(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置推定手段は、前記スピーカから前記測定音が放射されてから、前記第一のマイクによって前記測定音の反射音が検出されるまでの時間差を算出し、前記時間差に基づいて物体の位置を推定する、
請求項1記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見)
図1は、前記特許文献1に記載された従来の(エンジン信号に起因する)車室内騒音の低減装置の構成を示すものである。
【0009】
1a〜1dは車室内に設置され騒音とは逆位相の音を放射する4個の制御スピーカ、2a〜2dは車室内の各シート近傍に設置され騒音制御誤差を検出する4個の誤差検出マイク、3はエンジン振動の検出信号を基準信号として制御スピーカ1a〜1dから放射する制御音の信号を生成するコントローラ、4はシートベルトの着用検出手段(乗員位置センサー)の検出信号に基づいて乗員がいる座席の誤差検出マイクの情報及び出力信号をコントローラ3に入力するマイク選択部である。
【0010】
コントローラ3には、あらかじめ制御スピーカ1a〜1dから誤差検出マイク2a〜2dへの音響伝達関数GDが保存されている。コントローラ3は、マイク選択部4から入力された誤差検出マイクの情報に基づき、騒音を低減すべき場所にある誤差検出マイクの出力信号が低減するような制御音信号を生成する。
図1の構成は、マイク選択部4によって誤差検出マイク2aが選択された場合を示しており、コントローラ3は制御スピーカ1a〜1dから誤差検出マイク2aへの音響伝達関数GD11、GD21、GD31、GD41を用いて公知のフィルタードX−LMSアルゴリズムにより制御音信号を生成する。
【0011】
図1に示すように、従来の車室内騒音の低減装置は乗員位置センサーを用いて騒音を低減すべき場所を特定し、最適な制御音信号を生成出来る。その結果、乗員の人数や位置の組み合わせによらず乗員位置において騒音を低減することが出来る。
【0012】
しかしながら、上記した従来の構成では、乗員の姿勢や体型が想定する標準的な条件と異なる場合、乗員の耳位置が誤差検出マイクから離れてしまうため、常時、乗員の頭部位置で騒音を低減することが出来ない。よって、常時、乗員の姿勢や体系に関わらず乗員頭部位置で騒音を低減するために、制御スピーカと乗員頭部位置の相対位置関係を認識し制御音信号を最適に生成しなければならない課題を有する。この課題を解決するため、例えば、車室内にカメラを設置し、撮影映像を分析して乗員の詳細な位置を認識し騒音低減する制御音信号を最適に生成する構成も考えられる。しかしながら、車室内にカメラを設置する、画像認識の潤沢な信号処理が必要という新たな問題が発生する。
【0013】
以上の課題を解決すべく本能動騒音制御装置は、測定音と騒音を検出する第一のマイクと、制御特性に基づき前記第一のマイクにて検出された騒音成分が減衰するような第一の制御音を生成する制御手段と、第一の期間に、制御手段が生成した第一の制御音と、測定音とを放射するスピーカと、測定音が物体に反射した後の反射音に基づいて物体の位置を推定する位置推定手段を具備し、位置推定手段は、推定した位置の騒音が減衰するように制御手段の制御特性を決定し、スピーカは、第一の期間以外の期間である第二の期間に、位置推定手段により決定された制御特性よる第二の制御音を放射する。
【0014】
なお、位置推定手段は、スピーカから測定音が放射されてから、第一のマイクによって測定音成分の反射音が検出されるまでの時間差を算出し、時間差に基づいて物体の位置を推定してもよい。
【0015】
なお、測定音は騒音をあらかじめ記録したものであってもよい。
【0016】
なお、位置推定手段は、スピーカから測定音が放射されてから、第一のマイクによって測定音成分が検出されるまでの時間差を算出し、時間差に基づいて物体の位置を推定する信号分析手段と、信号分析手段によって推定された物体の位置に基づいて、制御手段が第二の制御音を算出するための係数を算出する係数設定手段と、を含んでいてもよい。
【0017】
なお、信号分析手段は、第一のマイクによって検出された騒音を測定音として保存するメモリ部と、メモリ部に保存されスピーカから出力される測定音と、第一のマイクから入力される反射音と、の相互相関関数を算出する分析部と、分析部が算出した相互相関関数から、第一のマイクと物体との距離を推定する推定部とを含んでいてもよい。
