特許第6352303号(P6352303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352303
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】睡眠促進システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61M21/02 A
【請求項の数】37
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-551072(P2015-551072)
(86)(22)【出願日】2014年1月2日
(65)【公表番号】特表2016-505338(P2016-505338A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】US2014010070
(87)【国際公開番号】WO2014107509
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2016年12月28日
(31)【優先権主張番号】61/748,409
(32)【優先日】2013年1月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/859,161
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517260607
【氏名又は名称】イービービー セラピュティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー リック ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ドウアトリー エドワード ピー ジー
(72)【発明者】
【氏名】ベルトン ジェイソン エイ
(72)【発明者】
【氏名】タッカー ロバート イー
(72)【発明者】
【氏名】シルム ジェフリー ジェイ
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0125238(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/083151(WO,A1)
【文献】 特表2009−538158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0122673(US,A1)
【文献】 特表2002−534160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の睡眠を促進するサーマルシステムであって、前記システムは、
ハウジングを有するサーマルレギュレータユニットを含み、前記サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体の温度を制御するよう構成され、前記ハウジングは、前記熱伝達流体を収容したカートリッジの形態のリザーバを含み、前記リザーバは、前記カートリッジの頂部内に挿入され、前記カートリッジは、該カートリッジの底部に弁を有し、また、該カートリッジの頂部にベントを有し、前記ベントは、通気性であるが、液体を透過させない材料のものであり、前記リザーバ内への空気の導入を可能にするように構成されており、
前記サーマルレギュレータユニットに結合された時計を含み、
前記時計及び前記サーマルレギュレータユニットに結合されたディスプレイを含み、
前記被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の前頭に装着されるよう構成されたサーマルアプリケータを含み、前記サーマルアプリケータは、前記サーマルレギュレータユニットから熱伝達流体を流すよう構成され、
前記サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、前記サーマルアプリケータの温度を制御することによって前記被検者の睡眠を調整するための1つ又は2つ以上の熱制御プロフィールに基づいて前記熱伝達流体の温度を調節するよう構成されたコントローラを含み、
前記サーマルアプリケータを前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域と接触状態に維持するヘッドギヤを含む、システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記時計からの入力を受け取って前記被検者を起こすために所定の起床時間で前記熱伝達流体の温度を加減するよう構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記サーマルアプリケータの温度が約10℃〜約41℃から成る範囲から選択された標的温度にあるように前記熱伝達流体の温度を維持するよう構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記サーマルレギュレータユニットは、ペルティエ素子、抵抗加熱器、及びファンのうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記サーマルアプリケータは、前記被検者の前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域だけを温度調節するが、前記被検者の頭及び眼窩を含む顔の他の領域を温度調節することがないようになっている、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記コントローラが前記熱伝達流体の温度を調節するよう構成さた複数の熱制御プロフィールを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記サーマルレギュレータユニットは、前記熱伝達流体を加熱し、冷却し、又は加熱したり冷却したりするよう構成された熱電気モジュールを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記カートリッジは、前記サーマルレギュレータユニットに結合されるようになっている熱伝達流体を収容している、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記サーマルレギュレータユニットと前記サーマルアプリケータを連結する流体導管を更に含み、前記流体導管は、熱伝達流体を前記サーマルレギュレータユニットと前記サーマルアプリケータとの間で移送するよう構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、前記システム内の熱伝達流体の高さ位置をモニタするよう構成された流体高さ位置検出器を更に含む、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記サーマルレギュレータユニットと連絡状態にあり、前記被検者が前記1つ又は2つ以上の熱管理プロフィールを選択することができるよう構成された制御部を更に含む、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記ヘッドギヤは、前記サーマルアプリケータを前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域だけと接触状態に維持するよう構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記サーマルレギュレータユニットは、前記サーマルレギュレータユニットの内部配管内に設けられていて、前記サーマルレギュレータユニットの熱電気モジュールにより温度調節されるよう構成された熱伝達流体の第1のリザーバと、前記熱電気モジュールによって温度調節されることのない熱伝達流体の第2のリザーバと、を含み、前記第2のリザーバは、前記カートリッジの形態の前記リザーバであり、前記弁は、熱伝達流体を前記第1のリザーバと前記第2のリザーバとの間で移送して前記第1のリザーバ内における熱伝達流体の高さ位置を維持するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記ディスプレイは、照明時に前記サーマルレギュレータユニットの前記ハウジング越しに見ることができるデッドフロント形ディスプレイを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
被検者の睡眠を促進するサーマルシステムであって、前記システムは、
ハウジングを有するサーマルレギュレータユニットを含み、前記サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体の温度を制御するよう構成され、前記ハウジングは、前記熱伝達流体を収容したカートリッジの形態のリザーバを含み、前記リザーバは、前記カートリッジの頂部内に挿入され、前記カートリッジは、該カートリッジの底部に弁を有し、また、該カートリッジの頂部にベントを有し、前記ベントは、通気性であるが、液体を透過させない材料のものであり、前記リザーバ内への空気の導入を可能にするように構成されており、
前記サーマルレギュレータユニットに結合された時計を含み、
前記時計及び前記サーマルレギュレータユニットに結合されたディスプレイを含み、
ユーザが起床時刻を選択することができるように構成されたユーザ入力を含み、
前記被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の前頭に装着されるよう構成されたサーマルアプリケータを含み、前記サーマルアプリケータは、前記サーマルレギュレータユニットから熱伝達流体を流すよう構成され、
