特許第6352414号(P6352414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352414センサユニット、および、それを備える圧力検出装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352414
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】センサユニット、および、それを備える圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   G01L19/14
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-529004(P2016-529004)
(86)(22)【出願日】2015年6月1日
(86)【国際出願番号】JP2015002767
(87)【国際公開番号】WO2015194105
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-124592(P2014-124592)
(32)【優先日】2014年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝本 和哉
(72)【発明者】
【氏名】平井 一徳
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英明
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−098685(JP,A)
【文献】 特開2014−107482(JP,A)
【文献】 特表2011−510276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 19/00−19/14
G01L 9/00− 9/18
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を検出するセンサチップと、
前記センサチップの回路に電気的に接続される少なくとも一つの端子を包囲するハーメチックガラスを該センサチップとともに保持するハウジングと、
前記センサチップおよび前記端子と圧力が検出されるべき圧力室とを隔絶するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムと前記センサチップとの間に充填される圧力伝達媒体と、を備え、
前記端子は、前記ハウジングに前記ハーメチックガラスにより保持され
前記圧力伝達媒体としてのシリコーンオイルが充填されるとき、前記センサチップを保護する役割を果たす被膜層が、前記端子が突出するハーメチックガラスの一方の端面と、前記ハウジングの一方の端面と、前記端子における該ハーメチックガラスの一方の端面から突出する部分とにより画定される表面のうちのいずれかを覆うように形成され、
前記被膜層は、シリコーン系接着剤により形成されることを特徴とするセンサユニット。
【請求項2】
圧力を検出するセンサチップと、
前記センサチップの回路に電気的に接続される少なくとも一つの端子を包囲するハーメチックガラスを該センサチップとともに保持するハウジングと、
前記センサチップおよび前記端子と圧力が検出されるべき圧力室とを隔絶するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムと前記センサチップとの間に充填される圧力伝達媒体と、を備え、
前記端子は、前記ハウジングに前記ハーメチックガラスにより保持され
前記圧力伝達媒体としてのフッ素系液体が充填されるとき、前記センサチップを保護する役割を果たす被膜層が、前記端子が突出するハーメチックガラスの一方の端面と、前記ハウジングの一方の端面と、前記端子における該ハーメチックガラスの一方の端面から突出する部分とにより画定される表面のうちのいずれかを覆うように形成され、
前記被膜層は、シリコーン系接着剤、または、フッ素系接着剤により形成されることを特徴とするセンサユニット。
【請求項3】
圧力を検出するセンサチップと、
前記センサチップの回路に電気的に接続される少なくとも一つの端子を包囲するハーメチックガラスを該センサチップとともに保持するハウジングと、
前記センサチップおよび前記端子と圧力が検出されるべき圧力室とを隔絶するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムと前記センサチップとの間に充填される圧力伝達媒体と、を備え、
前記端子は、前記ハウジングに前記ハーメチックガラスにより保持され、
