特許第6352246号(P6352246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352246造形されたエッジを有する強化ガラス物品および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352246
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】造形されたエッジを有する強化ガラス物品および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20180625BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20180625BHJP
   C03C 15/02 20060101ALI20180625BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   C03C21/00 101
   C03C15/00 D
   C03C15/02
   !G02F1/1333 500
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-509173(P2015-509173)
(86)(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公表番号】特表2015-520106(P2015-520106A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2013038381
(87)【国際公開番号】WO2013163524
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】61/639,389
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】アカラプ,ラヴィンドラ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ドノヴァン,マイケル パトリック
(72)【発明者】
【氏名】リー,アイザァ
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−519344(JP,A)
【文献】 特開昭50−134662(JP,A)
【文献】 特開2015−205779(JP,A)
【文献】 特開2013−163637(JP,A)
【文献】 特開2012−031018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03B 33/00−33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化ガラス板において、
a.少なくとも1つのエッジによって接合された、各々が圧縮応力下にある、第1の表面および第2の表面と、
b.前記第1の表面および前記第2の表面を接合する少なくとも1つのエッジであって、少なくとも1つのエッジが、前記第1の表面および前記第2の表面の少なくとも1つに対して角度θを形成し、126°≦θ<180°であり、少なくとも1つのエッジの一部が、前記第1の表面および前記第2の表面の前記圧縮応力以下である第2の圧縮応力下にある、少なくとも1つのエッジと、
c.前記第1の表面および前記第2の表面の間の中央領域であって、引張応力下にある中央領域と、
を含む強化ガラス板であって、少なくとも350MPaの4点曲げ強さを有する、強化ガラス板。
【請求項2】
前記角度θが、135°≦θ<180°であることを特徴とする請求項1に記載の強化ガラス板。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエッジが複数の欠陥を有し、前記欠陥が22μmの平均サイズを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の強化ガラス板。
【請求項4】
前記圧縮応力が少なくとも400MPaであり、前記第1の表面および前記第2の表面の各々からガラス中に15μmから70μmまでの範囲の層の深さまで延在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の強化ガラス板。
【請求項5】
アルカリアルミノシリケートガラスからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の強化ガラス板。
【請求項6】
前記少なくとも1つのエッジが角の丸い断面形またはペンシル断面形を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の強化ガラス板。
【請求項7】
強化ガラス板を製造する方法において、
a.アルカリアルミノシリケートガラスからなり、第1の表面と、第2の表面と、前記第1の表面および前記第2の表面の間の中央領域とを有する強化ガラス板であって、前記第1の表面および前記第2の表面の各々が圧縮応力下であり、前記中央領域が引張応力下にある強化ガラス板を提供する工程と、
b.前記第1の表面および前記第2の表面を接合するエッジであって、前記エッジの一部が、前記第1の表面および前記第2の表面の前記圧縮応力以下である第2の圧縮応力下にあるエッジを形成する工程と、
c.前記エッジを研削することおよび前記エッジを研磨することの少なくとも1つによって所定のエッジ断面形を形成する工程であって、前記少なくとも1つのエッジが、前記第1の表面および前記第2の表面の少なくとも1つに対して角度θを形成し、126°≦θ<180°であり、前記強化ガラス板が少なくとも350MPaの4点曲げ強さを有する工程と、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記所定のエッジ断面形を形成した後に前記エッジをエッチングする工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所定のエッジ断面形が、角の丸い断面形およびペンシル断面形のうちの一方であることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮応力が少なくとも400MPaであり、前記第1の表面および前記第2の表面の各々から前記ガラス中に15μmから70μmまでの範囲の層の深さまで延在することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2012年4月27日に出願された米国仮特許出願第61/639,389号(その内容に依拠し、その全体において参照によって本明細書に組み込む)の米国法典第35編第119条下の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、カットエッジを有する強化ガラス板に関する。より詳しくは、本開示は、造形されたカットエッジを有する強化ガラス板に関する。
【背景技術】
【0003】