前記サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、前記サーマルアプリケータの温度を制御することによって前記被検者の睡眠を調整するための1つ又は2つ以上の熱制御プロフィールに基づいて前記熱伝達流体の温度を調節するよう構成されたコントローラを含み、前記コントローラは、前記起床時刻に前記熱伝達流体の温度を加減するよう構成され、
前記サーマルアプリケータを前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域と接触状態に維持するヘッドギヤを含む、システム。
【請求項16】
前記サーマルアプリケータは、前記被検者の前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域だけを温度調節するが、前記被検者の頭及び眼窩を含む顔の他の領域を温度調節することがないようになっている、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、前記コントローラが前記熱伝達流体の温度を調節するよう構成された複数の熱制御プロフィールを含む、請求項15記載のシステム。
【請求項18】
前記サーマルレギュレータユニットは、前記熱伝達流体を加熱し、冷却し、又は加熱したり冷却したりするよう構成された熱電気モジュールを含む、請求項15記載のシステム。
【請求項19】
前記カートリッジは、前記サーマルレギュレータユニットに結合されるようになっている熱伝達流体を収容している、請求項15記載のシステム。
【請求項20】
前記サーマルレギュレータユニットと前記サーマルアプリケータを連結する断熱流体導管を更に含み、前記断熱流体導管は、熱伝達流体を前記サーマルレギュレータユニットと前記サーマルアプリケータとの間で移送するよう構成されている、請求項15記載のシステム。
【請求項21】
前記サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、前記システム内の熱伝達流体の高さ位置をモニタするよう構成された流体高さ位置検出器を更に含む、請求項15記載のシステム。
【請求項22】
前記サーマルレギュレータユニットと連絡状態にあり、前記被検者が前記1つ又は2つ以上の熱管理プロフィールを選択することができるよう構成された制御部を更に含む、請求項15記載のシステム。
【請求項23】
前記ヘッドギヤは、前記サーマルアプリケータを前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域だけと接触状態に維持するよう構成されている、請求項15記載のシステム。
【請求項24】
前記サーマルレギュレータユニットは、前記サーマルレギュレータユニットの内部配管内に設けられていて、前記サーマルレギュレータユニットの熱電気モジュールにより温度調節されるよう構成された熱伝達流体の第1のリザーバと、前記熱電気モジュールによって温度調節されることのない熱伝達流体の第2のリザーバと、を含み、前記第2のリザーバは、前記カートリッジの形態の前記リザーバであり、前記弁は、熱伝達流体を前記第1のリザーバと前記第2のリザーバとの間に移送して前記第1のリザーバ内における熱伝達流体の高さ位置を維持するように構成されている、請求項15記載のシステム。
【請求項25】
前記サーマルレギュレータユニットは、ペルティエ素子、抵抗加熱器、及びファンのうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項15記載のシステム。
【請求項26】
被検者の睡眠を促進するサーマルシステムであって、前記システムは、
ハウジングを有するサーマルレギュレータユニットを含み、前記サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体の温度を制御するよう構成され、
前記サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、前記熱伝達流体を加熱し、冷却し、又は加熱したり冷却したりするよう構成された熱電気モジュールを含み、
前記サーマルレギュレータユニットの内部配管内に設けられた熱伝達流体の第1のリザーバを含み、前記第1のリザーバは、前記熱電気モジュールによって温度調節されるよう構成され、
前記熱電気モジュールによって温度調節されることのない熱伝達流体の第2のリザーバを含み、前記第2のリザーバは、カートリッジの形態のリザーバであり、前記第2のリザーバは、前記カートリッジの頂部内に挿入され、前記カートリッジは、該カートリッジの底部に設けられ、熱伝達流体を前記第1のリザーバと前記第2のリザーバとの間に移送して前記第1のリザーバ内における熱伝達流体の高さ位置を維持するように構成された弁を有し、また、該カートリッジの頂部にベントを有し、前記ベントは、通気性であるが、液体を透過させない材料のものであり、前記第2のリザーバ内への空気の導入を可能にするように構成されており、
前記被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の前頭に装着されるよう構成されたサーマルアプリケータを含み、前記サーマルアプリケータは、前記サーマルレギュレータユニットから熱伝達流体を流すよう構成され、
前記サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、前記サーマルアプリケータの温度を制御することによって前記被検者の睡眠を調整するための1つ又は2つ以上の熱制御プロフィールに基づいて前記熱伝達流体の温度を調節するよう構成されたコントローラを含み、前記コントローラは、前記被検者を起こすために前記起床時刻に前記熱伝達流体の温度を加減するよう構成され、
前記サーマルアプリケータを前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域と接触状態に維持するヘッドギヤを含む、システム。
【請求項27】
前記コントローラは、前記サーマルアプリケータの温度が約10℃〜約41℃から成る範囲から選択された標的温度にあるように前記第1のリザーバ内の前記熱伝達流体の温度を維持するよう構成されている、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記コントローラは、所定の起床時刻に前記熱伝達流体の温度を加減するよう構成されている、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
時計ディスプレイを備えた時計を更に含む、請求項26記載のシステム。
【請求項30】
前記サーマルアプリケータは、前記被検者の前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域だけを温度調節するが、前記被検者の頭及び眼窩を含む顔の他の領域を温度調節することがないようになっている、請求項26記載のシステム。
【請求項31】
前記コントローラは、前記コントローラが前記熱伝達流体の温度を調節するよう構成された複数の熱制御プロフィールを含む、請求項26記載のシステム。
【請求項32】
前記サーマルレギュレータユニットは、ペルティエ素子、抵抗加熱器、及びファンのうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項26記載のシステム。
【請求項33】
前記第2のリザーバは、前記サーマルレギュレータユニットに結合されるようになった取り外し可能なカートリッジとして構成されている、請求項26記載のシステム。
【請求項34】
前記サーマルレギュレータユニットと前記サーマルアプリケータを連結する流体導管を更に含み、前記流体導管は、熱伝達流体を前記第1のリザーバと前記サーマルアプリケータとの間で移送するよう構成されている、請求項26記載のシステム。
【請求項35】
前記第1のリザーバ内に設けられていて、前記第1のリザーバ内の熱伝達流体の高さ位置をモニタするよう構成された流体高さ位置検出器を更に含む、請求項26記載のシステム。
【請求項36】
前記サーマルレギュレータユニットと連絡状態にあり、前記被検者が前記1つ又は2つ以上の熱管理プロフィールを選択することができるよう構成された制御部を更に含む、請求項26記載のシステム。
【請求項37】
前記ヘッドギヤは、前記サーマルアプリケータを前記前頭前及び前頭皮質を覆う前記被検者の頭の領域だけと接触状態に維持するよう構成されている、請求項26記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において説明する器具及びシステムは、一般に、睡眠具合を向上させ(入眠時間の短縮、睡眠時間の維持を含む)、睡眠障害、例えば不眠症の治療を含む(これには限定されない)睡眠を促進させ又は増加させる器械(例えば、器具及びシステム)及び方法に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2013年1月2日に出願された米国特許仮出願第61/748,409号(発明の名称:SYSTEMS AND METHODS FOR ENHANCING SLEEP )及び2013年7月26日に出願された米国特許仮出願第61/859,161号(発明の名称:APPARATUS AND METHOD FOR MODULATING SLEEP )の優先権主張出願であり、これら米国特許仮出願を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0003】
〔参照による引用〕