前記圧力伝達媒体としてのフッ素系液体が充填されるとき、前記センサチップを保護する役割を果たす充填材料からなる被膜層が、前記端子が突出するハーメチックガラスの一方の端面と、前記ハウジングの一方の端面と、前記端子における該ハーメチックガラスの一方の端面から突出する部分とにより画定される表面のうちのいずれかを覆うように形成され、
前記充填材料からなる被膜層が、エラストマー、または、フッ素グリースにより、形成されることを特徴とするセンサユニット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載のうちのいずれかのセンサユニット、および、該センサユニットの端子を整列させる端子台を収容するセンサユニット収容部を備え、
前記端子を整列させる端子台の端部が、前記ハウジングの一方の端面にシリコーン系接着剤、または、フッ素系接着剤により接着され、前記ダイヤフラムの周縁が前記ハウジングの他方の端面に接合されることを特徴とする圧力検出装置
【請求項5】
エポキシ系樹脂からなる被覆層が、前記端子台および前記ハウジングを封止する封止材の上面に、形成されることを特徴とする請求項4記載の圧力検出装置。
【請求項6】
シリコーン系樹脂からなる被覆層が、前記端子台および前記ハウジングを封止する封止材の上面に、形成されることを特徴とする請求項記載の圧力検出装置。
【請求項7】
前記センサチップを保護する役割を果たす前記被膜層が、前記端子台の端部と、前記ハウジングの内周面と、前記ハーメチックガラスの一方の端面とにより囲まれる部分だけに形成されることを特徴とする請求項記載の圧力検出装置。
【請求項8】
前記センサチップを保護する役割を果たす前記被膜層が、前記端子におけるハーメチックガラスの一方の端面から前記端子台に至るまでの部分だけに形成されることを特徴とする請求項記載の圧力検出装置。
【請求項9】
前記センサチップを保護する役割を果たす前記被膜層が、前記端子台における前記端子に隣接して形成される環状の突起部から該突起部に向き合う前記ハーメチックガラスの一方の端面に至る部分だけに形成されることを特徴とする請求項記載の圧力検出装置。
【請求項10】
請求項3に記載のセンサユニット、および、該センサユニットの端子を整列させる端子台を収容するセンサユニット収容部を備え、
前記端子台の端部が、前記ハウジングの一方の端面に前記充填材料により接合され、前記ダイヤフラムの周縁が前記ハウジングの他方の端面に接合されることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項11】
エポキシ系樹脂からなる被膜層が、前記端子台および前記ハウジングを封止する封止材の上面に、形成されることを特徴とする請求項10記載の圧力検出装置。
【請求項12】
シリコーン系樹脂からなる被膜層が、前記端子台および前記ハウジングを封止する封止材の上面に、形成されることを特徴とする請求項10記載の圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップを備えるセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液封型の半導体圧力センサは、例えば、特許文献1および特許文献2にも示されるように、センサユニットの一部を構成している。センサユニットは、後述するハウジングに連結される金属製の継手部の内側に形成される圧力検出室内に配されている。そのようなセンサユニットは、例えば、継手部内に支持され上述の圧力検出室と後述する液封室とを隔絶するダイヤフラムと、ダイヤフラムの上方に形成され圧力伝達媒体としてのシリコーンオイルを貯留する液封室と、液封室内に配されダイヤフラムを介しシリコーンオイルの圧力変動を検出するセンサチップと、センサチップを支持するチップマウント部材と、ハウジングの貫通孔におけるチップマウント部材の周囲を密封するハーメチックガラスと、センサチップからの出力信号の送出およびセンサチップへの電力供給を行う端子群とを主な要素として含んで構成されている。
【0003】
ハーメチックガラスは、カバー部材内に配される金属製のエレメント本体内に固着されている。エレメント本体は、金属製の継手部に当接するようにカバー部材内に配置されている。また、上述の端子群は、チップマウント部材に隣接してハーメチックガラス内に固着されるとともに、外部リード線に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−98685号公報
【特許文献2】特開2012−68105号公報
【発明の概要】
【0005】
上述のようなセンサチップの内部回路は、静電気放電(ESD)に起因した高電圧により破壊される場合がある。上述のセンサユニットにおいては、例えば、上述の継手部およびエレメント本体からセンサチップに至る経路、あるいは、外部リード線および端子群からセンサチップに至る経路を通じて静電気放電に起因した高電圧がセンサチップの内部回路に印加される虞がある。このような場合の対策として、センサチップ内にESD保護回路を組み込むことも考えられる。しかしながら、センサチップのダウンサイジングの要望に伴いセンサチップ内のESD保護回路の面積の縮小により、ESD保護回路の組み込みが、困難となる場合がある。
