特許第6352504号(P6352504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352504
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】流動床燃焼炉
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/18 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   F23C10/18
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-130446(P2017-130446)
(22)【出願日】2017年7月3日
(62)【分割の表示】特願2014-542024(P2014-542024)の分割
【原出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-166818(P2017-166818A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-228938(P2012-228938)
(32)【優先日】2012年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】大日 正美
(72)【発明者】
【氏名】山岡 敏浩
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05951277(US,A)
【文献】 米国特許第05016576(US,A)
【文献】 特開2010−190518(JP,A)
【文献】 特開2001−165409(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1953452(EP,A2)
【文献】 特開2000−274630(JP,A)
【文献】 米国特許第04377119(US,A)
【文献】 特開平07−091631(JP,A)
【文献】 特開2011−141089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/00
F23C 10/18
F23M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動材を流動させながら燃料を燃焼する燃焼室を有する流動床燃焼炉であって、
前記燃焼室を形成する炉壁を覆う耐火物を備え、
前記耐火物は、
部材を前記炉壁より炉内側に進入させるための貫通孔と、
前記貫通孔の一部を形成し、前記部材よりも炉内側にまで突出する突起部と、
前記燃焼室の下側に形成された底部と、を有し、
前記突起部は、
その上面に前記流動材が堆積する流動材堆積面と、
前記流動材堆積面に続く炉内側の上面が下り勾配の傾斜面と、を有し、
前記底部を平面視して、前記流動材堆積面及び前記傾斜面は、前記底部と重複していない、流動床燃焼炉。
【請求項2】
流動材を流動させながら燃料を燃焼する燃焼室を有する流動床燃焼炉であって、
前記燃焼室を形成する炉壁を覆う耐火物を備え、
前記耐火物は、
部材を前記炉壁より炉内側に進入させるための貫通孔と、
前記貫通孔の一部を形成し、前記部材よりも炉内側にまで突出する突起部と、
前記炉壁上に設けられて所定の厚みを有する壁面部と、を有し、
前記突起部は、
その上面に前記流動材が堆積する流動材堆積面と、
前記流動材堆積面に続く炉内側の上面が下り勾配の傾斜面と、
前記傾斜面と前記壁面部との間に延びる斜面と、
前記斜面に開口すると共に前記貫通孔を形成する開口部と、を有する、流動床燃焼炉。
【請求項3】
流動材を流動させながら燃料を燃焼する燃焼室を有する流動床燃焼炉であって、
前記燃焼室を形成する炉壁を覆う耐火物を備え、
前記耐火物は、
部材を前記炉壁より炉内側に進入させるための貫通孔と、
前記貫通孔の一部を形成し、前記部材よりも炉内側にまで突出する突起部と、を有し
前記突起部は、その上面に前記流動材が堆積する流動材堆積面を有する、流動床燃焼炉。
【請求項4】
前記突起部は、前記流動材堆積面に続く炉内側の上面が下り勾配の傾斜面を有する、請求項に記載の流動床燃焼炉。
【請求項5】
前記耐火物は、前記燃焼室の下側に形成された底部を有し、
前記底部を平面視して、前記流動材堆積面及び前記傾斜面は、前記底部と重複していない、請求項に記載の流動床燃焼炉。
【請求項6】
前記耐火物は、前記炉壁上に設けられて所定の厚みを有する壁面部をさらに有し、
前記突起部は、前記傾斜面と前記壁面部との間に延びる斜面と、前記斜面に開口すると共に前記貫通孔を形成する開口部と、を有する、請求項4又は5に記載の流動床燃焼炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば石炭等の燃料を例えば珪砂等の流動材と混合し、これらが流動する流動床(流動層)を燃焼室に形成しながら燃料を燃焼する流動床火炉が知られている。この流動床火炉にあっては、流動材の激しい撹拌や熱による炉壁の摩耗を防止すべく、燃焼室を形成する炉壁を耐火物により内側から覆っている。このような流動床火炉では、炉内に火炎を噴射するためのバーナーが炉壁及び耐火物を貫通して設置される。
【0003】
