(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352298
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】玉軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16C 33/64 20060101AFI20180625BHJP
F16C 33/62 20060101ALI20180625BHJP
F16C 19/02 20060101ALI20180625BHJP
F16C 33/32 20060101ALI20180625BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20180625BHJP
B21B 1/16 20060101ALI20180625BHJP
B21B 3/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
F16C33/64
F16C33/62
F16C19/02
F16C33/32
B64C1/00 A
B21B1/16 B
B21B3/02
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-548493(P2015-548493)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-503146(P2016-503146A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2013077160
(87)【国際公開番号】WO2014096047
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】1262632
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515169038
【氏名又は名称】エスカエフ・エアロスペース・フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】515169049
【氏名又は名称】リープヘル−エアロスペース・トゥールーズ・エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲノレ・ル・ジュヌ
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・マエオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ロッキ
【審査官】
瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−291946(JP,A)
【文献】
特開平03−194211(JP,A)
【文献】
特開2006−329265(JP,A)
【文献】
特開平11−210503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/64
B21B 1/16
B21B 3/02
B64C 1/00
F16C 19/02
F16C 33/32
F16C 33/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉軸受の製造方法であって、
化学組成が質量パーセントで2.3%の炭素と、4.2%のクロムと、7%のモリブデンと、6.5%のタングステンと、10.5%のコバルトと、6.5%のバナジウムとを含む鋼粉末(10)を焼結して焼結鋼(12)を得るステップ(110)と、
軸受リング(18)を形成するために、前記焼結鋼(12)を成形するステップと、
を含み、
前記成形するステップが、
棒鋼(14)を形成するために、前記焼結鋼(12)を圧延するステップ(120)と、
その寸法が、作製すべき前記軸受リング(18)の既定の寸法と実質的に等しい鋼ワッシャ(16)を形成するために、前記棒鋼(14)を切断するステップ(130)と、
前記軸受リング(18)を形成するために、前記鋼ワッシャ(16)を機械加工して内面(18A)および外面(18B)を有する環状形状を与えるステップ(140)と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
機械加工ステップ(140)に続いて、前記軸受リング(18)を熱処理するステップ(150)を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熱処理ステップ(150)に続いて、前記軸受リング(18)の前記内面(18A)および前記外面(18B)を修正して既定の形状および既定の最終寸法を与えるステップを含む、請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にバタフライバルブのための玉軸受を製造するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空環境における用途のバタフライバルブに使用されるように構成された玉軸受は、現在の技術水準において既に知られている。そのような玉軸受は一般的に、特にバタフライバルブが航空機用の空調装置を装備する場合、高い負荷下および高温で作動する。
