【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年2月18日から2月19日まで、一般社団法人日本施設園芸協会の主催により開催された「第37回施設園芸総合セミナー・機器資材展」に出品
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の種々の補強構造では十分な補強とは言えず、比較的補強効果のある補強用支柱であっても、着脱構造が複雑であったり、座屈荷重が小さかったりすることが多かった。そのため、簡易な作業で大きな屋根荷重に耐えることができる補強用支柱の開発が望まれていた。特に、その支柱による補強を必要とする時季は冬季のみであり、且つ積雪時にのみ補強されればよく、その他の時季においては不要であることから、着脱が容易であること、可搬性のあることが望まれていた。
【0006】
また、ビニルハウスは、農地に建てられることから、地面から天井までの高さが一定でない場合が多い。これに対し、従来の補強用支柱は、高さ方向の調整幅が小さく、汎用性がなかった。そのため、従来の積雪に対する補強は、複数長の補強用支柱を揃えなければならず、また、支柱の長さ(高さ)が足りない場合には、支柱の下端と地面との間にブロックやレンガなど他の構造物を挟むなど、作業が煩雑で不便な場合があった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、汎用性が高く、必要な時に簡易に設置及び取り外しができ、しかも、パイプ構造の屋根部分を大きな座屈強度で支持できる補強用支柱及び補強用支柱を用いたハウス構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の補強用支柱は、上端26aの近傍に半径方向に貫通する締結具37を備え、下端26bに沈下防止板31が固定され、該沈下防止板31にて地面に立設状態とされる外パイプ25と、
前記外パイプ25の上端26aから挿入され、下端28bの外周には締結具先端45が進入可能な溝47が軸線に沿う方向で形成されるとともに、該溝47には前記下端28bに向かって半径方向内側に傾斜し、前記締結具先端45の当たる溝底部49が形成される内パイプ27と、
逆U字の向きで上から天井パイプ15を挟んだU字ボルト57の両下端が貫通して締結されることにより、前記天井パイプ15の下側に固定される支持板59を有し、該支持板59の下面には、前記天井パイプ15より下方に向かって徐々に先細に形成され、前記内パイプ27の上端28aに挿入可能な断面十字形状の垂下部61が設けられる連結部材29と、
を具備し、
前記内パイプ27の前記溝47の対向する切欠端面47a,47aには挟持板51,51が固定され、挟持板51,51の間には、軸線に沿う方向に連続する傾斜辺を前記溝底部49とする肉厚傾斜板53が固定され、肉厚傾斜板53の溝底部49と反対側の垂直辺が内パイプ27の内壁に当接固定されていることを特徴とする。
請求項2記載の構成では、前記支持板59の上面には、前記天井パイプが載置される湾曲凹部を上面に有する台座部65が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この補強用支柱100では、天井パイプ15に、連結部材29が予め取り付けられる。連結部材29は、U字ボルト57により天井パイプ15の下側に固定された支持板59の下面に、垂下部61が吊下状態となる。一方、外パイプ25と内パイプ27とは、外パイプ25の内方に内パイプ27が挿入されて収納されている。外パイプ25は、内パイプ27を収納した状態で、連結部材29の直下の地面13に、沈下防止板31を着地させて起立する。締結具37は、緩めることにより締結具先端45が内パイプ27の外周から離間し、外パイプ25からの内パイプ27の伸長を可能とする。内パイプ27は、外パイプ25から引き出し、上端28aの開口へ連結部材29の垂下部61を挿入する。締結具37は、締結具先端45が溝47に進入し、且つ内パイプ27の溝底部49に当たるまで締結する。内パイプ27は、溝底部49に締結具先端45が当たることにより、外パイプ25への引き込みが規制、すなわち外パイプ25内への収納方向の規制が行われ、外パイプ25に対する内パイプ27延長状態は保持される。これにより、天井パイプ15は、連結部材29に連結された内パイプ27と、内パイプ27の下端28bを固定して沈下防止板31を地面に接地した外パイプ25とにより簡易な作業で強固に支持される。