本明細書において言及される全ての非特許文献(又は刊行物)及び特許文献は、各個々の非特許文献又は特許文献の内容が参照による引用プラクティスによって具体的に且つ個々に記載されていたものとするのと同じ程度に、参照により引用されてこれらの記載内容全体が本明細書の一部となっているものとする。
【背景技術】
【0004】
不眠症を含む睡眠障害及び不規則性は、広く見受けられると共に蔓延している問題であるが、睡眠の治療及び/又は促進のためのシステムが幾つか存在する。本明細書において説明するシステム及び方法は、この要望に応える。
【発明の概要】
【0005】
非侵襲性局所熱刺激を被検者の前頭皮質に加えることによって、睡眠を促進し、入眠時間を短縮し(寝つきを良くし)、総睡眠時間を増加させ、不眠症を治療し、他の神経障害を治療する器械が所定の時間にわたる被検者の頭の指定された領域への所定レベルの熱エネルギーの付与を正確に制御するよう構成されたサーマルアプリケータを含むのが良い。この制御は、最適な治療を提供して、睡眠を促進し、入眠時間を短縮し、又は睡眠関連障害について被検者を治療することができる。
【0006】
一般に、本明細書において説明する器械は、被検者の頭に取り付けられるよう構成されたサーマルアプリケータ及びサーマルアプリケータに結合されると共にサーマルアプリケータを介する被検者の熱エネルギーの付与を制御するよう構成されたレギュレータ(調節器)を有するのが良い。また、ヘッドギヤが用いられるのが良い。サーマルアプリケータは、被検者の頭に取り付けられて特に前頭/前頭前皮質を覆う被検者の頭の領域に温度調節を施すよう構成されているのが良く、サーマルアプリケータは、特に、この領域への熱エネルギーの積極的な付与を制限する(例えば、他の隣接の領域、例えば眼窩領域等への積極的な調節を阻止する)よう構成されているのが良い。
【0007】
本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、目覚まし時計機能を被検者の睡眠の調節と一体化する時計(例えば、目覚まし時計)装置として構成されるのが良い。特に、本明細書において説明する器械は、時間を表示し、睡眠を助長すると共に/或いは促進し(例えば、入眠時間を短縮し)及び/又は起床時の快適さを高めるアラーム又は起床機能がプログラムされているのが良い時計として機能するのが良い。例えば、本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、ユーザが所望の睡眠時間(例えば、就寝時刻)及び/又は所望の起床時刻をプログラムすることができるよう構成されているのが良い。コントローラは、所望の定刻における睡眠及び/又は入眠を促進するよう温度調節の適用を作動させることができ又は更に、例えば、温度を変化させて睡眠維持温度から起床温度に移行させることにより所望の起床時刻又はその前の温度の調節を加減することができる。起床温度は、睡眠状態から覚醒状態(例えば、周囲温度での又はそれに近い温度での)への快適な移行をもたらすよう選択されるのが良い。
【0008】
本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、追加的に又は代替的に、取り外し可能であり、熱伝達流体(例えば、水)のリザーバを有するカートリッジを有することができ、カートリッジは、温度調節されるサーマルレギュレータユニット内の溜まった状態の熱伝達流体に対して温度調節されることのない熱伝達流体を提供することができる。かくして、この器械は、サーマルレギュレータの内部リザーバ内(例えば、サーマルレギュレータの内部配管内)に存在する熱伝達流体を温度調節する(加熱したり/或いは冷却したりする)ことしかできない。
【0009】
カートリッジの内容物を排出することができると共に/或いはカートリッジが少なくとも部分的に潰れることができ、それにより、流体がカートリッジのリザーバを出てサーマルレギュレータの温度調節部分(例えば、内部配管)内に流入することができる。例えば、カートリッジは、剛性(潰れない)フレーム構造内に保持された潰れることができるチャンバであるのが良く、この潰れることができるチャンバに熱伝達流体を充填するのが良い。例えば、カートリッジは、ハウジング(例えば、ボックス)内に納められた袋であっても良い。袋の中身を出さなくても良い。幾つかの形態では、カートリッジは、弁を有し、弁を含む形態では、弁は、カートリッジをサーマルレギュレータユニットの内部リザーバに係合させない場合、流体がカートリッジから漏れ出るのを阻止するよう構成されているのが良い。
【0010】
一般に、本明細書において説明する器械は、睡眠を助長し又は促進するよう構成されているのが良い。かくして、これら器械は、静粛であるようになっているのが良い(例えば、40dBのSPL未満又は通常の会話の大きさのほぼ1/4、±10dB SPL)で動作する)。この器械は、マスキングノイズ(例えば、音楽、ホワイトノイズ等)を提供するようになっているのが良い。
【0011】
本明細書において説明する器械のうちの任意のものは又、プロフィールのメニューの中からの動作プロフィールの選択を可能にするよう構成されているのが良い。プロフィールは、熱伝達流体の温度を調節することによってサーマルアプリケータの温度を制御するよう適用される温度調節のプロフィールを含むのが良い。幾つかの形態では、プロフィールは、保持温度(第1の保持温度)、周囲温度から保持温度に勾配をなして変化させる勾配変化時間、保持温度の持続時間等のうちの1つ又は2つ以上を含む。温度は、熱伝達流体の実際の温度又はサーマルアプリケータの温度に対応するのが良い。かくして、幾つかの形態では、コントローラは、熱伝達流体及び/又はサーマルアプリケータのうちのいずれか一方又は両方の温度を検出する1つ又は2つ以上のセンサからの入力を受け取り、そしてこのコントローラは、それに応じて温度を調節するのが良い(例えば、閉ループ)。変形例として、コントローラは、開ループ型コントローラであっても良い。
【0012】
一般に、サーマルアプリケータは、単独で又はヘッドギヤと関連して、被検者に当ててサーマルアプリケータを保持するのを助け、被検者の頭の一部分又は一領域とサーマルアプリケータとの間でのみ熱エネルギーを伝達するよう構成されているのが良い。特に、被検者の頭の温度制御領域は、前頭及び/又は前頭前皮質(例えば、前頭)を覆う領域に対応するのが良い。サーマルアプリケータ及び/又はヘッドギヤは、熱伝達流体と標的組織の外側に位置する被検者の頭及び/又は人体の領域、例えば眼、眼窩、頬、後頭部、耳等との間における熱エネルギーの伝達を阻止するよう断熱されているのが良い。サーマルアプリケータは、前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の頭の領域だけを温度調節するが、眼窩を含む被検者の頭及び顔面の他の領域を温度調節することがないようになっているのが良い。
【0013】
例えば、被検者の睡眠を促進するサーマルシステムは、ハウジングを有するサーマルレギュレータユニットを含むのが良く、サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体の温度を制御するよう構成され、本システムは、サーマルレギュレータユニットに結合された時計と、時計及びサーマルレギュレータユニットに結合されたディスプレイと、被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の前頭に装着されるよう構成されたサーマルアプリケータとを更に含むのが良く、サーマルアプリケータは、サーマルレギュレータユニットから熱伝達流体を流すよう構成され、本システムは、サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、サーマルアプリケータの温度を制御することによって被検者の睡眠を調整するための1つ又は2つ以上の熱制御プロフィールに基づいて熱伝達流体の温度を調節するよう構成されたコントローラと、サーマルアプリケータを前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の頭の領域と接触状態に維持するヘッドギヤとを更に含むのが良い。
【0014】
コントローラは、時計からの入力を受け取って被検者を起こすために所定の起床時間で熱伝達流体の温度を加減するよう構成されているのが良い。例えば、被検者は、器械が熱エネルギーを加えて睡眠を促進/助長するための定刻及び/又は器械が温度を快適な起床温度に調節するための起床時刻を定めるよう目覚まし時計として時計を用いるのが良い。目覚まし時計は又、ユーザがアラーム(目に見える、聞こえる、又はこれら両方)をセットすることができるように構成されているのが良い。
【0015】
コントローラは、サーマルアプリケータの温度が約10℃〜約41℃から成る範囲から選択された標的温度にあるように熱伝達流体の温度を維持するよう構成されているのが良い。器械は、熱伝達流体(及びかくしてアプリケータ)を所定の時間にわたって所定の温度又は一連の所定の温度に保持するのが良く且つ/或いは温度を所定の持続時間にわたって所定の温度(又は所定の温度相互間)に移行させる(例えば、勾配をなして変化させる)のが良い。幾つかの形態では、所定の温度及び/又は所定の持続時間は、ユーザによって設定され又は選択可能であり、しかも1つ又は2つ以上のプロフィールを形成することができる。器械は、ユーザが複数のプロフィールから選択することができるよう構成されているのが良い。プロフィールは、ユーザに明示的に(例えば、温度及び持続時間を含む)説明されるのが良く又はランク付けされたレベル(例えば、やや強/強)又は所望の効果によって説明されるのが良い。例えば、コントローラは、コントローラが熱伝達流体の温度を調節するようにするよう構成された複数の熱制御プロフィールを有するのが良い。器械は、サーマルレギュレータユニットと連絡状態にあり、被検者が1つ又は2つ以上の熱制御プロフィールを選択することができるよう構成された1つ又は2つ以上の制御部を有するのが良い。
