特許第6352506号(P6352506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352506
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】除草剤及び除草剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20180625BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20180625BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20180625BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A01N37/02
   A01N37/36
   A01P13/00
   A01N33/12 101
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-143850(P2017-143850)
(22)【出願日】2017年7月25日
(62)【分割の表示】特願2014-8370(P2014-8370)の分割
【原出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-186386(P2017-186386A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西井 博行
(72)【発明者】
【氏名】杉丸 勝郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕治
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−514762(JP,A)
【文献】 特開2002−068907(JP,A)
【文献】 特表2000−504340(JP,A)
【文献】 特開平05−051302(JP,A)
【文献】 特開平06−145696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/02
A01N 33/12
A01N 37/36
A01P 13/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸、プロピオン酸及び乳酸から選ばれる1種又は2種以上の有機酸と、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドとが水に溶解しており、
上記有機酸の臭いをマスキングするマスキング香料を含有しており、
上記有機酸の濃度は、5質量%以上15質量%以下とされ、
上記ジデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度は、0.3質量%以上2.5質量%以下とされていることを特徴とする除草剤。
【請求項2】
酢酸、プロピオン酸及び乳酸から選ばれる1種又は2種以上の有機酸と、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドとが水に溶解した除草剤の製造方法において、
上記有機酸の濃度を5質量%以上15質量%以下とし、上記ジデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度を0.3質量%以上2.5質量%以下とし、
上記有機酸の臭いをマスキングするマスキング香料と上記有機酸とを混合した混合物に、上記ジデシルジメチルアンモニウムクロライドを添加することを特徴とする除草剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤及び除草剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、雑草を除去するための薬剤として、グリホサートを用いた除草剤が知られている。例えば特許文献1では、グリホサートとポリエチレンオキシドアルカノール又はポリプロピレンオキシドアルカノールとを含む低気泡性除草剤組成物が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、農薬散布による環境汚染や人体への影響等を避けるために、酢酸を用いた除草方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−521700号公報
