特許第6352284号(P6352284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352284
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】タービンエンジン用圧縮アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/16 20060101AFI20180625BHJP
   F02C 7/042 20060101ALI20180625BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20180625BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20180625BHJP
   F04D 29/56 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F02C9/16 A
   F02C7/042
   F01D17/16 A
   F04D29/54 C
   F04D29/56 C
   F04D29/54 H
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-541212(P2015-541212)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公表番号】特表2015-535049(P2015-535049A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】FR2013052660
(87)【国際公開番号】WO2014072642
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】1260637
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスキュレ,ジャン−フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ビスカイ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】スベストル,ギョーム
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−040912(JP,A)
【文献】 米国特許第05794432(US,A)
【文献】 特開平03−172539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/16
F01D 17/00、17/16
F02C 7/00、 7/042
F04D 29/54−29/56、29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸を備えたタービンエンジン用の圧縮アセンブリにして、前記長手方向軸に沿って延び空気流を受容することができる吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイール(115)を備えた少なくとも1つの空気圧縮段と、可動圧縮機ホイール(115)の入口における前記空気流の空気速度を調整するために可動圧縮機ホイールの上流側で吸気ダクト内に位置決めされ、前記長手方向軸に対して半径方向に延びる複数の可変設定ベーン(110)を備えた予旋回グリル(105)とを備えた前記圧縮アセンブリであって、グリル(105)の2つの隣接するベーン(110)間のピッチ(S2)は、吸気ダクトの上方部の所与の高さにおいて、2つのベーン(110)のうちの1つのベーンのコード長(C2)より長く、前記吸気ダクトの前記上方部は、前記長手方向軸から半径方向に最も離れた当該吸気ダクトの一部であり、圧縮段が低速運転時に予旋回グリル(105)が閉鎖動作位置にある場合、吸気ダクトの上方部においてベーン(110)の予旋回角度は80°〜90°であることを特徴とする、圧縮アセンブリ。
【請求項2】
圧縮段の高速運転時に予旋回グリル(105)が開放動作位置にある場合、ベーン(110)の予旋回角度は、吸気ダクトの上方部において15°より大きい、請求項1に記載の圧縮アセンブリ。
【請求項3】
圧縮段の高速運転時に予旋回グリル(105)が開放動作位置にある場合、ベーン(110)の予旋回角度は、吸気ダクトの上方部において15°〜25°である、請求項1に記載の圧縮アセンブリ。
【請求項4】
予旋回グリル(105)のベーン(110)の予旋回角度が、吸気ダクトの半径方向距離に応じて変化する、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の圧縮アセンブリ。