【0016】
一般に、器械は、熱伝達流体及び/又はアプリケータの温度を調節する冷却及び/又は加熱ユニットを有するのが良い。例えば、サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体を加熱し、冷却し、又は加熱したり冷却したりするよう構成された熱電気モジュールを含むのが良い。サーマルレギュレータユニットは、ペルティエ素子、熱電式加熱器(例えば、抵抗加熱器)、蒸発式冷却器、ファン等を含むのが良い。
【0017】
上述したように器械は、熱伝達流体の比較的小さい「たまり(pool)」を調節する一方で、熱伝達流体の最小レベルを保つようこのたまりに追加できる熱伝達流体の別個の(温度調節されていない)リザーバを含むよう構成されているのが良い。幾つかの形態では、器械は、サーマルレギュレータユニットに結合されるようになった熱伝達流体を収容しているカートリッジを有し、カートリッジは、温度調節されていない熱伝達流体のリザーバを貯蔵するのが良い。
【0018】
本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、熱伝達流体をサーマルアプリケータ及びサーマルレギュレータユニットに流すと共にこれらから流すための管又は他の可撓性導管を有するのが良い。例えば、器械は、サーマルレギュレータユニットとサーマルアプリケータを互いに連結する流体導管を有するのが良く、この流体導管は、熱伝達流体をサーマルレギュレータユニットとサーマルアプリケータとの間で移送するよう構成されている。導管は管類であるのが良い。導管は、断熱される(熱的に絶縁されている)のが良く且つ漏れ止め性であるのが良い。
【0019】
器械は、サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、システム内の熱伝達流体の高さ位置をモニタするよう構成された流体高さ位置検出器を更に有するのが良い。この流体高さ位置検出器は、コントローラに結合されても良く、或いはリザーバに間接的に若しくは直接的に結合されても良く、この流体高さ位置検出器は、内部配管内への流体(温度調節されている熱伝達流体の内部リザーバ又はたまり)の追加をトリガするのが良い。
【0020】
本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、サーマルアプリケータをユーザの解剖学的構造の適当な部分(例えば、頭/前頭)に当てて保持するのを助けるヘッドギヤを有するのが良い。例えば、ヘッドギヤは、サーマルアプリケータを前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の頭の領域だけと接触状態に維持するよう構成されているのが良い。ヘッドギヤは、サーマルアプリケータに連結可能であり、幾つかの形態では、ヘッドギヤは、サーマルアプリケータと一体化される(例えば、サーマルアプリケータは、1本若しくは2本以上のストラップ又は他の取り付け機構体を有する)。ヘッドギヤは、調節可能であるのが良く、ヘッドギヤは、サーマルアプリケータを被検者の体の他の非標的領域から断熱するようになっているのが良い。
【0021】
上述したように、サーマルレギュレータユニットは、サーマルレギュレータユニットの内部配管内に設けられていて、サーマルレギュレータユニットの熱電気モジュールにより温度調節されるよう構成された熱伝達流体の第1のリザーバと、熱電気モジュールによって温度調節されることのない熱伝達流体の第2のリザーバと、流体を第1のリザーバと第2のリザーバとの間で移送して第1のリザーバ内における熱伝達流体の高さ位置を維持するよう構成された弁とを含む。
【0022】
本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、ディスプレイを有するのが良い。ディスプレイは、照明時にサーマルレギュレータユニットのハウジング越しに見えるが、違ったやり方では非照明時にユニットの外側からは見えないのが良い「デッドフロント」形ディスプレイであるのが良い。一般に、器械(時計ディスプレイ又は他のディスプレイ)は、ユーザが目覚めないようにするために作動中、例えば患者が睡眠しているとき、ターンオフする(照明されない)よう構成されているのが良い。器械は、制御部(例えば、ボタン、スイッチ、トグル、タッチスクリーン等)を有するのが良く、制御部は、スクリーン、ディスプレイ、インジケータの照明の制御を可能にするよう構成されているのが良い。
【0023】
被検者の睡眠を促進するサーマルシステムは、ハウジングを有するサーマルレギュレータユニットを含むのが良く、サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体の温度を制御するよう構成され、本システムは、サーマルレギュレータユニットに結合された時計と、時計及びサーマルレギュレータユニットに結合されたディスプレイと、ユーザが起床時刻を選択することができるように構成されたユーザ入力と、被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の前頭に装着されるよう構成されたサーマルアプリケータとを更に含むのが良く、サーマルアプリケータは、サーマルレギュレータユニットから熱伝達流体を流すよう構成され、本システムは、サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、サーマルアプリケータの温度を制御することによって被検者の睡眠を調整するための1つ又は2つ以上の熱制御プロフィールに基づいて熱伝達流体の温度を調節するよう構成されたコントローラを更に含むのが良く、コントローラは、起床時刻に熱伝達流体の温度を加減するよう構成され、本システムは、サーマルアプリケータを前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の頭の領域と接触状態に維持するヘッドギヤを更に含むのが良い。サーマルアプリケータは、被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の頭の領域だけを温度調節するが、被検者の頭及び眼窩を含む顔の他の領域を温度調節することがないようになっているのが良い。
【0024】
被検者の睡眠を促進するサーマルシステムは、ハウジングを有するサーマルレギュレータユニットを含むのが良く、サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体の温度を制御するよう構成され、本システムは、サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、熱伝達流体を加熱し、冷却し、又は加熱したり冷却したりするよう構成された熱電気モジュールと、サーマルレギュレータユニットの内部配管内に設けられた熱伝達流体の第1のリザーバとを更に含むのが良く、第1のリザーバは、熱電気モジュールによって温度調節されるよう構成され、本システムは、熱電気モジュールによって温度調節されることのない熱伝達流体の第2のリザーバと、流体を第1のリザーバと第2のリザーバとの間に移送して第1のリザーバ内における熱伝達流体の高さ位置を維持するよう構成された弁と、被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の前頭に装着されるよう構成されたサーマルアプリケータとを更に含むのが良く、サーマルアプリケータは、サーマルレギュレータユニットから熱伝達流体を流すよう構成され、本システムは、サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、サーマルアプリケータの温度を制御することによって被検者の睡眠を調整するための1つ又は2つ以上の熱制御プロフィールに基づいて熱伝達流体の温度を調節するよう構成されたコントローラを更に含むのが良く、コントローラは、被検者を起こすために起床時刻に熱伝達流体の温度を加減するよう構成され、本システムは、サーマルアプリケータを前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の頭の領域と接触状態に維持するヘッドギヤを更に含むのが良い。
【0025】
幾つかの形態では、本明細書において説明するシステムは、サーマルレギュレータユニットと、サーマルアプリケータ/ホース組立体(前頭パッドと呼ばれる場合がある)と、サーマルアプリケータを前頭皮質と接触状態に且つ定位置に維持するためのヘッドギヤとから成る。本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、睡眠中の被検者によって使用されるのが良く、かくして、快適さ並びに安全性及び効率が得られるよう構成されているのが良い。例えば、本明細書において説明するシステムは、流体の損失/漏れを阻止するよう構成されているのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】被検者の睡眠を促進する器械のサーマルレギュレータユニットの一形態の正面図である。
図1B図1Aに示されたサーマルレギュレータユニットの器械の側面図である。
図1C図1Aのサーマルレギュレータユニットの前部の上から見た斜視図である。
図1D図1Aのサーマルレギュレータユニットの後部の上から見た斜視図である。
図1E図1Aのサーマルレギュレータユニットの断面図である。
図1F】外側カバーが取り外された状態の図1Aのサーマルレギュレータユニットの横から見た斜視図である。