【特許文献2】特開平5−51302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の除草剤に使用されるグリホサートは、自然界に存在しない合成農薬であるため、例えば子供やペットのいる家庭の家庭菜園など、使用が避けられ、又は制限される場面がある。そこで特許文献2に開示されている、自然界に存在する酢(酢酸)を用いた除草方法を使用することが考えられる。
【0006】
ここで、除草剤の一般的な使用場面を想定すると、除草剤の使用者が除草剤を除草対象となる雑草に散布するのであるが、使用者は、除草剤の効力が散布後、どの程度の時間で現れるかを重要視する傾向にある。
【0007】
また、例えば除草剤を散布した後、数時間以内に雨が降り、除草剤が流されたり、除草剤の濃度が薄まってしまうと、除草剤の効力が著しく減少し、使用者は効果がないものと判断して再度除草剤を散布することが考えられる。その結果、当初の必要量以上の除草剤が散布され、また本来なら余分であったはずの作業時間が必要になるという問題が生じる。
【0008】
しかしながら、特許文献2には、除草剤の散布後、葉枯れの兆候が現れるまでに数時間を要すると記載されている。このため、除草剤の効果の速効性の面で使用者が不満を抱く可能性があり、また散布後数時間以内に雨が降った場合には、上述した問題が生じる。
【0009】
また、特許文献1で使用されるグリホサートは、雑草の茎葉部分から吸収され、根等の生長部位に移行した後に雑草の生育を阻害するように作用するため、葉枯れが現れるまでに3日以上の長い時間がかかり、上述した問題はさらに顕著なものとなる。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自然界に存在する安全な化合物を用いて、葉枯れ効果とその速効性が向上した除草剤及び除草剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、多くの雑草の茎葉の表面は撥水性で、水分が葉の表面においてはじかれるという点に着目し、有機酸と界面活性剤とを併用して有機酸の葉枯れ効果とその速効性を向上するという知見を得て、鋭意検討を重ねた。その結果、酢酸、プロピオン酸及び乳酸から選ばれる1種又は2種以上の有機酸と、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)との併用により、除草剤の葉枯れ効果とその速効性が著しく向上することを見いだし、本発明に至った。
【0012】
すなわち、第1の発明の除草剤では、酢酸、プロピオン酸及び乳酸から選ばれる1種又は2種以上の有機酸と、DDACとが水に溶解しており、上記有機酸の臭いをマスキングするマスキング香料を含有しており、上記有機酸の濃度は、5質量%以上15質量%以下とされ、上記ジデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度は、0.3質量%以上2.5質量%以下とされていることを特徴とする。
【0013】
本発明の除草剤に含まれるDDACは陽イオン性界面活性剤であるため、負に帯電した茎葉表面の角皮(クチクラ)に付着しやすい。DDACが雑草の茎葉表面に触れると、茎葉表面の角皮にDDACが付着して茎葉表面の濡れ性を向上させるとともに、茎葉の細胞壁を損傷ないし破壊する。そして、溶媒中に溶解した有機酸が、茎葉表面に素早く濡れ広がる。また、茎葉の細胞壁が損傷ないし破壊されているので有機酸が細胞内部に侵入しやすくなる。この結果、除草剤に含まれる有機酸が素早く雑草に吸収され、従来のものに比べて極めて短時間で葉枯れ効果が現れる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によると、酢酸、プロピオン酸及び乳酸から選ばれる1種又は2種以上の有機酸と、DDACとを含有させた除草剤とすることにより、葉枯れ効果とその速効性を著しく向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0016】
本実施形態における除草剤は、酢酸を含有する醸造酢と、DDACと、溶媒としてのイオン交換水と、マスキング香料としてのバニリンとを含む。
【0017】