電子通信および娯楽機器、車の窓ガラス、コンピュータ等の多くの分野において高強度ガラスに対する需要が増しており、ガラスの表面の品質を改良する絶え間ない取り組みがなされている。
【0004】
表面に欠陥が存在することにより、ガラスは張力下で破損する。イオン交換を使用して、ガラスの表面強度を改良した。イオン交換プロセスにおいて、ガラスの表面内または付近の比較的小さいイオンが、同じ原子価の比較的大きいイオンによって置換される。イオン交換プロセスの利点は、複数のガラス板を同時に加工および強化してもよいことである。
【0005】
多くの適用において、イオン交換プロセスを約350℃〜約500℃の範囲の温度において実施して、圧縮応力下の表面層および引張応力下の内部領域を生じさせる。いくつかの適用において、母板(すなわち、後で最終用途のために複数部分に分割され得るガラス板)は、切断されるかあるいは他の方法でより小さな部分に分けられる前にイオン交換される。一体化タッチ・ウインドウまたはスクリーンについては、例えば、イオン交換の後に、母板の表面上に導電性酸化インジウムスズ(ITO)パターンを堆積させ、次に、ガラスを構成部分に切断する。イオン交換層の存在はガラスの主表面を強化するが、分離または切断によって形成されたエッジにおいて内部引張領域が露出するためにガラスはまだ、比較的低い荷重において破損しやすく、4点曲げ強さ測定によって測定されたとき、エッジの弱化をもたらす。
【0006】
1つの方法において、高純度フッ化水素酸(HF)またはHF系酸ブレンドによる化学エッチングを使用して、イオン交換された板の切断/分離によって形成されたエッジの強度を増加させるか、またはイオン交換の後にガラスの表面強度をさらに改良する。化学エッチングプロセスは、有効に欠陥寸法を低減し、欠陥先端を鈍らせることによってガラスの強度をかなり強化する。しかしながら、化学エッチング方法は人の安全を危うくし、大量の化学廃棄物を発生する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、特に、強化ガラス板が4点曲げ試験に供せられるときに改良されたエッジ強度を提供するエッジ断面形を有する強化ガラス板または物品を提供し、そしてこのようなエッジを有するガラス板を製造する方法を提供する。エッジは切断または他の分離方法によって形成され、次に、エッジを、ペンシル断面形(例えば、θ=135°)、角の丸い(例えば、θ=126°)断面形等の所定の断面形に研削する。いくつかの実施形態において、エッジを研削の後に磨き、および/またはエッチングして欠陥寸法を低減させる。
【0008】
したがって、本開示の一態様は、強化ガラス板を提供することである。強化ガラス板は、少なくとも1つのエッジによって接合された第1の表面および第2の表面であって、第1の表面および第2の表面の各々が圧縮応力下にある、少なくとも1つのエッジによって接合された第1の表面および第2の表面と、第1の表面および第2の表面を接合する少なくとも1つのエッジであって、少なくとも1つのエッジが、第1の表面および第2の表面の少なくとも1つに対して角度θを形成し、90°<θ<180°であり、少なくとも1つのエッジの一部が、第2の圧縮応力下にある、少なくとも1つのエッジとを含む。また、強化ガラス板は、第1の表面および第2の表面の間の中央領域を備え、そこで中央領域が引張応力下であり、強化ガラス板が、少なくとも約350MPa、いくつかの実施形態においては、約350MPa〜約700MPaの範囲の4点曲げ強さを有する。
【0009】
本開示の別の態様は、強化ガラス板を製造する方法を提供することである。方法は、第1の表面と、第2の表面と、第1の表面および第2の表面の間の中央領域とを有する強化ガラス板を提供する工程であって、第1の表面および第2の表面の各々が圧縮応力下であり、中央領域が引張応力下にある工程と、第1の表面および第2の表面を接合するエッジを形成する工程であって、エッジの一部が第2の圧縮応力下であり、少なくとも1つのエッジが、第1の表面および第2の表面の少なくとも1つに対して角度θを形成し、90°<θ<180°であり、強化ガラス板が少なくとも約350MPaの4点曲げ強さを有する工程とを含む。
【0010】
さらに別の態様は、少なくとも1つのエッジによって接合された第1の表面および第2の表面を有する強化ガラス板を提供することである。第1の表面および第2の表面の各々が圧縮応力下にある。少なくとも1つのエッジが、第1の表面および第2の表面の少なくとも1つに対して角度θを形成し、90°≦θ≦180°であり、少なくとも1つのエッジの一部が、強化されない。また、ガラス板は、第1の表面および第2の表面の間の中央領域を有し、そこで中央領域が、少なくとも30MPaの引張応力下であり、そしてそこで少なくとも1つのエッジが、1.75kgまでの押込荷重に耐えることができる。
【0011】
これらおよびその他の態様、利点、および顕著な特徴が以下の詳細な説明、添付した図面、および添付した請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】大きめのイオン交換ガラス板からイオン交換ガラス板を切断した後に形成されたエッジの略斜視図である。
図2】(a)は、ガラス板の略斜視図および二次元平面歪2Dモデルにおいて使用される周囲条件である。(b)は、ガラス板の略断面図および二次元平面歪2Dモデルにおいて使用される周囲条件である。
図3】イオン交換ガラス板内およびガラス板のカットエッジの応力状態のプロットである。
図4】ガラス板の表面上の応力状態のプロットである。
図5】イオン交換ガラス板の表面およびカット面の両方に垂直なXY平面の主応力状態のプロットである。
図6】異なったエッジ形状の主応力のプロットである。
図7】イオン交換ガラス板の研削および引張応力領域により導入された亀裂の推定相互作用を示す略図である。
図8】エッチングされなかったエッジを有するイオン交換ガラス板のエッジ強度にエッジ形状が及ぼす効果を示すワイブル・プロットである。
図9】HF/HCl溶液でエッチングされたイオン交換ガラス板のエッジ強度にエッジ形状が及ぼす効果を示すワイブル・プロットである。
図10】鈍いおよび鋭い接触損傷の損傷発生の略側面図である。
図11】(a)は、放射状亀裂を有するガラス試料の顕微鏡写真である。(b)は、捕捉跡(arrest mark)を有するガラス試料の顕微鏡写真である。
図12】中央張力の関数としての押込荷重のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、同じ参照符号は、図面に示されるいくつかの図の全体にわたって同じまたは相当する部分を示す。また、特に断りがない限り、「上部」、「下部」、「外部の」、「内部の」等の用語は便宜的な語であり、限定的な用語として解釈されるべきでないことは理解されたい。さらに、群が、要素の群およびそれらの組み合わせの少なくとも1つを含むと説明されるときはいつでも、群は、個々にまたは互いに組合せてどちらかで、任意の数の列挙されたそれらの要素を含む、本質的にからなる、またはからなってもよいということは理解されたい。同様に、群が、要素の群またはそれらの組み合わせの少なくとも1つからなると説明されるときはいつでも、群が、個々にまたは互いに組合せてどちらかで、任意の数の列挙されたそれらの要素からなってもよいということは理解されたい。特に断りがない限り、値の範囲は、列挙されるとき、範囲の上限と下限の両方ならびにその間の任意の範囲を包含する。本明細書中で用いられるとき、名詞の単数形は、特に記載しない限り、「少なくとも1つ」、または「1つまたは複数」を意味する。また、本明細書および図面に開示された様々な特徴は、任意のおよび全ての組合せにおいて使用され得るということは理解されたい。
