(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352549
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】スキャナミラーの振動振幅の測定
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20180625BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20180625BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20180625BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/10 C
G01B11/00 Z
F21S41/16
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-545987(P2017-545987)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2017-538170(P2017-538170A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】AT2015050272
(87)【国際公開番号】WO2016081966
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年6月21日
(31)【優先権主張番号】A50849/2014
(32)【優先日】2014年11月24日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ミッターレーナー、トマス
(72)【発明者】
【氏名】グリースラー、クリスティアン
【審査官】
右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−109686(JP,A)
【文献】
特開2010−020091(JP,A)
【文献】
特開2013−026094(JP,A)
【文献】
特開2011−086432(JP,A)
【文献】
特開2012−198511(JP,A)
【文献】
特開2001−012921(JP,A)
【文献】
特開2004−110030(JP,A)
【文献】
特開2013−140224(JP,A)
【文献】
特開2003−131151(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/187497(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/58234(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/188043(US,A1)
【文献】
米国特許第4800271(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2767751(EP,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102010003608(DE,A1)
【文献】
中国実用新案第203350529(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G01B 11/00
F21S 41/00 − 41/698
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前照灯の投射システム(10)におけるスキャナミラー(13)の振動振幅を測定する方法であって、レーザ光源(21)により発生されたレーザ光線(22)が前記スキャナミラー(13)へ指向され、前記スキャナミラー(13)により反射され、そのように反射されたレーザ光線(22’)が所定の検知装置(23)へ入射するという方法であり、
所定の検知装置(23)が使用され、前記検知装置(23)は、その中央部の周りに相並んで配設された複数の光検知要素(Q1、Q2、Q3、Q4)を有し、前記レーザ光線(22’)は、前記スキャナミラー(13)の振動運動に基づき、前記光検知要素にわたって中心点の周りに延在する曲線(P)を描き、そして、
各々が1つの前記光検知要素か又は直接的に相並んで位置する複数の前記光検知要素の1つのグループにより構成され且つ1つの座標の負の値領域か又は正の値領域に対応する少なくとも1つの検知領域(RX、RY)に関し、
− 前記曲線(P)は、その中心点に関し、前記検知装置(23)の前記中央部に対して所定のオフセット値(xoffset、yoffset)だけ、各々の前記検知領域(RX、RY)に割り当てられた前記座標に沿ってずらされ、
