特許第6352281号(P6352281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352281電子筐体用の制御された水蒸気透過フィルター組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352281
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電子筐体用の制御された水蒸気透過フィルター組立体
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20180625BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20180625BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20180625BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B01D53/26 210
   B01J20/10 D
   B01J20/20 B
   B01J20/20 D
   B01J20/28 Z
   B01D53/28
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-539811(P2015-539811)
(86)(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公表番号】特表2016-501710(P2016-501710A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013066681
(87)【国際公開番号】WO2014066683
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/719,138
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/800,158
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ディ・ライアー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エル・トゥーマ
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−147544(JP,A)
【文献】 特開2004−005878(JP,A)
【文献】 特開2004−295993(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0139078(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0090245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 53/26−53/28
B01J 20/00−20/34
G11B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子筐体中で使用するための吸着構造体であって、
a)開口部とキャビティとを画成するプラスチックハウジングと、
b)前記キャビティ内に配置された第1吸着材料と、
c)前記第1吸着材料の上に配置された実質的に水不浸透性のフィルムであって、前記フィルムは、前記キャビティと前記電子筐体の内部との間を流体連結させる、実質的に水不浸透性のフィルムと、
d)第2吸着材料と、
e)前記プラスチックハウジングの開口部を覆って、前記第1吸着材料と、前記実質的に水不浸透性のフィルムと、前記第2吸着材料と、を前記プラスチックハウジング内に格納するフィルター材料と、
を含み、
前記実質的に水不浸透性のフィルムのみによって前記第1吸着材料を前記キャビティ内に配置するように覆うと共に、前記実質的に水不浸透性のフィルムは、前記第1吸着材料と前記第2吸着材料との間に配置され、開口部を有し、前記実質的に水不浸透性のフィルムによって、前記第1吸着材料を出入りする水蒸気の流れが調節される、吸着構造体。
【請求項2】
前記フィルムが金属コーティングを含む、請求項1に記載の吸着構造体。
【請求項3】
前記フィルター材料は、前記プラスチックハウジングと結合されている、請求項1又は2に記載の吸着構造体。
【請求項4】
前記フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフレート、ポリエチレン、又は、これらの組みあわせのうち、少なくとも一つを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸着構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、すべての指定国の出願人である米国内企業のDONALDSON COMPANY,INC.ならびにすべての指定国の発明者である米国民のAndre D.Leierおよび米国民のDaniel L.Tumaの名義でPCT国際特許出願として2013年10月24日に出願され、2012年10月26日に出願された米国仮特許出願第61/719,138号明細書、および2013年3月13日に出願された米国特許出願第13/800,158号明細書(それらの内容全体が参照により本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、密閉容積中の水分の制御に関する。特に、本出願は、ディスクドライブ筐体などの電子筐体中の水分の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスクドライブを収容する電子筐体などの多くの筐体の内部は、制御された湿度に維持されることが望ましい。制御された低湿度の維持は、電子部品の腐蝕および劣化を回避するために有益となりうる。同様に、湿度を必ずしも最小限にしない場合でさえも、ある範囲内に湿度を制御することが望ましい場合が多い。たとえば、ディスクドライブ筐体の場合、ディスクドライブ筐体中の水蒸気量は空気の密度に影響を与え、それによって読み書きヘッドの浮上高さに影響が生じる。これらの状況において、読み書きヘッドの高さを特定の狭い範囲内に維持できるように、制御された一定湿度に維持されることが望ましい。
