特許第6352261号(P6352261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トレル、 ジャン ノエルの特許一覧

特許6352261皮膚アトピーの美容的治療におけるステアリン酸スクロースおよび/またはソルビタンエステルによる病原微生物の接着阻害
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352261
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】皮膚アトピーの美容的治療におけるステアリン酸スクロースおよび/またはソルビタンエステルによる病原微生物の接着阻害
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7024 20060101AFI20180625BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180625BHJP
   A61K 8/96 20060101ALI20180625BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20180625BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180625BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20180625BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20180625BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61K31/7024
   A61K8/37
   A61K8/96
   A61K35/36
   A61P17/00 101
   A61P17/04
   A61P37/08
   A61Q17/00
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-525923(P2015-525923)
(86)(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公表番号】特表2015-528822(P2015-528822A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】FR2013051856
(87)【国際公開番号】WO2014023895
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2015年12月10日
【審判番号】不服2017-10983(P2017-10983/J1)
【審判請求日】2017年7月24日
(31)【優先権主張番号】1257681
(32)【優先日】2012年8月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505247627
【氏名又は名称】トレル、 ジャン ノエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トレル,ジャン−ノエル
(72)【発明者】
【氏名】ガット,ヒューグース
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 内藤 伸一
【審判官】 前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−181175(JP,A)
【文献】 特開2003−12492(JP,A)
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL, 2004, Vol.2004, No.11, pp.17−22
【文献】 新化粧品学第2版,株式会社南山堂,2001年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44,A61K9/00-9/72,A61K47/00-47/48,A61K8/00-8/99,A61Q1/00-90/00
CAplus、MEDLINE、BIOSIS、EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの皮膚および鼻粘膜に対する黄色ブドウ球菌の接着阻害剤としてポリソルベート20を含有する、アトピー性皮膚炎の治療ための、局所適用組成物。
【請求項2】
前記ポリソルベート20が、前記組成物に対して0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の局所適用組成物。
【請求項3】
それぞれ皮膚のバリア機能を回復できる脂質である、
皮膚に自然に存在しない少なくとも1つの脂質、好ましくは油;ならびに/または
セラミド1、3、6、コレステロール、遊離脂肪酸、およびフィトスフィンゴシンを含む、皮膚に自然に存在する成分の混合物
を他に含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の局所適用組成物。
【請求項4】
前記皮膚に自然に存在する成分の混合物が、INCI指定の脂質組成物(すなわち、水、セラミド3、セラミド6II、セラミド1、フィトスフィンゴシン、コレステロール、ラウロイル乳酸ナトリウム、カルボマー、キサンタンガム)に対応し、前記組成物に対して0.01〜5重量%含有されていることを特徴とする、請求項3に記載の局所適用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の範囲)