− 前記曲線が各々前記検知領域(RX、RY)を通過する時間の長さ(tON,X、tON,Y)が決定され、
− 振動周期の全時間(T)に対するそのように決定された時間の長さ(tON,X、tON,Y)の比率と、前記オフセット値(xoffset、yoffset)とを使い、前記振動振幅(xp、yp)の値が決定されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記検知装置(23)としては、四分円検知器が使用され、前記四分円検知器は、その中央部の周りに配設された4つの検知フィールド(Q1〜Q4)を有し、前記四分円検知器の各々2つの隣接したフィールドは、1つの前記検知領域(RX、RY)を構成し、またこれらのフィールドは、これらの2つのフィールドが両側で接している前記座標に割り当てられていること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該方法は、複数の座標方向について実行され、前記座標方向は、互いに所定の角度で位置しており、各前記座標方向には、各々1つの前記検知領域(RX、RY)が割り当てられており、これらの検知領域を用い、各々割り当てられた前記座標方向について前記振動振幅(xp、yp)の値が決定されること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
異なる前記座標の方向における振動は、異なる周波数で行われること
を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各々の前記検知領域(RX、RY)を通る前記曲線の通過を記述する第1信号、並びに、前記検知装置において各々の前記検知領域(RX、RY)に相補的である区域(SX、SY)を通る前記曲線の通過を記述する第2信号が構成され、前記第1信号と否定の前記第2信号との論理積接続によりフィードバック信号(UX、UY)が構成され、前記フィードバック信号に基づき、各々の前記検知領域(RX、RY)を前記曲線が通過する各々の前記時間の長さ(tON,X、tON,Y)が決定されること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該方法は、2つの座標方向について実行され、前記座標方向は、互いに直角で位置していること
を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
自動車の前照灯の投射システム(10)におけるスキャナミラーの振動振幅を測定するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法であって、前記スキャナミラーを用い、有効レーザ光線(12)が変換要素(14)へ指向され、前記変換要素(14)において、照明目的で外方へ投射される所定の光像が発生されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナミラーの振動振幅を測定する方法に関し、該方法においては、レーザ光源により発生されたレーザ光線がスキャナミラーへ指向され、前記スキャナミラーにより反射され、そのように反射されたレーザ光線が所定の検知装置へ入射する。この際、振動運動の評価は、前記検知装置を用いて行われる。
【背景技術】
【0002】
この種の方法は、特に前照灯(投光器)のレーザ投射システムや類似の照明システムにおいて使用される。レーザ投射システムは、所謂マイクロスキャナを介してレーザ光線を偏向することにより実現可能である。これらのマイクロスキャナは、例えば、MEMS技術又はMOEMS技術(Micro-Electro-Mechanical Systems ないしMirco-Opto-Electro-Mechanical Systems)により製造されたマイクロミラーとして構成することが可能であり、これらのマイクロミラーは、数ミリメートルの直径しかもたず、1つ又は2つの軸線方向において振動可能(揺動可能)である。そのようなレーザ投射システムの設計通りの機能のためには、マイクロスキャナの現在の振れ(角度の大きさ)を検知し、電子的に処理することが極めて重要であり、それにより、例えば静止配光の形式で所定の像を発生可能とするために、レーザ流の変調(モジュレーション)を正確にミラー振動と同期させることが可能である。
【0003】
実質的にミラー振動の2つの特性パラメータを評価する必要があり、つまり振動振幅、即ちミラー振動の振幅と、位相偏移(位相ずれ)又は移相位置、即ちゼロ交差の偏移である。振動振幅は、発生される光像の幅を決定し、通常は電子的な方法により、正確な値へ制御されなくてはならない。位相偏移は、マイクロスキャナの駆動制御信号と実際のミラー振動との間の時間ずれをもたらし、レーザ変調の最適な同期のために使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2011/084609 A1
