこの溶液50μLを、上記正孔ブロック層を形成させたチタン材料上に滴下し、スピンコータを用いて3,000 rpmにて40秒間コーティングした。次に100℃にて10分間加熱処理し、金属酸化物層を作製した。
【0133】
(4)ペロブスカイト層の作製
ヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃2時間撹拌した。溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。その後、ジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。次にPbCl2(アルドリッチ製)(245mg)と上記処理にて得られたCH3NH3I (420mg)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調整した。
【0134】
この溶液を、上記した金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて80秒間コーティングさせた。その後、80℃にて30分間乾燥させた。次に、100℃90分間加熱処理し、ペロブスカイト層を作製した。
【0135】
(5)正孔輸送層の作製
2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD、メルク製)クロロベンゼン溶液(80mg/mL)を調整した。添加剤としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li-TFSI、東京化成工業製)アセトニトリル(アルドリッチ製)溶液( 520mg/mL) 17.5μLとtert-ブチルピリジン(アルドリッチ製)28.8μLを加えた。
【0136】
Spiro-OMeTADクロロロベンゼン溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。
【0137】
その後蒸着装置を用いて、酸化モリブデン(和光純薬工業製)を正孔輸送効率の向上を図るため、ペロブスカイト層の劣化を防ぐために10nm蒸着させ、正孔輸送層を作製した。
【0138】
(6)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に、蒸着装置を用いて銀を10nm蒸着させた。次いで反射防止膜として酸化モリブデンを20nm蒸着させてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0139】
(7)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表3に示した。
【0140】
【表3】
【0141】
[実施例4]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。更に、エタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン製)内で、酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施した。次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0142】
(2)正孔ブロック層の作製
上記のチタン材料を500℃にて20分間加熱処理(大気酸化)し、正孔ブロック層を作製させた。
【0143】
(3)ペロブスカイト層の作製
ヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃2時間撹拌した。溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。その後、ジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。245mgのPbCl2(アルドリッチ製)420mgと上記処理にて得られたCH3NH3I 420mgを1mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。
【0144】
この溶液を、上記した金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて80秒間コーティングさせた後、80℃にて30分間乾燥させた。次いで100℃90分間加熱処理し、ペロブスカイト層を作製した。
【0145】
(4)正孔輸送層の作製
2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD、メルク製)クロロベンゼン溶液(80mg/mL)を調整した。添加剤としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li-TFSI、東京化成工業製)アセトニトリル(アルドリッチ製)溶液( 520mg/mL) 17.5μLとtert-ブチルピリジン(アルドリッチ製)28.8μLを加えた。
【0146】
Spiro-OMeTADクロロロベンゼン溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。
【0147】
その後、蒸着装置を用いて酸化モリブデン(和光純薬工業製)を正孔輸送効率の向上を図るため、ペロブスカイト層の劣化を防ぐために10nm蒸着させ、正孔輸送層を作製した。
【0148】
(5)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に、蒸着装置を用いて銀を10nm蒸着させた。次いで反射防止膜として酸化モリブデンを20 nm蒸着させてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0149】
(6)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表4に示した。実施例4はメソポーラス層を含まない。
【0150】
【表4】
【0151】
[実施例5]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。更に、エタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン製)内で、酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施した。次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0152】
(2)正孔ブロック層の作製
上記のチタン材料を700℃にて20分間加熱処理し(大気酸化)、正孔ブロック層を作製させた。
