(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光学積層部材は、透明高分子基材の少なくとも一方の面上に、防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層が順次積層された部材である。
ここで、上記防眩ハードコート層は、防眩層形成用コーティング組成物の硬化層であって、その表面に連続したランダムな凹凸を有する層であり、上記防眩ハードコート層表面の十点平均粗さRz
JISが0.1〜2μmであり
上記クリヤーハードコート層は、クリヤーハードコーティング組成物の硬化層であり、
上記クリヤーハードコート層は、上記防眩ハードコート層の一部の上に積層されており、
上記防眩ハードコート層は、厚さが1〜10μmであり、
上記クリヤーハードコート層は、厚さが0.01〜10μmであり、
上記防眩ハードコート層は、ヘイズ値Haが2〜45%であり、かつ、内部ヘイズ値Hiが0.01〜2%であり、
上記防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された部分のヘイズ値Hmは、0.05〜20%であり、および、
上記HaおよびHmは、下記式
5 ≦ (Ha−Hm)/Ha × 100 ≦ 99
を満たすことを特徴とする。
【0012】
なお本明細書の防眩ハードコート層の表面における「連続したランダムな凹凸」とは、防眩性能を発揮する程度の大きさの連続的な凹凸形状であって、コーティング組成物の塗布および硬化によって形成される凹凸形状を意味する。すなわち本発明における防眩ハードコート層の表面凹凸は、例えば切削方法などによって形成される規則的な表面形状は意図していない。
【0013】
図1は、本発明の光学積層部材の概略説明図である。
図1に概略的に示される通り、本発明の光学積層部材1は、透明高分子基材5の少なくとも一方の面上に、防眩ハードコート層3が積層される。そして、クリヤーハードコート層7は、防眩ハードコート層3の一部の上に積層される。以下、各構成などについて詳述する。
【0014】
透明高分子基材
本発明における透明高分子基材としては、例えばポリカーボネート系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルムのような、透明ポリマーからなる基材が挙げられる。また、本発明における透明高分子基材としては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系フィルム;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系フィルム;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系フィルムのような、透明ポリマーからなる基材も挙げられる。
またさらに、本発明における透明高分子基材としては、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂、および上記ポリマーのブレンド物のような、透明ポリマーからなる基材なども挙げられる。
さらに、透明高分子基材は、透明ポリマーからなる複数の基材が積層されたものであってもよい。例えば、アクリル系樹脂からなるフィルムおよびポリカーボネート系樹脂からなるフィルムの積層体またはシートの積層体であってもよい。
【0015】
本発明における透明高分子基材には、これら透明高分子基材のうち、光学的に複屈折の少ないもの、あるいは位相差を波長(例えば550nm)の1/4(λ/4)または波長の1/2(λ/2)に制御したもの、さらには複屈折をまったく制御していないものを、用途に応じて適宜選択することができる。
【0016】
透明高分子基材の厚さは、光学積層部材の用途および部材加工方法などに応じて適宜選択することができる。一般には強度および取扱性等の作業性などの点より、10〜5000μm程度であり、特に20〜3000μmが好ましく、30〜3000μmがより好ましい。
【0017】
防眩ハードコート層
本発明の光学積層部材は、透明高分子基材の少なくとも一方の面上に防眩ハードコート層を有する。この防眩ハードコート層は、防眩層形成用コーティング組成物を、透明高分子基材の少なくとも一方の面上に塗布して硬化させることによって、形成される。上記防眩ハードコート層は、その表面に凹凸を有する層である。表面に凹凸を有することによって、層表面において背景が反射する映り込みを防ぐ性能が発揮される。
【0018】
本発明の光学積層部材において、防眩ハードコート層は厚さ(膜厚)が1〜10μmである。防眩ハードコート層の厚さが上記範囲であることによって、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を設けた部分において、塗膜の平滑性が向上し、防眩性能が低減される。これにより、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を設けた部分において、鏡面感そして艶感などを効果的に回復することができる利点がある。防眩ハードコート層の厚さ(膜厚)が10μmを超える場合は、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を設けた部分において、塗膜の平滑性が向上せず、防眩性能低減効果が得られない。また、防眩ハードコート層の厚さ(膜厚)が1μm未満である場合は、防眩ハードコート層において十分な防眩性能が発揮されない。
【0019】
なお本明細書において、防眩ハードコート層の厚さは、凹部10点および凸部10点の膜厚を測定し、その平均値を算出することによって求められる。膜厚の測定は、例えばミクロト−ムなどの器具を用いて断面を析出させ、レーザー顕微鏡を用いて断面観察を行うことによって、測定することができる。
【0020】
上記防眩ハードコート層は、層表面の十点平均粗さRz
JISが0.1〜2μmの範囲内である。ここで「十点平均粗さRz
JIS」とは、JIS B0601;2001の附属書JAに規定される、表面の凹凸形状(粗さ形状)を示すパラメータの1種である。十点平均粗さRz