【0006】
以上の問題点を考慮し、本発明は、センサユニット、および、それを備える圧力検出装置であって、ESD保護回路の有無に影響されることなく、その静電気耐力を向上させることができるセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明に係るセンサユニットは、圧力を検出するセンサチップと、センサチップの回路に電気的に接続される少なくとも一つの端子を包囲するハーメチックガラスを該センサチップとともに保持するハウジングと、センサチップおよび端子と圧力が検出されるべき圧力室とを隔絶するダイヤフラムと、ダイヤフラムとセンサチップとの間に充填される圧力伝達媒体と、を備え、端子は、ハウジングにハーメチックガラスにより保持され圧力伝達媒体としてのシリコーンオイルが充填されるとき、センサチップを保護する役割を果たす被膜層が、端子が突出するハーメチックガラスの一方の端面と、ハウジングの一方の端面と、端子におけるハーメチックガラスの一方の端面から突出する部分とにより画定される表面のうちのいずれかを覆うように形成され、被膜層は、シリコーン系接着剤により形成されることを特徴とする。
また、本発明に係るセンサユニットは、圧力を検出するセンサチップと、センサチップの回路に電気的に接続される少なくとも一つの端子を包囲するハーメチックガラスをセンサチップとともに保持するハウジングと、センサチップおよび端子と圧力が検出されるべき圧力室とを隔絶するダイヤフラムと、ダイヤフラムとセンサチップとの間に充填される圧力伝達媒体と、を備え、端子は、ハウジングにハーメチックガラスにより保持され圧力伝達媒体としてのフッ素系液体が充填されるとき、センサチップを保護する役割を果たす被膜層が、端子が突出するハーメチックガラスの一方の端面と、ハウジングの一方の端面と、端子におけるハーメチックガラスの一方の端面から突出する部分とにより画定される表面のうちのいずれかを覆うように形成され、被膜層は、シリコーン系接着剤、または、フッ素系接着剤により形成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るセンサユニットは、圧力を検出するセンサチップと、センサチップの回路に電気的に接続される少なくとも一つの端子を包囲するハーメチックガラスを該センサチップとともに保持するハウジングと、センサチップおよび端子と圧力が検出されるべき圧力室とを隔絶するダイヤフラムと、ダイヤフラムとセンサチップとの間に充填される圧力伝達媒体と、を備え、端子は、ハウジングにハーメチックガラスにより保持され圧力伝達媒体としてのフッ素系液体が充填されるとき、センサチップを保護する役割を果たす充填材料からなる被膜層が、端子が突出するハーメチックガラスの一方の端面と、ハウジングの一方の端面と、端子におけるハーメチックガラスの一方の端面から突出する部分とにより画定される表面のうちのいずれかを覆うように形成され、充填材料からなる被膜層が、エラストマー、または、フッ素グリースにより、形成されることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る圧力検出装置は、上述のセンサユニット、および、センサユニットの端子群を整列させる端子台を収容するセンサユニット収容部を備え、端子を整列させる端子台の端部が、ハウジングの一方の端面にシリコーン系接着剤またはフッ素系接着剤により接着され、ダイヤフラムの周縁がハウジングの他方の端面に接合されることを特徴とする。さらにまた、エポキシ系樹脂またはシリコーン系樹脂からなる被覆層が、端子台およびハウジングを封止する封止材の上面に、形成されてもよい。
【0010】
センサチップを保護する役割を果たす被覆層が、端子台の端部と、ハウジングの内周面と、ハーメチックガラスの一方の端面とにより囲まれる部分だけに形成されてもよく、また、センサチップを保護する役割を果たす被覆層が、端子におけるハーメチックガラスの一方の端面から端子台に至るまでの部分だけに形成されてもよい。さらに、センサチップを保護する役割を果たす被覆層が、端子台における端子に隣接して形成される環状の突起部から突起部に向き合うハーメチックガラスの一方の端面に至る部分だけに形成されてもよい。
【0011】
さらにまた、本発明に係る圧力検出装置は、上述のセンサユニット、および、センサユニットの端子を整列させる端子台を収容するセンサユニット収容部を備え、端子台の端部が、ハウジングの一方の端面に充填材料により接合され、ダイヤフラムの周縁がハウジングの他方の端面に接合されることを特徴とする。エポキシ系樹脂からなる被膜層が、端子台およびハウジングを封止する封止材の上面に、形成されともよく、あるいは、シリコーン系樹脂からなる被膜層が、端子台およびハウジングを封止する封止材の上面に、形成されてもよい。