図1G】外側カバーが取り外された状態の図1Aのサーマルレギュレータユニットの横から見た斜視図である。
図1H】前部及び頂部が内部構造体をしめすよう取り外された状態の図1のサーマルレギュレータユニットの図である。
図1I図1Aのサーマルレギュレータユニットの別の側面断面図である。
図2A】カートリッジ(例えば、リザーバ)のための弁/コネクタの一形態を示す図であり、コネクタの分解組立て図である。
図2B】カートリッジ(例えば、リザーバ)のための弁/コネクタの一形態を示す図であり、カートリッジが取り付けられていない状態の組立て状態の弁を示す図である。
図3A】熱伝達表面積を最大にすると共に患者の快適さを最適化するために頭上に最小接触領域を維持することによって脳の前頭皮質の温度を調節するサーマルアプリケータ(例えば、前頭パッドとして構成されている)の実施形態を示す図であり、アプリケータは、器具が前頭にしっくり合って前頭幾何学的形状及び表面積のばらつきに適合することができるようにするコンフォーマブル(順応性のある)冷却パッドを提供することができ、図3Aでは、冷却パッドが水平(x)及び垂直(y)方向の両方向における順応性の実現を可能にするようセグメント化されており、更に、冷却パッドは、前頭の様々な高さに合うよう(z)方向における動きを可能にすることができ、図3Aに示された実施形態は、最適化された流路及び表面積並びに前頭に順応性を提供するフィンガを提供している状態を示す図である。
図3B】熱伝達表面積を最大にすると共に患者の快適さを最適化するために頭上に最小接触領域を維持することによって脳の前頭皮質の温度を調節するサーマルアプリケータ(例えば、前頭パッドとして構成されている)の実施形態を示す図であり、アプリケータは、器具が前頭にしっくり合って前頭幾何学的形状及び表面積のばらつきに適合することができるようにするコンフォーマブル(順応性のある)冷却パッドを提供することができ、図3Bに示された実施形態は、最適化された流路及び表面積並びに前頭に順応性を提供するフィンガを提供している状態を示す図である。
図4】本明細書において説明するサーマルアプリケータ/ホース組立体及びヘッドギヤの一実施形態を示す図である。
図5】ヘッドギヤの一実施形態を示す図である。
図6】本明細書において説明するように睡眠を促進するシステムを利用する一方法を示す図(A〜J)である。
図7A】サーマルアプリケータを保持するためのヘッドギヤの別の形態を示す図である。
図7B】サーマルアプリケータを図7Aのヘッドギヤ中に挿入する方法を示す図である。
図7C】サーマルアプリケータを図7Aのヘッドギヤ中に挿入する方法を示す図である。
図8A】サーマルレギュレータユニット上に存在するのが良いディスプレイ及び制御部を示す図である。
図8B】サーマルレギュレータユニット上に存在するのが良いディスプレイ及び制御部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
被検者の睡眠を促進する器械が記載され、この器械は、被検者の睡眠を促進するシステムを含み、このシステムは、熱伝達流体の温度を制御するサーマルレギュレータユニットと、被検者の頭の局所化領域(例えば、前頭前/前頭皮質を覆う領域)と熱エネルギーを交換する(熱伝達流体から)ようになったサーマルアプリケータと、サーマルレギュレータユニットを制御し、かくして被検者の頭の局所化領域との熱エネルギーの交換を制御するよう構成されたコントローラとを含む。器具及びシステムを含むのが良い本明細書において説明する器械のうちの任意のものは、温度調節されていない熱伝達流体の補充可能且つ/或いは取り外し可能カートリッジ(例えば、リザーバ)を有するようになっているのが良く、他方、熱伝達流体(例えば、サーマルレギュレータユニットの内部配管内の)の内部のたまりが調節される。これら器械のうちの任意のものは、コントローラに結合された時計を更に有するのが良く、コントローラは、被検者が例えばプロフィールのメニューから、睡眠を調整するよう利用される熱制御プロフィールを選択することができるよう構成されているのが良い。これら器械のうちの任意のものは、被検者が起床時刻を選択することができるよう構成されているのが良く、起床時刻は、アラームをトリガすることができると共に/或いは起床時刻前に、器械が熱伝達流体及びかくしてアプリケータの温度を所定の起床温度(例えば、周囲温度、周囲温度から幾分ずれた温度等)に移行させるのが良く、それにより、これは、起床時に被検者の快適さ及びすっきりとした感じを得心することができると共に/或いは患者を起こすのを助けることができる。
【0028】
睡眠を促進するための例示のシステム構成及び作動方法が本明細書に提供される。
【0029】
一般に、これらシステムは、サーマルレギュレータユニット、サーマルアプリケータ、熱伝達流体をサーマルレギュレータユニットとアプリケータとの間で移送する導管(例えば、ホース組立体)及びコントローラを含むのが良い。この器械は、サーマルアプリケータを前頭前皮質を被検者の頭の領域と接触状態に且つ定位置に維持するためのヘッドギヤを更に有するのが良い。上述したように、本明細書において説明するシステムは、睡眠中の被検者によって着用可能であり、かくして、快適さ並びに安全性及び効率が得られるようになっているのが良い。本明細書において説明するシステムは、流体の損失/漏れを阻止するよう構成されているのが良い。
【0030】
サーマルレギュレータユニットは、ハウジング内に少なくとも部分的に納められるのが良く、このサーマルレギュレータユニットは、1つ又は2つ以上のディスプレイ、制御部、及びコネクタを含むのが良い。例えば、ディスプレイは、この器具上で見えるのが良く、又、制御情報、時刻(例えば時計)、温度、オン/オフ状態等を表示するのが良い。ディスプレイは、これが作動中に連続的に照明されることはなく、それにより睡眠中の被検者又は眠ろうとしている被検者を妨害しないように調節可能であると共に/或いは計時されるのが良い。幾つかの実施形態では、ディスプレイは、照明時にのみ見える「デッドフロント(dead-front)」形ディスプレイである。
【0031】
この器械は、時計(例えば、ハウジング内に設けられる)を更に有するのが良く、時計は、コントローラの一部をなすのが良い。一般に、コントローラは、例えば熱伝達流体の温度及び/又はアプリケータへの熱伝達流体の循環及びアプリケータからの熱伝達流体の循環を制御することによってアプリケータの温度調節を制御するよう構成されている。サーマルレギュレータユニットは、一般に、単一のアプリケータを駆動/制御するが、サーマルレギュレータユニットは、多数のアプリケータを(別々に又はひとまとめに)制御するよう構成されていても良い。
【0032】
コントローラは、マイクロコンピュータ用コントローラ(専用又は汎用)を含む任意適当なコントローラであって良い。コントローラは、情報(制御プロフィール)を記憶することができ、そしてこのコントローラにより、被検者は、どれかのプロフィールを選択してタイミング(例えば、オン時刻、起床/オフ時刻等)を適用することができる。幾つかの形態では、コントローラは又、器具の作動及び/又は被検者の睡眠状態に関する情報を記録することができる。この情報を記憶し、表示すると共に/或いは伝達することができ、かくして、幾つかの形態では、コントローラは、出力、例えばワイヤレストランスミッタ(例えば、Bluetooth (登録商標)等)を含み又はこれに結合される。
【0033】
例えば、図1A図1Jは、被検者の睡眠を促進するためにアプリケータと共に使用することができるサーマルレギュレータユニットの一形態を示している。図1Aでは、サーマルレギュレータユニットは、外側ハウジング101並びにディスプレイ(例えば、温度/プロフィール選択及び/又は時刻ディスプレイ)103及び1つ又は2つ以上の制御部を含む。例えば、この器械は、スイッチ及び/又はインジケータ105、セレクタノブ106(例えば、温度/プロフィールを選択するため)及び/又はプロフィールを切り替える(例えば、冷却/加熱形態相互間等)トグル107を含むのが良い。図8A及び図8Bは、サーマルレギュレータユニットに使用することができる入力及びインジケータの他の例を示している。例えば、図8Aでは、サーマルレギュレータユニットは、ユーザが所望の起床時刻801(例えば、アラームが鳴る時刻及び/又はTECの遮断前1/2時間)を設定することができるようにする入力を含むのが良い。このサーマルレギュレータユニットは、起床モード803を動作可能にし又は働かなくする制御部(ボタン、スイッチ等)を更に含むのが良い。以下に詳細に説明するように、起床モードにより、この器械は、選択された起床時刻(例えば、起床時刻の約1/2時間前)に先立って起床のための温度まで勾配を付けて変化することができるようにする。アラームの音色805(目覚まし時計によってセットされる)を利用可能にする/働かなくすると共に内部目覚まし時計807をセットするための制御部が更に設けられるのが良い。
【0034】
図8Bは、サーマルレギュレータユニットに設けられるのが良いディスプレイの一例を示している。上述したように、ディスプレイは、デッドフロント形ディスプレイとして構成されるのが良い。図8Bでは、ディスプレイ809は、日時、アラーム時刻、温度プロフィール、及び器械のための任意他の状態インジケータを示すのが良い。サーマルレギュレータユニットは、温度プロフィール、アラーム時刻、ディスプレイ強度及びクロックタイムを選択/調節する制御部(例えば、制御ノブ811)を更に含むのが良い。例えば、制御ノブを押してこれを保持すると、サーマルレギュレータユニットを治療モードから待機モードに切り替えることができる。ディスプレイは、器械内の液体高さ位置が低くなっていることを示すよう構成された高さ位置インジケータ813を更に有するのが良い。アラームアイコン815も又示されているのが良く、このアラームアイコンは、アラーム音色を使用可能にすることを示すことができる。ディスプレイは、起床モードを使用可能にすることを示す起床アイコン817を更に有するのが良い。ディスプレイ上に表示された方向を示す矢印819も又、ノブ/制御部811の回転方向を示すよう照明されるのが良い。