【0018】
なお、推定部は、相互相関関数が大きな値を持つ最小の時間を反射音到達時間とし、第一のマイクと物体との距離を推定してもよい。
【0019】
なお、第一のマイクとは異なる第二のマイクを更に備え、第一のマイクと第二のマイクとの反射音の到達時間差により、物体の方向を検出してもよい。
【0020】
また、本開示の制御方法は、マイクと制御手段とスピーカと位置推定手段とを備える制御装置を制御する制御方法であって、マイクを用いて、騒音を検出し、制御手段を用いて、前記騒音が減衰する第一の制御音を生成し、スピーカを用いて、第一の期間に、第一の制御音と測定音とを放射し、位置推定手段を用いて、測定音が放射されてから、マイクによって測定音成分の反射音が検出されるまでの時間差を算出し、時間差に基づいて物体の位置を推定し、推定した位置の騒音が減衰する第二の制御音を生成する制御特性を決定し、スピーカを用いて、第一の期間以外の期間である第二の期間に、位置推定手段により決定された制御特性よる第二の制御音を放射してもよい。
【0021】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0022】
以下本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図2は、本開示の実施の形態1の能動騒音制御装置の構成を示す。本実施の形態における能動騒音制御装置は、騒音検出マイク7、制御フィルタ8、加算器9、制御スピーカ10、誤差検出マイク11、物体位置推定手段100を備える。物体位置推定手段100には距離測定制御手段12、信号分析手段13、係数設定手段14、が含まれる。なお、これらの構成は一例であり、一部の構成が欠けていてもよい。以下各構成について説明する。
【0024】
5は騒音を低減する対象である乗員の頭部、6は騒音源、7は騒音源近傍に設置され騒音信号を検出する騒音検出マイク、8は騒音検出マイク7が検出する騒音信号をデジタルフィルタ処理し制御音信号を生成する制御フィルタ、9は制御音信号と後述する測定音信号を加算する加算器、10は加算器9で加算された信号を音響放射する制御スピーカ、11は制御スピーカ10の近傍に設置される誤差検出マイク、12は乗員の頭部5と制御スピーカ10の距離を測定する動作を制御する距離測定制御手段、13は騒音信号と誤差検出マイク11の検出信号と距離測定制御手段12の制御信号に基づいて乗員の頭部5と制御スピーカ10の距離を推定する信号分析手段、14は信号分析手段の推定結果に基づいて制御フィルタ8のデジタルフィルタ係数を設定する係数設定手段である。なお、騒音検出マイク7と、誤差検出マイク11を別の構成として記載したが、同一のマイクを用いてもよい。
【0025】
以下、
図2で示す構成の騒音制御動作について説明する。
【0026】
騒音制御動作の初期では、制御フィルタ8には誤差検出マイク11の位置を騒音低減位置とするデジタルフィルタ係数が設定されている。
【0027】
所定の時間後、同時に、距離測定制御手段12の制御によって、信号分析手段13は制御スピーカ10と乗員の頭部5の距離を測定する動作を始める。距離は、制御スピーカ10から放射される測定音が乗員の頭部5で反射し誤差検出マイク11まで到達する時間を測定することによって間接的に測定される。
図3に測定音の反射と距離推定の関係を示す。制御スピーカ10と乗員の頭部5の距離をL、反射音到達時間をΔt、音速をCとしたとき、制御スピーカ10と誤差検出マイク11が近接した位置にあれば距離Lは、L≒Δt×C/2で計算出来る。
【0028】
信号分析手段13と係数設定手段14の構成を
