特許第6352542号(P6352542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6352542CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置
<>
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000002
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000003
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000004
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000005
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000006
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000007
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000008
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000009
  • 特許6352542-CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352542
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】CVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20180625BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20180625BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20180625BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C01B33/035
   C01G25/02
   C23C16/42
   C23C16/44 B
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-526500(P2017-526500)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公表番号】特表2018-502031(P2018-502031A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015075933
(87)【国際公開番号】WO2016078938
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】102014223415.8
(32)【優先日】2014年11月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン、クッツァ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク、レンシュミット
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101565184(CN,A)
【文献】 国際公開第2014/143910(WO,A1)
【文献】 特開2010−090024(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201424378(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントロッドを収容するのに適し、導電性材料製の電極ホルダー上に配置され、フロアプレート内の凹部内に取り付けられている電極を含んでなるCVDリアクタ内の電極ホルダーを、絶縁およびシールするための装置であって、
前記電極ホルダーと前記フロアプレートとの間に、室温での比熱伝導率が1〜200W/mKであり、持続使用温度が400℃以上であり、室温での比電気抵抗が10Ωcmを超える構成材料製の電気絶縁リングを備え、
前記電極ホルダーと前記フロアプレートとの間に、2つ以上のシール用リング状シール部材を備え、
前記電気絶縁リングまたは前記電極ホルダーまたは前記フロアプレートが、前記シール部材が固定される溝を含んでなり、
前記シール部材のうち1つ以上が、前記電極ホルダー内または前記フロアプレート内に配置されている溝に固定され、前記電気絶縁リングの上または下に配置されており、
前記電極ホルダーおよび前記フロアプレートは、その内部を流れる冷却材を有する、
置。
【請求項2】
前記電気絶縁リングの前記構成材料が、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム、および酸化イットリウム、酸化マグネシウム、または酸化カルシウムで安定化された酸化ジルコニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シール部材が、エラストマー構成材料製のOリングである、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記Oリングが、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、またはシリコーンエラストマー製である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記シール部材が、グラファイト箔リングである、請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