本発明の目的は、皮膚表面に薄膜を形成する化粧品組成物を塗布することに基づく、ヒトのアトピー性皮膚炎向けの美容的治療方法である。本発明によれば、この薄膜は、本組成物の利点として、皮膚に対する病原微生物の接着を阻害し、皮膚のバリア機能を強化する。
【0002】
より具体的には、化粧品組成物は、スクロースエステルおよび/またはソルビタンエステルを含有し、皮膚および鼻粘膜に対する黄色ブドウ球菌の接着を防止することができ、これにより病原菌叢の増殖を阻害することができる。この阻害効果は、黄色ブドウ球菌によって間接的に引き起こされる脂質(特にセラミド)の破壊を制限することにより、皮膚バリアを保護することである。
【背景技術】
【0003】
(先行技術)
アトピー性皮膚炎または皮膚アトピーは、遺伝的免疫素因および皮膚バリア異常に関連した、炎症性で痒疹を伴う皮膚症状である。臨床の場では、この遺伝的素因はアレルギー性鼻炎および喘息としても現れる。
【0004】
アトピー性皮膚炎は、健常者によって耐えられる環境アレルゲンに対する過敏化をもたらす。
【0005】
アトピー性皮膚炎において、湿疹は(IL−4およびIL−5を産生する)Th2リンパ球ならびに抗原提示細胞が媒介する遅延型の過敏反応である。
【0006】
他の抗原特異的なTリンパ球が媒介する免疫反応と同様に、アトピー性皮膚炎の湿疹の炎症反応は3段階で進行する。
【0007】
第一段階は無症候性感作である。この段階は臨床的に不顕性であり、抗原特異的なTリンパ球の増幅をもたらす。通常、感作は若い幼児期において樹状細胞に捕捉された環境アレルゲンに曝露することで起こる。
【0008】
第二段階では湿疹が成長する。問題のアレルゲンに再曝露した後、ランゲルハンス細胞が遊走して抗原特異的なサイトカイン産生Th2リンパ球を活性化し、次にこれが皮膚で多様な異なる細胞種を活性化する。このメカニズムは、炎症性メディエーターを産生する真皮や表皮への白血球の侵入を助ける。持続時間が可変であるこの段階は、湿疹病変に特徴づけられる。多くの患者では、一部がランゲルハンス細胞表面に結合する抗原特異的IgE抗体の高レベルが付随して起こる。
【0009】
最終的に、病変は第三段階で後戻りする。自然回復期間から離れた再発時に、アトピー性皮膚炎の湿疹は成長する。炎症制御に関するメカニズムは未だ知見に乏しい。
【0010】
アトピー性皮膚炎は人口の10〜30%が罹患するが、先進国では有病率が増加し続けており、この20年で2倍または3倍となっている。
【0011】
アトピー性皮膚炎は、回復期間から離れた深刻な湿疹の痒疹再発に特徴づけられる。これは子供にとってきわめて一般的である。これは生まれて数ヶ月後に頬や皮膚の摩擦箇所に病変状に現れる。その後1〜2歳の間で発作状に成長する。この間に、皮膚(特に皮下脂肪の内表面上)は乾燥して赤くにじむような斑点を伴う。5歳を過ぎると、発作は消滅する傾向にあるが、皮膚は乾燥して過敏なままである。一部の人では、大人になってもアトピー性皮膚炎が続くこともある。
【0012】
2つの現象がアトピー性皮膚炎に続いて起こる。1つ目は皮膚バリアの弱体化であり、2つ目は皮膚での病原性微生物叢のコロニー化である。
【0013】
皮膚バリアの主要組織は角質層であり、角質細胞ならびに特殊脂質(コレステロール、遊離脂肪酸、セレブロシド、およびセラミドを含む)からなる表皮の最外層である。これらの脂質は、細胞間セメントとしての役割を果たし、角質層を防水化する。
【0014】
アトピー性皮膚炎患者の角質層分析から、特定のタンパク質および皮膚脂質に著しい欠陥があることがわかった。これらは、角質細胞内でケラチンフィラメントの凝集に関わるタンパク質であるフィラグリン、および角質層のタンパク質骨格の構築に不可欠なタンパク質であるインボルクリンの双方の欠陥である。最も顕著に欠陥している脂質は、セラミド1および3である。
【0015】
セラミドは、水分蒸発の制限による皮膚バリア機能の制御において特に重要である。
【0016】
これらのタンパク質および脂質の欠陥は、角質細胞の他細胞への接着が弱まり、角質層の結合や完全性が損なわれることを意味する。これはアトピー性皮膚炎患者において角質層の厚さの顕著な減少として現れる。
【0017】
上述のように、アトピー性皮膚炎は皮膚のタンパク質および脂質の顕著な減少として現れ、水分の蒸発や乾燥肌を招く。このような皮膚に対してはアレルゲンが侵入しやすいことが知られている。
【0018】
ゆえに、アトピー性皮膚炎は悪循環を引き起こす:細胞内の水分の蒸発は皮膚の脱水や乾燥肌をもたらし、これにより皮膚透過性が上昇する。皮膚透過性の上昇により、アレルゲンが皮膚の被刺激性を維持する組織を貫通しやすくなる。
【0019】
皮膚のバリア機能は、腐生細菌叢からなる局所的な生態系によっても強化されている。
【0020】
腐生細菌叢は、自然に常在する皮膚表面の特徴である。皮膚表面における細菌の密度は10〜10/cmと見積もられる。最も一般的な種はブドウ球菌であり、特にコアグラーゼ陰性な表皮ブドウ球菌および関連種(ミクロコッカス)ならびにコリネフォルム細菌、好気性菌(コリネバクテリア、ブレビバクテリア)および嫌気性菌(プロピニバクテリウム・アクネス)の両方である。これらの細菌は角質層に定着し、角質細胞に接着して保護菌膜を形成する。
【0021】
ゆえにこの腐生細菌叢は、病原性となりうる他の微生物の潜在的な接着部位を占有してそれらの増殖を阻害することで、バリア機能を強化する。
【0022】
