特許第6352387号(P6352387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6352387新規化合物、該化合物を含有する光酸発生剤及び該光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352387
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】新規化合物、該化合物を含有する光酸発生剤及び該光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20180625BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180625BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C07D417/14CSP
   G03F7/004 503Z
   C09K3/00 K
【請求項の数】7
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-504092(P2016-504092)
(86)(22)【出願日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】JP2015054182
(87)【国際公開番号】WO2015125745
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2017年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-30102(P2014-30102)
(32)【優先日】2014年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】河合 壯
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 琢也
(72)【発明者】
【氏名】土江 健太
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/093890(WO,A2)
【文献】 特開2010−064968(JP,A)
【文献】 特開2005−250463(JP,A)
【文献】 特開平09−241254(JP,A)
【文献】 特開平10−213899(JP,A)
【文献】 特開平09−118663(JP,A)
【文献】 特開昭50−151997(JP,A)
【文献】 NAKAGAWA, H. et al.,European Journal of Organic Chemistry,2012年,pp. 4493-4500
【文献】 NAKASHIMA, H. et al.,Polymer Journal,1998年,Vol. 30, No. 12,pp. 985-989
【文献】 MEIJERE, A. et al.,Chemistry: A European Journal,2007年,Vol. 13,pp. 2503-2516
【文献】 ZHANG, C. et al.,Advanced Materials,2010年,Vol. 22,pp. 633-637
【文献】 NAKASHIMA, H. et al.,Macromolecular Chemistry and Physics,1999年,Vol. 200, No. 4,pp. 683-692
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
G03F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(
【化1】
(式()中、Rアルキルスルホニル基、アルコキシスルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。
及びRはそれぞれ独立に芳香族残基を表す。
は水素原子又は脂肪族炭化水素残基を表す。
はCR又は窒素原子を表す。
は水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表
はCR又は窒素原子を表す。
は水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表
及びYはそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はCRを表す。
及びRは水素原子又は脂肪族炭化水素残基を表す。
〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。
は硫黄原子を表す。
で表される化合物。
【請求項2】
が炭素数1乃至4のアルキルスルホニル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びXが窒素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
及びYがそれぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化合物を含有する光酸発生剤。
【請求項6】
請求項5に記載の光酸発生剤と、光酸発生剤により重合可能な化合物とを含有する感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、該化合物を含有する光酸発生剤及び該光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、省エネルギー、高生産効率等の観点から印刷インキ、塗料、コーティング、各種レジストインキ等の分野において実用化されている。これら感光性樹脂組成物の多くはアクリル酸エステル化合物等の不飽和二重結合を有する化合物の光ラジカル重合反応を利用したものであるが、その一方で、エポキシ化合物(樹脂)等に光酸発生剤を含有させた感光性樹脂組成物を用いた光カチオン重合反応についても盛んに研究がなされている。エポキシ化合物等のカチオン重合性化合物を、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することにより光カチオン重合する方法は、アクリル酸エステル化合物等を活性エネルギー線の照射により光ラジカル重合する方法に比べ、硬化収縮が小さいことや硬化の際に酸素の影響を受けないこと等、光ラジカル重合で硬化する方法と比較して有利である種々の特徴を有している。
【0003】
この光カチオン重合可能な感光性樹脂組成物が含有する光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩(特許文献1参照)、ナフタレン骨格を有するフェナシルスルホニウム塩(特許文献2)等のイオン系光酸発生剤が知られている。しかしながら、イオン系光酸発生剤は、感光性樹脂組成物に用いられる疎水性のカチオン重合性化合物や溶剤に対する相溶性(溶解性)が不足しがちなため、この問題を解決するために非イオン系光酸発生剤についても検討がなされている。非イオン系光酸発生剤を用いることにより、前記の問題が改善されるのみならず、非イオン系光酸発生剤は、一般にイオン系光酸発生剤よりも長波長領域に吸収を有することから、中圧・高圧水銀灯等のi線やg線を用いて感光性樹脂組成物を硬化する際に感度に優れるとの効果が期待される(特許文献3参照)。
しかしながら、従来公知の非イオン系光酸発生剤の酸発生量子収率は0.1〜0.3程度であり、高い酸発生量子収率を有する、高感度の非イオン系光酸発生剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50−151997号公報
【特許文献2】特開平09−118663号公報
【特許文献3】特開平10−213899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
疎水性のカチオン重合性化合物や溶剤に対する高い溶解性を有すると共に、i線やg線に対する高い酸発生量子収率を有する高感度の非イオン系光酸発生剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、特定の構造を有する新規化合物を含有する光酸発生剤を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
(1)下記式(1)
【0007】
【化1】
【0008】
(式(1)中、環Arはベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾリジウム環、ベンゾイミダゾリジウム環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、インドール環またはピロール環を表す。
