特許第6352509号(P6352509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352509チップシールおよびこれを用いたスクロール流体機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6352509
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】チップシールおよびこれを用いたスクロール流体機械
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   F04C18/02 311T
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-158113(P2017-158113)
(22)【出願日】2017年8月18日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
(72)【発明者】
【氏名】堀田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】木全 央幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓馬
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−303281(JP,A)
【文献】 特開2005−330850(JP,A)
【文献】 特開平09−250467(JP,A)
【文献】 特開2009−228476(JP,A)
【文献】 特開2002−266778(JP,A)
【文献】 特開平08−028461(JP,A)
【文献】 特開2002−070766(JP,A)
【文献】 特開2014−080940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端板上に渦巻状の第1壁体が設けられた第1スクロール部材と、前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板上に渦巻状の第2壁体が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材とを備えたスクロール流体機械の渦巻状の前記各壁体の歯先に形成された溝部に設置される樹脂製のチップシールであって、
高さが渦巻き方向に連続的に変化する前記壁体の前記溝部に設置される傾斜部と、高さが渦巻き方向に一定とされた前記壁体の前記溝部に設置され、前記傾斜部に隣接する平坦部とを備え、
前記傾斜部は、前記公転旋回運動を行う期間にわたって前記壁体の歯先と前記端板の歯底との間のチップクリアランスが変化しても接触するように前記平坦部に対して傾斜し、
前記傾斜部と前記平坦部との間の隣接領域を避けた位置の表面に、凹部が形成されていることを特徴とするチップシール。
【請求項2】
前記凹部は、前記平坦部と前記傾斜部との接続位置から前記平坦部の幅の2倍以上離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のチップシール。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記平坦部よりも厚くされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のチップシール。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記平坦部よりも耐摩耗性の高い材料とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のチップシール。
【請求項5】
スクロール流体機械の渦巻状の壁体の歯先に形成された溝部に設置される樹脂製のチップシールであって、
高さが渦巻き方向に連続的に変化する前記壁体の前記溝部に設置される傾斜部と、高さが渦巻き方向に一定とされた前記壁体の前記溝部に設置され、前記傾斜部に隣接する平坦部とを備え、
前記傾斜部と前記平坦部と分割され
前記傾斜部は、前記平坦部よりも厚くされていることを特徴とするチップシール。
【請求項6】
スクロール流体機械の渦巻状の壁体の歯先に形成された溝部に設置される樹脂製のチップシールであって、
高さが渦巻き方向に連続的に変化する前記壁体の前記溝部に設置される傾斜部と、高さが渦巻き方向に一定とされた前記壁体の前記溝部に設置され、前記傾斜部に隣接する平坦部とを備え、
前記傾斜部と前記平坦部と分割され
前記傾斜部は、前記平坦部よりも耐摩耗性の高い材料とされていることを特徴とするチップシール。
【請求項7】
第1端板上に渦巻状の第1壁体が設けられた第1スクロール部材と、
前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板上に渦巻状の第2壁体が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材と、