前記シール部材が、金属製Oリングであるか、または開放形状およびばね作用を有する金属製シールである、請求項1または2に記載の装置。
【請求項7】
開放形状を有する前記金属製シールが、内部コイルばねを含んでなる、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記金属製シール部材が、延性金属でコーティングされている、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記金属製シールが、C形状を有し、銀でコーティングされている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記シール部材が、接合されてリングになっている、様々な直径を有する複数の金属バンドを含んでなり、前記リング状金属バンドが、重なり合って配置されており、各々1つ以上のキンクまたは曲げを有し、フィラー材料が、個々の前記金属バンドの間に配置されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項11】
前記金属バンドが、らせん状に巻かれており、前記シール部材が、らせんシールである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記金属製バンドが、ステンレススチール、ニッケル、またはニッケル系合金製の可撓性金属バンドである、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記フィラー材料がグラファイトである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記電気絶縁リングに対する前記電極ホルダーの半径方向オーバーラップcが、0以上であり、かつ、前記電気絶縁リングの高さhの8倍以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記電気絶縁リング内または前記フロアプレート内または前記電極ホルダー内の前記シール部材を収容するための前記溝が、前記フロアプレート内の前記凹部からの距離が前記電気絶縁リングの全幅の10〜40%であるように、前記凹部から離間している、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
多結晶シリコンの製造方法であって、シリコン含有成分および水素を含んでなる反応ガスを、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置上に配置されている1つ以上のフィラメントロッドを含んでなるCVDリアクタに導入し、前記フィラメントロッドに電極を介して電流を供給し、それにより、前記フィラメントロッドを、多結晶シリコンが前記フィラメントロッド上に析出される温度に直接通電加熱することを含んでなる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコン析出用リアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置、および該装置を使用する多結晶シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度のシリコンは、一般的に、シーメンス法により製造される。このシーメンス法は、水素および1種以上のシリコン含有成分を含んでなる反応ガスを、直接通電により加熱される支持体が取り付けられたリアクタに導入し、支持体上に固体シリコンを析出させることを含む。用いられるシリコン含有化合物は、シラン(SiH)、モノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、テトラクロロシラン(SiCl)、およびそれらの混合物であることが、好ましい。
【0003】
各支持体は、一般的に、2つの薄いフィラメントロッドと、それらの遊離端で隣接ロッドと通常連結している1つのブリッジとで構成されている。フィラメントロッドは、単結晶または多結晶シリコンから製造されるのが最も一般的であり、金属/合金または炭素が用いられるのは稀である。フィラメントロッドは、リアクタフロア上に配置されている電極に垂直に差し込まれ、リアクタフロアは、電極ホルダーとの連結と電流供給を与える。高純度のポリシリコンは、加熱されたフィラメントロッドと水平ブリッジの上に析出し、時間の経過とともに、その直径が増加する。所望の直径が達成されたら、方法は終了する。
【0004】
シリコンロッドは、一般的にグラファイト製である特殊電極により、CVDリアクタ内に保持される。それぞれの場合において、電極ホルダーで異なる電圧極性を有する2つのフィラメントロッドは、他方のスリムロッド端でブリッジにより連結されて、電気閉回路を形成する。スリムロッドを加熱するための電気エネルギーは、電極およびその電極ホルダーを介して供給される。このことにより、スリムロッドの直径が増加する。同時に、電極は、その先端で成長が始まり、シリコンロッドのロッドベースになる。シリコンロッドで所望の目標直径が達成されたら、析出方法は終了し、シリコンロッドを冷却し、取り出す。
【0005】
フロアプレートを貫通する電極ホルダーのシールは、特に重要である。このため、電極シール体の使用が提唱されており、特に、電極シール体の配置および形状ならびに用いられる材料が重視されている。
【0006】
析出装置に突き出る電極ホルダーの上部とフロアプレートとの間に、環状体が配置される。前記環状体は、通常、以下の2つの機能を有す。1.貫通電極ホルダーのシール、および2.フロアプレートからの電極ホルダーの電気絶縁。
【0007】
CVDリアクタ内の高いガス空間温度は、炭化水素系シール体の熱保護を必要とする。不十分な熱保護により、シール体の焼けによるシール体の早期摩耗、熱で誘起されるシール体のフロー、リアクタの漏れ、最小値を下回る電極ホルダーとフロアプレートとの間の距離、および炭化したシール体での地絡がもたらされる。地絡または漏れは、析出装置の停止をもたらし、そのため析出方法が中止されることになる。このことにより、収率が低くなり、コストが高くなる。
