(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352443
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】変圧器のための筐体および対応した変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20180625BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
H01F27/02 A
H01F27/02 D
H01F30/12 G
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-561083(P2016-561083)
(86)(22)【出願日】2014年12月30日
(65)【公表番号】特表2017-501593(P2017-501593A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2014079467
(87)【国際公開番号】WO2015101634
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】201320891866.7
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジエ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・ホン・ジャン
【審査官】
右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02346128(EP,A1)
【文献】
特表2006−505142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/02
H01F 30/12
H01F 30/10
H01F 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器のための筐体であって、前記変圧器の本体(30)を収容するための複数の収容空間が設けられたシェル(10)を具備し、各前記収容空間には、閉鎖端部(122)および密封端部(124)が設けられ、前記収容空間の2つごとの隣接した収容空間は、互いに連通していることを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記収容空間は、直線状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
シェル補強リブ(14)が、前記収容空間の2つごとの隣接した収容空間の間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体。
【請求項4】
前記シェル補強リブ(14)には、2つの隣接した収容空間を互いに連通させるための連通穴(142)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の筐体。
【請求項5】
変圧器のための前記筐体は、カバープレート(20)をさらに具備し、該カバープレート(20)は、前記収容空間の密封端部(124)に密着して接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の筐体。
【請求項6】
前記カバープレート(20)には、前記シェル補強リブ(14)に対応した複数のカバープレート補強リブ(22)が設けられ、該カバープレート補強リブ(22)は、前記シェル補強リブ(14)と結合されていることを特徴とする請求項3または4に従属した請求項5に記載の筐体。
【請求項7】
前記カバープレート(20)には、絶縁ガスを導入するためのガス入口(24)が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の筐体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の、変圧器のための筐体と、
収容空間に対応し且つ前記収容空間内に個々に搭載された複数の本体(30)と、
を具備していることを特徴とする変圧器。
【請求項9】
前記各本体(30)には、ワインディング(32)および鉄芯(34)が設けられ、該鉄芯(34)には、前記ワインディング(32)を装着するための鉄芯ポスト(342)と、該鉄芯ポストに接続された鉄ヨーク(344)と、が設けられ、該鉄ヨーク(344)は、シート状に成形されていることを特徴とする請求項8に記載の変圧器。
【請求項10】
前記鉄芯ポスト(342)の延び方向と前記鉄芯ポストの配列の方向との間のなす角は、0°、90°、または45°であることを特徴とする請求項9に記載の変圧器。
【請求項11】
前記変圧器は、三相変圧器であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変圧器のための筐体、特に、高電圧システム複合機と組み合わせて使用するための変圧器とともに使用する筐体に関する。本発明は、その筐体を使用した変圧器にも関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧システムにおいては、変圧器は、複数の本体およびそれらの本体を収容するための筐体を具備している。変圧器は、筐体内のSF6ガスにより電気的に絶縁されている。それに加えて、使用時の変圧器の防爆要件に合致するために、筐体も十分な構造的強度を備えることが必要とされている。
【0003】