図4に示す。信号分析手段13は一定時間の騒音信号を騒音メモリ部15に保存する。騒音メモリ部15に保存された騒音信号は一定時間後に測定音信号として加算器9と相互相関関数分析部16に出力される。加算器9に出力された測定音信号は、制御スピーカ10から放射された後、乗員の頭部5で反射され誤差検出マイク11で検出される。このとき、騒音源6から放射された騒音が誤差検出マイク11近傍に到来しているが、誤差検出マイク11の位置を騒音低減位置とする制御音が放射され続けているため、誤差検出マイク11近傍では騒音と制御音が打ち消しあい、測定音の反射音のみを高い精度で検出することが出来る。ここで信号分析手段13は騒音信号を一定時間保存すると記載したが、この一定時間については特に限定しない。測定音として出力し誤差検出マイク11で反射音が検出できる最小の時間分保存されていればよい。また騒音メモリ部15に保存された騒音信号は一定時間後に出力されると記載したが、この一定時間についても特に限定しない。
【0029】
相互相関関数分析部16は、騒音メモリ部15から入力される測定音信号と誤差検出マイク11から入力される反射音の相互相関関数を公知の算出式によって計算する。相互相関関数は2つの信号列について、一方の信号列を時間軸上にずらしたときもう一方の信号列との類似度(相関性)を示したものであり、時間関数として表される。
図5、
図6にL=1mの場合に相互相関関数を算出した結果を示す。
図5(a)は制御スピーカ10と誤差検出マイク11及び乗員の頭部5の位置関係を示し、
図5(b)は測定音の振幅周波数特性を示す。
図6は、測定音信号と誤差検出マイク11が検出した反射音信号の相互相関関数を算出した結果である。5.7ms時間をずらしたときに2つの信号列が大きな相関を示しており、更に時間をずらしたときにも大きな相関を示す。これは、5.7ms経ったときに乗員の頭部5で反射した反射音が、直接、誤差検出マイク11に到達したことを示し、反射音が誤差検出マイク11に到達するまでに、更に周囲にある壁等の物体に反射し誤差検出マイク11に到達したことを示す。
【0030】
距離推定部17は相互相関関数が大きな値を持つ最小の時間を反射音到達時間とし、L=5.7×340/2=97cm(約1m)を乗員の頭部5の距離と推定する。
【0031】
係数設定手段14は、フィルタ係数メモリ部19を参照し距離推定部17が推定した距離に対応するデジタルフィルタ係数を読み出し制御フィルタ8の処理係数として設定する。
図7(a)は距離と乗員の頭部5が存在する領域の関係を示し、
図7(b)は領域と対応するデジタルフィルタ係数を示す。先の例の場合、係数設定手段14は距離97cmという推定結果に基づき乗員の頭部5が領域2にあると判断し、デジタルフィルタ係数G2を制御フィルタ8の処理係数として設定する。デジタルフィルタ係数G1〜G3は、領域1〜3が各々騒音が低減する制御音を生成するような制御フィルタ8の処理係数としてあらかじめ設計されフィルタ係数メモリ部19に保存されている。
【0032】
係数設定手段14によって制御フィルタ8の処理係数が更新された結果、騒音が低減する位置は誤差検出マイク11の位置では無く、推定した距離の位置に変わる。これらの動作によって制御スピーカ10から出力される信号と誤差検出マイク11の検出信号が時間的に変化する様子を
図8に示す。また、
図9に、誤差検出マイク11の位置を騒音低減対象とする期間Bの騒音低減位置と乗員の頭部5の位置を騒音低減対象とする騒音低減位置を示す。
【0033】
以下
図8および
図9を用いて、制御スピーカ10から出力される信号と誤差検出マイク11の検出信号を時間的に変化させる制御について説明する。
【0034】
まず期間Aにおいて、制御スピーカ10の出力信号はOFFに設定されている。この状態においては、誤差検出マイク11では、騒音源6からの騒音がそのまま検出信号801として検出される。
【0035】
次に期間Bにおいて、まず制御スピーカ10から、騒音制御信号成分である出力信号802が出力される。この時点では制御フィルタ8において、誤差検出マイク11の位置を騒音低減位置とするデジタルフィルタ係数が設定されているので(図
8における期間Bの騒音低減位置)、誤差検出マイク11にて検出されていた騒音信号801は出力信号802によって打ち消される。
【0036】
さらに期間Bにおいて、制御スピーカ10から測定音である出力信号803が(出力信号802に加算されて)出力される。この際の出力信号803は、騒音メモリ部15に保存された騒音信号である。
【0037】
そして一定時間後(Δt秒後)に、誤差検出マイク11では出力信号803の反射音である検出信号804が検出される。この時上述のように騒音信号801は誤差検出マイク11の位置で打ち消されており、検出信号804のみが検出される。
