特許第6352316号(P6352316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352316
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスのためのアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61M5/315 550L
   A61M5/315 550C
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-562053(P2015-562053)
(86)(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公表番号】特表2016-509896(P2016-509896A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】EP2014054521
(87)【国際公開番号】WO2014139910
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】13158512.7
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・オーブリー・プランプトリ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・フレドリック・ビージー
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−509956(JP,A)
【文献】 特開平05−345024(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/138295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)のためのアセンブリ(30)であって、
薬物の用量を設定するために近位方向での設定運動を実行するように構成され、薬物の用量を投薬するために遠位方向での投薬運動を実行するように構成されるアクチュエータ(16)と、
最大量の薬物が送達された後に作用し、用量の設定が阻害されるようにアクチュエータ(16)の設定運動を軸方向に制限するように構成され、アクチュエータ(16)の制限された軸方向運動が可能になる、止め具機構(40)と、
最終用量止め具(37)を含むピストンロッド(10)であって、止め具機構(40)は止め具要素(27)を含み、該止め具要素(27)が最終用量止め具(37)に当接すると近位方向でのアクチュエータ(16)の動きが阻害される、ピストンロッド(10)と、
用量を設定するためにピストンロッド(10)に沿って近位方向に移動するように構成される駆動部材(14)と
を含み、
ここで、駆動部材(14)は用量の投薬中、デバイスの投薬端に向かってピストンロッド(10)を駆動するように構成され、止め具要素(27)は駆動部材(14)の内部表面に配置され、突起(29)として構成され、ピストンロッド(10)はガイド機能(26)を含み、ガイド機能(26)および止め具要素(27)が用量の設定中はピストンロッド(10)の回転が阻害されるように相互作用するように構成され、用量の投薬中はピストンロッド(10)の回転が有効になる、前記アセンブリ。
【請求項2】
最終用量止め具(37)は、少なくとも部分的に止め具要素(27)を取り囲むポケットの形態を有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
駆動部材(14)の動きによってアクチュエータ(16)の動きが起こり、逆も同様であるように、駆動部材(14)はアクチュエータ(16)に連結される、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
ガイド機能(26)および止め具要素(27)は用量の設定中互いに当接する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
ガイド機能(26)および止め具要素(27)は用量の投薬中、互いを通過して移動するように構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
ガイド機能(26)は複数のスプライン(28)を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
ガイド機能(26)は3列のスプライン(28)を含み、スプライン(28)はピストンロッド(10)の外周周りに均等に分布する、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