【0010】
本発明の請求項
3記載の補強用支柱は、請求項1
または2記載の補強用支柱であって、 前記外パイプ25と前記内パイプ27とが略同一長で形成され、
前記外パイプ25の内側に前記内パイプ27が収納されることを特徴とする。
【0011】
この補強用支柱100では、外パイプ25に設けられている締結具37が緩められると、締結具先端45が内パイプ27の外周から離間する。内パイプ27は、締結具先端45の干渉がなくなると、外パイプ25の内方への挿入が可能となる。外パイプ25と内パイプ27とは、略同一長で形成されるので、内パイプ27が外パイプ25に収納されると、伸長時の略半分の長さとなる。これにより、補強用支柱100は、運搬、保管が容易となる。
【0012】
本発明の請求項
4記載の補強用支柱は、請求項1
〜3のいずれか1つに記載の補強用支柱であって、
前記締結具37には、緩み止め部材39が備えられることを特徴とする。
【0013】
この補強用支柱100では、内パイプ27が外パイプ25から伸長され、外パイプ25の沈下防止板31が地面に接地し、内パイプ27の上端28aに垂下部61が挿入された状態で、締結具先端45が内パイプ27の溝底部49に当接する。溝底部49は、内パイプ27の下端28bに向かって半径方向内側に傾斜する。換言すれば、溝底部49は、内パイプ27の上端28aに向かって半径方向外側に傾斜し、溝底が浅くなる。従って、締結具37は、内パイプ27が連結部材29から受ける天井パイプ15の荷重を反力として受ける。締結具37は、緩み止め部材39により二重に溝底部49を外パイプ25に対して締結するので、この反力を十分な強度で支持することが可能となる。
【0014】
本発明の請求項
5記載の補強用支柱を用いたハウス構造は、請求項1〜
4のいずれか1つに記載の補強用支柱を用いたハウス構造であって、
屋根部に前記天井パイプ15を備えており、
前記天井パイプ15の所定個所に前記連結部材29が固定され、
前記連結部材29の垂下部61を前記内パイプ27の上端28aの内方に挿入することにより前記天井パイプ15に沿う前記屋根部の任意位置が、前記補強用支柱100により地面13に対して支持可能となることを特徴とする。
【0015】
この補強用支柱を用いたハウス構造では、屋根部を構成する天井パイプ15に、予め連結部材29を取り付けておく。連結部材29は、天井パイプ15に固定された支持板59から垂下部61が垂下するのみであるので、通常時におけるハウス200内の作業に邪魔にならない。補強用支柱を用いたハウス構造では、積雪荷重の生じることが予想される場合、保管してある一体となった外パイプ25及び内パイプ27を、前記連結部材29の直下に運ぶ。内パイプ27は、締結具37を緩めることにより外パイプ25から伸長が可能となる。伸長した内パイプ27は、上端28aの開口に連結部材29の垂下部61を挿入して連結する。同時に、外パイプ27の上端26aに設けられる締結具37の締結具先端45を内パイプ27の下端28bに形成された溝底部49に締め付ける。これにより、天井パイプ15は、連結部材29に連結した内パイプ27と、内パイプ27の下端28bを固定して沈下防止板31を地面13に接地する外パイプ25とにより簡易な作業で強固に支持される。
【0016】
本発明の請求項
6記載の補強用支柱を用いたハウス構造は、請求項
5記載の補強用支柱を用いたハウス構造であって、
前記天井パイプがパイプハウス200の棟パイプ15であることを特徴とする。
【0017】
この補強用支柱を用いたハウス構造では、補強用支柱100が、パイプハウス200の棟パイプ15を地面に対して支持する中柱として用いられる。中柱の設置は、屋根荷重を抑える一番確実な方法となる。中柱となる補強用支柱100と棟パイプ15との継手となる連結部材29が、予め棟パイプ15に固定されている。このため、棟パイプ15と補強用支柱100との連結は、内パイプ27に連結部材29の垂下部61を差し込むだけで済む。補強用支柱100は、垂下部61に差し込んだ内パイプ27を、締結具37により外パイプ25に対して固定することで、設置が完了する。そのため、多大な労力を要することなく、棟パイプ15に沿って所定の間隔で棟方向に沿って複数本の補強用支柱100を簡易に設置することが可能となる。また、内パイプ25の長さが無段階で調整でき、従来のような複数長の中柱を用いる場合に比べ、降雪前の短時間での作業が可能となる。