(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、金属の射出時(充填時)に可動型および固定型が互いに離間する方向に加わる力(型開き力)により、可動型および固定型が互いに離間されて、可動型および固定型の当接面(分割面)に金属が侵入することによって、可動型および固定型の当接面の間にバリが発生しやすいという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、バリの発生を抑制することが可能なダイカスト用金型およびダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面によるダイカスト用金型は、固定金型と、型締装置の型締め動作により固定金型に対して第1方向に移動される移動金型と、を備え、固定金型は、製品形状となる固定側製品形状面と、固定側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる固定側合わせ面と、一端が型締め時に移動金型に当接する固定金型の当接面に直接接続され、他端が固定側合わせ面に連通される固定側接続面とを有し、移動金型は、製品形状となる移動側製品形状面と、移動側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる移動側合わせ面と、一端が型締め時に固定金型に当接する移動金型の当接面に直接接続され、他端が移動側合わせ面に連通されるとともに、型締め時に固定側接続面に対して第1方向と直交する第2方向に対向配置される移動側接続面とを有し、固定側接続面と移動側接続面との第2方向の間隔は、固定側合わせ面と移動側合わせ面との第2方向の間隔よりも広
く、固定側合わせ面と移動側合わせ面とは、型締め時に第2方向において、空気を通すことが可能で、かつ、液体状の金属および半凝固金属が侵入し難い間隔を隔てて、互いに近接して対向配置されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるダイカスト用金型では、上記のように、固定金型に、製品形状となる固定側製品形状面と、固定側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる固定側合わせ面と、を設け、移動金型に、製品形状となる移動側製品形状面と、移動側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる移動側合わせ面と、を設ける。これにより、固定側合わせ面および移動側合わせ面が、型開き力が作用する第1方向とは直交する方向に向かい合うので、型開き力により互いの合わせ面(固定側合わせ面および移動側合わせ面)が離間するのを抑制することができる。その結果、合わせ面の間の間隔を略一定に保つことができるので、バリの発生を抑制することができる。
【0009】
また、合わせ面を、移動金型の移動方向と同じ方向(第1方向)に延びるように構成することにより、合わせ面同士を第1方向に直交する方向に対向させた状態で、各製品形状面(固定側製品形状面および移動側製品形状面)と、各合わせ面とにより、金型内に略密閉された空間を形成することができる。その結果、合わせ面同士が第1方向に直交する方向に対向した状態において、半凝固金属を射出した場合、その後、型締め(プレス)を行う、という成形方法に金型を用いることができる。このような場合、半凝固金属の射出後において、ダイカスト品に型締め圧力を加えることができるので、ダイカスト品に鋳巣が発生するのを抑制することができるとともに、バリの発生を抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面によるダイカスト用金型において、好ましくは、
固定金型の当接面および移動金型の当接面は、共に、第2方向に延びるように構成され、固定金型は
、固定側合わせ面の一端から第2方向に連続して延びる固定側離間
面を有し、移動金型は
、移動側合わせ面の一端から第2方向に連続して延びる移動側離間
面を有し、型締め時の固定側離間面と移動側離間面との間隔は、型締め時の固定
金型の当接面と移動
金型の当接面との間隔よりも広い。このように構成すれば、合わせ面を介して、固定側離間面と移動側離間面との間に金属が侵入したとしても、固定
金型の当接面と移動
金型の当接面との当接時に、固定側離間面と移動側離間面とを互いに離間させることができるので、固定側離間面と移動側離間面との間に金属を溜めて置くことにより、固定
金型の当接面と移動
金型の当接面との間に金属が到達するのを抑制することができる。その結果、合わせ面を介して侵入した金属により、
固定金型の当接面
と移動金型の当接面との当接が阻害されるのを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面によるダイカスト用金型において、好ましくは、
固定側接続面は、固定側離間面の一端と固定
金型の当接面の一端
とを連続的に結ぶ第1方向に延び
ており、
移動側接続面は、移動側離間面の一端と移動
金型の当接面の一端
とを連続的に結ぶ第1方向に延び