【0014】
本明細書中で用いられるとき、用語「ガラス(glass)」および「ガラス(glasses)」は、ガラスおよびガラスセラミックの両方を包含する。用語「ガラス物品(glass article)」および「ガラス物品(glass articles)」はそれらの最も広い意味において使用され、完全にまたは部分的にガラスおよび/またはガラスセラミックから製造された任意の物体を包含する。本明細書中で用いられるとき、用語「切断(切断)」は、限定されないが、切断砥石または切削刃、機械的切り込み、および破断などの本技術分野に公知のそれらの手段によるガラス物品の切断または分離、レーザー等を使用する照射による部分的または完全な分離を指す。
【0015】
図面全般および特に図1を参照して、図解は、特定の実施形態を説明するためのものであり、本開示または添付した請求の範囲をそれに限定することを意図しないことは理解されよう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、図面の特定の特徴および特定の図は、縮尺において極端に強調されて示されるかまたは明確かつ簡潔にする目的で略図で示される場合がある。
【0016】
電子通信および娯楽機器、車の窓ガラス、コンピュータ等の多くの分野において高強度ガラスに対する需要が増しており、このようなガラス物品の表面の品質を改良する絶え間ない取り組みがなされている。特に、ガラスの強度の増加および強度の変動の低減が目標とされている。ガラスが表面上の欠陥の存在のために張力下で破損することは本技術分野において広く知られている。火炎研磨は、このような欠陥を無くしてガラスの強度を増加させるために伝統的に使用されている。しかしながら、この技術は、一度に単一枚のガラスに対処できるにすぎず、強度の実際の強化は限られている。
【0017】
もっと最近では、イオン交換を使用して、ガラスの表面強度を改良している。イオン交換プロセスにおいて、ガラスの表面内または付近の比較的小さいイオンが、同じ原子価の比較的大きいイオンによって置換される。実用目的のために、イオンは、アルカリ金属イオン、銀等の一価金属カチオンである。イオン交換は、ガラスの表面を例えば、比較的大きいイオンを含有する溶融塩浴などのイオン交換媒体と接触させることによって行なわれる。例えば、ガラスの表面に存在する比較的小さいLiイオンが、イオン交換媒体内の比較的大きいNaイオンと交換されてもよく、ガラス内のNaイオンが、イオン交換媒体内のKイオンで置換されてもよい等々。ガラス内の小さなイオンを比較的大きいイオンで置換することによって、表面においておよびその付近に圧縮応力を生じさせ、ガラスの表面上の特定の微小欠陥を終結させ、表面の強化をもたらす。イオン交換プロセスの利点は、複数のガラス板が同時に加工され/強化されてもよいということである。
【0018】
多くの適用において、イオン交換プロセスを約350℃〜約500℃の範囲の温度において実施して、圧縮応力下の表面層および引張応力下の内部領域を生じさせる。いくつかの適用において、母板(すなわち、後で最終用途のために複数部分に分割され得るガラス板)は、切断されるかあるいは他の方法でより小さな部分に分けられる前にイオン交換される。一体化タッチ・ウインドウまたはスクリーンについては、例えば、イオン交換の後に、母板の表面上に導電性酸化インジウムスズ(ITO)パターンを堆積させ、次に、ガラスを構成部分に切断する。イオン交換層の存在はガラスの主表面を強化するが、分離または切断によって形成されたエッジにおいて内部引張領域が露出するためにガラスはまだ、比較的低い荷重において破損しやすく、4点曲げ強さ測定によって測定されたとき、エッジの弱化をもたらす。
【0019】
1つの方法において、高純度フッ化水素酸(HF)またはHF系酸ブレンドによる化学エッチングを使用して、イオン交換されたガラス板の切断/分離によって形成されたエッジの強度を増加させるか、またはイオン交換の後にガラスの表面強度をさらに改良する。化学エッチングプロセスは、有効に欠陥寸法を低減し、欠陥先端を鈍らせることによってガラスの強度をかなり強化する。化学エッチング方法の欠点は、HFを取り扱うときに人の保護装置が必要とされ、大量の化学廃棄物がプロセスの間に発生されるということである。したがって、ガラスの表面の品質を改良する「グリーン」技術を見出すことが望ましい。
【0020】
ガラスの強度に加えて、ガラスの強度分布の変化が小さいことも望ましい。ガラスの強度の変化が小さな範囲内であるように制御することによって、製造プロセスを容易に制御および改良することができ、ガラスのより高い収量を達成することができる。エッチングされたガラスの強度の変化は、エッチング前のガラスの強度の変化に非常に依存している。しかしながら、エッチングそれ自体は、強度の変化の低減を促進しない。
【0021】
切断および仕上技術を改良して均一な欠陥寸法を生じさせることによって、ガラス板の全体にわたってそしてエッジにおいてまたはその付近でガラスの強度の変化を減少させる場合がある。ガラスエッジの形状を調整することによって強化ガラスの4点曲げ強さを有効に増加させるための新規な、化学物質を含有しない低エネルギー方法が本明細書において開示される。強化ガラス物品のカットエッジにおいてのエッジ形状と固有エッジ強度との間の相関関係を理解するために数値シミュレーションを使用し、それによってガラス物品の4点曲げ強さを増加させる一群のエッジ形状を増す。
【0022】
ガラス板またはプレートをイオン交換母板(例えば、大きめのガラス板)から切断するプロセスは、カットエッジにおいて新しい表面の形成をもたらす。イオン交換によって生じた内部応力は、カットエッジが形成されるときに再分布される。カットエッジの造形は、エッジの応力状態を操作することを可能にし、したがって、水平4点曲げ試験においてより良く機能するエッジをもたらす。化学的強化からの残留応力をそのように操作することによって、水平4点曲げにおいての加荷重を増加させて、残留応力の影響を克服することができる。再分布されたエッジ応力の数値計算はエッジ形状をその強度に相関させ、実験データは相関関係を裏づけた。
【0023】
エッジ形状を変えることによって、切断されたイオン交換ガラスのエッジ強度は、化学的または熱的処理または積層を行なわずに増加される。改良されたワイブル傾きによって示されるように、ガラス物品およびカットエッジの強度の変化が低減される。本明細書において説明される方法は、任意の厚さまたは組成のガラスに適用可能である。
【0024】