また、構造体として金属製の丸パイプを使用し、溝47に溶接固定した厚板で溝底部49を形成することにより、高強度な補強用支柱100を得ることができる。これにより、1棟のハウス200に対して補強用支柱100の設置本数を減らすることができる。すなわち、作業量を減らすことができる。また、簡易な設置作業により煩雑さが減り、人員も削減でき、さらに、設置のための作業時間も大幅に短縮できる。これらにより、面積の広い園芸用ハウスや棟数の多い場合にも簡易に対応できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1記載の補強用支柱によれば、伸縮自在な外パイプと内パイプとの構造よりなり、外パイプに対する内パイプの締結を傾斜した溝底部に締結具を当てることで行うことから、伸長状態を無段階で調整でき、これにより地面からの天井高にばらつきがあっても対応できるので汎用性が高く、また、伸縮状態の設定を締結具のみで行うことから必要な時に簡易に設置・取り外しができ、しかも、天井パイプに固定される連結部材に取り付ける構成とされ天井パイプに対して地面から確実に真直に支えることができ天井パイプを大きな座屈強度で支持することができる。
【0019】
本発明に係る請求項
3記載の補強用支柱によれば、外パイプに対して内パイプが収容可能な長さとされることから、不使用時には、コンパクトに縮めて、小さな保管スペースにかたづけることができ、邪魔になることがなく、また、運搬の際には容易なものとなる。
【0020】
本発明に係る請求項
4記載の補強用支柱によれば、内パイプを外パイプに固定する締結具の緩みを規制し、所定長に引き出した内パイプを高強度で外パイプに固定できる。
【0021】
本発明に係る請求項
5記載の補強用支柱を用いたハウス構造によれば、屋根荷重を支持する天井パイプを補強用支柱により高強度に補強でき、急な降雪に迅速に対応して、簡易的な建物であるパイプハウスの積雪による倒壊を未然に防止できる。
【0022】
本発明に係る請求項
6記載の補強用支柱を用いたハウス構造によれば、補強用支柱を中柱として用いることにより、特にパイプハウスの屋根荷重を受ける棟パイプの耐荷重を増大させることができ、積雪荷重に耐えられず、パイプハウスの屋根部がM字型に陥没する被害を効果的に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の実施形態において、発明に係る補強用支柱を用いたハウス構造は、補強用支柱を用いた園芸用ハウス(パイプハウス)構造を例示して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る補強用支柱を用いた園芸用ハウスの一部を省略した斜視図である。
本実施形態に係る補強用支柱100は、パイプハウス200に好適に用いることができる。なお、発明に係る補強用支柱を用いたハウス構造は、パイプハウス以外に、鉄骨を併用した鉄骨補強パイプハウスや大屋根型鉄骨ハウスに用いてもよい。さらに、補強用支柱を用いたハウス構造は、園芸用ハウス以外のガレージや物置などの簡易的な建物に用いてもよい。
【0025】
パイプハウス200は、複数のアーチパイプ11を有する。アーチパイプ11は、パイプハウス200の長手方向である棟方向の一端から他端へ向けて所要の間隔をおいて地面13に立設する。それぞれのアーチパイプ11は、棟の部分に棟方向に通しで入れられる棟パイプ15によって連結固定される。アーチパイプ11と棟パイプ15とは、例えばパイプクロス部品17(
図3参照)によってアーチパイプ11の下に棟パイプ15を位置させて交差状態で固定される。
【0026】
アーチパイプ11は、棟パイプ15を挟む左右の肩の部分に、肩パイプ19が棟方向に通しで入れられる。さらに、アーチパイプ11は、棟パイプ15と左右の肩パイプ19との間に、母屋パイプ21が棟方向に通しで入れられる。また、アーチパイプ11の左右の下端には、必要に応じ、例えば地面13の軟弱度に応じて沈下防止パイプがグランドレベルに棟方向に通しで入れられる。
【0027】
このようにして組まれた各パイプによる構造体は、屋根面や胴側面に屋根材や胴縁材を連設して単棟式や連棟式のパイプハウスを構築する。パイプハウス200は、外面に、透明なビニルフイルム23(
図7参照)を被覆して日中の太陽光線をハウス内に透過させながらハウス内を加温して作物の促成栽培や半促成栽培が行われる。