【0004】
周囲の水分を吸収するために電子筐体の内側に吸着材料を配置することができる。この目的のためにはシリカゲルが特に一般的な吸着剤である。活性炭でさえも、かなりの水吸着特性を有する。しかし、ディスクドライブの製造、保管、および動作の間に水の吸着および脱着が起こる方法のため、ディスクドライブ筐体中に単に吸着剤を加えるだけでは、水の制御の問題のすべてが解決されるとは限らない。特に、ディスクドライブ中の湿度制御の問題は、電子筐体が製造され使用される条件が変動することによって複雑になり:ディスクドライブ筐体は、多くの場合開放環境中で組み立てられ、その環境では、存在する吸着剤を含むドライブ筐体の内部は容易に大気水分を吸収することができる。製造環境からの水の取り込みを制限することによって、ディスクドライブ筐体が後に完全にまたはほぼ完全に密閉されるときのために水容量を保持できることが理解されよう。
【0005】
ある状況では、吸着剤中に蓄積する水分は、ディスクドライブに電源が入り加熱されるときに密閉(またはほぼ密閉された)電子筐体中に放出され、それによって絶対湿度が増加し、読み書きヘッドの浮上高さに影響が生じうる。ハードディスクドライブに生じる条件の変化の別の例としては、熱帯から温帯、さらには北極までなどの広範囲の環境への曝露、およびノートブックコンピュータドライブの頻繁なオンオフサイクルからサーバドライブの常時使用までの範囲の動作条件が挙げられる。ドライブ筐体中の含水量が適切に管理されないと、これらの環境および動作条件のすべてで性能の低下が生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、電子筐体中の水分を制御する能力、特にディスクドライブ筐体中の水分を制御する能力が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電子筐体中で使用するための吸着構造体が本明細書に記載される。この吸着構造体は、たとえば、吸着材料と、吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料とを含む。ポリマー材料は、吸着材料を出入りする水蒸気の流れを調節する。この水蒸気の流れの制限は、ディスクドライブの製造中に多すぎる水分を吸着材料が吸着するのが防止され、それによって、ドライブ筐体が密閉またはほぼ密閉された後に残存する水蒸気に対する水吸着容量が維持されるので、有益である。さらに、水分の流れの制限によって、動作中にドライブ温度が上昇する場合などに、吸着剤からの水の急速な放出が防止される。
【0008】
本発明はさらに、電子筐体中で使用するための吸着構造体であって、吸着材料とともに、吸着材料を実質的に取り囲むポリマーカバーを含む、吸着構造体に関する。ポリマーカバーは、吸着材料を出入りする水蒸気の流れをポリマーカバー中の開口部によって調節する。開口部によって、ポリマーカバーを通過する水蒸気の緩やかな流れが可能となる。さらに、代表的実施形態においては、ポリマーカバー中の開口部をフィルター材料が覆うことで、吸着剤からディスクドライブ(または別の電子)筐体中への粒子状汚染物質の移動が防止される。この構造体は、さらなるハウジングまたはカバーを必要とせずに電子筐体中に直接配置することができる。
【0009】
本出願はさらに、電子筐体中で使用するための吸着構造体であって、内部体積と少なくとも1つの第1の開口部とを含む実質的に剛性の物体を含む、吸着構造体に関する。吸着材料がポリマーカバーによって実質的に取り囲まれるように、実質的に剛性の物体の内部体積中に吸着材料が配置される。ポリマーカバーは、一般に、吸着材料を出入りする水蒸気の穏やかな移動を可能にする1つ以上の開口部を中に有し、圧力の均一化が可能となる。ある実施において、実質的に剛性の物体の開口部をフィルター材料で覆うことで、吸着剤からディスクドライブ(または別の電子)筐体中への粒子状汚染物質の移動も防止される。
【0010】
本出願は、電子筐体中で使用するための吸着構造体であって、内部体積と少なくとも1つの第1の開口部とを含む実質的に剛性の物体を含む、吸着構造体にも関する。実質的に剛性の物体内部体積中に第1の吸着材料が配置される。この吸着材料は、ポリマーカバーによって実質的に取り囲まれる。実質的に剛性の物体中には第2の吸着材料も配置され、第2の吸着材料は、第1の吸着材料を実質的に取り囲むポリマーカバーの外側に配置される。したがって、第2の吸着材料(多くの場合活性炭を含有する)は、第1の吸着材料を出入りする水の移動を制限する水分の移動に関して同じ制限は有さない。一方はポリマーカバーに取り囲まれ、一方はポリマーカバーに取り囲まれないこの2つの吸着材料の組み合わせは、水蒸気の制御に好都合となる場合があり、有機材料などの他の汚染物質の除去に役立てることもできる。
【0011】
吸着材料と、吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料とは、場合によりプラスチックハウジングなどのハウジング中に配置される。ハウジングは、電子筐体の外部と連絡する1つ以上の通気開口部を含むことができる。ハウジングは、1つ以上の追加のフィルター材料、あるいは種々の防湿材およびフィルムをも含むことができる。
【0012】
本明細書に記載のある実施において、吸着材料はシリカゲルを含む。別の吸着材料としては、たとえば、モレキュラーシーブおよび活性炭が挙げられる。好適な吸着材料としては、シリカゲル、モレキュラーシーブ、および/または活性炭の組み合わせを挙げることができる。場合により吸着材料は圧縮成形タブレットに成形される。別の好適な吸着材料としては、吸着ウェブ、吸着ビーズ、吸着顆粒、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