【0035】
図1Aを参照すると、図1Aは、サーマルレギュレータユニットの一形態の正面図、図1Bは、その側面図である。図1Bでは、サーマルレギュレータユニットは、流体高さ位置インジケータ(窓111)並びにアプリケータに連結された導管への密封連結部を含み、熱伝達流体を密封連結部を通って循環させることができ、図1Bでは、これら密封連結部は、流体入口ポート113及び流体出口ポート115として示されている。ハウジングは、基部117を更に有するのが良い。図1Cは、図1Aのサーマルレギュレータユニットの上側領域の図であり、この器具の頂部は、蓋121及び充填キャップ123を有するのが良い。熱伝達流体を密封可能な充填キャップ123を通って加え又は取り出すことができる。蓋は、充填キャップ領域を覆うドア又はカバー125を更に有するのが良い。ハウジング101は、図1Dに示されているようにベント又は通気部131,131′を有するのが良い。図1Dでは、ベントは、ファン入口ベント131及びファン出口ベント131′として構成されている。ハウジング(例えば、基部)は、追加のベント(例えば、ファン出口ベント133)及び/又は出口ポート141、電力接続部144等を更に有するのが良い。
【0036】
図1E図1Iは、図1Aのサーマルレギュレータユニットの内部領域を示しており、これら内部領域は、温度調節器(例えば、ファン、加熱器等)、熱伝達流体を保持する内部配管、熱伝達流体を循環させる1つ又は2つ以上のポンプ、及びコントローラを含む。
【0037】
一般に、サーマルレギュレータユニットは、アプリケータに循環されるべき熱伝達流体の温度を調節する1つ又は2つ以上の温度調節器を含むのが良い。任意適当な温度調節器(例えば、加熱器、冷却器、又はこれら両方)を用いることができる。例えば、サーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体(TTF)を冷却し又は加熱する熱電気モジュール(TEC)、例えばペルティエ素子を利用するのが良く、TTFは、サーマルアプリケータの移送ラインを通ってポンプ送りされる。他の冷却又は加熱手段、例えば冷凍圧縮機も又、TECに代えて又はこれに加えて用いることができる。例えば、抵抗加熱器、ファン、又は他の要素を更に又は代替的に用いることができる。サーマルレギュレータユニットの他のコンポーネントとしては、1つ又は2つ以上の熱交換器、ヒートシンク、TEC、ポンプ、ファン、電子制御回路、ソフトウェア、ユーザインターフェース、TTFリザーバ、ユニットエンクロージャ、到来する電力用の接続部、及びサーマルアプリケータ用のTTF接続部が挙げられる。
【0038】
これらコンポーネントは、ヒートシンクがTECの一方の側部と熱的接触状態に配置され、熱交換器(冷却板と呼ばれる場合がある)がヒートシンクから見て遠くに位置するTECの反対側と熱的接触状態に置かれるよう組み立てられるのが良い。熱交換器は、この目的のための任意公知の材料及び設計で構成可能である。その一例は、アルミニウム板内に埋め込まれた銅管である。熱をヒートシンクから奪うためにファンが用いられるのが良い。組立体の幾つかの部分は、熱交換器に加わる寄生熱負荷を減少させるよう断熱されるのが良い。
【0039】
図1Eに戻ってこれを参照すると、図1Aのサーマルレギュレータユニットは、冷却板(銅管151を備えたアルミニウム板155)、TEC(見えておらず、例えば、1つ又は2つ以上のペルティエ素子)、及び低温側及び高温側のいずれか一方又はこれら両方上に存在する場合のあるシステムの温度をモニタするサーマルプロテクタ153を含む。管151は、熱伝達流体を保持する内部配管の一部をなしている。サーマルプロテクタは、温度をモニタするセンサ(例えば、サーマルカットオフ)を有し、このサーマルプロテクタは、器具の温度を制限すると共にシステムの自動シャットダウンをトリガすることができる。
【0040】
TTFの温度を所望のレベルに制御するために図1Aのサーマルレギュレータユニットを暖房又は冷房モードで作動させることができる。サーマルレギュレータは、熱交換器及びサーマルアプリケータを通ってTTFを循環させるためにポンプを利用するのが良い。ポンプは、任意適当な形式のものであって良く、例えば、遠心式、ピストン式、歯車式、ダイヤフラム式等である。TTFリザーバは、何らかの理由でTTFの損失分を補充するよう追加のTTFを提供するよう組み込まれている。例えば、リザーバは、サーマルレギュレータユニットから取り外し可能である(又は、取り外すことができない)カートリッジとして構成されているのが良い。かくして、リザーバは、サーマルレギュレータユニット内の一体形充填可能コンポーネントであっても良く、或いは、交換可能なカートリッジとして構成されても良い。リザーバ用の配管連結部は、リザーバ内のTTFの量が熱交換器及びサーマルアプリケータのTTF循環回路内に連続的に入ることがないよう設計されているのが良い。この設計例は、サイドストリーム形リザーバと呼ばれている。
【0041】
図1Fは、図1Aのサーマルレギュレータユニットの例の別の図であり、熱伝達流体を循環させるポンプ161並びにヒートシンク、冷却板163、及び1対のサーミスタ165,167を示している。熱伝達流体の温度をモニタすると(例えば、コントローラによって)選択した制御プロフィールに従ってこれを調節することができ、例えば、サーミスタは、種々の場所のところでのTTFの温度を測定することができ、かかる場所としては、サーマルレギュレータユニットがTTFの温度を調節する領域内の内部配管の流体出口165及び流体入口167の近くに設けられたサーミスタを含む。図1Gに示されているように、サーマルレギュレータの内部配管(温度調節されているTTFのたまりを保持している)は、サーマルレギュレータユニットのハウジング内で断熱(171)されるのが良い。ベント173も又、内部冷却/加熱コンポーネント、例えばファン用に設けられるのが良い。図1Fに戻ってこれを参照すると、バリヤ170が器具の低温側を器具の高温側から分離しており、このバリヤは、1つ又は2つ以上のTEC(図1Fでは見えない)用のハウジングの一部をなすのが良い。図1Fでは、TTF用のリザーバ174も又示されている。このリザーバは、代表的には温度制御されないTTFを保持するのが良い。リザーバ内からのTTFを必要に応じてサーマルレギュレータの内部配管に追加することができる。このリザーバは、サーマルレギュレータのハウジング内に固定されても良く、或いは、取り外し可能/交換可能であっても良い。例えば、リザーバは、カートリッジ、例えば取り外し可能なカートリッジとして構成されるのが良く、そしてこのリザーバは、ベント169を有するのが良く、このベントは、リザーバ内への空気の導入を可能にするのが良く(流体がサーマルレギュレータユニットの内部回路に流入することができるようにする)、しかもサーマルレギュレータユニットの内部配管からの空気のパージを可能にするのが良い。例えば、図1Fでは、ベントは、ゴアテックス(Gore-Tex(商標))又は通気性であるが、流体を透過させない別の材料のものであるのが良い。
【0042】
図1Iは、サーマルレギュレータユニットの断面図であり、図1Aに示された形態についてのヒートシンク176、ファン181、ファン空気入口183、ファン空気出口185,185′、及びハウジング101の相対位置を示している。サーマルレギュレータユニットは、上述したようにハウジングに設けられた制御パネル102を更に含むのが良い。図1Iでは、熱伝達流体191は、サーマルレギュレータユニットの内部配管のリザーバ内に存在した状態で示されている。
【0043】
図1A図1Iは、TTFのリザーバ(例えば、カートリッジ)を有する器械を示しており、TTFは、これが必要になるまで温度調節されることがない。このサイドストリーム形態により、サーマルレギュレータは、リザーバ内に保持されているTTFを冷却する必要をなくすことにより、循環中のTTFを所望の温度まで速く冷却することができるので効果的である。リザーバ又は交換可能なカートリッジは、必要に応じて、ユーザの便宜のための所望の機能又は能力を提供するよう寸法決めされているのが良い。交換可能なカートリッジは、ユーザがTTFの漏れを生じさせることなく、カートリッジをサーマルレギュレータ内に入れ又はこれから取り出すことができるようにする弁システムを備えるのが良い。カートリッジは、TTFをカートリッジから排出しているときに空気の取り込みを可能にする一方向ベントを備えるのが良い。この形態により、TTFは、カートリッジから出て、背圧が循環回路内に生じた場合であってもカートリッジに再び入ることがないようにすることができる。この種の一方向ベントがカートリッジ内に利用される場合、別個のエアベントが循環回路中に組み込まれるのが良く、それにより回路内に取り込まれた空気が出ることができる。カートリッジの別の形態は、サーマルレギュレータ中への2つの連結箇所を利用している。一方の連結部により、循環回路内に取り込まれた空気がカートリッジ内に抜け、他方、TTFは、第2の連結箇所から循環回路中に出るようになっている。連結弁が任意の数の公知の形態で設計可能である。かかる一具体化例は、嵌合連結コンポーネントの各々に逆止弁を利用する。これは、取り外されたカートリッジ又はサーマルレギュレータ内の嵌合連結箇所からのTTFの漏れを生じさせないでカートリッジを係合させ又は取り外す手段となることができる。別の形態では、カートリッジは、中空針で穴あけ可能なゴム状材料で封止される。いったん穴あけされると、TTFは、循環回路との流体結合部を作る。カートリッジが取り外されると、針が引き抜かれ、それによりゴム状材料は、開いた穴を再び封止することができ、それによりTTFが、カートリッジが漏れるのを阻止することができる。針は、設計上、カートリッジを取り外したときに針の入口ポート上でこれに沿って摺動するばね押し摺動ゴム型材料シールを備える(例えば、1A〜図1I並びに図2A及び図2B)。別の形態は、一般に知られているボール型Oリングシール型逆止弁を利用する。カートリッジ寸法形状は、所要の能力又は容量、所望の上辺の工業デザイン及びエンクロージャ内の利用可能な空間で決まる。サーマルレギュレータ内にいったん嵌め込むと、カートリッジは、ラッチ留め機構体によって定位置に保持される。別の実施形態では、カートリッジエアベントは、両方構成であり、これを例えばゴアテックスのような材料で構成されるのが良い。かかる材料により、空気は、これを通過することができ、他方、TTFが通るのを阻止することができる。上述したように、幾つかの形態では、カートリッジは、潰すことができる袋内に保持された流体リザーバを有するのが良く、流体を袋(又はブラダー)から取り出しているときに、袋が潰れることができ、それによりリザーバの内容物を排出する必要性を減少させ又はなくすことができる。