【0012】
本発明に係るセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置によれば、センサチップを保護する役割を果たす被覆層が、端子群が突出するハーメチックガラスの一方の端面およびハウジングの一方の端面に形成されているのでESD保護回路の有無に影響されることなく、センサユニットの静電気耐力を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置の一例を示す断面図である。
図2A図2Aは、図1に示される例に用いられる静電気保護層の他の一例を示す部分断面図である。
図2B図2Bは、図1に示される例に用いられる静電気保護層のさらなる他の一例を示す部分断面図である。
図2C図2Cは、図1に示される例に用いられる静電気保護層のさらなる他の一例を示す部分断面図である。
図3図3は、本発明に係るセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置の他の一例を示す断面図である。
図4A図4Aは、図3に示される例に用いられる静電気保護層を部分的に拡大して示す部分断面図である。
図4B図4Bは、図3に示される例に用いられる静電気保護層の他の一例を部分的に拡大して示す部分断面図である。
図4C図4Cは、図3に示される例に用いられる静電気保護層のさらなる他の一例を部分的に拡大して示す部分断面図である。
図5図5は、本発明に係るセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置のさらなる他の一例を示す断面図である。
図6A図6Aは、図5に示される例に用いられる静電気保護層を部分的に拡大して示す部分断面図である。
図6B図6Bは、図5に示される例に用いられる静電気保護層の他の一例を部分的に拡大して示す部分断面図である。
図6C図6Cは、図5に示される例に用いられる静電気保護層のさらなる他の一例を部分的に拡大して示す部分断面図である。
図6D図6Dは、図5に示される例に用いられる静電気保護層のさらなる他の一例を部分的に拡大して示す部分断面図である。
図6E図6Eは、図5に示される例に用いられる静電気保護層のさらなる他の一例を部分的に拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係るセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置の一例を概略的に示す。
【0015】
図1において、圧力検出装置は、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材30と、継手部材30のベースプレート28に連結され後述するセンサユニットを収容しセンサチップからの検出出力信号を所定の圧力測定装置に供給するセンサユニット収容部と、を含んで構成されている。
【0016】
金属製の継手部材30は、上述の配管の接続部の雄ねじ部にねじ込まれる雌ねじ部30fsを内側に有している。雌ねじ部30fsは、矢印Pの示す方向から供給される流体を後述する圧力室28Aに導くポート30aに連通している。ポート30aの一方の開口端は、継手部材30のベースプレート28とセンサユニットのダイヤフラム32との間に形成される圧力室28Aに向けて開口している。
【0017】
センサユニット収容部の外郭部は、カバー部材としての円筒状の防水ケース20により形成されている。樹脂製の防水ケース20の下端部には、開口部20bが形成されている。内側となる開口部20bの周縁の段差部には、継手部材30のベースプレート28の周縁が係合されている。
【0018】
圧力室28A内には、継手部材30のポート30aを通じて流体としての空気または液体が供給される。センサユニットのハウジング12の下端面12ES2は、ベースプレート28に載置されている。
【0019】
圧力室28A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットは、円筒状のハウジング12と、圧力室28Aとハウジング12の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム32と、複数の圧力検出素子を有するセンサチップ16と、ガラス層を介してセンサチップ16を一端部で支持する金属製のチップマウント部材18と、センサチップ16に電気的に接続される入出力端子群40aiと、入出力端子群40aiおよびオイル充填用パイプ44をチップマウント部材18の外周面とハウジング12の内周面との間に固定するハーメチックガラス14と、を主な要素として含んで構成されている。