【特許文献2】US 2006/187497 A1
【特許文献3】US 2012/300197 A1
【特許文献4】EP 2 767 751 A1
【特許文献5】JP 2001 012921 A
【特許文献6】US 2013/188043 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミラーの振れを測定するためには、様々なセンサを用いることができるが、多くの場合、それらの評価は、極めて複雑なものである。この際、直接的にマイクロスキャナ内に組み込まれている内部センサ(例えば、容量型センサ、ピエゾ電気センサ)と、実際のマイクロスキャナに依存しないで使用することのできる外部センサとが区別される。外部センサとしては、多くの場合、PSD(位置検出素子「Position Sensitive Detector」)が使用される。
【0006】
外部センサは、マイクロスキャナにより偏向されてコリメータされたレーザ光線の位置を測定するが、該レーザ光線は、実際の画像発生には援用されず、単に位置測定のためだけに使用される(「測定用レーザ光線」)。
【0007】
容量型フェードバック測定、PSD、又はピエゾセンサを基礎にした評価のような既知の解決策は、電子的に複雑な評価をもたらし、それは、全てのこれらのセンサにおいて、極めて小さい電流ないし電圧が測定されなくてはならないためであり、それ故、しばしば極めて故障しやすいと言える増幅回路が使用されなくてはならない。
【0008】
PSDを使用する場合、PSDが電子的に評価可能であるようにPSDの信号を変換するためには、電子的な複雑さが大きいことを考慮しなくてはならない(電流増幅器など)。それよりも明らかに簡単な解決策は、四分円ダイオード(Quadrantendioden)である。四分円ダイオードは、よく知られており、配置構成として、同じ大きさで相並んで「正方形の」配置で位置決めされている4つの平面状のフォトダイオードを含んでおり、従ってそれらの間には、細長い十字形状のスリットが残るだけである。確かにこれらのダイオードは、入射する光の強度に依存する光電流を提供するものであるが、ここで考察される目的に関すると、光電流は、4つの四分円のどの四分円内にレーザ光線が今あるのかというデジタル評価に適している。それにより位相位置の測定は、問題なく可能である。しかしレーザ投射システムの実現のために必要である振幅測定は、四分円ダイオードによる従来の使用でおいては不可能である。
【0009】
従って本発明は、マイクロスキャナの振動振幅の測定を、従来の構造形式の四分円ダイオードのような簡単な検知装置を使用する場合にも可能とする方法を創作すべきである。特に、相並んで位置する複数の検知要素(検知フィールド)を有する検知装置が使用可能であるべきであり、それらの検知要素は、フォトダイオードの形式により、これらのフォトダイオードへ例えばレーザ光線の形式の光が入射した場合に所定の信号を提供する。この際、各々の面が照らされているか否かをこの信号が示すのであれば、既に十分とすべきである(デジタル信号、オン/オフ)。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明により、所定の検知装置が使用される方法により解決され、前記検知装置は、その中央部(センタ)の周りに相並んで配設された複数の光検知要素を有し、この際、レーザ光線は、スキャナミラーの振動運動に基づき、それらの検知要素にわたって中心点の周りに延在する曲線を描き、そして、各々が1つの検知要素か又は直接的に相並んで位置する複数の検知要素の1つのグループにより構成され且つ(予め設定可能な、又は例えば検知装置上に結像されたないし検知装置上に定義された)1つの座標の負の値領域か又は正の値領域に対応する少なくとも1つの検知領域に関し、測定は、
− 前記曲線が、その中心点に関し、検知装置の中央部に対して所定のオフセット値だけ、各々の検知領域に割り当てられた座標に沿ってずらされ、
− 前記曲線が各々検知領域を通過する時間の長さが決定され、
− 振動周期の全時間に対するそのように決定された時間の長さの比率と、オフセット値とを使い、振動振幅の値が決定される
ことにより行われる。