ており、固定側接続面と移動側接続面との第2方向の間隔は、
固定側合わせ面と移動側合わせ面との第2方向の間隔よりも
広い。このように構成すれば、固定側合わせ面と移動側合わせ面とが互いに近接して配置されるので、固定側合わせ面と移動側合わせ面との間に金属が侵入し難くなり、バリの発生を一層抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面によるダイカスト用金型において、好ましくは、固定金型は、固定側製品形状面と固定側合わせ面とにより形成され、移動金型側に突出した凸部を有し、移動金型は、移動側製品形状面と移動側合わせ面とにより形成され、固定金型の凸部が嵌合可能な凹部を有している。このように構成すれば、移動金型の凹部と、固定金型の凸部とを嵌合させることにより、移動金型と固定金型との間に密閉空間を容易に形成することができる。
【0014】
上記第1の局面によるダイカスト用金型において、好ましくは、移動側合わせ面の移動側離間面側の端部に面取部が形成されている。このように構成すれば、面取部により、固定金型に対する移動金型の移動をガイドすることができる。
【0015】
この発明の第1の局面によるダイカスト用金型において、好ましくは、移動側製品形状面は、固定金型側に向けて広がる抜き勾配を有し、抜き勾配は、固定
金型の当接面と移動
金型の当接面の当接時に、固定側製品形状面の近傍まで延びている。このように構成すれば、移動金型からダイカスト品を容易に離間する(取り出す)ことができる。
【0016】
この発明の第2の局面によるダイカストマシンは、金型と、金型内に金属材料を射出する射出装置と、金型の型締めを行う型締装置と、を備え、金型は、固定金型と、型締装置の型締め動作により固定金型に対して第1方向に移動される移動金型と、により構成され、固定金型は、製品形状となる固定側製品形状面と、固定側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる固定側合わせ面と、一端が型締め時に移動金型に当接する固定金型の当接面に直接接続され、他端が固定側合わせ面に連通される固定側接続面とを有し、移動金型は、製品形状となる移動側製品形状面と、移動側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる移動側合わせ面と、一端が型締め時に固定金型に当接する移動金型の当接面に直接接続され、他端が移動側合わせ面に連通されるとともに、型締め時に固定側接続面に対して第1方向と直交する第2方向に対向配置される移動側接続面とを有し、固定側接続面と移動側接続面との第2方向の間隔は、固定側合わせ面と移動側合わせ面との第2方向の間隔よりも広
く、固定側合わせ面と移動側合わせ面とは、型締め時に第2方向において、空気を通すことが可能で、かつ、液体状の金属および半凝固金属が侵入し難い間隔を隔てて、互いに近接して対向配置されている。
【0017】
上記第2の局面によるダイカストマシンにおいて、上記のように、固定金型に、製品形状となる固定側製品形状面と、固定側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる固定側合わせ面と、を設け、移動金型に、製品形状となる移動側製品形状面と、移動側製品形状面の外周端部に連続して第1方向に延びる移動側合わせ面と、を設ける。これにより、固定側合わせ面および移動側合わせ面が、型開き力が作用する第1方向とは直交する方向に向かい合うので、型開き力により互いの合わせ面(固定側合わせ面および移動側合わせ面)が離間するのを抑制することができる。その結果、合わせ面の間の間隔を略一定に保つことができるので、バリの発生を抑制することができる。
【0018】
上記第2の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、射出装置は、金型内に半凝固金属を射出し、型締装置は
、第2方向に所定間隔を空けて対向配置された固定側合わせ面と移動側合わせ面を第1方向に相対的に移動させる型締め動作を行い、固定側製品形状面と移動側製品形状面によって製品形状面を形成するように構成されている。このように構成すれば、合わせ面同士を第1方向に直交する方向に対向させた状態で、各製品形状面(固定側製品形状面および移動側製品形状面)と、各合わせ面とにより、金型内に略密閉された空間を形成することができる。その結果、合わせ面同士が第1方向に直交する方向に対向した状態において、半凝固金属を射出し、その後、型締め(プレス)を行う、という成形方法に金型を用いることができる。このような場合、半凝固金属の射出後において、ダイカスト品に型締め圧力を加えることができるので、ダイカスト品に鋳巣が発生するのを抑制することができるとともに、バリの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、バリの発生を抑制することが可能なダイカスト用金型およびダイカストマシンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、
図1〜