【0020】
ダイヤフラム32は、上述の圧力室28Aに向き合うハウジング12の一方の下端面12ES2に支持されている。圧力室28Aに配されるダイヤフラム32を保護するダイヤフラム保護カバー34は、複数の連通孔34aを有している。ダイヤフラム保護カバー34の周縁は、ダイヤフラム32の周縁とともに溶接によりステンレス鋼製のハウジング12の下端面12ES2に接合されている。
【0021】
金属製のダイヤフラム32と向かい合うセンサチップ16およびハーメチックガラス14の端面との間に形成される液封室には、例えば、圧力伝達媒体として所定量のシリコーンオイルPM、または、フッ素系不活性液体がオイル充填用パイプ44を介して充填されている。なお、オイル充填用パイプ44の一方の端部は、オイル充填後、二点鎖線で示されるように、押し潰され閉塞される。シリコーンオイルは、例えば、シロキサン結合と有機質のメチル基とからなるジメチルポリシロキサン構造を持つシリコーンオイルとされる。
【0022】
シリコーンオイルは、例えば、ジメチルシリコーンオイルであって下記の構造式のように、ポリシロキサンの側鎖、末端がすべてメチル基であるものでもよい。
【0023】
【化1】
【0024】
また、シリコーンオイルは、例えば、メチルフェニルシリコーンオイルであって下記の構造式のように、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基であるものでもよい。
【0025】
【化2】
【0026】
さらに、シリコーンオイルは、例えば、メチルハイドロジェンシリコーンオイルであって、下記の構造式のように、ポリシロキサンの側鎖の一部が水素であるものでもよい。
【0027】
【化3】
【0028】
さらにまた、シリコーンオイルは、例えば、下記の各構造式のように、側鎖、末端に有機基を導入したものであってもよい。
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
また、フッ素系不活性液体は、例えば、パーフルオロカーボン構造をもつ液体、および、ハイドロフルオロエーテル構造をもつ液体、または、下記の構造式のように、三フッ化塩化エチレンの低重合物であって、主鎖にフッ素および塩素が結合し、両端がフッ素、塩素の構造を有するものでもよい。
【0034】
【化8】
【0035】
さらに、フッ素系不活性液体は、例えば、下記の構造式のように、パーフルオロポリエーテル構造をもつフッ素液体でもよい。
【0036】
【化9】
【0037】
ハーメチックガラス14の端部に形成される凹部に配されるセンサチップ16とダイヤフラム32との間には、さらに、金属製の電位調整部材17がハーメチックガラス14の下端面14ES2に支持されている。電位調整部材17は、例えば、特許第3987386号公報にも示されるような、連通孔を有しセンサチップ16の回路のゼロ電位に接続される端子に接続されている。
【0038】
入出力端子群40ai(i=1〜8)は、2本の電源用端子と、1本の出力用端子と、5本の調整用端子とから構成されている。各端子の両端部は、それぞれ、上述のハーメチックガラス14の端部に形成される凹部と後述する端子台24の孔に突出している。2本の電源用端子と、1本の出力用端子とは、接続端子36を介して各リード線38の芯線38aに接続されている。各リード線38は、所定の圧力測定装置に接続される。なお、図1においては、8本の端子うちの4本の端子だけが示されている。
【0039】
センサチップ16は、複数の圧力検出素子を有し、例えば、シリコンで略矩形状に形成されている本体部と、本体部の上端面に形成され処理回路を形成する回路層と、第1の層としての回路層の上面に積層される第2の層としての絶縁膜層と、その絶縁膜層に形成されるアルミニウム製のシールド層と、シールド層の上層部を保護する保護層とを含んで構成されている。
【0040】
なお、上述の例において、センサユニットにおけるセンサチップ16は、ハーメチックガラス14内に保持されるチップマウント部材18の一端部で支持されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、センサチップ16が、チップマウント部材18を用いることなく、上述のハーメチックガラス14の凹部を形成する平坦面に直接的に固定されるように構成されてもよい。
【0041】
入出力端子群40aiを整列させる端子台24は、樹脂材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)で成形されている。端子台24は、入出力端子群40aiが挿入される複数個の孔とともに、内側に所定の容積の空洞部を有している。端子台24の下端面は、ハーメチックガラス14の上端面14ES1を覆うようにハウジング12の上端面12ES1に、シリコーン系接着剤により接着されている。これにより、所定の厚さを有する環状の接着層10Bがハウジング12の上端面12ES1に形成されることとなる。