即ち本発明の第1の視点により、自動車の前照灯の投射システムにおけるスキャナミラーの振動振幅を測定する方法であって、レーザ光源により発生されたレーザ光線が前記スキャナミラーへ指向され、前記スキャナミラーにより反射され、そのように反射されたレーザ光線が所定の検知装置へ入射するという方法であり、所定の検知装置が使用され、前記検知装置は、その中央部の周りに相並んで配設された複数の光検知要素を有し、前記レーザ光線は、前記スキャナミラーの振動運動に基づき、前記光検知要素にわたって中心点の周りに延在する曲線を描き、そして、各々が1つの前記光検知要素か又は直接的に相並んで位置する複数の前記光検知要素の1つのグループにより構成され且つ1つの座標の負の値領域か又は正の値領域に対応する少なくとも1つの検知領域に関し、
− 前記曲線は、その中心点に関し、前記検知装置の前記中央部に対して所定のオフセット値だけ、各々の前記検知領域に割り当てられた前記座標に沿ってずらされ、
− 前記曲線が各々前記検知領域を通過する時間の長さが決定され、
− 振動周期の全時間に対するそのように決定された時間の長さの比率と、前記オフセット値とを使い、前記振動振幅の値が決定されること
を特徴とする方法が提供される。
更に本発明の第2の視点により、自動車の前照灯の投射システムにおけるスキャナミラーの振動振幅を測定するための、前記方法であって、前記スキャナミラーを用い、有効レーザ光線が変換要素へ指向され、前記変換要素において、照明目的で外方へ投射される所定の光像が発生されることを特徴とする方法が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)自動車の前照灯の投射システムにおけるスキャナミラーの振動振幅を測定する方法であって、レーザ光源により発生されたレーザ光線が前記スキャナミラーへ指向され、前記スキャナミラーにより反射され、そのように反射されたレーザ光線が所定の検知装置へ入射するという方法であり、所定の検知装置が使用され、前記検知装置は、そのセンタの周りに相並んで配設された複数の光検知要素を有し、前記レーザ光線は、前記スキャナミラーの振動運動に基づき、それらの検知要素にわたって中心点の周りに延在する曲線を描き、そして、各々が1つの検知要素か又は直接的に相並んで位置する複数の検知要素の1つのグループにより構成され且つ1つの座標の負の値領域か又は正の値領域に対応する少なくとも1つの検知領域に関し、
− 前記曲線は、その中心点に関し、前記検知装置の前記センタに対して所定のオフセット値だけ、各々の前記検知領域に割り当てられた前記座標に沿ってずらされ、
− 前記曲線が各々前記検知領域を通過する時間の長さが決定され、
− 振動周期の全時間に対するそのように決定された時間の長さの比率と、前記オフセット値とを使い、前記振動振幅の値が決定されること。
(形態2)前記方法において、前記検知装置としては、四分円検知器、特に四分円ダイオードが使用され、前記四分円検知器は、そのセンタの周りに配設された4つの検知フィールドを有し、前記四分円検知器の各々2つの隣接したフィールドは、1つの前記検知領域を構成し、またこれらのフィールドは、これらの2つのフィールドが両側で接している前記座標に割り当てられていることが好ましい。
(形態3)前記方法において、前記方法は、複数の座標方向について、好ましくは2つの座標方向について実行され、前記座標方向は、互いに所定の角度で、好ましくは直角で位置しており、各前記座標方向には、各々1つの前記検知領域が割り当てられており、これらの検知領域を用い、各々割り当てられた前記座標方向について前記振動振幅の値が決定されることが好ましい。
(形態4)前記方法において、異なる前記座標の方向における振動は、異なる周波数で行われることが好ましい。
(形態5)前記方法において、各々の前記検知領域を通る前記曲線の通過を記述する第1信号、並びに、前記検知装置において各々の前記検知領域に相補的である区域を通る前記曲線の通過を記述する第2信号が構成され、前記第1信号と否定の前記第2信号との論理積接続によりフィードバック信号が構成され、前記フィードバック信号に基づき、各々の前記検知領域を前記曲線が通過する各々の前記時間の長さが決定されることが好ましい。
(形態6)自動車の前照灯の投射システムにおけるスキャナミラーの振動振幅を測定するための前記方法の使用であって、前記スキャナミラーを用い、有効レーザ光線が変換要素へ指向され、前記変換要素において、照明目的で外方へ投射される所定の光像が発生されること。
【0012】
この際、検知装置としては、好ましくは四分円検知器、特に四分円ダイオードを使用することができ、四分円検知器には、その中央部の周りに配設されて4つの検知フィールドが設けられており、この際、四分円検知器の各々2つの隣接したフィールドは、1つの検知領域を構成し、またこれらのフィールドは、これらの2つのフィールドが両側で接している座標に割り当てられている。
【0013】