図6を参照して、一実施形態による金型101を備えるダイカストマシン100の構成について説明する。金型101は、
図1に示すように、固定金型1および移動金型2を備えている。
【0023】
以下の説明において、移動金型2の移動方向をA方向とし、移動金型2の移動方向に直交する方向をB方向とする。なお、B方向は、A方向に直交する平面内の全ての方向を含むが、各図ではB方向のうちの1つの方向を代表して示している。また、A方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例である。また、B方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。
【0024】
(ダイカストマシンの構成)
図1に示すダイカストマシン100は、金型101内(製品形状となるキャビティ(空洞部分))に固相および液相の金属が共存している半凝固金属を射出し、半凝固金属を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品M(
図2参照)を成形するように構成されている。成形される金属材料は、たとえば、アルミニウム合金や、亜鉛合金、マグネシウム合金などである。なお、以下の説明では、一例として、
図2に示すような円錐台形状のダイカスト品Mが得られる金型101について説明する。
【0025】
ダイカストマシン100は、
図1に示すように、型締装置102と、射出装置103と、制御ユニット104を備えている。
【0026】
型締装置102は、固定ダイプレート102aと、移動ダイプレート102bと、タイバー102cと、型締駆動部102dを含んでいる。固定ダイプレート102aは、固定金型1を保持するように構成されている。移動ダイプレート102bは、移動金型2を保持するように構成されている。この際、固定金型1および移動金型2は、A方向において、互いの後述する製品形状面11および製品形状面21(
図2参照)が対向するように配置されている。なお、製品形状面11は、特許請求の範囲の「固定側製品形状面」の一例である。また、製品形状面21は、特許請求の範囲の「移動側製品形状面」の一例である。
【0027】
タイバー102cは、A方向に延びる複数の柱状の部材である。また、タイバー102cは、固定ダイプレート102aおよび移動ダイプレート102bに架け渡されており、移動ダイプレート102bに対して摺動可能に嵌合されている。タイバー102cは、移動ダイプレート102bを保持しながらA方向への移動をガイドする機能を有している。
【0028】
型締駆動部102dは、トグル機構を有しており、モータ102eにより駆動されることによって、移動ダイプレート102bおよび移動金型2を、タイバー102cに沿ってA方向に往復移動させるように構成されている。これにより、型締装置102は、金型101(移動金型2および固定金型1)を型締め可能に構成されている。
【0029】
射出装置103は、固定金型1の背面側(A1方向側)から金型101内に半凝固金属を射出するように構成されている。また、射出装置103は、スリーブ103aと、プランジャ駆動部103bと、プランジャ103cを有している。プランジャ103cは、スリーブ103a内にA方向に進退可能に配置されている。スリーブ103aは、供給口103dを有しており、供給装置(図示せず)により、供給口103dから半凝固金属が供給される(注ぎ込まれる)ように構成されている。また、スリーブ103aの先端は、固定金型1の経路部Sに接続されている。プランジャ駆動部103bは、油圧シリンダ(図示せず)を有しており、油圧により、プランジャ103cをA方向に往復移動させるように構成されている。これにより、プランジャ103c(プランジャチップ)は、金型101内に半凝固金属を圧入(射出)するように構成されている。
【0030】
制御ユニット104は、型締装置102および射出装置103を含むダイカストマシン100の各部の駆動を制御するように構成されている。なお、制御ユニット104による具体的な制御については、以下の金型101の説明の後に述べる。
【0031】
(金型の構成)
図2に示すように、金型101は、固定金型1と、移動金型2を備えている。
【0032】
固定金型1は、固定ダイプレート102a(
図1参照)に対して固定的に取り付けられている。また、固定金型1は、型締装置102(
図1参照)により移動されることはなく、所定位置に固定的に配置される。
【0033】
固定金型1は、製品形状面11と、当接面12と、合わせ面13と、離間面14と、接続面15を含んでいる。なお
、合わせ面13は、特許請求の範囲の「固定側合わせ面」の一例である。また、離間面14は、特許請求の範囲の「固定側離間面」の一例である。また、接続面15は、特許請求の範囲の「固定側接続面」の一例である。
【0034】
移動金型2は、移動ダイプレート102b(
図1参照)に対して固定的に取り付けられている。また、移動金型2は、型締装置102(
図1参照)によりA方向に移動される。
【0035】
移動金型2は、製品形状面21と、当接面22と、合わせ面23と、離間面24と、接続面25を含んでいる。なお