止め具要素(27)は、駆動部材(14)の用量設定運動中にガイド機能(26)の少なくとも1つのスプライン(28)と接触する、請求項6または7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
止め具要素(27)は、スプライン(28)の軸方向距離は、止め具要素(27)の軸方向の伸張よりも小さい、1回の用量設定運動中に2つまたはそれ以上のスプライン(28)を通過する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
駆動部材(14)は用量の設定および投薬中に軸方向の非回転運動を行う、請求項1〜のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
用量の投薬中の駆動部材(14)の軸方向変位は、用量の投薬中のピストンロッド(10)の軸方向変位よりも大きい、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
ピストンロッド(10)の動きは用量の設定中阻害される、請求項1〜11のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
デバイスの投薬端に向かう遠位方向での駆動部材(14)の動きにより、ピストンロッド(10)が回転し、デバイスの遠位端に向かって軸方向に移動する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
薬物送達デバイスが固定用量デバイスである、請求項1〜13のいずれか1項に記載のアセンブリを含む、薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達デバイスのためのアセンブリに関する。より詳細には、本開示はペン型薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型薬物送達デバイスは正式な医学訓練を受けていない人による注射に使用される。これは、糖尿病等を患う患者における自己治療ではますます一般的なものとなっている。このような自己治療によって、患者は効果的に患者自身の疾患を管理できる。ペン型薬物送達デバイスは通常、駆動機構が内部に配置されるハウジングを含む。薬物送達デバイスの一部の種類は、薬物を含むカートリッジを収容するためのコンパートメントをも含む。駆動機構によって、カートリッジ内のピストンが変位されるため、その内部に収容されていた薬物が針を通って投薬される。
【0003】
注射に先立って、必要な用量の薬物を用量設定機構を用いて設定する。用量設定機構の一般的な設計は、用量ダイヤルスリーブ、用量表示スリーブ、駆動スリーブまたはラチェットスリーブのような複数の管状またはスリーブ状要素を含む。このようなスリーブはしばしば、互い収容され、連結される。
【0004】
薬物送達デバイスおよび薬物送達デバイスのためのアセンブリが、たとえば特許文献1に記述される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/058665号(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善された特性を有する薬物送達デバイスのためのアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、薬物送達デバイスのためのアセンブリが提供される。アセンブリは、アクチュエータを含み、アクチュエータは、薬物の用量を設定するために近位方向での設定運動を実行するように構成され、アクチュエータは、薬物の用量を投薬するために遠位方向での投薬運動を実行するように構成される。アセンブリは、最大量の薬物が送達された後に作用する止め具機構をさらに含み、止め具機構は、用量の設定が阻害されるようにアクチュエータの設定運動を軸方向に制限するように構成され、アクチュエータの制限された軸方向運動が可能になる。制限された軸方向運動は0よりも大きいが、用量設定運動よりも小さくてもよい。
【0008】
最大量は、デバイス内で可能な薬物量であってもよい。たとえば、最大量はカートリッジが収容する量であってもよい。一実施形態によれば、アクチュエータの軸方向運動は、決まった回数の投薬運動の後制限されてもよい。特に、アクチュエータの軸方向運動は、最後の可能な用量が投薬された後に制限されてもよい。
【0009】
アクチュエータの制限された軸方向運動が可能なときに用量の設定を阻害する止め具機構の利点は、アクチュエータの制限された運動が、たとえば製作公差故に可能な場合でもいかなる用量も設定できないことである。このことにより、不十分な用量等の誤った用量が使用者により投薬され得ない。特に、使用者がデバイス内の薬物の残存量よりも大きい用量を設定することを阻害できる。これにより、用量の正確さが改善され得る。さらに、デバイスが空であるというフィードバックが使用者に与えられる。加えて、デバイスは止め具機構によってロックできる。これは、再使用不可能な使い捨て薬物送達デバイスにとって有利である。