したがって、一態様において、少なくとも約350MPaの4点曲げ強さを有する強化ガラス板が提供される。ガラス板は、熱的強化および化学的強化、例えば、イオン交換などの本技術分野に公知のそれらの手段によって強化されてもよい。ガラス板は、いくつかの実施形態において、約0.1mm〜約3mmまでの範囲の厚さを有する。他の実施形態において、ガラスは、約0.1mm〜約2mmまでの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態において、4点曲げ強さは、約350MPa〜約700MPaの範囲である。強化ガラス板は、少なくとも1つのエッジによって接合された第1の表面および第2の表面であって、第1の表面および第2の表面の各々が圧縮応力下にある、少なくとも1つのエッジによって接合された第1の表面および第2の表面と、第1の表面および第2の表面の間の中央領域であって、中央領域が引張応力下にある、第1の表面および第2の表面の間の中央領域とを有する。少なくとも1つのエッジが、第1の表面および第2の表面を接合し、第1の表面および第2の表面の少なくとも1つに対して角度θを形成し、そこで90°<θ<180°である。いくつかの実施形態において、90°<θ<150°であり、他の実施形態において、90°<θ<135°であり、さらに他の実施形態において、90°<θ<120°である。少なくとも1つのエッジの一部が、第1または第2の表面の圧縮応力以下である第2の圧縮応力下にある。
【0025】
いくつかの実施形態において、本技術分野に公知のそれらの手段を使用して少なくとも1つのエッジを所定の断面形に研削する。このような所定の断面形には、限定されないが、角の丸い断面形(例えば、θ=126°)、面取り断面形、ペンシル断面形(例えば、θ=135°)、丸め断面形、楕円断面形等を含む。例えば、400グリットの研削砥石で研削することによって少なくとも1つのエッジを所定の断面形に研削してもよい。所定の断面形を形成する間、このような研削は、表面上に亀裂および/または欠陥を生じさせる場合がある。一実施形態において、欠陥および/または亀裂が、約22μmの平均欠陥寸法を有する。いくつかの実施形態において、平均欠陥寸法は、約0.1μmから約45μmまでの範囲である。
【0026】
所定の断面形に研削した後、本技術分野に公知のそれらの手段を使用して少なくとも1つのエッジをさらに研磨してもよい。さらに別の実施形態において、少なくとも1つのエッジを、研削および/または研磨した後、フッ化水素酸系エッチング剤を使用してエッチングして、エッジ上に存在している場合がある欠陥および/または鈍い亀裂先端をさらに除去してもよい。このようなエッチング剤およびエッジ処理の非限定的な例は、2010年8月24日に出願された、“Method of Strengthening Edge of Glass Article”と題されたJoseph M. Matusickらによる米国特許出願第12/862,096号明細書に記載されており、その内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0027】
強化ガラス板の第1および第2の表面の各々が、少なくとも約500MPaの圧縮応力下にある。圧縮応力下にあるガラスの層が、第1の表面および第2の表面の各々からガラスのバルク中に約15μmから約70μmまでの範囲の層の深さまで延在する。
【0028】
本明細書に記載されたガラスは、イオン交換によって化学的に強化される任意のガラスを含むかまたはからなってもよい。いくつかの実施形態において、ガラスはアルカリアルミノシリケートガラスである。
【0029】
一実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約64モル%〜約68モル%のSiO、約12モル%〜約16モル%のNaO、約8モル%〜約12モル%のAl、0モル%〜約3モル%のB、約2モル%〜約5モル%のKO、約4モル%〜約6モル%のMgO、および0モル%〜約5モル%のCaOを含み、そこで66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%、NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(NaO+B)−Al≧2モル%、2モル%≦NaO-Al≦6モル%、および4モル%≦(NaO+KO)−Al≦10モル%である。このガラスは、2007年7月27日に出願された“Down−Drawable,Chemically Strengthened Glass for Cover Plate”と題されたAdam J.Ellisonらによる米国特許第7,666,511号明細書に記載されており、それは2007年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/930,808号に対する優先権を主張し、その内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0030】
別の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、アルミナおよび酸化ホウ素の少なくとも1つ、ならびにアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の少なくとも1つを含み、そこで−15モル%≦(RO+R’O−Al−ZrO)−B≦4モル%であり、RがLi、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つであり、R’がMg、Ca、Sr、およびBaのうちの1つである。いくつかの実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約62モル%〜約70モル.%のSiO、0モル%〜約18モル%のAl、0モル%〜約10モル%のB、0モル%〜約15モル%のLiO、0モル%〜約20モル%のNaO、0モル%〜約18モル%のKO、0モル%〜約17モル%のMgO、0モル%〜約18モル%のCaO、および0モル%〜約5モル%のZrOを含む。このガラスは、2008年11月25日に出願された“Glasses Having Improved Toughness and Scratch Resistance”と題されたMatthew J.Dejnekaらによる米国特許出願第12/277,573号明細書に記載されており、2008年11月29日に出願された米国仮特許出願第61/004,677号に対する優先権を主張し、その内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0031】