代表的実施形態において、吸着材料は、少なくとも10重量パーセントのシリカゲル、あるいは少なくとも40重量パーセントのシリカゲル、場合により少なくとも80重量パーセントのシリカゲルを含む。ある実施において吸着剤は、20重量パーセント未満のシリカゲル、あるいは60重量パーセント未満のシリカゲル、場合により100重量パーセント未満のシリカゲルを含む。好適な吸着材料としては、たとえば、0〜20重量%のシリカゲル、40〜60重量%のシリカゲル、あるいは80〜100重量%のシリカゲル、あるいは10〜90重量%のシリカゲルを含有する吸着剤が挙げられる。
【0014】
代表的実施形態において、吸着材料は、少なくとも10重量パーセントの活性炭、あるいは少なくとも20重量パーセントの活性炭、場合により少なくとも50重量パーセントの活性炭を含む。ある実施において吸着剤は、20重量パーセント未満の活性炭、あるいは50重量パーセント未満の活性炭、場合により100重量パーセント未満の活性炭を含む。好適な吸着材料としては、たとえば、0〜20重量パーセントの活性炭、20〜50重量パーセントの活性炭、あるいは50〜100重量パーセントの活性炭を含有する吸着剤が挙げられる。
【0015】
代表的な一実施形態において、吸着剤は、相対湿度60%未満で60%グラム/吸着剤グラム未満の水吸着容量を有する。場合により、吸着剤は、相対湿度60%未満で50%グラム/吸着剤グラム未満;あるいは相対湿度60%未満で40%グラム/吸着剤グラム未満;およびまたは相対湿度60%未満で30%グラム/吸着剤グラム未満の水吸着容量を有する。ある実施において吸着剤は、相対湿度60%未満で50%グラム/吸着剤グラムを超える、相対湿度60%未満で30%グラム/吸着剤グラムを超える、または相対湿度60%未満で20%グラム/吸着剤グラムを超える水吸着容量を有する。ある代表的実施形態においては、吸着剤は、相対湿度60%未満で50%〜60%グラム/吸着剤グラム、相対湿度60%未満で40%〜50%グラム/吸着剤グラム、または相対湿度60%未満で20%〜30%グラム/吸着剤グラムの水吸着容量を有する。
【0016】
吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料は、たとえば収縮包装フィルムを含むことができる。ある実施において、吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料は、吸着材料の形状に実質的に適合する収縮包装されたフィルムを含む。ポリマー材料としては、ポリエチレンなどのポリオレフィンを挙げることができる。好適なポリマー材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフレート(polyethylene terephalate)、ポリエチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ある実施において、ポリマー材料は、フィルムを通過する水分移動をさらに制限するための金属コーティングを含む。好適なポリマーフィルムは、0.1〜1ミル、1〜3ミル、および3〜5ミルの厚さを有する。フィルムは望ましくは、38℃および90%相対湿度において25グラム/平方メートル/24時間/ミル厚さ未満の水蒸気透過速度を有する。ある実施形態において、フィルター材料は、ポリマー材料の一部または全てを実質的に取り囲むまたは覆う。
【0017】
種々の実施において、吸着材料を実質的に取り囲む材料は、少なくとも1つの開口部を有し、その開口部を介して水蒸気が流れることができる。種々の別の構成において複数の開口部を使用することができる。開口部によって、吸着材料を出入りする水蒸気の移動が制限され遅くなる。ある実施形態において、開口部の幅は0.001〜2.0ミリメートルである。粒子状汚染物質の放出を防止するために、ポリマー材料中の1つ以上の開口部をフィルター材料で覆うことができる。
【0018】
ある実施において、第1の吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料の外側に第2の吸着材料が配置される。代表的な一実施形態において、第2の吸着剤は、相対湿度60%未満で60%グラム/吸着剤グラム未満の水吸着容量を有する。場合により第2の吸着剤は、相対湿度60%未満で30%グラム/吸着剤グラム未満、あるいは相対湿度60%未満で10%グラム/吸着剤グラム未満の水吸着容量を有する。ある実施において第2の吸着剤は、相対湿度60%未満で30%グラム/吸着剤グラムを超える、相対湿度60%未満で10%グラム/吸着剤グラムを超える、または相対湿度60%未満で1%グラム/吸着剤グラムを超える水吸着容量を有する。ある代表的実施形態において、第2の吸着剤は、相対湿度60%未満で30%〜60%グラム/吸着剤グラム、相対湿度60%未満で10%〜30%グラム/吸着剤グラム、または相対湿度60%未満で1%〜10%グラム/吸着剤グラムの水吸着容量を有する。
【0019】
この概要は本発明の限定を意図したものではない。本発明は以下の詳細な説明および特許請求の範囲でさらに説明される。
【0020】
以下の図面と関連して本発明をより十分に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の斜視図を示しており、吸着構造体は、吸着剤タブレットを覆うポリマーフィルムを含む。
図2図1の吸着構造体の側面図を示している。
図3図1および図2の吸着構造体の側断面図を示している。
図4】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、フィルムが収縮する前の、吸着剤タブレットを覆う収縮包装ポリマーフィルムを含む。
図5】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、フィルムが収縮した後の、吸着剤タブレットを覆う収縮包装ポリマーフィルムを含む。
