(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、撚線は、典型的には、表面に錫めっきが施されている銅又は銅合金からなる複数の芯線からなる。錫めっきは芯線の耐食性を向上するために設けられるが、錫は融点が約232℃と低いため、特許文献1のように第1の抵抗溶接を行い、また、特許文献2のように第1の溶接部を設けると、融点を超える加熱が加えられるので、めっきを構成する錫が昇華する。
【0006】
錫めっきは耐食性付与を目的に設けられるが、リード線と撚線との溶接にとって重要な役割を施す。つまり、錫は芯線を構成する銅に比べて電気抵抗が高いので、リード線と撚線とを抵抗溶接により接合する際には、主に錫めっき部分がジュール熱により発熱して溶接が実現される。一方で、銅は電気抵抗が低いため、そもそも抵抗溶接には向いていない。したがって、特許文献1及び特許文献2のように、2段階で溶接を行うと、2段階目の溶接の際に溶接に寄与する錫が不足するために、安定して高い接合強度を得ることができない。
【0007】
そこで本発明は、リード線と撚線とが溶接されたセンサ素子において、安定して高い接合強度が得られる接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセンサ素子は、素子本体と、素子本体から引き出される一対のリード線と、一対のリード線のそれぞれに溶接による接合構造において接合される、複数の芯線が撚られた撚線と、を備える。
本発明における接合構造は、その軸線方向の所定領域に設けられる主接合領域と、主接合領域に隣接する副接合領域と、を備え、リード線と撚線の接合強度が、副接合領域よりも主接合領域の方が高い、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の温度センサ素子は、副接合領域を、主接合領域を挟んで軸線方向の一方の側又は両側に設けることができる。
本発明の温度センサ素子は、副接合領域は、主接合領域を挟んで軸線方向の双方に設けられる第一副接合領域と第二副接合領域を備えることができる。
本発明の温度センサ素子は、第一副接合領域を、撚線の先端から所定の範囲に設けることができる。
【0010】
本発明の温度センサ素子は、典型的には、撚線は、銅からなる芯線の表面に錫からなるめっき層が形成され、主接合領域における錫の濃度が、副接合領域における錫の濃度よりも高いことが好ましい。
本発明の温度センサ素子は、典型的には、リード線は、銅からなる。
【0011】
本発明の温度センサ素子は、撚線が、接合構造に、リード線が接合されるおもて面と、おもて面に対向するうら面と、を備え、うら面は、横断面における外形が円弧状をなすことが好ましい。
【0012】
次に、本発明のセンサ素子の製造方法は、素子本体と、素子本体から引き出される一対のリード線と、一対のリード線のそれぞれに溶接により接合される、複数の芯線が撚られた撚線と、を備えるセンサ素子の製造方法である。
【0013】
本発明の製造方法は、コンパクティング工程と、電線設置工程と、接合工程とを備える。
コンパクティング工程は、撚線の軸線方向の所定領域を加圧及び加熱することによりコンパクティング領域を形成するとともに、コンパクティング領域に隣接し、コンパクティング領域よりも相対的に背の高いプロジェクション領域、を形成する。
電線設置工程は、コンパクティング領域とプロジェクション領域とに亘り、リード線と撚線を重ねる。
接合工程は、コンパクティング領域とプロジェクション領域とに亘り、リード線と撚線を加圧及び加熱することで溶接する。
【0014】
本発明のコンパクティング工程において、所定領域の芯線同士を溶接するとともに、厚さを薄くすることで、コンパクティング領域とプロジェクション領域を形成する、ことができる。
また、本発明の接合工程において、コンパクティング領域がリード線を支持しながら、プロジェクション領域とリード線の溶接を行うことができる。
【0015】
本発明のセンサ素子の製造方法において、接合工程の後における、リード線と撚線の接合強度が、コンパクティング領域よりもプロジェクション領域の方を高くできる。
【0016】
本発明におけるコンパクティング領域は、プロジェクション領域を挟んで軸線方向の一方の側又は両側に設けることができる。
また、このコンパクティング領域は、プロジェクション領域を挟んで軸線方向の双方に設けられる第一コンパクティング領域と第二コンパクティング領域を備えることができる。この第一コンパクティング領域は、撚線の先端から所定の範囲に設けることができる。
【0017】
本発明のセンサ素子の製造方法に供される撚線は、銅からなる芯線の表面に錫からなるめっき層が形成されると、プロジェクション領域における錫の濃度を、コンパクティング領域における錫の濃度よりも高くすることが好ましい。
本発明のセンサ素子の製造方法に供されるリード線は、典型的には銅からなる。
