【実施例】
【0024】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0025】
<除草剤の調合>
表1に示す組成比になるように各成分を混合し、撹拌して溶解させた。
【0026】
【表1】
【0027】
<試験例1>
有機酸の種類が葉枯れ効果に与える影響を確認するため、実施例1〜3及び比較例1〜3の除草剤を用いて試験を行なった。なお、表1に示した通り、実施例1〜3はそれぞれ酢酸、プロピオン酸、乳酸を含有し、比較例1、2はそれぞれリンゴ酸、クエン酸を含有する。また、実施例1〜3及び比較例1〜3はいずれも0.5質量%のDDACを含有する。
【0028】
まず、背丈約20cmに生育したニチニチソウ(品種:タイタン)及びビオラ(品種:チェルシー)を用意し、異常な葉を取り除いた。そして、実施例1〜3及び比較例1〜3の除草剤をそれぞれハンドスプレー容器(キャニヨン(株)製、品番:T−95、ノズル孔直径:6mm、噴射量:約1mL/回)に入れ、温室内にあるニチニチソウ及びオラの株の斜め上方20〜30cm程度の距離から、葉の表面を完全に濡らすように、50cm×50cmの試験地に均一に25mLの除草剤を散布した。また、比較例4として、何も処理を行わないニチニチソウ及びビオラも温室内に用意した。そして、温室内で、時間経過に伴う葉の色の変化を目視で観察し、褐色に変化した葉の面積の割合から下記の採点基準で褐変度合を評価して、2株の平均を算出した。
【0029】
採点基準
0:褐変なし、又は葉の面積の5%未満が褐変
1:葉の面積の5%以上25%未満が褐変
2:葉の面積の25%以上50%未満が褐変
3:葉の面積の50%以上75%未満が褐変
4:葉の面積の75%以上95%未満が褐変
5:葉の面積の95%以上が褐変
【0030】
ここで、褐変度合0は除草剤使用前と同等の外観であり、使用者は除草剤の効果をほとんど実感できない。褐変度合1以上で、使用者は除草剤の効果を実感できる。
【0031】
なお、試験中の最高気温は32.2℃、最低気温は12.7℃、降水量は0mm、積算日照時間は103時間であった。
【0032】
ニチニチソウの試験結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
実施例1、2では、除草剤散布後4時間で葉の面積の25%以上が褐変し、実施例3では、葉の面積の5%以上が褐変した。一方、比較例1〜4ではいずれも、除草剤散布後48時間経過時まで、葉枯れ効果は確認できなかった。
【0035】
次に、ビオラの試験結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
実施例1〜3及び比較例1、2で、除草剤散布後4時間経過時までに葉の面積の5%以上が褐変し、有機酸を含まない比較例3、4では、葉枯れ効果を確認できなかった。ただし、実施例1〜3では除草剤散布後24時間経過時に葉の面積の50%以上が褐変していたのに対し、比較例1〜4では、除草剤散布後24時間経過時の葉の褐変面積は50%未満であり、その後除草剤散布後336時間(14日間)経過時に至るまで、実施例1〜3の褐変度合の方が比較例1〜4よりも高かった。
【0038】
したがって、除草剤に酢酸、プロピオン酸又は乳酸を用いることで、葉枯れ効果とその速効性が著しく向上し、特に酢酸及びプロピオン酸では、葉枯れ効果がより向上した。
【0039】
<試験例2>
除草剤中の界面活性剤の種類及び酢酸の濃度が葉枯れ効果に与える影響を確認するため、実施例1、4〜6及び比較例5〜9を用いて、除草剤の効きにくい雑草として知られるメヒシバ(イネ科)に対して試験を行なった。
【0040】
まず、背丈約30cmの野生のメヒシバを用意し、異常な葉を取り除いた。そして、実施例1、4〜6及び比較例5〜9の除草剤をそれぞれハンドスプレー容器(キャニヨン(株)製、品番:T−95、ノズル孔直径:6mm、噴射量:約1mL/回)に入れ、メヒシバの株の斜め上方20〜30cm程度の距離から、葉の表面を完全に濡らすように、50cm×50cmの試験地に均一に25mLの除草剤を散布した。そして、時間経過に伴う葉の色の変化を目視で観察し、褐色に変化した葉の面積の割合(褐変割合)を評価した。
【0041】
ここで、褐変割合0%は除草剤散布前と同等の外観であり、使用者は除草剤の効果をほとんど実感できない。褐変割合1%以上で、使用者は除草剤の効果を実感できる。
【0042】
なお、試験中の最高気温は30.6℃、最低気温は22.6℃、降水量は0mm、積算日照時間は3.5時間であった。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
まず、酢酸濃度がいずれも同等の、実施例1と比較例5〜7とを比較する。表1に示した通り、実施例1はDDACを含む例であり、比較例5は界面活性剤を含まない例、比較例6はDDAC以外の4級アンモニウム塩(陽イオン性界面活性剤)を含む例、比較例7は非イオン性界面活性剤を含む例である。
【0045】
除草剤散布後1時間経過時の褐変度合を確認すると、実施例1は葉の面積の20%が褐変した。一方、比較例5〜7では、褐変した葉の面積の割合は0%であり、使用者には除草剤の効果を確認できなかった。また、散布後24時間経過時までに、実施例1では葉の面積の80%が褐変したのに対し、比較例5〜7で褐変した葉の面積の割合は50%〜60%であった。