【0003】
航空環境では、多くの場合、軸受は強い振動を受ける。このような振動は、高温と組み合わされると、軸受にグリースを塗布する可能性を制限する。したがって、既知の玉軸受は一般的に、高温で十分な耐食および硬度挙動を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高温、すなわち500℃程度の温度での硬度および耐食性に関する十分な性能を有する玉軸受を製造する方法を提供することによって、この欠点の改善法を見つけることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため、本発明の対象は特に、軸受、特に玉軸受の製造方法であって、
化学組成が質量パーセントで2.3%の炭素と、4.2%のクロムと、7%のモリブデンと、6.5%のタングステンと、10.5%のコバルトと、6.5%のバナジウムとを含む鋼粉末を焼結して焼結鋼を得るステップと、
軸受リングを形成するために焼結鋼を成形するステップと、
を含むことを特徴とする、製造方法である。
【0006】
言い換えると、軸受リングは、軸受製造業者が通常は予測しない粉末冶金法によって作製される。
【0007】
前述の化学組成はASP(登録商標)2060の名称で指定され、ERASTEEL社によって販売されている鋼種に対応するものである。そのような鋼種は、高い高温硬度および優れた耐摩耗性および引裂抵抗の両方を有する。
【0008】
本発明による方法を用いると、特にナノ凝集粉末の微細構造体の繊度を利用して粒度を低減させることによって、ゆえに欠陥を低減させることによって、従来の方法によって作製された軸受で得られる性能を超えることができる。さらに、従来技術で使用されるカーバイドは、通常、耐摩耗性および引裂抵抗の特性を低下させ、耐食性を確保する合金元素を吸収するが、このような微細な微細構造体は、大部分でカーバイドを含まない。最後に、粉末冶金、特に先に定義した鋼種の使用は通常、軸受製造業者の一般技能の一部ではないことを理解すべきである。
【0009】
本発明による方法は、1つまたは複数の以下の特徴を、単独でまたは技術的に可能な全ての組み合わせでさらに含み得る。
成形ステップが、
棒鋼を形成するために、焼結鋼を熱間圧延するステップと、
作製すべき軸受リングの既定の寸法とその寸法が実質的に等しい鋼ワッシャを形成するために、棒鋼を切断するステップと、
軸受リングを形成するために、内面および外面を有する一般的な環形状を与えるように鋼ワッシャを機械加工するステップと、
を含み、
機械加工ステップに続いて、軸受リングを熱処理するステップを含み、
熱処理ステップに続いて、既定の形状および既定の最終寸法を与えるために、軸受リングの内面および外面を修正するステップを含む。
【0010】
本発明はまた、軸受、特に互いに実質的に同軸を有する環状外輪および環状内輪と、外輪と内輪との間に半径方向に延在する玉と、を備える玉軸受であって、外輪および内輪の少なくとも一方、好ましくは両方の輪が焼結鋼製であり、その化学組成が質量パーセントで2.3%の炭素と、4.2%のクロムと、7%のモリブデンと、6.5%のタングステンと、10.5%のコバルトと、6.5%のバナジウムとを含むことを特徴とする軸受に関する。
【0011】
有利には、各玉はセラミック製である。
【0012】
最後に、本発明は、特に航空用途における、円形断面を有する導管体と、導管体の断面の形状と一致する円形形状を有するバルブとを含み、該バルブが導管体の円形断面を直径方向に横切るピボット連結の軸のまわりに回転可能であるバタフライバルブであって、ピボット連結が前述の軸受に従う少なくとも1つの軸受を含むことを特徴とする、バタフライバルブに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による製造方法の各ステップを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、例として与えられ、本発明の例示的実施形態による玉軸受の製造方法のステップを概略的に図示する添付の単一の図面を参照して作製された、以下の説明を読むことでより深く理解されるであろう。
【0015】
本方法は、寸法および形状が予め定められた玉軸受を製造するために適用される。特に、玉軸受は、各々が、内周面と外周面によって画定され、その寸法、特に長手方向高さ、内径、および外径が予め定められた、長手方向軸周りの一般的な環形状を有する、内輪および外輪を備える。
【0016】
本発明による方法は、化学組成が質量パーセントで2.3%の炭素と、4.2%のクロムと、7%のモリブデンと、6.5%のタングステンと、10.5%のコバルトと、6.5%のバナジウムとを含む、鋼粉末10を提供する予備的ステップ100を含む。例えば、鋼粉末は、ASP2060の名称で指定され、ERASTEEL社から販売されている鋼種の粉末である。
【0017】
一般的な粉末冶金法によると、該方法は、前記鋼粉末を焼結するステップ110を含む。この焼結ステップ110は、例えば、鋼粉末の熱間等方圧縮によって実現される。この焼結ステップ110の間、熱および圧力の影響下で鋼粉末の粒子は互いに堅固に付着している。焼結ステップ110の最後に得られる鋼は、以下で「焼結鋼12」と称される。