しかしながら、もし皮膚がアトピー性皮膚炎で損傷を受けた場合、皮膚バリア機能の低下は、水分の蒸発を促進し、細菌、ウイルス、または菌類のコロニー化が助長されるような皮膚表面環境を形成する。この許容環境は湿疹発作時に起こる皮膚温度の上昇によって悪化する。
【0023】
このため、病原性細菌叢は皮膚表面上で一時的に成長することができる。これらの種の大部分は正常な環境下で発見されており、シュードモナス属およびアシネトバクター属に属する種を含む;その他は、腸内細菌、連鎖球菌、またはクロストリジウム属種のような消化器または口腔の叢に由来する。
【0024】
これらの細菌は、通常はヒトの皮膚表面上で増殖することができないが、アトピー性皮膚炎で皮膚のバリア機能が損なわれた場合、病原性細菌膜を形成できる箇所で感染を引き起こすことができる。
【0025】
一時滞在する病原性叢の細菌の中では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus,S.aureus)が潜在的に最も病原性を有する種であり、健常者の15〜30%の鼻腔および喉で発見される最も一般的な属要素である。このグラム陽性細菌は、皮膚細胞に接着することで皮膚に定着する。
【0026】
近年の研究から、アトピー性皮膚炎患者の90%の皮膚では黄色ブドウ球菌がコロニー化しており、それと比較して健常者ではわずか5%であることが明らかになっている。
【0027】
意外なことに、アトピー性皮膚炎は、鼻粘膜での黄色ブドウ球菌のコロニー化において証明された危険因子でもあり、アトピー患者の環境において保有宿主(reservoir)を提供する(Pascolini et al.,2011)。
【0028】
いくつかの研究では、黄色ブドウ球菌存在下では皮膚叢から産生されるセラミドが活性化することについても示唆している。セラミダーゼは角質層のセラミドを加水分解し、このことは、黄色ブドウ球菌による皮膚のコロニー化がアトピー性皮膚炎におけるこの脂質型の欠陥の一部原因であることを示唆している。
【0029】
黄色ブドウ球菌はスーパー抗原(タンパク毒素)の源でもあり、アトピー性皮膚炎において、免疫細胞と相互作用し、炎症反応を増幅させ、それにより再発を引き起こす。
【0030】
ゆえに、セラミド欠陥の結果から、(バリア機能低下が環境アレルゲンに対する過敏化や皮膚の炎症維持を促進することを考慮すると、)特にアトピー患者においては、表皮表面における黄色ブドウ球菌の増殖と皮膚のバリア機能低下との間には明らかな関連性がある。感染の原因となる2つの主要なウイルスは、単純疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス、HSV)とワクシニアウイルスである。酵母マラセチアによるコロニー化もアトピー性皮膚炎患者で観察されている。
【0031】
現在のアトピー性皮膚炎の治療法は、炎症管理および細菌コロニー化制御に基づいている。
【0032】
炎症管理を目的とする治療法は、糖質コルチコステロイドならびにピメクロリムスおよびタクロリムスのようなカルシニューリン阻害剤の投与を含む。通常、これらの成分はエモリエント成分と組み合わされる。
【0033】
細菌管理については広く報告されており、特に広域抗生物質の投与および消毒液の塗布に関して報告されている。抗生物質耐性菌によって一次治療は困難となっている。さらに両治療法は、皮膚上に存在する病原体だけでなく、有益な腐生細菌も殺してしまう。
【0034】
これら両治療法の主な欠点は、効果的なバリア機能、すなわち腐生細菌叢に必要な構成成分を破壊してしまうことである。
【0035】
近年の研究では、特定の糖類を含有する組成物の局所塗布が皮膚に対する病原菌の接着を阻害することが示されている。
【0036】
国際公開第2006/106220号では、特定の糖類(ラムノース、ガラクトース、マンノース、およびラウリルグルコシドのような単糖ならびにオリゴ糖)が、アトピー犬から採取した角質細胞に対する細菌(特にブドウ球菌属(S.intermedius))の接着を阻害することが報告されている。
【0037】
国際公開第96/23479号では、特定の糖類が特定の微生物の接着を阻害するために使用できることが示唆されている。選出されたものは、ラフィノース、マンノース、およびラムノースのような単糖、二糖、オリゴ糖、アミノ化糖、ならびにセテアリルグルコシド、カプリルグルコシド、およびデシルグルコシドのようなグルコースエステルを含む多様な糖類のエステルである。これらの多様な糖類は、細菌(例えば黄色ブドウ球菌)の接着を阻害するために、および/または(特にアトピー性皮膚炎治療の)治療目的のために、化粧品または皮膚用薬剤の組成物に配合されてもよい。
【0038】
欧州特許出願公開第0875239A2号明細書では、アトピー性皮膚炎が現れる病変のリストに関与する、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、コリネバクテリア、およびプロピオン酸菌属のような特定のグラム陽性種に対する活性のために、スクロースエステルを含む多様な糖類エステルを列挙している。列挙されているエステルは、パルミチン酸/ステアリン酸ジエステル、ステアリン酸ジエステル、ラウリン酸モノエステル、ミリスチン酸モノエステル、ならびにステアリン酸トリエステルおよびテトラエステルである。
【0039】