図6】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、吸着剤タブレットを覆うポリマーフィルムと、収縮包装ポリマーフィルム中の開口部の外側に取り付けられたフィルター材料とを含む。
図7】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、吸着剤タブレットを覆うポリマーフィルムと、収縮包装ポリマーフィルム中の開口部に取り付けられたフィルター材料とを含む。
図8】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、ハウジング中に配置された吸着剤を覆うポリマーフィルムを含み、ハウジング中の開口部を覆うフィルター材料を有する。
図9A】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、吸着剤タブレットを覆うポリマーフィルムと、ポリマーフィルムの外側に配置された第2の吸着材料とを含む。
図9B】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、くぼみの中に配置された吸着剤タブレットと、吸着剤タブレットを覆う実質的に水不浸透性のフィルム(しかしフィルム中に開口部を有する)と、ハウジング中に配置された第2の吸着材料とを含む。
図10A】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、吸着剤タブレットを覆うポリマーフィルムと、ポリマーフィルムの外側に配置された第2の吸着材料とを含む。ハウジング底部の通気開口部によって、電子筐体の外側の空気交換が可能である。
図10B】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、くぼみの中に配置された吸着剤タブレットと、吸着剤タブレットを覆う実質的に水不浸透性のフィルム(しかしフィルム中に開口部を有する)と、ハウジング中に配置された第2の吸着材料とを含む。ハウジング中の通気開口部によって、電子筐体の外側の空気交換が可能である。
図11A】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、吸着剤タブレットを覆うポリマーフィルムと、ポリマーフィルムの外側に配置された第2の吸着材料とを含む。ハウジング中の通気開口部によって、第1の吸着剤を実質的に迂回して電子筐体の外側の空気交換が可能である。
図11B】本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体の側断面図を示しており、吸着構造体は、くぼみの中に配置された吸着剤タブレットと、吸着剤タブレットを覆う実質的に水不浸透性のフィルム(しかしフィルム中に開口部を有する)と、ハウジング中に配置された第2の吸着材料とを含む。ハウジング中の通気開口部によって、第1の吸着剤を実質的に迂回して電子筐体の外側から空気交換が可能である。
図12】直径0.5〜1.0ミリメートルの孔を有する厚さ1.6ミルのポリマーカバーを有するサンプル吸着剤タブレットの吸水のグラフを示している。
図13】直径0.5〜1.0ミリメートルの孔を有する厚さ1.6ミルのポリマーカバーを有するサンプル吸着剤タブレット、およびポリマーカバーを有さない吸着剤タブレットの吸水のグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は種々の修正および変形形態が可能であるが、それらの詳細は例および図面によって示されており、以下に詳細に説明する。しかし、本発明が記載の特定の実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。それどころか、本発明の意図および範囲内の修正、同等物、および変形を含むことを意図している。
【0023】
本出願は、電子筐体中に使用され、特にディスクドライブ筐体中に使用される吸着構造体に関する。吸着構造体は、シリカゲルなどの吸着材料を含む。吸着材料を出入りする水蒸気の流れは、水蒸気の急速な移動を防止するフィルムによって制限される。フィルムとしては、たとえば、吸着材料を実質的に取り囲むポリマーフィルムを挙げることができる。ポリマーフィルムは、場合により、水蒸気がフィルムを通過できるように1つ以上の開口部を含むことができるが、水蒸気のそのような流れは、ポリマーフィルムが存在しない場合よりも依然としてはるかに遅い。
【0024】
代表的実施形態において、吸着材料はシリカゲルを含まず、別の実施形態においては、少なくとも20重量パーセントのシリカゲル、あるいは少なくとも40重量パーセントのシリカゲル、場合により少なくとも80重量パーセントのシリカゲルを含有する。ある実施において、吸着剤は20重量パーセント未満のシリカゲル、あるいは60重量パーセント未満のシリカゲル、場合により100重量パーセント未満のシリカゲルを含む。好適な吸着材料としては、たとえば、0〜20重量パーセントのシリカゲル、40〜60重量パーセントのシリカゲル、あるいは80〜100重量%のシリカゲルを含有する吸着剤が挙げられる。
【0025】
代表的実施形態においては、吸着材料は活性炭を含まず、あるいは少なくとも20重量パーセントの活性炭、あるいは少なくとも20重量パーセントの活性炭、場合により少なくとも50重量パーセントの活性炭を含む。ある実施において吸着剤は、20重量パーセント未満の活性炭、あるいは50重量パーセント未満の活性炭、場合により100重量パーセント未満の活性炭を含む。好適な吸着材料としては、たとえば、0〜20重量パーセントの活性炭、20〜50重量パーセントの活性炭、あるいは50〜100重量パーセントの活性炭を含有する吸着剤が挙げられる。
【0026】