本発明による解決策は、提起された課題を驚くほど効率的に解決し、問題のない電子的な評価を可能とする。本発明は、四分円ダイオードの形式による検知装置を用いた振動振幅の測定を可能とする。四分円ダイオードないし光電素子(Photoelement)に基づく検知器は低コストであり、これらの検知器の電子的な評価は、他のセンサ(例えば容量測定、PSDにおける僅かなフォトダイオード電流の測定)と比べると極めて簡単であるため、有利にはより明快な測定方法が得られ、また本発明による測定方法を実行するための測定装置のコスト軽減が達成される。本発明による方法は、特に自動車の前照灯の投射システムにおけるスキャナミラーの振動振幅の測定に適している。
【0014】
本発明による方法の更なる一構成は、複数の座標方向のため、好ましくは2つの座標方向のための実行を提案する。この際、それらの座標方向は、互いに所定の角度で、好ましくは直角(90°)で位置しており、この際、各座標方向には、各々1つの検知領域が割り当てられており、これらの検知領域を用い、各々割り当てられた座標方向について振動振幅の値が決定される。この際、異なる座標の方向における振動(揺動)は、異なる周波数で行うことが可能である。
【0015】
向上されたエラー安全性を達成するために、各々の検知領域を通る曲線の通過を記述する第1信号、並びに、検知装置において各々の検知領域に相補的である区域を通る曲線の通過を記述する第2信号が構成されると有利であり得る。また第1信号と否定の第2信号との論理積演算によりフィードバック信号が構成され、このフィードバック信号に基づき、各々の検知領域を曲線が通過する各々の時間の長さが決定される。
【0016】
以下、添付の図面に図示された実施例に基づき、本発明を更なる詳細及び利点と共に詳細に説明する。それらの図面は、模式的に以下の内容を示している:
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一スキャンミラーを有する一レーザ投射システムの概観を示す図である。
【
図2】X座標について本発明により評価するための、四分円ダイオードを有する一配線図を示す図である。
【
図3】
図2の四分円ダイオードを有する配線図であるが、Y座標について評価するためのものである。
【
図4】レーザ光線の光スポットの曲線として四分円ダイオード上に発生される一光像を示す図である。
【
図5】
図4の光像について信号経過を示す図である。
【
図6】
図4と類似の一光像を示す図であるが、中央部からのオフセットを伴っている。
【
図7】
図6の光像について信号経過を示す図である。
【実施例】
【0018】
本実施例は、典型的ではあるが本発明を限定するものではないレーザ投射システムのための一例として、自動車の前照灯におけるMOEMSスキャナの運動の監視及び制御に関する。
【0019】
図1は、自動車の前照灯における一レーザ投射システム10の概観を模式的に示している。第1レーザ11(有効レーザ又は主レーザ)は、第1レーザ光線12を発生させ、第1レーザ光線12は、所定のミラー13を介して変換要素14へ指向される。この際、ミラー13は、周知の形式によりMOEMSスキャナとして構成されており、2つの角度方向において可動である(
図1では1つの角度方向φだけが示唆されている)。従ってミラー13の運動に基づき、変換要素14上には、ミラー13上で反射されるレーザ光線12’を用い、好ましくは白色光へのレーザ光線の変換(コンバージョン)により所定の光像が発生される。この光像は、少なくとも1つのレンズを含んだ結像系15を介し、外方へ(例えば車道上へ)照明の目的で投射される。
【0020】
更にミラー13の位置を管理及び制御するために、第2レーザ21(測定レーザ又は制御レーザ)が設けられている。測定レーザ21は、その役割に応じて有効レーザ11よりも明らかに小さい出力を有し、場合により異なるスペクトル領域で作動することが可能である。測定レーザ21のレーザ光線22は、ミラー13を介して検知装置23へ偏向される。従って検知装置23へ入射する測定用レーザ光線22’には(ミラー13による)偏向が施されており、該偏向は、入射側(一次側)の光線経過が異なる場合でも、第1レーザ光線12’の偏向に対応している。測定用レーザ光線22’は、必要な場合には(非図示の)光学系を用い、検知装置23に対して焦点合わせすることも可能である。検知装置23は、測定用レーザ光線22’の入射の位置に基づいて信号を発生させ、これらの信号は、マイクロコントローラ24に提供されてそこで評価される。マイクロコントローラ24は、ミラー振動(ミラー揺動)に応じて第1レーザ11の電気的な変調(モジュレーション)を制御するために、対応する信号を第1レーザ11の制御ユニット25へ転送する。ミラー13の振動運動は、好ましくは共振励起により発生されるが、必要に応じて追加的に制御ユニット25により、例えば励起信号の周波数又は強度を制御することにより管理することが可能である(非図示)。
【0021】