JISは、カットオフ値位相補償帯域通過フィルタを適用して得た基準長さの粗さ曲線において、最高の山頂(凸部)から高い順に5番目までの山高さの平均と、最深の谷底(凹部)から深い順に5番目までの谷深さの平均との和である。十点平均粗さRz
JISは、例えばレーザー顕微鏡を用いて、JIS B0601;2001の規定に準拠して求められる。
【0021】
上記防眩ハードコート層は、層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが20μm〜200μmであるのが好ましい。ここで「粗さ曲線要素の平均長さRSm」とは、JIS B0601;2001に規定される、表面の凹凸形状(粗さ形状)の大きさ・分布を示すパラメータの1種である。粗さ曲線要素の平均長さRSmは、基準長さにおける輪郭曲線(粗さ曲線)要素の長さの平均を意味する。粗さ曲線要素の平均長さRSmは、例えばレーザー顕微鏡(VK−8700 KEYENCE製など)を用いて、JIS B0601;2001規定に準拠して求められる。
【0022】
上記防眩ハードコート層は、ヘイズ値Haが2〜45%であり、かつ、内部ヘイズ値Hiが0.01〜2%である。ヘイズ値Haが上記範囲であることによって、ディスプレイ部において求められる防眩性能が発揮される。内部ヘイズ値Hiが上記範囲内であることによって、防眩ハードコート層上にクリヤーハードコートを積層した部分において、艶感および高級感に優れた意匠を得ることができる。
【0023】
ここで「ヘイズ値Ha」とは、表面の凹凸形状を含めた、防眩ハードコート層全体におけるヘイズ値、すなわち全ヘイズ値である。また「内部ヘイズ値Hi」とは、防眩ハードコート層における表面の凹凸形状に影響を受けないヘイズ値であって、層を構成する成分自体に由来するヘイズ値である。ヘイズ値Haおよび内部ヘイズ値Hiは、ヘイズメーター(日本電色製 NDH2000)を用いて、JIS K7136に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136に従って防眩ハードコート層のヘイズ値Ha(全ヘイズ値)を測定する。
その後、防眩ハードコート層の表面に、グリセリン0.01mlを滴下し、次いでガラスプレートを乗せる。これによって、防眩ハードコート層の表面の凹凸形状が潰れ、防眩ハードコート層の表面が平坦になる。そしてこの状態で、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136に従ってヘイズ値を測定することによって、内部ヘイズ値Hiを求めることができる。
【0024】
防眩層形成用コーティング組成物
防眩ハードコート層の形成に用いられる防眩層形成用コーティング組成物は、優れた硬度が得られるなどの観点から、放射線硬化型防眩層形成用コーティング組成物であるのが好ましく、中でも紫外線硬化型防眩層形成用コーティング組成物であるのがより好ましい。
【0025】
放射線硬化型防眩層形成用コーティング組成物は、コーティング層を形成する樹脂成分を含む。このような樹脂成分として、放射線硬化性成分を含むのが好ましい。放射線硬化性成分は、放射線(例えば紫外線)により架橋し、硬化させることができる、モノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。このような放射線硬化性成分の具体例として、不飽和二重結合基を少なくとも1つ有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー、より具体的には、不飽和二重結合基を少なくとも1つ有する、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートポリマー、およびこれらの変性モノマー、オリゴマー、ポリマーなど、が挙げられる。なお「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表わす。
【0026】
本発明における放射線硬化性成分としては、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーまたは多官能(メタ)アクリレートポリマーなどの多官能(メタ)アクリレート化合物;多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートポリマーなどの多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物;などの、多官能(メタ)アクリレート化合物および多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。
【0027】
不飽和二重結合基を1つ有する(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとして、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸イソステアリル、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0028】
多官能(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとして、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、DPHA(ダイセル・オルネクス社製)、PETRA(ダイセル・オルネクス社製:ペンタエリスリトールトリアクリレート)、PETIA(ダイセル・オルネクス社製)、アロニックスM−403(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート)、アロニックスM−402(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート)、アロニックスM−400(東亞合成社製:ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート)、SR−399(サートマー社製:ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート)、KAYARAD DPHA(日本化薬社製)、KAYARAD DPHA−2C(日本化薬社製)、アロニックスM−404、M−405、M−406、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成社製)、KAYARD D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬社製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)などを用いることができる。
