(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フレキシブル基板に電子部品およびコネクタが接続された電子モジュールの状態で測定を行うコンタクト装置においては、コンタクト装置内でのコネクタの正確な位置決めが難しい。例えば、電子モジュールをソケットに載置し、カバーを閉じてフレキシブル基板を押さえると、フレキシブル基板の弾性力によってコネクタが引っ張られ、コネクタを正確に位置決めできない可能性がある。また、フレキシブル基板に対するコネクタの搭載位置ずれもある。このため、フレキシブル基板に電子部品およびコネクタが接続された電子モジュールを測定対象としたコンタクト装置では、プローブを電極端子に正確に接触させることが難しい。
【0007】
特に、微小な凸型で狭ピッチに配置された電極端子の僅かな上面にプローブの先端を当てて接触を得るコンタクト装置では、位置合わせ精度に対する要求が厳しい。また、上面への点接触ではプローブの先端の摩耗や潰れ等のダメージが発生しやすく、接触不良や耐久性低下を招く。また、プローブが垂直に当たる構造のため、先端部でのワイピング効果が見込めないなど、接触不安定要素が多い。
【0008】
本発明は、フレキシブル基板に電子部品およびコネクタが接続された電子モジュールを測定対象として、正確な接触、確実な導通および優れた耐久性を実現できるコンタクト装置、測定用ソケットおよび先端部アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
直線状に並ぶ凸型の複数の電極端子を有するコネクタと電子部品とがフレキシブル基板に接続された電子モジュールを測定対象として、電子モジュールとの導通を得るためのコンタクト装置であって、
電子モジュールを搭載する搭載部を有するベースと、ベースに被せられるカバーと、を備える。ベースの搭載部は、電子部品を載置する第1凹部と、フレキシブル基板を載置する第2凹部と、を有する。カバーは、カバーを閉じることで電子部品を搭載部の内壁またはカバーに設けられた壁へ押し当てる押圧部材と、コネクタと嵌合してコネクタを位置決めするガイド部と、を有する。ガイド部には、カバーを閉じることでコネクタが位置決めされた状態で、コネクタの複数の電極端子の並びに対応して配置され複数の電極端子と接触する
複数のプローブ
が設けられる。プローブは、一方向に付勢された押圧部と、押圧部によって電極端子側に押圧され、電極端子と接触する凹部を有する先端部と、を有する。先端部は、凹部の面の少なくとも2箇所で電極端子と接触する。
【0010】
このような構成によれば、凸型の電極端子に凹部を有する先端部が接触して、凹部の面の少なくとも2カ所で電極端子と接触するため、接触信頼性および接触耐久性を高めることができる。また、凸型の電極端子に先端部の凹部の面が当たる際にコネクタへ誘い込みが行われる。これにより、コネクタの位置が凹部に合わせて修正されるとともに、誘い込む際に先端部の凹部の面と電極端子の表面において電極端子の接触を妨げる表面の膜や異物を回避できる程度の擦れが発生し、ワイピング効果を得ることができる。
【0011】
本発明のコンタクト装置において、押圧部を保持するホルダーと、ホルダーとは別体に設けられ、先端部を収納する先端部カバーと、をさらに備え、先端部は、先端部カバーとともにホルダーに対して着脱可能に設けられていてもよい。これにより、先端部カバーを交換することで、消耗した先端部の交換や、形状の異なる先端部への付け替えを行うことができる。
【0012】
本発明のコンタクト装置において、先端部カバーと、ホルダーとの間にバネが設けられていてもよい。これにより、先端部カバーがコネクタと接触した際にバネによる緩衝作用によってコネクタへのダメージを抑制することができる。
【0013】
本発明のコンタクト装置において、先端部の凹部とは反対側には、押圧部と接触する平坦部が設けられていてもよい。これにより、押圧部によって平坦部を押圧して押圧力を的確に先端部へ伝えることができる。
【0014】
本発明のコンタクト装置において、
プローブは、押圧部と先端部とが一体で形成されていてもよい。
【0015】
本発明のコンタクト装置において、複数の電極端子に対応して複数の押圧部および複数の先端部が設けられ、複数の押圧部の並びにおけるピッチが、複数の電極端子の並びにおけるピッチとは異なっていてもよい。これにより、複数の押圧部の並びにおけるピッチを、複数の電極端子の並びにおけるピッチに制限されることなく設定できる。
【0016】
本発明のコンタクト装置において、先端部は、電極端子と接触する第1傾斜面を有する第1弾性片と、電極端子と接触する第2傾斜面を有する第2弾性片と、を有し、第1傾斜面と第2傾斜面とによって略V字型の凹部が構成されていてもよい。これにより、電極端子が凹部と接触して接触圧が高まると、第1弾性片と第2弾性片との間が押し広げられる。電極端子の表面は第1傾斜面および第2傾斜面と擦れながら第1弾性片と第2弾性片との間で挟まれ、ワイピング効果を得ながら確実に導通を得ることができる。