欧州特許出願公開第1340486A1号明細書では、スクロース、フルクトース、グルコース、およびトレハロースのエステルを含む多様な糖類エステルを列挙している。フルクトース、グルコース、およびトレハロースのエステルのみ、黄色ブドウ球菌の成長阻害能の試験が行われている。スクロースエステルはこの活性について試験されていない。このファミリーの一典型のみ、すなわちステアリン酸スクロースは、漂白活性についてのみ試験が行われている(表7参照)。最終的に、この公報はアトピー性皮膚炎には言及していない。
【0040】
欧州特許出願公開第0815841A1号明細書では、おむつの摩擦による皮膚の赤みをコントロールする組成物が報告されている。これは上述のようなアトピー性皮膚炎の治療法ではない。この公報では、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の成長に対する、スクロースとパルミチン酸およびステアリン酸のモノエステル混合物またはパルミチン酸およびラウリン酸のモノエステル混合物の阻害効果を記述している。
【0041】
欧州特許出願公開第2210588A1号明細書では、ポリソルベート80すなわちソルビタンエステルを含有する泡状組成物が記述されている。ポリソルベート80は非常に一般的な乳化剤である。
【0042】
Mintel公報(XP002693208)では、ステアリン酸スクロースを含有する保湿組成物が記述されている。
【0043】
国際公開第4/037225A2号では、発泡エアロゾルの賦形剤としてアルコールまたはプロピレングリコールを含有しない組成物が記述されている。他の疾患の間で、アトピー性皮膚炎は特異的な活性物質を補充したエアロゾルを用いて治療できることが言及されている。実施例では、ステアリン酸スクロースおよびポリソルベート80が表面活性剤として汎用されることが言及されている。
【0044】
仏国特許出願公開第2798591A1号明細書では、特にアトピー性皮膚炎治療を目的として、皮膚脂質の合成を促進するために、特定の野菜油の利用が記述されている。ジステアリン酸スクロースおよびトリステアリン酸ソルビタンは表面活性剤として汎用される。
【0045】
MERCK公報(XP−002693209)では、ステアリン酸スクロースを含有する抗しわ組成物が記述されている。
【0046】
欧州特許出願公開第1639989A1号明細書では、表面活性剤として使用される糖またはソルビタンのエステルを含有するマイクロエマルションの生成が記述されている。
【0047】
米国特許出願公開第2005/158348A1号明細書の実施例5および8では、組成物はポリソルベート80およびスクロースエステルをそれぞれ含有する。これらの組成物は傷および炎症の治療を対象としている。ソルビタンおよびスクロースのエステルは賦形剤に用いられる。
【0048】
米国特許出願公開第2010/080768A1号明細書では、アトピー性皮膚炎を含む多様な疾患の治療を対象とする組成物における、多様なセラミドおよびスフィンゴ脂質の存在が記述されている。
【0049】
米国特許出願公開第2011/101135号明細書では、化粧品組成物の防腐剤としてモノカプリル酸ソルビタンの使用が記述されている。黄色ブドウ球菌を含む多様な菌種について試験が行われている。
【0050】
それにも関わらず、アトピー性皮膚炎を管理するための現在施術可能な様々な治療法に代わる、より効果的な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0051】
この背景において出願人は、驚くことにまた予期せぬことに、スクロースおよびソルビタンのエステルのような特定の糖エステルが皮膚および粘膜に対する病原性微生物の接着を強力に阻害することを発見した。
【0052】
皮膚表面に対する黄色ブドウ球菌の接着阻害は、抗生物質または局所消毒が無い場合でさえ、病原性微生物の増殖を防止する。
【0053】
皮膚に対する病原性微生物(特に黄色ブドウ球菌)の接着阻害における利点の一つは、腐生細菌叢を維持し、皮膚バリア機能の構成脂質の破壊を低減することによりその機能を強化することである。
【0054】
糖エステルは、表皮バリアの破壊および病原菌による皮膚のコロニー化に対してより効果的に作用する薄膜を形成するため、好ましくは表皮に自然に存在する脂質と組み合わせることができる。
【0055】
本発明のその他の目的および態様は、説明のために付与され制限されない後述の詳細な説明を読むことで明らかとなるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の第一の態様は、ヒトの皮膚および鼻粘膜に対する黄色ブドウ球菌の接着阻害剤として、少なくとも1つのスクロースエステルおよび/またはソルビタンエステルを含有する局所塗布向けの化粧品組成物である。
【0057】
より具体的には、本発明は、ヒトの皮膚および鼻粘膜に対する黄色ブドウ球菌の接着阻害剤として、アトピー性皮膚炎の治療に使用するための、少なくとも1つのスクロースエステルおよび/またはソルビタンエステルを含有する局所塗布向けの組成物に関する。
【0058】
糖エステルとは、少なくとも1つの遊離水酸基が脂肪酸鎖でエステル化されている糖である。
【0059】
一連の糖エステルの異なるファミリーが記述されている。特に、グルコース、スクロース、およびソルビタンのエステルである(Piccicuto et al.,2001)。これらは無毒性かつ非刺激性である利点を有し、それにより食品加工、製薬、および化粧品工業においてしばしば表面活性特性のために汎用されている。
【0060】
これらの3つの異なるファミリーのうち、本出願はスクロースエステルおよびソルビタンエステルのみに関する。
【0061】
これらは、スクロースまたはソルビタンからなる親水基がエステル結合を介して脂肪酸からなる疎水基と連結している、非イオン性の界面活性剤である。これらのエステルの表面活性特性は、化粧品組成物(特にエマルション)中で脂質との混合も容易にする。