は脂肪族炭化水素基、アルキルスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はアリールカルボニル基を表す。
及びRはそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アシル基又はトリメチルシリル基を表す。
は水素原子又は脂肪族炭化水素残基を表す。
はCR又は窒素原子を表す。
は水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表し、RとRとが連結して環を形成してもよい。
はCR又は窒素原子を表す。
は水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表し、RとRとが連結して環を形成してもよい。
及びYはそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はCRを表す。
及びRは水素原子又は脂肪族炭化水素残基を表す。)
で表される化合物、
(2)下記式(2)
【0009】
【化2】
【0010】
(式(2)中、R〜R、X、X、Y及びYは、前項(1)に記載の式(1)におけるR〜R、X、X、Y及びYと同じ意味を表す。R〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。Yは硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表す。)
で表される前項(1)に記載の化合物、
(3)Rが炭素数1乃至4のアルキルスルホニル基である前項(2)に記載の化合物、
(4)X及びXが窒素原子である前項(2)に記載の化合物、
(5)Y〜Yがそれぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子である前項(2)に記載の化合物、
(6)下記式(3)
【0011】
【化3】
【0012】
(式(3)中、R〜R、X、X、Y及びYは、前項(1)に記載の式(1)におけるR〜R、X、X、Y及びYと同じ意味を表す。R13〜R18はそれぞれ独立に、水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。)
で表される前項(1)に記載の化合物、
(7)Rが炭素数1乃至4のアルキルスルホニル基である前項(6)に記載の化合物、
(8)XがCRであって、RとRとが連結してベンゼン環を形成しており、かつXがCRであって、RとRとが連結してベンゼン環を形成している、前項(6)に記載の化合物、
(9)Y及びYが硫黄原子又は酸素原子である前項(6)に記載の化合物、
(10)前項(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の化合物を含有する光酸発生剤、
(11)前項(10)に記載の光酸発生剤と光酸発生剤により重合可能な化合物とを含有する感光性樹脂組成物、
(12)前項(11)に記載の感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の式(1)で表される特定の構造を有する新規化合物を用いることにより、疎水性のカチオン重合性化合物や溶剤に対する高い溶解性を有すると共に、活性エネルギー線に対する高い酸発生量子収率を有する高感度の非イオン系光酸発生剤を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、プロピレンオキサイド単独のサンプル、及びプロピレンオキサイドにメタンスルホン酸を添加したサンプルのH−NMRスペクトルである。
図2図2は、実施例1で得られた式BT−OMsで表される化合物と、プロピレンオキシドとを重クロロホルムに溶解したサンプル、及び、このサンプルに365nmの波長を有する紫外線を照射したサンプルのそれぞれのH−NMRスペクトルである。
図3図3は、式BT−OMsで表される化合物を重クロロホルムに溶解したサンプルのH−NMRスペクトルである。
図4図4は、プロピレンオキシドを重クロロホルムに溶解したサンプルのH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は下記式(1)で表される構造を有する。式(1)で表される化合物の特徴は、該化合物がi線やg線等の活性エネルギー線の照射を受けた際に、式中ROで表される置換基から誘発される酸の脱離反応が起こることにあり、該脱離した酸はカチオン重合性化合物に対する重合開始剤として機能し得るものである。
【0016】
【化4】
【0017】
式(1)中、環Arはベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾリジウム環、ベンゾイミダゾリジウム環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、インドール環またはピロール環を表す。
環Arは置換基を有していてもよく、該有していてもよい置換基の具体例としては、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基が挙げられる。尚、ここで言う「置換基を有する環Ar」とは、環Ar上の水素原子が前記の置換基で置換された環構造を意味する。置換基の数は複数でもよく、複数の置換基が互いに異なるものでも構わない。
また、環Arが表す複素環は、環状ケトンまたは環状チオケトンを形成してもよい。
【0018】
環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基とは、芳香環又は芳香環を含む縮合環から水素原子1個を除いた基を意味し、該芳香族残基は置換基を有していてもよい。芳香環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、ペリレン環、テリレン環、インデン環、アズレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、ピラゾリジン環、チアゾリジン環、オキサゾリジン環、ピラン環、クロメン環、ピロール環、ピロリジン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、トリアジン環、ジアゾール環、インドリン環、チオフェン環、チエノチオフェン環、フラン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジン環、チアゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ナフトチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、キノリン環、キナゾリン環、フルオレン環及びカルバゾール環等が挙げられ、炭素数4〜20の芳香環又は芳香環を含む縮合環から水素原子1個を除いた基であることが好ましい。
【0019】
環Arが有していてもよい置換基としての脂肪族炭化水素残基としては、飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、該脂肪族炭化水素残基は置換基を有していてもよい。脂肪族炭化水素残基の有する炭素数は1〜36であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、1〜8であることが更に好ましい。これら脂肪族炭化水素残基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル基、イソへキセニル基、シクロへキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、ペンチニル基、へキシニル基、イソへキシニル基、シクロへキシニル基等が挙げられる。また、環状のアルキル基としては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキル基などが挙げられる。
【0020】
環Arが有していてもよい置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等の原子が挙げられる。