、合わせ面23は、特許請求の範囲の「移動側合わせ面」の一例である。また、離間面24は、特許請求の範囲の「移動側離間面」の一例である。また、接続面25は、特許請求の範囲の「移動側接続面」の一例である。
【0036】
製品形状面11および製品形状面21は、それぞれ、ダイカスト品Mの形状を形成するための面である。つまり、製品形状面11および製品形状面21は、それぞれ、金型101のキャビティを形成する面である。
【0037】
当接面12および当接面22は、それぞれ、B方向に延びている。また、当接面12および当接面22は、型締装置102による型締めにより互いに当接する面である。つまり、当接面12および当接面22は、移動金型2が最も固定金型1側(A1方向側)に移動した位置において、互いに当接するように構成されている。
【0038】
合わせ面13および合わせ面23は、それぞれ、A方向(移動金型2の移動方向)に延びている。固定金型1の合わせ面13は、固定金型1の製品形状面11の外周端部11aから連続して設けられている。移動金型2の合わせ面23は、移動金型2の製品形状面21の外周端部21aから連続して設けられている。また、合わせ面13と合わせ面23は、型締装置102による型締め時(
図6(c)参照)にA方向と直交する方向において、
図4に示すように離間状態(間隔W10)で互いに対向するとともに、互いに近接して配置されている。つまり、合わせ面13と合わせ面23は、型締め時にB方向で互いに近接して対向配置されている。
【0039】
移動金型2は、
図2に示すように、製品形状面21と合わせ面23により、固定金型1側とは反対側(A2方向側)に窪む凹部26を有している。固定金型1は、製品形状面11と合わせ面13により、移動金型2側(A2方向側)に突出し、移動金型2の凹部26に嵌合可能な凸部16を有している。そして、
図3に示すように、固定金型1と移動金型2は、互いに嵌合することにより、製品形状面11および製品形状面21と、合わせ面13および合わせ面23によって、略密閉された空間を金型101内に形成するように構成されている。なお、固定金型1と移動金型2が互いに嵌合する状態とは、合わせ面13と合わせ面23が、B方向(A方向に直交する方向)において、少なくとも一部が互いに対向し合う状態である。つまり、側面視において(B方向から見て)、合わせ面13(の少なくとも一部)と合わせ面23(の少なくとも一部)が、オーバーラップしている状態である。
【0040】
図3に示すように、固定金型1の離間面14は、合わせ面13の一端からB方向に連続して延びるように設けられている。移動金型2の離間面24は、合わせ面23の一端からB方向に連続して延びるように設けられている。また、離間面14および離間面24は、それぞれ、B方向で、かつ、合わせ面13および合わせ面23から離れる方向に延びている。
【0041】
A方向において、離間面14と離間面24の間の間隔W1は、当接面12と当接面22の間隔W2よりも広い。したがって、当接面12と当接面22が当接している状態(型締めが完了した状態)(W2=0)でも、離間面14と離間面24は、互いに離間した状態を保っている(W1≠0)。
【0042】
接続面15および接続面25は、それぞれ、A方向に延びている。また、接続面15は、離間面14の一端と、当接面12の一端を連続的に結んでいる(接続している)。また、接続面25は、離間面24の一端と、当接面22の一端を連続的に結んでいる(接続している)。
【0043】
図4に示すように、B方向において、合わせ面13と合わせ面23の間の間隔W10は、接続面15と接続面25の間隔W20よりも狭い。具体的には、合わせ面13と合わせ面23の間の間隔W10は、空気は通すことが可能であり、液体状の金属および半凝固金属を通さない程度の微小間隔である。
【0044】
移動金型2において、
図3に示すように、合わせ面23の製品形状面21側とは反対側(A2方向側)の端部には、面取部2aが形成されている。つまり、合わせ面23と離間面24の接続部分には、面取部2aが形成されている。また、離間面24と接続面25の接続部分には、面取部2bが形成されている。また、固定金型1において、当接面12と接続面15の接続部分には、面取部1aが形成されている。なお、面取部1a、2aおよび2bは、共に、C面形状である。また、面取部1a、2aおよび2bは、面取部1a、2aおよび2bがそれぞれ形成されている各面の接続部分の全周にわたって設けられている。
【0045】
図3に示すように、製品形状面21には、固定金型1(A1方向)に向けて広がり、当接面12と当接面22が互いに当接している状態(型締めが完了した状態)において、合わせ面23の近傍まで延びる抜き勾配2cが設けられている。抜き勾配2cは、製品形状面21のB方向の端部の全域に設けられている。
【0046】
(制御ユニットによる成形時の制御)
次に、
図5および
図6を参照して、制御ユニット104(ダイカストマシン100)(
図1参照)による成形時(型締め時および射出時)の制御について説明する。
【0047】
はじめに、
図5を参照して、射出を行うために、移動金型2の固定金型1に対する位置を決めるための制御について説明する。まず、
図5(a)に示すように、制御ユニット104(