【0029】
単官能あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマーとしては、上記単官能あるいは多官能(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの高分子量化合物などが挙げられる。
【0030】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとして、市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、2官能ウレタン(メタ)アクリレート(日本化薬社製の「UX−2201」、「UX−8101」、「UX−6101」、共栄社化学社製の「UF−8001」、「UF−8003」、ダイセル・オルネクス社製の「Ebecryl244」、「Ebecryl284」、「Ebecryl2002」、「Ebecryl4835」、「Ebecryl4883」、「Ebecryl8807」、「Ebecryl6700」)、3官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・オルネクス社製の「Ebecryl254」、「Ebecryl264」、「Ebecryl265」)、4官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・オルネクス社製の「Ebecryl8210」)、6官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・オルネクス社製の「Ebecryl1290k」、「Ebecryl5129」、「Ebecryl220」、「KRM8200」、「Ebecryl1290N」)、9官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・オルネクス社製の「KRM7804」)、10官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社製の「KRM8452」、「KRM8509」)、15官能ウレタン(メタ)アクリレート(ダイセル・オルネクス社製の「KRM8655」)などを用いることができる。
【0031】
単官能あるいは多官能のウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーはまた、例えばポリカーボネートジオールと、分子中に水酸基と不飽和二重結合基とを含有する(メタ)アクリレート化合物と、ポリイソシアネートとを反応させることによって調製することもできる。
【0032】
単官能あるいは多官能ウレタン(メタ)アクリレートポリマーとしては、上記単官能あるいは多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの高分子量化合物などが挙げられる。
【0033】
防眩層形成用コーティング組成物の好ましい1態様として、防眩層形成用コーティング組成物は、第1成分および第2成分を含む態様が挙げられる。この場合、防眩ハードコート層の表面凹凸は、第1成分および第2成分の相分離により形成される表面凹凸となる。上記相分離が生じる第1成分および第2成分の組み合わせとして、第1成分のSP値(SP
1)および第2成分のSP値(SP
2)において、下記条件
SP
2<SP
1
SP
1−SP
2 ≧ 0.5
を満たす態様が挙げられる。
上記条件を満たす第1成分および第2成分を含む防眩層形成用ハードコーティング組成物を基材上に塗布すると、第1成分および第2成分のSP値の差に基づいて第1成分と第2成分とが相分離し、表面に、連続したランダムな凹凸を有する塗膜を形成することができる。
【0034】
SP値とは、solubility parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。
【0035】
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
【0036】
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…ジオキサン、アセトンなど
貧溶媒…n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
【0037】
樹脂のSP値δは次式によって与えられる。
【0039】
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0040】
第1成分のSP値と第2成分のSP値との差は0.5以上であるのが好ましく、0.8 以上であるのがより好ましい。このSP値の差の上限は特に限定されないが、一般には15以下である。第1成分のSP値と第2成分のSP値との差が0.5以上である場合は、互いの成分の相溶性が低く、それにより防眩層形成用ハードコーティング組成物の塗布後に第1成分と第2成分との相分離がもたらされると考えられる。
【0041】
この実施態様においては、上記放射線硬化性成分が第1成分として用いられるのが好ましい。そして、第2成分として、不飽和二重結合含有アクリル共重合体が用いられるのが好ましい。
【0042】