【0017】
本発明のコンタクト装置において、第1弾性片および第2弾性片は互いに線対称に設けられていてもよい。これにより、電極端子は、第1弾性片と第2弾性片とによって均等に接触することになる。
【0018】
本発明のコンタクト装置において、第1弾性片および第2弾性片は互いに非対称に設けられていてもよい。これにより、電極端子の形状に合わせて第1弾性片および第2弾性片のそれぞれと電極端子との間で最適なワイピング効果および導通を得られるようになる。
【0019】
本発明のコンタクト装置において、第1弾性片および第2弾性片の少なくとも一方は、先端から付け根までの間で幅を狭くした絞り部を有していてもよい。この絞り部によって、弾性片の弾性力が設定される。
【0020】
本発明のコンタクト装置において、先端部は、押圧部によって電極端子側に押圧された際の位置規制のためのストッパ部を有していてもよい。これにより、押圧部によって押圧された先端部の位置がストッパ部によって規制され、電極端子と接触する前の先端部の突出位置を正確に設定することができる。
【0021】
本発明のコンタクト装置において、先端部は、電極端子を先端部に接触させる際の動作方向に対して傾斜するように揺動可能に設けられていてもよい。これにより、電極端子の位置のばらつきを先端部の揺動によって吸収しながら接触できるようになる。
【0022】
本発明のコンタクト装置において、先端部は、第1弾性片と第2弾性片との間に設けられ、電極端子と接触する中央片をさらに有していてもよい。これにより、幅広の電極端子であっても、第1弾性片、第2弾性片および中央片の3点で確実に接触できるようになる。
【0023】
本発明は、
上記のコンタクト装置と、コンタクト装置のベースとカバーとの間に設けられたヒンジと、を備えた測定用ソケットである。カバーは、ヒンジを介してベースに回動可能に取り付けられる。
【0024】
本発明は、フレキシブル基板に電子部品およびコネクタが接続された電子モジュールを測定対象として、電子モジュールとの導通を得るためのコンタクト装置に取り付けられる先端部アダプタであって、凸型の電極端子と接触する凹部を有する先端部と、先端部を収納する先端部カバーと、を備え、先端部カバーはコンタクト装置に着脱可能に取り付けられ、先端部カバーをコンタクト装置に取り付けた状態で、先端部は、コンタクト装置に設けられた押圧部によって電極端子側に押圧されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フレキシブル基板に電子部品およびコネクタが接続された電子モジュールを測定対象として、正確な接触および優れた耐久性を実現できるコンタクト装置、測定用ソケットおよび先端部アダプタを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0028】
(測定用ソケット)
図1は、本実施形態に係る測定用ソケットを閉じた状態を例示する斜視図である。
図2は、本実施形態に係る測定用ソケットを開いた状態を例示する斜視図である。
図3(a)および(b)は、測定対象となる電子モジュールを例示する斜視図である。
図3(a)には電子モジュールの全体図が示され、
図3(b)にはコネクタの拡大図が示される。
【0029】
本実施形態に係る測定用ソケット1は、測定対象となる電子モジュール100を搭載して、電子モジュール100のコネクタ103と電気的な接触を得るソケットである。
【0030】
ここで、本実施形態の測定用ソケット1で測定対象としている電子モジュール100は、フレキシブル基板102に電子部品101およびコネクタ103が接続されたものである。フレキシブル基板102には配線パターンが形成され、電子部品101とコネクタ103との間の通電がなされる。
【0031】
図3(b)に示すように、コネクタ103には凸型の電極端子1031が設けられる。図示する例では、コネクタ103は2本の電極列を有する。1本の電極列には、複数の電極端子1031が所定のピッチで直線状に並べられている。各電極端子1031からはリード1031aが延出しており、このリードとフレキシブル基板102の配線パターンなどがハンダ材等によって接続される。
【0032】
本実施形態の測定用ソケット1では、後述するプローブ200の先端部220をコネクタ103の電極端子1031と接触させることによって、電子部品101に対する電気的な導通を得ることができる。また、コネクタ103の例えば端部には、電極端子1031よりも大きな(幅広な)電極端子1032が設けられている。電極端子1032は、例えば電源供給や接地用として用いられる。
【0033】