変圧器のための一般的な筐体は複雑な構造を備えており、非常に大きい搭載空間を占め、且つシェル全体に関して高い機械加工コストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変圧器のための、構造的に小型の筐体を提供する必要がある。
【0005】
その筐体を使用する変圧器を提供するさらなる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、変圧器のための筐体を提供し、その筐体はシェルを具備している。シェルには、変圧器の本体を収容するための複数の収容空間が設けられている。各収容空間には、閉鎖端部と密封端部とが設けられ、2つごとの隣接した収容空間は、互いに連通している。変圧器の本体は、隣接したシェルの収容空間に配列され、配列方向に沿った変圧器のための筐体のサイズは減少され、その結果、変圧器のための筐体全体は小型の構造を有し、且つ小さい占有空間を有する。
【0007】
本発明の一態様においては、収容空間は直線状に配列されている。収容空間の直線状の配列のために、配列の方向に直交した方向におけるサイズは最小化され、一方で、配列の方向に沿ったサイズは、可能な限り減少されている。
【0008】
本発明の別の態様においては、シェル補強リブが、2つごとの隣接した収容空間の間に配置されている。2つごとの隣接した収容空間は、それらの間のシェル補強リブのみによって区切られているので、配列の方向に沿った変圧器のための筐体のサイズは、減少されている。
【0009】
本発明のまたさらなる態様においては、各シェル補強リブには、2つの隣接した収容空間を互いに連通させるための連通穴が設けられている。連通穴は、絶縁ガスを異なった収容空間の間に流すことを可能にしている。
【0010】
本発明のさらなる態様においては、変圧器のための筐体は、カバープレートをさらに具備し、このカバープレートは、収容空間の密封端部に密着して接続されている。
【0011】
本発明のさらなる態様においては、カバープレートには、シェル補強リブに対応した複数のカバープレート補強リブが設けられ、このカバープレート補強リブは、シェル補強リブと結合されている。カバープレートにカバープレート補強リブを設けることによって、カバープレート全体の機械的強度は増大され、カバープレートの防爆性能が増大されている。
【0012】
本発明のさらなる態様においては、カバープレートには、絶縁ガスを導入するためのガス入口が設けられている。
【0013】
本発明は、変圧器のための筐体および複数の本体を具備した変圧器を、さらに提供している。変圧器のための筐体は、前述のような変圧器のための筐体であり、本体は収容空間に対応して、収容空間内に個々に搭載されている。変圧器は小型構造を有し、且つ小さい占有空間を有する。
【0014】
本発明の一態様においては、各本体には、ワインディングおよび鉄芯が設けられ、この鉄芯には、ワインディングを装着するための鉄芯ポストと、この鉄芯ポストに接続された鉄ヨークと、が設けられ、鉄ヨークは、シート状に成形されている。鉄ヨークがシート状に成形されているので、配列の方向における鉄ヨークのサイズは、減少されることが可能である。
【0015】
本発明の別の態様においては、鉄芯ポストの延び方向と配列の方向との間のなす角は、0°、90°、または45°である。
【0016】
本発明のさらなる態様においては、変圧器は三相変圧器である。
【0017】
以下の図には、本発明の概略的な図示および説明が単に提供されており、発明のモデルの範囲を限定していない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】変圧器のための筐体の実施形態の構造を概略的に示した図である。
【
図2】組み立てられた状態にある、変圧器のための筐体の構造を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
技術的特徴のより良い理解のために、本発明の目的および効果、本発明の特別な実施形態が、添付図を参照してここに詳細に記載されており、図中の同じ参照符号は、同じ部品を示している。
【0020】
本記載を通して、「概要の」は「例、例示、もしくは記載として寄与する」ことを示し、「概要の」としてここに記載された任意の表現もしくは実施形態は、より好適なもしくはより有利な技術的解決策として解釈されるべきではない。
【0021】
図を簡潔に見せるために、本発明に関連した部分のみが概略的に図に示されており、それらは製品としての部分の実際の構造を表していない。それに加えて、図を簡潔に見せるためにおよび理解を容易にするために、いくつかの図において、同じ構造または機能を備えた構成の1つのみが概略的に図示されまたは参照されている。
【0022】
本記載を通して、「1つ」もしくは「1つの」との用語は、「唯一の」のみを表しているのではなく、「1つ以上の」も表している。
【0023】
本記載を通して、角度の数値は、数学的および/または幾何学的意味を厳密に限定しているのではなく、当業者によって理解される誤差および製造もしくは使用における許容差を含んでいる。
【0024】
図1は、変圧器のための筐体の概略的な実施形態の構造を示している。
図2は、組み立てられた状態にある変圧器のための筐体の構造を概略的に示している。
図1は、変圧器の筐体を破線で示している。
図1および