本実施例において、検知装置23は、四分円ダイオード(Quadrantendiode)20として構成されている。四分円ダイオード20の個々の検知面(複数のフォトダイオード)は、
図2及び
図3から見てとれるように、反時計方向の周方向において、Q1、Q2、Q3、Q4として通し番号が付けられている。例えば1つのフォトダイオードQn(n=1〜4)において発生された電流は、所定の抵抗を介して案内可能であり、低下する(時間に依存する)電圧un(t)は、直接的にマイクロコントローラ24の入力部へ転送されるか、又はマイクロコントローラ24に前置された論理演算部へ転送される。従って四分円Q1、Q2、Q3、Q4の各検知面は、信号u1(t)〜u4(t)を提供し、この信号は、四分円の面が今照らされているか否かに応じ、1(信号電圧u
s>0の象徴)か0である。X方向のための信号経過(信号推移)は、四分円Q1とQ4の信号の論理和接続(演算)u1(t)∨u4(t)により発生し、従って四分円Q1とQ4は、共同でX座標のための検知領域R
Xを表わす。Y方向のための信号経過には、それに対応して四分円Q1とQ2から成る検知領域R
Yが基礎とされ、従って検知領域R
Yに対応する信号は、四分円Q1とQ2の信号の論理和接続(演算)u1(t)∨u2(t)により発生される。それに追加し、論理積接続(演算)の使用のもと、各々残った四分円の(否定の)状態が読み出されると有利である。このことは、例えば残光(微光)に基づくような不具合の排除を可能とし、またレーザ光線により発生された光スポットが2つの隣接フィールドの間の境界線上へ入射し、それにより2つの(又はそれよりも多くの)フィールドないし検知領域の同時の照射をもたらすという状態について信頼性のある評価を可能にする。換言すると、一方では、選択された検知領域R
X、R
Yの信号と、他方では、各々の検知領域R
X、R
Yに相補的である区域S
X、S
Yのための信号が構成され、そして「フィードバック信号」が、第1の信号と、否定の第2の信号との論理積接続(演算)により構成される。
【0022】
図2と
図3は、上述内容に対応する四分円ダイオードの信号処理の例を模式的に示している。
図2は、X座標についての評価のための可能な配線図を示し、即ちレーザ光線の位置が、X座標の正の値x>0に位置するか否かが示される。このことは、以下の典型的な論理結合に対応する。
【0023】
【0024】
この際、読みやすさのために、信号の時間依存性un(t)は、省略されている。また上記論理結合に対応し、Y座標の正の値y>0についての評価は、以下の論理結合により行われ、これは、例えば、
図3に描かれている。
【0025】
【0026】
論理ゲートによる実現化(実施)の代わりに、論理的な評価は、勿論、マイクロコントローラ24においても、例えばプログラム制御式で行うことが可能である。
【0027】
従来の測定方法によると、四分円ダイオードは、ポジションレーザとマイクロスキャナにより発生された配光P(典型的に矩形として記入されている(「矩形配光」、例えばリサジュー図形))が、
図4に示されているように、正確に四分円ダイオードの中心部に当たるように使用されるであろう。配光Pは、四分円ダイオードの検知面上で発生されるレーザ光スポットが通過する曲線に対応する。この光スポットは、例えば、X方向において第1周波数(左から右へ、そしてその逆)で動き、Y方向において第2周波数(上から下へ、そしてその逆)で動き、この際、第1周波数と第2周波数は、一般的には異なっており、多くの場合は、両方の周波数の整数比が選択され、それにより閉じたリサジュー図形が得られる。個々の四分円の評価によりフィードバック信号U
X(t)及びU
Y(t)が得られ、これらのフィードバック信号は、例えば
図5に示されているような延在経過(延在推移)をとることができる。各信号については、各々、オン時間t
ON,Xないしt
ON,Yが決定され、つまり各々の信号が>0である時間の長さとして決定される。オン時間は、ミラー振動の周期時間T
XないしT
Yに関連付けることができ、それにより例えばパーセント数で表わすことのできる相対的なオン時間t
ON,X/T
Xないしt
ON,Y/T
Yが得られる。信号が=0である時間の長さは、それに対応し、t
OFF,Xないしt
OFF,Yと表記される(オフ時間)。
【0028】
矩形配光の位置が検知面のセンサ(中央部)へ指向されている場合には、50%の相対的なオン時間の長さが得られる。このことは(光スポットが)中央位置を通過する時点の決定を可能にするだけであり、それに対し、X方向とY方向について振動の空間的な振幅の評価は不可能である。
【0029】
本発明によると、ポジションレーザとマイクロスキャナにより発生される配光Pの中心点は、X方向においてもY方向においても僅かなオフセットx
offset、y