【0028】
図2は
図1に示した補強用支柱の分解側面図である。
補強用支柱100は、このパイプハウス200の棟パイプ15を支持する。補強用支柱100は、外パイプ25と、内パイプ27と、連結部材29と、有する。
【0029】
外パイプ25は、沈下防止板31が下端26bに固定される。沈下防止板31は、図例では四角形であるが、円形でも四角形以外の多角形でもよい。外パイプ25は、この沈下防止板31を接地して下端26bが地面13に支持され、略直立状態となる。外パイプ25は、上端26aの近傍に半径方向に貫通する締結具37を備える。本実施形態において、締結具は、ボルトからなり、このボルトを螺着させる雌ねじ部としてナット33(
図11参照)が固設される。ナット33及びボルトは、例えばM8程度のサイズのものを使用することができる。外パイプ25は、上端26aの近傍に、複数(本実施形態では2つ)のボルト挿通穴35(
図11参照)が穿設される。ボルト挿通穴35は、外パイプ25の軸線に沿う方向で離間して配置される。外パイプ25は、外面に、それぞれのボルト挿通穴35と同一中心でナット33が固定される。それぞれのナット33は、例えば溶接により外パイプ25に強固に固定される。このナット33には、ボルトの先端が螺合される。ナット33に螺合したボルトは、頭部がスパナ等の工具により回転されることによりボルト挿通穴35から外パイプ25の内方に突出する。
【0030】
本実施形態では、ボルトは、蝶ボルト37よりなる。締結具は、蝶ボルト37を用いることで、スパナ等の工具を用いずに手指にて締め付けが可能となる。以下、本実施形態では、締結具であるボルトが蝶ボルト37である場合を例に説明する。
【0031】
蝶ボルト37は、緩み止め部材を備えることができる。本実施形態では、緩み止め部材は、ダブルナットを構成する。すなわち、ナット33に螺合した蝶ボルト37は、ナット33とボルト頭部38との間に、さらに緩み止め部材としての緩み止めナット39(
図11参照)が螺合されている。緩み止めナット39は、ナット33が所定位置となるように螺合した蝶ボルト37において、蝶ボルト37に対して回転させてナット33側に締め付けることにより、ナット33に対する蝶ボルト37の回転、すなわち緩みを規制できる。
【0032】
補強用支柱100は、上記蝶ボルト37の代わりにアイボルト41(
図14参照)やヒートンを用いた構成としてもよい。アイボルト41は、ボルト頭部42に軸線方向に直交する穴を有し、例えば円形のリング状部が形成される。アイボルト41であれば、その穴にドライバーなどの工具や適当な棒を差し込み、すなわち専用の工具を使わずに回転操作を簡便に、且つ強固な締め付けを行える。また、アイボルト41は、穴にハウス補強用の番線43(
図15参照)を容易に括ることができる。
【0033】
また、上記緩み止めナット39は、
図13に示すように、上記蝶ボルト37の頭部形状と同様に摘み片を備える蝶ナットで構成することとしてもよい。この蝶ナットよりなる緩み止めナット39であれば、回転操作が容易となり、締めつけ作業を手指にて簡便且つ素早く行うことができる。
【0034】
内パイプ27は、外パイプ25の上端26aから挿入される。内パイプ27は、下端28bの外周に、締結具先端である蝶ボルト先端45(
図11参照)が進入可能な溝47が軸線に沿う方向で形成される。
【0035】
図3は内パイプの下端に形成される溝の分解斜視図である。
内パイプ27は、溝47に、溝底部49を有する。溝底部49は、下端28bに向かって半径方向内側に傾斜する。この溝底部49には、蝶ボルト先端45が当たる。より具体的には、内パイプ27の下端28bには、軸線に沿う方向でスリット状の溝47が切り込まれている。この溝47の対向する一対の切欠端面47aには、一対の短冊状の挟持板51が溶接により平行に固定される。これら一対の挟持板51の間には、傾斜辺を溝底部49とする台形状の肉厚斜面板53が溶接等により固定される。従って、溝47は、溝底部49が下端28bに向かって半径方向内側に傾斜、すなわち溝底が下端28bに向かって深くなるように形成される。固定された肉厚斜面板53は、溝底部49と反対側の垂直辺が、内パイプ27の内壁に当接するのが好ましい。これにより、肉厚斜面板53は、蝶ボルト37からの押圧力に十分に耐える構造となる。これら、溝47、挟持板51、肉厚斜面板53は、内パイプ27におけるスライドレール部55を構成する。