を備えたスクロール流体機械であって、
向かい合う前記第1端板と前記第2端板との対向面間距離が、前記第1壁体及び前記第2壁体の外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部を備え、
前記傾斜部に対応する前記第1壁体及び前記第2壁体の歯先に形成された溝部には、対向する歯底に接触して流体をシールする請求項1からのいずれかに記載のチップシールが設けられていることを特徴とするスクロール流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップシールおよびこれを用いたスクロール流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、端板上に渦巻状の壁体が設けられた固定スクロール部材と旋回スクロール部材とを噛み合わせ、公転旋回運動を行わせて流体を圧縮または膨張するスクロール流体機械が知られている。
【0003】
このようなスクロール流体機械として、特許文献1に示すようないわゆる段付きスクロール圧縮機が知られている。この段付きスクロール圧縮機は、固定スクロールおよび旋回スクロールの渦巻状の壁体の歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う位置に各々段部が設けられ、各段部を境に壁体の外周側の高さが内周側の高さよりも高くされている。段付きスクロール圧縮機は、壁体の周方向だけでなく、高さ方向にも圧縮(三次元圧縮)されるため、段部を備えていない一般的なスクロール圧縮機(二次元圧縮)に比べ、押しのけ量を大きくし、圧縮機容量を増加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−55173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、段付きスクロール圧縮機は、段部における流体漏れが大きいという問題がある。また、段部の根元部分に応力が集中して強度が低下するという問題がある。
【0006】
これに対して、発明者等は、壁体及び端板に設けられた段部に代えて連続的な傾斜部を設けることを検討している。
【0007】
壁体の先端である歯先には、チップシールを収納するための溝部が壁体の渦巻き方向に沿って形成されている。チップシールは、スクロール圧縮機の運転中に、歯先に対向する歯底に摺動しながら接触することで、流体漏れを抑制する。
【0008】
壁体の傾斜部に隣接して高さが一定とされた壁体の平坦部が設けられている場合、チップシールは、壁体の傾斜部と壁体の平坦部に形成された溝部に収納される。このとき、チップシールの平坦部は、壁体が旋回運動を行っても、対向する端板(歯底)との距離は一定となる。一方、チップシールの傾斜部は、壁体の旋回運動にしたがって、対向する端板(歯底)に対して接近離間を繰り返す。したがって、チップシールの平坦部とチップシールの傾斜部との間の隣接領域では繰り返し応力が発生し、破損のおそれがある。
また、チップシールの傾斜部は、対向する端板(歯底)に対して接近離間を繰り返すので、平坦部よりも摩耗するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、壁体に連続的な傾斜部を設けた場合であっても、壁体の歯先に設置されるチップシールの耐久性を向上させることができるチップシールおよびこれを用いたスクロール流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のチップシールおよびこれを用いたスクロール流体機械は以下の手段を採用する。
【0011】
本発明の一態様に係るチップシールは、第1端板上に渦巻状の第1壁体が設けられた第1スクロール部材と、前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板上に渦巻状の第2壁体が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材とを備えたスクロール流体機械の渦巻状の前記各壁体の歯先に形成された溝部に設置される樹脂製のチップシールであって、高さが渦巻き方向に連続的に変化する前記壁体の前記溝部に設置される傾斜部と、高さが渦巻き方向に一定とされた前記壁体の前記溝部に設置され、前記傾斜部に隣接する平坦部とを備え、前記傾斜部は、前記公転旋回運動を行う期間にわたって前記壁体の歯先と前記端板の歯底との間のチップクリアランスが変化しても接触するように前記平坦部に対して傾斜し、前記傾斜部と前記平坦部との間の隣接領域を避けた位置の表面に、凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
チップシールの平坦部は、渦巻状の壁体が旋回運動を行っても、対向する壁部(歯底)との距離は一定となる。一方、チップシールの傾斜部は、渦巻状の壁体の旋回運動にしたがって、対向する壁部(歯底)に対して接近離間を繰り返す。したがって、チップシールの平坦部と傾斜部との間の隣接領域では繰り返し応力が発生し、破損のおそれがある。