【0018】
本発明の接合工程において、撚線は、リード線が接合されるおもて面と、おもて面に対向するうら面と、を備え、接合工程において、うら面は、横断面の形状が円弧状をなす電極があてがわれる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のセンサ素子によれば、接合構造が主接合領域と副接合領域を備え、リード線と撚線の接合強度を、副接合領域よりも主接合領域を高くする。つまり、本発明によれば、溶接による接合構造の中で特定の領域に発熱を集中させることで、安定して高い接合強度が得られる接合構造を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るセンサ素子10及びその製造方法を説明する。
センサ素子10は、温度センサに用いられるものであり、
図1(a),(b)に示すように、周囲の温度の変化に対応して電気抵抗が変化する素子本体11と、素子本体11から引き出される一対のリード線15,15と、一対のリード線15,15のそれぞれに接合される撚線19,19と、を備えている。センサ素子10は、リード線15と撚線19の溶接による接合構造30の強度が安定して高いことを特徴とする。
【0022】
[センサ素子10の構成]
素子本体11は、
図1(a),(b)に示すように、電気抵抗に温度特性を有する感温体12と、感温体12の周囲を覆う封止ガラス13と、封止ガラス13の後端側に設けられるセラミックス保護管14と、を備える円筒状の部材である。
感温体12は、例えば、サーミスタのように電気抵抗に温度特性を有する素材から構成される。
封止ガラス13は、感温体12を封止して気密状態に維持することによって、環境条件に基づく化学的な変化及び物理的な変化が感温体12に生ずるのを避けるために設けられる。封止ガラス13には、非晶質ガラス及び結晶質ガラスのいずれをも用いることができるし、所望の線膨張係数を有するように非晶質ガラスと結晶質ガラスとを混合して用いることもできる。
【0023】
セラミックス保護管14は、
図1(a),(b)に示すように、リード線15,15が引き出される封止ガラス13の後端部分と接合されることで、封止ガラス13を機械的に補強し、電気的絶縁性と機械的強度を向上させる。
セラミックス保護管14は、例えばアルミナ(Al
2O
3)、窒化ケイ素(Si
3N
4)等の封止ガラス13よりも機械的強度の高い焼結体から構成される。セラミックス保護管14は、軸線方向Lに沿って、二つのリード線15,15のそれぞれが挿通される図示を省略する貫通孔が形成されている。
なお、要求される機械的強度が低い用途には、セラミックス保護管14は不要である。
【0024】
素子本体11から引出されるリード線15は、ジュメット(Dumet)線により構成される。ジュメット線は、
図1(c)に示すように、内層16と内層16の周囲に設けられる外層17とからなる。内層16はガラスと熱膨張係数が近い鉄−ニッケル合金からなり、外層17は導電率の高い銅又は銅合金をクラッドした複合線である。なお、本発明における「銅からなる」とは、銅及び銅合金を含む概念を有している。鉄−ニッケル合金としては、鉄−42質量%ニッケル、鉄−47質量%ニッケルなどが用いられる。
リード線15は、一例として0.1〜1.0mm程度の直径を有している。
【0025】
撚線19は、
図1及び
図2に示すように、複数の芯線21と、複数の芯線21を覆う電気絶縁性の樹脂材料からなる絶縁被覆25と、からなる。
撚線19は、複数の芯線21が撚られている撚線である。また、芯線21は、
図1(d)に示すように、線本体22と、線本体22の周囲を覆うめっき層23と、からなる。線本体22は導電率の高い銅又は銅合金からなり、めっき層23は芯線21よりも耐食性のよい錫めっきからなる。めっき層23を構成する錫は、前述したように、融点が232℃程度と低い。なお、錫めっきの組成に限定はなく、錫及び錫合金を含む概念を有している。
線本体22は、一例として0.5〜2.0mm程度の直径を有し、錫からなるめっき層23は0.5〜2.0μm程度の厚さを有している。
【0026】
[接合構造30]
次に、センサ素子10の特徴であるリード線15と撚線19の溶接による接合構造30を説明する。
接合構造30は、
図2に示すように、撚線19の先端側から第一副接合領域33と、第一副接合領域33と隣接する主接合領域31と、主接合領域31と隣接する第二副接合領域35と、を有する。第一副接合領域33と第二副接合領域35は、主接合領域31を挟んで軸線方向Lの双方に設けられる。主接合領域31の役割、第一副接合領域33及び第二副接合領域35の役割は、以下の通りである。
【0027】
接合構造30は、主接合領域31と第一副接合領域33及び第二副接合領域35とでリード線15と撚線19の溶接による接合が行われるが、溶接による接合強度を専ら担うのは主接合領域31である。