【0008】
米国特許出願公開第2011/0305604号明細書は、石英製の保護リングを用いて、熱ストレスから電極シールをシールドすることを開示している。リアクタフロアは、特殊な構成を有す。リアクタフロアは、第1領域および第2領域を含んでなる。第1領域は、リアクタの内部空間に面しているプレートおよびノズルを保有している中間プレートにより構成されている。リアクタフロアの第2領域は、中間プレートとフィラメント用の供給接続を保有しているフロアプレートにより構成されている。冷却水は、このように構成されている第1領域に供給され、それによって、リアクタ底部を冷却する。フィラメント自体は、グラファイトアダプターに取り付けられる。このグラファイトアダプターは、グラファイトクランプリングに係合し、グラファイトクランプリング自体が、石英リングを介してプレートと相互作用する。フィラメント用の冷却水連結は、クイックフィット連結の形態であり得る。
【0009】
国際公開第2011/116990号は、石英カバーリングを有する電極ホルダーを記載している。プロセスチャンバユニットは、接触クランプユニット、基本部材、石英被覆ディスク、および石英被覆リングで構成されている。接触クランプユニットは、複数の接触部材で構成されており、接触部材は、互いに対して動かすことが可能であり、シリコンスリムロッド用の収容空間を形成する。接触クランプユニットは、基本部材の対応する収容空間に挿入され得、基本部材へ挿入されたときに、シリコンスリムロッド用の収容スペースは、狭くなり、そのため、前記スリムロッドは、しっかりとクランプされ、電気的に接触される。基本部材は、貫通ユニットの接触先端を収容するためのより狭い収容空間も含んでなる。石英被覆ディスクは、貫通ユニットの接触先端を貫通させるための中央開口部を有す。石英被覆リングは、CVDリアクタのプロセスチャンバの内部に配置されている貫通ユニットの領域の周囲を少なくとも部分的に放射状に取り囲むことができるような寸法を有す。
【0010】
しかしながら、石英は熱伝導率が低いため、これらの部材は、析出条件下で非常に熱くなるので、高温で薄いシリコン層がその表面に成長する。シリコン層は、これらの条件下で導電性となり、地絡をもたらす。
【0011】
国際公開第2011/092276号は、電極ホルダーとフロアプレートとの間のシール部材が、囲繞型セラミックリングにより温度変化の影響に対して保護される、電極ホルダーを記載している。複数の電極が、リアクタのフロア内に固定されている。これらの電極は、電極体に取り付けられているフィラメントロッドを保有し、電極体は、電極/フィラメントロッドに電流を供給する。電極体自体は、リアクタのフロアの上面の方向で、複数の弾性部材により、機械的にプレストレスが与えられる。径方向囲繞型シール部材は、リアクタのフロアの上面とフロアの上面と平行な電極体のリングとの間に挿入されている。シール部材自体は、リアクタのフロアの上面とそれと平行な電極体のリングとの間の領域にあるセラミックリングによりシールドされる。
【0012】
シール部材は、PTFE製であり、シール機能および絶縁機能の両方を有す。セラミックリングは、シールリング用の熱シールドとしての機能を果たす。しかしながら、250℃より高温の熱ストレスにPTFEが晒されることは、シール表面での焼け/ひび割れおよびシール体のフローをもたらす。従って、電極ホルダーの上部とフロアプレートとの間の距離は、最小値を下回り、それによって、電極ホルダーからフロアプレートへの電気アーキング/地絡が起こる。また、焼け/ひび割れは、炭素化合物を放出し、それによって、炭素の取り込みによる、析出されるシリコンロッドの汚染が起こる。
【0013】
米国特許出願公開第2013/0011581号明細書は、フィラメントロッドを収容するのに適し、導電性材料製の電極ホルダー上に配置され、フロアプレート内の凹部内に取り付けられている電極を含んでなるCVDリアクタ内の電極ホルダーを保護するための装置であって、前記電極ホルダーと前記フロアプレートとの間の中間空間が、シール材料でシールされ、前記シール材料が、1つ以上の部品から構成されている、リング状で前記電極周囲に配置されている保護体により保護され、前記保護体の高さが、前記電極ホルダーの方向で少なくとも部分的に増加する、前記装置を開示している。前記文書は、電極ホルダーの周囲に同心円状に配置されている幾何学体を与え、幾何学体の高さは、電極ホルダーから離れるにつれて減少する。また、幾何学体は、一部品から構成されていても良い。これは、電極ホルダーの絶縁シール体の熱保護を与え、フォールオーバー率に対して好ましい影響を有する析出したポリシリコンロッドのロッドベースでのフロー変更も与える。
【0014】
国際公開第2011/092276号および米国特許出願公開第2013/0011581号明細書に係る装置は、供給量が多いことによる熱ストレスが原因で、シリコンロッドから剥離し、電極ホルダーとセラミックリング/支持体との間に落ち、そこで電極ホルダーとフロアプレートとの間の導電接続を生むシリコン破片によって、電極ホルダーとフロアプレートとの間の地絡が起こりやすい可能性がある。短い回路は、ロッドを加熱するための電流供給の停止による突然の方法停止を引き起こす。ロッドを、目的の最終直径にまで析出させることができない。ロッドが薄くなると、設備能力が低くなり、それによって多大なコストがかかるようになる。
【0015】
中国実用新案第202193621号明細書は、電極ホルダーの上部とフロアプレートとの間の2つのセラミックリングと、それらの間に配置されるグラファイトガスケットとを備えた装置を開示している。
しかしながら、この装置は、セラミックリングと電極ホルダーの上部との間にも、セラミックリングとフロアプレートの間にも、シール機能を全く与えない。従って、リアクタは、漏れを起こしやすい。
【0016】
