特許第6352534号(P6352534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352534
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】非接触電圧計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 5/28 20060101AFI20180625BHJP
   G01R 15/16 20060101ALI20180625BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G01R5/28
   G01R15/16
   G01R19/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-515528(P2017-515528)
(86)(22)【出願日】2016年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2016062723
(87)【国際公開番号】WO2016175142
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-92096(P2015-92096)
(32)【優先日】2015年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−36980(JP,A)
【文献】 特開平2−110383(JP,A)
【文献】 実開平5−27684(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 5/28
G01R 15/16
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の測定対象物に印加される交流電圧を前記測定対象物と導通せずに計測する非接触電圧計測装置であって、
前記交流電圧に応じた電圧が加わる検出電極と、
フィードバック電極と、
前記検出電極との間に生じるクーロン力及び前記フィードバック電極との間に生じるクーロン力に応じて変位可能に支持されており、所定の中立位置へ復帰させようとする弾性力が働く導体の可動体と、
前記可動体の前記変位を検出する変位検出部と、
前記フィードバック電極へ電圧を供給する電圧供給部と、
前記変位検出部における前記変位の検出結果が前記中立位置を示す所定の基準値へ近づくように、前記電圧供給部から出力される電圧を制御する制御部と
を備えることを特徴とする非接触電圧計測装置。
【請求項2】
前記測定対象物と静電結合し、前記検出電極と導通する第1静電結合電極を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項3】
前記検出電極と前記フィードバック電極とを短絡するスイッチ部を備え、
前記制御部は、前記交流電圧の測定を行う前に前記スイッチ部をオン状態とし、当該オン状態における前記変位検出部の検出結果を前記基準値として取得し、前記交流電圧の測定時に前記スイッチ部をオフ状態とする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項4】
前記測定対象物と静電結合する第2静電結合電極を備え、
前記電圧供給部は、入力される交流信号をゲイン制御信号に応じたゲインで増幅し、当該増幅結果の電圧を前記フィードバック電極に供給し、
前記制御部は、
前記第2静電結合電極から入力される信号に基づいて、前記測定対象物の前記交流電圧に比例した前記交流信号を生成する交流信号生成部と、
前記変位検出部の検出結果が前記基準値へ近づくように前記ゲイン制御信号を調節するゲイン制御部とを有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項5】
前記変位検出部は、
磁石と、
前記磁石による磁界を検出する磁気検出部とを有し、
前記磁石及び前記磁気検出部の一方が、前記可動体に設けられ、
前記磁石及び前記磁気検出部の他方が、前記変位の検出の基準となる基台に固定され、
前記変位検出部は、前記磁気検出部における前記磁界の検出結果を前記変位の検出結果として出力する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項6】
前記可動体が前記中立位置にある場合、前記可動体に設けられた前記磁石及び前記磁気検出部の一方が基準位置にあり、
前記基台に設けられた前記磁石及び前記磁気検出部の他方は、前記基準位置に対して、前記可動体の変位とともに前記磁石及び前記磁気検出部の一方が前記基準位置から変位する方向と垂直な方向へずれた位置に設置される
ことを特徴とする請求項5に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項7】
前記可動体が前記中立位置にある場合、前記可動体に設けられた前記磁石及び前記磁気検出部の一方が基準位置にあり、
前記基台に設けられた前記磁石及び前記磁気検出部の他方は、前記基準位置に対して、前記可動体の変位とともに前記磁石及び前記磁気検出部の一方が前記基準位置から変位する方向と平行な方向へずれた位置に設置される
ことを特徴とする請求項5に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項8】
2つの前記磁気検出部を備えており、
一方の前記磁気検出部は、前記磁石の前記基準位置に対して、前記基準位置から前記可動体が変位する方向と平行な方向である第1方向へずれた位置に設置され、
他方の前記磁気検出部は、前記磁石の前記基準位置に対して、前記基準位置から前記第1方向と逆の第2方向へずれた位置に設置され、