第1成分として、不飽和二重結合基を少なくとも1つ有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーを好ましく用いることができる。第1成分の具体例として、不飽和二重結合基を少なくとも1つ有する、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートポリマーおよびこれらの変性モノマー、オリゴマーまたはポリマーなどが挙げられる。第1成分は、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能(メタ)アクリレートポリマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートポリマーなどの、多官能(メタ)アクリレート化合物および多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。このような化合物を含むことによって、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができる利点がある。
【0043】
上記(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、そして(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、重量平均分子量が5000未満であるのが好ましい。例えば(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、分子量が70以上であって重量平均分子量が3000未満であるのが好ましく、分子量が70以上であって重量平均分子量が2500未満であるのが好ましい。また、(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、重量平均分子量が100以上であって5000未満であるのが好ましい。また上記(メタ)アクリレートポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、重量平均分子量が50000未満であるのが好ましい。
【0044】
第2成分である、不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、例えば(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびエポキシ基を有するモノマーとを反応させた樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびイソシアネート基を有するモノマーとを反応させた樹脂などにアクリル酸またはグリシジルアクリレートなどの不飽和二重結合を有しかつ他の官能基を有する成分を付加させたものなどが挙げられる。これらの不飽和二重結合含有アクリル共重合体は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。この不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、重量平均分子量で3000〜100000であるのが好ましく、3000〜50000であるのがより好ましい。
【0045】
上記第1成分および第2成分の質量比は、第1成分:第2成分=98.5:1.5〜60:40であるのが好ましく、98.5:1.5〜85:15であるのがより好ましく、98:2〜86:14であるのがさらに好ましい。このような範囲に配合比を設定することにより、所望の表面凹凸形状および硬さを有する防眩ハードコート層を得ることができる。さらに、第1成分と第2成分の相分離により、表面凹凸形状を形成することによって、内部ヘイズ値Hiをより低い値に設計することができる利点がある。
【0046】
防眩層形成用コーティング組成物の他の1態様として、防眩層形成用コーティング組成物は、上記放射線硬化性成分および粒状物を含む態様が挙げられる。この態様においては、防眩ハードコート層が有する表面の凹凸形状は、粒状物に起因して形成されることとなる。粒状物として、例えば、シリカ(SiO
2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等の無機酸化物粒子、および、ポリスチレン粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル粒子、アクリル−スチレン粒子、シリコーン粒子、ポリカーボネート粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子などの有機樹脂粒子などが挙げられる。これらの無機酸化物粒子および有機樹脂粒子は、平均粒子径が0.5〜8μmであるのが好ましく、0.7〜6μmであるのがより好ましい。なお、本明細書における粒状物の平均粒子径は、断面電子顕微鏡の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定される値である。
【0047】
防眩層形成用コーティング組成物の他の1態様として、重合性不飽和基含有バインダー成分を含む態様が挙げられる。重合性不飽和基含有バインダー成分を含む防眩層形成用コーティング組成物は、この組成物を塗布して得られる未硬化塗布層に対して、表面に凹凸形状を有する鋳型基材の表面凹凸面を面接触させ、そして、鋳型基材が面接触した状態で未硬化塗布層を硬化させ、その後に鋳型基材を剥離し、防眩ハードコート層を形成する手順において用いることができる。この態様においては、上記防眩層形成用コーティング組成物を用いて形成した、表面に凹凸形状を有する層を有する基材を、鋳型基材として好適に用いることができる。
【0048】
防眩層形成用コーティング組成物に含まれる重合性不飽和基含有バインダー成分として、上記多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、上記単官能あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー、上記単官能あるいは多官能ウレタン(メタ)アクリレートポリマー、およびこれらの混合物を用いることができる。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーおよび多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例は、上記と同様である。