測定用ソケット1は、ベース10と、ベース10に被せられるカバー20と、を備えている。なお、カバー20は必ずしも測定用ソケット1に設けられていなくてもよい。例えば、カバー20は測定用ソケット1とは別体に設けられていても、測定用ソケット1を収容する測定装置(例えば、自動測定装置)側に設けられていてもよい。本実施形態では、カバー20はヒンジ50を介してベース10に取り付けられ、回動可能に設けられている。
【0034】
ベース10は、電子モジュール100を搭載する搭載部11を有する。搭載部11は、電子部品101を載置する第1凹部111と、フレキシブル基板102を載置する第2凹部112とを有する。第1凹部111は電子部品101のパッケージの形状に合わせてベース10の表面から凹状に設けられている。第1凹部111の大きさは、電子部品101の外形サイズよりも僅かに大きくなっている。公差を有することで電子部品101の第1凹部111への載置を容易にしている。
【0035】
第2凹部112はフレキシブル基板102を所定位置に配置するためのガイドを有する。搭載部11内に電子モジュール100を配置することで、ベース10上において電子部品101は第1凹部111内に配置され、フレキシブル基板102は第2凹部112のガイドに沿って位置合わせされる。
【0036】
押圧部材30は、電子部品101を基準壁へ押し当てる部材である。基準壁は、ベース10の搭載部11の内壁であったり、カバー20に設けられた壁であったりする。本実施形態では、カバー20側の電子部品101を覆う収納部21の内壁が基準壁となる。測定用ソケット1では、押圧部材30はカバー20側に設けられ、電子部品101を収納部21における内壁に向けて押圧するようになっている。例えば、電子部品101のパッケージ形状が上から見て矩形の場合、押圧部材30は矩形の隅部を対角方向に押圧する。これにより、電子部品101のパッケージの直交する2面が収納部21の直交する2つの内壁(基準壁)に突き当たり、電子部品101の位置決めがなされる。
【0037】
本実施形態に係る測定用ソケット1において、カバー20は、ベース10に設けられたヒンジ50を介して取り付けられ、ベース10に対して回動するように設けられる。ベース10側にはヒンジ50の管51が設けられ、カバー20側にはヒンジ50の管52が設けられる。ヒンジ50の軸55は、これらの管51,52を貫通するように設けられる。これにより、カバー20は、軸55を中心とした円軌道に沿って回動可能となる。
【0038】
測定用ソケット1の例えばベース10にはラッチ60が設けられる。カバー20を閉じた状態でラッチ60をカバー20の爪25に引っ掛けることで、カバー20を閉じた状態が維持される。カバー20は、ヒンジ50の軸55に取り付けられたバネ56によって開く方向に付勢されている。したがって、ラッチ60を外すことで、バネ56の付勢力によってカバー20は開くことになる。
【0039】
本実施形態では、ラッチ60は第1ラッチ61と、第2ラッチ62とを有する。第1ラッチ61は、カバー20を閉じた状態を維持するためにカバー20の爪25と係合する。第2ラッチ62は、例えば第1ラッチ61の内側に設けられ、カバー20を閉じる際に第1ラッチ61による固定よりも手前で第2ラッチ62によって押圧部材30を動作させる。
【0040】
カバー20にはガイド部40が設けられる。ガイド部40は、カバー20を閉じた際にベース10側に配置される電子モジュール100のコネクタ103と嵌合する。ガイド部40にはプローブ200が設けられる。
【0041】
図4は、プローブを例示する斜視図である。
図5は、先端部を例示する拡大斜視図である。
説明の便宜上、
図4および
図5には、プローブと接触するコネクタも示されている。
プローブ200は、押圧部である押圧ピン210と、押圧ピン210によって電極端子1031側に押圧される先端部220と、を有する。コネクタ103に複数の電極端子1031が設けられている場合、複数の電極端子1031に対応して複数のプローブ200が設けられ、それぞれのプローブ200に押圧ピン210および先端部220が設けられる。
【0042】
複数のプローブ200を有する場合、互いに隣り合うプローブ200のピッチは、0.5mm以下である。また、押圧ピン210の直径は、0.4mm以下である。このように、本実施形態に係る測定用ソケット1では、非常に小型のコネクタ103の電極端子1031に対して接触可能なプローブ200を有している。すなわち、本実施形態の測定用ソケット1では、0.3mm程度以下の狭ピッチ化された電子部品101に対応しうる。
【0043】