【請求項5】
予旋回角度が、グリルの制御リングの設定値が0°である場合に、吸気ダクトの底部では0°であり、吸気ダクトの上部では25°であり、前記吸気ダクトの底部および上部がそれぞれ、前記長手方向軸に対するベーンの遠位端および近位端である、請求項4に記載の圧縮アセンブリ。
【請求項6】
ベーン(110)のコード長(C2)が、予旋回グリル(105)の複数のベーン(110)に対して一定である、請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載の圧縮アセンブリ。
【請求項7】
ベーン(110)が、吸気ダクト内で均等に分配される、請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項に記載の圧縮アセンブリ。
【請求項8】
長手方向軸を備えたタービンエンジンにして、前記長手方向軸に沿って延び空気流を受容することができる吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイール(115)を備えた少なくとも1つの空気圧縮段と、可動圧縮機ホイール(115)の入口における前記空気流の空気速度を調整するために可動圧縮機ホイールの上流側で吸気ダクト内に位置決めされ、前記長手方向軸に対して半径方向に延びる複数の可変設定ベーン(110)を備えた予旋回グリル(105)とを備えたタービンエンジンであって、アセンブリが、グリル(105)の2つの隣接するベーン(110)間のピッチ(S2)が、吸気ダクトの上方部の所与の高さにおいて、2つのベーン(110)のうちの1つのベーンのコード長(C2)より長く、前記吸気ダクトの前記上方部は、前記長手方向軸から半径方向に最も離れた当該吸気ダクトの一部であり、圧縮段が低速運転時に予旋回グリル(105)が閉鎖動作位置にある場合、吸気ダクトの上方部においてベーン(110)の予旋回角度は80°〜90°であることを特徴とする、タービンエンジン。
【請求項9】
長手方向軸に沿って延び空気流を受容することができる吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイール(115)を備えた少なくとも1つの空気圧縮段と、可動圧縮機ホイール(115)の入口における前記気流の空気速度を調整するために可動圧縮機ホイール(115)の上流側で吸気ダクト内に位置決めされ、前記長手方向軸に対して半径方向に延びる複数の可変設定ベーン(110)を備えた予旋回グリル(105)とを備えた請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の、前記長手方向軸を備えたタービンエンジン用の圧縮アセンブリの予旋回グリル(105)を制御する方法であって、グリル(105)の2つの隣接するベーン(110)間のピッチ(S2)は、吸気ダクトの所与の高さにおいて、吸気ダクトの上方部において、2つのベーン(110)のうちの1つのベーンのコード長(C2)より長いので、グリル(105)のベーン(110)は、圧縮段の低速運転速度では、80°〜90°の予旋回角度で位置決めされ、前記吸気ダクトの前記上方部は、前記長手方向軸から半径方向に最も離れた当該吸気ダクトの一部であることを特徴とする、方法。
【請求項10】
さらに、グリル(105)のベーン(110)は、圧縮段の高速運転速度では、吸気ダクトの上方部において、15°より大きい予旋回角度で位置決めされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、グリル(105)のベーン(110)は、圧縮段の高速運転速度では、吸気ダクトの上方部において、15°〜25°の予旋回角度で位置決めされる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、航空機用タービンエンジンの分野に関する。特に、本発明は、タービンエンジン用、特に、ヘリコプタターボシャフトエンジン用の圧縮アセンブリおよびこのタイプのアセンブリが装備されたタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の形では、ターボシャフトエンジンは、吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイールを備えた少なくとも1つの空気圧縮段もしくは圧縮機とを備えた圧縮アセンブリを備える。
【0003】
このタイプの圧縮アセンブリは、通常、サージラインと呼ばれる空気力学的安定限界であって、特にターボシャフトエンジンの加速能力を制限する空気力学的安定限界を有する。低速運転速度では、圧縮アセンブリの空気力学的安定限界は第1の圧縮段の空気力学的負荷に関係しているので、第1の可動ホイールに到達する空気流の衝撃が非常に大きくなる。