【0010】
一実施形態によれば、アクチュエータはボタンであってもよい。アクチュエータの設定運動は、近位方向での並進運動であってもよい。特に、アクチュエータは使用者によって近位方向に移動され得る。特に、アクチュエータは機械式止め具に到達するまで近位方向に移動され得る。アクチュエータの投薬運動は、遠位方向での運動、たとえば、純粋な軸方向運動であってもよい。特に、アクチュエータは用量を投薬するために使用者によって遠位方向に押され得る。アクチュエータは軸方向に移動可能であり、主ハウジング部材に回転可能に固定され得る。
【0011】
一実施形態によれば、アセンブリは主ハウジング部材を含むことができ、アクチュエータは、薬物の用量を投薬するために主ハウジング部材に向かって押し下げられるように構成され得る。特に、アクチュエータは、投薬操作の最後に機械式止め具に当接するまで主ハウジング部材に向かって押し下げられてもよい。
【0012】
遠位方向はデバイスの投薬端寄りの方向であってもよい。同様に、アセンブリまたは任意の部品の遠位端は、投薬端に最も近い端部であってもよい。近位方向はデバイスの投薬端から離れる方向であってもよい。アセンブリまたは任意の部品の近位端は、投薬端から最も遠い端部であってもよい。
【0013】
一実施形態によれば、アセンブリは、ピストンロッドを含む。ピストンロッドは、主ねじとして構成され得る。アクチュエータの投薬運動中、ピストンロッドは遠位方向での軸方向および回転運動を行うことができる。このことにより、薬物の用量が投薬できる。用量の設定中、ピストンロッドはアセンブリの主ハウジング部材に固定され得る。デバイスの操作中、ピストンロッドは開始位置から終了位置まで移動できる。ピストンロッドは、デバイスから用量が一切送達されていないときに開始位置にあってもよい。開始位置は、ピストンロッドの最も近位の位置であってもよい。終了位置は、ピストンロッドの最も遠位の位置であってもよい。ピストンロッドは、用量投薬方向でのアクチュエータの動きによって、その終了位置に向かって移動され得る。ピストンロッドは、最大量の薬物が送達された、特に最後の用量が送達されたときに終了位置にあってもよい。
【0014】
一実施形態によれば、アセンブリは内部ハウジングを含むことができる。内部ハウジングは主ハウジングに固定され得る。内部ハウジングは、開口部を含むことができ、ピストンロッドは開口部を通って延びる。好ましくは、ピストンロッドは内部ハウジングと螺合する。
【0015】
ピストンロッドは少なくとも1つの最終用量止め具を含むことができる。最終用量止め具は、ピストンロッドの突起として構成され得る。一実施形態では、最終用量止め具は、対向して配置された2つの突起を含むことができる。最終用量止め具は、ピストンロッドの近位セクションまたは近位端近傍に配置され得る。
【0016】
止め具機構は、ピストンロッドの少なくとも1つの最終用量止め具と相互に作用するように構成される少なくとも1つの止め具要素を含むことができる。特に、止め具要素は最終用量止め具に当接するように構成され得る。アセンブリは、最大量の薬物が投薬された後に止め具要素が最終用量止め具と相互に作用できるように構成され得る。止め具要素が最終用量止め具に当接すると、近位方向でのアクチュエータの動きが阻害される。このことにより、さらなる用量の設定が阻害される。
【0017】
薬物の最大量、より詳細には最後の用量が送達されると、止め具要素は最終用量止め具に対してある軸方向距離を有して配置され得る。さらに、最終用量止め具は、デバイスの投薬端から見て止め具要素の真上に位置してもよい。止め具要素と最終用量止め具との軸方向距離は、アクチュエータの可能な制限された軸方向運動に対応する。
【0018】
一実施形態によれば、最終用量止め具は、止め具要素が最終用量止め具に当接したときに少なくとも部分的に止め具要素を取り囲むように形成される。それによってデバイスがロックされ得る。一実施形態によれば、最終用量止め具は挿入用溝を含むことができる。挿入用溝により、ピストンロッドの可能な回転方向の両方に対する当接が提供され得る。より詳細には、溝はデバイスの長手軸に対して傾斜していてもよい。たとえば、最終用量止め具は、ポケットの形態を含むことができる。止め具要素はポケット内に係合することができる。それによって、横方向に最終用量止め具を通過する止め具要素の動きが阻害できる。たとえば、最終用量止め具は、円錐の形態を含むことができ、またはテーパ形であってもよい。したがって、止め具機能は、最終用量止め具に嵌入するように形成され得る。
【0019】