【0153】
(3)ペロブスカイト層の作製
ヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃2時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。次に、ジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。PbCl2(アルドリッチ製)(245mg)と上記処理にて得られたCH3NH3I (420mg)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調整した。
【0154】
この溶液を、上記した金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて2,000 rpmにて80秒間コーティングさせた。その後、80℃にて30分間乾燥させた。次に、100℃90分間加熱処理し、ペロブスカイト層を作製した。
【0155】
(4)正孔輸送層の作製
80mgのspiro-OMeTADを1mLのクロルベンゼンに溶解させた。520mgのLi-TFSIを1mLのアセトニトリルに溶解させた溶液17.5μLと、tert-ブチルピリジン28.8μLを加えた。次いでこの溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000 rpmにて40秒間コーティングさせた。
【0156】
その後蒸着装置を用いて酸化モリブデン(和光純薬工業製)を正孔輸送効率の向上を図るため、ペロブスカイト層の劣化を防ぐために10nm蒸着させ、正孔輸送層を作製した。
【0157】
(5)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に蒸着装置を用いて銀を10nm蒸着させた。その後、反射防止膜として酸化モリブデンを20nm蒸着させてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0158】
(6)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表5に示した。実施例5はメソポーラス層を含まない。
【0159】
【表5】
【0160】
[実施例6]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。更に、エタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン製)内で酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施した。次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0161】
(2)正孔ブロック層の作製
上記のチタン材料を300℃で20分間加熱処理(大気酸化)し、正孔ブロック層を作製した。
【0162】
(3)ペロブスカイト層の作製
ヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃2時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。その後、ジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。次にPbCl2(アルドリッチ製)(245mg)と上記処理にて得られたCH3NH3I (420mg)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調整した。
【0163】
この溶液を、上記した金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて2,000 rpmにて80秒間コーティングさせた。その後、80℃にて30分間乾燥させた。次に、100℃90分間加熱処理し、ペロブスカイト層を作製した。
【0164】
(4)正孔輸送層の作製
2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD、メルク製)クロロベンゼン溶液(80mg/mL)を調整した。添加剤としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li-TFSI、東京化成工業製)アセトニトリル(アルドリッチ製)溶液( 520mg/mL) 17.5μLとtert-ブチルピリジン(アルドリッチ製)28.8μLを加えた。
【0165】
この溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。
【0166】
その後蒸着装置を用いて、酸化モリブデン(和光純薬工業製)を正孔輸送効率の向上を図るため、ペロブスカイト層の劣化を防ぐために10nm蒸着させ、正孔輸送層を作製した。
【0167】
(5)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に、蒸着装置を用いて銀を10nm蒸着させた。その後、反射防止膜として酸化モリブデンを20nm蒸着させてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0168】
(6)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表6に示した。実施例6はメソポーラス層を含まない。
【0169】
【表6】
【0170】
[実施例7]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。更に、エタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン製)内で酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施し、次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0171】
(2)正孔ブロック層の作製
上記チタン材料を1重量%リン酸中で、10V、30V、50V、100V又は150Vで夫々10分間陽極酸化を行い、チタン材料表面に酸化チタン層を形成させた。次いで基板を0.04M TiCl4水溶液に洗浄し、80℃で30分間放置し、その後、純水及びエタノールで洗浄した。
【0172】
(3)メソポーラス金属酸化物層の作製
酸化チタンペースト(Dyesol 18NR-T)をエタノールに2:7の重量比にて分散させた溶液50μLを、上記正孔ブロック層を形成させたチタン材料上に滴下し、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングする操作を実施した。次に500℃にて20分間加熱処理し、メソポーラス金属酸化物層を作製した。