環Arが有していてもよい置換基としてのアミド基としては、アミド基、アセトアミド基及びアルキルアミド基等であり、その具体例としてはアミド基、アセトアミド基、N−メチルアミド基、N−エチルアミド基、N−(n−プロピル)アミド基、N−(n−ブチル)アミド基、N−イソブチルアミド基、N−(sec−ブチルアミド)基、N−(t−ブチル)アミド基、N,N−ジメチルアミド基、N,N−ジエチルアミド基、N,N−ジ(n−プロピル)アミド基、N,N−ジ(n−ブチル)アミド基、N,N−ジイソブチルアミド基、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−(n−プロピル)アセトアミド基、N−(n−ブチル)アセトアミド基、N−イソブチルアセトアミド基、N−(sec−ブチル)アセトアミド基、N−(t−ブチル)アセトアミド基、N,N−ジメチルアセトアミド基、N,N−ジエチルアセトアミド基、N,N−ジ(n−プロピル)アセトアミド基、N,N−ジ(n−ブチル)アセトアミド基、N,N−ジイソブチルアセトアミド基、フェニルアミド基、ナフチルアミド基、フェニルアセトアミド基及びナフチルアセトアミド基等が挙げられる。
【0021】
環Arが有していてもよい置換基としてのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基等が挙げられる。
環Arが有していてもよい置換基としてのアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
環Arが有していてもよい置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。その具体例としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基である。
【0022】
環Arが有していてもよい置換基としてのアリールカルボニル基としては、例えばベンゾフェノン、ナフトフェノン等のアリール基とカルボニルが連結した基を表す。
環Arが有していてもよい置換基としてのアシル基としては、例えば炭素数1〜10のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のアルキルカルボニル基で、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
また、環Ar上の複数の置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。該形成してもよい環としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基の項に記載した芳香環の具体例と同じものが挙げられる。
環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基及び脂肪族炭化水素残基が有していてもよい置換基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0023】
式(1)における環Arとしては、硫黄原子を含む複素環であることが好ましく、チオフェン環であることがより好ましい。また、環Ar上の置換基同士が結合して形成する環としてはベンゼン環が好ましい。
【0024】
式(1)中、Rは脂肪族炭化水素基、アルキルスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はアリールカルボニル基を表す。
が表す脂肪族炭化水素残基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての脂肪族炭化水素残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)のRが表すアルキルスルホニル基及びアルキルカルボニル基におけるアルキル基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての脂肪族炭化水素残基の項で述べた飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基と同じものが挙げられるが、フッ化アルキル基、ヨウ化アルキル基、塩化アルキル基及びヨウ化アルキル基等のハロゲン化アルキル基もアルキルスルホニル基及びアルキルカルボニル基におけるアルキル基の範疇に含まれる。
式(1)のRが表すアルコキシスルホニル基及びアルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としてのアルコキシ基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)のRが表すアリールスルホニル基及びアリールカルボニル基におけるアリール基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としてのアリールカルボニル基の項で述べたアリール基と同じものが挙げられる。
式(1)のRとしては、アルキルスルホニル基であることが好ましく、炭素数1乃至8のアルキルスルホニル基であることがより好ましく、炭素数1乃至4のアルキルスルホニル基であることが更に好ましい。
【0025】
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アシル基又はトリメチルシリル基を表す。
式(1)のR及びRが表す芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)におけるR及びRとしては、それぞれ独立に芳香族残基であることが好ましく、ベンゼン環残基(フェニル基)であることがより好ましい。なお、後述するが、X及びXがそれぞれCR及びCRである場合には、RとRとが連結して環を形成し、かつRとRとが連結して環を形成することが好ましく、両者がベンゼン環であることがより好ましい。
【0026】
式(1)中、Rは水素原子又は脂肪族炭化水素残基を表す。
式(1)のRが表す脂肪族炭化水素残基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての脂肪族炭化水素残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)におけるRとしては、水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基であることが好ましい。
【0027】
式(1)中、XはCR又は窒素原子を表し、Rは水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。また、XがCRの場合、RとRとが連結して環を形成してもよく、該形成される環は置換基を有していてもよい。
が表す芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
がCRの場合、RとRによって形成される環としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基の項に記載した芳香環の具体例と同じものが挙げられ、また、該形成される環が有していてもよい置換基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
【0028】
式(1)中、XはCR又は窒素原子を表し、Rは水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。また、XがCRの場合、RとRとが連結して環を形成してもよく、該形成される環は置換基を有していてもよい。
が表す芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
【0029】
がCRの場合、RとRによって形成される環としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての芳香族残基の項に記載した芳香環の具体例と同じものが挙げられ、また、該形成される環が有していてもよい置換基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)におけるX及びXとしては、両者が窒素原子であることが好ましい。また、X及びXがCR及びCRである場合には、RとRとが連結して環を形成し、かつRとRとが連結して環を形成することが好ましく、該形成する環の両者がベンゼン環であることがより好ましい。
【0030】
式(1)中、Y及びYはそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子又はCRを表し、R及びRは水素原子又は脂肪族炭化水素残基を表す。
及びRが表す脂肪族炭化水素残基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基としての脂肪族炭化水素残基の項で述べたものと同じものが挙げられる。
式(1)におけるY及びYとしては、それぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、両者が硫黄原子であることがより好ましい。
【0031】