前記制御部は、前記一方の前記磁気検出部において検出された前記磁石の磁界の検出値と前記他方の磁気検出部において検出された前記磁石の磁界の検出値との差が所定の値へ近づくように、前記電圧供給部から出力される電圧を制御する
ことを特徴とする請求項7に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項9】
前記変位検出部は、
前記可動体に設けられ、前記フィードバック電極の表面に向かって尖った尖端部、又は、前記フィードバック電極に設けられ、前記可動体の表面に向かって尖った尖端部を備える導体のプローブと、
前記プローブと前記フィードバック電極との間に電圧を加える電圧源と、
前記プローブから前記フィードバック電極へ電界放出により流れる電流を検出する電流検出部とを有し、
前記電流検出部における前記電流の検出結果を前記変位の検出結果として出力する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の非接触電圧計測装置。
【請求項10】
前記検出電極と前記フィードバック電極とが対向して配置されており、
前記可動体の少なくとも一部が前記検出電極と前記フィードバック電極との間に挟まれて位置する
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の非接触電圧計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体に印加される交流電圧を導体と導通せずに計測する非接触電圧計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に印加された電圧を当該測定対象物と導通せずに計測することができる非接触型の電圧計測装置が知られている。例えば下記の特許文献1には、直流高電圧が印加される電極と検出電極との間に作用するクーロン力を、検出電極の重量変化として検出し、その重量変化を秤によって測定するようにした装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−5751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クーロン力は非常に微小な力であるため、検出電極の重量変化を秤によって測定する特許文献1の方法では、電界強度が極めて高くないと(特許文献1の記載例では6〜8MV/m)実用的な精度が得られない。従って、例えば商用電源による100〜200V程度の交流電圧などをこの方法では精度よく測定できない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、交流電圧を精度よく測定できる非接触電圧測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る非接触電圧測定装置は、導体の測定対象物に印加される交流電圧を前記測定対象物と導通せずに計測を行うものである。この非接触電圧計測装置は、前記交流電圧に応じた電圧が加わる検出電極と、フィードバック電極と、前記検出電極との間に生じるクーロン力及び前記フィードバック電極との間に生じるクーロン力に応じて変位可能に支持されており、所定の中立位置へ復帰させようとする弾性力が働く導体の可動体と、前記可動体の前記変位を検出する変位検出部と、前記フィードバック電極へ電圧を供給する電圧供給部と、前記変位検出部における前記変位の検出結果が前記中立位置を示す所定の基準値へ近づくように、前記電圧供給部から出力される電圧を制御する制御部とを備える。
【0007】
上記の構成によれば、前記可動体には、前記測定対象物の前記交流電圧に応じた電圧が加わる前記検出電極との間にクーロン力が生じるとともに、前記電圧供給部によって電圧が供給される前記フィードバック電極との間にクーロン力が生じ、それらのクーロン力に応じて変位が生じる。また、前記可動体には、前記中立位置へ復帰させようとする弾性力が働くため、これらのクーロン力が小さくなると、前記中立位置へ近づく方向に変位が生じる。前記制御部では、前記変位検出部において検出される前記可動体の変位が前記中立位置を示す所定の基準値へ近づくように、前記電圧供給部の電圧が制御される。この制御によって、前記可動体に働くクーロン力がゼロに近づき、前記電圧供給部による電圧は前記検出電極の電圧に近づく。従って、前記電圧供給部の電圧から、前記交流電圧の測定値が得られる。
【0008】
好適に、上記非接触電圧測定装置は、前記測定対象物と静電結合し、前記検出電極と導通する第1静電結合電極を備えてよい。
これにより、前記測定対象物と前記第1静電結合電極との静電結合を通じて、前記測定対象物に印加される前記交流電圧に応じた電圧が前記検出電極に加わる。
【0009】
好適に、上記非接触電圧測定装置は、前記検出電極と前記フィードバック電極とを短絡するスイッチ部を備えてよい。前記制御部は、前記交流電圧の測定を行う前に前記スイッチ部をオン状態とし、当該オン状態における前記変位検出部の検出結果を前記基準値として取得し、前記交流電圧の測定時に前記スイッチ部をオフ状態としてよい。
これにより、環境等に応じて前記基準値にばらつきが生じる場合でも、交流電圧の測定を行う前に最新の適切な基準値が取得されるため、交流電圧の測定精度が更に高まる。
【0010】
好適に、上記非接触電圧測定装置は、前記測定対象物と非接触で静電結合する第2静電結合電極を備えてよい。前記電圧供給部は、入力される交流信号をゲイン制御信号に応じたゲインで増幅し、当該増幅結果の電圧を前記フィードバック電極に供給してよい。前記制御部は、前記第2静電結合電極から入力される信号に基づいて、前記測定対象物の前記交流電圧に比例した前記交流信号を生成する交流信号生成部と、前記変位検出部の検出結果が前記基準値へ近づくように前記ゲイン制御信号を調節するゲイン制御部とを有してよい。