中国特許出願公開第101565184号明細書は、電極ホルダーの上部とフロアプレートとの間の酸化ジルコニウムセラミック材料(ZrO)製の絶縁リングを開示している。絶縁リングは、フロアプレートに凹設されている。従って、電極ホルダーの上部とフロアプレートとの間の絶縁のために、追加の石英リングが必要である。電極ホルダーの上部と絶縁リングとの間、およびフロアプレートと絶縁リングとの間で、2つのグラファイトガスケットを介してシールが達成される。フロアプレートの下を貫通する電極で、さらなるシールとして、Oリングを用いる。
【0017】
中国特許出願公開第102616783号明細書は、電極ホルダーの上部とフロアプレートとの間のセラミック材料製の絶縁リングを開示している。絶縁リングの上および下の2つの金属フレームグラファイトガスケットを介して、それぞれ、電極ホルダーの上部方向、およびフロアプレート方向に、シールが達成される。
【0018】
後者の2つの文書が有する問題は、グラファイトガスケットが、シールを達成するために、高い接触圧を必要とすることである。セラミック材料は、脆性であり、曲げ強度が低いので、フロアプレートと電極ホルダーの上部のシール表面は、厳しい均一性の要件を課される。実際ほぼ不可避のほんのわずかな不均一性さえ、高い接触圧によるセラミックリングの破損をもたらす。従って、リアクタは、漏れを起こしやすい。
【0019】
国際公開第2014/143910号は、上部と下部の溝を有するセラミック材料製の基体を含んでなるフロアプレートと電極ホルダーとの間のシールリングであって、シール部材がそれぞれの溝に挿入されている、前記シールリングを開示している。
【0020】
しかしながら、セラミックリング内の溝に挿入されているシール部材は、高いレベルの熱ストレスに晒されることが、明らかになっている。シール部材での動的温度変化は、電極ホルダー、フロアプレート、およびシールの熱膨張/収縮により引き起こされるシール部材での動きを引き起こし得る。このことは、シール部材の表面を損傷し、シールでの漏れを引き起こし得る。このことにより、シールの取り換えを頻繁に要するようになり、結果的にリアクタの耐用期間が減少する。
【0021】
米国特許出願公開第2010/058988号明細書は、円錐PTFE絶縁シール部材を介した、フロアプレート内の電極ホルダーの固定を与える。円錐PTFEシール部材の上面は、(断面を拡大する)フランジを介して電極ホルダーに対して圧縮される。Oリングは、シール部材とフロアプレートを貫通する電極との間、およびシール部材と電極ホルダーのシャフトとの間の両方に、追加的に設けられている。
【0022】
円錐シール部材の圧縮は、電極ホルダーの取り外しの妨げとなる。PTFEシール体のフローにより、電極ホルダーとフロアプレートとの間の距離が最小値よりも下回るようになり得る。このことは、電気アーキング/地絡をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0305604号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/116990号
【特許文献3】国際公開第2011/092276号
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0011581号明細書
【特許文献5】国際公開第2011/092276号
【特許文献6】米国特許出願公開第2013/0011581号明細書
【特許文献7】中国実用新案第202193621号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第101565184号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第102616783号明細書
【特許文献10】国際公開第2014/143910号
【特許文献11】米国特許出願公開第2010/058988号明細書
【発明の概要】
【0024】
本発明により達成される目的は、記載した問題から生じた。
【0025】
本目的は、フィラメントロッドを収容するのに適し、導電性材料製の電極ホルダー上に配置され、フロアプレート内の凹部内に取り付けられている電極を含んでなるCVDリアクタ内の電極ホルダーを絶縁およびシールするための装置であって、前記電極ホルダーと前記フロアプレートとの間に、室温での比熱伝導率が1〜200W/mKであり、持続使用温度が400℃以上であり、室温での比電気抵抗が10Ωcmを超える構成材料製の電気絶縁リングを備え、前記電極ホルダーと前記フロアプレートとの間に、2つ以上のシール用リング状シール部材を備え、前記電気絶縁リングまたは前記電極ホルダーまたは前記フロアプレートが、前記シール部材が固定される溝を含んでなり、前記シール部材のうち1つ以上が、前記電極ホルダー内または前記フロアプレート内に配置されている溝に固定され、前記電気絶縁リングの上または下に配置されている、前記装置により達成される。
【0026】
本発明の目的は、シリコン含有成分および水素を含んでなる反応ガスを、本発明に係る装置上、または好ましい実施形態の1つに係る装置上に配置されている1つ以上のフィラメントロッドを含んでなるCVDリアクタに導入し、前記フィラメントロッドに電極を介して電流を供給し、それにより、前記フィラメントロッドを、多結晶シリコンが前記フィラメントロッド上に析出される温度に直接通電加熱することを含んでなる、多結晶シリコンの製造方法によって、さらに達成される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施形態は、添付の特許請求の範囲および以下の説明から認識され得る。
【0028】
本発明は、シール体と絶縁体の分離、すなわち、電気絶縁用に設けられた絶縁リングおよびシール用に設けられたシール部品という2つの部材へのシール機能と絶縁機能の分配を与える。
【0029】