式(1)で表される化合物としては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化5】
【0033】
式(2)中、R〜R、X、X、Y及びYは、式(1)におけるR〜R、X、X、Y及びYと同じ意味を表し、好ましい例もまた同じである。
式(2)中、R〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。
式(2)のR〜R12が表す芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基として具体的に挙げた芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基と同じものが挙げられる。
【0034】
式(2)におけるR〜R12としては、水素原子又は脂肪族残基であることが好ましく、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基であることがより好ましく、全てが水素原子であることが更に好ましい。
式(2)中、Yは硫黄原子、酸素原子又はセレン原子を表し、硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、硫黄原子であることがより好ましい。
【0035】
式(1)で表される化合物としては、下記式(3)で表される化合物も好ましい。
【0036】
【化6】
【0037】
式(3)中、R〜R、X、X、Y及びYは、式(1)におけるR〜R、X、X、Y及びYと同じ意味を表し、好ましい例もまた同じである。
式(3)中、R13〜R18はそれぞれ独立に、水素原子、芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボンアミド基、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアシル基を表す。
式(3)のR13〜R18が表す芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基としては、式(1)の環Arが有していてもよい置換基として具体的に挙げた芳香族残基、脂肪族炭化水素残基、ハロゲン原子、アミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基及びアシル基と同じものが挙げられる。
式(3)のR13〜R18としては、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であることが好ましく。それぞれ独立にハロゲン原子であることがより好ましく、全てがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0038】
式(1)における環Ar、R〜R、X〜X及びY〜Yの好ましい組み合わせは、上記の環Ar、R〜R、X〜X及びY〜Yのそれぞれにおいて好ましいとされるもの同士の組み合わせであり、より好ましい組み合わせは以下の通りである。
【0039】
即ち、式(2)で表される化合物であって、式(2)におけるRがアルキルスルホニル基、R及びRがそれぞれ独立に芳香族残基、Rが水素原子又は炭素数1乃至8のアルキル基、X及びXが窒素原子、Y、Y及びYが硫黄原子又は酸素原子、R〜R12が水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基である化合物、若しくは、式(3)で表される化合物であって、式(3)におけるRがアルキルスルホニル基、Rが水素原子又は炭素数1乃至8のアルキル基、X及びXがCR及びCRであってRとRで環を形成し、かつRとRで環を形成しており、Y及びYがそれぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子、R13〜R18がそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子である化合物がより好ましい。
【0040】
更に、式(2)で表される化合物であって、式(2)におけるRが炭素数1乃至4のアルキルスルホニル基、R及びRがベンゼン環残基、Rが水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基、X及びXが窒素原子、Y、Y及びYが硫黄原子、R〜R12が水素原子である化合物、若しくは、式(3)で表される化合物であって、式(3)におけるRが炭素数1乃至4のアルキルスルホニル基、Rが水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基、X及びXがCR及びCRであってRとRでベンゼン環を形成し、かつRとRでベンゼン環を形成しており、Y及びYが硫黄原子、R13〜R18がそれぞれ独立にハロゲン原子である化合物が更に好ましい。
本発明の式(1)で表される化合物は、光酸発生剤として好適に用いられる。
【0041】
本発明の式(1)で表される化合物は、種々の反応を利用して合成することができる。後述する合成例及び実施例はその一例であり、本発明の式(1)で表される化合物の合成方法は該合成例及び実施例に記載の方法に何ら限定されるものではなく、これら合成例及び実施例で用いている原料化合物と置換基や部分構造の異なる化合物を原料に用いることにより、式(1)に包含される様々な構造の化合物を合成可能である。
【0042】
式(2)で表される化合物の具体例を表1乃至表3に示す。各表において、Phはフェニル基を、Npはナフチル基を意味する。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
式(3)で表される化合物の具体例を表4乃至表8に示す。各表において、Phはフェニル基を、Npはナフチル基を、B環はベンゼン環を意味する。
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の式(1)で表される化合物(光酸発生剤)及びカチオン重合性化合物を含有する。
本発明の感光性樹脂組成物に用い得るカチオン重合性化合物としては、例えばエポキシ化合物(樹脂)やオキセタン化合物(樹脂)等の環状エーテル化合物、(メタ)アクリレート類、そして、ビニルエーテル類及びスチレン等のエチレン性不飽和化合物等が挙げられる。
【0053】
エポキシ化合物の具体例としては、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物;フェノール類と各種ジエン化合物(テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物;フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物;フェノール類とビスクロロメチルビフェニルとの重縮合物;フェノール類とビスクロロメチルベンゼンとの重縮合物;ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物またはアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ化合物;4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシドや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ化合物;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンやトリグリシジル−p−アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ化合物;グリシジルエステル系エポキシ化合物等が挙げられるが、エポキシ基を有する化合物であればこれらに限定されるものではない。
【0054】
オキセタン化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(4−メチルフェノキシ)メチルオキセタン、3−エチル−3−(4−フルオロフェノキシ)メチルオキセタン、3−エチル−3−(1−ナフトキシ)メチルオキセタン、3−エチル−3−(2−ナフトキシ)メチルオキセタン、3−エチル−3−{[3−(エトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられるが、オキセタン環を有する化合物であればこれらに限定されるものではない。
【0055】