【0038】
そして期間Cでは、制御スピーカ10から、乗員の頭部5の位置を騒音低減位置と設定した際の出力信号805が出力される(図
8における期間Cの騒音低減位置)。この際に出力信号805の係数は、制御スピーカ10の出力信号803が出力されてから誤差検出マイク11の検出信号804が検出されるまでの時間(Δt)を基に、信号分析手段13・係数設定手段14によって算出されたものである。係数算出に関する詳細は上述したとおりである。この際、乗員の頭部5の位置が騒音低減位置と設定されおり、誤差検出マイク11では、検出信号806が検出される。
【0039】
なお、期間B内において、制御スピーカ10から、出力信号802および出力信号803が出力されている期間を第一の期間と表現する。また、期間C内において制御スピーカ10から、出力信号805のみが出力されている期間を第二の期間と表現する。
【0040】
なお、
図2で示す構成は騒音制御動作を行うが、音楽等のオーディオ信号を再生制御する構成にしても良い。
図12は、オーディオ信号の再生制御において乗員の頭部5の位置を高精度に推定し持続的にオーディオ再生の音響効果が得られる構成を示す。
【0041】
図12の構成において、乗員の頭部5の位置を推定する動作は
図2の構成と同じなので説明を省く。
図2の構成に比べて、騒音源6と騒音検出マイク7の代わりにオーディオ再生手段101の出力が制御フィルタ8と物体位置推定手段100に入力される。この構成において、制御フィルタ8はオーディオ信号に所定の周波数特性を与えることにより、乗員の頭部5の位置において乗員が所望する周波数特性を有するオーディオを再生することが出来る。物体位置推定手段100は、乗員の頭部5の位置に応じて、乗員が所望する周波数特性が維持されるように制御フィルタ8の処理係数を更新する。
【0042】
なお、
図2で示す能動騒音制御装置において、騒音制御を行う構成と物体位置推定を行う構成を分けても良い。
図13は、騒音制御を行う構成と物体位置推定を行う構成を分けて通信ネットワークで結ぶ構成を示す。
【0043】
図13の構成において、騒音検出マイク7の出力と誤差検出マイク11の出力はネットワークインターフェイス102aに入力される。ネットワークインターフェイス102aは通信ネットワークを介して騒音検出マイク7の出力と誤差検出マイク11の出力をネットワークインターフェイス102bに入力する。ネットワークインターフェイス102bは通信ネットワークを介して入力された騒音検出マイク7の出力と誤差検出マイク11の出力を物体位置推定手段100に入力する。物体位置推定手段100は先に説明した動作により乗員の頭部5の位置を推定した結果に基づいて制御フィルタ8の処理係数を計算し、ネットワークインターフェイス102bに入力する。ネットワークインターフェイス102bは入力された制御フィルタの処理係数を通信ネットワークを介してネットワークインターフェイス102aに入力する。ネットワークインターフェイス102aは入力された制御フィルタの処理係数を制御フィルタ8に設定する。以上の構成により、騒音制御の計算コストと物体位置推定の計算コストを分散できるため、低価格の演算回路でも所望の効果を得ることが出来る。
【0044】
以上、説明したように、騒音低減位置にある誤差検出マイク11で測定音を高い精度で検出し、乗員の頭部5によって反射した測定音の到達時間により乗員の頭部5の距離を推定し対応するデジタルフィルタ係数を制御フィルタ8に設定するので、乗員の頭部5の位置に関わらず、簡易な構成によって乗員は持続的に騒音低減効果を得られる。また、測定音として保存した騒音を用いているため、乗員は実際の騒音と測定音の区別が無く、測定されている違和感を感じることが無い。
【0045】
なお、
図7では、騒音低減位置を3つの領域でグループ化しているが、更に多い領域でグループ化することにより、より緻密に騒音低減位置および制御フィルタ8の処理係数を決定する構成にしても良い。
【0046】
また、
図10に示すように誤差検出マイクを更に1個加え、2つの誤差検出マイクへの反射音の到達時間差により乗員の頭部5の方向を検出し、乗員の頭部5の位置をより高精度に推定する構成にしても良い。
図14には、
図2の構成に更にマイク22を追加し方向を測定することで乗員の頭部5を高精度に測定する能動騒音制御装置の構成を示す。以下