このことは、絶縁リングとシール部品について、2つの部材のそれぞれの機能により適する異なる構成材料を選択することを可能にする。
【0030】
絶縁リングは、耐熱性が高く、高い寸法安定性を有するべきであるが、シール機能は、必要ない。高い寸法安定性により、高さが高い絶縁リングを用いることができる。電極ホルダーとフロアプレートとの間の距離が大きいことは、高い電圧の印加を可能にする。このことの利点は、複数のロッドペアを直列で連結することができ、それによって、リアクタ電流供給に伴う設備投資を節約できることである。
【0031】
シール部材を電極ホルダー内の溝、および/またはフロアプレート内の溝に配置することの利点は、シール部材が電極ホルダーの上部および/またはフロアプレートにより冷却され得ることである。電極ホルダーおよびフロアプレートは、その内部を流れる冷却材を有す。
【0032】
従って、シール部材は、熱ストレスに晒されるレベルがより低くなる。シール部材への熱ストレスが低減することにより、シールの耐用期間の延長/耐久性の向上がもたらされる。
【0033】
一実施形態において、電極ホルダーの上部は、絶縁リングに対してオーバーラップcを有し得る。このことは、さらなる熱的および機械的保護を与える。絶縁リングは、熱放射から遮られ、ストレスに晒されるレベルがより低くなる。シール部材への熱ストレスも低減する。
【0034】
電極ホルダーの外径D_Eが絶縁リングの外径D_Rよりも大きい場合に、オーバーラップが存在する。
【0035】
オーバーラップcは、絶縁リングの高さの8倍以下であり得る。絶縁リングの高さの4倍以下であるオーバーラップが、特に好ましい。
【0036】
シール部材を収容するための溝は、絶縁リング内とフロアプレート内および/または電極ホルダーの上部の両方に配置され得るが、少なくとも1つの溝は、電極ホルダーまたはフロアプレート内に配置される。
【0037】
本発明者は、シール部材を収容するための両方の溝が絶縁リング内に配置される、先行技術から知られている実施形態には、欠点があることを確認した。少なくとも1つの溝が、絶縁リング内ではなく、電極ホルダー内またはフロアプレート内のいずれかに配置される場合に、シール部材の耐用期間は、著しく長くなる。このことは、電極ホルダーおよびフロアプレートが冷却可能であり、そのため、大型リアクタ内で高い析出温度であってもシール部材への熱ストレスが顕著に低減されることに起因する。
【0038】
絶縁リングの全幅b(絶縁リングの内径)の10〜40%の貫通電極からの距離に、溝が配置されることが、好ましい。従って、シール部材は、リアクタに面する絶縁リングの側面から十分に遠く離れている。このことは、シール部材への熱ストレスの観点から、有利である。
【0039】
他の実施形態において、溝は、フロアプレート内および電極ホルダーの上部内の同じ位置(絶縁リングの全幅bの10〜40%の貫通電極からの距離a)にも配置され得る。この場合、絶縁リングは、溝を有しない。
【0040】
電極ホルダーまたはフロアプレート内の溝に固定されているシール部材は、フロアプレート内および電極ホルダー内の冷却媒体によって冷却されることが、好ましい。冷却により、シール部材は、絶縁リングよりも著しく低い温度に達するようになる。
【0041】
リアクタ内部空間に面する絶縁リングの側面は、表面温度が600℃以下である。
【0042】
全部品、特に絶縁リングは、反応雰囲気に接触するようになるので、前記部品は、HCl/クロロシラン雰囲気で耐薬品性をさらに示さなければならない。
【0043】
絶縁リングの熱伝導率が低いと、シール部材への熱ストレスが低くなる。一方、絶縁リングの熱伝導率が低いと、リアクタ側での絶縁リングの表面温度が高くなる。表面温度は、導電性シリコン含有析出物が絶縁リング上に析出するのに十分な程高くはなってはいけない。適当な比熱伝導率を有する絶縁体用材料を選択することは、前記絶縁体の問題のない機能のために非常に重要である。
【0044】
内部シール部材は、ガスケットまたはその他のシール形態に比べて、反応空間からの熱的影響(高温反応ガス、熱放射)に対して、より良好に保護される。
【0045】
1つの部品から構成されている絶縁シールリングと比べて、1つ以上の部品からなる構成における材料特性は、シール機能および絶縁機能のそれぞれの要件により合うように設定され得る。
【0046】
絶縁リングは、シール材料特性を有する必要はない。
【0047】
絶縁リングの室温での比熱伝導率は、1〜200W/mKの範囲内にあり、1〜50W/mKの範囲内にあることが好ましく、1〜5W/mKの範囲内にあることが特に好ましい。
【0048】
室温での絶縁リングの比電気抵抗は、10Ωcmより大きく、1011Ωcmより大きいことが好ましく、1013Ωcmより大きいことが特に好ましい。
【0049】
フロアプレートおよび電極ホルダーの上部の接触表面内の不均一性を補うために、絶縁リングは、最小の曲げ強度を有するべきである。絶縁リングの曲げ強度は、120MPaより大きいべきであり、200MPaより大きいことが好ましく、500MPaより大きいことが特に好ましい(セラミック材料に関するDIN EN 843に従って測定)。
【0050】
従って、絶縁リングに好適な材料として、酸化アルミニウム(Al);窒化ケイ素(Si);窒化ホウ素(BN);酸化ジルコニウム(ZrO),酸化イットリウム(ZrO−Y)、酸化マグネシウム(ZrO−MgO)、または酸化カルシウム(ZrO−CaO)で安定化された酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0051】
酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウムの使用が特に好ましい。この材料は、最良の熱安定性および寸法安定性を示した。前記材料は、酸化イットリウムの添加により、非常に高い曲げ強度(20℃で>1000MPa)を有する。
【0052】
シール部材は、300〜500℃の持続使用温度に耐えうるべきである。さらに、前記部材は、300〜500℃でHCl/クロロシラン雰囲気に対して安定であるべきである。