【0049】
上記単官能あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー、単官能あるいは多官能ウレタン(メタ)アクリレートポリマーとして、市販品を用いてもよい。単官能あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマーの市販品として、例えば、DIC社製、ユニディックV−6840、ユニディックV−6841、ユニディックV−6850、ユニディックEMS−129、ユニディックEMS−635、ユニディックWHV−649などを用いることができる。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマーの市販品として、例えば、日本化薬社製のUXシリーズ;共栄社化学社製のUFシリーズ、UAシリーズ;ダイセル・サイテック株式会社製のEBECRYLシリーズ、KRMシリーズ;日本合成化学社製の紫光UVシリーズ;サートマー社製のCNシリーズ;新中村化学社製のUシリーズ;根上工業社製のアートレジンUNシリーズ;などを用いることができる。
【0050】
光重合開始剤
本発明の防眩層形成用ハードコーティング組成物は光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤が存在することによって、紫外線などの放射線照射により樹脂成分が良好に重合することとなる。光重合開始剤の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記光重合開始剤のうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどがより好ましく用いられる。
【0052】
光重合開始剤の好ましい量は、防眩層形成用ハードコーティング組成物の樹脂成分100質量部に対して、0.01〜20質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。上記光重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上の光重合開始剤を組合せて用いてもよい。
【0053】
溶媒
本発明で用いられる防眩層形成用ハードコーティング組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒は、特に限定されるものではなく、組成物中に含まれる成分、塗布される基材の種類および組成物の塗布方法などを考慮して適時選択することができる。用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0054】
上記防眩層形成用ハードコーティング組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、例えば、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レベリング剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0055】
防眩層形成用ハードコーティング組成物は、当業者において通常行われる手法によって調製することができる。例えば、ペイントシェーカー、ミキサーなどの通常用いられる混合装置を用いて、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0056】
防眩ハードコート層の形成
本発明の1態様において、防眩ハードコート層は、透明高分子基材上に、上記の防眩層形成用ハードコーティング組成物を塗布することにより形成される。防眩層形成用ハードコーティング組成物の塗布方法は、防眩層形成用ハードコーティング組成物および塗布工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法またはエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)などにより塗布することができる。
【0057】
防眩層形成用ハードコーティング組成物の塗布により得られた塗膜を硬化させることによって、防眩ハードコート層が形成される。この硬化は、必要に応じた波長の放射線(活性エネルギー線)を発する光源を用いて照射することによって行うことができる。照射する放射線として、例えば、積算光量50〜1500mJ/cm
2の光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば360nm以下の波長を有する紫外光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。
【0058】
本発明において、上記防眩ハードコート層は、上記第1成分および第2成分を含む防眩層形成用ハードコーティング組成物の硬化層である態様が好ましい。この態様においては、防眩ハードコート層は、上記第1成分および第2成分の相分離により形成された表面凹凸形状を有することとなる。そのため、防眩ハードコート層の内部における層形成成分に由来するヘイズ(すなわち内部ヘイズ)を低く設計することができる。これにより、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を設けた部分において、ヘイズ値が効果的に低減され、鏡面感そして艶感などを効果的に高めることができる利点がある。
【0059】
本発明の他の1態様においては、重合性不飽和基含有バインダー成分を含む防眩層形成用コーティング組成物を塗布し、得られた未硬化塗布層に対して、表面に凹凸形状を有する鋳型基材を面接触させ、その後、鋳型基材を剥離することにより、表面に凹凸形状が形成された防眩ハードコート層を形成する。