【0042】
端子台24の空洞部を形成する内周面であってハーメチックガラス14の上端面14ES1に向き合う内周面には、ハーメチックガラス14に向けて突出する環状の突起部24Pが形成されている。突起部24Pの突出長さは、被覆層10Aの粘性等に応じて設定されている。このように環状の突起部24Pが形成されることにより、後述の被覆層10Aが形成されるとき、塗布された被覆層10Aの一部が、表面張力により突起部24Pと端子台24の空洞部を形成する内周面であってハーメチックガラス14の上端面14ES1に略直交する内周面との間の狭い空間内に引っ張られ保持されるので被覆層10Aが端子台24の空洞部内における一方側に偏ることなく均一に塗布されることとなる。
【0043】
また、入出力端子群40aiが突出するハーメチックガラス14の上端面14ES1全体には、シリコーン系接着剤からなる被覆層10Aが所定の厚さで形成されている。なお、被覆層10Aが、ハーメチックガラス14の上端面14ES1から突出する入出力端子群40aiの一部分もさらに覆うように、図1に斜線で示される部分10AAに形成されてもよい。
【0044】
従って、シリコーン系接着剤からなる静電気保護層10が被覆層10Aおよび接着層10Bにより形成されることとなる。このようにシリコーン系接着剤により静電気保護層10が形成されることにより、ESD保護回路の有無に影響されることなく、センサユニットの静電気耐力が、向上することとなる。
【0045】
上述のシリコーン系接着剤は、例えば、柔軟性のある付加型の一成分系であるものが好ましい。シリコーン系接着剤は、例えば、低分子シロキサン結合を有する接着剤とされる。
【0046】
シリコーン系接着剤は、例えば、ベースポリマーのポリシロキサンのケイ素原子上の置換基がメチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等のフッ素化炭化水素基などであってもよい。また、下記の構造式を有する縮合型シリコーンゴムを主成分とするものでもよい。
【0047】
【化10】
【0048】
シリコーン系接着剤は、例えば、下記の構造式を有する付加型シリコーンゴムを主成分とするものでもよい。
【0049】
【化11】
【0050】
シリコーン系接着剤は、例えば、シリコーンオイルを基油としたシリコーングリースであってもよい。
【0051】
また、シリコーン系接着剤とシリコーンオイルとが相性がよいのでシリコーン系接着剤にシリコーンオイル等が万一混じりあった場合であっても、シリコーン系接着剤の接着性が悪化する虞がない。
【0052】
なお、シリコーン系接着剤は、2成分系であってもよく、縮合型、UV硬化型であってもよい。シリコーン系接着剤の代わりに、二成分系のウレタン系接着剤が用いられても良い。また、上述の圧力伝達媒体としてフッ素系不活性液体が使用される場合、フッ素系接着剤とフッ素系不活性液体との相性がよいのでフッ素系接着剤が使用されてもよい。フッ素系接着剤は、自己接着性を有する液状フッ素エラストマーとされる。これにより、フッ素系接着剤にフッ素系不活性液体等が万一混じりあった場合であっても、フッ素系接着剤の接着性が悪化する虞がない。
【0053】
さらに、フッ素系接着剤に代えて、例えば、充填材料としてフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応基を含む下記の構造式を有するエラストマーであってもよい。
【0054】
【化12】
【0055】
さらにまた、フッ素系接着剤に代えて、例えば、充填材料として下記の各構造式を有するパーフルオロポリアルキルエーテル油を基油としたフッ素グリースであってもよい。
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
フッ素グリースは、例えば、下記の構造式を有するパーフルオロポリエーテル構造を有するものであってもよい。
【0061】
【化17】
【0062】
さらに、フッ素系接着剤に代えて、例えば、下記の構造式を有するパーフロロエラストマーであってもよい。
【0063】
【化18】
【0064】
さらにまた、フッ素系接着剤に代えて、例えば、下記の構造式を有するフッ素ゴムであってもよい。
【0065】
【化19】
【0066】
端子台24の上端には、上述の空洞部を閉塞するようにエンドキャップ22が連結されている。
【0067】
防水ケース20の内周面と端子台24およびエンドキャップ22の外周面との間、また、防水ケース20の内周面とハウジング12の外周面との間には、封止材26が充填されている。封止材26は、例えば、ウレタン系樹脂とされる。
【0068】