醸造酢としては、例えばHDV(キューピー醸造株式会社)やHA−150(マルカン酢株式会社)など、酢酸を含有する市販の醸造酢を用いることができる。特に高酸度の醸造酢を用いることで、除草剤中の酢酸濃度を上げて、除草剤の効力を向上させることが可能となるため好ましい。醸造酢に代えて、木酢液や市販の合成酢酸を用いてもよい。合成酢酸であれば、より安価に除草剤を製造可能である。また、醸造酢の一部又は全部を、市販のプロピオン酸又は乳酸に置き換えてもよい。ただし、プロピオン酸は不快臭が強いため、使用者に忌避される傾向があり、また後述するように、乳酸は酢酸よりも効力が劣る。したがって、除草剤は酢酸を含有することが望ましい。なお、除草剤中の酢酸の濃度は、葉枯れ効果とその速効性の向上の観点から5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、作業者に対する影響を考慮すると、15質量%以下が好ましい。
【0018】
DDACとしては、例えばパイオニンB−2211(竹本油脂株式会社)や、アーカード210−80E(ライオン株式会社)などの市販のものを用いることができる。なお、除草剤中のDDACの濃度は、葉枯れ効果の観点から0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、作業者に対する影響を考慮すると、2.5質量%以下が好ましい。
【0019】
また、バニリンに代えて、動物性および植物性の天然香料や、炭化水素、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、ラクトン、オキシド、エステル類等の人工香料を用いてもよい。これらの香料は、有機酸、特に酢酸の臭いをマスキングするのに有効である。
【0020】
また溶媒として、イオン交換水に代えて、蒸留水や水道水、井戸水などを用いてもよい。また、水の一部又は全部を、有機酸及びDDACを溶解可能な有機溶剤に置換してもよい。有機溶剤の例としては、エタノールやイソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0021】
本実施形態における除草剤の製造方法は、まずバニリンを小容器にとり、少量の醸造酢(バニリンの約50倍の質量)を加えて撹拌した後、DDACを加え、バニリン及びDDACを醸造酢に溶解させる。そして、溶解後の液を大容器に移し、規定の濃度になるように、酢酸、イオン交換水を順に加え、撹拌する。この方法により、本実施形態の除草剤が得られる。ただし、調合順序はこれに限らず、例えば醸造酢に溶解させたバニリンと、イオン交換水に溶解させたDDACとを混合した後、醸造酢とイオン交換水とを加えてもよい。なお、溶解とはミセル状態での溶解も含み、肉眼で均一に見える状態を指すものとする。
【0022】
このようにして得た除草剤は、例えば上部に複数の孔の空いたシャワータイプの容器に入れ、容器を傾けることにより雑草の茎葉部分にかけて使用することができる。その他、霧吹き、エアゾール容器、農業用の散布機又は噴霧機等を用いて除草剤を散布してもよい。
【0023】
また、使用時と比べて濃度の高い状態で除草剤を製造、貯蔵及び販売し、除草剤使用前に水等の液体で希釈して使用することも可能である。
【実施例】
【0024】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0025】
<除草剤の調合>
表1に示す組成比になるように各成分を混合し、撹拌して溶解させた。
【0026】
【表1】
【0027】
<試験例1>
有機酸の種類が葉枯れ効果に与える影響を確認するため、実施例1〜3及び比較例1〜3の除草剤を用いて試験を行なった。なお、表1に示した通り、実施例1〜3はそれぞれ酢酸、プロピオン酸、乳酸を含有し、比較例1、2はそれぞれリンゴ酸、クエン酸を含有する。また、実施例1〜3及び比較例1〜3はいずれも0.5質量%のDDACを含有する。
【0028】
まず、背丈約20cmに生育したニチニチソウ(品種:タイタン)及びビオラ(品種:チェルシー)を用意し、異常な葉を取り除いた。そして、実施例1〜3及び比較例1〜3の除草剤をそれぞれハンドスプレー容器(キャニヨン(株)製、品番:T−95、ノズル孔直径:6mm、噴射量:約1mL/回)に入れ、温室内にあるニチニチソウ及びオラの株の斜め上方20〜30cm程度の距離から、葉の表面を完全に濡らすように、50cm×50cmの試験地に均一に25mLの除草剤を散布した。また、比較例4として、何も処理を行わないニチニチソウ及びビオラも温室内に用意した。そして、温室内で、時間経過に伴う葉の色の変化を目視で観察し、褐色に変化した葉の面積の割合から下記の採点基準で褐変度合を評価して、2株の平均を算出した。
【0029】
採点基準
0:褐変なし、又は葉の面積の5%未満が褐変
1:葉の面積の5%以上25%未満が褐変
2:葉の面積の25%以上50%未満が褐変
3:葉の面積の50%以上75%未満が褐変
4:葉の面積の75%以上95%未満が褐変