また、チップシールは、製作時に樹脂成形して離型する際に押出ピンで押圧して型から取り出す。この際にチップシールの表面に凹部が形成される。この凹部がチップシールの平坦部と傾斜部との間の隣接領域に形成されると、応力集中が生じて破損しやすくなる。
そこで、傾斜部と平坦部との間の隣接領域を避けた位置に凹部を形成することによって、隣接領域の繰り返し応力を緩和することで、隣接領域における破損のリスクを減少させることとした。
凹部が形成されるチップシールの表面としては、対向する壁部(歯底)側の表面や、その裏面あるいは側面が挙げられる。
【0013】
さらに、本発明の一態様に係るチップシールでは、前記凹部は、前記平坦部と前記傾斜部との接続位置から前記平坦部の幅の2倍以上離れた位置に設けられていることを特徴とする。
【0014】
凹部を、平坦部と傾斜部との接続位置から平坦部の幅の2倍以上離れた位置に設けることとすれば、接続位置に生じる繰り返し応力が凹部に大きく影響しない領域となるので好ましい。
なお、平坦部の幅とは、チップシールの長手方向に直交する方向の寸法を意味し、典型的には傾斜部の幅と同等の寸法とされている。
【0015】
さらに、本発明の一態様に係るチップシールでは、前記傾斜部は、前記平坦部よりも厚くされていることを特徴とする。
【0016】
傾斜部は、対向する壁部(歯底)に対して接近離間を繰り返すので、平坦部よりも摩耗する。そこで、傾斜部を平坦部よりも厚くして耐摩耗性を向上させることとした。
なお、傾斜部及び平坦部の厚さとは、壁体の立設方向の寸法を意味する。
【0017】
さらに、本発明の一態様に係るチップシールでは、前記傾斜部は、前記平坦部よりも耐摩耗性の高い材料とされていることを特徴とする。
【0018】
傾斜部は、対向する壁部(歯底)に対して接近離間を繰り返すので、平坦部よりも摩耗する。そこで、傾斜部を平坦部よりも耐摩耗性の高い材料とした。耐摩耗性の高い材料としては、PEEK(PolyEther Ether Ketone)やPTFE(polytetrafluoroethylene)、又は、母材に対してDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングやPTFEコーティングを施したものが挙げられる。平坦部の材料としては、一般的に、PPS(Polyphenylenesulfide)が用いられる。
【0019】
さらに、本発明の一態様に係るチップシールでは、スクロール流体機械の渦巻状の壁体の歯先に形成された溝部に設置される樹脂製のチップシールであって、高さが渦巻き方向に連続的に変化する前記壁体の前記溝部に設置される傾斜部と、高さが渦巻き方向に一定とされた前記壁体の前記溝部に設置され、前記傾斜部に隣接する平坦部とを備え、前記傾斜部と前記平坦部と分割され、前記傾斜部は、前記平坦部よりも厚くされていることを特徴とする。
さらに、本発明の一態様に係るチップシールでは、スクロール流体機械の渦巻状の壁体の歯先に形成された溝部に設置される樹脂製のチップシールであって、高さが渦巻き方向に連続的に変化する前記壁体の前記溝部に設置される傾斜部と、高さが渦巻き方向に一定とされた前記壁体の前記溝部に設置され、前記傾斜部に隣接する平坦部とを備え、前記傾斜部と前記平坦部と分割され、前記傾斜部は、前記平坦部よりも耐摩耗性の高い材料とされていることを特徴とする。
【0020】
傾斜部と平坦部との接続位置で分割することによって、接続位置における曲げによる繰り返し応力が発生することを回避することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係るスクロール流体機械は、第1端板上に渦巻状の第1壁体が設けられた第1スクロール部材と、前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板上に渦巻状の第2壁体が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材と、を備えたスクロール流体機械であって、向かい合う前記第1端板と前記第2端板との対向面間距離が、前記第1壁体及び前記第2壁体の外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部を備え、前記傾斜部に対応する前記第1壁体及び前記第2壁体の歯先に形成された溝部には、対向する歯底に接触して流体をシールする上記のいずれかに記載のチップシールが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
チップシールの傾斜部とチップシールの平坦部との間の隣接領域を避けた位置に凹部を形成することによって、隣接領域の繰り返し応力を緩和することで、隣接領域における破損のリスクを減少させることができる。
チップシールの傾斜部を平坦部よりも厚くすることによって、チップシールの傾斜部の耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態にかかるスクロール圧縮機の固定スクロール及び旋回スクロールを示し、(a)は縦断面図、(b)は固定スクロールの壁体側から見た平面図である。