上記の構成によれば、前記測定対象物の前記交流電圧に比例した交流信号を増幅することにより、前記フィードバック電極の電圧が生成される。そのため、前記交流電圧と前記フィードバック電極の電圧とが精度よく一致するようになる。
【0011】
好適に、前記変位検出部は、磁石と、前記磁石による磁界を検出する磁気検出部とを有してよい。前記磁石及び前記磁気検出部の一方が、前記可動体に設けられ、前記磁石及び前記磁気検出部の他方が、前記変位の検出の基準となる基台に固定されてよい。前記変位検出部は、前記磁気検出部における前記磁界の検出結果を前記変位の検出結果として出力してよい。
これにより、前記電圧供給部が前記フィードバック電極に供給する電圧に応じて、前記可動体に加わるクーロン力が変化し、前記クーロン力の変化が前記可動体の変位となり、当該変位が前記磁石による磁界の変化としてとして前記磁気検出部に検出される。そのため、前記フィードバック電極に供給する電圧に応じて、前記磁気検出部に検出される前記磁界が敏感に変化する。
【0012】
好適に、前記可動体が前記中立位置にある場合、前記可動体に設けられた前記磁石及び前記磁気検出部の一方が基準位置にあってよい。前記基台に設けられた前記磁石及び前記磁気検出部の他方は、前記基準位置に対して、前記可動体の変位とともに前記磁石及び前記磁気検出部の一方が前記基準位置から変位する方向と垂直な方向へずれた位置に設置されてよい。
これにより、前記可動体が前記中立位置にある場合に前記磁石と前記磁気検出部との距離が短くなり、前記磁気検出部による磁界の検出値が大きくなる。
【0013】
或いは、前記基台に設けられた前記磁石及び前記磁気検出部の他方は、前記基準位置に対して、前記可動体の変位とともに前記磁石及び前記磁気検出部の一方が前記基準位置から変位する方向と平行な方向へずれた位置に設置されてもよい。
これにより、前記磁気検出部の検出結果に基づいて、前記可動体が前記中立位置に対して前記検出電極側に引き寄せられている場合と前記フィードバック電極側に引き寄せられている場合とが判別可能となる。
【0014】
好適に、上記非接触電圧測定装置は、2つの前記磁気検出部を備えてよい。一方の前記磁気検出部は、前記磁石の前記基準位置に対して、前記基準位置から前記可動体が変位する方向と平行な方向である第1方向へずれた位置に設置されてよい。他方の前記磁気検出部は、前記磁石の前記基準位置に対して、前記基準位置から前記第1方向と逆の第2方向へずれた位置に設置されてよい。前記制御部は、前記一方の前記磁気検出部において検出された前記磁石の磁界の検出値と前記他方の磁気検出部において検出された前記磁石の磁界の検出値との差が所定の値へ近づくように、前記電圧供給部から出力される電圧を制御してよい。
これにより前記可動体の変位の検出感度が向上する。
【0015】
好適に、前記変位検出部は、前記可動体に設けられ、前記フィードバック電極の表面に向かって尖った尖端部、又は、前記フィードバック電極に設けられ、前記可動体の表面に向かって尖った尖端部を備える導体のプローブと、前記プローブと前記フィードバック電極との間に電圧を加える電圧源と、前記プローブから前記フィードバック電極へ電界放出により流れる電流を検出する電流検出部とを有してよく、前記電流検出部における前記電流の検出結果を前記変位の検出結果として出力してよい。
【0016】
好適に、前記検出電極と前記フィードバック電極とが対向して配置されてよい。前記可動体の少なくとも一部が前記検出電極と前記フィードバック電極との間に挟まれて位置してよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定対象物と導通せずに交流電圧を精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
図2】第2の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
図3】第3の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
図4】第3の実施形態に係る非接触電圧測定装置の一変形例を示す図である。
図5】第4の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
図6】第5の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
図7】第5の実施形態に係る非接触電圧測定装置の一変形例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る非接触電圧測定装置の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る非接触電圧測定装置を説明する。
図1は、本実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。図1に示す非接触電圧測定装置は、導体の測定対象物1に印加される交流電圧Vacを測定対象物1と導通せずに計測する装置であり、導体の可動体31と検出電極13との間に生じるクーロン力、及び、可動体31とフィードバック電極14との間に生じるクーロン力を利用して交流電圧Vacの計測を行う。なお、ここで「導通せず」とは、測定対象物と非接触電圧測定装置とが直流的に絶縁されていることを意味しており、両者の間に絶縁物が介在している場合や、空間を隔て両者が分離している場合を含む。図1の例において、非接触電圧測定装置は、第1静電結合電極11と、検出電極13と、フィードバック電極14と、可動体31と、変位検出部40と、電圧供給部50と、制御部60と、スイッチ部SW1とを有する。