具体的には、以下の非特許文献1に記載されているように、耐火物の内面の上下方向途中に、当該耐火物より炉内に突出する耐火物突起部をさらに突設し、この耐火物突起部に、バーナー開口部を開口し、このバーナー開口部に続く貫通孔にバーナーの先端部が進入するように構成される。このような耐火物突起部は、一般的にバーナータイルと呼ばれるものである。そして、このバーナータイルは、非特許文献1に示すように、炉内側に向けて下向きに配置されるバーナーと同じ方向を向くように炉内側に突出し、バーナータイルの上面は炉内側に向けて下り勾配の傾斜面とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「絵とき 廃棄物の焼却技術」平成7年1月25日、株式会社オーム社発行、2・4一般廃棄物焼却用流動炉 P.47、図2・36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記流動床火炉においては、流動材が、炉壁を覆う耐火物に沿って下降するのを繰り返すため、炉内に突出しているバーナータイルに流動材が接触(衝突)することを繰り返し、その結果、バーナータイルの上面が摩耗し、長寿命化が図れないことから改善が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、バーナータイルを始めとした耐火物突起部の摩耗を低減でき、長寿命化を図ることができる流動床火炉を始めとした流動床燃焼炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による流動床燃焼炉は、原料及び流動材が流動する流動床を形成しながら原料を燃焼する燃焼室を備え、燃焼室を形成する炉壁が内側から耐火物により覆われると共に、耐火物の内面の上下方向途中に、耐火物より炉内に突出する耐火物突起部を有する流動床燃焼炉であって、耐火物突起部は、その上面に、流動材が堆積する流動材堆積面を有する。
【0008】
このような流動床燃焼炉によれば、燃焼室を形成する炉壁を内側から覆う耐火物のその内面の上下方向途中に、耐火物より炉内に突出する耐火物突起部が設けられ、この耐火物突起部の上面が、流動体堆積面を有する構成とされるため、この流動体堆積面上に、耐火物に沿い落下してくる流動材が堆積する流動材溜まりが形成される。このように流動材溜まりが形成されると、その後に落下してくる流動材は、流動材溜まりの流動材に衝突し、流動体堆積面に直接衝突することがなくなる。従って、耐火物突起部の摩耗を低減でき、長寿命化を図ることができる。
【0009】
ここで、耐火物突起部は、耐火物側の上面に流動材堆積面を有すると共に、この流動材堆積面に続く炉内側の上面に下り勾配の傾斜面を有する。このような構成を採用した場合、流動材堆積面上の流動材の堆積量が一定量を越えると、流動体溜まりから流動材が滑り落ちてくるが、この滑り落ちてくる流動材は、下り勾配の傾斜面に従い、積極的に炉内の中心側に寄せられ、流動材を流動床に容易に戻すことができる。
【0010】
ここで、上記作用を奏する耐火物突起部としては、具体的には、炉内に原料を供給するための原料供給口が開口された耐火物突起部、又は、バーナー開口部が開口されたバーナータイルが挙げられる。
【0011】
また、上記作用を奏する原料としては、具体的には、石炭、又は、バイオマス、又は、廃タイヤが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明によれば、耐火物突起部の摩耗を低減でき、長寿命化を図ることができる流動床燃焼炉を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る流動床燃焼炉の要部を示す概略断面構成図である。
図2図1のII-II矢視図である。
図3図1中の燃料供給用耐火物突起部を炉内側から見た拡大図である。
図4】本発明の流動床燃焼炉の第1変形例と第2変形例とを示す拡大断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による流動床燃焼炉の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は相当要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る流動床燃焼炉の要部を示す概略断面構成図、図2は、図1のII-II矢視図、図3は、図1中の燃料供給用耐火物突起部を炉内側から見た拡大図であり、この流動床燃焼炉は、ここでは、流動床ボイラであり、発電所に用いられるものである。
【0016】
図1に示すように、流動床ボイラ100は概略、上下端を閉じた矩形筒状の炉を有し、その下部は、下方に行くに従って幅方向(図1の左右方向)に狭まり矩形筒が小さくなる形状とされている。この流動床ボイラ100は、炉壁1内が燃焼室2とされ、この燃焼室2に、完全燃焼を促す目的で例えば珪砂等の流動材を予め収容し、燃焼室2の底部に設けた複数の開口3から当該燃焼室2に燃焼空気を導入すると共に外部から燃焼室2の下部に例えば石炭やバイオマス等の燃料を導入し、これらを流動させながら流動床を形成し燃料を燃焼するものである。
【0017】
この流動床ボイラ100の炉壁1は、炉壁周方向(図の左右方向)に並設し上下方向に延びる水壁チューブ(水管)同士を平板状のフィンで連結した所謂メンブレンパネルで構成され、このメンブレンパネル1を内側から覆うように耐火物6が設けられている。ここで、水壁チューブは、燃焼室2で発生する熱を、当該水壁チューブ内に流れる水と熱交換して水蒸気に変換し、耐火物6は、不定形耐火物で成形する耐火ライニングとされている。
【0018】
この流動床ボイラ100にあっては、図1図3に示すように、耐火物6の内面の上下方向途中に、耐火物6より炉内に突出する燃料供給用耐火物突起部10及びバーナータイル20を備えている。これらの燃料供給用耐火物突起部10及びバーナータイル20は、耐火物6の一部を炉内側に膨出させた(張り出させた)ものである。