押圧ピン210は、図示しないバネによって先端部220側へ押圧される。先端部220は、押圧ピン210によって電極端子1031側に押圧される。先端部220における電極端子1031と接触する側には凹部221が設けられる。凹部221は、例えばV字型に設けられる。押圧ピン210によって押圧された先端部220は、凹部221の面の少なくとも2箇所で電極端子1031と接触する。本実施形態では、先端部220におけるV字型の凹部221の2面が、凸型の電極端子1031の肩の部分に接触することになる。
【0044】
本実施形態における測定用ソケット1において、カバー20を閉じていくと、ガイド部40の凹部にコネクタ103が嵌め込まれる。カバー20をさらに閉じていくとプローブ200の先端部220がコネクタ103の電極端子1031と接触することになる。
【0045】
ガイド部40の凹部の形状は、コネクタ103の外形に対応して設けられ、凹部とコネクタ103の外形との嵌め合いによってコネクタ103の位置決めが行われる。コネクタ103がガイド部40に嵌め込まれ、位置決めされることで、ガイド部40から露出するプローブ200の先端部220とコネクタ103の電極端子1031との位置合わせが行われることになる。
【0046】
例えば、ガイド部40の凹部の中心と、コネクタ103の中心とを合わせた場合の嵌め合い公差は、片側で1/100mm以上3/100mm以下程度である。ガイド部40の凹部にコネクタ103が嵌め込まれることで、例えば0.3mm程度以下の狭ピッチ化された小型の電子部品101であっても精度の高い位置合わせにより、プローブ200の先端部220とコネクタ103の電極端子1031との確実な接触が行われる。
【0047】
本実施形態では、先端部220の凹部221の面の少なくとも2箇所で電極端子1031と接触するため、プローブ200と電極端子1031との接触信頼性およびプローブ200の接触耐久性を高めることができる。また、凸型の電極端子1031に先端部220の凹部221の面が当たる際にコネクタ103の呼び込みが行われる。したがって、コネクタ103に位置ずれが生じていても、先端部220の凹部221を凸型の電極端子1031に合わせて接触させることで、コネクタ103の電極列の位置が先端部220の凹部221のV字型の中心に整合されることになる。
【0048】
特に、低背化されたコネクタ103の場合、ガイド部40とコネクタ103とが接触すると同時か接触前に先端部220が電極端子1031と接触することもある。このような場合には、凹部221の位置に電極端子1031が誘い込まれ、コネクタ103の位置合わせが行われることになる。
【0049】
さらに、先端部220が電極端子1031と接触する際、先端部220の凹部221の面と電極端子1031の表面において電極端子の接触を妨げる表面の膜や異物を回避できる程度の擦れが発生し、ワイピング効果を得ることができる。
【0050】
(先端部アダプタ)
図6は、先端部アダプタを例示する分解斜視図である。
先端部アダプタ400は、測定用ソケット1や電子モジュール100との導通を得るためのコンタクト装置に取り付けられるものである。先端部アダプタ400は、凸型の電極端子1031と接触する凹部221を有する先端部220と、先端部220を収納する先端部カバー410と、を備える。先端部カバー410は測定用ソケット1やコンタクト装置に着脱可能に取り付けられる。
【0051】
図6に示す例では、先端部アダプタ400は、押圧ピン210を保持するホルダー45にネジ46によって取り付けられる。また、先端部カバー410とホルダー45との間には、バネ47が設けられている。先端部アダプタ400を取り付けたホルダー45は、測定用ソケット1やコンタクト装置に取り付けられる。測定用ソケット1の場合、カバー20にホルダー45および先端部アダプタ400が取り付けられる。先端部カバー410にはガイド部40が設けられる。
【0052】
先端部アダプタ400をホルダー45に取り付けることで、先端部カバー410内の先端部220は、ホルダー45に設けられた押圧ピン210によって電極端子1031側に押圧されることになる。先端部カバー410の着脱とともに、先端部カバー410に収納された先端部220も着脱可能である。
【0053】
図7は、先端部アダプタを取り付けた状態を例示する断面図である。
先端部アダプタ400の先端部カバー410は、ホルダー45に取り付けられる。これにより、ホルダー45から突出する押圧ピン210の先端が、先端部カバー410内に収納された先端部220に当たり、先端部220を電極端子1031側へ押圧する状態となる。
【0054】
先端部220は、先端部カバー410内において所定の可動範囲内で進退できるようになっている。したがって、先端部220が電極端子1031に当たった際には、押圧ピン210の押圧力に逆らって僅かに押し込まれる状態になる。
【0055】
ここで、先端部220の凹部221とは反対側には、押圧ピン210と接触する平坦部222が設けられていることが好ましい。これにより、押圧ピン210が平坦部222に当たり、押圧ピン210の押圧力を先端部220へ的確に伝えることができる。