【0020】
測定対象物1は、例えば商用電力系統などの交流電源4につながる電線や、配電盤等に設けられたバスバーである。第1静電結合電極11は、この測定対象物1と静電結合する。第1静電結合電極11は、例えば、絶縁体の基板21(プリント基板、フレキシブル基板など)に導電パターンとして形成される。第1静電結合電極11と検出電極13は導通しており、例えば配線によって電気的に接続される。
【0021】
検出電極13とフィードバック電極14は、互いに対向して配置されており、平行板型のキャパシタを形成する。第1静電結合電極11と同様に、検出電極13は基板23上に導電パターンとして形成され、フィードバック電極14は基板24上に導電パターンとして形成される。基板23,24は、共通の基台2に固定される。
【0022】
可動体31は、検出電極13との間に生じるクーロン力及びフィードバック電極14との間に生じるクーロン力に応じて変位可能に支持された導体であり、所定の中立位置Pへ復帰させようとする弾性力が働く。図1の例において、可動体31は弾性を備えた板状の導電部材であり、片方の端部が基台2に固定され、当該固定端から検出電極13及びフィードバック電極14の対向面に対して平行に延伸する。当該固定端の反対側の端部は開放されており、当該開放端が延伸方向に対して垂直な方向に変位可能となっている。可動体31は、交流電圧Vacの測定の基準となる基準電位(以下、「グランド」と記す。)に接続される。
【0023】
変位検出部40は、可動体31の変位を検出する。図1の例において、変位検出部40は磁石43と磁気検出部41を備える。磁石43は可動体31の開放端の近くに設けられており、可動体31と共に変位する。磁気検出部41は、磁石43による磁界を検出するセンサであり、図1の例では基板24に配置される。磁気検出部41は、可動体31の変位の基準となる基台2に基板24を介して固定される。
【0024】
磁気検出部41は、可動体31の開放端が中立位置Pにある場合(検出電極13とフィードバック電極14の電位が等しい場合)における磁石43の基準位置(図1に示す位置)に対して、当該基準位置から可動体31が変位する方向と平行な方向(図1における矢印D2の方向)へずれた位置に設置される。
【0025】
電圧供給部50は、フィードバック電極14へ交流電圧Vsを供給する回路であり、制御部60の制御に従って交流電圧Vsの振幅や周波数、位相を変化させる。
【0026】
スイッチ部SW1は、検出電極13とフィードバック電極14を短絡する。図1の例において、スイッチ部SW1は、検出電極13とグランドとの間及びフィードバック電極14とグランドとの間に設けられたスイッチ素子をそれぞれ有する。スイッチ部SW1は、制御部60の制御に従ってオンオフする。
【0027】
制御部60は、変位検出部40における変位の検出結果が中立位置Pを示す所定の基準値へ近づくように、電圧供給部50から出力される交流電圧Vsを制御する。制御部60は、例えばメモリに格納されるプログラムの命令コードに従って処理を実行するコンピュータや、特定の処理を実行する専用のロジック回路(ASIC等)を含んで構成される。
【0028】
ここで、上述した構成を有する図1に示す非接触電圧測定装置の動作を説明する。
【0029】
まず制御部60は、交流電圧Vacの測定を行う前にスイッチ部SW1をオン状態とし、当該オン状態における変位検出部40の検出結果(磁気検出部41による磁界の検出値)を上記の基準値として取得する。スイッチ部SW1をオン状態にすると、検出電極13、フィードバック電極14及び可動体31が全て同電位となり、これらに蓄積される電荷がゼロに初期化される。この場合、可動体31にはクーロン力が作用しないため、可動体31は所定の中立位置Pにある。従って、スイッチ部SW1のオン状態において制御部60が変位検出部40から取得する基準値は、可動体31が中立位置Pにあることを示す。
【0030】
制御部60は、変位検出部40の基準値を取得した後、スイッチ部SW1をオフ状態に設定し、交流電圧Vacの測定を開始する。
【0031】
測定を開始する時、制御部60は、電圧供給部50の交流電圧Vsを交流電圧Vacに比べて十分に小さいレベル(例えばゼロ)に設定する。この場合、可動体31と検出電極13に蓄積される電荷は、交流電圧Vacの2分の1周期ごとに極性を正負に反転させながら最大値となる。電荷が最大値になるとき、可動体31と検出電極13との間に生じるクーロン力が最大となり、可動体31が検出電極13側に引き寄せられ、磁気検出部41における磁界の検出値は最小となる。従って、磁気検出部41の検出結果は、交流電圧Vacの2分の1周期で振動する。そこで制御部60は、測定開始時の磁気検出部41の検出結果に基づいて、交流電圧Vacの周波数・位相を検出し、検出した周波数・位相に交流電圧Vsを同期させる。
【0032】
次に制御部60は、磁気検出部41の検出結果に対して平均化処理(ローパスフィルタ処理)を施し、検出結果の平均値に基づいて交流電圧Vsの振幅を調節する。
【0033】
電圧供給部50の交流電圧Vsの振幅が交流電圧Vacに比べて小さいと、可動体31(グランド)とフィードバック電極14との電位差が、可動体31と検出電極13との電位差に比べて平均的に小さくなる。この場合、可動体31とフィードバック電極14との間に生じるクーロン力が、可動体31と検出電極13との間に生じるクーロン力より平均的に小さくなるため、可動体31は中立位置Pより検出電極13側に引き寄せられて、矢印D1の方向に変位する。そうすると、磁石43が磁気検出部41から遠ざかるため、磁気検出部41における磁界の検出値は平均的に小さくなる。すなわち、交流電圧Vsの振幅が交流電圧Vacに比べて小さい場合、磁気検出部41における磁界の検出値が基準値(可動体31が中立位置Pにある場合の磁気検出部41の検出値)に比べて平均的に小さくなる。