別の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約60モル%〜約70モル%のSiO、約6モル%〜約14モル%のAl、0モル%〜約15モル%のB、0モル%〜約15モル%のLiO、0モル%〜約20モル%のNaO、0モル%〜約10モル%のKO、0モル%〜約8モル%のMgO、0モル%〜約10モル%のCaO、0モル%〜約5モル%のZrO、0モル%〜約1モル%のSnO、0モル%〜約1モル%のCeO、約50ppmのAs、および約50ppm未満のSbを含み、そこで12モル%≦LiO+NaO+KO≦20モル%および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。特定の実施形態において、ガラスが、60〜72モル%のSiO、6〜14モル%のAl、0〜15モル%のB、0〜1モル%のLiO、0〜20モル%のNaO、0〜10モル%のKO、0〜2.5モル%のCaO、0〜5モル%のZrO、0〜1モル%のSnO、および0〜1モル%のCeO(12モル%≦LiO+NaO+KO≦20モル%)、および50ppm未満のAsを含む。このガラスは、2009年2月25日に出願された“Fining Agents for Silicate Glasses”と題された、Sinue Gomezらによる米国特許第8,158,543号明細書および2012年6月13日に出願された、“Silicate Glasses Having Low Seed Concentration”と題されたSinue Gomezらによる米国特許出願第13/495,355号明細書に記載されており、両方とも、2008年2月26日に出願された米国仮特許出願第61/067,130号に対する優先権を主張し、それらの内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0032】
別の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、SiOおよびNaOを含み、そこでガラスは、ガラスが35キロポアズ(kpoise)の粘度を有する温度T35kpを有し、ジルコンが分解してZrOおよびSiOを形成する温度Tbreakdownが、T35kpより大きい。いくつかの実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約61モル%〜約75モル%のSiO、約7モル%〜約15モル%のAl、0モル%〜約12モル%のB、約9モル%〜約21モル%のNaO、約0モル%〜約4モル%のKO、0モル%〜約7モル%のMgO、および0モル%〜約3モル%のCaOを含む。このガラスは、2010年8月10日に出願された“Zircon Compatible Glasses for Down Draw”と題されたMatthew J.Dejnekaらによる米国特許出願第12/856,840号明細書に記載されており、それは2009年8月29日に出願された米国仮特許出願第61/235,762号に対する優先権を主張し、それらの内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0033】
別の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも50モル%のSiOと、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの改質剤とを含み、そこで[(Al(モル%)+B(モル%))/(Σアルカリ金属改質剤(モル%))]>1である。いくつかの実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、50モル%〜約72モル%のSiO、約9モル%〜約17モル%のAl、約2モル%〜約12モル%のB、約8モル%〜約16モル%のNaO、および0モル%〜約4モル%のKOを含む。このガラスは、2010年8月18日に出願された“Crack And Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom”と題されたKristen L.Barefootらによる米国特許出願第12/858,490号明細書に記載されており、それは2009年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/235,767号に対する優先権を主張し、それらの内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0034】
別の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、SiO、Al、P、および少なくとも1つのアルカリ金属酸化物(RO)(0.75≦[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦1.2、M=Al+B)を含む。いくつかの実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約40モル%〜約70モル%のSiO、0モル%〜約28モル%のB、0モル%〜約28モル%のAl、約1モル%〜約14モル%のP、および約12モル%〜約16モル%のROを含み、特定の実施形態において、約40〜約64モル%のSiO、0モル%〜約8モル%のB、約16モル%〜約28モル%のAl、約2モル%〜約12%のP、および約12モル%〜約16モル%のROを含む。このガラスは、2011年11月28日に出願された“Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold”と題されたDana C.Bookbinderらによる米国特許出願第13/305,271号明細書に記載されており、それは2010年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/417,941号に対する優先権を主張し、それらの内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0035】
さらに他の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約4モル%のPを含み、そこで(M(モル%)/RO(モル%))<1、M=Al+B、そしてROが、アルカリアルミノシリケートガラス中に存在している一価および二価カチオン酸化物の総計である。いくつかの実施形態において、一価および二価カチオン酸化物が、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO、およびZnOからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ガラスが0モル%のBを含む。このガラスは、2012年11月15日に出願された“Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold”と題されたTimothy M.Grossによる米国特許出願第13/677,805号明細書に記載されており、それは2011年11月16日に出願された米国仮特許出願第61/560,434号に対する優先権を主張し、それらの内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0036】