一実施形態によれば、アセンブリは、駆動部材を含む。駆動部材はスリーブ部材であってもよい。駆動部材は、アセンブリのハウジングに対して回転可能に固定され得る。用量の設定中、駆動部材はピストンロッドに対して相対的な軸方向運動を行うことができる。駆動部材は、用量を設定するためにピストンロッドに沿って近位方向に移動するように構成され得る。用量は固定用量であってもよい。より詳細には、使用者は設定された用量の量を調節しなくてもよい。用量の投薬中、駆動部材はピストンロッドをデバイスの投薬端に向かって、つまり詳細には終了位置に向かって駆動してもよい。特に、駆動部材の遠位方向での動きによって、ピストンロッドが回転し、デバイスの遠位端に向かって軸方向に移動できる。用量の設定および投薬中の駆動部材の軸方向運動の量を決定してもよい。それによって、設定された用量の量が固定される。たとえば、アセンブリは止め具表面を含むことができ、駆動部材が止め具表面に当接したときにある方向でのさらなる軸方向運動が阻害される。止め具表面はハウジングに含まれてもよい。より詳細には、駆動部材は用量の設定および投薬中に軸方向の非回転運動を行うことができる。駆動部材はピストンロッド周りに同心円状に配置され得る。さらに、駆動部材はその内部表面にねじ山を含むことができる。それによって、駆動部材はピストンロッドの対応するねじ山と螺合できる。対応するねじ山はピストンロッドの近位端に配置され得る。
【0020】
用量を設定するために、アクチュエータが使用者により押されると、駆動部材は遠位方向に移動し、ピストンロッドへの軸方向の力を及ぼすことができる。それによって、ピストンロッドは内部ハウジングの開口部によって回転することができる。加えて、ピストンロッドはさらに、部分的に駆動部材内へと戻るように螺旋状に後退する。このことにより、用量の投薬中における駆動部材の軸方向変位は、用量の投薬中のピストンロッドの軸方向変位よりも大きい。このことにより、機械的利点を得ることができる。機械的利点は、駆動部材のねじ山の高さと、それに従うピストンロッドを選択することによって調整できる。
【0021】
止め具要素は、駆動部材の内部表面に配置され得る。たとえば、止め具要素は、駆動部材の内部表面における突起であってもよい。一実施形態によれば、駆動部材は2つの止め具要素、特に、その内部表面にて対向して配置される2つの突起を含むことができる。駆動部材の2つの突起は、最終用量止め具の2つの突起と相互作用してもよい。
【0022】
一実施形態によれば、駆動部材は、駆動部材の動きによりアクチュエータの動きが引き起こされ、またその逆が起きるように、アクチュエータに連結され得る。たとえば、使用者が用量を設定するためにアクチュエータを引っ張ると、駆動部材は近位方向に引っ張られてもよい。使用者が用量を投薬するためにアクチュエータを押すと、駆動部材は遠位方向に押され得る。一実施形態によれば、駆動部材およびアクチュエータは一体部品として形成され得る。
【0023】
一実施形態によれば、アセンブリはガイド機能を含む。より詳細には、ガイド機能はピストンロッドに含まれ得る。ガイド機能および止め具要素は、用量の設定中にピストンロッドの不意の回転が阻害されるように、相互作用するように構成され得る。より詳細には、用量の設定中に駆動部材によってトルクがピストンロッドに及ぼされたときに、ピストンロッドの不意の回転が阻害され得る。より詳細には、ガイド機能および止め具要素は用量の設定中互いに当接してもよい。これにより、用量の正確さが改善され得る。用量の投薬中、ピストンロッドの回転を有効にできる。
【0024】
一実施形態によれば、ガイド機能および止め具要素は用量の投薬中、互いを通過して移動するように構成される。特に、用量の投薬中のピストンロッドの回転は、ガイド要素が止め具要素に当接しないようなものであってもよい。止め具要素は、螺旋状経路に沿ってピストンロッドに対して移動してもよい。
【0025】
一実施形態によれば、ガイド機能は複数のスプラインを含むことができる。スプラインは少なくとも1列で配置されてもよく、この列は軸方向にピストンロッドに沿って延在する。一実施形態によれば、ピストンロッドは3列のスプラインを含むことができる。列は、ピストンロッドの外周周りに均等に分布してもよい。
【0026】
用量の設定中、止め具要素はガイド機能のスプラインのうち少なくとも1つに当接してもよい。より詳細には、止め具要素は、軸方向に互いに上下に配置される2つのスプラインに当接してもよい。2つのスプライン間の距離は、止め具要素の軸方向伸長よりも小さくてもよい。それによって、ピストンロッドの回転は用量の設定中確実に阻害できる。しかし、止め具要素は、用量設定のまさに最初および最後ではスプラインに当接しない。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、薬物送達デバイスが提供される。薬物送達デバイスは、先に記載したような駆動アセンブリを含む。
【0028】