図2図1の旋回スクロールを示した斜視図である。
図3】固定スクロールに設けた端板平坦部を示した平面図である。
図4】固定スクロールに設けた壁体平坦部を示した平面図である。
図5】渦巻き方向に伸ばして表示した壁体を示す模式図である。
図6図1(b)の符号Zの領域を拡大して示した部分拡大図である。
図7図6で示した部分のチップシール隙間を示し、(a)はチップシール隙間が相対的に小さい状態を示した側面図であり、(b)はチップシール隙間が相対的に大きい状態を示した側面図である。
図8】壁体における歯先周りの横断面図である。
図9】チップシールの傾斜部と平坦部との接続位置周りを示した斜視図である。
図10図9の変形例を示した斜視図である。
図11】段部を有していないスクロールとの組合せを示した縦断面図である。
図12】段付きスクロールとの組合せを示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、スクロール圧縮機(スクロール流体機械)1の固定スクロール(第1スクロール部材)3と旋回スクロール(第2スクロール部材)5が示されている。スクロール圧縮機1は、例えば空調機等の冷凍サイクルを行うガス冷媒(流体)を圧縮する圧縮機として用いられる。
【0025】
固定スクロール3及び旋回スクロール5は、アルミ合金製や鉄製等の金属製の圧縮機構とされ、図示しないハウジング内に収容されている。固定スクロール3及び旋回スクロール5は、ハウジング内に導かれた流体を外周側から吸い込み、固定スクロール3の中央の吐出ポート3cから外部へと圧縮後の流体を吐出する。
【0026】
固定スクロール3は、ハウジングに固定されており、図1(a)に示されているように、略円板形状の端板(第1端板)3aと、端板3aの一側面上に立設された渦巻状の壁体(第1壁体)3bとを備えている。旋回スクロール5は、略円板形状の端板(第2端板)5aと、端板5aの一側面上に立設された渦巻状の壁体(第2壁体)5bとを備えている。各壁体3b,5bの渦巻形状は、例えば、インボリュート曲線やアルキメデス曲線を用いて定義されている。
【0027】
固定スクロール3と旋回スクロール5は、その中心を旋回半径ρだけ離し、壁体3b,5bの位相を180°ずらして噛み合わされ、両スクロールの壁体3b、5bの歯先と歯底間に常温で僅かな高さ方向のクリアランス(チップクリアランス)を有するように組み付けられている。これにより、両スクロール3,5間に、その端板3a,5aと壁体3b、5bとにより囲まれて形成される複数対の圧縮室がスクロール中心に対して対称に形成される。旋回スクロール5は、図示しないオルダムリング等の自転防止機構によって固定スクロール3の周りを公転旋回運動する。
【0028】
図1(a)に示すように、向かい合う両端板3a,5a間の対向面間距離Lが、渦巻状の壁体3b,5bの外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部が設けられている。
【0029】
図2に示すように、旋回スクロール5の壁体5bには、外周側から内周側に向かって高さが連続的に減少する壁体傾斜部5b1が設けられている。この壁体傾斜部5b1の歯先が対向する固定スクロール3の歯底面には、壁体傾斜部5b1の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部3a1(図1(a)参照)が設けられている。これら壁体傾斜部5b1及び端板傾斜部3a1によって、連続的な傾斜部が構成されている。同様に、固定スクロール3の壁体3bにも高さが外周側から内周側に向かって連続的に傾斜する壁体傾斜部3b1が設けられ、この壁体傾斜部3b1の歯先に対向する端板傾斜部5a1が旋回スクロール5の端板5aに設けられている。
【0030】
なお、本実施形態でいう傾斜部における連続的という意味は、滑らかに接続された傾斜に限定されるものではなく、加工時に不可避的に生じるような小さな段部が階段状に接続されており、傾斜部を全体としてみれば連続的に傾斜しているものも含まれる。ただし、いわゆる段付きスクロールのような大きな段部は含まれない。
【0031】
壁体傾斜部3b1,5b1及び/又は端板傾斜部3a1,5a1には、コーティングが施されている。コーティングとしては、例えば、リン酸マンガン処理やニッケルリンめっき等が挙げられる。
【0032】
図2に示されているように、旋回スクロール5の壁体5bの最内周側と最外周側には、それぞれ、高さが一定とされた壁体平坦部5b2,5b3が設けられている。これら壁体平坦部5b2,5b3は、旋回スクロール5の中心O2(図1(a)参照)まわりに180°の領域にわたって設けられている。壁体平坦部5b2,5b3と壁体傾斜部5b1とが接続される位置には、それぞれ、屈曲部となる壁体傾斜接続部5b4,5b5が設けられている。