図2を参照すると、変圧器のための筐体はシェル10を具備し、このシェル10には、3つの収容空間が設けられている。これらの収容空間は、変圧器の本体30を収容するために使用される。各収容空間には、閉鎖端部122および密封端部124が設けられている。変圧器は、シェル10の閉鎖端部122を通じて外部回路に電気的に接続されている。変圧器のための筐体の概略的な実施形態においては、シェル補強リブ14は、2つごとの隣接した収容空間の間に配置されることが可能であり、シェル10全体の機械的強度は、シェル補強リブ14によって増強され、したがって、シェル10の防爆性能を増強している。これらの収容空間は、図中に矢印により示された配列方向Dに沿って直線的に配列され、2つごとの隣接した収容空間は、互いに連通している。3つの収容空間のみが図に示されているが、収容空間の数は、必要に応じて増加されまたは減少されることが可能であり、シェル補強リブの数は、それに応じて調節されることが可能である。
【0025】
カバープレート20は、収容空間の密封端部124に密着して接続されることが可能であり、変圧器の本体30は、シェル10およびカバープレート20によって形成された筐体内に搭載されることが可能である。変圧器のための筐体内に設けられた収容空間は、直線的に配置され、且つ2つごとの隣接した収容空間は、それらの間のシェル補強リブによってのみ分割されているので、図中の矢印により示された配列方向Dに沿った変圧器のための筐体のサイズは減少され、結果的に変圧器のための筐体全体は小型構造を有し、小さい領域を占める。
【0026】
図1に示されたように、変圧器のための筐体の概略的な実施形態においては、各シェル補強リブ14には、連通穴142が設けられている。絶縁ガスが、この連通穴142を介して2つごとの隣接した収容空間の間を流れ、例えばSF6ガスが、収容空間の間を電気的に絶縁された本体30に流れることが可能である。
【0027】
図1に示されたように、変圧器のための筐体の概略的な実施形態においては、カバープレート20には、2つのカバープレート補強リブ22が設けられている。これらのカバープレート補強リブ22は、シェル補強リブ14に対応しており、すなわち、カバープレート補強リブ22は、シェル補強リブ14と結合されている。カバープレート内にカバープレート補強リブを設けることにより、カバープレート全体の機械的強度が増強され、カバープレートの防爆性能が増強される。
【0028】
図1に示されたように、変圧器のための筐体の概略的な実施形態においては、カバープレート20にはガス入口24が設けられ、変圧器のための筐体内に導入されるガスが、ガス入口24を介して流れ込む。変圧器のための筐体全体において、1つのみのガス入口およびシェル補強リブに形成された複数の連通穴は、変圧器のための全筐体内の絶縁ガスの流れの制御を実現するのに十分であり、結果的に、変圧器全体における絶縁ガスのガス経路構造は大きく簡素化されて、したがって絶縁ガスの使用が減少される。
【0029】
本発明はさらに変圧器を提供しており、それは
図1および
図2に示されたように、変圧器のための筐体と3つの本体30とを具備し、本体30は、収容空間内に個々に収容されることが可能である。変圧器の概略的な実施形態においては、各本体30には、ワインディング32および鉄芯34が設けられており、鉄芯には鉄芯ポスト342および鉄ヨーク344が設けられている。ワインディング32は、鉄芯ポスト342上に装着されることが可能であり、鉄芯ポスト342は、鉄ヨーク344に接続されることが可能である。鉄ヨーク344がシート形状の構造であるので、鉄ヨーク344のサイズは、図中の矢印により示された配列方向Dに沿って小さく、結果的に、図中の矢印により示された配列方向に沿った本体30のサイズは減少され、本体を収容するための、変圧器のための筐体のサイズは、図中の矢印により示された配列方向Dに沿ってさらに減少されることが可能である。
【0030】
図3〜
図5は、変圧器の本体の搭載方法を示している。
図3に示されたように、一点鎖線により示された、鉄芯ポスト342の延び方向と、図中の矢印により示された配列方向Dと、の間のなす角は、45°である。
図4に示されたように、一点鎖線により示された、鉄芯ポスト342の延び方向と、図中の矢印により示された配列方向Dと、の間のなす角は、0°である。
図5に示されたように、一点鎖線により示された、鉄芯ポスト342の延び方向と、図中の矢印により示された配列方向Dと、の間のなす角は、90°である。鉄芯ポスト342の延び方向と、図中の矢印により示された配列方向Dと、の間のなす角は、必要に応じて他の数値も取ることが可能であり、
図3〜
図5に示された角度に限定されない。
【0031】
記述は、多様な実施形態を参照して記載されたが、すべての実施形態が、1つのみの独立した技術的解決策を含んでいることを意図されているのではないことが、理解されるべきである。記述のこの方法は、明確化の目的のためのみに使用されており、記述は当業者によって全体的なものとみなされ、すべての実施形態における技術的解決策は適切に組み合わされて、当業者によって理解され得る他の実施形態を形成することも可能である。
【0032】
これまでになされた詳細な記述は、単に本発明の実現可能な実施形態に向けられた特別な記述であり、本発明の保護範囲を限定する目的ではなく、特徴の組み合わせ、分割、および反復のようなすべての等価な実施形態または改良は、本発明の技術的思想から逸脱することなく形成され、本発明の保護範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0033】
10 ・・・シェル
122 ・・・閉鎖端部
124 ・・・密封端部
14 ・・・シェル補強リブ
142 ・・・連通穴
20 ・・・カバープレート
22 ・・・カバープレート補強リブ
24・・・ガス入口
30 ・・・本体
32 ・・・ワインディング
34 ・・・鉄芯
342 ・・・鉄芯ポスト
344 ・・・鉄ヨーク
D ・・・配列方向