代表的な一実施形態において、吸着剤は、相対湿度60%未満で60%グラム/吸着剤グラム未満の水吸着容量を有する。場合により、吸着剤は、相対湿度60%未満で50%グラム/吸着剤グラム未満、あるいは相対湿度60%未満で40%グラム/吸着剤グラム未満、およびまたは相対湿度60%未満で30%グラム/吸着剤グラム未満の水吸着容量を有する。ある実施において吸着剤は、相対湿度60%未満で50%グラム/吸着剤グラムを超える、相対湿度60%未満で30%グラム/吸着剤グラムを超える、または相対湿度60%未満で20%グラム/吸着剤グラムを超える水吸着容量を有する。ある代表的実施形態において、吸着剤は、相対湿度60%未満で50〜60%グラム/吸着剤グラム、相対湿度60%未満で40〜50%グラム/吸着剤グラム、または相対湿度60%未満で20〜30%グラム/吸着剤グラムの水吸着容量を有する。
【0027】
典型的には、第1の吸着剤は、第2の吸着材料よりも少なくとも20パーセント大きい総水吸着容量、場合により第1の吸着材料よりも少なくとも50パーセント大きい総水吸着容量、あるいは第1の吸着材料よりも少なくとも100パーセント大きい総水吸着容量、あるいは第1の吸着材料よりも少なくとも200パーセント大きい総水吸着容量を有する。
【0028】
場合により、吸着材料は圧縮成形タブレットに成形される。別の好適な吸着材料としては、吸着ウェブ、吸着ビーズ、顆粒状吸着剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料は、たとえば収縮包装フィルムを含むことができる。ある実施において、吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料は、吸着材料の形状に実質的に適合する収縮包装されたフィルムを含む。
【0029】
吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料は、たとえば収縮包装フィルムを含むことができる。ある実施において、吸着材料を実質的に取り囲むポリマー材料は、吸着材料の形状に実質的に適合する収縮包装されたフィルムを含む。ポリマー材料としては、ポリエチレンなどのポリオレフィンを挙げることができる。好適なポリマー材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフレート(polyethylene terephalate)、ポリエチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ある実施において、ポリマー材料は、フィルムを通過する水分移動をさらに制限するための金属コーティングを含む。ある実施形態において、フィルター材料は、ポリマー材料の一部または全てを実質的に取り囲むまたは覆う。


【0030】
ある実施において、吸着材料を実質的に取り囲む材料は、少なくとも1つの開口部を有し、その開口部を介して水蒸気が流れることができる。種々の別の構成において複数の開口部を使用することができる。開口部によって、吸着材料を出入りする水蒸気の移動が制限され遅くなる。ある実施形態において、開口部の幅は0.001〜2.0ミリメートルである。ポリマー材料中の1つの開口部または複数の開口部をフィルター材料で覆うことができる。
【0031】
これより図面を参照すると、図1は、本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体10の斜視図を示しており、吸着構造体10は、吸着剤タブレット14を覆うポリマーフィルム12を含む。ポリマーフィルム12は吸着剤タブレット14を取り囲み、それによって吸着剤タブレット14を出入りする水蒸気の流れが制限される。吸着剤タブレット14を取り囲むポリマーフィルム12は、その端部に沿った継ぎ目16を示している。この継ぎ目16は、たとえば、2枚のポリマー材料のシートを互いに熱積層することによって形成される。図1に示されるポリマーフィルム12は、吸着構造体10の上面に配置された2つの開口部18も示している。2つの開口部18は、吸着剤組立体10を出入りする水蒸気の遅い移動を可能にする。2つの開口部18は、ポリマーフィルム12が収縮包装される実施形態において、ポリマーフィルム12の収縮中に気体を逃すこともできる。
【0032】
図2は、図1の吸着構造体10の側面図を示している。ポリマーフィルム12が吸着剤タブレット14のすべての面を取り囲んでいることが、図2より明らかである。ポリマーフィルム12は、2枚のポリマーフィルムのシートが互いに積層された場合の継ぎ目16も示している。ある実施形態においては、この継ぎ目16が吸着剤タブレット14を取り囲むが、別の実施において継ぎ目は、タブレット14の1つの長い側面および2つの短い側面の上にだけ存在し、あるいは場合によりタブレット14の1つの短い側面および2つの長い面の上にだけ存在することが理解されよう。
【0033】
図3は、図1の吸着構造体10の側断面図を示している。図3の吸着構造体10は、吸着剤タブレット14を取り囲むポリマーフィルム12を示している。図1〜3、および本明細書の別の箇所で示される実施形態において、ポリマーフィルム14と吸着剤(吸着剤タブレット14)との間に間隙13が示されている。しかし、この間隙13が図に示されるよりも大きい場合または小さい場合があることを理解されたい。したがって、たとえばポリマー材料12が収縮包装されたフィルムとして形成される場合、収縮包装されたフィルムが温められて吸着材料の周囲で収縮すると、間隙13は、はるかに小さくなる場合があり、さらには感知できなくなりうる。別の場合では、ある実施において、より大きな間隙が形成される。しかし、吸着構造体全体のサイズが小さく維持されるように、間隙が比較的小さいことが一般に望ましい。
【0034】
図4および5は、本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体20の側断面図を示しており、吸着構造体20は、フィルム収縮前(図4)およびフィルム収縮後(図5)の、吸着剤タブレット24を覆う収縮包装ポリマーフィルム22を含む。図4中、ポリマーフィルム22は、吸着剤タブレット24を取り囲み、シールされた端部27Aおよび27Bが末端となるシール26を含む。ポリマーフィルム22は、吸着構造体20の上部の開口部28以外からは気流が実質的に不浸透性である。この構造体は、後に高温(加熱ランプまたは熱風の使用などによって)に曝露され、ポリマーフィルム22が収縮して、タブレット24の全体的な形状に適合する。この例ではシールされた端部27Aおよび27Bは収縮して小さなタブ29Aおよび29Bを形成する。