【0034】
他方、電圧供給部50の交流電圧Vsの振幅が交流電圧Vacに比べて大きい場合は、上記と逆に、磁気検出部41における磁界の検出値が基準値に比べて平均的に大きくなる。
【0035】
従って、制御部60は、磁気検出部41において検出される磁界の平均値が基準値より小さい場合は交流電圧Vsの振幅を増大させ、当該平均値が基準値より大きい場合は交流電圧Vsの振幅を減少させるように負帰還制御を行い、当該平均値を基準値へ近づける。
【0036】
磁気検出部41において検出される磁界の平均値が基準値とほぼ等しくなると、可動体31は中立位置Pにあるため、可動体31へのクーロン力はほぼゼロになっており、フィードバック電極14は検出電極13とほぼ同電位になる。フィードバック電極14と検出電極13が同電位になるということは、第1静電結合電極11と測定対象物1との間の寄生キャパシタC1に電流がほとんど流れないことを意味するため、第1静電結合電極11と測定対象物1の電位はほぼ等しくなっている。従って、電圧供給部50の交流電圧Vsは測定対象物1の交流電圧Vacとほぼ等しくなる。
【0037】
交流電圧Vsが交流電圧Vacとほぼ等しくなるため、例えば制御部60は、電圧供給部50の交流電圧Vsの振幅を調節するために与えた振幅の設定値などに基づいて、交流電圧Vacの振幅の測定結果を取得することができる。
【0038】
なお、制御部60がアナログ回路によって構成される場合は、交流電圧Vsの振幅を測定する電圧測定器を別途設けて、その出力を交流電圧Vacの測定結果としてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、導体の可動体31には、測定対象物1の交流電圧Vacに応じた電圧が加わる検出電極13との間にクーロン力が生じるとともに、交流電圧Vsが供給されるフィードバック電極14との間にクーロン力が生じ、それらのクーロン力に応じて変位が生じる。また、可動体31には、所定の中立位置Pへ復帰させようとする弾性力が働くため、クーロン力が小さくなると中立位置Pへ近づく方向に変位が生じる。制御部60では、変位検出部40において検出される可動体31の変位が中立位置Pを示す所定の基準値へ近づくように、電圧供給部50の交流電圧Vsが制御される。この制御によって、可動体31に働くクーロン力がゼロに近づき、交流電圧Vsは検出電極13の電圧に近づく。従って、電圧供給部50の交流電圧Vsから、交流電圧Vacの測定値を得ることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る非接触電圧測定装置では、可動体31がクーロン力の働かない中立位置Pへ近づくように交流電圧Vsがフィードバック制御されることから、可動体31の変位に要する力の大きさとクーロン力との関係に測定結果が影響を受けなくなる。そのため、電極に作用するクーロン力を秤などによって測定する従来の装置に比べて大幅に測定精度を向上できる。
【0041】
また、クーロン力が微小であっても、可動体31の弾性力を適宜設定することによって十分な変位量を得ることが可能であるため、従来の装置に比べて低い電圧を精度よく測定することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、交流電圧Vacの測定を行う前にスイッチ部SW1がオン状態とされ、当該オン状態における変位検出部40の検出結果が中立位置Pを示す基準値として取得される。
そのため、環境等に応じて基準値にばらつきが生じる場合でも、交流電圧Vacの測定を行う前に最新の適切な基準値を取得できるため、交流電圧Vacの測定精度を更に高めることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、フィードバック電極14に供給する電圧(V)の変化が、可動体31に加わるクーロン力(F)の変化となり、クーロン力(F)の変化が可動体31の変位(D)となり、その変位(D)が磁石43の磁界(H)の変化としてとして検出される。これらの電圧(V),クーロン力(F),変位(D),磁界(H)は、概ね次のような関係を持つ。
【0044】
F ∝ V …(1)
D ∝ F …(2)
H ∝ 1/D ∝ 1/V …(3)
【0045】
式(3)から分かるように、フィードバック電極14に供給する電圧(V)に対して磁界(H)は非常に敏感に変化する。従って、クーロン力が微小であっても、可動体31の変位を感度よく検出できる。そのため、フィードバック制御の精度が向上し、電圧測定を精度よく行うことができる。
【0046】
例えば、一般的な可変容量素子であるバリキャップの静電容量は、バリキャップに与える電圧の平方根の逆数に比例する。そのため、バリキャップの電圧に対する静電容量の変化は、式(3)などに比べて非常に鈍感である。従って、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、バリキャップを用いて交流電圧の測定を行う方法に比べて、電圧測定の精度や分解能を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、可動体31の開放端が中立位置Pにある場合における磁石43の基準位置(図1に示す位置)に対して、当該基準位置から可動体31が変位する方向と平行な方向(図1における矢印D1の方向)へずれた位置に磁気検出部41が設置される。これにより、磁気検出部41の検出結果に基づいて、可動体31が中立位置Pに対して検出電極13側に引き寄せられている場合とフィードバック電極14側に引き寄せられている場合とを判別できるため、制御部60によるフィードバック制御を簡易化できる。