上記態様のより好ましい態様として、例えば、重合性不飽和基含有バインダー成分を含む防眩層形成用コーティング組成物を塗布し、得られた未硬化塗布層に対して、表面に凹凸形状を有する鋳型基材を面接触させた状態で硬化させ、その後、鋳型基材を剥離することによって、防眩ハードコート層を形成する態様が挙げられる。この態様では、鋳型基材の凹凸形状面を、未硬化塗布層の面に対して、対向する方向で面接触させ、そしてこの面接触させた状態で硬化させることにより、凹凸形状が転写され、表面に凹凸形状が形成されることとなる。そして硬化させた後に、鋳型基材を剥離することによって、表面に連続したランダムな凹凸を有する防眩ハードコート層を形成することができる。この態様において、防眩層形成用コーティング組成物の塗布方法および硬化方法は、上記と同様の方法により行うことができる。
【0060】
この態様では、表面に凹凸形状を有しつつ、高い硬度を有する防眩ハードコート層を形成することができる利点がある。
【0061】
鋳型基材として、表面に連続したランダムな凹凸を有する鋳型基材を、特に制限されることなく用いることができる。鋳型基材として、上記防眩層形成用ハードコーティング組成物の塗布および硬化により得られる、表面に凹凸形状を有する層を有する基材を用いるのがより好ましい。
【0062】
クリヤーハードコート層
本発明の光学積層部材は、上記防眩ハードコート層の一部の上に積層されたクリヤーハートコート層を有する。上記クリヤーハードコート層は、クリヤーハードコーティング組成物の硬化層である。なお本発明において、上記クリヤーハードコート層は、厚さが0.01〜10μmであることを条件とする。
【0063】
本発明において、上記クリヤーハードコート層は、上記防眩ハードコート層の一部の上に積層されている。すなわち、本発明の光学積層部材においては、その表面に、防眩性能が発揮される部分(防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が設けられていない部分)と、防眩性能が発揮されないまたは防眩性能が低減された部分(防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が設けられた部分)とを有する。そして本発明の光学積層部材においては、上記防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された部分のヘイズ値Hmは、0.05〜20%であり、および、
上記HaおよびHmは、下記式
5 ≦ (Ha−Hm)/Ha × 100 ≦ 99
を満たす。
このように本発明においては、特定の物性値を有する防眩ハードコート層の一部上に、クリヤーハードコート層を積層することによって、クリヤーハードコート層を設けた部分においてヘイズ値の低減および制御を効果的に行うことができる利点がある。
【0064】
防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された部分のヘイズ値Hmは、ヘイズメーター(日本電色製 NDH2000)を用いて、JIS K7136に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ヘイズメーターを用いて、JIS K7136に従って、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された部分のヘイズ値Hm(全ヘイズ値)を測定することによって、求めることができる。
【0065】
上記(Ha−Hm)/Ha × 100の値は、15以上98以下であるのが好ましく、20以上98以下であるのがより好ましい。
【0066】
クリヤーハートコート層は、クリヤーハードコーティング組成物を、上記防眩ハードコート層の一部の上に塗布して硬化させることによって形成される。クリヤーハードコーティング組成物は、上記放射線硬化性成分、上記光重合開始剤、および必要に応じた上記溶媒を含むのが好ましい。クリヤーハードコーティング組成物に含まれる放射線硬化性成分として、不飽和二重結合基を少なくとも1つ有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーの少なくとも1種を含むのが好ましい。
【0067】
不飽和二重結合基を少なくとも1つ有するモノマーとして、上記(メタ)アクリレートモノマーおよび上記ウレタン(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。不飽和二重結合基を少なくとも1つ有するオリゴマーとして、上記(メタ)アクリレートオリゴマーおよび上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。不飽和二重結合基を少なくとも1つ有するポリマーとして、上記(メタ)アクリレートポリマーおよび上記ウレタン(メタ)アクリレートポリマーが挙げられる。クリヤーハードコーティング組成物に含まれる放射線硬化性成分は、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどの、多官能(メタ)アクリレート化合物および多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。このような化合物を含むことによって、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができる利点がある。
【0068】
クリヤーハードコーティング組成物の調製は、防眩層形成用ハードコーティング組成物と同様にして調製することができる。
【0069】
クリヤーハードコート層は、上記防眩ハードコート層の一部上に、クリヤーハードコーティング組成物を塗布することにより形成される。クリヤーハードコーティング組成物の塗布方法は、クリヤーハードコーティング組成物および塗布工程の状況に応じて適時選択することができる。クリヤーハードコーティング組成物の塗布方法として、例えば、インクジェット機器を用いたインクジェット法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ディップコート法、グラビアコート法またはエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)などにより塗布することができる。クリヤーハードコーティング組成物の塗布方法としてインクジェット法を用いるのが、防眩ハードコート層上の所望の箇所に、簡便にクリヤーハードコート層を設けることができ、より好ましい。