なお、封止材26がウレタン系樹脂である場合、ハウジング12の外周面とウレタン系樹脂との接着性を向上させるように、ハウジング12の外周面における領域TRに対し粗面化処理が施されても良い。そのような粗面化処理は、例えば、本出願人による国際出願(PCT/JP2013/083351)に開示されている粗面化処理方法が用いられても良い。
【0069】
さらに、防水ケース20内に充填された封止材26の上面には、加えて、例えば、エポキシ系樹脂、または、シリコーン系樹脂により二点鎖線で示されるように、凸状の被覆層46が形成されてもよい。これにより、被覆層46が封止材26の上面およびリード線38を封止するので封止材26の上面に水滴等が溜まることがない。
【0070】
上述の例においては、静電気保護層10が被覆層10Aおよび接着層10Bにより形成されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、図2A乃至図2Cに示されるように、静電気保護層を形成する接着層50、被覆層52、および、接着層54が、それぞれ、形成されてもよい。なお、図2A乃至図2Cにおいて、図1に示される例における構成要素と同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0071】
図2Aに示される例においては、静電気保護層を形成する接着層50が、端子台24の下端面とハウジング12の端面とハーメチックガラス14の上端面14ES1の周縁部とに囲まれた比較的小さな空間内だけに形成されてもよい。
【0072】
図2Bに示される例においては、被覆層52が、入出力端子群40aiにおけるハーメチックガラス14の上端面14ES1から突出し端子台24に到達するまでの部分だけに形成されてもよい。
【0073】
図2Cに示される例においては、接着層54が、ハーメチックガラス14の上端面14ES1と上述した環状の突起部24Pとを連結するように形成されてもよい。
【0074】
図3は、本発明に係るセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置の他の一例を概略的に示す。
【0075】
図1に示される例においては、入出力端子群40aiを整列させる端子台24を備え、入出力端子群40aiが接続端子36を介して各リード線38の芯線38aに接続されているものとされるが、その代わりに、図3に示される例では、端子台24を備えず、入出力端子群40aiが直接的に各リード線38に接続されるものである。なお、図3において、図1に示される例における構成要素と同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0076】
圧力検出装置は、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材30と、継手部材30のベースプレート28に連結され後述するセンサユニットを収容しセンサチップからの検出出力信号を所定の圧力測定装置に供給するセンサユニット収容部と、を含んで構成されている。
【0077】
ハーメチックガラス14の上端面における入出力端子群40aiが突出する部分と円筒状のハウジング12の上端面における内周縁との間に跨った部分全体には、静電気保護層を形成する被覆層56が、全円周にわたり連続して所定の厚さで環状に形成されている。被覆層56は、例えば、上述したようなシリコーン系接着剤、フッ素系接着剤、充填材料としてフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応基を含む下記の構造式を有するエラストマーであってもよい。
【0078】
被覆層56は、斯かる例に限られることなく、例えば、図4Bに示されるように、静電気保護層を形成する被覆層58が、ハーメチックガラス14の上端面における入出力端子群40aiが突出する部分とハウジング12の上端面における内周縁との間であって、その内周縁および入出力端子群40aiに対し離隔した一部分に、全円周にわたり連続して所定の厚さで環状に形成されてもよい。
【0079】
また、例えば、図4Cに示されるように、静電気保護層を形成する各被膜層59が、ハーメチックガラス14の上端面における入出力端子群40aiが突出する部分の周縁に、互いに離隔し分散した形で形成されてもよい。各被覆層59は、入出力端子群40aiを構成する各入出力端子が突出する部分から半径方向に沿ってハウジング12の上端面に到達するまで延びるように所定の厚さで放射状に形成されてもよい。
【0080】
図5は、本発明に係るセンサユニット、および、それを備える圧力検出装置のさらなる他の一例を概略的に示す。
【0081】