図1参照)による制御の下、型締装置102により、移動金型2を移動ダイプレート102bとともに固定金型1側(A1方向)に移動させる。
【0048】
そして、
図5(b)に示すように、制御ユニット104による制御の下、移動金型2の当接面22と、固定金型1の当接面12を当接させる。つまり、移動金型2が固定金型1に最も近接した位置に配置される。この際、制御ユニット104は、移動金型2の位置を、基準位置(当接位置)に設定する。
【0049】
そして、
図5(c)に示すように、制御ユニット104による制御の下、移動ダイプレート102bを移動金型2とともに固定金型1側(A1方向)に移動させて、移動金型2の当接面22と、固定金型1の当接面12を間隔αだけ離間させる。この間隔αだけ離間した状態(
図2に示す固定金型1の凸部16と、移動金型2の凹部26が嵌合している状態)では、固定金型1の合わせ面13と、移動金型2の合わせ面23がB方向に対向している。なお、ダイカストマシン100は、エンコーダなどの距離測定部(図示せず)を有しており、制御ユニット104は、距離測定部による基準位置(当接位置)からの距離の測定結果に基づいて、当接面22と当接面12を間隔αだけ離間させる。
【0050】
また、当接面22と当接面12が間隔αだけ離間した状態では、固定金型1の製品形状面11と合わせ面13により形成される凸状部分が、移動金型2の製品形状面21と合わせ面23により形成される凹状部分に嵌合している。したがって、この状態では、金属を供給する経路部Sを除いて、金型101内に略密閉された空間が形成されている。
【0051】
次に、
図6を参照して、射出のための制御について説明する。まず、
図6(a)に示すように、制御ユニット104(
図1参照)による制御の下、供給装置(図示せず)により、供給口103dからスリーブ103a内に半凝固金属が供給される。
【0052】
そして、
図6(b)に示すように、制御ユニット104による制御の下、射出装置103より、プランジャ103cによって、金型101内に半凝固金属が射出される。
【0053】
そして、
図6(c)に示すように、制御ユニット104による制御の下、型締装置102により、移動金型2を移動ダイプレート102bとともに固定金型1側(A1方向)に移動させて、当接面22と、当接面12を当接させる。このようにして、ダイカストマシン100(
図1参照)は、金型101内に射出された半凝固金属を圧縮することにより、ダイカスト品M(
図2参照)に鋳巣が発生するのを抑制することが可能である。
【0054】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0055】
第1実施形態では、上記のように、固定金型1に、製品形状となる製品形状面11と、製品形状面11の外周端部11aに連続してA方向に延びる合わせ面13と、を設け、移動金型2に、製品形状となる製品形状面21と、製品形状面21の外周端部21aに連続してA方向に延びる合わせ面23と、を設ける。これにより、合わせ面13および合わせ面23が、型開き力が作用するA方向とは直交する方向に向かい合うので、型開き力により互いの合わせ面(合わせ面13および合わせ面23)が離間するのを抑制することができる。その結果、合わせ面13と合わせ面23との間の間隔を略一定に保つことができるので、バリの発生を抑制することができる。
【0056】
また、合わせ面13および合わせ面23を、A方向に延びるように構成することにより、合わせ面(合わせ面13および合わせ面23)同士をA方向に直交する方向に対向させた状態で、製品形状面11および製品形状面21と、合わせ面13および合わせ面23とにより、金型101内に略密閉された空間を形成することができる。その結果、合わせ面(合わせ面13および合わせ面23)同士がA方向に直交するB方向に対向した状態(合わせ面13と合わせ面23がB方向にオーバーラップした状態、つまり、固定金型1の凸部16と、移動金型2の凹部26が嵌合している状態)において、半凝固金属を射出し、その後、型締め(プレス)を行う、という成形方法に金型101を用いることができる。このような場合、半凝固金属の射出後において、ダイカスト品Mに型締め圧力を加えることができるので、ダイカスト品Mに鋳巣が発生するのを抑制することができるとともに、バリの発生を抑制することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、合わせ面13と合わせ面23を、型締め時にA方向と直交するB方向で互いに近接して対向配置する。これにより、合わせ面13と合わせ面23とが近接しているので、金属が合わせ面13と合わせ面23との間に侵入するのを抑制することができる。その結果、バリの発生をより抑制することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、上記のように、固定金型1に、型締装置102の型締め動作により移動金型2に当接するB方向に延びる当接面12と、合わせ面13の一端からB方向に連続して延びる離間面14と、を設け、移動金型2に、型締装置102の型締め動作により固定金型1の当接面12と当接するB方向に延びる当接面22と、合わせ面23の一端からB方向に連続して延びる離間面24と、を設け、型締め時の離間面14と離間面24との間隔W1を、型締め時の当接面12と当接面22との間隔W2よりも広くする。