【0036】
補強用支柱100は、外パイプ25と内パイプ27とが略同一長で形成される。これにより、補強用支柱100は、外パイプ25の内側に内パイプ27が収納される。具体的には、外パイプ25は、外径を48mmとされ、内パイプ27は、外径を42mmとされる。外パイプ25及び内パイプ27のそれぞれの全長は、1900mmに設定される。内パイプ27の溝47の長さは、500mmとされる。これにより、補強用支柱100は、溝47の位置を重なり代として全長が2800〜3200mmに無段階で調節可能となる。上記した外パイプ25、内パイプ27、挟持板51、肉厚斜面板53は、全てスチール製である。
【0037】
図4は
図2に示した連結部材を棟パイプ及びアーチパイプと共に表した分解斜視図である。
連結部材29は、U字ボルト57と、支持板59と、垂下部61とで概略構成される。連結部材29は、パイプクロス部品17により連結された棟パイプ15とアーチパイプ11との交差部分に取り付けられる。勿論、連結部材29は、棟パイプ15のみの部分にも取り付けでき、或いはその他の母屋パイプ21やアーチパイプ11に取り付けることとしてもよいが、好ましくはパイプが交差して連結される部分とする。連結部材29は、一対のU字ボルト57を、逆U字の向きで上方から天井パイプ15を挟むようにして取り付ける。なお、本実施形態において、天井パイプは、棟パイプ15である。
【0038】
一対のU字ボルト57は、パイプクロス部品17を挟む両側に取り付ける。支持板59は、パイプクロス部品17の下面側に配置される。支持板59は、棟パイプ15を挟んだU字ボルト57の両下端を貫通して、ナット63により締結する。これにより、支持板59は、棟パイプ15の下側に固定される。
【0039】
U字ボルト57は、2本1組とされ、棟パイプ15に直交するアーチパイプ11をまたがる位置とされる。このことから、アーチパイプ11と棟パイプ15との交差部分を支持し、且つ棟パイプ15に対して棟方向にズレることなく、中柱としての補強構造を強固に構成できる。
【0040】
なお、支持板59の上面には、台座部65が設けられていてもよい。台座部65は、例えば棟パイプ15の外周円と略同一の曲率で湾曲した凹部66を有する。支持板59は、台座部65を棟パイプ15の外周の一部に係合することにより棟パイプ15に安定し、すなわちがたつきを抑制して、U字ボルト57と凹部66とで上下から挟むように固定できる。
【0041】
支持板59の下面には、垂下部61が垂設される。垂下部61は、支持板59の下面から下方に向かって徐々に先細に形成される。この垂下部61は、内パイプ27の上端28aに挿入可能な断面十字形状に形成される。なお、垂下部61は、全長の殆どを同一外径で形成し、先端のみをテーパー状、或いは図示のように半円状に形成してもよい。垂下部61は、垂下方向に長い一対の短冊板を、断面十字形状となるように直交させて組み立て、溶接固定することにより形成できる。垂下部61は、外径(外幅長)が内パイプ27の内径以内で、下端が先細り形状となることで、挿着作業性を向上させている。
【0042】
図5は異なるU字ボルトが取付可能となった連結部材の正面図である。
連結部材29は、外径の異なる棟パイプ15に対応可能となるように、複数種類のU字ボルト57を備えることができる。例えばU字ボルトは、取り付け対象のパイプに合わせて2種類を用意する。ハウスの構造として、例えばその規模によりパイプ径が数種類有り、おおよそ対応できるように、大・小の2種類としている。例えば大径の棟パイプ15に対応させた幅広のU字ボルト57の他に、小径の棟パイプ67に対応させた幅狭のU字ボルト69を備える。支持板59には、長穴71(
図4参照)が形成され、これら大小のU字ボルト57,69に対応可能となっており、部品として共通化としている。
【0043】
図6(a)は大外径の棟パイプに固定された連結部材の正面図、(b)は小外径の棟パイプに固定された連結部材の正面図である。
連結部材29は、異なる大きさのU字ボルト57とU字ボルト69を備えることにより、外径の異なる棟パイプ15と棟パイプ67に安定、がたつきを抑制して固定できる。例えば、パイプハウス200として、大型な構成の場合には棟パイプ15は大径であり、小規模のパイプハウスであれば小径の棟パイプ67とされる。また、棟パイプ15以外のパイプに取り付けることを想定した場合に、その径に応じて大小U字ボルト57,69を選択し、取り付けることが可能となる。これらU字ボルト57,69によって、支持板59の凹部66とで上下から挟み、ナット63にて確実に固定される。