【0070】
上記クリヤーハードコーティング組成物は、20℃における粘度が2〜2000mPa・sであるのが好ましい。クリヤーハードコーティング組成物の20℃における粘度が上記範囲内であることによって、クリヤーハードコート層を設けた部分におけるヘイズ値の低減および制御を効果的に行うことができる利点がある。
【0071】
クリヤーハードコーティング組成物の20℃における粘度の測定は、B型粘度計(TVB−22L 東機産業株式会社製)によって測定することができる。B型粘度計として、例えば、TVB−22L(東機産業株式会社製)などが挙げられる。
【0072】
クリヤーハードコーティング組成物の粘度の調整は、例えば、希釈溶媒を用いてコーティング組成物の固形分濃度を変更することによって、行うことができる。
【0073】
本発明の光学積層部材において、上記防眩ハードコート層の表面自由エネルギーは30〜50mN/mであり、そして、上記クリヤーハードコーティング組成物を防眩ハードコート層の表面へ滴下した際における液滴の接触角が5〜75°の範囲内であるのが好ましい。
【0074】
クリヤーハードコーティング組成物を防眩ハードコート層の表面へ滴下した際における液滴の接触角は、JIS R3257に準拠して求めることができる。具体的には、クリヤーハードコーティング組成物 2μlの液滴を、水平に置かれた防眩ハードコート層の上に着滴させる。次に、防眩ハードコート層表面に水平な方向(真横)から、クリヤーハードコーティング組成物の液滴を、CCDカメラを用いて拡大撮影し、得られた画像から、液滴の輪郭形状を解析して接触角を算出することによって測定することができる。
【0075】
防眩ハードコート層の表面自由エネルギーおよびクリヤーハードコーティング組成物の接触角が上記範囲であることによって、防眩ハードコート層の一部上にクリヤーハードコート層を積層する際に、所望の厚さを有するクリヤーハードコート層を、所望の位置に、簡便に形成することができるなどの利点がある。
【0076】
本発明の光学積層部材は、必要に応じて、上記防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層の上に色差調整層を有してもよい。色差調整層として、例えば、低屈折率層、高屈折率層、または、低屈折率層および高屈折率層を含む複層、が挙げられる。低屈折率層として、一般的に用いられる樹脂成分(例えば上記放射性硬化成分など)および金属酸化物粒子を含むコーティング組成物を硬化させて得られる層が挙げられる。また高屈折率層として、一般的に用いられる樹脂成分(例えば上記放射性硬化成分など)および金属フッ化物粒子を含むコーティング組成物を硬化させて得られる層が挙げられる。色差調整層全体の厚さは、30〜300nmであるのが好ましく、50nm〜200nmであるのがより好ましい。色差調整層の形成は、上記コーティング組成物を、防眩層形成用コーティング組成物と塗布して硬化させることによって、形成することができる。
【0077】
加飾層
本発明の光学積層部材においては、透明高分子基材の一方の面上に上記防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層が順次積層されており、かつ、透明高分子基材の他の一方の面上に、加飾層が積層されていてもよい。このような加飾層を有する光学積層部材は、例えば、成形加飾用積層部材として用いることができる。
【0078】
図2は、加飾層を有する光学積層部材の概略説明図である。
図2に概略的に示される通り、透明高分子基材5の一方の面上に、防眩ハードコート層3が積層され、そしてこの防眩ハードコート層3の一部の上にクリヤーハードコート層7が積層される。そして透明高分子基材5の他の一方の面上に、加飾層9が積層される。
【0079】
図3は、加飾層を有する光学積層部材の他の1態様の概略説明図である。
図3に概略的に示される態様においては、クリヤーハードコート層7の厚みが変化する部分、すなわち厚みの勾配部、を有する。この厚みの勾配部においては、ヘイズ値が段階的に変化することとなる。例えば
図3に示されるように、クリヤーハードコート層7の厚みの勾配部が加飾層9の境界部に沿って設けられることによって、加飾の境界部においてヘイズ値を段階的に変化させることができる。
【0080】
上記加飾層は、成形加飾用積層フィルムに模様、文字または金属光沢などの加飾を施す層である。このような加飾層として、例えば印刷層または蒸着層などが挙げられる。印刷層および蒸着層はいずれも、加飾を施すための層である。本発明においては、加飾層として印刷層または蒸着層の何れかのみを設けてもよく、あるいは印刷層および蒸着層の両方を設けてもよい。また印刷層は複数の層から構成される層であってもよい。作業工程の容易さなどから、上記加飾層は印刷層であるのが好ましい。
【0081】
印刷層は、成型体表面に模様および/または文字などの加飾を施すものである。印刷層として、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。印刷層の材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。印刷層に用いられるインキの顔料としては、例えば、次のものが使用できる。通常、顔料として、黄色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料またはチタンニッケルアンチモン酸化物等の無機顔料、赤色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料または弁柄等の無機顔料、青色顔料としてはフタロシアニンブルー等の有機顔料またはコバルトブルー等の無機顔料、黒色顔料としてはアニリンブラック等の有機顔料、白色顔料としては二酸化チタン等の無機顔料が使用できる。
