【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、「%」は重量%、「部」は重量部を示す。
【0070】
尚、以下実施例においては、下記の実験装置及び測定装置を用いた。
・高速液体クロマトグラフィ
[順相HPLC]
分析用ポンプ-------------------------------------HTACHI Pump L2130
検出器----------------------------------HITACHI UV Detector L-2400
記録計----------------------------------------------HITACHI D-2500
カラム---------------------------------------------COSMOSIL 5SL-II
・中圧分取液体クロマトグラフィ----------山善 EPCLC-W-Prep 2XY A-Type
・核磁気共鳴装置-----------------------------JEOL JNM-AL300 (300 MHz)
・二重収束型質量分析装置(EI-HRMS)---------------JEOL JMS-700 MSation
・DART質量分析装置----------------------------------JEOL JMS-Q1000TD
・有機低分子X線構造解析装置--------------Rigaku R-AXIS RAPID/S (3kW)
・紫外可視分光光度計--------------------------------------JASCO V-660
・ナノ秒時間分解分光測定装置-----------------------UNISOKU TSP-1000M
・蛍光分光光度計----------------------------------------HITACHI H7000
・絶対発光量子収率測定装置-------------------------Hamamatsu C9920-02
・光反応量子収率測定装置---------------------------島津製作所 QYM-01
・分光用クライオスタット---------------OXFORD INSTRUMENTS OptistatDN
・光源
1kW 超高圧水銀ランプ----------------------------USHIO SX-UI-501HQ
モノクロメーター--------------------------------島津製作所 SPG-120
ナノ秒パルスNd:YAGレーザー------------------Continuum Minilite II
高出力ナノ秒パルスNd:YAGレーザー------------Continuum Surelite II
ナノ秒オプティカルパラメトリックオシレーター---Continuum Panther EX OPO
・マイクロ波合成装置-------------------------------Biotage Initiator
【0071】
合成例1
500mLのナス型フラスコ中で、ベンゾ[b]チオフェン19.1g(142mmol)をクロロホルム200mLに溶解させた後、臭素16mL(312mmol)を滴下して室温で24時間攪拌した。10%チオ硫酸ナトリウム水溶液100mLでクエンチした後に酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、ヘキサンで洗浄することにより下記式1で表される化合物41.7g(収率約100%)を紫色固体として得た。この式1で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.77-7.71(m, 2H), 7.47-7.36(m, 2H)
【0072】
【化7】
【0073】
合成例2
500mLのナス型フラスコ中で、グリシンメチルエステル塩酸塩5.05g(40.3mmol)をジクロロメタン200mLに溶解させた後、アイスバスで0℃に冷却した。トリエチルアミン11.3mL(81mmol)を加え、更に10分間掛けて塩化ベンゾイル4.7mL(40.5mmol)を滴下した後、室温まで昇温させて一晩攪拌した。反応後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを加えた後、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去することにより下記式2で表される化合物7.43g(収率95.5%)を白色固体として得た。この式2で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.84-7.81(m, 2H), 7.56-7.46(m, 3H), 6.67(sl, 1H), 4.28-4.26(d, J = 5.1 Hz, 2H), 3.81(s, 3H)
【0074】
【化8】
【0075】
合成例3
クロロホルム100mLをナス型フラスコに入れ、モレキュラーシーブ(4A)を加えて30分間窒素バブリングを行った。一方、フレームドライした四つ口フラスコに、窒素フローしながら合成例2で得られた式2で表される化合物4.72g(24.4mmol)と五硫化二リン8.04g(36.2mmol)を入れアルゴン置換を行った。シリンジを用いて上記のクロロホルム70mLを加えて80℃で24時間加熱した。反応後、5%水酸化ナトリウム水溶液50mLを少しずつ加えながら沈殿物を分解し、クロロホルムで抽出した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、ヘキサン・ジエチルエーテルを使用してショートカラムに通して精製することより下記式3で表される化合物3.91g(収率83.5%)を褐色油状物として得た。この式3で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.82-7.73(m, 2H), 7.44-7.36(m, 3H), 7.13(s, 1H), 3.97(s, 3H)