【0044】
図7は棟パイプとアーチパイプの交差部に取り付けられた連結部材の斜視図である。
棟パイプ15は、上にアーチパイプ11が乗る。アーチパイプ11の上には、ビニルフイルム23が張られる。一対のU字ボルト57は、アーチパイプ11を挟むように配置される。棟パイプ15とビニルフイルム23との間には、アーチパイプ11の太さ分の隙間が空く。U字ボルト57は、この隙間を利用して、棟パイプ15の側方(
図4参照)からビニルフイルム23に干渉せずに棟パイプ15に取り付けでき、また、取り付けられた状態でU字ボルト57がビニルフイルム23に接触せず、ビニルフイルム23を傷つけることがない。
【0045】
本実施形態に係る補強用支柱を用いたハウス構造は、パイプハウス200の棟パイプ15に連結部材29が固定される。このパイプハウス200によれば、連結部材29の垂下部61を内パイプ27の上端28aの内方に挿入することにより棟パイプ15の任意位置が、補強用支柱100により地面13に支持可能となる。
【0046】
次に、上記した構成の作用を説明する。
図8は内パイプを垂下部に挿入する際の手順説明図、
図9は連結部材及び内パイプの要部説明図、
図10は内パイプを伸長した状態の手順説明図、
図11は締結具による内パイプ締結状態を表す要部拡大図、
図12は補強用支柱の取り外し時の手順説明図である。
本実施形態に係る補強用支柱100は、天気予報で降雪の予報が出てからの作業に用いる。ただし、
図8に示すように、棟パイプ15には、連結部材29を予め取り付けておく。連結部材29は、棟パイプ15にU字ボルト57を上から挟み込み、U字ボルト57の両下端を支持板59に締結する。連結部材29は、U字ボルト57により棟パイプ15の下側に固定された支持板59の下面に、垂下部61を有する。垂下部61は、垂下方向に直交する断面が十字形状で形成され、且つ下方に向かって先細となっている。すなわち、連結部材29は、通常時においても、棟パイプ25から吊下状態である。
【0047】
一方、外パイプ25と内パイプ27とは、外パイプ25の内方に内パイプ27が挿入されて収納されている(
図12下方)。外パイプ25は、下端26bに沈下防止板31が固定され、上端26aに蝶ボルト37が螺合構造により貫通する。
【0048】
外パイプ25は、内パイプ27を収納した状態で、連結部材29の直下の地面13に、沈下防止板31を着地させて起立する。沈下防止板31を設置する地面13は、予め沈下しないように固めておくことが望ましい。地面13が不安定な場合、例えば土が柔らかい、凹凸が激しいなどの場合には、ベニヤ板を置いたり、ブロックを置いたり、地面13と沈下防止板31との間に補助部材を置いてもよい。
【0049】
蝶ボルト37は、緩めることにより蝶ボルト先端45が内パイプ27の外周から離間し、外パイプ25からの内パイプ27の伸長を可能とする。
【0050】
図8,9に示すように、内パイプ27は、外パイプ25から引き出し、上端28aの開口に連結部材29の垂下部61を挿入する。
【0051】
図10に示すように、補強用支柱100は、内パイプ27の上端28aが支持板59に当接した状態で、外パイプ25の蝶ボルト37を締める。
【0052】
図11に示すように、蝶ボルト37は、蝶ボルト先端45が溝47に進入し、且つ内パイプ27の溝底部49に当たるまで締結する。螺合構造の蝶ボルト37は、回転による締め付けで締結を完了する。なお、溝底部49は、斜面で構成されることから、蝶ボルト先端45の当接を無段階とし、すなわち連結部材29と地面13との間である天井高に対し無段階で外パイプ25に対する内パイプ27の伸長長さの調整を可能としている。
【0053】
内パイプ27は、溝底部49に蝶ボルト先端45が当たることにより、外パイプ25への引き込み、すなわち溝底部49が上方に向かって溝底が浅くなる形状であることで、蝶ボルト先端45とでクサビ状に係合しあい、外パイプ25に対する内パイプ27の下方向へのスライドが規制される。これにより、棟パイプ15は、連結部材29に連結された内パイプ27と、内パイプ27の下端28bを固定して沈下防止板31を地面13に接地した外パイプ25とにより簡易な作業で強固に支持される。
【0054】