【0048】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0049】
図2は、第2の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
図2に示す非接触電圧測定装置は、図1に示す非接触電圧測定装置と同様な構成に加えて、第2静電結合電極12を有する。また、制御部60は交流信号生成部61とゲイン制御部62を含み、電圧供給部50は可変ゲインアンプ51を含む。
【0050】
第2静電結合電極12は、第1静電結合電極11と同様に、測定対象物1と非接触で静電結合する。図2の例において、第2静電結合電極12は、第1静電結合電極11と共通の基板21に導電パターンとして形成される。
【0051】
電圧供給部50は、制御部60から入力される交流信号Vgをゲイン制御信号Scに応じたゲインで増幅し、当該増幅結果を交流電圧Vsとして出力する可変ゲインアンプ51を有する。
【0052】
交流信号生成部61は、第2静電結合電極12から入力される信号に基づいて、測定対象物1に印加される交流電圧Vacに比例した交流信号Vgを生成する回路であり、図2の例では、オペアンプ63とキャパシタCfを含む。キャパシタCfは、オペアンプ63の出力端子と反転入力端子との間に接続される。オペアンプ63の反転入力端子は第2静電結合電極12に接続され、非反転入力端子はグランドに接続される。第2静電結合電極12と測定対象物1との間の寄生容量を「C2」、キャパシタCfの静電容量を「Cf」とすると、交流信号Vgは、交流電圧Vacに比例係数「C2/Cf」を乗じた値となる。
【0053】
ゲイン制御部62は、変位検出部40の検出結果が中立位置Pを示す基準値へ近づくようにゲイン制御信号Scを調節する。すなわち、ゲイン制御部62は、磁気検出部41において検出される磁界の平均値をローパスフィルタなどによって求め、当該平均値が基準値より小さい場合は交流電圧Vsの振幅を増大させ、当該平均値が基準値より大きい場合は交流電圧Vsの振幅を減少させるように負帰還制御を行う。
【0054】
本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、交流電圧Vacに比例した交流信号Vgを増幅することにより交流電圧Vsが生成されるため、交流電圧Vacと交流電圧Vsの周波数及び位相をより精度よく一致させることができる。従って、更に精度よく交流電圧Vacを測定できる。
【0055】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0056】
図3は、第3の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
図3に示す非接触電圧測定装置は、図1に示す非接触電圧測定装置における変位検出部40を変位検出部40Aに置換し、制御部60を制御部60Aに置換したものであり、他の構成は図1に示す非接触電圧測定装置と同じである。
【0057】
変位検出部40Aは、既に説明した磁石43及び磁気検出部41(図1)に加えて、磁石44及び磁気検出部42を有する。
【0058】
磁石44は、磁石43が取り付けられた可動体31の面に対して反対側の面であって、可動体31の開放端の近くに設けられている。磁石44も磁石43と同様、可動体31と共に変位する。
磁気検出部42は、磁石44による磁界を検出するセンサであり、図3の例では基板23に実装配置される。磁気検出部42も磁気検出部41と同様、基台2に基板23を介して固定される。
【0059】
磁気検出部42は、可動体31の開放端が中立位置Pにある場合における磁石44の基準位置(図3に示す位置)に対して、当該基準位置から可動体31が変位する矢印D1の方向へずれた位置に設置される。磁気検出部42が磁石44の基準位置からずれる矢印D1の方向は、磁気検出部41が磁石43の基準位置からずれる矢印D2の方向の逆である。
【0060】
制御部60Aは、磁気検出部41において検出された磁石43の磁界の検出値と磁気検出部42において検出された磁石44の磁界の検出値との差が所定の値へ近づくように、電圧供給部50から出力される交流電圧Vsを制御する。例えば制御部60Aは、交流電圧Vacの計測を行う前において、スイッチ部SW1をオン状態とし、当該オン状態における磁気検出部41の検出値から磁気検出部42の検出値を減算した結果を上記所定の値として取得する。その後、交流電圧Vacの計測を行う場合には、磁気検出部41の検出値から磁気検出部42の検出値を減算し、その減算結果の平均値をローパスフィルタなどにより求め、当該平均値が上記所定の値へ近づくように電圧供給部50の交流電圧Vsを制御する。
【0061】
このように、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、可動体31の変位に応じて検出値が逆方向に変化する関係(一方の検出値が増大すると他方の検出値が減少する関係)にある2つの磁気検出部(41,42)を用いて、それらの検出値の差が所定の値(可動体31が中立位置Pにあることを示す値)へ近づくように電圧供給部50の交流電圧Vsが制御される。
これにより、可動体31の変位を更に感度良く検出できるため、交流電圧Vacの測定を高い分解能で精度良く行うことができる。
【0062】
図4は、第3の実施形態に係る非接触電圧測定装置の一変形例を示す図である。
図4に示す非接触電圧測定装置は、図3に示す非接触電圧測定装置と同様な構成に加えて、既に説明した第2静電結合電極12(図2)を有する。また、図4における制御部60Aは、図2における制御部60のゲイン制御部62をゲイン制御部62Aに置き換えたものである。
【0063】