【0004】
本出願人により出願されている仏国特許出願公開第2970508号明細書に記載されている周知の解決策は、第1の可動圧縮機ホイールの上流側のターボシャフトエンジンの吸気ダクトに予旋回グリルと呼ばれるグリルを取り付けて、第1の可動ホイールの回転方向に前記グリルを配向することによって前記第1の可動ホイールに到達する空気流の衝撃を低減することに基づいている。
【0005】
このタイプの予旋回グリルは、可変ピッチベーンと呼ばれる配向可能な入口案内ベーンを備え、入口案内ベーンはケーシングに取り付けられ、吸気ダクト内に均等に分配される。グリルが設置される、すなわち、ベーンが制御リングによって配向されることにより、可動ホイールの入口の空気流の速度を調整して、第1の可動ホイールに到達する空気流の衝撃を適応させることができる。
【0006】
このような予旋回グリルの周知の構造は、ベーンの予旋回角度ひいては空気流の配向角度が吸気ダクトの高さに応じて変化するようにグリルのベーンを配置することに基づいている。空気流の配向角度は、吸気ダクトの所与の高さにおける予旋回グリルのベーンによる空気流の相対偏向として定義される。すなわち、空気流の配向角度は、ターボシャフトエンジンのシャフトに対する吸気ダクトの半径方向距離に応じて変化する。
【0007】
図1図3は、先行技術による予旋回グリル5の2つのベーン10と可動圧縮機ホイール15の2つのブレード20とから成るアセンブリのヘッドの概略断面図である。グリル5の隣接するベーン10は、「ピッチ」と呼ばれる距離S1だけ離間される。それぞれのベーン10は、湾曲した断面を有し、ベーン10の上流側端部と下流側端部との間、すなわち、ベーン10の前縁と後縁との間にコード長C1を画定する。
【0008】
圧縮機の高速運転速度で、予旋回グリル5が開放状態である場合、例えば、予旋回グリル5の制御リング(図示せず)の設定値が0°の場合に、予旋回グリル5のベーン10の予旋回角度は、通常、(軸X−Xに対して)吸気ダクトの底部における約0°から吸気ダクトの上部における約15°の間の値となる。したがって、グリルに流入する空気流Fは、配向角度αだけ偏向される。配向角度αは、ベーンの予旋回角度に近い角度であり、グリル出口の絶対速度Vで吸気ダクトの高さに応じた0°〜15°である。この場合、(軸X´−Xに沿った)軸方向成分はVz1である。このようなグリル5の設定は、圧縮機の高速運転速度に対して、特に、最高運転速度において、例えば、ヘリコプタのターボシャフトエンジンの場合では離陸時に使用される。
【0009】
圧縮機の低速運転速度では、図2に示されるように、グリル5の少なくとも一部が閉じられて、圧縮機のサージラインを低流量側に移動させると同時に動作ラインを高流量側に移動させることにより、空気力学的負荷が低減されてサージマージンが増加し、その結果、ターボシャフトエンジンの高い加速能力が得られる。このような構造では、予旋回グリル5の制御リング(図示せず)は、通常、例えば、約65°の値に設定され、それに対して、グリル5のベーン10の予旋回角度は吸気ダクト内の空気流の高さに応じて65°〜80°となる。
【0010】
ターボシャフトエンジンの高速運転速度(開放グリル状態)では、吸気ダクトの上部では圧縮機の第1の可動ホイール15に到達する空気流の相対速度W1は速く、例えば、可動ホイールのヘッドにおける相対マッハ数は1.4より大きくなり、吸気ダクトの上部ではグリル5のベーン10の予旋回角度は15°より大きくなり、例えば、最大で20°になるので、可動ホイール15の入口における空気の相対速度W1を大幅に低減し、圧縮効率を大幅に向上させることになる。
【0011】
しかし、このような構造では、図2に示されるように、低速で、予旋回グリル5の制御リングがグリル5の閉鎖値、例えば、約65°に設定されると、吸気ダクトの上部ではベーンの予旋回角度は約85°になる、すなわち、空気流は、吸気ダクトの最上部で、特に、ベーン10の遠位端領域でベーン10によって約85°に近い配向角度α1だけ偏向される。この場合、吸気ダクトの上部では予旋回グリル5の出口における空気流の軸X−Xに沿った軸方向速度Vz1は非常に遅くなるので、圧縮機の可動ホイール15のブレード20が空気力学的機能不全を生じる恐れがある。すなわち、空気の境界層が可動ホイール15のブレード20のヘッドの輪郭形状の状態を維持できなくなり、このことにより可動ホイール15内で空気力学的失速(通常、旋回失速と呼ばれる)が生じ、これが圧縮機の空気力学的安定性に悪影響を及ぼし、ひいてはこれが不利点となる。
【0012】