さらに別の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約50モル%のSiOおよび少なくとも約11モル%のNaOを含み、圧縮応力が少なくとも約900MPaである。いくつかの実施形態において、ガラスはさらに、Alと、B、KO、MgOおよびZnOの少なくとも1つとを含み、そこで−340+27.1・Al−28.7・B+15.6・NaO−61.4・KO+8.1・(MgO+ZnO)≧0モル%である。特定の実施形態において、ガラスが、約7モル%〜約26モル%のAl、0モル%〜約9モル%のB、約11モル%〜約25モル%のNaO、0モル%〜約2.5モル%のKO、0モル%〜約8.5モル%のMgO、および0モル%〜約1.5モル%のCaOを含む。このガラスは、2012年6月26日に出願された“Ion Exchangeable Glass with High Compressive Stress”と題されたMatthew J.Dejnekaらによる米国特許出願第13/533,298号明細書に記載されており、それは2011年7月1日に出願された米国仮特許出願第61/503,734号に対する優先権を主張し、それらの内容をそれらの全体において参照によって本明細書に組み込む。
【0037】
他の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約50モル%のSiO、少なくとも約10モル%のRO(ROがNaOを含む)、Al(−0.5モル%≦Al(モル%)−RO(モル%)≦2モル%)およびB(B(モル%)−(RO(モル%)−Al(モル%))≧4.5モル%)を含む。特定の実施形態において、ガラスが、少なくとも約50モル%のSiO、約12モル%〜約22モル%のAl、約4.5モル%〜約10モル%のB、約10モル%〜約20モル%のNaO、0モル%〜約5モル%のKO、少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、またはそれらの組合せ(0モル%≦MgO≦6および0≦ZnO≦6モル%)、そして、任意選択により、CaO、BaO、およびSrOの少なくとも1つ(0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%)を含む。このガラスは、2012年5月31日に出願された“Ion Exchangeable Glass with High Damage Resistance”と題されたMatthew J.Dejnekaらによる米国仮特許出願第61/653,485号明細書に記載されており、その内容をそれらの全体において参照によって組み込む。
【0038】
他の実施形態において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約50モル%のSiO、少なくとも約10モル%のRO(ROがNaOを含む)、Al(Al(モル%)<RO(モル%))、およびB(B(モル%)−(RO(モル%)−Al(モル%))≧3モル%)を含む。特定の実施形態において、ガラスが、少なくとも約50モル%のSiO、約9モル%〜約22モル%のAl、約3モル%〜約10モル%のB、約9モル%〜約20モル%のNaO、0モル%〜約5モル%のKO、少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、またはそれらの組合せ(0≦MgO≦6モル%および0≦ZnO≦6モル%)、そして、任意選択により、CaO、BaO、およびSrOの少なくとも1つ(0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%)を含む。特定の実施形態において、ガラスは、ガラスが約30キロポアズ〜約40キロポアズの範囲の粘度を有する温度に等しいジルコン分解温度を有する。ガラスは、2012年5月31日に出願された“Zircon Compatible,Ion Exchangeable Glass with High Damage Resistance”と題されたMatthew J.Dejnekaらによる米国仮特許出願第61/653,489号明細書に記載されており、その内容をそれらの全体において参照によって組み込む。
【0039】
いくつかの実施形態において、上述のアルカリアルミノシリケートガラスは、リチウム、ホウ素、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、アンチモン、およびヒ素のうちの少なくとも1つを実質的に含有しない(すなわち、0モル%を含有する)。
【0040】
いくつかの実施形態において、上述のアルカリアルミノシリケートガラスは、スロット延伸、溶融延伸、再延伸等の本技術分野に公知の方法によってダウンドロー可能であり、少なくとも130キロポアズの液相線粘度を有する。
【0041】
別の態様において、上述の強化ガラス板を製造する方法が提供される。第1の工程において、方法は、圧縮応力下の第1の表面および第2の表面と、引張応力、または中央張力下にある、第1の表面および第2の表面の間の中央領域とを有する強化ガラス板を提供する工程を包含する。いくつかの実施形態において、強化ガラス板を提供する工程は、限定されないが、スロット延伸および溶融延伸法などの本技術分野に公知のそれらの手段によってガラス板をダウンドローする工程を包含する。あるいは、ガラス板は、フロート、キャスティング、モールディング、または本技術分野に公知の他の手段によって提供されてもよい。強化ガラス板を提供する工程は、化学的または熱的手段、例えば、限定されないが、熱調質、イオン交換等によってガラス板を強化する工程をさらに包含してもよい。ガラスを強化して、約400MPa〜約1000MPaの範囲の最大圧縮応力を得ることができる。いくつかの実施形態において、ガラスをイオン交換して、少なくとも500MPaの圧縮応力を得る。圧縮応力下の層は、第1および第2の表面の各々から約15μm〜約70μmの範囲の層の深さまで延在する。
【0042】
次に、強化ガラス板の第1および第2の表面を接合する少なくとも1つのエッジを形成する。少なくとも1つのエッジの一部が第2の圧縮応力下にある。第2の圧縮応力は、第1の表面および第2の表面の圧縮応力以下である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエッジの第2の部分が、中央領域の引張応力以下である引張応力下にある。
【0043】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエッジを形成する工程が、所定の断面形、例えば、限定されないが、角の丸い、丸め、ペンシルまたは弾丸の先端状、および楕円断面形などの上述のそれらの断面形を有するエッジを形成する工程を包含する。エッジを形成する工程は、エッジを研削して、所定の断面形を得る工程と、その後に、エッジを研磨する工程および/またはエッジをフッ化水素酸系エッチング剤でエッチングする工程とを包含してもよい。少なくとも1つのエッジが、第1の表面および第2の表面の少なくとも1つに対して角度θを形成し、そこで90°<θ<180°である。いくつかの実施形態において、90°<θ<150°であり、他の実施形態において、90°<θ<135°であり、さらに他の実施形態において、90°<θ<120°である。所望の断面形に形成された少なくとも1つのエッジが、約22μmの平均サイズを有する複数の欠陥を含有する。研削および任意選択の研磨および/またはエッチングによって所定の断面形をエッジ上に形成した後、強化ガラス板が少なくとも約350MPaの4点曲げ強さを有する。いくつかの実施形態において、4点曲げ強さは、約350MPa〜約700MPaの範囲である。