【0019】
燃料供給用耐火物突起部10は、図1及び図3に示すように、スクリューコンベヤ4を設置すると共に当該スクリューコンベヤ4からの燃料を燃料供給口5を通して炉内に供給するための耐火物突起部であり、具体的には、炉内側に燃料供給口5が開口され、この燃料供給口5に続き炉外まで貫通する貫通孔7に、スクリューコンベヤ4の先端部が炉外側から進入するようにして設置される。そして、スクリューコンベヤ4を駆動することで、当該スクリューコンベヤ4により燃料を搬送し燃料供給口5を通して炉内に供給する。
【0020】
バーナータイル20は、図1及び図2に示すように、バーナー8を設置すると共に当該バーナー8からの火炎をバーナー開口部9を通して炉内に噴射するための耐火物突起部であり、具体的には、炉内側にバーナー開口部9が開口され、このバーナー開口部9に続き炉外まで貫通する貫通孔13に、バーナー8の先端部が炉外側から進入するようにして設置される。そして、バーナー8を駆動することで、バーナー開口部9を通して炉内に火炎を噴射し、スクリューコンベヤ4により炉内に供給された燃料を燃焼する。
【0021】
ここで、特に本実施形態にあっては、燃料供給用耐火物突起部10は、図1及び図3に示すように、耐火物6側の上面が平坦面(流動体堆積面)11とされると共に、この平坦面11に続く炉内側の上面が下り勾配の傾斜面12とされている。
【0022】
また、バーナータイル20も、燃料供給用耐火物突起部10の上面と同様に、図1及び図2に示すように、耐火物6側の上面が平坦面(流動体堆積面)21とされると共に、この平坦面21に続く炉内側の上面が下り勾配の傾斜面22とされている。
【0023】
このような構成を有する流動床ボイラ100によれば、燃焼室2において燃料の燃焼が行われ、発生した熱は水壁チューブに伝達されて熱交換が行われる。燃焼により生じた燃焼ガスは炉上部から後段に排出され、灰を含む流動材は、メンブレンパネル(炉壁)1を覆う耐火物6に沿って下降し、これを繰り返す。
【0024】
ここで、本実施形態においては、耐火物6より炉内に突出する耐火物突起部である燃料供給用耐火物突起部10、バーナータイル20の上面が、それぞれ平坦面11,21を有するため、この平坦面11,21上に、耐火物6に沿い落下してくる流動材が堆積する流動材溜まりが形成される。そして、このように流動材溜まりが形成されると、その後に落下してくる流動材は、流動材溜まりの流動材に衝突し、平坦面11,21に直接衝突することがなくなる。従って、本実施形態によれば、耐火物突起部である燃料供給用耐火物突起部10、バーナータイル20の摩耗をそれぞれ低減でき、長寿命化を図ることができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、燃料供給用耐火物突起部10、バーナータイル20は、耐火物6側の上面に平坦面11,21をそれぞれ有すると共に、この平坦面11,21に続く炉内側の上面に下り勾配の傾斜面12,22をそれぞれ有するため、平坦面11,21上の流動材の堆積量が一定量を越えて、流動材溜まりから流動材が滑り落ちると、この滑り落ちてくる流動材は、下り勾配の傾斜面12,22に従い、積極的に炉内の中心側に寄せられ、流動材を流動床に容易に戻すことができる。
【0026】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、燃焼対象を熱を発生させる燃料としているが、例えば廃タイヤやごみ等の焼却目的の廃棄物であっても良く、要は、燃料や廃棄物を始めとした燃焼するための原料であれば良い。また、このように、燃料に代えて廃タイヤやごみ等の廃棄物を原料として燃焼する場合には、上記スクリューコンベヤ4が燃料に代えて廃棄物を原料供給口(上記燃料供給口5のこと)を通して炉内に供給することになる。
【0027】
また、上記実施形態においては、流動床ボイラに対する適用を述べているが、サイクロン等が付設されて燃焼灰や未燃灰等の灰を流動床に戻す循環流動床ボイラに対しても適用でき、さらには、熱交換を行う水管を炉に備えていない流動床火炉に対しても適用可能であり、要は、原料及び流動材が流動する流動床を形成しながら原料を燃焼する燃焼室を備えた流動床燃焼炉全てに対して適用できる。
【0028】
また、上記実施形態においては、流動材溜まりの流動材堆積面としての平坦面11,12は、水平な平坦面であったが、流動材を堆積させることが可能な形状であれば水平な平坦面に限定されない。図4(a)に示されるように、第1変形例に係る流動床燃焼炉の流動材堆積面は耐火物6に向かって下り勾配の平坦面11Aであってもよい。また、図4(b)に示されるように、第2変形例の係る流動床燃焼炉の流動材体積面は曲面を有する凹面11Bであってもよい。また、流動材堆積面の一部分が水平面であり、他の部分が下り勾配の平面や凹面であってもよい。これら流動材堆積面によれば、流動材を確実に堆積させて、耐火物突起部10、バーナータイル20の摩耗を低減して、一層の長寿命化を図ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…メンブレンパネル(炉壁)、2…燃焼室、6…耐火物、10…燃料供給用耐火物突起部(耐火物突起部)、11…燃料供給用耐火物突起部の流動材堆積面(耐火物突起部の平坦面)、12…燃料供給用耐火物突起部の傾斜面(耐火物突起部の傾斜面)、20…バーナータイル(耐火物突起部)、21…バーナータイルの流動材堆積面(耐火物突起部の平坦面)、22…バーナータイルの傾斜面(耐火物突起部の傾斜面)、100…流動床ボイラ(流動床燃焼炉)。
図1
図2
図3
図4