これにより、合わせ面13および合わせ面23を介して、離間面14と離間面24との間に金属が侵入したとしても、当接面12と当接面22との当接時に、離間面14と離間面24とを互いに離間させることができるので、離間面14と離間面24との間に金属を溜めて置くことにより、当接面12と当接面22との間に金属が到達するのを抑制することができる。その結果、合わせ面13および合わせ面23を介して侵入した金属により、当接面12と当接面22との当接が阻害されるのを抑制することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、固定金型1に、離間面14の一端と当接面12の一端を連続的に結ぶA方向に延びる接続面15を設け、移動金型2に、離間面24の一端と当接面22の一端を連続的に結ぶA方向に延びる接続面25を設け、合わせ面13と合わせ面23とのB方向の間隔W20を、接続面15と接続面25とのB方向の間隔W10よりも狭くする。これにより、合わせ面13と合わせ面23とが互いに近接して配置されるので、合わせ面13と合わせ面23との間に金属が侵入し難くなり、バリの発生を一層抑制することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、固定金型1に、製品形状面11と合わせ面13とにより形成され、移動金型2側に突出した凸部16を設け、移動金型2に、製品形状面21と合わせ面23とにより形成され、固定金型1の凸部16が嵌合可能な凹部26を設ける。これにより、移動金型2の凹部26と、固定金型1の凸部16とを嵌合させることにより、移動金型2と固定金型1との間に密閉空間を容易に形成することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、合わせ面23の離間面24側の端部に面取部2aを形成する。これにより、面取部2aにより、固定金型1に対する移動金型2の移動をガイドすることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、製品形状面21を、固定金型1側に向けて広がる抜き勾配2cを設け、抜き勾配2cを、当接面12と当接面22の当接時に、製品形状面11の近傍まで延びるように構成する。これにより、移動金型2からダイカスト品Mを容易に離間する(取り出す)ことができる。
【0063】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0064】
たとえば、上記実施形態では、ダイカストマシンにより、半凝固金属を金型内に射出した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ダイカストマシンにより、液体状の金属を金型内に射出してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、移動金型の合わせ面の端部に面取部を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動金型の合わせ面の端部に面取部を形成しなくてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、固定金型および移動金型が、それぞれ、離間面および接触面を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定金型および移動金型が、共に、離間面および接触面を有していなくてもよい。つまり、固定金型および移動金型の合わせ面が直接当接面に接続されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、移動金型を横方向(水平方向)に移動可能なようにダイカストマシンを構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動金型を上下方向に移動可能なようにダイカストマシンを構成してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、当接面を第1方向に直交する方向(第2方向)に延びるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、当接面を第1方向に直交する方向ではなく、第1方向に対して傾斜する方向に延びるように構成してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、移動金型の側製品形状面と合わせ面により、移動金型を凹形状に形成し、固定金型の製品形状面と合わせ面により、固定金型を凸形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動金型の側製品形状面と合わせ面により、移動金型を凸形状に形成し、固定金型の製品形状面と合わせ面により、固定金型を凹形状に形成してもよい。