補強用支柱100は、外パイプ25に設けられている蝶ボルト37が緩められると、蝶ボルト先端45が溝底部49から離間する。内パイプ27は、蝶ボルト先端45の干渉がなくなると、外パイプ25の内方への挿入が可能となる。外パイプ25と内パイプ27とは、略同一長で形成されるので、
図12に示すように、内パイプ27が外パイプ25に収納されると、伸長時の略半分の長さとなる。これにより、外パイプ25及び内パイプ27は、運搬、保管が容易となる。その結果、不使用時には、コンパクトに縮めて、小さな保管スペースにかたづけることができる。補強用支柱100の連結部材29は、通常時、
図12に示すように、棟パイプ15に取り付けたままとなる。
【0055】
補強用支柱100は、内パイプ27が外パイプ25から伸長され、外パイプ25の沈下防止板31が地面13に接地し、内パイプ27の上端28aに垂下部61が挿入された状態で、蝶ボルト先端45が内パイプ27の溝底部49に当接する。溝底部49は、内パイプ27の下端28bに向かって半径方向内側に傾斜する。換言すれば、溝底部49は、内パイプ27の上端28aに向かって半径方向外側に傾斜し、溝底が浅くなるよう形成される。
【0056】
従って、蝶ボルト37は、内パイプ27が連結部材29から受ける棟パイプ15の荷重を反力として受ける。蝶ボルト37は、緩み止め部材39により二重に溝底部49を外パイプ25に締結する。従って、蝶ボルト37は、この反力を十分な強度で支持することが可能となる。その結果、内パイプ27を外パイプ25に固定する蝶ボルト37の緩みを規制し、所定長に引き出した内パイプ27を高強度で外パイプ25に固定できる。
【0057】
また、本実施形態に係る補強用支柱を用いたハウス構造では、棟パイプ15に、予め連結部材29を取り付けておく。連結部材29は、棟パイプ15に固定された支持板59から垂下部61が垂下するのみであるので、ハウス内における通常の作業に邪魔にならない。補強用支柱を用いたハウス構造では、積雪荷重の生じることが予想される場合、すなわち降雪注意報が発令された場合、保管してある一体となった外パイプ25及び内パイプ27を、連結部材29の直下に運ぶ。
【0058】
外パイプ25及び内パイプ27は、内パイプ27を収納した状態で、連結部材29の直下の地面13に、外パイプ25の沈下防止板31を着地させて起立する。内パイプ27は、蝶ボルト37を緩めることにより外パイプ25から伸長が可能となる。伸長した内パイプ27は、上端28aの開口を連結部材29の垂下部61に挿入して連結する。
【0059】
同時に、外パイプ25の上端26aに設けられる蝶ボルト37の蝶ボルト先端45を内パイプ27の下端に形成された溝底部49に締め付ける。内パイプ27は、上記の作用により外パイプ25への引き込みが規制される。これにより、棟パイプ15は、補強用支柱100により簡易な作業で強固に支持される。
【0060】
この補強用支柱を用いたハウス構造では、補強用支柱100が、パイプハウスの棟パイプ15を地面13に支持する中柱として用いられる。中柱の設置は、屋根荷重を抑える一番確実な方法となる。葉菜類の周年栽培は、ハウス数が多く中柱設置に労力を要する。この補強用支柱を用いたハウス構造では、継手となる連結部材29が、予め棟パイプ15に固定されている。このため、棟パイプ15と補強用支柱100との連結は、内パイプ27を連結部材29の垂下部61に差し込むだけで済む。補強用支柱100は、垂下部61に差し込んだ内パイプ27を、蝶ボルト37により外パイプ25に固定することで、設置が完了する。そのため、多大な労力を要することなく、棟パイプ15に沿って所定間隔で複数本の補強用支柱100を簡易に且つ確実に設置することが可能となる。
【0061】
また、地面13から棟パイプ15までの高さ(天井高)が一定でない場合であっても、無段階で長さが調整でき、一種類の補強用支柱100での対応が可能となる。これにより、長さ(高さ)の異なる複数種の中柱を用いる場合に比べ、設置作業が容易となり、降雪前の短時間での作業が可能となる。
【0062】
また、構造体として金属製の丸パイプを使用し、溝47に溶接固定した厚板である肉厚斜面板53で溝底部49を形成すること、及び略垂直に立設でき、天井である棟パイプ15と地面13との間で確実に支持できることにより、高強度な補強用支柱100を得ることができる。この場合、従来の製品では、1本あたり400kg程度であった座屈強度に比べ、座屈強度を大幅に高めることができ、例えば丸パイプの直径及び肉厚に応じて約1トンの座屈強度が実現可能となる。