【0056】
また、電極端子1031が突出する方向において、押圧ピン210の中心位置が、電極端子1031の中心位置と一致している場合、押圧ピン210の押圧力を先端部220を介して直線的に電極端子1031へ伝えることができる。これにより、先端部220の進退動作の安定化できる。
【0057】
このような先端部アダプタ400によれば、先端部220が消耗した場合や先端部220の形状を変更したい場合など、先端部アダプタ400を取り替えるだけで先端部220の交換を容易に行うことが可能となる。また、先端部カバー410と、ホルダー45との間にバネ47が設けられていることで、先端部カバー410がコネクタ103と接触した際にバネ47による緩衝作用によってコネクタ103へのダメージを抑制することができる。
【0058】
また、先端部アダプタ400を適用することで、先端部220と押圧ピン210とを別体で構成することができる。これにより、押圧ピン210の中心位置を、電極端子1031の中心位置に制限されることなく設定することができる。このような構成を備える場合において、電極端子1031が突出する方向において、押圧ピン210の中心位置を、電極端子1031の中心位置に対して揃えて配置してもよいし、これらの中心位置をずらして設けてもよい。押圧ピン210の中心位置と電極端子1031の中心位置とが揃っている場合には、押圧ピン210が電極端子1031側に押圧されたときに、その押圧力は先端部220と電極端子1031との接触部に比較的均一に伝達される。これにより、先端部220の電極端子1031への接触均一性を高めることができる。一方、押圧ピン210の中心位置と電極端子1031の中心位置とがずれている場合には、押圧ピン210が電極端子1031側に押圧されたときに、押圧方向に対して傾いた向きを有する力の成分が先端部220に生じやすくなる。この力の成分により、先端部220と電極端子1031との間に接触ずれが生じ、ワイピング効果を得やすくなる。
【0059】
例えば、複数の押圧ピン210の並びを直線状ではなく、ジグザグに配置してもよい。これにより、隣り合う押圧ピン210同士の干渉に余裕を設けることができ、その分、押圧ピン210の径を太くしたり、押圧ピン210のスプリングを太くして押圧ピン210の長さを短くしたりすることが可能となる。
【0060】
また、複数の電極端子1031に対応して複数の押圧ピン210および複数の先端部220が設けられる場合、複数の押圧ピン210の並びにおけるピッチが、複数の電極端子1031の並びにおけるピッチと異なるように設けてもよい。これにより、複数の押圧ピン210の並びにおけるピッチを、複数の電極端子1031の並びにおけるピッチに制限されることなく設定できる。
【0061】
(他の先端部の例)
図8(a)〜(d)は、他の先端部の例を示す模式図である。
図8(a)に示す先端部220は、V字型の凹部221の中央にU字型の切り込み部225が設けられた例である。このような切り込み部225が設けられていることで、先端部220に弾性を持たせることができる。先端部220が電極端子1031に当たった際、この弾性によって先端部220と電極端子1031との間に接触ずれが生じ、ワイピング効果を得やすくなる。
【0062】
図8(b)に示す先端部220は、凹部221の面にV字型の溝221aが形成された例である。このような先端部220では、先端部220の凹部221と電極端子1031との間で少なくとも4点での接触が可能になる。
【0063】
図8(c)に示す先端部は、凹部221の中央で左右に分割され、凹部221の内側において小突起227が設けられた例である。小突起227は、分割された先端部220の左右のそれぞれに設けられる。このような先端部220によって、先端部220の凹部221における左右の面と、2つの小突起227との4カ所で電極端子1031との接触が可能となる。また、先端部220が分割されていることで先端部220の左右部分で弾性を持たせることができ、電極端子1031と接触した際のワイピング効果を得やすくなる。
なお、先端部220と電極端子1031との4箇所での接触を得るには、先端部220は必ずしも分割されていなくてよい。
【0064】
図8(d)に示す先端部220は、凹部221とは反対側にシャフト229が設けられた例である。押圧ピン210は、このシャフト229と接触するように設けられる。このようなシャフト229が設けられていると、組み立て性の向上と、組み立て精度の安定化を図ることができる。
【0065】
(一体型プローブの例)
図9は、一体型のプローブの例を示す模式図である。
すなわち、一体型のプローブ200は、押圧部である押圧ピン210と、電極端子1031と接触する先端部220とが一体で形成されたものである。一体型のプローブ200によって、部品点数の削減を図ることができる。