【0035】
図6は、本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体30の側断面図を示しており、吸着構造体30は、吸着剤タブレット34を覆うポリマーフィルム32を含む。ポリマーフィルムは、開口部38と、ポリマーフィルム32上の開口部38の外側に取り付けられたフィルター材料39とを有する。開口部38によって、ある程度水蒸気がポリマーフィルム32を横断して移動することができるが、依然として流量は実質的に調節される。さらに、フィルター材料39は、ポリマーフィルム32の内側からの粒子状汚染物質の放出を防止するのに役立つ。たとえば、吸着剤タブレット34から放出されうるシリカゲル粒子または活性炭粒子である。フィルター材料は、種々のフィルター材料から選択することができ、たとえば発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。フィルター材料は、場合によりポリマーフィルム32を横断する水分の移動速度も調節する。ポリマーフィルム32中の開口部38は、フィルター材料のない場合に使用される開口部よりも一般に大きい。好適な大きさの開口部38としては、たとえば、0.001平方ミリメートルを超える、0.01平方ミリメートルを超える、0.05平方ミリメートルを超える、0.1平方ミリメートルを超える、0.2平方ミリメートルを超える、1平方ミリメートルを超える、5平方ミリメートルを超える、または10平方ミリメートルを超える領域が挙げられる。
【0036】
図7は、図6のものと類似した別の吸着構造体40を示しており、吸着構造体40は、吸着剤タブレット44を覆うポリマーフィルム42と、ポリマーフィルム42中の開口部48に取り付けられたフィルター材料49とを含む。図7の設計の利点の1つは、フィルター材料49がポリマーフィルム42と吸着剤タブレット44との間に配置されることである。この設計によって、フィルター材料49の周囲に露出端を有することが回避され、場合により、ポリマーフィルム42との特に確実な連結が可能となる。
【0037】
図6および7の吸着構造体30、40は、場合により、追加のハウジングまたはカバーを必要とせずに電子筐体中に直接設置することができる。吸着剤のポリマーフィルムによって、吸着材料を出入りする水の急速な移動が防止される。さらに、フィルター材料39、49との組み合わせで、吸着剤タブレット34、44からの粒子状汚染物質が回避される。したがって、吸着構造体30、40は、くぼみの中への投入、ブラケットを用いた固定、接着剤を用いた所定位置への接着、または電子筐体中に保持するための他の方法で、ディスクドライブ筐体中に容易に設置することができる。
【0038】
別の実施においては、図8に示されるような剛性または実質的に剛性の筐体中に吸着材料を配置することが望ましい。図8の吸着構造体50は、底部53および側壁55を有するプラスチックハウジング51の側断面図を示している。吸着構造体50は、ハウジング51中に配置された吸着剤タブレット54を覆うポリマーフィルム52を含み、フィルター材料58がハウジング上部の開口部57を覆っている。図示される実施形態において、ポリマーフィルム52は開口部59を含む。
【0039】
図9Aは、本発明の実施の1つにより作製した別の吸着構造体60の側断面図を示している。吸着構造体60は、第1の吸着剤64を覆うポリマーフィルム62を含む。ポリマーフィルム62の外側には第2の吸着剤74が配置される。第1の吸着剤64および第2の吸着剤74の両方が、プラスチックハウジング61の内側に配置される。第1の吸着剤64を出入りする水蒸気の流れは、1つ以上の開口部68が形成されたポリマーフィルム62によって制限される。第2の吸着剤74はポリマーフィルムによって取り囲まれておらず、したがって水蒸気の取り込みおよび放出をより自由に行うことができ、より重要なこととしてドライブに対して有害な有機汚染物質および酸性ガスを自由に吸着することができる。一般に、第1の吸着剤64は、第2の吸着剤74よりも水を保持する能力が高い。また、これら2つの吸着剤は異なる材料でできていてよい。たとえば、第1の吸着剤は主としてまたは完全にシリカゲルであってよく、一方、第2の吸着剤は主としてまたは完全に活性炭であってよい。封入される第1の吸着剤がシリカゲルを含み、封入されない吸着剤が活性炭を含むという吸着剤の選択は、第1の吸着剤自体の製造および保管中を含めたディスクドライブの製造および保管中のシリカゲルによる水分の取り込みがごく遅いという利点を有する。特にこの第1の吸着剤は、ポリマーフィルム62中に封入させるという性質によって、ディスクドライブの製造および部品の組み立ての間の取り扱い中に、一般に水で飽和されない。これによって、第1の吸着剤64は、製造終了時にドライブ筐体が密閉されたときに、さらなる水吸着容量を有することができ、その時点で筐体中に残存する水は第1の吸着剤64によって除去することができる。このさらなる吸着は、水分が小さな開口部68を介して吸着剤中に移動する必要がある結果として遅くなる場合があるが、この遅い水の吸着は、(ドライブの加熱などによって)第1の吸着剤が後に水を放出する場合の、後の水の遅い放出と適合している。
【0040】
図9Aは、フィルター材料78がどのようにして開口部67でプラスチックハウジング74を覆うかも示している。フィルター材料78は、たとえば発泡ポリテトラフルオロエチレンフィルムであってよい。フィルター材料78は、吸着剤64、74から放出されうるシリカゲル粒子または活性炭粒子などの粒子状汚染物質がハウジング61の内側から放出されるのを防止するのに役立つ。フィルター材料78は、種々のフィルター材料から選択することができ、たとえば発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0041】