【0046】
したがって、酢酸にDDACを添加することにより、葉枯れ効果とその速効性が著しく向上した。
【0047】
次に、同等の濃度でDDACを含有し、酢酸の濃度を変えた実施例1、4〜6と比較例8、9とを比較する。表1に示した通り、実施例1、4〜6の酢酸濃度はそれぞれ10.0、5.0、7.0、15.0質量%であり、比較例8、9の酢酸濃度はそれぞれ1.0、3.0質量%である。
【0048】
散布後1時間経過時の褐変度合を確認すると、酢酸濃度5.0質量%〜7.0質量%の実施例4、5は葉の面積1%〜10%、酢酸濃度10.0質量%〜15.0質量%の実施例1、6は葉の面積の20%が褐変し、除草剤の効果を使用者が確認することができた。一方、酢酸濃度1.0質量%〜3.0質量%の比較例8、9では、褐変した葉の面積の割合は0%であり、使用者には除草剤の効果を確認できなかった。また、散布後24時間経過時までに、酢酸濃度5.0質量%〜7.0質量%の実施例4、5では葉の面積の40%〜60%が褐変し、酢酸濃度10.0質量%〜15.0質量%の実施例1、6では葉の面積の80%〜90%が褐変した。一方、酢酸濃度1.0質量%〜3.0質量%の比較例8、9では、散布後24時間経過時までに褐変した葉の面積の割合は0%〜10%であった。
【0049】
したがって、5.0質量%以上の酢酸にDDACを添加すると、1時間という短時間で葉枯れ効果が現れ、10.0質量%以上の酢酸にDDACを添加すると、葉枯れ効果とその速効性がさらに向上した。
【0050】
以上より、実施例1、4〜6では比較例5〜9よりも葉枯れ効果とその速効性が著しく向上した。
【0051】
<試験例3>
DDACの濃度が葉枯れ効果とその速効性に与える影響を確認するため、同等の濃度で酢酸を含有し、DDACの濃度を変えた実施例4、7〜9と比較例10、11とを用いて、<試験例2>と同様の試験を行なった。表1に示した通り、実施例4、7〜9のDDAC濃度はそれぞれ0.5、0.3、1.0、2.0質量%であり、比較例10はDDACを含有せず、比較例11のDDAC濃度は0.1質量%である。また、実施例4、7〜9及び比較例10、11はいずれも、5.0質量%の酢酸を含有する。
【0052】
なお、試験中の最高気温は30.3℃、最低気温は22.8℃、降水量は0mm、積算日照時間は5.8時間であった。結果を表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
除草剤散布後2時間経過時の褐変度合を確認すると、DDAC濃度0.3質量%〜2.0質量%の実施例4、7〜9は葉の面積の1%以上が褐変し、除草剤の効果を使用者が確認することができた。一方、DDAC濃度0.1質量%以下の比較例10、11では、褐変した葉の面積の割合は0%であり、使用者には除草剤の効果を確認できなかった。また、散布後4時間経過時までに、DDAC濃度0.3質量%の実施例7では葉の面積の1%、DDAC濃度0.5質量%〜1.0質量%の実施例4、8では葉の面積の3%、DDAC濃度2.0質量%の実施例9では葉の面積の10%が褐変した。また、散布後24時間経過時までに、実施例4、7〜9では葉の面積の50〜60%が褐変したのに対し、DDAC濃度0.1質量%以下の比較例10、11では、褐変した葉の面積の割合は15%〜30%であった。
【0055】
したがって、酢酸に0.3質量%以上のDDACを添加すると、2時間という短時間で葉枯れ効果が現れ、0.5質量%以上のDDACを添加すると、葉枯れ効果とその速効性が向上し、2.0質量%以上のDDACを添加すると、葉枯れ効果とその速効性がさらに向上した。
【0056】
<試験例4>
メヒシバ以外の雑草に対する葉枯れ効果を確認するため、ネザサ(イネ科)及びイタドリ(タデ科)を用いて、試験を行なった。
【0057】
まず、葉長5〜10cmの野生のネザサ及び葉長5〜10cmの野生のイタドリについて、異常な葉を取り除いた。そして、実施例10及び比較例12、13の除草剤をそれぞれハンドスプレー容器(キャニヨン(株)製、品番:T−95、ノズル孔直径:6mm、噴射量:約1mL/回)に入れ、ネザサ及びイタドリの株の斜め上方20〜30cm程度の距離から、葉の表面を完全に濡らすように、除草剤を充分量散布した。ネザサは散布翌日(20時間後)、イタドリは散布3時間後の葉の褐変を目視で観察し、下記の採点基準で褐変度合を評価した。
【0058】
採点基準
0:褐変なし、又は葉の面積の5%未満が褐変
1:葉の面積の5%以上25%未満が褐変
2:葉の面積の25%以上50%未満が褐変
3:葉の面積の50%以上90%未満が褐変
4:葉の面積の90%以上が褐変
【0059】
なお、試験中の最高気温は34.4℃(ネガサ)又は31.2℃(イタドリ)、最低気温は24.7℃(ネガサ)又は22.5℃(イタドリ)、降水量は0mm(ネガサ)又は1mm(イタドリ)、積算日照時間は8.0時間(ネガサ)又は3.7時間(イタドリ)であった。6株の平均を表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
表6に示す通り、実施例10はDDACを含有する例であり、比較例12、13は、DDAC以外の4級アンモニウム塩(陽イオン性界面活性剤)を含む例である。
【0062】
ネザサ及びイタドリの両者について、試験例1と同様に、実施例の方が比較例よりも葉枯れ効果が向上した。