薬物送達デバイスは注射デバイス、特に、ペン型デバイスであってもよい。薬物送達デバイスは使用者に薬物の用量を送達するのに適していてもよい。用量はアクチュエータを押し下げることにより送達されてもよい。薬物送達デバイスは、使用者が用量のサイズを選択できないような固定用量デバイスであってもよい。たとえば、用量設定機構はプッシュプル式機構であってもよい。薬物送達デバイスは複数の用量用途のために構成され得る。薬物は針によって使用者に送達され得る。デバイスは、使える状態の完全組立状態で使用者に送達できる。より詳細には、デバイスは予め充填されていてもよい。薬物送達デバイスは使い捨てデバイスであってもよい。用語「使い捨て」とは、可能な量の薬物が薬物送達デバイスから送達された後に薬物送達デバイスが再使用できないことを意味する。あるいは、薬物送達デバイスは再利用可能デバイスであってもよい。薬物送達デバイスは液体薬物を送達するように構成され得る。薬物はたとえば、インスリンであってもよい。
【0029】
本明細書で使用する用語「薬物」は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0030】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0031】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0032】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0033】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0034】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0035】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0036】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0037】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0038】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0039】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0040】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0041】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0042】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0043】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0044】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0045】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0046】
さらなる特徴、変形例および実施例が、図に関連した例示的な実施形態の以下の説明で明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】薬物送達デバイスの断面図を示す。
図2】薬物送達デバイスのアセンブリを示す。
図3】異なる状態の止め具機構を示す。
図4】異なる状態の止め具機構を示す。
図5】平面図で駆動部材を示す。
図6】ピストンロッドおよび駆動部材の断面図を示す。
図7】ピストンロッドおよび駆動部材の断面図を示す。
図8】異なる状態のガイド機能および止め具要素を示す。
図9】異なる状態のガイド機能および止め具要素を示す。
図10】異なる視野からの図8の状態を示す。
図11】異なる視野からの図9の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は薬物送達デバイス1の断面図を示す。薬物送達デバイス1は、カートリッジ保持部材2と、主ハウジング部材3とを含む。カートリッジ保持部材2の近位端および主ハウジング3の遠位端は、当業者に既知の任意の好適な手段によって一緒に固定される。図示した実施形態では、カートリッジ保持部材2は主ハウジング部材3の遠位端内に固定される。
【0049】
そこから複数の用量の医薬品が投薬できるカートリッジ4が、カートリッジ保持部材2内に提供される。ピストン5はカートリッジ4の近位端内に保持される。
【0050】
着脱可能なキャップ22がカートリッジ保持部材2の遠位端の上に解放可能に保持される。着脱可能なキャップ22は場合により、それを通してカートリッジ4内のピストン5の位置が見える1つまたはそれ以上のウィンドウ開口部25を備える。
【0051】
図示した実施形態におけるカートリッジ保持部材2の遠位端は、カートリッジ4から薬剤を投薬できるように好適なニードルアセンブリ(図示せず)を取り付けるように設計された遠位ねじ付領域6を備える。