(メタ)アクリレート類の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−F型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−フルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、9,9−ビス〔4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕フルオレン、カヤラッドRP−1040(日本化薬製)、カヤラッドDPCA−30(日本化薬製)、UA−33H(新中村化学製)、UA−53H(新中村化学製)及びM−8060(東亞合成製)等の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられるが、(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に限定なく、モノマー及びオリゴマーの何れをも用いることが出来る。尚、本発明でいう(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両者を示す。
【0056】
エチレン性不飽和化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2−アセトキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、2−メタクリロイロオキシエチルビニルエーテル、2−アクリロイロオキシエチルビニルエーテルなどの脂肪族モノビニルエーテル類;2−フェノキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテルなどの芳香族モノビニルエーテル類;ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(1,4−ビス[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキサン)、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレンなどのスチレン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのカチオン重合性窒素含有モノマー等が挙げられる。
【0057】
本発明の感光性樹脂組成物における式(1)で表される化合物の配合割合は、式(1)で表される化合物及びカチオン重合性化合物の必須成分並びに後述する任意成分等、溶剤を除く固形分の合計質量に対して、通常0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜8質量%である。式(1)で表される化合物の配合割合を前記の範囲内とすることにより、経済的でかつ良好な硬化性を有する感光性樹脂組成物が得られる。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物には、樹脂組成物の粘度を下げ、塗膜性を向上させるために溶剤を用いることができる。溶剤としては、インキや塗料等に通常用いられる有機溶剤であって、感光性樹脂組成物の各構成成分を溶解可能なもので、且つ、構成成分との化学反応を起こさないものであれば特に制限なく用いることができる。溶剤の具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びγ−ブチロラクトン等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0059】
これら溶剤は、単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。溶剤成分は、基材へ塗布する際の膜厚や塗布性を調整する目的で加えるものであり、主成分の溶解性や成分の揮発性、組成物の液粘度等を適正に保持する為の溶剤の含有量は、溶剤を含む感光性樹脂組成物全量に対して、95質量%以下が好ましく、特に好ましくは10〜90質量%である。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物には、更に、紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを光カチオン重合開始剤、特に、芳香族ヨードニウム錯塩に対して供与するために、増感剤を使用してもよい。増感剤としては、例えばチオキサントン類、9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体)が好ましい。前記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等のC1〜C4のアルコキシ基が挙げられる。9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体は、更に置換基を有していても良い。置換基としては、例えば弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基や、スルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、C1〜C4のアルキルが挙げられる。これら置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0061】
チオキサントン類の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン及び2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられ、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、商品名 カヤキュアーDETX−S)、2−イソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0062】
9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体としては、例えば9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジエトキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジプロポキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−クロロアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル、9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル、9,10−ジメトキシアントラセン−2−カルボン酸メチルエステル等を挙げることができる。
【0063】
これらは、単独であるいは2種以上混合して用いることができるが、2,4−ジエチルチオキサントン又は9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセンの使用が最も好ましい。増感剤成分は、少量で効果を発揮する為、その使用割合は、式(1)で表される化合物の質量に対し30質量%以下が好ましく、特に好ましくは20質量%以下である。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、着色剤、カップリング剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を用いることが出来る。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。硬化剤としては、着色剤としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジン・グリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、アンスラキノンレッド、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロールレッド等が挙げられる。これらの添加剤等を使用する場合は、その使用量は溶剤を除く本発明の感光性樹脂組成物中、例えば、それぞれ30質量%以下が一応の目安であるが、使用目的及び硬化膜の要求機能に応じ適宜増減し得る。カップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。増粘剤としては、例えばオルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられ、消泡剤としては、例えばシリコーン系、フルオロアルキル系および高分子系等の消泡剤が挙げられる。これらの添加剤等を使用する場合は、その使用量は溶剤を除く本発明の感光性樹脂組成物質量に対し、例えば、それぞれ10質量%以下が一応の目安であるが、使用目的及び塗工品質に応じ、適宜増減し得る。
【0065】