【0018】
次いで、該方法は、棒鋼14を形成するために、焼結鋼12を圧延するステップ120を含む。この圧延ステップ120は、棒鋼14が玉軸受の外輪の既定の外径と等しいかまたはそれより大きな径を有するように調整される。
【0019】
したがって、この同一の棒鋼14を、外輪の製造および内輪の製造に使用することができ、内輪の外径は外輪の外径よりも小さい。
【0020】
代替として、外輪の既定の外径と実質的に等しい直径を有するように圧延することによって第1の棒鋼を形成し、内輪の既定の外径と実質的に等しい直径を有するように圧延することによって第2の棒鋼を形成することができる。
【0021】
次いで、該方法は、作製すべき軸受リングの既定の寸法より実質的に大きいかまたは等しい寸法を有するワッシャ16を形成するように棒鋼14を切断するステップ130を含む。
【0022】
次いで、該方法は、軸受18の輪を形成するために、鋼ワッシャ16を機械加工するステップ140を含む。特に、機械加工は、軸受18の輪に環形状を与えると同時に、内周面18Aを区切るようにワッシャに中央開口部20を形成するように実施される。直径が既定の直径と実質的に等しくなるように、輪18の外径を修正するために外周面18Bもまた機械加工される。
【0023】
外輪と内輪を作製するために同一の棒鋼14を使用する場合、外輪を形成するために第1のワッシャが機械加工され、内輪を形成するために第2のワッシャが機械加工される。第2のワッシャの外面は、その外径を低減させるために、内輪の既定の外径と実質的に等しい直径が得られるまで機械加工される。
【0024】
次いで、該方法は、硬度、耐摩耗性、および引裂抵抗において最適な特性を輪18に与えるための熱処理ステップ150を含む。
【0025】
例えば、この熱処理ステップは、保護的な制御された雰囲気で850から900℃の間を含む温度で3時間の後に例えば外気中で700℃の温度まで1時間あたり10℃で徐冷する中温焼なましを含む。次いで、熱処理は、600から700℃の間を含む温度で約2時間の後に500℃まで徐冷する応力除去焼なましを含む。
【0026】
次いで、熱処理は、2つの段階、特に450から500℃の間を含む温度での第1段階および850から900℃の間を含む温度での第2段階における予備加熱を含む、保護雰囲気での焼入れ、および得るべき硬度に従って選択された温度でのオーステナイト化、続く40から50℃の間を含む温度への冷却を含む。
【0027】
最後に、熱処理は、560℃の温度で少なくとも1時間の3回の焼なましを含み、各焼なましの後には室温(25℃)への冷却が続く。
【0028】
最後に、該製造方法は、回転輪18に既定の最終形状および最終寸法を与えるための修正ステップ160を含む。
【0029】
特に、この修正ステップ160の間、これが外輪(
図1に図示されているように)である場合には輪18の内面18A上に、内輪である場合には輪の外面上に、玉のための回転溝22が作製される。
【0030】
前述のステップにより、軸受内輪または軸受外輪の製造が可能となる。
【0031】
製造方法は次いで、前述のステップによって各々製造された内輪および外輪を、内輪と外輪との間の回転溝に挿入された玉、例えばセラミックボールと組み立てるステップ170を含む。
【0032】
一般的なものであるためさらなる説明はなされないこの組立ステップ170により、玉軸受を得ることができる。
【0033】
代替として、前述の方法によって外輪または内輪の一方のみが作製され、従来の方法で他方の輪が作製される。
【0034】
したがって、前述の方法により、互いに実質的に同軸を有する環状外輪18および環状内輪と、外輪と内輪との間で半径方向に延在する玉とを備え、外輪および内輪の少なくとも一方、好ましくは両方の輪が、焼結鋼製であり、その化学組成が質量パーセントで2.3%の炭素と、4.2%のクロムと、7%のモリブデンと、6.5%のタングステンと、10.5%のコバルトと、6.5%のバナジウムとを含む、玉軸受を得ることができる。
【0035】
このような玉軸受は高温硬度および耐食性に対して十分な性能を有する。
【0036】
したがって、このような玉軸受は、航空用途のバタフライバルブの製造、例えば航空用途の空調装置用のバタフライバルブの製造に使用することができる。
【0037】
このようなバタフライバルブは一般的に、円形断面を有する導管体と、導管体の断面の円形形状と一致する円形形状のバルブとを備え、このバルブは導管体の円形断面を実質的に直径方向に通過するピボット連結の軸のまわりに回転する。この場合、ピボット連結は少なくとも1つの前述の玉軸受を含む。
【0038】
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく多様な変更が可能であることに留意されたい。
【符号の説明】
【0039】
10 鋼粉末
12 焼結鋼
14 棒鋼
16 鋼ワッシャ
18 軸受リング
18A 内面
18B 外面
110 焼結ステップ
120 圧延ステップ
130 切断ステップ
140 機械加工ステップ
150 熱処理ステップ