【0044】
イオン交換プロセスは、ガラス板の表面上に二軸圧縮およびガラス板の中央に二軸引張応力を生じさせる。イオン交換ガラス板は、例えば機械的切り込みおよび破断、レーザー分離等の本技術分野に公知のそれらの技術によって切断されるかあるいは他の方法で分離されるとき、残留応力は、このような切断によって形成されたエッジ付近に再分布される。再分布されたエッジの応力状態は、水平4点曲げ試験においてエッジ強度に影響を与える因子である。数値モデリングおよび/または分析法を使用して、再分布されたエッジの応力状態を計算し、エッジ応力をガラスの組成、厚さ、およびエッジ形状に対して比較した。大きめのイオン交換ガラス板から部分を切断した後に形成されるエッジを図1に図解的に示す。XYZ座標系をガラス板に置くと、カットエッジ140はXY平面に垂直であり、他方、表面110、112はYZ平面に平行であり、Y方向はガラス板の厚さに相当する。
【0045】
エッジ140の応力状態は、二次元(2D)平面歪モデルを使用して計算された。直線エッジ142および表面110を有するアルカリアルミノシリケートガラス(Corning Inc.製のGorilla(登録商標)ガラス)の厚さ1.1mmのガラス板についてエッジの応力状態を計算するために初期モデルを開発した。数値シミュレーションは、図2aおよび2bに示された領域をもたらす1/4対称を利用する。また、図2aおよび2bは、モデルにおいて使用される周囲条件を示す。
【0046】
イオン交換ガラス板100およびカットエッジ(または面)140の応力状態を図3にプロットする。エッジの応力状態の特徴は、カットエッジ142の一部が受けるZ方向の引張応力を包含する。ガラスの表面110は、直線カットエッジ140から非常に離れた領域において二軸圧縮下にある。しかしながら、ガラス板の厚さに等しい距離内では、図4(ガラスの表面上の応力状態のプロットである)に示されるように、表面110は、カットエッジ付近で二軸圧縮下にはない。
【0047】
イオン交換ガラス板の表面110およびカット面142の両方に垂直なXY平面の主応力状態が図5に示される。引張主応力領域は、表面110およびカット面の交わり付近のXY平面に生じる。XY平面のこの主応力の最大値の大きさは、中央張力(すなわち、切断前のガラスの最大引張応力CT)よりも大きく、表面110およびカット面142の近くに位置づけられる。
【0048】
a)直線断面形、b)角の丸い(図6bにおいて“SP角の丸い(θ=126°)”)断面形、c)面、d)ペンシルまたは弾丸(例えば、θ=135°)先端状(図6dにおいて“FZ弾丸先端状”)断面形、e)丸め断面形、およびf)先端を切断された楕円などの異なったエッジ形状/断面形についてエッジ応力を計算した。異なったエッジ形状の主応力のプロットを図6a〜fに示す。Gorilla(登録商標)ガラスの厚さ1.1mmのガラス板についてシミュレーションを実施した。表面110とカット面142との間の角度θが大きくなればなるほど(図1)、最大主応力の大きさが小さくなる。
【0049】
母板から切断された強化ガラス板の新たに形成されたエッジを必要とされる形状に研削し、次に、HFおよびHCl酸の混合物を使用してエッチングした。ガラスの下部表面は、水平4点曲げ試験においてエッジの長さに沿う引張応力を受ける。図1に示された座標系によって、切断されたガラス板の下部は、Z方向に応力を受ける。表面110、112およびエッジ142の交わり付近に存在している引張応力領域は、曲げ応力に垂直な平面内にあり、したがって、適用される応力の大きさを付加および増加させない。代わりに、この引張応力領域は、機械加工の間に生じた亀裂と相互作用して、強度を制限する欠陥をもたらす場合がある。研削のために生じた亀裂と引張応力領域との推定相互作用は、図7aおよび7bに図解的に示される。図7aおよび7bに示されるように、研削の間に角に生じる亀裂151、152は引張応力と相互作用し、ガラスのチッピングをこの領域にもたらす場合がある。図7aおよび7bにおいて位置「C」として示された、このチッピング事象の終了によって、撚梳(twist hackles)が形成される場合があり、それは曲げ応力に垂直な方向の欠陥をもたらし、それらの一部が強度を制限する場合がある。したがって、エッジの形状は、水平4点曲げ試験において示される強度に関連している場合がある。例えば、表面110(または112)とエッジ140(または142)との間の交わりにおいての引張応力の大きさは、角の丸いエッジ/断面形(図6のb、θ=126°)と比較して直線エッジ断面形(図6のa、θ=90°)についていっそう高い。同様に、角の丸いエッジ/断面形の引張応力の大きさは、ペンシルまたは弾丸エッジ/断面形(図6のd、θ=135°)の引張応力の大きさと比較していっそう高い。この分析に基づいて、ペンシルまたは弾丸エッジ断面形の強度は、角の丸いエッジ/断面形の強度より大きいはずであり、角の丸いエッジ/断面形の強度は、直線エッジ断面形の強度より大きいはずである。
【0050】
強度試験を実施して、研削エッジの形状がエッジ強度に及ぼす効果を評価し、試験結果から作られたワイブル・プロットを図8および9に示す。図8は、研削された角の丸い(θ=126°)エッジ(図8の線1)、平らな(θ=90°)エッジ(図8の線2)、およびペンシル(θ=135°)エッジ(図8の線3)(そこでエッジはエッチングされなかった)を有する試料について研削エッジがエッジ強度に及ぼす効果を示す強度試験からのワイブル・プロットである。400グリットの研削砥石を使用して研削エッジを厚さ1.1mmのイオン交換されたGorilla(登録商標)ガラス上に形成した。図9は、平らな(θ=90°)エッジ(図9の線1)、角の丸い(θ=126°)エッジ(図9の線2)、およびペンシル(θ=135°)エッジ(図9の線3)試料(そこでエッジは研削され、32分間にわたって5%HF/5%HCl溶液を使用してエッチングされた)についてエッジ形状がエッジ強度に及ぼす効果を示すワイブル・プロットである。400グリットの研削砥石を使用して研削エッジが1.1mmのイオン交換されたGorilla(登録商標)ガラス上に形成され、エッジが研削後にエッチングされた。実験データは、エッジ形状/断面形がガラス板のエッジにおいて応力状態を操作および制御することを可能にし、水平4点曲げ試験においてより良く機能するエッジをもたらすことを示す。
【0051】