【0076】
【化9】
【0077】
合成例4
100mLの褐色ナス型フラスコに、合成例3で得られた式3で表される化合物3.90g(20.4mmol)とNBS(N−ブロモコハク酸イミド)5.48g(30.8mmol)を入れ、クロロホルム53mLに溶解させた。室温で4時間攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液30mLを加えてクロロホルムで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:ヘキサン = 1:1)で精製することにより下記式4で表される化合物3.95g(収率71.7%)を白色固体として得た。この式4で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.84-7.80(m, 2H), 7.42-7.40(m, 3H), 4.04(s,3H)
【0078】
【化10】
【0079】
合成例5
500mLのナス型フラスコ中で、チオベンズアミドを20.2g(147mmol)と50重量%のクロロアセトアルデヒド水溶液を34.0g(219mmol)をエタノール100mLに溶解させた後、3時間加熱還流させた。反応生成物をクロロホルムで抽出して無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルショートカラム(展開溶媒:クロロホルム)に通して精製することにより下記式5で表される化合物25.2g(収率約100%)を黄色油状物として得た。この式5で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ8.00-7.96(m, 2H), 7.89-7.87(d, J = 3.3 Hz, 1H), 7.48-7.44(m, 3H), 7.35-7.34(d, J = 3.3 Hz, 1H)
【0080】
【化11】
【0081】
合成例6
300mLの褐色ナス型フラスコ中で、合成例5で得られた式5で表される化合物8.36g(51.9mmol)とNBS14.0g(78.7mmol)をクロロホルム120mLに溶解させ、16時間加熱還流させた。10%チオ硫酸ナトリウム水溶液50mLを加えてクロロホルムで抽出した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、メタノールで再結晶することにより下記式6で表される化合物11.8g(収率94.4%)を薄茶色固体として得た。この式6で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.89-7.85(m, 2H), 7.74(s, 1H), 7.46-7.44(m, 3H)
【0082】
【化12】
【0083】
合成例7
フレームドライしアルゴン置換した四つ口フラスコに、蒸留したジイソプロピルアミン3.3mL(23.5mmol)を入れて0℃に冷却した。n−ブチルリチウムヘキサン溶液13.5mL(21.6mmol)を滴下した後、室温まで昇温させ、少量のdry THF(テトラヒドロフラン)を加えて希釈した。フレームドライした四つ口フラスコをアルゴン置換し、合成例6で得られた式6で表される化合物1.78g(7.41mmol)を35mLのdry THFに溶解させた。0℃で10分間撹拌後、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)20mLを滴下し0℃で30分間撹拌させた。反応後、水でクエンチし、ジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させることにより下記式7で表される化合物1.68g(収率94.4%)を薄茶色固体として得た。この式7で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.96-7.93(m, 2H), 7.47-7.44(m, 3H), 7.22(s,1H)
【0084】
【化13】
【0085】
合成例8
フレームドライをした後でアルゴン置換した四つ口フラスコ中で、合成例4で得られた式4で表される化合物1.69g(6.26mmol)を26mLのdry THFに溶解させて−78℃に冷却した。n−ブチルリチウムヘキサン溶液4.1mL(6.56mmol)を滴下し、冷却した温度を保ちながら30分間攪拌した。1.8mLのtributylchlorostannane(6.64mmol)を加えて−78℃で30分間撹拌し、室温に昇温させて更に30分間攪拌した。フッ化カリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去することにより下記式10で表される化合物3.14g(収率98.7%)を黄色油状物として得た。この式10で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.86-7.83(m, 2H), 7.38-7.35(m, 3H), 3.94(s, 3H), 1.65-0.87(m, 27H以上)
【0086】
【化14】
【0087】
合成例9