図9Bは、本発明の実施の1つにより作製した別の吸着構造体80の側断面図を示しており、吸着構造体80は、プラスチックハウジング81中のくぼみの中に配置された第1の吸着剤84と、吸着剤84の上にある実質的に水不浸透性のフィルム82(しかしフィルム82中に開口部88を有する)と、ハウジング81中に配置された第2の吸着材料94とを含む。
【0042】
第1の吸着剤84および第2の吸着剤94の両方がプラスチックハウジング81の内側に配置される。第1の吸着剤84を出入りする水蒸気の流れは、開口部88が形成されたフィルム82によって制限される。フィルム82は、第1の吸着剤84を取り囲んでいないが、第1の吸着剤84の他の全ての側面がプラスチックハウジング81で取り囲まれているので、依然として吸着剤を出入りする水分の動きは調節される。一般に、フィルム82は、その端部85に沿ってプラスチックハウジング81に取り付けられる。しかし、ある実施においては、ポリマーフィルムは、単に第1の吸着剤の上の所定位置に配置される。また、金属箔またはフィルム、あるいは他の非ポリマーのフィルムを水不浸透性フィルム82として使用できることに留意されたい。
【0043】
第2の吸着剤94は、ポリマーフィルムに取り囲まれておらず、不浸透性フィルム82の上にあり、したがって水蒸気の取り込みおよび放出をより自由に行うことができ、より重要なこととしてドライブに対して有害な有機汚染物質および酸性ガスを自由に吸着することができる。一般に、第1の吸着剤84は、第2の吸着剤94よりも水を保持する能力が高い。また、これら2つの吸着剤は異なる材料でできていてよい。たとえば、第1の吸着剤は主としてまたは完全にシリカゲルであってよく、一方、第2の吸着剤は主としてまたは完全に活性炭であってよい。封入される第1の吸着剤がシリカゲルを含み、封入されない吸着剤が活性炭を含むという吸着剤の選択は、第1の吸着剤自体の製造および保管中を含めたディスクドライブの製造および保管中のシリカゲルによる水分の取り込みがごく遅いという利点を有する。特にこの第1の吸着剤は、不浸透性フィルム82の下に位置するという性質によって、ディスクドライブの製造および部品の組み立ての間の取り扱い中に、一般に水で飽和されない。これによって、第1の吸着剤84は、製造終了時にドライブ筐体が密閉されたときに、さらなる水吸着容量を有することができ、その時点で筐体中に残存する水は第1の吸着剤84によって除去することができる。
【0044】
図9Bは、開口部87においてプラスチックハウジング81の上部を覆うフィルター材料98も示している。フィルター材料98は、たとえば発泡ポリテトラフルオロエチレンフィルムであってよい。フィルター材料98は、ハウジング81の内側からの粒子状汚染物質の放出の防止に役立つ。たとえば、吸着剤84、94から放出されうるシリカゲル粒子または活性炭粒子である。フィルター材料98は、種々のフィルター材料から選択することができ、たとえば、発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0045】
図10Aおよび10Bは、2つのさらなる吸着構造体100、120の側断面図を示しており、図9Aおよび9Bに示されるものと類似しているが、プラスチックハウジング101、121の1つの表面上に配置された通気開口部110、130を有する。通気開口部は、通常、電子筐体中の対応する開口部(図示せず)に及ぶ。ハウジング中の通気開口部によって、電子筐体の外側の空気交換が可能となる。
【0046】
図10Aの吸着構造体100は、第1の吸着剤104を覆うポリマーフィルム102と、ポリマーフィルム102の外側に配置された第2の吸着剤114とを含む。第1の吸着剤104および第2の吸着剤114の両方がプラスチックハウジング101の内側に配置される。第1の吸着剤104を出入りする水蒸気の流れは、1つ以上の開口部108が形成されたポリマーフィルム102によって制限される。第2の吸着剤104は、ポリマーフィルムに取り囲まれておらず、したがって水蒸気の取り込みおよび放出をより自由に行うことができ、より重要なこととしてドライブに対して有害な有機汚染物質および酸性ガスを自由に吸着することができる。
【0047】
一般に、第1の吸着剤104は、第2の吸着剤114よりも水を保持する能力が高い。また、これら2つの吸着剤は異なる材料でできていてよい。たとえば、第1の吸着剤は主としてまたは完全にシリカゲルであってよく、一方、第2の吸着剤は主としてまたは完全に活性炭であってよい。図10Aは、フィルター材料118がどのようにしてプラスチックハウジング101の上部を覆っているかも示している。フィルター材料118は、たとえば発泡ポリテトラフルオロエチレンフィルムであってよい。フィルター材料118は、ハウジング101の内側からの粒子状汚染物質の放出の防止に役立つ。たとえば、吸着剤104、114から放出されうるシリカゲル粒子または活性炭粒子である。フィルター材料118は、種々のフィルター材料から選択することができ、たとえば、発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0048】
通気開口部130に加えて、図10Bのフィルター構造体120は、プラスチックハウジング121中のくぼみの中に配置された第1の吸着剤124と、吸着剤124の上の実質的に水不浸透性のフィルム122(しかしフィルム122中に開口部128を有する)と、ハウジング121中に配置された第2の吸着材料134とを示している。第1の吸着剤124および第2の吸着剤134の両方がプラスチックハウジング121の内側に配置される。第1の吸着剤124を出入りする水蒸気の流れは、開口部128が形成されたポリマーフィルム122によって制限される。ポリマーフィルム122は、第1の吸着剤124を取り囲んでいないが、第1の吸着剤124の他の全ての側面がプラスチックハウジング121で覆われているので、依然として吸着剤を出入りする水分の動きは調節される。一般にポリマーフィルム122は、その端部125に沿ってプラスチックハウジング121に取り付けられる。