第一副接合領域33及び第二副接合領域35は、主接合領域31の接合強度の向上に間接的に貢献するが、それ自体の接合強度は主接合領域31に比べると小さい。第一副接合領域33及び第二副接合領域35は、リード線15と撚線19の溶接時に、主接合領域31の両側からリード線15を支持することにより、リード線15が複数の芯線21と芯線21の間に潜り込むのを防止する。
【0028】
第一副接合領域33及び第二副接合領域35のそれぞれに対応する領域は、リード線15と撚線19の溶接による接合工程に先立って、溶接の一種であり、加圧及び加熱を伴うコンパクティングが施される。このコンパクティングにより、隣接する芯線21,21同士が溶融し接合されるので、溶接の際にリード線15が撚線19に押し付けられても芯線21,21の間に潜り込むのを防止できる。
【0029】
撚線19にコンパクティングが施されると、撚線19の表層部に位置する芯線21のめっき層23をなす錫は昇華して少なくとも一部は消失するので、銅からなる芯線21がむき出しになる部分がある。一方、第一副接合領域33と第二副接合領域35の間の主接合領域31に対応する領域は、コンパクティングに供されないので、芯線21の表面のめっき層23はそのまま残されている。
【0030】
以上の通りであり、リード線15と撚線19を溶接により接合する前は、主接合領域31に対応する領域は芯線21の表面に錫からなるめっき層23が存在するのに対して、第一副接合領域33及び第二副接合領域35に対応する領域は錫が消失しているか、小量しか残されていない。
【0031】
主接合領域31、第一副接合領域33及び第二副接合領域35におけるリード線15と撚線19の接合強度及びめっき層23を構成する錫の濃度(Sn濃度)を
図2(c)に示すが、接合強度は錫の濃度と関連する。つまり、錫の濃度が高い主接合領域31は、接合強度も高い。
【0032】
[接合手順]
接合構造30は、第一副接合領域33及び第二副接合領域35に対応する撚線19の領域にコンパクティングを施した後に、リード線15と撚線19を抵抗溶接により得られる。
以下、接合構造30を得る手順について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0033】
[コンパクティング工程]
はじめに、
図3(a),(b)に示すように、絶縁被覆25が剥がされてむき出しの芯線21にコンパクティングを施す。コンパクティングは、第一副接合領域33に対応する第一コンパクティング領域34と第二副接合領域35に対応する第二コンパクティング領域36に対して行われる。コンパクティング工程は、抵抗溶接にて行われる。接合工程も同様である。
【0034】
コンパクティングは加圧しながら加熱して隣接する芯線21,21を溶融して接合するプロセスである。溶融するのは、芯線21の表面に形成されるめっき層23である。コンパクティングが施された第一コンパクティング領域34と第二コンパクティング領域36は、他の部分に比べて加圧された方向の寸法、つまり厚さが薄くなる。このために、第一コンパクティング領域34と第二コンパクティング領域36の間に挟まれる、加圧及び加熱されていない部分は、第一コンパクティング領域34と第二コンパクティング領域36に比べて相対的に背の高いプロジェクション領域32を形成することとになる。
第一コンパクティング領域34は、撚線19の先端から所定の範囲に設けられ、第二コンパクティング領域36は、プロジェクション領域32を挟んで、第一コンパクティング領域34と対称に配置される。第一コンパクティング領域34は、以降の工程において撚線19がばらけるのを防止する効果を奏する。
【0035】
コンパクティングは、
図4(a),(b)に示すように、第一コンパクティング領域34を一対の第一上電極41Aと第一下電極41Bで挟み込み、また、第二コンパクティング領域36を一対の第二上電極43Aと第二下電極43Bで挟み込む。
なお、第一上電極41Aと第二上電極43Aを一体の上電極とし、第一下電極41Bと第二下電極43Bを一体の下電極としてもよい。
【0036】
第一上電極41A、第一下電極41B、第二上電極43A及び第二下電極43Bは、磁性体である例えば鉄系の金属材料で構成される。
第一上電極41Aと第二上電極43Aは、撚線19を加圧する面が平坦面をなしており、第一下電極41Bと第二下電極43Bは、撚線19が配置される収容溝42,44を備えている。
【0037】
第一上電極41Aと第一下電極41Bの間及び第二上電極43Aと第二下電極43Bの間のそれぞれに電流Iを流して、ジュール熱を発生させて芯線21の特に錫からなるめっき層23を溶かして溶接する。このとき、第一上電極41Aと第一下電極41Bにより第一コンパクティング領域34を圧縮する荷重Fを加え、また、第二上電極43Aと第二下電極43Bにより第二コンパクティング領域36に圧縮する荷重Fを加える。