更に、本発明の感光性樹脂組成物には、例えば硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、モンモリロナイト、雲母粉末等の任意の無機充填剤を使用することができる。その使用量は、溶剤を除く本発明の感光性樹脂組成物質量に対し60質量%以下であるが、使用目的及び硬化膜の要求機能に応じ、適宜増減し得る。同様に、ポリメチルメタクリレート、ゴム、フルオロポリマー、ポリウレタン粉末などの有機充填剤を組み込むこともできる。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物は、式(1)で表される化合物及びカチオン重合性化合物の必須成分と、必要により、任意成分である溶剤、カップリング剤、イオンキャッチャー、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤および無機充填剤等を、通常の方法で混合、攪拌することにより調整される。混合、攪拌の際には、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いてもよい。また、混合した後で、更にメッシュ、メンブランフィルターなどを用いて濾過を施してもよい。
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射して容易にその硬化物とすることができる。硬化は本発明の感光性樹脂組成物を通常0.01〜1mm程度の厚さにした後、活性エネルギー線を照射する。適当な活性エネルギー線としては、式(1)で表される光酸発生剤の分解を誘発するエネルギーを有するのであればいかなるものでもよいが、好ましくは高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、殺菌灯、レーザー光からなる2000〜7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギー、電子線、X線、紫外線等の光エネルギー線が挙げられる。活性エネルギー線の照射時間は、その強度にもよるが、通常は0.1〜10秒程度で充分である。しかし膜厚が比較的厚い塗装膜については、それ以上の時間をかけるのが好ましい。活性エネルギー線を照射した0.1〜数分後には、ほとんどの感光性樹脂組成物は光酸発生剤により硬化して指触乾燥するが、必要により感光性樹脂組成物を、活性エネルギー線照射時に30〜100℃程度に加熱することにより、重合反応を効果的に促進して、より硬化速度を向上させることも可能である。また活性エネルギー線を照射して得られた硬化物を、重合による硬化を完結させる目的で、さらに50〜250℃で加熱処理してもよい。加熱処理する場合、感光性樹脂組成物を塗装する基材や得られる硬化物の耐熱性等を考慮し、100℃以上の高温で加熱処理する場合は、なるべく短時間で加熱処理を行う方が好ましい。
尚、本発明の感光性樹脂組成物を用いて、従来公知のフォトリソグフィーの手法、即ち、塗工、パターン照射、及び現像工程を含む手法を施すことで樹脂組成物の硬化物の微細パターンを得ることも可能である。
【0068】
本発明の光硬化性樹脂組成物の具体的な用途としては、塗料、コーティング剤、インキ、レジスト、液状レジスト、接着剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、光学的造形用注型剤等を挙げることができ、例えばコーティング剤として適用できる基材としては金属、木材、ゴム、プラスチック、ガラス、セラミック製品等を挙げることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、「%」は重量%、「部」は重量部を示す。
【0070】
尚、以下実施例においては、下記の実験装置及び測定装置を用いた。
・高速液体クロマトグラフィ
[順相HPLC]
分析用ポンプ-------------------------------------HTACHI Pump L2130
検出器----------------------------------HITACHI UV Detector L-2400
記録計----------------------------------------------HITACHI D-2500
カラム---------------------------------------------COSMOSIL 5SL-II
・中圧分取液体クロマトグラフィ----------山善 EPCLC-W-Prep 2XY A-Type
・核磁気共鳴装置-----------------------------JEOL JNM-AL300 (300 MHz)
・二重収束型質量分析装置(EI-HRMS)---------------JEOL JMS-700 MSation
・DART質量分析装置----------------------------------JEOL JMS-Q1000TD
・有機低分子X線構造解析装置--------------Rigaku R-AXIS RAPID/S (3kW)
・紫外可視分光光度計--------------------------------------JASCO V-660
・ナノ秒時間分解分光測定装置-----------------------UNISOKU TSP-1000M
・蛍光分光光度計----------------------------------------HITACHI H7000
・絶対発光量子収率測定装置-------------------------Hamamatsu C9920-02
・光反応量子収率測定装置---------------------------島津製作所 QYM-01
・分光用クライオスタット---------------OXFORD INSTRUMENTS OptistatDN
・光源
1kW 超高圧水銀ランプ----------------------------USHIO SX-UI-501HQ
モノクロメーター--------------------------------島津製作所 SPG-120
ナノ秒パルスNd:YAGレーザー------------------Continuum Minilite II
高出力ナノ秒パルスNd:YAGレーザー------------Continuum Surelite II
ナノ秒オプティカルパラメトリックオシレーター---Continuum Panther EX OPO
・マイクロ波合成装置-------------------------------Biotage Initiator
【0071】
合成例1
500mLのナス型フラスコ中で、ベンゾ[b]チオフェン19.1g(142mmol)をクロロホルム200mLに溶解させた後、臭素16mL(312mmol)を滴下して室温で24時間攪拌した。10%チオ硫酸ナトリウム水溶液100mLでクエンチした後に酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、ヘキサンで洗浄することにより下記式1で表される化合物41.7g(収率約100%)を紫色固体として得た。この式1で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.77-7.71(m, 2H), 7.47-7.36(m, 2H)
【0072】
【化7】
【0073】
合成例2
500mLのナス型フラスコ中で、グリシンメチルエステル塩酸塩5.05g(40.3mmol)をジクロロメタン200mLに溶解させた後、アイスバスで0℃に冷却した。トリエチルアミン11.3mL(81mmol)を加え、更に10分間掛けて塩化ベンゾイル4.7mL(40.5mmol)を滴下した後、室温まで昇温させて一晩攪拌した。反応後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを加えた後、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去することにより下記式2で表される化合物7.43g(収率95.5%)を白色固体として得た。この式2で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.84-7.81(m, 2H), 7.56-7.46(m, 3H), 6.67(sl, 1H), 4.28-4.26(d, J = 5.1 Hz, 2H), 3.81(s, 3H)
【0074】
【化8】
【0075】
合成例3