【0052】
図示した実施形態では、主ハウジング部材3は内部ハウジング7を備える。内部ハウジング7は、主ハウジング部材3に対する回転および軸方向運動に抗して固定される。あるいは、内部ハウジング7は主ハウジング部材3と一体化されてもよい。内部ハウジング7は環状開口部8を備える。ねじ山32は内部ハウジング7の開口部8に配置される。特に、内部ハウジング7はピストンロッドナットとして構成される。図示した実施形態では、環状開口部8は、完全ねじ山でなく一連の部分ねじ山を含む。
【0053】
第1のねじ山9はピストンロッド10の遠位端に形成される。ピストンロッド10は略環状断面である。ピストンロッド10の第1のねじ山9は、内部ハウジング7の環状開口部8のねじ山32を通って延び、かつこれと螺合する。押さえ11はピストンロッド10の遠位端に位置する。押さえ11はピストン5の近位面に当接するように配置される。第2のねじ山12はピストンロッド10の近位端に形成される。図示した実施形態では、第2のねじ山12はピストンロッド10の可撓性アーム13に形成される、完全なねじ山ではなく一連の部分ねじ山を含む。
【0054】
第1のねじ山9および第2のねじ山12は対向して配置される。
【0055】
図示した実施形態では、第1のねじ山9は、環状開口部8のねじ山32と協働して用量の設定中の近位方向でのピストンロッド10の動きを防ぐ複数の特徴(図2参照)を備える。特に、ピストンロッド10は逆巻き制限される。
【0056】
駆動部材14はピストンロッド10の周りに延びる。駆動部材14は駆動スリーブとして構成される。駆動部材14は、略円筒形断面のねじ付部材15を含む。アクチュエータ16は駆動部材14の近位端に位置する。ねじ付部材15およびアクチュエータ16が互いに対して固定され、それらの間の回転運動および/または軸方向運動を防止する。あるいは、駆動部材14は一体型ねじ付部材15およびアクチュエータ16からなる一体形成構成要素であってもよい。用量の設定中、駆動部材14は近位方向に移動される。より詳細には、使用者は主ハウジング部材3から外へ近位方向にアクチュエータ16を引っ張ることができる。
【0057】
図示した実施形態では、ねじ付部材15は、内部円筒面に形成された長手方向に延びる螺旋状ねじ山17を備える。螺旋状ねじ山17の近位側の側面は、用量投薬時のピストンロッド10の第2のねじ山12との接点を維持するように設計されるのに対し、螺旋状ねじ山17の遠位側の側面は、用量設定時にピストンロッド10の第2のねじ山12が係合解除できるように設計される。このようにして、ねじ付部材15の螺旋状ねじ山17は、ピストンロッド10の第2のねじ山12と解放可能に係合する。
【0058】
駆動部材14は、主ハウジング3のガイドスロット内で軸方向に移動するように設計された、外面に形成される複数の特徴を有する。これらのガイドスロットによって、ハウジング部材3に対する駆動部材14の許容可能な軸方向運動の程度を規定する。図示した実施形態では、ガイドスロットはまた、駆動部材14の主ハウジング部材3に対する回転運動を防止する。
【0059】
アクチュエータ16は、複数の把持表面18および投薬面19を有する。
【0060】
デバイスの操作の直観性を高めるために、主ハウジング部材3は、それを通して駆動部材14に設けられた視覚的な状態インジケータを見ることができるウィンドウ開口部を備えてもよい。
【0061】
本発明による薬物送達デバイスの操作をここで説明する。
【0062】
用量を設定するために、使用者は駆動部材14の把持表面18を把持する。次に、使用者は主ハウジング部材3から離れる近位方向に駆動部材14を引っ張る。
【0063】
ピストンロッド10は、ピストンロッド10の第1のねじ山9のねじ山機能と相互作用する内部ハウジング7の環状開口部8のねじ山32によって、または任意の他の適切な手段によって近位方向に移動することを防止される。より詳細には、ピストンロッド10の第1のねじ山9および第2のねじ山12は、内部ハウジング7と駆動スリーブ14との相対位置が維持される限り、ピストンロッド10を軸方向に制限し、かつ回転を制限する。駆動部材14が用量の設定中に、ピストンロッド10に対して近位方向に移動するとき、ピストンロッド10の第2のねじ山12は、駆動部材14の螺旋状ねじ山17の遠位側の側面によって半径方向内側に変位される。
【0064】