旋回スクロール5の端板5aの歯底についても同様に、高さが一定とされた端板平坦部5a2,5a3が設けられている。これら端板平坦部5a2,5a3についても、旋回スクロール5の中心まわりに180°の領域にわたって設けられている。端板平坦部5a2,5a3と端板傾斜部5a1とが接続される位置には、それぞれ、屈曲部となる端板傾斜接続部5a4,5a5が設けられている。
【0033】
図3及び図4にハッチングにて示すように、固定スクロール3についても、旋回スクロール5と同様に、端板平坦部3a2,3a3、壁体平坦部3b2,3b3、端板傾斜接続部3a4,3a5及び壁体傾斜接続部3b4,3b5が設けられている。
【0034】
図5には、渦巻き方向に伸ばして表示した壁体3b,5bが示されている。同図に示されているように、最内周側の壁体平坦部3b2,5b2が距離D2にわたって設けられ、最外周側の壁体平坦部3b3,5b3が距離D3にわたって設けられている。距離D2及び距離D3は、それぞれ、各スクロール3,5の中心O1,O2まわりに180°とされた領域に相当する長さとなっている。最内周側の壁体平坦部3b2,5b2と最外周側の壁体平坦部3b3,5b3との間に、壁体傾斜部3b1,5b1が距離Dにわたって設けられている。最内周側の壁体平坦部3b2,5b2と最外周側の壁体平坦部3b3,5b3との高低差をhとすると、壁体傾斜部3b1,5b1の傾きφは下式とされる。
φ=tan-1(h/D1) ・・・(1)
このように、傾斜部における傾きφは、渦巻状の壁体3b,5bが延在する周方向に対して一定とされている。
【0035】
図6には、図1(b)の符号Zで示した領域の拡大図が示されている。図6に示されているように、固定スクロール3の壁体3bの歯先には、チップシール7が設けられている。チップシール7は、PPS(Polyphenylenesulfide)等の樹脂製とされており、対向する旋回スクロール5の端板5aの歯底に接触して流体をシールする。チップシール7は、壁体3bの歯先に周方向にわたって形成されたチップシール溝3d内に収容されている。このチップシール溝3d内に圧縮流体が入り込み、チップシール7を背面から押圧して歯底側に押し出すことで対向する歯底に接触させるようになっている。なお、旋回スクロール5の壁体5bの歯先に対しても、同様にチップシールが設けられている。
【0036】
図7に示すように、壁体3bの高さ方向におけるチップシール7の高さHcは、周方向に一定とされている。
両スクロール3,5が相対的に公転旋回運動を行うと、旋回直径(旋回半径ρ×2)分だけ歯先と歯底の位置が相対的にずれる。この歯先と歯底の位置ずれに起因して、傾斜部では、歯先と歯底との間のチップクリアランスが変化する。例えば、図7(a)ではチップクリアランスTが小さく、図7(b)ではチップクリアランスTが大きいことを示している。チップシール7は、このチップクリアランスTが旋回運動によって変化しても、背面から圧縮流体によって端板5aの歯底側に押圧されるので、追従してシールできるようになっている。
【0037】
図8には、固定スクロール3の壁体3bの渦巻き方向に直交する切断面で見た歯先周りの横断面図が示されている。なお、旋回スクロール5の歯先およびチップシール7についても同様の構成とされている。壁体3bの先端に形成されたチップシール溝3d内にチップシール7が収容されている。チップシール7の横断面は、略矩形状となっており、対向する端板側すなわち歯先側の表面7aと、その裏面7b及び側面7cを有している。チップシール7の表面7aが対向する端板の歯底に接触してシールが行われる。
【0038】
図9には、チップシール7のチップシール傾斜部7Aとチップシール平坦部7Bとの接続領域周りが示されている。チップシール傾斜部7Aは、壁体傾斜部3b1,5b1(図5参照)に設置され、チップシール平坦部7Bは、壁体平坦部3b2,3b3,5b2,5b3(図5参照)に設置されている。
【0039】
チップシール傾斜部7Aとチップシール平坦部7Bとは、一体的に成形されており、接続位置C1にて固定されている。なお、接続位置C1では、滑らかに接続するように表面7aや裏面7bに面取りを設けても良い。
【0040】
チップシール7の表面7aには、チップシール7の長手方向に沿って複数の凹部8が所定間隔を空けて形成されている。凹部8は、チップシール7を樹脂成形して離型する際に押出ピンで押圧して型から取り出すときに、チップシール7の表面7aに押出ピンの頭部形状が跡として形成されるものである。
【0041】
チップシール傾斜部7Aは、図7を用いて説明したように、スクロール3,5の旋回運動に応じてチップクリアランスTの変化するため、対向する歯底に対して接近離間する。このため、チップシール傾斜部7Aとチップシール平坦部7Bとの接続位置C1では、曲げによる繰り返し応力が発生する。これを考慮して、各凹部8は、接続位置C1を挟んだ隣接領域を避けて設けられている。隣接領域としては、接続位置C1からチップシール7の長手方向に直交する寸法であるチップシール幅Twの2倍離れた領域として設定される。したがって、凹部8は、接続位置C1からチップシール幅Twの2倍以上離れた位置に設けられている。
【0042】
上述したスクロール圧縮機1は、以下のように動作する。