5:葉の面積の95%以上が褐変
【0030】
ここで、褐変度合0は除草剤使用前と同等の外観であり、使用者は除草剤の効果をほとんど実感できない。褐変度合1以上で、使用者は除草剤の効果を実感できる。
【0031】
なお、試験中の最高気温は32.2℃、最低気温は12.7℃、降水量は0mm、積算日照時間は103時間であった。
【0032】
ニチニチソウの試験結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
実施例1、2では、除草剤散布後4時間で葉の面積の25%以上が褐変し、実施例3では、葉の面積の5%以上が褐変した。一方、比較例1〜4ではいずれも、除草剤散布後48時間経過時まで、葉枯れ効果は確認できなかった。
【0035】
次に、ビオラの試験結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
実施例1〜3及び比較例1、2で、除草剤散布後4時間経過時までに葉の面積の5%以上が褐変し、有機酸を含まない比較例3、4では、葉枯れ効果を確認できなかった。ただし、実施例1〜3では除草剤散布後24時間経過時に葉の面積の50%以上が褐変していたのに対し、比較例1〜4では、除草剤散布後24時間経過時の葉の褐変面積は50%未満であり、その後除草剤散布後336時間(14日間)経過時に至るまで、実施例1〜3の褐変度合の方が比較例1〜4よりも高かった。
【0038】
したがって、除草剤に酢酸、プロピオン酸又は乳酸を用いることで、葉枯れ効果とその速効性が著しく向上し、特に酢酸及びプロピオン酸では、葉枯れ効果がより向上した。
【0039】
<試験例2>
除草剤中の界面活性剤の種類及び酢酸の濃度が葉枯れ効果に与える影響を確認するため、実施例1、4〜6及び比較例5〜9を用いて、除草剤の効きにくい雑草として知られるメヒシバ(イネ科)に対して試験を行なった。
【0040】
まず、背丈約30cmの野生のメヒシバを用意し、異常な葉を取り除いた。そして、実施例1、4〜6及び比較例5〜9の除草剤をそれぞれハンドスプレー容器(キャニヨン(株)製、品番:T−95、ノズル孔直径:6mm、噴射量:約1mL/回)に入れ、メヒシバの株の斜め上方20〜30cm程度の距離から、葉の表面を完全に濡らすように、50cm×50cmの試験地に均一に25mLの除草剤を散布した。そして、時間経過に伴う葉の色の変化を目視で観察し、褐色に変化した葉の面積の割合(褐変割合)を評価した。
【0041】
ここで、褐変割合0%は除草剤散布前と同等の外観であり、使用者は除草剤の効果をほとんど実感できない。褐変割合1%以上で、使用者は除草剤の効果を実感できる。
【0042】
なお、試験中の最高気温は30.6℃、最低気温は22.6℃、降水量は0mm、積算日照時間は3.5時間であった。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
まず、酢酸濃度がいずれも同等の、実施例1と比較例5〜7とを比較する。表1に示した通り、実施例1はDDACを含む例であり、比較例5は界面活性剤を含まない例、比較例6はDDAC以外の4級アンモニウム塩(陽イオン性界面活性剤)を含む例、比較例7は非イオン性界面活性剤を含む例である。
【0045】
除草剤散布後1時間経過時の褐変度合を確認すると、実施例1は葉の面積の20%が褐変した。一方、比較例5〜7では、褐変した葉の面積の割合は0%であり、使用者には除草剤の効果を確認できなかった。また、散布後24時間経過時までに、実施例1では葉の面積の80%が褐変したのに対し、比較例5〜7で褐変した葉の面積の割合は50%〜60%であった。
【0046】
したがって、酢酸にDDACを添加することにより、葉枯れ効果とその速効性が著しく向上した。
【0047】
次に、同等の濃度でDDACを含有し、酢酸の濃度を変えた実施例1、4〜6と比較例8、9とを比較する。表1に示した通り、実施例1、4〜6の酢酸濃度はそれぞれ10.0、5.0、7.0、15.0質量%であり、比較例8、9の酢酸濃度はそれぞれ1.0、3.0質量%である。
【0048】
散布後1時間経過時の褐変度合を確認すると、酢酸濃度5.0質量%〜7.0質量%の実施例4、5は葉の面積1%〜10%、酢酸濃度10.0質量%〜15.0質量%の実施例1、6は葉の面積の20%が褐変し、除草剤の効果を使用者が確認することができた。一方、酢酸濃度1.0質量%〜3.0質量%の比較例8、9では、褐変した葉の面積の割合は0%であり、使用者には除草剤の効果を確認できなかった。また、散布後24時間経過時までに、酢酸濃度5.0質量%〜7.0質量%の実施例4、5では葉の面積の40%〜60%が褐変し、酢酸濃度10.0質量%〜15.0質量%の実施例1、6では葉の面積の80%〜90%が褐変した。一方、酢酸濃度1.0質量%〜3.0質量%の比較例8、9では、散布後24時間経過時までに褐変した葉の面積の割合は0%〜10%であった。