【0038】
コンパクティングが施される撚線19は、銅からなる線本体22は錫からなるめっき層23に比べて、電気抵抗が一けた程度小さい。したがって、コンパクティングによる電流Iは良導電体である線本体22ではジュール熱の発生が抑えられる一方、電気抵抗の大きいめっき層23ではジュール熱が発生し溶接が促進される。つまり、撚線19の溶接においては、電気抵抗の大きいめっき層23が主役を担う。ただし、撚線19の表層に露出する芯線21のめっき層23は、ジュール熱により、約232℃という融点を超える温度、例えば600〜700℃程度まで加熱されるので、消失してしまうか、消失しないとしても少量しか残らない。
【0039】
コンパクティングを終えると、第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36は、隣接する芯線21が錫からなるめっき層23の溶融、凝固により接合されるので、表層部が一体化される。一方で、この一体化された第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36の表層部は、抵抗溶接の主役を担うめっき層23が消失しているか、消失しないとしても少量しか残らない。
【0040】
[電線設置工程及び接合工程]
コンパクティング工程を終えると、
図3(c)に示すようにリード線15を撚線19の上に重ねる。このとき、リード線15は、プロジェクション領域32と第一コンパクティング領域34、第二コンパクティング領域36とに亘って撚線19に重ねられる。
次いで、
図5(a),(b)に示すように、プロジェクション領域32、第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36の全域を一対の上電極47Aと下電極47Bで挟み込む。このとき、リード線15は、主にプロジェクション領域32と接触し、プロジェクション領域32を挟む第一コンパクティング領域34と第二コンパクティング領域36とは接触しないか、接触したとしても微小な面積である。
【0041】
上電極47Aと下電極47Bの間に電流Iを流し、ジュール熱を発生させて芯線21の特にめっき層23を溶かして溶接する。このとき、上電極47Aと下電極47Bを介してリード線15と撚線19に圧縮する荷重Fを加える。
【0042】
リード線15と撚線19の溶接の初期段階では、
図3(c)に示すように、リード線15は背の高いプロジェクション領域32に接する一方、第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36には接しない。つまり、リード線15は接合構造30の範囲の中の一部だけに接して溶接が始まる。抵抗溶接において、溶接対象同士の接触面積が小さいほどジュール熱による昇温が大きくなるので、本実施形態は、リード線15とプロジェクション領域32の間に発熱が集中する。しかも、プロジェクション領域32は、溶接の主役を担う錫からなるめっき層23が残されているので、発熱がさらに促進される。こうして溶接された部分が、接合強度の高い主接合領域31である。
【0043】
リード線15と撚線19の間には圧縮方向の荷重Fが加えられる。一方で、プロジェクション領域32は、溶接が始まる段階では個々の芯線21が一体化されることなく独立しているので、荷重Fが加えられたリード線15は隣接する芯線21,21の間に潜り込もうとする。
【0044】
ところが、プロジェクション領域32の軸線方向Lの双方に第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36が設けられている。したがって、溶接が進みプロジェクション領域32の厚さが薄くなると、リード線15は表層部が一体化された第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36に接する。これにより、第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36は、リード線15がプロジェクション領域32において隣接する芯線21,21の間に潜り込むのを拘束する。
以上のように、第一コンパクティング領域34と第二コンパクティング領域36を設けることにより、溶接による接合工程を通じて、リード線15と撚線19が安定した姿勢で接することができる。
【0045】
接合工程を経た主接合領域31と、第一副接合領域33、第二副接合領域35との横断面を観察したところ、相対的に主接合領域31が粗であり第一副接合領域33、第二副接合領域35の方が密な構造を有していることが確認された。つまり、第一副接合領域33及び第二副接合領域35は、コンパクティング工程と接合工程の二度にわたって加圧及び加熱が施されるため、隣接する芯線21,21の間の溶接が進み密な構造となる。
【0046】
[効 果]
以上説明した構成を備えるセンサ素子10は、以下の効果を備える。