【0062】
α−D−グルコピラノシル−β−D−フルクトフラノシドまたはスクロースは、8つの遊離水酸基を有し、そのため最大8つの脂肪酸でエステル化される。
【0063】
ソルビタンはソルビトールの脱水により生成され、ソルビトールはグルコースのアルデヒド基を除去し水酸基を生成して得られるポリヒドロキシル化化合物である。ソルビタンは4つの遊離水酸基を有し、それぞれ脂肪酸でエステル化される。
【0064】
本発明の文脈において、ソルビタンエステルとは「スパン(Span)」型のエステルを意味し、例えば以下に示す一般式で表される:
【0065】
【化1】
【0066】
ここでRは脂肪酸であり、この場合はモノエステル化されたスパンである。
【0067】
本発明は、「トゥイーン(Tween)」型のポリエトキシ化ソルビタンエステルにも関わり、例えば以下に示す一般式で表される:
【0068】
【化2】
【0069】
ここでRは脂肪酸であり、この場合はモノエステル化されたトゥイーンである。
【0070】
脂肪酸の炭素鎖は短鎖または長鎖のいずれでもよく、例えば、C12、C14、C16、およびC18の鎖をそれぞれ有する、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸が挙げられる。脂肪酸は飽和および不飽和脂肪酸の中から選択されてもよく、例えばオレイン酸(C18炭素鎖)である。
【0071】
ゆえに本発明の他の特徴によれば、化粧品組成物は、少なくとも1つの水酸基が、炭素鎖がC12〜C22、好ましくはC12〜C18である群から選択される脂肪酸でエステル化されたスクロースおよび/またはソルビタンを含有する。
【0072】
脂肪酸とスクロースの比率に依存して、エステル化によってモノエステル、ジエステル、トリエステル、もしくはポリエステル(最大でオクタエステル)、またはこれら全ての混合物が得られる。ソルビタンのエステル化では、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、またはこれらの混合物が得られる。
【0073】
他の実施形態として、本発明の化粧品組成物は、水酸基の一部または全部が同一の脂肪酸でエステル化されたスクロースおよび/またはソルビタンを含有する。
【0074】
この場合において好ましくは、スクロースエステルはラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、およびステアリン酸スクロースを含む群から選択され、ソルビタンエステルはラウリン酸ソルビタン(Span20)、モノステアリン酸ソルビタン(Span60)、オレイン酸ソルビタン(Span80)、およびセスキオレイン酸ソルビタン(Montane83)を含む群から選択されるであろう。
【0075】
好ましい実施形態において、スクロースエステルは、スクロースとステアリン酸とのモノエステルを少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%含有し、残りがスクロースとステアリン酸とのジ、トリ、およびポリエステルであるステアリン酸スクロースである。
【0076】
好ましくは、本発明に記載の化粧品組成物はポリエトキシ化されたソルビタンエステルを含有する。一例として、エトキシ化モノラウリン酸ソルビタン(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン20(ポリソルベート60)、およびポリオキシエチレンモノオレイン酸ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられる。より好ましい実施形態において、ソルビタンエステルはポリソルベート20またはポリソルベート80である。
【0077】
別の実施形態によれば、化粧品組成物は、水酸基の一部または全部が少なくとも2つの異なる脂肪酸でエステル化されたスクロースおよび/またはソルビタンと共に構成される。
【0078】
この場合において好ましくは、スクロースエステルはパルミチン酸ステアリン酸スクロースおよびテトラステアリン酸トリ酢酸スクロースを含む群から選択され、ソルビタンエステルはソルビタンのオレイン酸/ステアリン酸エステル(Montane481)およびオリーブ油由来の脂肪酸でエステル化したソルビタン(オリベート(olivate)ソルビタン)を含む群から選択される。
【0079】
好ましい実施形態によれば、本発明に記載の化粧品組成物中のスクロースエステルは、ステアリン酸スクロース、すなわち少なくとも1分子のステアリン酸(C18脂肪酸)でエステル化されたスクロースである。
【0080】
当業者であれば、任意の脂肪酸の炭素鎖長について、混合物中のモノエステルの割合が糖エステルの疎水性/親水性に影響することに気づくであろう。
【0081】
これらの特性は、親水/親油バランス(HLB)インデックス法により特徴づけられる。HLB値1〜10は親油性の糖エステルを指しており、モノエステルが相対的に低割合で(ゆえに)ポリエステルが相対的に高割合であることに相当する。しかし、HLB値11〜20は親水性の糖エステルを指しており、モノエステルが高割合で(ゆえに)ポリエステルが相対的に低割合であることに相当する。
【0082】
本発明の特定の実施形態において、ステアリン酸スクロースはHLB値が16であり、スクロースモノエステルおよびステアリン酸の相対割合が75重量%〜80重量%に相当する。以降、この生成物はモノステアリン酸スクロースとみなす。