上記の不利点を克服するための迅速な解決策は、制御リングを低速で低値、例えば、約50°もしくは60°の値に調整して、予旋回グリルをわずかに閉じて、吸気ダクトの上部における空気流の軸方向速度Vz1を増すというものである。しかし、この調整により、吸気ダクトの高さの残りの部分では空気流の配向角度が小さくなり、これが不利点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2970508号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ターボシャフトエンジンの高速運転速度で吸気ダクトの上部におけるベーンの予旋回角度を15°より大きくすると同時に、ターボシャフトエンジンの低速運転速度で可動ホイールのブレードの空気力学的機能不全を防ぐことにより、既存の予旋回グリルの構造を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は航空機ターボシャフトエンジン用に開発されているが、本発明は、予旋回グリルを備えたタービンエンジンの任意の圧縮アセンブリ、例えば、ターボシャフトエンジン、ターボジェットエンジン、補助動力装置(APU)、地上設置式タービンエンジン、ターボ圧縮機などの圧縮アセンブリに関する。さらに、本発明は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、軸流遠心圧縮機などに関係なく、任意のタイプの圧縮機に関する。
【0016】
したがって、本発明は、タービンエンジン用、特に、ターボシャフトエンジン用の圧縮アセンブリにして、空気流を受容することができる吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイールを備えた少なくとも1つの空気圧縮段と、可動圧縮機ホイールの入口における前記空気流の空気速度を調整するために可動圧縮機ホイールの上流側で吸気ダクト内に位置決めされ、複数の可変設定ベーンを備えた予旋回グリルとを備えた前記圧縮アセンブリであって、吸気ダクトの所与の高さにおいて、グリルの2つの隣接するベーン間のピッチは2つのベーンのうちの1つのベーンのコード長より長いことを特徴とする圧縮アセンブリに関する。
【0017】
「ピッチ」は、グリルの隣接して配置された2つのベーンの2つの同じ点間の距離のことである。「コード長」は、予旋回グリルのベーンの上流側端部と下流側端部との間に伸びるセグメント、すなわち、予旋回グリルのベーンの前縁と後縁との間に伸びるセグメントの距離のことである。「上流側」および「下流側」は、タービンエンジン内を循環する空気流の方向に対して使用される。
【0018】
有利には、吸気ダクトの上方部において(例えば、前記ベーンの遠位端領域において)、2つの隣接するベーン間のピッチは、2つのベーンのうちの1つのベーンのコード長より長い。「吸気ダクトの上方部」とは、ターボシャフトエンジンの長手方向軸から半径方向に最も離れた吸気ダクトの一部のことである。「吸気ダクトの上部」は、ターボシャフトエンジンの長手方向軸に対するベーンの遠位端のことである。同様に、「吸気ダクトの下方部」とは、ターボシャフトエンジンの長手方向軸に最も近い吸気ダクトの一部のことである。「吸気ダクトの底部」は、ターボシャフトエンジンの長手方向軸に対するベーンの近位端のことである。
【0019】
先行技術の解決策では、予旋回グリルの2つの隣接するベーンの遠位端間のピッチは、グリルの1つのベーンのコード長以下である。すなわち、ピッチのコード長に対する比(S1/C1)は、0.9〜1である。したがって、グリルのベーンは、グリルの閉鎖位置では部分的に重なり、そのことにより、低速での空気流の軸方向速度が大幅に低減され、上述の空気力学的機能不全が生じる。
【0020】
本発明の圧縮アセンブリでは、グリルの2つの隣接するベーン間のピッチは2つのベーンのうちの1つのベーンのコード長より長いので、先行技術の解決策のようにグリルの閉鎖位置でベーンが互いに重なることはなくなり、圧縮段の高速運転速度で(予旋回グリルが非常に広く開放された状態に設定される)吸気ダクトの上方部における旋回角度が15°より大きいベーンを使用することができ、それと同時に、低速で(予旋回グリルが十分に閉鎖された状態に設定される)可動圧縮機ホイールの効率的な空気力学的動作が可能になる。
【0021】
本発明の特徴によれば、予旋回グリルが圧縮段の高速運転速度の開放位置にある場合、例えば、グリルの制御リングの設定値が0°である場合、ベーンの予旋回角度は、吸気ダクトの上方部において、特に、ダクトの遠位端領域において、15°より大きくなる、好ましくは、15°〜25°になる。したがって、第1の可動圧縮機に到達する空気流の相対速度が速い場合、例えば、可動ホイールのヘッドにおける相対マッハ数が1.4より大きい場合、吸気ダクトの上方部におけるグリルのベーンの予旋回角度を上記のような範囲の値にすることにより、圧縮機の最高運転速度で空気流の相対速度が十分に低減され、圧縮段の効率を大幅に向上させることができる。