【0053】
シール部材は、曲面または平面の何れかを有し得る。平面の場合には、シール部材は、非圧縮状態で溝から盛り上がっている。
【0054】
圧縮状態において、電極ホルダーの上部は、適所にロックされるまで、絶縁リングを介してフロアプレートに締め付けられる。シール部材は、溝に閉じ込められ、もはや溝から盛り上がっていない。従って、シール部材は、力の回避(force bypass)を受ける。
【0055】
シール部材がエラストマー構成材料製のOリングである場合が、好ましい。好適なシール部材の例は、フルオロエラストマー(FPM,ISO1629準拠)、パーフルオロエラストマー(FFKM,ASTM D−1418)、およびシリコーンエラストマー(MVQ,ISO1629)製のOリングである。
【0056】
他の実施形態は、グラファイト製のシールに関する。
【0057】
グラファイト性のシール部材が、編組グラファイト繊維製のグラファイトコードであるか、またはグラファイト箔リングである場合が、好ましい。
【0058】
グラファイト箔リングの使用が、特に好ましい。グラファイト箔リングは、複数の圧縮グラファイト層から構成されている。これらのグラファイト製のシール部材は、持続使用温度が600℃以下である。
【0059】
グラファイト製のシール部材の場合には、シール領域が非常に小さいので、低い圧縮力で十分である。シール領域は、溝の寸法により決まる。シール領域は、600〜3,000mmであることが好ましく、600〜2,000mmであることが特に好ましく、600〜1,500mmであることが非常に特に好ましい。従って、絶縁リングは、機械的ストレスに晒されるレベルが低く、絶縁リングの破損を防止する。
【0060】
他の実施形態は、金属製のシールに関する。金属製のシール部材は、金属環状ばねシールであることが好ましい。金属製シール部材のシール領域が小さいため、同様に、ここでシールを達成するためには、低い圧縮力で十分である。金属製シール部材の場合には、低い圧縮力は、シール円周の60〜300N/mm、好ましくはシール円周の60〜200N/mm、特に好ましくはシール円周の60〜160N/mmの圧縮力を意味するものとして理解されるべきである。
【0061】
金属製シールは、以下の形状のうちの1つを有することが、好ましい。
−内側が空洞である閉鎖形Oリング(中空金属Oリング);
−開放金属形状、例えばC字形、U字形、E字形、またはばね作用を有するあらゆる他の所望の形状、例えば波形金属シールリング;
−開放金属形状は、ばね支持されていてもよい、例えば追加の内部コイルばねを有するCリング。
【0062】
Cリングは、開放内面または外面を有する中空Oリングである。
【0063】
耐薬品性を高めるため、およびシール作用を高めるため、金属製シール部材は、延性金属、例えば銀、金、銅、ニッケル、または別の延性かつHCl/クロロシラン雰囲気で安定性の金属でコーティングされていてもよい。
【0064】
これらの延性コーティング材料の流動性は、金属製シール部材のシール作用を著しく高める。これらの金属製のシール部材は、持続使用温度が850℃以下である。
【0065】
延性コーティング材料という用語は、粒界転位が、機械的ストレス下で破断点伸び未満の伸びでも移動/流動する金属を意味するものとして理解されるべきである。圧縮中に存在する、力が加わるストレス下でのこの流動は、シール表面の不均一性を補う。このことにより、シールの向上が達成される。
【0066】
内部コイルばねを用いて、または用いずに、銀でコーティングした金属Cリングを使用することが特に好ましい。
【0067】
しかしながら、バッチの充放電中などの金属製シール部材での大きな温度変化は、シール部材の熱伸びによるシール部材のシール表面での機械的損傷をもたらし得る。
【0068】
他の実施形態は、可撓性構成材料、例えば接合されてリングになっている、圧縮時に弾力を確保する1つ以上のキンクまたは曲げを有する金属バンド、およびフィラー材料という2つの構成材料からなるシールに関する。
【0069】
シール体は、接合されてリングになっている、様々な直径を有する複数の金属バンドから構成されており、前記バンドは、重なり合って配置されている。
【0070】
フィラー材料、例えばシール作用を与えるグラファイトまたはPTFEは、個々のリングの間に配置されている。
【0071】
らせんシールに関する場合が、好ましい。このらせんシールは、複数の層に巻かれた、1つ以上のキンクまたは曲げを有する金属バンドである。フィラー材料は、個々の層の間に配置されている。フィラー材料は、圧縮時にシールを達成する。キンク変形した金属バンドは、弾力を与え、シールの可撓性を確保する。
【0072】
好ましい金属は、ステンレス鋼、Hastelloy、Inconel、およびニッケルである。
【0073】
Hastelloyは、Haynes International, Incからのニッケル系合金の商標である。
【0074】
Inconelは、耐食性ニッケル系合金系列のSpecial Metals Corporationの商標である。
【0075】
好ましいフィラー材料は、グラファイトである。
【0076】
本発明に係る方法の上記実施形態に関連して記載された特徴は、本発明に係る装置に準用され得る。逆に、本発明に係る装置の上記実施形態に関連して記載された特徴は、本発明に係る方法に準用され得る。本発明に係る実施形態のこれらとその他の特徴は、図面の説明および特許請求の範囲において、明らかにされる。それぞれの特徴は、本発明の実施形態のように、別々に、または組み合わせて、実施され得る。前記特徴は、それ自体で、保護にふさわしい有利な実施形態をさらに説明し得る。
【0077】
本発明を、図1〜9を参照して、以下でまた明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】嵌合絶縁リング、および電極ホルダー内にシール部材を有する上部溝、およびフロアプレート内にシール部材を有する下部溝の模式図を示す。