【0083】
好ましくは、スクロースエステルおよび/またはソルビタンエステルは、組成物に対して0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%含有される。
【0084】
好ましくは、化粧品組成物は、それぞれ皮膚バリアを回復できる脂質である、皮膚に自然に存在しない少なくとも1つの脂質(好ましくは油)、ならびに/またはセラミド1、3、6、コレステロール、遊離脂肪酸、およびフィトスフィンゴシンを含む皮膚に自然に存在する成分の混合物を他に含有する。
【0085】
実際に、特定の特異的な脂質を補充すると、皮膚細胞間の脂質層(すなわち細胞外セメント)の回復を助けることができ、これにより皮膚バリアの回復を助けることができる。結果として、皮膚からの水分の蒸発は、黄色ブドウ球菌の皮膚への接着と増殖のリスクと共に低減する。この作用は、黄色ブドウ球菌の接着を阻害して角質層でのセラミドの加水分解を防止するという本発明のエステルの効果と結びつく。
【0086】
油のように皮膚に自然に存在しない脂質は、組織の短期的な保湿を媒介する。これらは好ましくはヒマワリ油および菜種油(キャノーラ)を含む群から選択され、必須オメガ−6およびオメガ−3脂肪酸が高濃度であることがその理由である。
【0087】
本発明の特定の実施形態において、化粧品組成物は皮膚に自然に存在しない脂質を含有し、組成物に対して3〜15重量%のヒマワリ油、0.05〜10重量%の菜種油(キャノーラ)をそれぞれ含有する。
【0088】
皮膚に自然に存在する脂質を補充すると、アトピー性皮膚炎を患う患者に見られる特定の角質層脂質の欠陥を修正することができる。これは、特に上述のエステルの効果と組み合わさったときには、長期的に機能性皮膚バリアの回復を助けることができる。
【0089】
特定の実施形態において、自然に存在する成分の混合物は、INCI指定の脂質組成物に対応し、すなわち水、セラミド3、セラミド6II、セラミド1、フィトスフィンゴシン、コレステロール、ラウロイル乳酸ナトリウム、カルボマー、キサンタンガムである。この脂質組成物は好ましくは市販品SK Influx VTM(Evonik Industries)として供給される。
【0090】
好ましくは、脂質組成物は組成物全体に対して0.01〜5重量%含有される。
【0091】
好ましくは、化粧品組成物は他に、ラムノース、キシリトール、およびマンニトールを含む群から選択される、少なくとも1つのさらなるポリヒドロキシル化化合物を含有する。
【0092】
ラムノースやキシリトールのようなこれらのさらなるポリヒドロキシル化化合物は、ヒトの皮膚および鼻粘膜に対する黄色ブドウ球菌のような病原菌の接着の阻害を助ける。マンニトールもフリーラジカル捕捉能を有する。
【0093】
本発明の特定の実施形態において、化粧品組成物は上述の3つのさらなるポリヒドロキシル化化合物の混合物を含有する。
【0094】
好ましくは、組成物に対して、ラムノースは0.01〜1重量%、キシリトールは0.05〜2重量%、およびマンニトールは0.005〜1重量%含有される。
【0095】
好ましくは、組成物は他に、パルミトイルエタノールアミド(CAS番号544−31−0)、ヒドロキシ−α−サンショオール(CAS番号83833−10−7、zanthaleneTM組成物の一部)、チロシン−アルギニンベースの脂質ジペプチド(calmosesineTM組成物の一部)、イクタモール(ichtyol)またはイクタ硫酸アンモニウム(ammonium ichthosulphonate)(CAS番号8029−68−3)を含む群から選択される少なくとも1つの抗痒疹剤を含有する。
【0096】
好ましくは、本発明に記載の化粧品組成物は他に少なくとも1つの抗炎症剤を含み、好ましくはβ−シトステロール(CAS番号83−46−5)、エノキソロン(enoxolone)またはグリチルレチン酸(CAS番号471−53−4)を含む群から選択される。
【0097】
好ましくは、化粧品組成物は他に、セラミド、遊離脂肪酸、およびコレステロールを含む角質層での脂質合成を刺激することで知られているビタミンPPを含む。ビタミンPPは、セラミド産生の前駆体であるスフィンゴシンの合成に重要な酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼの活性を刺激することで作用する。
【0098】
本発明の他の態様は、アトピー性皮膚炎治療のための化粧品組成物に関する。
【0099】
本発明は、後述する組成物によって表皮を保護するために皮膚上に薄膜を形成することに基づく、アトピー性皮膚炎向けの美容的治療方法にも関する。
【0100】
好ましい実施形態において、治療方法は、皮膚表面に対する黄色ブドウ球菌の接着を阻害するために、特にスクロースおよび/またはソルビタンエステルを含む薄膜形成組成物を、微生物からの損傷に対する(特に角質層成分を加水分解する微生物から分泌される酵素に対する)皮膚防御を強化するために、脂質(例えば脂肪酸、セラミド、およびコレステロール)と共に皮膚に塗布することを伴う。
【0101】
この薄膜は、疾患の段階に応じて、進行を食い止めるため、疾患の再発時に作用するため、再発を防止するため、皮膚に塗布される。
【0102】
好ましくは、進行を止めるために用いられる組成物には、(組成物に対して)1〜5重量%のモノステアリン酸スクロースおよび/またはソルビタンエステル、3〜25重量%の油の混合物、0.01〜5重量%のSK Influx VTM、0.06〜4重量%のラムノース、キシリトール、およびマンニトールの混合物が含有される。
【0103】