【0022】
好ましくは、予旋回グリルが圧縮段の低速運転速度で閉鎖動作位置にある場合、例えば、グリルの制御リングの設定値が65°である場合、ベーンの予旋回角度は、吸気ダクトの上方部において、特に、ダクトの遠位端領域において、80°〜90°となる。この場合、2つの隣接するベーン間のピッチがベーンのコード長より長い場合、グリルの閉鎖位置でのベーン間の間隔により、空気流の軸方向速度は、予旋回グリルの制御リングの同じ設定値に対して、先行技術のアセンブリにおける空気流の軸方向速度より速くなる。すなわち、ベーン間の間隔により、特に、十分に閉鎖された状態に設定されている予旋回グリルを通過する空気流の軸方向速度は増すので、可動圧縮機ホイールのブレードの空気力学的機能不全を防ぐことができる。
【0023】
好ましくは、グリルのベーンは、タービンエンジンのシャフトに対して半径方向に伸び、予旋回グリルのベーンの予旋回角度が半径方向距離に応じて吸気ダクト内で変化するように構成される。そのためには、ベーンは、例えば、ねじれたベーンにしてもよい。
【0024】
好ましくは、予旋回角度は、グリルの制御リングの設定値が0°の場合、吸気ダクトの底部(すなわち、ターボシャフトエンジンのシャフトに対して半径方向に最も近位置)で約0°であり、吸気ダクトの上部(すなわち、ターボシャフトエンジンのシャフトから半径方向に最も離れた位置)で約25°である。
【0025】
本発明の一態様によれば、ベーンのコード長は、予旋回グリルの複数のベーンに対して一定である。
【0026】
本発明の特徴によれば、予旋回グリルは、吸気ダクトの半径方向部分、湾曲部分、もしくは軸方向部分に位置決めされる。「半径方向部分」および「軸方向部分」は、タービンエンジンのシャフトを対する部分を指す。
【0027】
有利には、ベーンは、吸気ダクト内で均等に分配するように配置される。すなわち、グリルのベーン間のピッチは一定である。
【0028】
さらに、本発明は、特に、ヘリコプタなどの航空機用のターボシャフトエンジンなどのタービンエンジンにして、空気流を受容することができる吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイールを備えた少なくとも1つの空気圧縮段と、可動圧縮機ホイールの入口における前記空気流の空気速度を調整するために可動圧縮機ホイールの上流側で吸気ダクト内に位置決めされ、複数の可変設定ベーンを備えた予旋回グリルとを備えたタービンエンジンであって、アセンブリが、吸気ダクトの所与の高さにおいて、好ましくは、吸気ダクトの上方部において、グリルの2つの隣接するベーン間のピッチは2つのベーンのうちの1つのベーンのコード長より長いことを特徴とするタービンエンジンに関する。
【0029】
さらに、本発明は、上述したように、空気流を受容することができる吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイールを備えた少なくとも1つの空気圧縮段と、可動圧縮機ホイールの入口における前記空気流の空気速度を調整するために可動圧縮機ホイールの上流側で吸気ダクト内に位置決めされ、複数の可変設定ベーンを備えた予旋回グリルとを備えた圧縮アセンブリの予旋回グリルを制御する方法であって、吸気ダクトの所与の高さにおいて、好ましくは、吸気ダクトの上方部、特に、ダクトの遠位端領域おいて、グリルの2つの隣接するベーン間のピッチは2つのベーンのうちの1つのベーンのコード長より長いので、グリルのベーンは圧縮段の低速運転速度で80°〜90°の予旋回角度で位置決めされることを特徴とする方法に関する。
【0030】
さらに、本発明は、上述したように、空気流を受容することができる吸気ダクトと、ダクトから空気流が送られる少なくとも1つの可動圧縮機ホイールを備えた少なくとも1つの空気圧縮段と、可動圧縮機ホイールの入口における前記空気流の空気速度を調整するために可動圧縮機ホイールの上流側で吸気ダクト内に位置決めされ、複数の可変設定ベーンを備えた予旋回グリルとを備えた圧縮アセンブリの予旋回グリルを制御する方法であって、吸気ダクトの所与の高さにおいて、好ましくは、吸気ダクトの上方部、特に、ダクトの遠位端領域おいて、グリルの2つの隣接するベーン間のピッチは2つのベーンのうちの1つのベーンのコード長より長いので、グリルのベーンは圧縮段の高速運転速度で15°より大きい予旋回角度で、好ましくは、15°〜25°の予旋回角度で位置決めされることを特徴とする方法に関する。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として挙げられた添付図面を参照した以下の説明を読めば明らかになるであろう。図面では、同様の要素に対して同じ参照番号が付与されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】先行技術のターボシャフトエンジンの予旋回グリルの2つのベーンと可動ホイールの2つのブレードとで形成されるアセンブリの断面図であり、予旋回グリルが開放位置にある場合の断面図である。