なお、先端部220の凹部221の形状は、図示したものに限定されず、各種の形状が適用可能である。
【0066】
上記実施形態においては、測定用ソケット1の例を中心として説明したが、電子モジュール100を測定対象として、電子モジュール100との導通を得るためのコンタクト装置を構成することもできる。すなわち、コンタクト装置は、凸型の電極端子と接触するプローブを備える構成である。このプローブとして、先に説明した押圧ピンと、先端部と、を適用すればよい。
【0067】
(他の先端部アダプタの例)
図10は、他の先端部アダプタの例を示す分解斜視図である。
先端部アダプタ400は、凹部221を有する先端部220と、先端部220を収納する先端部カバー410と、を備える。先端部カバー410は測定用ソケット1やコンタクト装置に着脱可能に取り付けられる。
【0068】
先端部220が収納された状態で、先端部カバー410にはガイド部40が被せられる。ガイド部40はホルダー45にバネ47を介して取り付けられる。ホルダー45には押圧ピン210が挿入されており、先端部カバー410に取り付けられた先端部220を押圧している。このような構成により、ガイド部40にコネクタ103が嵌合した際にはガイド部40がホルダー45側に押し込まれ、先端部220が露出する。これにより、露出した先端部220とコネクタ103の電極端子1031とが接触することになる。
【0069】
図11(a)および(b)は、弾性片を有する先端部の例を示す平面図である。
図11(a)に示すように、この先端部220は、第1傾斜面2201aを有する第1弾性片2201と、第2傾斜面2202aを有する第2弾性片2202とを備える。第1弾性片2201および第2弾性片2202は基部2210から略平行に延設されている。第1弾性片2201の先端側に設けられる第1傾斜面2201aと、第2弾性片2202の先端側に設けられる第2傾斜面2202aとは互いに向き合うように設けられ、これらによって略V字型の凹部221が構成される。
【0070】
第1弾性片2201および第2弾性片2202の先端から付け根までの間には、幅を狭くした絞り部2205が設けられている。絞り部2205が設けられていることで、第1弾性片2201および第2弾性片2202の幅方向の弾性力が設定される。すなわち、絞り部2205が大きい場合には第1弾性片2201および第2弾性片2202の途中の幅が狭くなり、弾性力は小さくなる。一方、絞り部2205が小さい場合には第1弾性片2201および第2弾性片2202の途中の幅が広くなり、弾性力は大きくなる。絞り部2205の大きさによって、第1弾性片2201および第2弾性片2202の弾性力を設定することができる。なお、絞り部2205を設ける場合、第1弾性片2201および第2弾性片2202の少なくとも一方に設ければよい。
【0071】
図11(b)に示すように、先端部220の凹部221に電極端子1031が接触した場合、凹部221との接触位置が深くなることで第1弾性片2201と第2弾性片2202とが弾性変形して間隔が拡げられる。第1弾性片2201および第2弾性片2202のそれぞれの開き量は、先端の位置において約25μm程度である。
【0072】
この際、電極端子1031の表面は第1傾斜面2201aおよび第2傾斜面2202aと擦られることになる。これにより、第1弾性片2201と第2弾性片2202との間で挟まれた電極端子1031は、ワイピング効果を得ながら確実に先端部220と導通を得ることができる。
【0073】
第1傾斜面2201aと第2傾斜面2202aとによって構成される略V字型の角度αは60度±50度であり、好ましくは60度±30度、特に好ましくは60度±15度である。この角度αによって、第1傾斜面2201aおよび第2傾斜面2202aと電極端子1031との適度なワイピング効果と、電極端子1031の接触深さによる第1弾性片2201および第2弾性片2202のスムーズな拡がりおよび電極端子1031の保持とを図ることができる。ここで、角度αが60度、第1弾性片2201および第2弾性片2202のそれぞれの開き量が25μmであった場合、第1傾斜面2201aおよび第2傾斜面2202aのそれぞれでのワイピング量は50μmとなる。
【0074】
図11に示す先端部220においては、第1弾性片2201および第2弾性片2202が互いに線対称に設けられている。これにより、電極端子1031は、第1弾性片2201と第2弾性片2202とによって均等な圧力によって接触できることになる。
【0075】
一方、第1弾性片2201および第2弾性片2202は互いに非対称であってもよい。
図12(a)および(b)は、非対称の先端部を例示する平面図である。