ゲイン制御部62Aは、2つの磁気検出部41,42において検出される磁界検出値の差の平均値をローパスフィルタなどによって求め、当該平均値が所定の値(可動体31が中立位置Pにあることを示す値)へ近づくように、交流電圧Vsの振幅を定めるゲインを負帰還制御する。
【0064】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0065】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。図5に示す非接触電圧測定装置は、図1に示す非接触電圧測定装置と同様の構成を有するが、変位検出部40における磁気検出部41の配置が図1に示す非接触電圧測定装置と異なる。すなわち、図5に示す非接触電圧測定装置では、可動体31が中立位置Pにある場合における磁石43の基準位置に対して、当該基準位置から可動体31が変位する方向と垂直な方向(矢印D3)へずれた位置に磁気検出部41が設置される。
【0066】
このような磁気検出部41の配置によれば、可動体31が中立位置Pにある場合に磁石43と磁気検出部41の距離が最短となり、磁気検出部41による磁界の検出値が最大となる。そのため、可動体31の変位の幅が比較的大きい場合でも、図1図4に示す非接触電圧測定装置に比べて磁気検出部41を磁石43の近くに配置可能であり、中立位置Pの近傍における可動体31の位置を正確に制御できる。
【0067】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
上述した各実施形態に係る非接触電圧測定装置では磁石の磁界に基づいて可動体の変位を検出しているが、本実施形態に係る非接触電圧測定装置では電界放出により流れる電流に基づいて可動体の変位を検出する。
【0068】
図6は、第5の実施形態に係る非接触電圧測定装置の構成の一例を示す図である。図6に示す非接触電圧測定装置は、図1に示す非接触電圧測定装置における可動体31を可動体32に置換し、変位検出部40を変位検出部40Bに置換し、制御部60を制御部60Bに置換し、スイッチ部SW1をスイッチ部SW2に置換したものであり、他の構成は図1に示す非接触電圧測定装置と同じである。
【0069】
可動体32は、図1等における可動体31をグランドから切り離し、変位検出部40Bに接続したものである。
【0070】
変位検出部40Bは、プローブ47と、電圧源45と、電流検出部46を有する。
プローブ47は、フィードバック電極14の表面に向かって尖った尖端部を備える導体であり、可動体32に固定される。
【0071】
電圧源45は、プローブ47とフィードバック電極14との間に一定の電圧を加える。図6の例では、電圧源45からプローブ47へ流れる電流の経路として導体の可動体32が使用されている。電圧源45は、プローブ47が負極性、フィードバック電極14が正極性となるように直流電圧を供給する。
【0072】
電流検出部46は、プローブ47からフィードバック電極14へ電界放出により流れる電流(トンネル電流)を検出する。
【0073】
制御部60Bは、変位検出部40Bの電流検出部46において検出される電流(トンネル電流)が、中立位置Pに可動体32が位置していることを示す所定の基準値へ近づくように、電圧供給部50から出力される交流電圧Vsを制御する。例えば制御部60Bは、制御部60と同様に、コンピュータや専用のロジック回路を含んで構成される。
【0074】
スイッチ部SW2は、検出電極13とフィードバック電極14の間に設けられており、制御部60Bの制御に従って検出電極13とフィードバック電極14を短絡する。
【0075】
ここで、上述した構成を有する図6に示す非接触電圧測定装置の動作を説明する。
【0076】
まず制御部60Bは、交流電圧Vacの測定を行う前にスイッチ部SW2をオン状態とし、当該オン状態における電流検出部46の検出結果を上記の基準値として取得する。スイッチ部SW2をオン状態にすると、検出電極13及びフィードバック電極14が同電位となり、これらに蓄積される電荷がゼロに初期化される。この場合、可動体32にはクーロン力が作用しないため、可動体32は所定の中立位置Pにある。従って、スイッチ部SW2のオン状態において制御部60Bが電流検出部46から取得する基準値は、可動体32が中立位置Pにあることを示す。
【0077】
制御部60Bは、変位検出部40Bの基準値を取得した後、スイッチ部SW2をオフ状態に設定し、交流電圧Vacの測定を開始する。制御部60Bは、電流検出部46において検出される電流値が上記の基準値と等しくなるように電圧供給部50の出力電圧を制御する。電流検出部46において検出される電流値が基準値とほぼ等しくなると、可動体32は中立位置Pにあるため、検出電極13と可動体32との間のクーロン力はほぼゼロになっており、フィードバック電極14は検出電極13とほぼ同電位になる。従って、電圧供給部50の交流電圧Vsは測定対象物1の交流電圧Vacとほぼ等しくなる。
【0078】