図示しない電動モータ等の駆動源によって、旋回スクロール5が固定スクロール3回りに公転旋回運動を行う。これにより、各スクロール3,5の外周側から流体を吸い込み、各壁体3b,5b及び各端板3a,5aによって囲まれた圧縮室に流体を取り込む。圧縮室内の流体は外周側から内周側に移動するに従い順次圧縮され、最終的に固定スクロール3に形成された吐出ポート3cから圧縮流体が吐出される。流体が圧縮される際に、端板傾斜部3a1,5a1及び壁体傾斜部3b1,5b1によって形成された傾斜部では壁体3b,5bの高さ方向にも圧縮されて、三次元圧縮が行われる。
【0043】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
チップシール傾斜部7Aとチップシール平坦部7Bとの間の隣接領域を避けた位置に凹部8を形成することによって、隣接領域の繰り返し応力を緩和することで、隣接領域における破損のリスクを減少させることができる。
【0044】
なお、チップシール7の表面7aに凹部8が形成される構成として説明したが、チップシール7の裏面7bや側面7cに凹部8を設けても良い。
【0045】
また、本実施形態の変形例として、図10に示すように、チップシール傾斜部7Aの高さを、チップシール平坦部7Bの高さよりも大きくして、即ち厚さを厚くして耐摩耗性を向上させることとしても良い。
【0046】
また、チップシール傾斜部7Aをチップシール平坦部7Bよりも耐摩耗性の高い材料を用いても良い。例えば、チップシール傾斜部7Aに、PEEK(PolyEther Ether Ketone)やPTFE(polytetrafluoroethylene)を適用しても良いし、PPS(Polyphenylenesulfide)等の母材に対してDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングやPTFEコーティングを施しても良い。このとき、チップシール平坦部7Bの材料としては、PPS等が用いられる。
【0047】
また、チップシール傾斜部7Aとチップシール平坦部7Bとの間の接続位置C1で分割しても良い。これにより、接続位置C1における曲げによる繰り返し応力が発生することを回避することができる。
【0048】
また、本実施形態では、端板傾斜部3a1,5a1及び壁体傾斜部3b1,5b1を両スクロール3,5に設けることとしたが、いずれか一方に設けても良い。
具体的には、図11に示すように、一方の壁体(例えば旋回スクロール5)に壁体傾斜部5b1を設け、他方の端板3aに端板傾斜部3a1を設けた場合には、他方の壁体と一方の端板5aは平坦としても良い。
また、図12に示すように、従来の段付き形状と組み合わせた形状、すなわち、固定スクロール3の端板3aに端板傾斜部3a1を設ける一方で、旋回スクロール5の端板5aに段部が設けられた形状と組み合わせても良い。
【0049】
また、本実施形態では、壁体平坦部3b2,3b3,5b2,5b3および端板平坦部3a2,3a3,5a2,5a3を設けることとしたが、内周側または外周側の平坦部を省略して傾斜部を壁体3b,5bの全体に延長して設けるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、スクロール圧縮機として説明したが、膨張機として用いるスクロール膨張機に対しても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 スクロール圧縮機(スクロール流体機械)
3 固定スクロール(第1スクロール部材)
3a 端板(第1端板)
3a1 端板傾斜部
3a2 端板平坦部
3a3 端板平坦部
3a4 端板傾斜接続部
3a5 端板傾斜接続部
3b 壁体(第1壁体)
3b1 壁体傾斜部
3b2 壁体平坦部
3b3 壁体平坦部
3b4 壁体傾斜接続部
3b5 壁体傾斜接続部
3c 吐出ポート
3d チップシール溝
5 旋回スクロール(第2スクロール部材)
5a 端板(第2端板)
5a1 端板傾斜部
5a2 端板平坦部
5a3 端板平坦部
5a4 端板傾斜接続部
5a5 端板傾斜接続部
5b 壁体(第2壁体)
5b1 壁体傾斜部
5b2 壁体平坦部
5b3 壁体平坦部
5b4 壁体傾斜接続部
5b5 壁体傾斜接続部
7 チップシール
7a 表面
7b 裏面
7c 側面
7A チップシール傾斜部
7B チップシール平坦部
8 凹部
C1 接続位置
L 対向面間距離
T チップクリアランス
Tw チップシール幅
φ 傾き
【要約】
【課題】壁体に連続的な傾斜部を設けた場合であっても、壁体の歯先に設置されるチップシールの耐久性を向上させることができるチップシールを提供する。
【解決手段】高さが渦巻き方向に連続的に変化する壁体の溝部に設置されるチップシール傾斜部7Aと、高さが渦巻き方向に一定とされた壁体の溝部に設置され、チップシール傾斜部7Aに隣接するチップシール平坦部7Bとを備え、チップシール傾斜部7Aとチップシール平坦部7Bとの間の隣接領域を避けた位置に、凹部8が形成されている。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12