駆動部材14の近位行程は、内部ハウジング7または主ハウジング3のガイドスロット(図示せず)によって、駆動部材14の螺旋状ねじ山17の本質的に1つのねじ山の高さに対応する距離に制限される。駆動部材14の行程の終わりでは、ピストンロッド10の第2のねじ山12は、ピストンロッド10の可撓性アーム13の作用により螺旋状ねじ山17に係合する。この作用によって、駆動部材14は、駆動部材14の螺旋状ねじ山17の1つの高さに本質的に等しい距離だけピストンロッド10に対して近位方向に変位される。可撓性アーム13により提供される力によって駆動部材14の螺旋状ねじ山17とポジティブ係合する第2のねじ山12の作用により、用量が設定されたことを使用者に表示するための可聴および触覚フィードバックを作成する。加えて、用量設定に関する視覚フィードバックは、駆動部材14に設けられる、任意の視覚的状態インジケータによって表示することができ、これは、主ハウジング部材3の任意のウィンドウ開口部を通して見ることができる。
【0065】
用量が設定されると、使用者はその後、アクチュエータ16の投薬面19を押し下げることによってこの用量を投薬することができる。この作用により、駆動部材14は主ハウジング部材3に対して遠位方向に軸方向に移動する。ピストンロッド10の第2のねじ山12が駆動部材14の螺旋状ねじ山17とポジティブ係合するとき、ピストンロッド10は、遠位方向での駆動部材14の軸方向運動によって内部ハウジング7に対して回転させられる。ピストンロッド10が回転するにつれ、ピストンロッド10の第1のねじ山9が、内部ハウジング7のねじ付環状開口部8内で回転し、ピストンロッド10が内部ハウジング7に対して遠位方向に軸方向に移動する。
【0066】
前進に加えて、ピストンロッド10はさらに、部分的に駆動部材14内へと戻るように螺旋状に後退する。それによって、駆動部材14の軸方向変位は、ピストンロッド10の軸方向変位よりも大きい。
【0067】
ピストンロッド10の遠位軸方向運動によって、押さえ11がカートリッジ4のピストン5を支承し、薬剤の用量が取り付けられた針を通して投薬される。
【0068】
駆動部材14の遠位行程は、内部ハウジング7のガイドスロットまたは止め具表面(図示せず)によって制限される。用量投薬に関する視覚フィードバックは、駆動部材14に設けられる、任意の視覚的状態インジケータによって表示することができ、これは、主ハウジング部材3の任意のウィンドウ開口部を通して見ることができる。
【0069】
さらなる用量が、所定の最大回数の用量まで必要に応じて送達され得る。
【0070】
ピストンロッド10、駆動部材14、および内部ハウジング7は図2により詳細に示される。
【0071】
ピストンロッド10の第1のねじ山9は、平坦部分31を有する。用量の設定中、内部ハウジング7のねじ山32は平坦部分31と相互作用する。内部ハウジング7とピストンロッド10の平坦部分31との相互作用は、用量の設定中に軸方向にピストンロッド10を制限するように構成される。より詳細には、ピストンロッド10は、用量の設定中に駆動スリーブ14とともに近位方向に移動することを防止される。代替的実施形態では、ピストンロッド10の第1のねじ山9は、ピストンロッド10と内部ハウジング7との境界面がオーバーホール不能なように、浅い高さを有してもよい。
【0072】
図3および図4は、アセンブリ30の止め具機構40を示す。止め具機構40は、可能な薬物量がデバイスから投薬された後に用量の設定を阻害するように構成される。より詳細には、止め具機構40は、カートリッジ4が空のとき用量の設定を阻害する。より詳細には、止め具機構40は使用者にデバイスが空であるというフィードバックを与える。たとえば、薬物の15回分の用量がデバイス1から送達され得る。16回目の用量の設定は阻害できる。
【0073】
止め具機構は、止め具要素27を含む。止め具要素27は駆動部材14の一体部材である。図5に示すように、止め具要素27は、駆動部材14の内部表面における突起29として構成される。より詳細には、止め具要素27は、2つの突起29を含む。2つの突起29は対向して配置される。第1の突起29とは対向して配置される止め具要素27の第2の突起29により、機構に半径方向の安定性が加わる。さらに、駆動部材14は対称な構成要素であってもよい。止め具要素27は駆動部材14の遠位セクションに配置される。
【0074】
図3および図4では、駆動部材14は明確さを期するために、突起29以外は切り取られる。
【0075】
止め具機構40によって、近位方向での駆動部材14の軸方向運動が制限される。より詳細には、駆動部材14の軸方向運動は、最後の用量がデバイスから投薬された後に制限される。このことにより、アクチュエータ16の軸方向運動もまた制限される。しかしながら、駆動部材14とアクチュエータ16との制限された軸方向運動が依然として可能である。このような動きは0よりも大きいが、通常の用量設定運動よりも小さくてもよい。制限された軸方向運動は製作公差により可能であってもよい。
【0076】
図3では、アセンブリ30は、最後の用量が投薬されたときの状態で示される。ピストンロッド10は、最終用量止め具37を含む。最終用量止め具37は、ピストンロッド10の突起として構成される。一実施形態では、最終用量止め具37は、ピストンロッド10において対向して配置された2つの突起を含むことができる。
【0077】