しかし、ある実施においては、ポリマーフィルムは、単に第1の吸着剤の上の所定位置に配置される。第2の吸着剤134は、ポリマーフィルムに取り囲まれておらず、したがって水蒸気の取り込みおよび放出をより自由に行うことができ、ドライブに対して有害な有機汚染物質および酸性ガスを自由に吸着することができる。一般に、第1の吸着剤124は、第2の吸着剤134よりも水を保持する能力が高い。図9Aおよび9Bで前述した実施例と同様に、2つの吸着剤は異なる材料でできていてよい。たとえば、第1の吸着剤は主としてまたは完全にシリカゲルであってよく、一方、第2の吸着剤は主としてまたは完全に活性炭であってよい。図10Bは、フィルター材料138がどのようにしてプラスチックハウジング121の上部を覆っているかも示している。フィルター材料138は、たとえば発泡ポリテトラフルオロエチレンフィルムであってよい。フィルター材料138は、ハウジング121の内側からの粒子状汚染物質の放出の防止に役立つ。
【0049】
図11Aは、本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体140の側断面図を示しており、吸着構造体140は、第1の吸着材料144を取り囲むポリマーフィルム142と、ポリマーフィルム142の外側に配置された第2の吸着材料154とを含む。これらの吸着剤はハウジング141中に配置される。ハウジング中の通気開口部150によって、電子筐体の外側の空気交換が可能となり、チャネル151を介して第1の吸着剤144を実質的に迂回することができる。ポリマーフィルム142は、1つ以上の開口部148を含む。さらに、ハウジング141にはフィルター材料158が取り付けられる。
【0050】
図11Bは、本発明の実施の1つにより作製した吸着構造体160の側断面図を示しており、吸着構造体は、くぼみの中に配置された吸着材料164と、吸着材料164を覆う実質的に水不浸透性のフィルム162(しかしフィルム162中に開口部168を有する)と、ハウジング中に配置された第2の吸着材料174とを含む。ハウジング中の通気開口部170によって、電子筐体の外部の空気交換が可能となり、吸着材料164を実質的に迂回することができるが、依然として第2の吸着剤174およびフィルター材料178には流れることができる。通気開口部170がディスクドライブ筐体の外側と連結される代表的実施形態においては、通気開口部170およびチャネル151の構成によって、第2の吸着剤174中に空気が流れる。
【0051】
図12および図13を参照すると、本開示により作製した代表的な吸着構造体の性能を示している。それぞれのフィルター構造体は、シリカゲルを含有するタブレットを含んだ。それぞれのタブレットは、乾燥重量基準で約1.3グラムのシリカゲルを含有した。5個のタブレットを厚さ約1.6ミルのポリエチレンフィルム中に密封した。各タブレット上のポリエチレンフィルムには、直径約0.75ミリメートルの孔を1つ開けた。残りの2つのタブレットはフィルムで包まなかった。
【0052】
タブレットを、部分真空下の60℃の乾燥オーブンに42時間入れて、過剰の水分を除去した。それぞれの吸着構造体の重量を測定すると、加熱真空オーブンに入れた後の乾燥重量が約2.65グラムであった。乾燥後、タブレットを25℃および相対湿度60パーセントの湿度室に入れた。各タブレットの重量変化を定期的に測定した。最初の2時間のデータは、包まれていない第2の吸着剤としてより高く、水容量が消費されるまでは迅速に吸水する。
【0053】
以下の表1は、相対湿度60パーセントの25℃の室中で維持される各サンプルの累積吸水量を示している。
【0054】
【表1】
【0055】
図12は、包まれたタブレットの吸水量のグラフを示している。図12および表1から分かるように、包まれたタブレットは、336〜484時間の最終測定機期間中でさえも吸水が続いたことを示している。吸水は、湿度室中の最初の期間で最も多く、次に、後の測定期間のそれぞれにわたって段階的に減少した。336〜484時間区分の間でさえも、タブレットは1時間当たり約0.3ミリグラム水分を依然として取り込んだ。
【0056】
図13は、図12と同じ結果を示しているが、2つの包んでいない吸着剤タブレットの吸水速度も加えられている。包んでいないタブレットは、2〜6時間の期間中に非常に多くの水分を取り込み、22.5ミリグラム/時を超え、25ミリグラム/時に近づいた。このことは、1.5ミリグラム/時未満であり、1ミリグラム/時により近かった包まれたタブレットと比較される(たとえば、表1および図12参照)(たとえば、表1および図12参照)。記載の第2の期間の6〜24時間では、包まれていない吸着剤タブレットは、この時間の間に約10ミリグラム/時の多量の吸水を示し続けた。対照的に、包まれたタブレットはすべて1ミリグラム/時未満であった。記載の第3の時間24〜148時間では、包まれていない吸着剤タブレットの吸水は、吸着容量が消費されたため、約0.2ミリグラム/時程度まで急激に減少し、包まれた錠剤で観察された値のほぼ半分となった。次の期間では、包まれていないタブレットはさらなる吸水が起こらず、一方包まれたタブレットは一定の緩やかな吸水が続いた。
【0057】
したがって、図12および13に示されるように、包まれた吸着剤タブレットによる水の吸着は、より長く、より安定した期間の吸水を示し、さらに初期の吸水速度がはるかに少なかったことを示している。これに関して、直径約0.75mmの孔を有する包まれた吸着剤は、より安定した吸水を示し、加熱によって、または低相対湿度筐体中への配置によってより緩やかに水分を放出すると予想され、このようにして吸着剤が配置される電子筐体でより安定な内部湿度が得られる。
【0058】
本発明の実施形態を参照しながら本発明を詳細に説明してきたが、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、それらの形態および詳細の上記およびその他の変更が可能なことを当業者は理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13