マイクロ波合成用バイアル中で、合成例7で得られた式7で表される化合物1.56g(6.50mmol)、ビスピナコラートジボロン1.65g(6.51mmol)、Pd
2(dba)
3クロロホルム付加体0.187g(0.204mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン0.280g(0.998mmol)及び酢酸カリウム0.959g(9.77mmol)を1,4−ジオキサン19mLに溶解させ、マイクロ波を用いて170℃で150分間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルでセライト濾過し、溶媒を留去した後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させることにより下記式11で表される化合物1.87g(反応率100%)を黄色油状物として得た。この式11で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): 8.06-8.03(m, 2H), 7.98(s, 1H), 7.44-7.41(m, 3H),1.39(s, 12H)
【0088】
【化15】
【0089】
合成例10
四つ口フラスコに、合成例1で得られた式1で表される化合物1.65g(5.65mmol)、合成例4で得られた式4で表される化合物1.52g(5.64mmol)、トリフェニルホスフィン0.168g(0.641mmol)、2Mのリン酸三カリウム水溶液11mL及び1,4−ジオキサン125mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh
3)
40.326g(0.282mmol)を加えて24時間加熱還流させた。塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製することにより下記式12で表される化合物1.75g(収率77.1%)を白色固体として得た。この式12で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.93-7.89(m, 3H), 7.83-7.80(m, 1H), 7.49-7.38(m, 5H), 4.11(s, 3H)
【0090】
【化16】
【0091】
合成例11
四つ口フラスコに、合成例9で得られた式11で表される化合物1.87g(6.50mmol)、合成例10で得られた式12で表される化合物2.62g(6.50mmol)、トリフェニルホスフィン0.158g(0.602mmol)、2Mのリン酸三カリウム水溶液12mL、1,4−ジオキサン160mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh
3)
40.402g(0.348mmol)を加えて24時間加熱還流させた。塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム)及び順相HPLC(クロロホルム)で精製することにより下記式BT−OMe(1)で表される化合物1.34g(収率42.7%)を淡黄色固体として得た。この式BT−OMe(1)で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ8.08-8.01(m, 3H), 7.89-7.86(m,1H), 7.82-7.79(m, 2H), 7.47-7.43(m, 3H), 7.40-7.36(m, 5H), 7.30(s, 1H), 3.73(s, 3H)
EI-HRMS(m/z): calcd for C
27H
18N
2OS
3, 482.0581; found, 482.0587(M+H)
+【0092】
【化17】
【0093】
合成例12
四つ口フラスコに合成例1で得られた式1で表される化合物1.85g(6.34mmol)、合成例9で得られた式11で表される化合物1.80g(6.25mmol)、トリフェニルホスフィン0.192g(0.732mmol)、2Mのリン酸三カリウム水溶液12mL及び1,4−ジオキサン110mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh
3)
40.548g(0.474mmol)を加えて24時間加熱還流させた。塩化アンモニウム水溶液を加えて中和した後、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させ溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製することにより下記式13で表される化合物2.07g(収率89.0%)を白色固体として得た。この式13で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ8.35(s, 1H), 8.07-8.04(m, 2H), 7.89-7.83(m, 2H), 7.50-7.42(m, 5H)
【0094】
【化18】
【0095】
合成例13
四つ口フラスコに、合成例8で得られた式10で表される化合物2.50g(5.21mmol)、合成例12で得られた式13で表される化合物1.49g(4.00mmol)、フッ化セシウム1.39g(9.17mmol)及びトルエン45mLを入れ、30分間窒素バブリングした。窒素フローしながらPd(PPh
3)