図1に示される例においては、ハーメチックガラス14内における共通の円周方向に沿って配される入出力端子群40aiを整列させる端子台24を備え、入出力端子群40aiが接続端子36を介して各リード線38の芯線38aに接続されているものとされるが、その代わりに、図5に示される例では、入出力端子群68ai(i=1〜8)を構成する入出力端子が個別にハーメチックガラス64ai(i=1〜8)で被覆された状態でハウジング62に保持され、しかも、端子台24を備えず、入出力端子群68aiが直接的に接続端子71を介して各リード線72に接続されるものである。なお、図5において、図1に示される例における構成要素と同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0082】
圧力検出装置は、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材30と、継手部材30のベースプレート28に連結され後述するセンサユニットを収容しセンサチップからの検出出力信号を所定の圧力測定装置に供給するセンサユニット収容部と、を含んで構成されている。
【0083】
センサユニット収容部の外郭部は、カバー部材としての円筒状の防水ケース60により形成されている。樹脂製の防水ケース60の下端部には、開口部が形成されている。内側となる開口部の周縁には、継手部材30のベースプレート28の周縁が係合されている。センサユニットのハウジング62の下端面は、ベースプレート28に載置されている。
【0084】
圧力室28A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットは、ハウジング62と、圧力室28Aとハウジング62の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム32と、複数の圧力検出素子を有するセンサチップ16と、センサチップ16に電気的に接続される入出力端子群68ai(i=1〜8)と、入出力端子群68aiを構成する各端子をハウジング62の各孔の内周面との間に個別に固定するハーメチックガラス64ai(i=1〜8)と、を主な要素として含んで構成されている。
【0085】
入出力端子群68aiは、2本の電源用端子と、1本の出力用端子と、5本の調整用端子とから構成されている。各端子の一端部は、それぞれ、上述のハーメチックガラス64aiを介してハウジング62の各孔の端部に挿入されている。2本の電源用端子と、1本の出力用端子とは、接続端子71を介して各リード線72の芯線に接続されている。
【0086】
入出力端子群68aiを構成する入出力端子が突出する各ハーメチックガラス64aiの上端面およびハウジング62におけるハーメチックガラス64ai周縁の上端面には、図6Aに拡大して示されるように、静電気保護層としてシリコーン系接着剤からなる被覆層70が所定の厚さで形成されている。被覆層70は、斯かる例に限られることなく、例えば、上述したようなフッ素系接着剤、充填材料としてフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応基を含む下記の構造式を有するエラストマーであってもよい。
【0087】
静電気保護層としての被覆層は、斯かる例に限られることなく、例えば、図6Bおよび図6Dに拡大されて示されるように、被覆層74または被覆層78が、入出力端子が突出する各ハーメチックガラス64aiの上端面および入出力端子の一部だけを覆うように形成されてもよい。
【0088】
また、静電気保護層としての被覆層76は、図6Cに拡大されて示されるように、入出力端子から離隔された位置であって各ハーメチックガラス64aiの上端面とハウジング62の上端面とに跨るように形成されてもよい。
【0089】
さらに、静電気保護層としての被覆層80は、図6Eに拡大されて示されるように、入出力端子から離隔した位置であって各ハーメチックガラス64aiの上端面近傍に隣接したハウジング62の上端面の位置に、各ハーメチックガラス64aiを取り囲むように形成されてもよい。
【0090】
なお、本発明に係る圧力検出装置の一例においては、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される雌ねじ部を有する継手部材30を備えるものとされるが、斯かる例に限られることなく、例えば、雌ねじ部の代わりに、継手部材30が雄ねじ部を有していてもよく、あるいは、継手部材30の代わりに、銅製の接続パイプが接続されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 静電気保護層
10A 被覆層
10B 接着層
12 ハウジング
14 ハーメチックガラス
16 センサチップ
18 チップマウント部材
24 端子台
26 封止材
46 被覆層
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E