クロロホルム100mLをナス型フラスコに入れ、モレキュラーシーブ(4A)を加えて30分間窒素バブリングを行った。一方、フレームドライした四つ口フラスコに、窒素フローしながら合成例2で得られた式2で表される化合物4.72g(24.4mmol)と五硫化二リン8.04g(36.2mmol)を入れアルゴン置換を行った。シリンジを用いて上記のクロロホルム70mLを加えて80℃で24時間加熱した。反応後、5%水酸化ナトリウム水溶液50mLを少しずつ加えながら沈殿物を分解し、クロロホルムで抽出した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、ヘキサン・ジエチルエーテルを使用してショートカラムに通して精製することより下記式3で表される化合物3.91g(収率83.5%)を褐色油状物として得た。この式3で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.82-7.73(m, 2H), 7.44-7.36(m, 3H), 7.13(s, 1H), 3.97(s, 3H)
【0076】
【化9】
【0077】
合成例4
100mLの褐色ナス型フラスコに、合成例3で得られた式3で表される化合物3.90g(20.4mmol)とNBS(N−ブロモコハク酸イミド)5.48g(30.8mmol)を入れ、クロロホルム53mLに溶解させた。室温で4時間攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液30mLを加えてクロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:ヘキサン = 1:1)で精製することにより下記式4で表される化合物3.95g(収率71.7%)を白色固体として得た。この式4で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.84-7.80(m, 2H), 7.42-7.40(m, 3H), 4.04(s,3H)
【0078】
【化10】
【0079】
合成例5
500mLのナス型フラスコ中で、チオベンズアミドを20.2g(147mmol)と50重量%のクロロアセトアルデヒド水溶液を34.0g(219mmol)をエタノール100mLに溶解させた後、3時間加熱還流させた。反応生成物をクロロホルムで抽出して無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルショートカラム(展開溶媒:クロロホルム)に通して精製することにより下記式5で表される化合物25.2g(収率約100%)を黄色油状物として得た。この式5で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ8.00-7.96(m, 2H), 7.89-7.87(d, J = 3.3 Hz, 1H), 7.48-7.44(m, 3H), 7.35-7.34(d, J = 3.3 Hz, 1H)
【0080】
【化11】
【0081】
合成例6
300mLの褐色ナス型フラスコ中で、合成例5で得られた式5で表される化合物8.36g(51.9mmol)とNBS14.0g(78.7mmol)をクロロホルム120mLに溶解させ、16時間加熱還流させた。10%チオ硫酸ナトリウム水溶液50mLを加えてクロロホルムで抽出した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、メタノールで再結晶することにより下記式6で表される化合物11.8g(収率94.4%)を薄茶色固体として得た。この式6で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.89-7.85(m, 2H), 7.74(s, 1H), 7.46-7.44(m, 3H)
【0082】
【化12】
【0083】
合成例7
フレームドライしアルゴン置換した四つ口フラスコに、蒸留したジイソプロピルアミン3.3mL(23.5mmol)を入れて0℃に冷却した。n−ブチルリチウムヘキサン溶液13.5mL(21.6mmol)を滴下した後、室温まで昇温させ、少量のdry THF(テトラヒドロフラン)を加えて希釈した。フレームドライした四つ口フラスコをアルゴン置換し、合成例6で得られた式6で表される化合物1.78g(7.41mmol)を35mLのdry THFに溶解させた。0℃で10分間撹拌後、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)20mLを滴下し0℃で30分間撹拌させた。反応後、水でクエンチし、ジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させることにより下記式7で表される化合物1.68g(収率94.4%)を薄茶色固体として得た。この式7で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.96-7.93(m, 2H), 7.47-7.44(m, 3H), 7.22(s,1H)
【0084】
【化13】
【0085】
合成例8
フレームドライをした後でアルゴン置換した四つ口フラスコ中で、合成例4で得られた式4で表される化合物1.69g(6.26mmol)を26mLのdry THFに溶解させて−78℃に冷却した。n−ブチルリチウムヘキサン溶液4.1mL(6.56mmol)を滴下し、冷却した温度を保ちながら30分間攪拌した。1.8mLのtributylchlorostannane(6.64mmol)を加えて−78℃で30分間撹拌し、室温に昇温させて更に30分間攪拌した。フッ化カリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去することにより下記式10で表される化合物3.14g(収率98.7%)を黄色油状物として得た。この式10で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.86-7.83(m, 2H), 7.38-7.35(m, 3H), 3.94(s, 3H), 1.65-0.87(m, 27H以上)
【0086】
【化14】
【0087】
合成例9
マイクロ波合成用バイアル中で、合成例7で得られた式7で表される化合物1.56g(6.50mmol)、ビスピナコラートジボロン1.65g(6.51mmol)、Pd(dba)クロロホルム付加体0.187g(0.204mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン0.280g(0.998mmol)及び酢酸カリウム0.959g(9.77mmol)を1,4−ジオキサン19mLに溶解させ、マイクロ波を用いて170℃で150分間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルでセライト濾過し、溶媒を留去した後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させることにより下記式11で表される化合物1.87g(反応率100%)を黄色油状物として得た。この式11で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): 8.06-8.03(m, 2H), 7.98(s, 1H), 7.44-7.41(m, 3H),1.39(s, 12H)
【0088】
【化15】
【0089】
合成例10
四つ口フラスコに、合成例1で得られた式1で表される化合物1.65g(5.65mmol)、合成例4で得られた式4で表される化合物1.52g(5.64mmol)、トリフェニルホスフィン0.168g(0.641mmol)、2Mのリン酸三カリウム水溶液11mL及び1,4−ジオキサン125mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh0.326g(0.282mmol)を加えて24時間加熱還流させた。塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製することにより下記式12で表される化合物1.75g(収率77.1%)を白色固体として得た。この式12で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.93-7.89(m, 3H), 7.83-7.80(m, 1H), 7.49-7.38(m, 5H), 4.11(s, 3H)
【0090】
【化16】
【0091】
合成例11