図2】予旋回グリルが閉鎖位置にある場合の図1のアセンブリの断面図である。
図3】先行技術の予旋回グリルのベーンの構造の断面図である。
図4】本発明の予旋回グリルのベーンの構造の断面図である。
図5】本発明のターボシャフトエンジンの予旋回グリルの2つのベーンと可動ホイールの2つのブレードとで形成されるアセンブリの断面図であり、予旋回グリルが閉鎖位置にある場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明はヘリコプタ用ターボシャフトエンジンに対して実現されたものであるが、本発明は、当然、予旋回グリルを備えた任意の圧縮アセンブリ、例えば、ターボシャフトエンジン、ターボジェットエンジン、補助動力装置(APU)、地上設置式タービンエンジン、ターボ圧縮機などの圧縮アセンブリで使用可能である。
【0034】
さらに、本発明は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、軸流遠心圧縮機などに関係なく、任意のタイプの圧縮機に関する。
【0035】
本発明のタービンエンジンの圧縮アセンブリは、空気流を受容する吸気ダクトと、吸気ダクトから空気流が送られる可動圧縮機ホイールと、予旋回グリルを備える空気圧縮段とを備える。予旋回グリルは、可動圧縮機ホイールに向かう上流側の空気流を整流して、可動圧縮機ホイールへの入口における速度を調整するために、可動圧縮機ホイールの上流側の吸気ダクト内に位置決めされる。グリルは、タービンエンジンのシャフトに対して半径方向に伸び、タービンエンジンのシャフトに垂直な同じ横断面内に配置される複数の可変設定ベーンを備える。
【0036】
タービンエンジンの動作時に、空気は吸気ダクトに入り、予旋回グリルを通過して、可動圧縮機ホイールまで送られる。可動圧縮機ホイールによって圧縮された空気流は、その後、燃焼室内に噴射されて、燃焼室で燃料と混合され、燃焼された後に、1つまたは複数のタービンを回転させるための運動エネルギーを供給する。
【0037】
タービンエンジンは、当然、第1の圧縮段と燃焼室との間に配置される他の圧縮段を備えてもよい。
【0038】
図4および図5は、本発明の予旋回グリル105の2つのベーン110の構造を示した図である。予旋回グリル105を制御する手段(図示せず)は、タービンエンジンの回転速度に応じて決まるベーン110を開閉するための設定規則に従って、グリル105のベーン110を配向することができる。この設定規則は、動作ラインとサージラインとの最小サージマージンを確保するように調整される。
【0039】
グリル105のベーン110は、ピッチS2だけ離間し、上流側端部と下流側端部との間、すなわち、前縁と後縁との間で湾曲しており、コード長C2を画定する。
【0040】
図5に示されているように、予旋回グリル105は、可動圧縮機ホイール115のブレード120の上流側(全体的な空気流Fの方向に)に配置される。可動ホイール115は、予旋回グリルによって偏向された空気流を加速させるために、速度ベクトルUに従って回転される。
【0041】
本発明によれば、グリル5の2つの隣接するベーン110間のピッチS2は、吸気ダクトの上部でグリル5のベーン110のコード長C2より長いので、グリル105の閉鎖位置では、ベーン110は互いにかぶさることはない。ピッチS2のコード長C2に対する比(すなわち、S2/C2)は、1〜1.5としてよい。
【0042】
したがって、圧縮機の高速運転速度(開放グリル状態)で、吸気ダクトの上部における空気流α2の予旋回角度値が15°〜25°になるので、可動ホイール115への入口における空気の相対速度W2を大幅に低減することができ、ひいては圧縮段の効率を大幅に向上させることができる。
【0043】
圧縮機の低速運転速度(閉鎖グリル状態)で、グリル105のベーン110間の間隔により、吸気ダクトの上部におけるベーンの予旋回角度が80°〜90°であっても、空気流の予旋回角度α2はより小さくなるので、低速での(予旋回グリル105が十分に閉鎖された状態に設定された)可動圧縮機ホイール115の空気力学的機能不全を防ぐのに十分な速さの軸方向速度Vz2が得られる。
【0044】
図5に示されているように、先行技術と比較してピッチS2を大きくすることにより、予旋回グリル105のベーン110の前縁BAと隣接するベーン110の後縁BFとの間を循環する空気流の偏向を制限することができる。
図1
図2
図3
図4
図5