【0063】
これにより、補強用支柱を用いたハウス構造は、補強用支柱100の棟方向における設置本数を大幅に減らすることができる。例えば、屋根幅を5.4m、積雪単重を1kg/cm/m
2 、積雪深を25cmとした場合に、本実施形態の補強用支柱100での座屈強度が1トンであれば、支柱1本当たりが耐える面積は1000kg÷25kg/m
2 =40m
2 となり、40m
2 ÷5.4m(屋根幅)=7.4mとなり、すなわち7.4m間隔で補強用支柱100を設置することが可能となる。このことから、棟方向である奥行き方向の長さが30mのハウスの場合には3本でよく、棟方向である奥行き方向の長さが50mのハウスの場合には6本を設置すればよい。これを従来の支柱の荷重強度400kgとした場合には、400kg÷25kg/m
2 =16m
2 の面積で支柱1本あたりが耐えることとなり、上記前提では、16m
2 ÷5.4m=3mとなって、すなわち3m間隔で支柱を設置する必要が有り、棟方向である奥行き方向の長さが30mのハウスの場合には9本も必要になる。
【0064】
このように、補強用支柱を用いたハウス構造は、補強用支柱100を設置するその作業量を減らすことが可能となる。また、簡易な設置作業により煩雑さが減り、人員も削減でき、さらには作業時間も短縮できる。これらにより、面積の広いパイプハウス200にも簡易に対応できる。その結果、補強用支柱100を中柱として用いることにより、特にパイプハウス200の屋根荷重を受ける棟パイプ15の耐荷重を増大させることができ、積雪荷重に耐えられず、パイプハウス200の屋根部がM字型に陥没する被害を効果的に防止できる。
【0065】
図14は締結具と緩み止め部材の他の実施形態の分解側面図、
図15は補強用支柱を利用してさらに補強を加えた園芸用ハウスの正面図である。
補強用支柱100は、上記したように締結具を蝶ボルト37とした例を示したが、この締結具として、上述した
図14に示すアイボルト41にて構成することもできる。このアイボルト41を用いた場合では、頭部42に番線43を括りつけることができる。この番線43は、パイプハウス200の肩パイプ19や母屋パイプ21などとの間で張って、補強構造を採れる。これにより、パイプハウス200は、更なる補強を簡易に行うことができる。なお、
図14に示したアイボルト41には、上述した蝶ナット39を緩み止め部材として図示したが、
図11に示す緩み止めナット39や、その他の構成としても良い。
【0066】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0067】
例えば上記の構成例では、2本の蝶ボルト37を備える場合を説明したが、本発明の構成は、2本以上の蝶ボルト37を有する構成としてもよい。これにより、補強用支柱100は、内パイプ27と外パイプ25との締結強度をさらに高めることができる。
【0068】
また、上述した補強用支柱100を構成する外パイプ25の端部(上端26a,下端26b)や、内パイプ27の端部(上端28a,下端28b)、或いは外パイプ2の沈下防止板31などには、図示しないが、小径な貫通孔を予め穿設してもよく、これら外パイプ25,内パイプ27を運搬する際などにフックを掛けたり、ロープを通したりすることが可能となる。また、同様に、外パイプ25の外側の何れの個所に耳状に突出させてリング部材を溶接固定することで、運搬を容易なものとすることができる。なお、このリング部材が突設されることで、上述した番線43を括りつけることも可能となる。
【0069】
さらに、
図16に示すように、締結具37と緩み止め部材39は、グリップボルトとグリップナットの組み合わせで構成することとしてもよい。このような掴みやすい形状とすることで回転操作が容易となり、締めつけ作業等をさらに容易なものとすることができる。
【0070】
従って、本実施形態に係る補強用支柱100によれば、全長を無段階に調整できることから天井高が一定しない場合でも対応でき、汎用性が高く、また、必要な時に簡易に設置及び取り外しができ、しかも、天井パイプ15を大きな座屈強度で地面13から支持できる。
【0071】
また、本実施形態に係る補強用支柱を用いたハウス構造によれば、屋根荷重を支持する天井パイプ15を補強用支柱100により高強度に補強でき、急な降雪に迅速に対応して、パイプハウスなどの簡易的な建物の積雪による倒壊を未然に防止できる。