図2】電極ホルダー内にシール部材を有する上部溝、および絶縁リング内にシール部材を有する溝、ならびに電極ホルダーの上部のオーバーラップがある嵌合絶縁リングの模式図を示す。
図3】下側に溝がある絶縁リングの模式図を示す。
図4】フロアプレート内に下部溝、および電極ホルダーの上部内に上部溝、ならびに電極ホルダーの上部のオーバーラップがある嵌合絶縁リングの模式図を示す。
図5】溝がない絶縁リングの模式図を示す。
図6】金属Cリングの断面形状を示す。
図7】金属製のシール部材の他の実施形態の断面形状を示す。
図8】複数の圧縮された個々の箔からなるグラファイト箔リングの断面形状を示す。
図9】らせんシールの断面形状を示す。
【0079】
電極ホルダー1とフロアプレート3との間に、絶縁リング2およびシール部材4が配置されている。
【0080】
絶縁シース8に裏打ちされた穿孔を有し、自身を貫通し、自身に嵌合されている電極ホルダー1を有するフロアプレート3が設けられている。
【0081】
フロアプレート3および電極ホルダー1は、冷却手段5および7により冷却される。
【0082】
6は、電極ホルダー1用冷却手段7用の入口を示す。
【0083】
シールは、シール部材4により達成される。
【0084】
第1シール部材4は、電極ホルダー1内の溝に配置されている。
【0085】
第2シール部材4は、フロアプレート3内の溝に配置されている。
【0086】
電極ホルダー1の外径D_Eは、絶縁リング2の外径D_Rとぴったり重なっていてもよく、または前記外径D_Rをオーバーラップしていてもよい。電極ホルダーがオーバーラップしている場合が、好ましい。
【0087】
図1は、オーバーラップがない実施形態を示す。
【0088】
図2および4は、それぞれ、オーバーラップcがある実施形態を示す。
【0089】
このように、さらなる熱および機械保護をあたえるために、電極ホルダー1の上部は、絶縁リング2の外側の輪郭を突き出てもよい。オーバーラップcは、0〜8×hと等しいべきであり、ここで、hは、絶縁リング2の高さである。0〜4×hのオーバーラップが、特に好ましい。
【0090】
図2は、電極ホルダー1および絶縁リング2がそれぞれシール部材4を収容するための溝を含んでなる実施形態を示す。
【0091】
絶縁リング2内の溝9は、絶縁リングの全幅bの10〜40%の貫通電極からの距離aに配置されており、図3を参照されたい。フロアプレート3または電極ホルダー1内の溝も、貫通電極から同じ半径方向距離に配置されている。
【0092】
従って、シール部材4は、リアクタに面する絶縁リング2の側面から十分に遠く離れている。このことは、シール部材4への熱ストレスが低くなるので、有利である。従って、シール部材4は、フロアプレート2、電極ホルダー1の上部、およびフロアプレート3を通る電極の貫通部の冷却媒体により特に効果的に冷却される。効果的な冷却により、シール部材4は、熱エネルギーを冷却媒体に伝達することができ、そのため、熱損傷を受けない。
【0093】
図4は、フロアプレート3内および電極ホルダー1の上部内に溝、ならびに電極ホルダー1の上部のオーバーラップがある嵌合絶縁リング2の模式図を示す。オーバーラップcを有する実施形態に関する。
【0094】
図4に示す実施形態では、シール部材4を固定するための溝は、絶縁リング2内ではなく、電極ホルダー1およびフロアプレート3内に配置されている。
【0095】
図2と同様に、これらの溝は、絶縁リング2の全幅bの10〜40%の貫通電極からの距離aに配置されていることが、好ましい。
【0096】
従って、シール部材4は、図2のシール部材のように、フロアプレート内の凹部から同じ距離で配置されているが、絶縁リング2内の溝ではなく、電極ホルダー1およびフロアプレート3内の溝に挿入されている。
【0097】
図5は、溝がない絶縁リングの模式図を示す。このような絶縁リングは、図4に係る実施形態で用いられている。
【0098】
図6は、C形状を有する金属製シール部材の断面形状を示す。
【0099】
図7は、金属製シール部材の他の実施形態の断面形状である、O形状、U形状、E形状、ばね作用を有する形状を示す。
【0100】
Eリングは、二つ折りの二重Uリングである。
【0101】
図8は、複数の圧縮された個々の箔からなるグラファイト箔リングの断面形状を示す。
【0102】
図9は、複数の巻線を有する巻かれた金属バンド10、および巻線の個々の層の間のフィラー材料11からなるらせんシールの断面形状を示す。
【実施例】
【0103】
シーメンス析出リアクタにおいて、直径が160〜230mmの多結晶シリコンロッドを析出させた。
【0104】
絶縁リングおよびシール部材の複数の実施形態を、その過程で試験した。これらの試験の結果を、選択した実施例および比較例を用いて、以下で明らかにする。
【0105】
それぞれの析出方法のパラメーターは、全試験で同一であった。バッチ中の析出温度は、1,000℃〜1,100℃であった。析出方法の間、1種以上の式SiHCl4−n(式中n=0〜4)の塩素含有シラン化合物からなる供給原料、およびキャリヤーガスとしての水素を加えた。
【0106】
絶縁リングおよびシール部材の実施形態においてだけ、試験は異なった。
【0107】
比較のために、シール機能と絶縁機能を同時に有するPTFE絶縁リングを、最初に調べた。従って、前記リングは、絶縁リングと他のシール部材による機能の分離を与えない。
【0108】
金属製シール部材と併用する酸化ジルコニウム製の絶縁リングも試験した。グラファイト製またはパーフルオロエラストマーなどのエラストマー構成材料製のシール部材は、同様な結果をもたらす。
【0109】
比較として、シール部材が酸化ジルコニウムリングの溝内に固定されている実施形態を調べた。
【0110】
有利な実施形態は、1つ以上のシール部材が、フロアプレート内の溝、または電極ホルダー内の溝のどちらかに固定されていることが分かった。絶縁リングに対する電極ホルダーのオーバーラップは、シール部材への熱ストレスをさらに低減することができる。