最後の用量が投薬されると、最終用量止め具は、アセンブリの投薬端から見て止め具要素27の上に配置される。さらに、最終用量止め具37は止め具要素27に対してある軸方向距離を有して配置される。使用者がここでアクチュエータ16を引っ張って用量を設定しようとすると、駆動部材14は近位方向に移動し、図4に示すように、止め具要素27はピストンロッド10の最終用量止め具37に当接する。止め具要素27が最終用量止め具に当接すると、用量設定方向での駆動部材14のさらなる動きは一切不可能となる。最終用量止め具37は、少なくとも部分的に止め具部材27を取り囲むように形成される。たとえば、最終用量止め具37の突起は、ポケットの形態を含む。それによって、止め具要素27が最終用量止め具37に当接した後、使用者が強制的にアクチュエータ16を引っ張った場合、駆動部材14とピストンロッド10との相対回転が阻害される。
【0078】
図6および図7は駆動部材14およびピストンロッド10の断面図を示す。図6は、用量が設定されたときまたは用量の設定前の状態におけるピストンロッド10および駆動部材14を示す。より詳細には、駆動部材14の螺旋状ねじ山17は、ピストンロッド10の第2のねじ山12と係合する。図7は、用量の設定中のピストンロッド10および駆動部材14を示す。用量の設定中、駆動部材14の螺旋状ねじ山17は、ピストンロッド10の第2のねじ山12と係合しない。
【0079】
駆動部材14は、傾斜表面33を含む。傾斜表面33は、図7に示すように、用量の設定中ピストンロッド10の可撓性アーム13上で摺動する。傾斜表面33によりピストンロッド10の可撓性アーム13に印加される力によって、ピストンロッド10へのトルクを誘起する。
【0080】
ピストンロッド10が用量の設定中に回転するのを防ぐため、ピストンロッド10は、ガイド機能26を含む。ガイド機能26は、用量の設定中に止め具要素27と相互作用するように構成される。
【0081】
ピストンロッド10のガイド機能26は、図2図4および図8図11に示される。ガイド機能26は、複数のスプライン28を含む。スプライン28は互いに距離を空けて1列に配置される。より詳細には、ガイド機能26は、3列のスプライン28(図示せず)を含む。3つの列は、ピストンロッド10の外周周りに均等に分布している。
【0082】
図8は、ピストンロッド10および止め具要素27の1つの突起29のセクションを示す。より詳細には、図8は用量の設定中の状態を示す。駆動部材14は、突起29以外は明確さを期するために切り取られている。用量の設定中、駆動部材14の止め具要素27はピストンロッド10のガイド機能26に当接する。それによって、ピストンロッド10の回転が阻害される。駆動部材14とガイド機能26との当接は、用量の設定中にピストンロッド10に対して誘起されるトルクからもたらされる。ピストンロッド10に印加されるトルクの方向は矢印35で示される。
【0083】
止め具要素27は、1回の設定運動中に2つまたはそれ以上のスプライン28を通過してもよい。これらスプライン28の軸方向距離は、止め具要素27の軸方向の伸張よりも小さい。それによって、止め具要素27は用量の設定中に2つのスプライン28間を通過できない。スプライン28は、ピストンロッド10の第1のねじ山9にすぐ隣接して配置される。
【0084】
図9は、用量が設定されたときの状態における、図8のピストンロッド10および突起29を示す。この状態では、止め具要素27はガイド機能26にはもはや当接していない。
【0085】
用量の投薬中、ピストンロッド10は駆動部材14に対して回転する。この回転中、止め具要素27はピストンロッド10に沿って螺旋状運動を行う。より詳細には、止め具要素27の突起29は、ガイド機能のスプライン機能28間を通って移動する。止め具要素の螺旋状運動は図3の矢印36で示される。
【0086】
図10および図11は、図8および図9と同様に、用量の設定中および用量の設定後の止め具要素27の第2の突起29およびピストンロッドを示す。
【符号の説明】
【0087】
1 薬物送達デバイス
2 カートリッジ保持部材
3 主ハウジング部材
4 カートリッジ
5 ピストン
6 遠位ねじ付領域
7 内部ハウジング
8 ねじ付環状開口部
9 第1のねじ山
10 ピストンロッド
11 押さえ
12 第2のねじ山
13 可撓性アーム
14 駆動部材
15 ねじ付部材
16 アクチュエータ
17 螺旋状ねじ山
18 把持表面
19 投薬面
22 着脱可能なキャップ
25 ウィンドウ開口部
26 ガイド機能
27 止め具要素
28 スプライン
29 突起
30 アセンブリ
31 平坦部分
32 内部ハウジングのねじ山
33 駆動部材の傾斜表面
34 ピストンロッドの主軸
35 矢印
36 矢印
37 ピストンロッドの最終用量止め具
40 止め具機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11