四つ口フラスコに、合成例9で得られた式11で表される化合物1.87g(6.50mmol)、合成例10で得られた式12で表される化合物2.62g(6.50mmol)、トリフェニルホスフィン0.158g(0.602mmol)、2Mのリン酸三カリウム水溶液12mL、1,4−ジオキサン160mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh0.402g(0.348mmol)を加えて24時間加熱還流させた。塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム)及び順相HPLC(クロロホルム)で精製することにより下記式BT−OMe(1)で表される化合物1.34g(収率42.7%)を淡黄色固体として得た。この式BT−OMe(1)で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ8.08-8.01(m, 3H), 7.89-7.86(m,1H), 7.82-7.79(m, 2H), 7.47-7.43(m, 3H), 7.40-7.36(m, 5H), 7.30(s, 1H), 3.73(s, 3H)
EI-HRMS(m/z): calcd for C27H18N2OS3, 482.0581; found, 482.0587(M+H)+
【0092】
【化17】
【0093】
合成例12
四つ口フラスコに合成例1で得られた式1で表される化合物1.85g(6.34mmol)、合成例9で得られた式11で表される化合物1.80g(6.25mmol)、トリフェニルホスフィン0.192g(0.732mmol)、2Mのリン酸三カリウム水溶液12mL及び1,4−ジオキサン110mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh0.548g(0.474mmol)を加えて24時間加熱還流させた。塩化アンモニウム水溶液を加えて中和した後、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させ溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製することにより下記式13で表される化合物2.07g(収率89.0%)を白色固体として得た。この式13で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ8.35(s, 1H), 8.07-8.04(m, 2H), 7.89-7.83(m, 2H), 7.50-7.42(m, 5H)
【0094】
【化18】
【0095】
合成例13
四つ口フラスコに、合成例8で得られた式10で表される化合物2.50g(5.21mmol)、合成例12で得られた式13で表される化合物1.49g(4.00mmol)、フッ化セシウム1.39g(9.17mmol)及びトルエン45mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh0.321g(0.278mmol)を加えて24時間加熱還流させた。フッ化カリウム水溶液100mLを加えて、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム)及び順相HPLC(クロロホルム)で精製することにより下記式BT−OMe(2)で表される化合物1.32g(収率68.5%)を白色固体として得た。この式BT−OMe(2)で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz,CDCl3): δ8.02-7.93(m, 4H), 7.90-7.87(m, 1H), 7.67-7.63(m, 1H), 7.46-7.43(m, 6H), 7.38-7.35(m, 2H), 7.21(s, 1H), 3.81(s, 3H)
EI-HRMS(m/z): calcd for C27H18N2OS3, 482.0581; found, 482.0584(M+H)+
【0096】
【化19】
【0097】
中間体の光反応量子収率の測定
合成例11で得られた式BT−OMe(1)で表される化合物のヘキサン溶液に紫外線(365nm)を照射した後、光反応量子種率測定装置(島津製作所製、QYM−01)を用いて光反応量子収率を測定したところ、閉環反応の量子収率は0.33であった。また、合成例13で得られた式BT−OMe(2)で表される化合物を用いて前記と同様の手法で光反応量子収率を測定したところ、閉環反応の量子収率は0.64であった。
この結果に基づいて、より量子収率に優れる式BT−OMe(2)で表される化合物を用いて以下の合成を行った。
【0098】
合成例14
フレームドライしアルゴン置換した二つ口フラスコ中で、合成例13でえられた式BT−OMe(2)で表される化合物0.269g(0.557mmol)をジクロロメタン約15mLに溶解させ、系全体をアルミホイルで覆った。三臭化ホウ素1.46mL(2.8mmol)を滴下し、室温で3日間撹拌した後、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去することにより下記式BT−OHで表される化合物0.337g(収率>100%)を赤色固体として得た。この式10で表される化合物について、核磁気共鳴装置の測定(1H NMR(300 MHz, CDCl3))によりメトキシ基由来のシグナルの消失を確認した。
【0099】
【化20】
【0100】
実施例1
フレームドライした二つ口フラスコに、合成例14で得られた式BT−OHで表される化合物0.234gを入れて系全体をアルミホイルで覆った。ジクロロメタン4mLを加えてアイスバスで0℃に冷却し、トリエチルアミン500μLを加えた。メタンスルホニルクロリド0.143g(1.25mmol)を加えて0℃で2時間撹拌した。水を加えてジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、中圧シリカゲルクロマトグラフィ(クロロホルム:ヘキサン = 1 : 1)、分取用GPC(クロロホルム)及び順相HPLC(クロロホルム)で精製することにより下記式BT−OMsで表される化合物(表1における化合物1に相当)16mgを白色固体として得た。この式BT−OMsで表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ7.98-7.89(m, 5H), 7.48-7.40(m, 9H), 7.25(s, 1H), 2.65(s, 3H)
【0101】
【化21】
【0102】
実施例1で得られたBT−OMsで表される化合物が、活性エネルギー線の照射により酸を発生し得る化合物であることを確認するために、以下の評価を行った。
【0103】
先ず、プロピレンオキサイドを用いて、エポキシの開環前後のH−NMRスペクトルの変化を確認した。具体的にはプロピレンオキサイド単独のサンプルと、プロピレンオキサイドにメタンスルホン酸を添加して室温で1時間撹拌したサンプルについて、H−NMRスペクトルを測定した。結果を図1に示した。
【0104】
図1の結果より、メタンスルホン酸を添加したサンプルにおいては、プロピレンオキシドに帰属するピークが消滅し、開環反応により生成したオリゴプロピレングリコールに帰属するピークが現れていることがわかる(図1中の上側のスペクトル参照)。このことから、H−NMRスペクトルの測定結果によって、プロピレンオキシドの開環反応の有無の確認が可能であることがわかった。
【0105】
次に、実施例1で得られた式BT−OMsで表される化合物とプロピレンオキシドを重クロロホルムに溶解したサンプルに紫外線(365nm)を照射し、照射前後のH−NMRスペクトルの変化を測定した。結果を図2に示した。尚、図3は、式BT−OMsで表される化合物を重クロロホルムに溶解したサンプルのH−NMRスペクトルを示し、図4は、プロピレンオキシドを重クロロホルムに溶解したサンプルのH−NMRスペクトルを示す。
【0106】
図2の結果より、紫外線照射後にプロピレンオキシドに帰属するピークが減少し、開環重合反応により生成したオリゴプロピレングリコールに帰属するピークが現れていることがわかる(図2中の上側のスペクトル参照)。これは、紫外線の照射により、実施例1で得られた式BT−OMsで表される化合物から発生した酸(メタンスルホン酸)により、プロピレンオキサイドの開環反応が起こっていることを示している。これらの結果より、実施例1で得られたBT−OMsで表される化合物は、活性エネルギー線の照射により酸を発生し得る化合物であり、発生した酸がエポキシの開環反応を引き起こし得る、即ち、カチオン重合開始剤開始剤として用い得る化合物であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の式(1)で表される化合物は、疎水性のカチオン重合性化合物や溶剤に対する高い溶解性を有すると共に、i線やg線に対する高い酸発生量子収率を有することから、光酸発生剤として有用である。
図1
図2
図3
図4