また、円錐球状(conospherical)圧子幾何形状からの鋭いおよび鈍い接触損傷について押込による残留引張応力下のガラスエッジの損傷抵抗を調べた。円錐球状押込プローブを使用するガラスエッジ接触損傷は、2つの発生経路から起こる:荷重をかける間、メジアン亀裂の発生による鋭い接触損傷が起こり、その後に、深い放射状亀裂に伝播するか、または荷重をかける間、円錐の成長があるリング亀裂の発生による鈍い接触損傷が起こり、押込みされた材料の破砕をもたらす。鋭い接触損傷が残留引張応力下でガラスエッジ上に生じる場合、メジアン/放射状亀裂系が貫通亀裂に成長し、荷重除去後に伝播し、したがってガラス試料を2つに分離する。鈍い接触損傷が生じる場合、結果として生じた破砕が、押込みされた領域を除去し、亀裂伝播は起こらない。圧子半径、出発時の欠陥母集団、および残留引張応力の大きさが、放射状亀裂に対して円錐(破砕)を推進する。より大きな半径先端、より深い欠陥、およびより低い引張応力の大きさによって、与えられた押込荷重において円錐亀裂が優先的に生じる。
【0052】
いくつかの態様において、本明細書に記載された強化ガラス板は、少なくとも約24Mpa、いくつかの実施形態において、少なくとも約30Mpa、そしてさらに他の実施形態において、少なくとも約50MPaの中央張力を有し、イオン交換によって強化されないかまたは未強化の少なくとも1つのエッジを有する。約55マイクロメートル(μm)未満、いくつかの実施形態において、約45μm未満の半径を有する30°円錐圧子によって接触されるとき、少なくとも1つのエッジは、約1.75kgまでの押込荷重に耐えることができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエッジは、約1.4kgまで、他の実施形態において、約0.8kgまでの押込荷重に耐えることができる。円錐圧子が約55μmより大きい半径を有するそれらの場合、押込は鈍い押込と称される。この形態において、押込荷重下の破損は破砕によって生じる。円錐圧子が約55μm未満の半径を有するとき、押込は鋭い押込と称され、押込荷重下の破損は放射状亀裂によって生じる。
【0053】
鈍いおよび鋭い接触損傷の両方の損傷発生が図10に図解的に示される。円錐球状の接触損傷の発生は、圧子200とガラスエッジ210との初期接触の間に始まる。先端205が、剪断流を開始するために十分に鋭い場合、メジアン亀裂220が押込部位212の下に形成される。プレート状試料方向に平行にガラスエッジ210上に残留引張応力があるので、メジアン亀裂220は残留応力場に垂直に方向付けられる。次いで、メジアン亀裂は、押込事象の荷重をかける部分の間に放射状亀裂222に成長する。次いで、この放射状亀裂は、貫通亀裂に成長し続け、試料は荷重をかける間に破損する。押込事象が、放射状亀裂を生じるが貫通亀裂に伝播しないために必要な荷重において荷重をかけるのを止めるように選択される場合でも、捕捉跡230が形成され、イオン交換プロセスからのガラス内の残留引張応力のために押込事象の後にしばらくの間、亀裂が伝播する。ガラスの厚さ240まで成長した後、イオン交換からの残留引張応力のために貫通亀裂が伝播して破損する。
【0054】
生じたエッジの損傷は、圧子先端半径が55マイクロメートル(μm)より大きいときに鈍い損傷の発生経路から起こる。鈍い接触損傷は、剪断流の原因がなく全く弾性であり、荷重をかけたときにリング亀裂が出現し(図10の214)、その後に、荷重が増加するにつれて円錐亀裂伝播216が起こることによって確認される。荷重除去の後、イオン交換からの残留引張応力のために円錐亀裂が成長し続ける可能性があり、成長は押込みされた表面に平行に始まり、次いで、それらの成長のために局所的な剛性が変化するにつれて上向きになり、最終的に押込みされた表面を横断し、したがって押込みされた材料の破砕をもたらし、押込部位を有効に除去してクレーターを残す。先端半径が約75μmより大きいとき、円錐亀裂が放射状亀裂の成長に対して優勢である。
【0055】
この作業のために、イオン交換によって高い残留引張応力を有するCorning Gorilla(登録商標)ガラス試料とイオン交換によって低い欠陥母集団を有し低い残留引張応力を達成するCorning Gorilla(登録商標)ガラス試料とを用意し、機械加工(400グリット角の丸い)またはレーザースクライブ・ブレイク(LSB)技術のどちらかによって分離した。低残留引張応力試料は主に、損傷の発生を記録するために使用されたが、高残留引張応力試験片は、機械加工されたガラスエッジの損傷抵抗を定量化するために使用された。表1は、調査された試料のFSM中央張力(CT)レベルおよびエッジ条件を記載する。機械加工されたエッジはaを指し、LSBは、レーザースクライブ・ブレイクエッジを指す。
【0056】
【表1】
【0057】
プロファイラー能力を有するInstron 4400荷重フレームを使用して、押込事象を設定した。標準事象は、規定荷重まで0.2mm/分においての荷重部分、15秒のホールド、次に0.2mm/分においての荷重除去を必要とする。この作業のために使用される押込先端は、円錐球状の幾何形状であるタングステンカーバイド「ペンシル型」スクライブであった。円錐の角度は30°であり、初期先端半径は45μmであった。この先端が使用されるとき、半径は55μm超にされるが、そのポイントで接触損傷が鋭いから鈍いに移行し、圧子が除かれた。先端が、剪断流を開始するために十分に鋭いそれらの場合、押込部位の顕微鏡写真である図11に見られるように、メジアン亀裂220が押込部位の下に形成される。プレート状試験片方向に平行にガラスエッジ上に残留引張応力があるので、メジアン亀裂は残留応力場に垂直に方向付けられる。図11aに示される放射状亀裂は最終的に、残留引張応力のために破損に至るまで大きくなる貫通亀裂に成長した。図11bに示される試料において、押込事象は、放射状亀裂を生じるが貫通亀裂に伝播しないために必要な荷重において荷重をかけるのを止め、捕捉跡230が形成された。
【0058】
残留引張応力下のガラス内の接触損傷の発生のこの情報に基づいて、エッジの接触損傷抵抗対イオン交換による残留引張応力の量がランク付けされる。試料上で閾値試験を実施して、生じた欠陥が押込事象後の数秒以内に破損する荷重を調べた。図12にプロットされたデータは、残留引張応力が増加するにつれて、欠陥が生じた後に自己伝播のために必要とされる荷重が減少することを示す。この幾何形状を有する試料について、観察可能な亀裂伝播を生じる、すなわち、亀裂が試験片の一方の面から他方の面に約数秒で成長する一定の残留引張応力レベルがある。自己分離のための閾値押込荷重、ならびに亀裂速度が観察可能であるかまたは致命的であるかどうかということが表2に記載される。
【0059】
【表2】
【0060】
これらの結果に基づいて、残留引張応力下のガラスエッジの円錐球状押込は、主に圧子の半径に依存する2つの損傷の発生経路を示すことができる。鋭い接触損傷は約45μm以下の先端半径によって生じ、先端半径が約55マイクロメートル超に増加するにつれて鈍い接触損傷に移行する。さらに、損傷抵抗が残留引張応力によって変化するだけでなく、自己分離する間に亀裂速度が変化する。
【0061】
典型的な実施形態が説明目的で示されたが、前述の説明は、本開示の範囲または添付した請求の範囲に限定を課すと考えられるべきでない。したがって、本開示の精神および範囲または添付した請求の範囲から逸脱せずに様々な改良、改作、および代替物が当業者には考えられるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図12