【0111】
比較例1
<PTFE製の絶縁リングを含んでなるCVDリアクタ>
この先行技術の実施形態において、PTFE製の絶縁リングは、シール機能および絶縁機能を有す。寸法安定性が低いことにより、絶縁リングの高さは、新品のときで8mmに制限されている。
【0112】
運転中の熱ストレスが高いことと、絶縁リングのシール機能を確保するために35〜40kNの押圧が必要であることとから、絶縁リングの高さは、3か月以内に4mmの最小値に減少した。
【0113】
従って、耐用期間は、3ヶ月に制限される。
【0114】
高温の反応ガスにより熱ストレスがもたらされるため、フロアプレートのシールおよび電気絶縁の両方が、シール体の熱分解および沈殿により、もはや完全ではなかった。従って、この期間の後、コストがかかり面倒な全ての絶縁リングの取り換えが、必要であった。修繕オペレーションは、多大な能力喪失をもたらす。
【0115】
比較例2
<酸化ジルコニウム(ZrO)製絶縁リングを含んでなるCVDリアクタ>
この実施形態において、シール機能および絶縁機能は、2つの部材に分配されている。ZrO製絶縁リングを、電極ホルダーとフロアプレートとの間の電気絶縁を達成するために用いる。絶縁リングは、新品のときで高さが8mmである。電極ホルダーの上部方向、およびフロアプレート方向に、それぞれ銀でコーティングされた金属Cリングがシール機能を果たし、2つの金属Cリングは、絶縁リングの上部溝、および下部溝に固定されている。
【0116】
Cリングの使用により、シール円周の65N/mmの圧縮力が必要である。ZrOは、セラミック材料部材のような沈殿挙動を呈さない。低い接触圧により、確実に、セラミック材料製絶縁リングは破損しないようになる。
【0117】
非常に高い熱安定性およびPTFEと比較して著しく高い比熱伝導率により、リアクタに面する絶縁リングの側面は、12ヶ月の運転期間後、熱により劣化しなかった。
【0118】
しかしながら、Cリングは、バッチ運転における個々のバッチでのリアクタの始動および停止の間のシール体の大きな温度変化に起因する熱膨張により引き起こされたシール表面での表面の機械的損傷を示し、上部Cリングは、特にひどい損傷を受けた。遅くとも9ヶ月の運転期間後に、シール部材を取り換える必要があることが分かった。
【0119】
従って、耐用期間は、比較例1と比べて、最高9か月に増加した。
【0120】
実施例1
<酸化ジルコニウム(ZrO)製絶縁リングを含んでなるCVDリアクタ>
この実施形態において、シール機能および絶縁機能は、2つの部材に分配されている。ZrO製絶縁リングを、電極ホルダーとフロアプレートとの間の電気絶縁を達成するために用いる。絶縁リングは、新品のときで高さが8mmである。電極ホルダーの上部方向、およびフロアプレート方向に、それぞれ銀でコーティングされた金属Cリングが、シール機能を果たし、1つの金属Cリングは、電極ホルダー内の溝に固定されており、1つの金属Cリングは、絶縁リング内の溝に固定されている。オーバーラップcは、絶縁リングの高さの2倍、すなわち16mmであった。
【0121】
Cリングの使用により、シール円周の65N/mmの圧縮力が必要である。ZrOは、セラミック材料部材のような沈殿挙動を呈さない。低い接触圧により、確実に、セラミック材料製絶縁リングは破損しないようになる。
【0122】
非常に高い熱安定性およびPTFEと比較して著しく高い比熱伝導率により、リアクタに面する絶縁リングの側面は、12ヶ月の運転期間後でも、熱により劣化しなかった。オーバーラップcがもたらす熱放射の遮蔽は、このことに寄与することが分かった。
【0123】
この期間の後、Cリングも全く熱損傷を示さず、機械的損傷をほとんど示さなかった。冷却された電極ホルダー内の溝に固定された上部Cリングは、熱によっても、機械的にも、劣化しなかった。
【0124】
従って、耐用期間は、12ヶ月以上に増加した。
【0125】
実施例2
この実施形態において、シール機能および絶縁機能は、2つの部材に分配されている。ZrO製絶縁リングを、電極ホルダーとフロアプレートとの間の電気絶縁を達成するために用いる。絶縁リングは、新しいときで高さが8mmである。電極ホルダーの上部方向、およびフロアプレート方向に、それぞれ銀でコーティングされた金属Cリングが、シール機能を果たし、1つの金属Cリングは、電極ホルダー内の溝に固定されており、1つの金属Cリングは、フロアプレート内の溝に固定されている。電極ホルダーは、絶縁リングに対するオーバーラップcを有しなかった。
【0126】
非常に高い熱安定性およびPTFEと比較して著しく高い比熱伝導率により、リアクタに面する絶縁リングの側面は、12ヶ月の運転期間後、熱により劣化しなかった。
【0127】
電極ホルダーおよびフロアプレートの冷却により、金属Cリングは、熱的にも、機械的にも、劣化しなかった。
【0128】
従って、耐用期間は、12ヶ月以上に増加した。
【0129】
具体的な実施形態の上記の説明は、例示的なものとして理解されるべきである。それによってなされた開示は、当業者が本発明および本発明に関する利点を理解することを可能にし、また、当業者には明らかである、記載の構造および方法への変更および修正を包含する。全てのこのような変更および修正ならびに均等物は、従って、クレームの保護範囲により包含されるものとする。
【0130】
符号の説明
1 電極ホルダー
2 絶縁リング
3 フロアプレート
4 シール部材
5 フロアプレート冷却手段
6 電極ホルダー冷却入口
7 電極ホルダー冷却手段
8 絶縁シース
9 シール部材用溝
10 金属バンド
11 フィラー材料
a 内径からの溝の距離
b 全幅
h 絶縁リングの高さ
c オーバーラップ
D_E 電極ホルダーの外径
D_R 絶縁リングの外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9