40.321g(0.278mmol)を加えて24時間加熱還流させた。フッ化カリウム水溶液100mLを加えて、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム)及び順相HPLC(クロロホルム)で精製することにより下記式BT−OMe(2)で表される化合物1.32g(収率68.5%)を白色固体として得た。この式BT−OMe(2)で表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz,CDCl
3): δ8.02-7.93(m, 4H), 7.90-7.87(m, 1H), 7.67-7.63(m, 1H), 7.46-7.43(m, 6H), 7.38-7.35(m, 2H), 7.21(s, 1H), 3.81(s, 3H)
EI-HRMS(m/z): calcd for C
27H
18N
2OS
3, 482.0581; found, 482.0584(M+H)
+【0096】
【化19】
【0097】
中間体の光反応量子収率の測定
合成例11で得られた式BT−OMe(1)で表される化合物のヘキサン溶液に紫外線(365nm)を照射した後、光反応量子種率測定装置(島津製作所製、QYM−01)を用いて光反応量子収率を測定したところ、閉環反応の量子収率は0.33であった。また、合成例13で得られた式BT−OMe(2)で表される化合物を用いて前記と同様の手法で光反応量子収率を測定したところ、閉環反応の量子収率は0.64であった。
この結果に基づいて、より量子収率に優れる式BT−OMe(2)で表される化合物を用いて以下の合成を行った。
【0098】
合成例14
フレームドライしアルゴン置換した二つ口フラスコ中で、合成例13でえられた式BT−OMe(2)で表される化合物0.269g(0.557mmol)をジクロロメタン約15mLに溶解させ、系全体をアルミホイルで覆った。三臭化ホウ素1.46mL(2.8mmol)を滴下し、室温で3日間撹拌した後、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて溶媒を留去することにより下記式BT−OHで表される化合物0.337g(収率>100%)を赤色固体として得た。この式10で表される化合物について、核磁気共鳴装置の測定(
1H NMR(300 MHz, CDCl
3))によりメトキシ基由来のシグナルの消失を確認した。
【0099】
【化20】
【0100】
実施例1
フレームドライした二つ口フラスコに、合成例14で得られた式BT−OHで表される化合物0.234gを入れて系全体をアルミホイルで覆った。ジクロロメタン4mLを加えてアイスバスで0℃に冷却し、トリエチルアミン500μLを加えた。メタンスルホニルクロリド0.143g(1.25mmol)を加えて0℃で2時間撹拌した。水を加えてジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、中圧シリカゲルクロマトグラフィ(クロロホルム:ヘキサン = 1 : 1)、分取用GPC(クロロホルム)及び順相HPLC(クロロホルム)で精製することにより下記式BT−OMsで表される化合物(表1における化合物1に相当)16mgを白色固体として得た。この式BT−OMsで表される化合物の核磁気共鳴装置の測定値は次のとおりであった。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ7.98-7.89(m, 5H), 7.48-7.40(m, 9H), 7.25(s, 1H), 2.65(s, 3H)
【0101】
【化21】
【0102】
実施例1で得られたBT−OMsで表される化合物が、活性エネルギー線の照射により酸を発生し得る化合物であることを確認するために、以下の評価を行った。
【0103】
先ず、プロピレンオキサイドを用いて、エポキシの開環前後の
1H−NMRスペクトルの変化を確認した。具体的にはプロピレンオキサイド単独のサンプルと、プロピレンオキサイドにメタンスルホン酸を添加して室温で1時間撹拌したサンプルについて、
1H−NMRスペクトルを測定した。結果を
図1に示した。
【0104】
図1の結果より、メタンスルホン酸を添加したサンプルにおいては、プロピレンオキシドに帰属するピークが消滅し、開環反応により生成したオリゴプロピレングリコールに帰属するピークが現れていることがわかる(
図1中の上側のスペクトル参照)。このことから、
1H−NMRスペクトルの測定結果によって、プロピレンオキシドの開環反応の有無の確認が可能であることがわかった。
【0105】
次に、実施例1で得られた式BT−OMsで表される化合物とプロピレンオキシドを重クロロホルムに溶解したサンプルに紫外線(365nm)を照射し、照射前後の
1H−NMRスペクトルの変化を測定した。結果を
図2に示した。尚、
図3は、式BT−OMsで表される化合物を重クロロホルムに溶解したサンプルの
1H−NMRスペクトルを示し、
図4は、プロピレンオキシドを重クロロホルムに溶解したサンプルの
1H−NMRスペクトルを示す。
【0106】
図2の結果より、紫外線照射後にプロピレンオキシドに帰属するピークが減少し、開環重合反応により生成したオリゴプロピレングリコールに帰属するピークが現れていることがわかる(
図2中の上側のスペクトル参照)。これは、紫外線の照射により、実施例1で得られた式BT−OMsで表される化合物から発生した酸(メタンスルホン酸)により、プロピレンオキサイドの開環反応が起こっていることを示している。これらの結果より、実施例1で得られたBT−OMsで表される化合物は、活性エネルギー線の照射により酸を発生し得る化合物であり、発生した酸がエポキシの開環反応を引き起こし得る、即ち、カチオン重合開始剤開始剤として用い得る化合物であることは明らかである。