【0044】
カートリッジ及び係合弁は、ユーザがカートリッジを補充する可能性をなくし又は最小限にするよう設計されている。この設計により、ユーザは特に冷却ユニット用に処方されたTTFだけを利用するようになる。
【0045】
図2A及び図2Bは、カートリッジコネクタ(又は弁)及びカートリッジの一形態を示している。図2Aは、弁の分解組立て図である。カートリッジ201の底部領域は、図の最上部のところに示され、この底部領域は、コネクタ内の針226により穿孔可能な封止材料によって覆われた入口領域を有する。カートリッジの基部は、カートリッジコネクタとこれとドッキングすることができ、それにより、カートリッジコネクタは、カートリッジに係合し、針を保護シールからカートリッジのリザーバ中に伸長させ、その結果、TTFがカートリッジからサーマルレギュレータユニットの入口内に流入することができる。図2Aでは、コネクタの頂部は、カートリッジを載せることができる基部を形成するリテーナキャップ/カートリッジリードイン領域203を有する。このリテーナキャップは、シリコーン製滑りシール205に連結されている。リテーナキャップ及び滑りシールは、ばね208によって支持されている。カートリッジがリテーナキャップ上に載ると、カートリッジの重量により、リテーナキャップ及び滑りシール205が押し下げられ、それによりばねが縮み、その結果、針226の先端部が滑りシールからカートリッジ中に伸長することができるようになっている。針226の先端部は、鋭利であり、針の側部は、孔228を有し、カートリッジからのTTFは、この孔中に流れることができる。カートリッジが存在していない場合、針先端部及び孔228は、滑りシール205内に保持され、それにより、流体が針を通ってサーマルレギュレータユニットの内部配管から出るのが阻止される。
【0046】
針は、針孔(シールリテーナ)207及び圧力嵌めシール209内に剛性的に保持されると共に封止されるのが良い。図2Bは、カートリッジをサーマルレギュレータユニットに係合させる前の組立て状態のカートリッジコネクタの図である。針により、ポンプのための入口管内へのカートリッジからのTTFの流れが可能であり、図2Aでは、ポンプ213は、カバープレート211によって示されている。
【0047】
TTFは、蒸留水と、抗菌剤と、凍結点を下降させる成分と、湿潤剤とから成るのが良いが、これらには限定されない。他のTTF成分も又使用することができる。全てのTTFは、IEC60601の生体適合性要件及びFDAの要件に準拠するのが良い。
【0048】
制御回路は、サーマルレギュレータユニットの冷却又は加熱を制御するソフトウェアを利用しても良く利用しなくても良い。上述したように、制御回路は、TTFの温度を測定し、必要に応じて循環回路内のTTFを所望の温度に維持するようTECへの電力を調節するために循環回路内又はその近くに配置された1つ又は2つ以上の温度センサ(例えば、サーミスタ)を利用するのが良い。加うるに、制御回路は、ヒートシンク上に設けられた1つ又は2つ以上の温度制御スイッチ及び場合によっては一方又は両方のコンポーネントの温度が所望のしきい値の範囲外にある場合に安全スイッチとしての熱交換器を利用するのが良い。制御回路は、電力をTEC、ポンプ及びファンに提供するためにパルス幅変調(PWM)方式を利用するのが良い。また、システムのあらゆる観点を制御するための制御アルゴリズムを提供するためにソフトウェアも又利用するのが良い。ソフトウェアは、TTFの任意所望の冷却曲線を生じさせるような仕方でTECに供給されるべき電力を制御するのが良い。一形態では、電力は、TTFが電力提供の開始により迅速に冷却され、実際のTTF温度と標的TTF温度の差が僅かになったときに温度変化率を減少させるようにTECに加えられるのが良い。考慮可能な他の温度曲線が存在する。加うるに、TTF温度は、ユーザの生理学的測定値によって又は時間によって制御されるのが良い。制御回路は又、冷却ユニットにユーザインターフェースを提供するのが良い。考えられる形態としては、オン/オフスイッチ、加熱/冷却モードセレクタスイッチ、TTFの標的温度又は実際の温度の温度ディスプレイが挙げられるが、これらには限定されない。制御回路は又、ディスプレイ照明を制御することができる。幾つかの形態では、制御回路は、リザーバ又はカートリッジ内のTTFの高さ位置をモニタしてこの高さ位置をユーザに表示することができる。制御回路は又、これが低い又は空になっているTTF高さ位置を検出した場合にユニットをシャットオフするのが良い。
【0049】
エンクロージャは、システムの内部コンポーネントの全てを取り付ける手段となると共に空気取り入れ及びファン空気の排出を可能にする。ファン入口及び排出部は、エンクロージャ内のグリッドシステム中に差し向けられるのが良く、このグリッドシステムは、ユーザが怪我を生じさせる場合のあるコンポーネントに触れるのを阻止するよう設計されている。さらに、グリッドは、ユーザが空気流をグリッドが望ましいと見出す方向に空気流を差し向けることができるように設計されているのが良い。エンクロージャは、好都合に位置決めされたユーザインターフェース、リザーバ充填又はカートリッジ交換、残っているTTF高さ位置を判定する視覚的手段、やってくる電力のための接続箇所、循環回路のサーマルアプリケータ/ホース組立体の入口及び出口のための連結箇所、及び任意他の望ましい連結部を考慮に入れている。
【0050】
サーマルアプリケータ/ホース組立体の入口/出口コネクタ並びにサーマルレギュレータエンクロージャコネクタは、サーマルアプリケータ/ホース組立体をいずれのコンポーネントからのTTFの漏れなしでサーマルレギュレータ組立体に連結したりこれから取り外したりすることができるようにする逆止弁を利用している。組立体のホース部分は、所望の周囲温度及び湿度条件に対して、ホース組立体上の凝縮を阻止し又は最小限に抑えるよう十分に断熱されている。システムのサーマルアプリケータコンポーネントは、軟質ゴム状材料の少なくとも2つの層相互間にシールを形成するよう設計されているのが良い。シールは、任意公知の技術、例えば超音波溶接、RF溶接、接着又は化学的溶着によって形成されるのが良い。軟質材料の層は、所望の材料特性、例えば柔軟性、順応性、透過性、ユーザにとっての快適な感触等を示す広範な公知の材料から選択され、例えば、ウレタン又はビニルシートである。材料は、生体適合性であることが望ましい。層相互間に形成されたシールは、サーマルアプリケータがユーザの皮膚と接触状態にある間にTTFが循環するためのフローチャネル又は通路を形成する。サーマルアプリケータは、このように用いられる場合に熱交換器として働く。サーマルレギュレータによって温度制御されるTTFは、組立体のホース部分を通ってユーザの皮膚と接触状態にあるサーマルアプリケータ中にポンプ送りされる。熱エネルギーは、TTFの選択された温度及びユーザの皮膚の温度に応じて、ユーザに伝達され又はユーザから伝達される。サーマルアプリケータの層相互間にシールを形成することによって作られるチャネルの設計及びチャネルの全長は、エネルギーの伝達量に影響を及ぼす。チャネルの設計及びサーマルアプリケータ内における循環経路も又、サーマルアプリケータ内の温度変化に影響を及ぼす。サーマルアプリケータ全体にわたって温度の均一の分布状態を維持するような仕方でチャネルを設計することが望ましい。サーマルアプリケータへのホースの入口及び出口連結部は、永続的に作られるのが良く又は切り離し可能な形式の連結部を利用するのが良い。サーマルアプリケータ内のチャネルの設計は、所望の圧力、所望の温度又はパネル内での所望の流れを生じさせるようサイズ又は断面積が様々であって良い。加うるに、フローチャネル内の小さな溶接スポット又はドットの使用は、圧力下にある間のチャネルの膨らみを制御するために行われるのが良い。サーマルアプリケータの外周部は、前頭/前頭前皮質の近くに位置するユーザの頭蓋骨の所望の部分に対するサーマルアプリケータの輪郭付けをもたらすよう設計されている。この領域は、一般に、左及び右こめかみ領域及び眉毛と頭の頂部中心との間に画定された領域を含む領域と定義される。サーマルアプリケータ周囲部は又、種々の切れ目、スリット又はサーマルアプリケータが所望の接触範囲内でユーザの頭に合わせて良好に輪郭付けできる他の幾何学的デフィニションを更に有するのが良い。図2は、サーマルアプリケータの種々の形態を示すと共に説明した設計の種々の観点を示している。