図2の能動騒音制御装置の構成と同じ構成には同様の符号を付加し、説明を省略する。
【0047】
図14に示す能動騒音制御装置は、騒音検出マイク7、制御フィルタ8、加算器9、制御スピーカ10、誤差検出マイク11、誤差検出マイク22、物体位置推定手段200を備える。物体位置推定手段200には距離測定制御手段12、信号分析手段23、係数設定手段24、方向測定制御手段29が含まれる。なお、これらの構成は一例であり、一部の構成が欠けていてもよい。以下
図2の能動騒音制御装置と異なる点を中心に説明する。
【0048】
誤差検出マイク22は誤差検出マイク11と同特性のマイクであることが望ましい。また、騒音検出マイク7、誤差検出マイク11、誤差検出マイク22がすべて同一のマイク装置に集約されていてもよい。また、誤差検出マイク22が配置される位置に関しても
図14に示す位置に限られない。誤差検出マイク22は誤差検出マイク11と同様制御スピーカ10の近傍に配置されることが望ましい。また誤差検出マイク11と誤差検出マイク22が、制御スピーカ10を挟んで対向する位置に配置されてもよい。これにより、誤差検出マイク11と誤差検出マイク22との距離を広く確保することができ、より高い精度での距離推定を行なうことができる。
【0049】
方向測定制御手段29は、誤差検出マイク11および誤差検出マイク22からの検出信号に基づき、乗員の頭部5と制御スピーカ10との方向を測定する動作を制御する。
【0050】
信号分析手段23は、騒音信号と誤差検出マイク11の検出信号と距離測定制御手段12の制御信号とに基づいて乗員の頭部5と制御スピーカ10の距離を推定する。また信号分析手段23は、騒音信号と、誤差検出マイク11および誤差検出マイク22の検出信号と、方向測定制御手段29からの制御信号と、に基づいて制御スピーカ10を基準としたときの乗員の頭部5の方向を推定する。以下、
図15を用いて、信号分析手段23、係数設定手段24の内部構成について説明する。
【0051】
信号分析手段23は、騒音メモリ部15、相互相関関数分析部16、距離推定部17、第二の相互相関関数分析部25、第二の距離推定部26、方向推定部27を含む。係数設定手段24は係数決定部28とフィルタ係数メモリ部19と、を含む。騒音メモリ部15、相互相関関数分析部16、距離推定部17、フィルタ係数メモリ部19の各構成の処理に関しては、
図4を用いて説明した処理と同様であるので説明を省略する。なおここでは距離推定部17は乗員の頭部5と誤差検出マイク11との距離d1を推定するものとする。距離の推定方法は
図5・6にて説明したとおりである。
【0052】
第二の相互相関関数分析部25は、騒音メモリ部15から入力される測定音信号と誤差検出マイク22から入力される反射音の相互相関関数を公知の算出式によって計算する。相互相関関数については
図5・
図6を用いて説明したとおりであるので説明を省略する。
【0053】
第二の距離推定部26は、相互相関関数が大きな値を持つ最小の時間を反射音到達時間とし、乗員の頭部5と、誤差検出マイク22との距離d2を推定する。距離の推定方法は
図5・6にて説明したとおりである。
【0054】
方向推定部27は、距離推定部17にて推定した乗員の頭部5と誤差検出マイク11との距離d1と、第二の距離推定部28にて推定した乗員の頭部5と誤差検出マイク22との距離d2と、予め把握している誤差検出マイク11・誤差検出マイク22の距離d3と、に基づいて、制御スピーカ10を基準としたときの乗員の頭部5の方向を算出する。
【0055】
係数設定手段24の係数決定部28は、フィルタ係数メモリ部19を参照し、距離推定部17が推定した距離および、方向推定部27が推定した方向に対応するデジタルフィルタ係数を読み出し制御フィルタ8の処理係数として設定する。この場合、フィルタ係数メモリ部19には
図11に示すような各距離および方向に対応したデジタルフィルタ係数が保存されているものとする。以降の処理は
図8図9を用いて説明した処理と同様である。
【0056】
以上により、乗員の頭部5とスピーカ10の距離だけではなく、方向も推定できるので、
図8で説明した期間Cにおいて、より正確な乗員の頭部位置に制御低減位置を設定することが可能となる。