好ましくは、再発を治療するために用いられる組成物には、(組成物に対して)1〜5重量%のモノステアリン酸スクロースおよび/またはソルビタンエステル、3〜25重量%の油の混合物、0.01〜5重量%のSK Influx VTM、0.06〜4重量%のラムノース、キシリトール、およびマンニトールの混合物、0.01〜1重量%の抗痒疹剤、0.5〜1重量%の抗炎症剤が含有される。
【0104】
好ましくは、特に再発を防止するために用いられる組成物には、(組成物に対して)1〜5重量%のモノステアリン酸スクロースおよび/またはソルビタンエステル、3〜25重量%の油の混合物、0.01〜5重量%のSK Influx VTM、0.06〜3重量%のラムノース、キシリトール、およびマンニトールの混合物、0.01〜1重量%の抗痒疹剤、0.01〜2重量%のビタミンPPが含まれる。
【0105】
これらの各種組成物は薄膜形成性があり、言い換えれば皮膚表面を覆う薄膜を作って病原性微生物による損傷から保護することができる。
【0106】
本発明の明細書から多くの利点が表れる:
アトピー性皮膚に対する黄色ブドウ球菌の接着の低下は、腐生細菌叢を維持するのと同時に病原細菌叢の成長を防止する;
細菌接着から菌膜の成長、成熟、拡張に至る一連の異なる段階において、細菌膜は皮膚表面で成長することが知られている。そのため、アトピー性皮膚に対する黄色ブドウ球菌の接着阻害は病原菌膜形成の阻害をもたらす;
無毒性、非刺激性のスクロースおよび/またはソルビタンエステルを用いることで、抗生物質や局所消毒成分のような抗菌剤の必要性が減る;
皮膚に自然に存在しない脂質の存在は、バリア機能を回復させ、表皮からの水分蒸発の低減を助ける;
スクロースおよび/またはソルビタンエステルならびに脂質による補助的作用は、接着阻害の結果として黄色ブドウ球菌の積載を低減し、角質層のバリア機能を回復させる;
ゆえに、スクロースおよび/またはソルビタンエステルならびに脂質は、病原性の微生物による損傷から表皮を保護し、バリア機能の破壊を防止する薄膜を表皮上に形成する。
【実施例】
【0107】
(実施例1)in vitroでの固体マトリックスへの黄色ブドウ球菌の接着に対するステアリン酸スクロースの効果
1)方法
以下のプロトコールを用いた。黄色ブドウ球菌は、ティモネ病院の臨床細菌学研究所(CIP65−8)にて、ニュートリエントブロスNo.2(Oxoid)中で、37℃で12時間培養した。培養物は9000gで10分間遠心し、細菌ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。この懸濁液を、水またはポリヒドロキシル化化合物試料含有水溶液で50倍に希釈した。これ(化合物試料)は、キシリトールまたはHLB値16のステアリン酸スクロース(SURFHOPETM C1816)のいずれかである。細菌をポリヒドロキシル化化合物試料と共に、37℃で45分間プレインキュベートした。この混合物(100μl)を、固定の表面積(0.8cm)で仕切った細胞用スライドガラス、すなわち細胞培養用特殊スライド(Chamber Slide System, Labtek)のウェルにスポットした。細菌培養物を37℃で60分間インキュベートした後、超純水で洗浄してウェル表面に付着しなかった細菌を洗い流した。接着した細菌をクリスタルバイオレットで10秒間染色して洗浄し、25℃で12時間乾燥した。最後に、倍率1000倍の顕微鏡を用いてほぼ同一の領域について(油に浸漬して)細菌を調べた。最後に、適当なソフトウェアを用いて各ウェルの細菌数を自動的にカウントした。
【0108】
2)結果
本プロトコールにおいて、固体マトリックスへの黄色ブドウ球菌の接着の対峙(vis-a-vis)阻害に対するポリヒドロキシル化化合物の効果を分析した。キシリトールは最終濃度0.5%で、HLB16ステアリン酸スクロース(モノステアリン酸スクロース、SURFHOPE C18−C16)は最終濃度1%で、試験を実施した。
【0109】
【表1】
【0110】
3)結論
1%のHLB16ステアリン酸スクロース存在下では、スライドガラス表面への黄色ブドウ球菌の接着に対する強力な阻害が観察された。
【0111】
(実施例2)ex vivoでのヒト角質細胞への黄色ブドウ球菌の接着に対する本発明のエステルの効果
in vitroでの知見を裏付けるため、イヌ用に開発された方法(McEwan et al.,2005)を改変してex vivoでヒト角質細胞への接着試験を行った。
【0112】
1)細菌株
黄色ブドウ球菌の臨床株(CIP65−8)は、マルセイユにあるティモネ病院の臨床細菌学研究所の患者から単離した。
【0113】
2)プロトコール
黄色ブドウ球菌をニュートリエントブロスNo.2(Oxoid)10mlに植菌し、撹拌しながら37℃で12時間インキュベートした。培養物を遠心し、細菌ペレットをPBSに再懸濁した。浸透処理純水を用いて、細菌密度を10CFU/mlに調整した。
【0114】
ヒトボランティアの腕に目標エリアを記した。各エリアについて、セロテープ(登録商標)TMオリジナル(直径22mm)ディスクを用いて5段階の「プレストリッピング」手順により皮膚残屑を除去した。次に、D−SquameTM粘着ディスク(直径22mm)を圧力150g/cmに設定したD−Squameディスクアプリケーターセットと共に用いて、各エリアから角質細胞を回収した。
【0115】
次に、ディスクをペトリ皿(直径35mm)に置き、ポリヒドロキシル化化合物試料を含有する、水0.5mlまたは10CFU/mlの黄色ブドウ球菌懸濁液0.5mlで覆った(各3エリア)。
【0116】