図12(a)に示すように、この先端部220においては、第1弾性片2201に絞り部2205が設けられ、第2弾性片2202には絞り部2205が設けられていない。なお、絞り部2205の有無のほか、絞り部2205の深さの違い、幅の違い、形状そのもの違いなどによって非対称となっていてもよい。
【0076】
このように第1弾性片2201および第2弾性片2202が互いに非対称になっていることで、電極端子1031の形状に合わせて第1弾性片2201および第2弾性片2202のそれぞれと電極端子1031との間で最適なワイピング効果および導通を得られるようになる。例えば、
図12(b)に示すように、電極端子1031が非対称の形状を有する場合、この電極端子1031の形状に合わせて第1弾性片2201および第2弾性片2202の形状を設定する。
【0077】
本実施形態では、第1弾性片2201に絞り部2205が設けられているため、第1弾性片2201は第2弾性片2202に比べて弾性力が弱い。したがって、電極端子1031が先端部220に接触した場合、第2弾性片2202よりも第1弾性片2201のほうがより大きく弾性変形し、第2傾斜面2202aよりも第1傾斜面2201aの方がワイピング効果は大きくなる。例えば、角度αが60度、第1弾性片2201の開き量が25μm、第2弾性片2202の開き量が3μmであった場合、第1傾斜面2201aでのワイピング量は50μm、第2傾斜面2202aでのワイピング量は6μmとなる。
【0078】
このような非対称の先端部220では、例えば、電極端子1031の形状に起因して対称な先端部220では適切な接触が得にくい場合や、電極端子1031の片側のみワイピング量を多くしたい、または少なくしたい場合などに対応可能である。
【0079】
図13(a)〜(d)は電極端子と先端部との接触動作を示す断面図である。
なお、
図13では、
図11に示す線対称の先端部220を用い、先端部220の上からコネクタ103を接触させる例が示される。
先ず、
図13(a)に示すように、初期状態では押圧ピン210によって先端部220が上方に押圧される。ここで、先端部220の基部2210にはストッパ部2210aが設けられている。
図13に示す先端部220では基部2210の凸部の上端面がストッパ部2210aとなっている。初期状態において先端部220が押圧ピン210によって上方に押圧された際、ストッパ部2210aが先端部カバー410に当接して、先端部220の位置を規制している。
【0080】
次に、
図13(b)に示すように、ガイド部40に電子モジュール100を載置する。載置した状態では電極端子1031と先端部220とは接触せず、間隔d1だけ離れている。次に、
図13(c)に示すように、電子モジュール100をカバー20などによって押圧すると、ガイド部40とともに電子モジュール100が押し下げられる。先端部220の位置はそのままで電子モジュール100が押し下げられることから、先端部220は相対的にガイド部40から露出する状態となり、これにより、電極端子1031と先端部220が接触する。電極端子1031は先端部220の第1傾斜面2201aと第2傾斜面2202aとで構成される略V字型の凹部221に挟持された状態となる。
【0081】
次に、
図13(d)に示すように、電子モジュール100をさらに押し下げる。これにより、押圧ピン210の付勢力に打ち勝って、先端部220が下方に押し込まれる。ここで、第1傾斜面2201aおよび第2傾斜面2202aと絞り部2205との間には平行部分2207が設けられている。電極端子1031を挟持する位置がこの平行部分2207を超えなければ電極端子1031の噛み込みを防ぐことができる。
【0082】
このようにして、電極端子1031は先端部220の略V字型の凹部221に挟持され、適度なワイピング効果を得ながら確実に導通を得ることができる。
【0083】
電極端子1031の先端部220への接触を解除するには、上記と逆の動作となる。この際、電極端子1031は略V字型の凹部221から離れる方向に移動するため、電極端子1031の凹部221への噛み込みなく、確実に離れることになる。
【0084】
図14(a)および(b)は、他のストッパ部を例示する平面図である。
図14(a)に示すストッパ部2210aは、基部2210の両側に設けられている。また、
図14(b)に示すストッパ部2210aは、基部2210に設けられる凹部2215に設けられている。
【0085】
図15は、両側にストッパ部を有する先端部の組み込み状態を示す断面図である。
基部2210の両側にストッパ部2210aが設けられている先端部220では、押圧ピン210によって押圧された場合、基部2210の両側のストッパ部2210aでバランスよく位置規制される。先端部220の中心を押圧ピン210で押圧することで、先端部220の進退動作が安定し、両側のストッパ部2210aでの位置規制も安定して行われる。
【0086】
図16は、凹部のストッパ部を有する先端部の組み込み状態を示す断面図である。