センサ素子10は、主接合領域31と第一副接合領域33、第二副接合領域35とを備え、主接合領域31は、プロジェクション領域32という選択された狭い領域だけでリード線15が接することで、発熱が集中した溶接部分である。しかも、プロジェクション領域32は、発熱が促進されるめっき層23が残されているので、発熱がさらに促進される。したがって、主接合領域31を有するリード線15と撚線19の接合強度は高い。
本発明者らの測定によれば、本実施形態の接合構造はコンパクティングを行わずにリード線15と撚線19を溶接した構造の2倍程度の接合強度を得ることができる。
【0047】
また、センサ素子10は、プロジェクション領域32の軸線方向Lの両側に設けられる第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36が、プロジェクション領域32において芯線21,21の間にリード線15が潜り込むのを防止する。したがって、複数のセンサ素子10を製造する際に、それぞれのセンサ素子10におけるリード線15の撚線19に対する姿勢が安定するので、接合強度のばらつきを抑えることができる。
特に、本実施形態は、プロジェクション領域32の軸線方向Lの両側に設けられる第一コンパクティング領域34及び第二コンパクティング領域36でリード線15を支持するので、潜り込み防止の効果が大きい。
【0048】
ここで、撚線19にコンパクティングを施さないでリード線15を溶接しようとすると、溶接に伴って荷重Fが加えられるので、リード線15は芯線21,21の間に潜り込む。潜り込む状態が一定であれば接合強度のばらつきを抑えることができるが、撚線19に載せられるリード線15と芯線21の接し方はまちまちであるから、潜り込みの状態がまちまちである。したがって、溶接部分の発熱にばらつきが生じ、接合強度がばらついてしまう。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、本実施形態は、コンパクティングを軸線方向Lに離れた二つの領域で行ったが、
図6(a),(b)に示すように、撚線19の先端側のみに一つのコンパクティング領域37を形成してもよいし、撚線19の根本側のみに一つのコンパクティング領域37を形成してもよい。一つのコンパクティング領域37であっても、プロジェクション領域32にリード線15が芯線21,21の間に潜り込むのを拘束できるので、主接合領域31において、安定して高い接合強度を得ることができる。
【0050】
また、コンパクティング工程及び接合工程に用いた電極の形態は任意である。例えば、
図4(c)に示すように、第一下電極41Bの収容溝42の横断面の形状を円弧状にすることができる。
図4(c)に示す円弧状断面の電極が撚線19にあてがわれると、当該電極と撚線19の間の電流Iを均一になりやすいので、撚線19の発熱も電極の部位に関わらず均一になる。
図4(b)に示される矩形の収容溝42の場合、収容溝42に角部があることに基づいて、当該電極と撚線19の間の電流Iが不均一になりやすい。そうすると、局部的に電流Iが高いところでは、撚線19が電極に溶着することがある。これに対して電流Iが均一であれば、撚線19は電極に溶着しにくい。
【0051】
図4(c)の第一下電極41Bを用いてコンパクティングされた撚線19は、収容溝42が円弧状をなしているので、以下の横断面の構造を有する。つまり、
図5(c)において、撚線19は、リード線15が接合されるおもて面19Aと、おもて面19Aに対向するうら面19Bと、を備え、うら面19Bの横断面における外形が円弧状をなすことになる。
【0052】
また、本実施形態は温度センサに用いられるセンサ素子の一例としてサーミスタからなる感温体を説明したが、本発明はリード線と撚線とを溶接、特に抵抗溶接により接合する種々のセンサ素子に適用できる。
【0053】
本実施形態においては、接合工程を終えると、
図2(b)、
図3(d)に示すように、リード線15は主接合領域31、第一副接合領域33及び第二副接合領域35(接合構造30)の内部に埋め込まれ、側方からはリード線15を観察できない。リード線15が埋め込まれることは、接合強度の観点から好ましいが、本発明はこれに限定されず、接合構造30の表面からリード線15がはみ出ていてもよい。
本発明のセンサ素子10は、例えばサーミスタからなる素子本体(11)と、素子本体(11)から引き出される一対のリード線(15,15)と、一対のリード線(15,15)のそれぞれに溶接領域において接合される、複数の芯線(21)が撚られた撚線(19)と、を備える。溶接領域は、その軸線方向の所定箇所に設けられる主接合領域(31)と、主接合領域(31)に隣接する副接合領域(33,35)と、を備え、リード線(15)と撚線(19)の接合強度が、副接合領域(33)よりも主接合領域(31)の方が高いことを特徴とする。