【0173】
(4)ペロブスカイト層の作製
ヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃2時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。次いでジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。PbCl2(アルドリッチ製)(245mg)と上記処理にて得られたCH3NH3I (420mg)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調整した。
【0174】
この溶液を、上記した金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて2,000 rpmにて80秒間コーティングさせた。その後、80℃にて30分間乾燥させた。次に、100℃90分間加熱処理し、ペロブスカイト層を作製した。
【0175】
(5)正孔輸送層の作製
2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD、メルク製)クロロベンゼン溶液(80mg/mL)を調整した。添加剤としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li-TFSI、東京化成工業製)アセトニトリル(アルドリッチ製)溶液( 520mg/mL) 17.5μLとtert-ブチルピリジン(アルドリッチ製)28.8μLを加えた。
【0176】
Spiro-OMeTADクロロロベンゼン溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。
【0177】
その後蒸着装置を用いて酸化モリブデン(和光純薬工業製)を正孔輸送効率の向上を図るため、ペロブスカイト層の劣化を防ぐために10nm蒸着させ、正孔輸送層を作製した。
【0178】
(6)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に、蒸着装置を用いて銀を10nm蒸着させた。その後、反射防止膜として酸化モリブデンを20nm蒸着させてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0179】
(7)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表7に示した。
【0180】
【表7】
【0181】
[実施例8]
(1)負極
負極として、金属チタンを鏡面処理したチタン材料を、アセトンにて15分間超音波洗浄した。更に、エタノールで15分間超音波洗浄した後、乾燥させた。次いでUVオゾンクリーナーUV253S(フィルジェン製)内で酸素フロー(0.05MPa、5分間)を実施した。次いで紫外線照射を30分間実施し、次いで窒素フロー(0.2MPa、7.5分間)を実施した。
【0182】
(2)正孔ブロック層の作製
上記チタン材料を1重量%リン酸中で、10V又は30Vで夫々10分間陽極酸化を行い、チタン材料表面に酸化チタン層を形成させた。
【0183】
(3)メソポーラス金属酸化物層の作製
酸化チタンペースト(Dyesol 18NR-T)をエタノールに2:7の重量比にて分散させた。この溶液50μLを、上記正孔ブロック層を形成させたチタン材料上に滴下し、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングする操作を実施した。
【0184】
次に500℃にて20分間加熱処理し、メソポーラス金属酸化物層を作製した。次に、0.04M TiCl4水溶液に洗浄した基板を、80℃で30分間放置し、その後、純水、エタノールで洗浄した。
【0185】
(4)ペロブスカイト層の作製
ヨウ化水素(30mL、0.227mol、57wt%水溶液、アルドリッチ製)とメチルアミン(27.8mL、0.273mol、40%メタノール溶液、東京化成製)を、0℃2時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた後、生成物をエタノールに溶解させた。次いでジエチルエーテルから、再結晶により、ヨウ化メチルアミンを得た。次にPbCl2(アルドリッチ製)(245mg)と上記処理にて得られたCH3NH3I (420mg)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調整した。
【0186】
この溶液を、上記した金属酸化物層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて2,000 rpmにて80秒間コーティングさせた。その後、80℃にて30分間乾燥させた。次に、100℃90分間加熱処理し、ペロブスカイト層を作製した。
【0187】
(5)正孔輸送層の作製
2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD、メルク製)クロロベンゼン溶液(80mg/mL)を調整した。添加剤としてリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(Li-TFSI、東京化成工業製)アセトニトリル(アルドリッチ製)溶液( 520mg/mL) 17.5μLとtert-ブチルピリジン(アルドリッチ製)28.8μLを加えた。
【0188】
Spiro-OMeTADクロロロベンゼン溶液を上記したペロブスカイト層を形成させたチタン材料上全体に行き亘るように滴下させた後、スピンコータを用いて3,000rpmにて40秒間コーティングさせた。
【0189】
その後蒸着装置を用いて、酸化モリブデン(和光純薬工業製)を正孔輸送効率の向上を図るためやペロブスカイト層の劣化を防ぐために10nm蒸着させ、正孔輸送層を作製した。
【0190】
(6)正極の作製
上記した正孔輸送層を形成させたチタン材料上に蒸着装置を用いて銀を10nm蒸着させた。その後、反射防止膜として酸化モリブデンを20nm蒸着させてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【0191】
(7)評価結果
上記の手順にて作製したペロブスカイト型太陽電池を、光電変換効率について調べた結果を、表8に示した。
【0192】
【表8】
【符号の説明】
【0193】
1 負極
2 正孔ブロック層
3 メソポーラス金属酸化物層
4 ペロブスカイト層
5 正孔輸送層
6 正極
7 光
図1