【0049】
したがって、5.0質量%以上の酢酸にDDACを添加すると、1時間という短時間で葉枯れ効果が現れ、10.0質量%以上の酢酸にDDACを添加すると、葉枯れ効果とその速効性がさらに向上した。
【0050】
以上より、実施例1、4〜6では比較例5〜9よりも葉枯れ効果とその速効性が著しく向上した。
【0051】
<試験例3>
DDACの濃度が葉枯れ効果とその速効性に与える影響を確認するため、同等の濃度で酢酸を含有し、DDACの濃度を変えた実施例4、7〜9と比較例10、11とを用いて、<試験例2>と同様の試験を行なった。表1に示した通り、実施例4、7〜9のDDAC濃度はそれぞれ0.5、0.3、1.0、2.0質量%であり、比較例10はDDACを含有せず、比較例11のDDAC濃度は0.1質量%である。また、実施例4、7〜9及び比較例10、11はいずれも、5.0質量%の酢酸を含有する。
【0052】
なお、試験中の最高気温は30.3℃、最低気温は22.8℃、降水量は0mm、積算日照時間は5.8時間であった。結果を表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
除草剤散布後2時間経過時の褐変度合を確認すると、DDAC濃度0.3質量%〜2.0質量%の実施例4、7〜9は葉の面積の1%以上が褐変し、除草剤の効果を使用者が確認することができた。一方、DDAC濃度0.1質量%以下の比較例10、11では、褐変した葉の面積の割合は0%であり、使用者には除草剤の効果を確認できなかった。また、散布後4時間経過時までに、DDAC濃度0.3質量%の実施例7では葉の面積の1%、DDAC濃度0.5質量%〜1.0質量%の実施例4、8では葉の面積の3%、DDAC濃度2.0質量%の実施例9では葉の面積の10%が褐変した。また、散布後24時間経過時までに、実施例4、7〜9では葉の面積の50〜60%が褐変したのに対し、DDAC濃度0.1質量%以下の比較例10、11では、褐変した葉の面積の割合は15%〜30%であった。
【0055】
したがって、酢酸に0.3質量%以上のDDACを添加すると、2時間という短時間で葉枯れ効果が現れ、0.5質量%以上のDDACを添加すると、葉枯れ効果とその速効性が向上し、2.0質量%以上のDDACを添加すると、葉枯れ効果とその速効性がさらに向上した。
【0056】
<試験例4>
メヒシバ以外の雑草に対する葉枯れ効果を確認するため、ネザサ(イネ科)及びイタドリ(タデ科)を用いて、試験を行なった。
【0057】
まず、葉長5〜10cmの野生のネザサ及び葉長5〜10cmの野生のイタドリについて、異常な葉を取り除いた。そして、実施例10及び比較例12、13の除草剤をそれぞれハンドスプレー容器(キャニヨン(株)製、品番:T−95、ノズル孔直径:6mm、噴射量:約1mL/回)に入れ、ネザサ及びイタドリの株の斜め上方20〜30cm程度の距離から、葉の表面を完全に濡らすように、除草剤を充分量散布した。ネザサは散布翌日(20時間後)、イタドリは散布3時間後の葉の褐変を目視で観察し、下記の採点基準で褐変度合を評価した。
【0058】
採点基準
0:褐変なし、又は葉の面積の5%未満が褐変
1:葉の面積の5%以上25%未満が褐変
2:葉の面積の25%以上50%未満が褐変
3:葉の面積の50%以上90%未満が褐変
4:葉の面積の90%以上が褐変
【0059】
なお、試験中の最高気温は34.4℃(ネガサ)又は31.2℃(イタドリ)、最低気温は24.7℃(ネガサ)又は22.5℃(イタドリ)、降水量は0mm(ネガサ)又は1mm(イタドリ)、積算日照時間は8.0時間(ネガサ)又は3.7時間(イタドリ)であった。6株の平均を表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
表6に示す通り、実施例10はDDACを含有する例であり、比較例12、13は、DDAC以外の4級アンモニウム塩(陽イオン性界面活性剤)を含む例である。
【0062】
ネザサ及びイタドリの両者について、試験例1と同様に、実施例の方が比較例よりも葉枯れ効果が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る除草剤及び除草方法は、畑地、水田、果樹園、家庭菜園等の農耕地や、グラウンド、工場敷地等の非農耕地での雑草を防除するために使用できる。