ここで試験したポリヒドロキシル化化合物試料は、キシリトール(最終濃度0.5%)、HLB16ステアリン酸スクロース(モノステアリン酸スクロース、SURFHOPE C1816、最終濃度1%)、ラウリン酸スクロースモノエステル(SURFHOPE C1216、80%モノエステル、最終濃度0.1%)、ポリソルベート60(最終濃度0.1%)、ポリソルベート60(最終濃度1%)、ポリソルベート20(最終濃度0.1%)である。
【0117】
全ての溶液は水で調製し、接着試験開始の前に室温で黄色ブドウ球菌に45分間接触させた。次に、ディスクを37℃で60分間インキュベートした。次に、ディスクを浸透処理純水で洗浄し、角質細胞に付着しなかった細菌を除去した。接着した細菌をシュウ酸化クリスタルバイオレットで10秒間染色した。最後に、ディスクを浸透処理純水で洗浄し、顕微鏡用スライドに置いて24時間風乾した。
【0118】
3)画像取得および細菌数計測
デジタルカメラが搭載されたオリンパスBX53顕微鏡を用いて、接着した細菌を撮影した。次に、UTHSCSA Image Toolソフトウェア(Reindeer Graphics Inc.)を用いて、画像を分析した。ディスクあたりの平均細菌数は10〜12枚の画像から計算し、これは角質細胞約100個の表面に相当する。Statgraphics Plusソフトウェア(Manugistics Inc.)を用いて平均を比較した。
【0119】
4)結果および結論
これらの試験結果は、キシリトールが角質細胞への黄色ブドウ球菌の接着を約20%阻害することを示している(表2)。最終濃度1%のHLB16ステアリン酸スクロースおよびポリソルベート60では、50%以上の強力な阻害活性が観察された(表2)。最終濃度0.1%のポリソルベート20および60は、非常に有望な阻害活性をもたらした。対照的に、ラウリン酸スクロースモノエステルは顕著な接着向上を誘導した。
【0120】
【表2】
【0121】
よって、これらのex vivoの結果はin vitroの結果を裏付けるものであり、言い換えると、周囲にHLB16ステアリン酸スクロースが存在すると、細胞スライドのような固体マトリックスおよびヒト角質細胞の双方に対して黄色ブドウ球菌の接着を阻害する。
【0122】
(実施例3)局所組成物の例
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
(引用文献)
Kita K.,Sueyoshi N.,Okino N.,Inagaki M.,Ishida H.,Kiso M.,Imayama S.,Nakamura T.,Ito M.2002.アニオン性グリセロリン脂質による細菌セラミダーゼの活性化:アトピー性皮膚におけるシュードモナス菌セラミダーゼによるセラミド加水分解への関与可能性(Activation of bacterial ceramidase by anionic glycerophospholipids : possible involvement in ceramide hydrolysis on atopic skin by Pseudomonas ceramidase.)Biochem J.,362,p.619−626.
McEwan N.A.,Kalna G.and Mellor D.2005.正常イヌおよびアトピー性皮膚炎イヌから採取したイヌ科角質細胞に対する4種類のブドウ球菌株(S.intermediusおよびS.hominis)の接着比較(A comparison of adherence by four strains of Staphylococcus intermedius and Staphylococcus hominis to canine corneocytes collected from normal dogs and dogs suffering from atopic dermatitis.)Research in Veterinary Science, Vol.78,p.193−198.
Piccicuto S.,Blecker C.,Brohee J.C.,Mbampara A.,Lognay G.,Deroanne C.,Paquot M.and Marlier M. 2001.糖エステル:合成法および潜在的使用(Les esters de sucres : voies de synthese et potentialites d’utilisation [Sugar esters: synthetic pathways and potential uses].)Biotechnol. Agron. Soc. Environ.,Vol.5(4),p.209−219.
Pascolini C.,Sinagra J.,Pecetta S.,Bordignon V.,De Santis A.,Cilli L.,Cafiso V.,Prignano G.,Capitanio B.,Passariello C.,Stefani S.,Cordiali−Fei P.,Ensoli F.2011.小児アトピー性皮膚炎における黄色ブドウ球菌の分子的および免疫的特徴:予防および臨床管理に対する影響(Molecular and immunological characterization of Staphylococcus aureus in pediatric atopic dermatitis: implications for prophylaxis and clinical management.) Clin Dev Immunol. 2011 Oct 27(Epub).