基部2210に設けられた凹部2215にストッパ部2210aを有する先端部220では、先端部カバー410の凸部4105が先端部220の凹部2215に入り込むように配置される。この先端部220では、ストッパ部2210aが凹部2215に設けられているため、先端部220の幅を広くする必要がない。したがって、コンタクト装置のコンパクト化を図ることができる。
【0087】
図17(a)〜(d)は、凹部のストッパ部を有する先端部の接触動作を示す断面図である。
先ず、
図17(a)に示すように、初期状態では押圧ピン210によって先端部220が上方に押圧される。先端部220の基部2210の凹部2215には先端部カバー410の凸部4105が入り込んでおり、先端部220が押圧ピン210によって上方に押圧された際、ストッパ部2210aが凸部4105に当接して、先端部220の位置を規制している。
【0088】
次に、
図17(b)に示すように、ガイド部40に電子モジュール100を載置する。載置した状態では電極端子1031と先端部220とは接触せず、間隔d1だけ離れている。次に、
図17(c)に示すように、電子モジュール100をカバー20などによって押圧すると、ガイド部40とともに電子モジュール100が押し下げられる。先端部220の位置はそのままで電子モジュール100が押し下げられることから、先端部220は相対的にガイド部40から露出する状態となり、これにより、電極端子1031と先端部220が接触する。電極端子1031は先端部220の第1傾斜面2201aと第2傾斜面2202aとで構成される略V字型の凹部221に挟持された状態となる。
【0089】
次に、
図17(d)に示すように、電子モジュール100をさらに押し下げる。これにより、押圧ピン210の付勢力に打ち勝って、先端部220が下方に押し込まれる。ここで、第1傾斜面2201aおよび第2傾斜面2202aと絞り部2205との間には平行部分2207が設けられている。電極端子1031を挟持する位置がこの平行部分2207を超えなければ電極端子1031の噛み込みを防ぐことができる。
【0090】
このようにして、電極端子1031は先端部220の略V字型の凹部221に挟持され、適度なワイピング効果を得ながら確実に導通を得ることができる。
【0091】
図18(a)および(b)は、傾斜した先端部の例を示す断面図である。
図18(a)には、線対称の先端部220を傾斜して設けた例が示され、
図18(b)には、非対称の先端部220を傾斜して設けた例が示される。
いずれの例においても、先端部220は、電極端子1031を先端部220に接触させる際の動作方向に対して傾斜するように揺動可能に設けられている。
【0092】
先端部220が揺動可能に設けられていると、電子モジュール100を載置した際の位置ずれや、コネクタ103の取り付け位置ずれなどによって電極端子1031の位置にばらつきが発生していても、電極端子1031と先端部220の凹部221とが接触した際に電極端子1031の位置に凹部221が誘い込まれるように先端部220が揺動する。これによって電極端子1031の位置ずれを先端部220の揺動によって吸収しながら確実に接触できるようになる。
【0093】
図19(a)および(b)は、中央片を有する先端部を例示する図である。
図19(a)には先端部220の例が示され、
図19(b)には先端部220の組み込み状態が示される。
この先端部220は、第1弾性片2201と第2弾性片2202との間に中央片2203を有している。中央片2203を有していることで、先端部220は、第1弾性片2201、第2弾性片2202および中央片2203の3点で電極端子1031と接触可能となる。
【0094】
例えば、
図19(b)に示すように、幅の広い電極端子1032と先端部220とを接触させる場合、第1弾性片2201および第2弾性片2202は電極端子1032の肩の部分と接触し、中央片2203は電極端子1032の中央の面の部分と接触する。このように幅広の電極端子1032であっても、第1弾性片2201、第2弾性片2202および中央片2203の3点で確実に接触できるようになる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、フレキシブル基板102に電子部品101およびコネクタ103が接続された電子モジュール100を測定対象として、正確な接触、確実な導通および優れた耐久性を実現できるコンタクト装置、測定用ソケット1および先端部アダプタ400を提供することが可能になる。
【0096】
なお、上記に本実施形態およびその具体例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその具体例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。