交流電圧Vsが交流電圧Vacとほぼ等しくなるため、例えば制御部60Bは、電圧供給部50から出力される交流電圧Vsの波形に基づいて、交流電圧Vacの振幅の測定結果を取得することができる。なお、制御部60Bがアナログ回路によって構成される場合は、交流電圧Vsの振幅を測定する電圧測定器を別途設けて、その出力を交流電圧Vacの測定結果としてもよい。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、導体の可動体32には、測定対象物1の交流電圧Vacに応じた電圧が加わる検出電極13との間にクーロン力が生じ、そのクーロン力に応じて変位が生じる。また、可動体32には、所定の中立位置Pへ復帰させようとする弾性力が働くため、クーロン力が小さくなると中立位置Pへ近づく方向に変位が生じる。制御部60Bでは、電流検出部46において検出された電界放出による電流が、中立位置Pに可動体32が位置する場合の所定の基準値へ近づくように、電圧供給部50の交流電圧Vsが制御される。この制御によって、可動体32に働くクーロン力がゼロに近づき、交流電圧Vsは検出電極13の電圧に近づく。従って、電圧供給部50の交流電圧Vsから、交流電圧Vacの測定値を得ることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る非接触電圧測定装置によれば、フィードバック電極14に供給する電圧(V)の変化が、可動体32に加わるクーロン力(F)の変化となり、クーロン力(F)の変化が可動体32の変位(D)となり、変位(D)に応じて電界放出の電流(トンネル電流)が変化する。式(1),(2)から、変位(D)とクーロン力(F)、電圧(V)は次のような関係を持つ。
【0081】
D ∝ F ∝ V …(4)
【0082】
トンネル電流の変動での高さの分解能は、一般的な走査トンネル顕微鏡において10×10−10[m]程度であるため、クーロン力による可動体32の変位が非常に小さい場合でも、可動体32の変位を非常に高い分解能で検出できるため、従って、精度の高い交流電圧Vacの測定値を得ることができる。
【0083】
図7は、第5の実施形態に係る非接触電圧測定装置の一変形例を示す図である。
図6に示す非接触電圧測定装置では可動体32にプローブ47が設けられているが、図7に示す変形例では、フィードバック電極14にプローブ48が設けられている。プローブ48は、図7に示すように、可動体32の表面に向かって尖った尖端部を備える。この場合、電圧源45は、プローブ48が設けられたフィードバック電極14が負極性、可動体32が正極性となるように直流電圧を供給する。
【0084】
本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0085】
上述した実施形態では、検出電極13とフィードバック電極14の間に挟まれて可動体(31,32)が位置している例を挙げたが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば図8において示すように、可動体31において検出電極13と対向する領域と、可動体31においてフィードバック電極14と対向する領域とが分離していてもよい。
【0086】
図8に示す非接触電圧測定装置は、図1に示す非接触電圧測定装置における検出電極13及びフィードバック電極14の配置を変更し、可動体31をグランドから切り離したものであり、他の構成は図1に示す非接触電圧測定装置と同じである。図8に示す非接触電圧測定装置では、交流電圧Vacの測定時において、可動体31がグランドから絶縁される。この場合、可動体31及び検出電極13の間に形成される寄生キャパシタC13と、可動体31及びフィードバック電極14の間に寄生キャパシタC14と、第1静電結合電極11及び測定対象物1の間に形成される寄生キャパシタC1とが直列に接続された状態となる。交流電圧Vacと交流電圧Vsとが異なる場合、これらの寄生キャパシタ(C1,C13,C14)の容量比に応じた電圧が各寄生キャパシタに発生する。可動体31は、主に検出電極13との間に生じるクーロン力によって変位する。可動体31が中立位置Pへ近づくように電圧供給部50の交流電圧Vsを制御することにより、交流電圧Vsが交流電圧Vacに近づく。
【0087】
上述した実施形態では、静電結合電極(11,12)と検出電極(13)がそれぞれ異なる基板(21,23)に形成された導電パターンである例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態において、静電結合電極(11,12)と検出電極(13)は共通の基板における別の場所(例えば表面と裏面)に形成された導電パターンでもよいし、あるいは、共通の導電部材の一部を静電結合電極(11,12)、別の一部を検出電極(13)として利用してもよい。
【0088】
上述した実施形態では、磁石と磁気検出部を用いた変位検出部を例として挙げたが、本発明は、これに限定されない。例えば、可動体との距離の変化による静電容量を検出する変位検出部を本発明に用いることができる。
【0089】
図1図5図8に挙げた非接触電圧測定装置の例では、可動体に磁石が固定され、基台に磁気検出部が固定されているが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、可動体に磁気検出部が固定され、基台に磁石が固定されてもよい。
【0090】
上述した実施形態では、一端が固定されるとともに他端が開放された片持ち梁を可動体の例として挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、矩形の板状導体の各隅(各辺)を弾性材料によって基台に固定した構造など、様々な構造の可動体を本発明に用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
1…測定対象物、2…基台、4…交流電源、11…第1静電結合電極、12…第2静電結合電極、21,23,24…基板、13…検出電極、14…フィードバック電極、31,32…可動体、40,40A,40B…変位検出部、41,42…磁気検出部、43,44…磁石、45…電圧源、46…電流検出部、47,48…プローブ、50…電圧供給部、51…可変ゲインアンプ、60,60A,60B…制御部、61…交流信号生成部、62,62A…ゲイン制御部、63…オペアンプ、SW1,SW2…スイッチ部、Vac,Vs…交流電圧、Vg…交流信号、Sc…ゲイン制御信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8