【0051】
図3A及び図3Bは、用いることができるサーマルアプリケータの断面図である。図7A図7Cも又、サーマルアプリケータの一形態を示している。図3Aでは、サーマルアプリケータ(平面図として示されており、内部構造が見える)は、サーマルアプリケータ300内の蛇行したチャネルに連結された入口301及び出口303を有している。図3Aのアプリケータ内のTTFのための隣り合うチャネル相互間に形成された種々の「切れ目」309又は空間を有し、これらチャネルにより、サーマルアプリケータをこれらチャネルにより、サーマルアプリケータを曲げることができ又はサーマルアプリケータを着用している被検者にアプリケータを押し当てて嵌めることができる。サーマルアプリケータは、前頭/前頭前領域(例えば、前頭)を覆う被検者の頭の適当な領域に馴染むように寸法決めされると共に形作られると共に/或いはあらかじめ輪郭付けられるのが良い。サーマルアプリケータは、封止でき又は違ったやり方で内部チャネル306,308を形成するよう形作ることができる材料で作られるのが良い。図3Bは、「フィンガ」領域351を有するアプリケータの別の形態を示しており、このフィンガ領域は又、サーマルアプリケータの調節性を助けることができる。図3Bでは、サーマルアプリケータ内のこの領域は、比較的開いているのが良く(351)、それによりサーマルアプリケータ内でのTTFの混合が可能である。
【0052】
図4は、熱伝達流体をサーマルアプリケータ内で循環させることができるようサーマルアプリケータ402(これは、ヘッドギヤ415内に保持されるのが良い)をサーマルレギュレータユニットに連結するよう用いられるのが良い導管(例えば、管類)の一形態を示している。図4では、管405は、サーマルインシュレータ407によって覆われ、コネクタ412が入口ラインと出口ラインの両方に連結されている。入口ラインと出口ラインは、互いに接合されると共に同一のインシュレータによって断熱されているが、入口ラインと出口ラインをインシュレータ407内で別々に断熱しても良い。図5は、ヘッドギヤの拡大図である。
【0053】
ヘッドギヤをこの器械に用いる場合、サーマルアプリケータは、図7A図7Cに示されているようにヘッドギヤ内に位置決めされるのが良い。例えば、幾つかの形態では、アプリケータ(パッド)703は、ヘッドギヤ705から切り離されるよう構成されている。ヘッドギヤは、アプリケータと結合するコネクタ、例えば、ベルクロ(Velcro(登録商標))等を有するのが良い。幾つかの形態では、ヘッドギヤは、サーマルアプリケータを嵌め込むことができるポケットを有する。図7Aには、ヘッドギヤは、裏返しの状態で示され、内部ベルクロインサート709が示されている。サーマルアプリケータは、ヘッドギヤ内に嵌まり込むことができ、ヘッドギヤは、サーマルアプリケータと正確な領域での被検者の頭(例えば、前頭)との間における熱エネルギーの伝達を可能にする熱的伝達領域を有するのが良い。
【0054】
一般に、サーマルアプリケータは、図6A図6Jに示されているように被検者によって被検者の頭に当てられるのが良い。この例では、この器械は、ヘッドギヤ及び前頭パッドを前頭上に配置する前に電源が入れられるのが良い。図6Aに示されているように、ヘッドギヤは、被検者によって両側が保持されるのが良く、そして、図6B図6Dに示されているようにヘッドギヤを被検者の頭上に滑らせ、そして前頭上に載せるのが良い。ヘッドギヤを図6Eに示されているように、耳の線の直ぐ上で被検者の頭の後側部分に当てて平べったい状態になるよう位置決めされるのが良い。幾つかの形態では、サーマルアプリケータをサーマルレギュレータユニットに連結する管を被検者の頭の中間頂部領域上に位置決めするのが良く、その結果、これが図6Fに示されているように頭に当てて平べったくなるようにし、そして図6Gに示されているようにヘッドギヤを調節して被検者の前頭に当ててぴったりと嵌まって眉毛の線の上方に位置するようにするのが良い。図6H及び図6Iは、被検者がヘッドギヤの側部上でベルクロタブを調節して前頭に対して快適な離れ具合を保証し、その結果、前頭パッドが平べったく位置してこれが前頭全体を覆うようにしている状態を示している。最後に、前頭パッドは、図6Jに示されているように平べったい状態に位置して前頭全体を覆うべきである。熱伝達流体は、管全体を通って前頭パッド内に循環するのが良い。
【0055】
図6A図6Jに示されているように、サーマルアプリケータは、ヘッドギヤシステムにより被検者の頭と接触状態に保持されるのが良い。ヘッドギヤコンポーネントの一形態では、一連の調節可能なストラップがユーザへのアプリケータの接触圧力を選択的に調節するよう用いられる。ヘッドギヤの他の形態は、調節性なしで弾性型材料で構成されても良い。この材料の弾性により、接触圧力がサーマルアプリケータに加えられる。他の形態は、両方の特徴、即ち、調節可能なストラップと弾性材料を利用する。幾つかの形態では、サーマルアプリケータは、ヘッドギヤと永続的に一体化されても良く、他の形態では、サーマルアプリケータは、ヘッドギヤから取り外し可能であっても良い。
【0056】
幾つかの形態では、被検者の睡眠を促進する治療器械を提供することが有用である場合があり、この治療器械は、単純化されると共に特に睡眠治療用に構成される。例えば、かかる器具は、被検者の睡眠を促進するサーマルシステムとして構成されるのが良く、このサーマルシステムは、ハウジングを有するサーマルレギュレータユニットを含み、このサーマルレギュレータユニットは、熱伝達流体の温度を制御するよう構成され、このサーマルシステムは、被検者の前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の前頭に当てて着用されるよう構成されたサーマルアプリケータを含み、サーマルアプリケータは、熱伝達流体をサーマルレギュレータユニットから流すよう構成され、このサーマルシステムは、サーマルレギュレータユニット内に設けられていて、サーマルアプリケータの温度を制御することによって熱伝達流体の温度を調節して被検者の睡眠を調整するよう構成されたコントローラと、サーマルアプリケータを前頭前及び前頭皮質を覆う被検者の頭の領域と接触状態に維持するためのヘッドギヤとを含む。
【0057】
かかる単純化された器具は、サーマルアプリケータの温度を特定の温度(例えば、30℃)に調節するよう構成されているのが良い。さらに、サーマルアプリケータ及び/又はヘッドギヤは、特に、熱エネルギーを頭の特定の場所に加えるよう構成されているのが良い(例えば、幾つかの形態では、例えば眼窩領域、頬、後頭部等を含む他の領域を断熱することによって、熱エネルギーを他の領域に加えないように構成されているのが良い)。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲において用いられているように(実施例で用いられている場合を含むと共に別段の明示の指定がない限り)、全ての数は、語句「約」(“about”)又は「ほぼ」(“approximately”)という用語が前に付けられたものであるかのように読まれるのが良い。たとえ、この用語が明示的に見えていなくてもそうである。語句「約」又は「ほぼ」は、値及び/又は位置の妥当な予想範囲内に収まることを指示するために大きさ及び/又は位置を説明する際に用いられている場合がある。例えば、数値は、記載した値(又は値の範囲)の±0.1%である値、記載した値(又は値の範囲)の±1%、記載した値(又は値の範囲)の±2%、記載した値(又は値の範囲)の±5%、記載した値(又は値の範囲)の±10%等の値を有する場合がある。本明細書に記載した任意の数値範囲は、本明細書において中間合計された全ての部分範囲を含むものである。
【0059】
種々の例示の実施形態を上記において説明したが、多くの変更のうちの任意のものを種々の実施形態に加えることができ、これは、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱しない。例えば、種々の記載した方法ステップの実施する順序は、変形実施形態では変更される場合が多く、他の変形実施形態では、1つ又は2つ以上の方法ステップは、全て飛ばされる場合がある。種々の装置及びシステム実施形態のオプションとしての特徴は、幾つかの実施形態では含まれ、他の実施形態では含まれない場合がある。したがって、上述の説明は、主として、例示目的のために提供され、本発明の範囲を限定するものと解されてはならない。というのは、本発明は、特許請求の範囲に記載されているからである。
【0060】
本明細書に含まれる実施例及び例示は、一例として本発明を限定するものではなく、本発明の要旨を実施することができる特定の実施形態を示している。上述したように、他の実施形態を利用することができると共に上述の実施形態から導き出すことができ、従って、構造的及び論理的な置換及び変更は、本発明の範囲から逸脱しないで実施できる。本発明の要旨に関する幾つかの実施形態は、本明細書においては、単に便宜上且つ本願の要旨をどれか単一の発明又は発明概念に自発的に限定するものではなく(2つ以上が実際に開示されている場合でも)、「本発明」という用語によって個々に又はまとめて言及されている場合がある。かくして、特定の実施形態を図示すると共に本明細書において説明したが、同一の目的を達成するために案出される任意の構成を図示の特定の実施形態に代えて用いることができる。本発明は、種々の実施形態の任意及び全ての改造例又は変形例を含むものである。上述の実施形態の組み合わせ並びに本明細書においては具体的には説明されていない他の実施形態は、上述の説明を読むと、当業者には明らかになろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B