offsetを有しており、その大きさは、正確に定義されている。このことが
図6に図示されている。このオフセットは、当該システムのために一度だけ設定され、その際には、x
offset、y
offsetの値が測定され、例えば機器構成(コンフィギュレーション)中に使用されるカメラシステム(非図示)を用い、予め定義された値に調節される。当該オフセットは、この機器構成の後には不変である。予め定義された値の予設定に代わり、機器構成中に得られるx
offset、y
offsetの値を、所定の適切な領域内に中心点が位置するのであれば、測定することも可能である。そのように決定された値は、例えば、マイクロコントローラ24内か又はマイクロコントローラ24に付設されたメモリ内に記憶される。従ってx
offset、y
offsetのオフセット値は、振動運動の後続の評価のために、以下で説明するように提供される。
【0030】
図7は、フィードバック信号U
X(t)及びU
Y(t)の対応の信号経過の一例を示している。
図7から見てとれるように、オン時間の長さは50%からずれており、この際、このずれの値は、配光の最大の振れに依存している。レーザ光スポットの運動パターンの情報に基づき、リサジュー図形の場合、マイクロスキャナの共振振動により発生されるサイン形状の延在経過(延在推移)は、オン時間の測定(時間測定)により簡単にマイクロスキャナの振動振幅へ計算し直すことができる。
【0031】
例えば、振動振幅x
pは、以下のように計算することが可能である:
【0032】
x
p=x
pp/2=x
offset/sin(π・(T
X−2t
ON,X)/2T
X)
=x
offset/cos(π・t
ON,X/T
X)
【0033】
この際、以下の略語が使われている:
x
p ...X方向における振動振幅
x
pp ...X方向に沿ったミラー振動のピークからピークまでの振れ、x
pp=2x
p
x
offset ...配光の中心点と四分円ダイオードの中心点との間におけるX方向のオフセット(X方向へオフセットベクトルを投影)
T
X ...ミラー振動の周期時間(T
X=1/f
X、f
X=振動周波数)
t
ON,X ...フィードバック信号U
Xのオン時間
【0034】
上記の式は、準用して、同様に、任意の各座標方向のために適用することができ、この際には、x
pの代わりに該当の座標方向における振動振幅が使われ、x
offsetの代わりにその座標方向に対するオフセットベクトルの投影が使われる。特に上記の式は、勿論、Y方向における振動振幅のために適用することもできる:
【0035】
y
p=y
pp/2=y
offset/sin(π・(T
Y−2t
ON,Y)/2T
Y)
=y
offset/cos(π・t
ON,Y/T
Y)
【0036】
y
p、y
pp、y
offsetは、パラメータとして対応の定義を有する。
【0037】
従って時間測定と、振動振幅の値への換算は、本発明により離散的論理演算装置及び/又はマイクロコントローラを介したデジタル論理演算評価を用いて極めて簡単に実現することが可能である。(光曲線と、比率t
ON,X:t
OFF,Xないしt
ON,Y:t
OFF,Yとの間の関係が
図7においては象徴的に示されており、これは、その関係が、内在する非線形性のため、直接的に対応するのではなく、単に第1次近似においてのみグラフ上の比率に対応するためである。)
【0038】
振動がサイン振動からずれると、振動形状に対応する他の関数がサイン関数ないしコサイン関数にとって代わることになり、この関数を用いて以下の計算が行われる:
【0039】
x
p=x
offset/f(t
ON,X/T
X)
y
p=y
offset/f(t
ON,Y/T
Y)
【0040】
例えば三角形状の場合、所定の線形関数f(x)=1−2xが使用されるであろう。この関数fは、振動形状に対応して当業者により容易に決定可能である。
【0041】
自明のことであるが、本実施例は、本発明を図解するためだけに用いられ、本発明は、本実施例に限定されるものではない。更に当業者は、多岐にわたる変更、補足、及び/又は交換を、これらが請求項に記載した保護範囲内に属する限り、行うことができる。例えば、装置の中央部の周りに配設されており、例えば6つ、8つ、又はそれよりも多くのセクタ状の面の形式の、4つよりも多くの検知面を用いて作動する検知装置を使用することも可能であろう。
【符号の説明】
【0042】
10 レーザ投射システム
11 第1レーザ
12 第1レーザ光線
12’ レーザ光線
13 ミラー(MOEMSスキャナ)
14 変換要素
15 結像系
20 四分円ダイオード
21 第2レーザ
22 レーザ光線
22’ 測定用レーザ光線
23 検知装置
24 マイクロコントローラ
25 制御ユニット
P 配光
Q1〜Q4 フォトダイオード