【0082】
印刷層に用いられるインキの染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。また、インキの印刷方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法またはロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法を用いるのがよい。この際、本発明におけるように、低分子量の架橋性化合物を使用するのではなく、ポリマー同士を架橋させる構成の光硬化性樹脂組成物を用いた場合には、表面に粘着性が無く、印刷時のトラブルが少なく、歩留まりが良好である。
【0083】
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金もしくは化合物を使用して、真空蒸着法またはスパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法等の方法により形成することができる。
【0084】
これら加飾のための印刷層または蒸着層は、所望の成型体の表面外観が得られるよう、成形時の伸張度合いに応じて、通常用いられる方法により適宜その厚みを選択することができる。
【0085】
光学積層部材
本発明の光学積層部材は、ディスプレイ部に配置される部材として好適に用いることができる。ディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどが挙げられる。本発明の光学積層部材をディスプレイ部に配置する場合は、透明高分子基材の一方の面上に防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層が順次積層されている光学積層部材において、透明高分子基材の他の一方の面、または、透明高分子基材の他の一方の面上に積層された加飾層が、ディスプレイ部の表面と対向するように配置する。
【0086】
本発明の光学積層部材は、例えば車載機器タッチパネルディスプレイ用光学積層部材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0088】
調製例1 不飽和二重結合含有アクリル共重合体の調製
イソボロニルメタクリレート 171.6部、メチルメタクリレート 2.6部、メタクリル酸 9.2部からなる混合物を混合した。この混合液を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で110℃に加温したメチルイソブチルケトン 330.0部に、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート 1.8部を含むプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部溶液と同時に3時間かけて等速で滴下し、その後、110℃で30分間反応させた。その後、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.2部をプロピレングリコールモノメチルエーテル 17.0部の溶液を滴下してテトラブチルアンモニウムブロマイド 1.4部とハイドロキノン0.1部を含む5.0部のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル 22.4部とプロピレングリコールモノメチルエーテル 5.0部の溶液を2時間かけて滴下し、その後5時間かけて更に反応させた。数平均分子量5,500、重量平均分子量18,000の不飽和二重結合含有アクリル共重合体を得た。この樹脂は、Sp値:10.0であった。
【0089】
実施例1
防眩層形成用コーティング組成物の製造
メチルイソブチルケトン13.24部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)36.98部、第2成分である調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体2.52部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
【0090】
クリヤーハードコーティング組成物の製造
メチルイソブチルケトン19.72部およびイソブタノール44.17部を含む反応器に、放射線硬化性成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)33.90部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.21部を混合して、固形分濃度36%のクリヤーハードコーティング組成物を製造した。
【0091】
防眩ハードコート層の形成
厚さ1.0mmである、PMMAおよびPCからなる3層(PMMA/PC/PMMA)シート(商品名:MT3LTR、クラレ株式会社製)の一方の面に、防眩層形成用コーティング組成物を塗布した。65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させた後、積算光量80mJ/cm
2の紫外線照射処理により硬化させ、膜厚が5μmの防眩ハードコート層を得た。
【0092】
クリヤーハードコート層の形成
得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、クリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚(すなわち、0.3μm、0.6μmおよび1.0μmの3種の膜厚)となるように塗布した。65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させた後、積算光量500mJ/cm
2の紫外線照射処理により硬化させて、クリヤーハードコート層を形成した。
塗布する場所は、事前に作成したデザインに沿ってターゲット部分に対して塗布した。
こうして、防眩ハードコート層の一部の上にクリヤーハードコート層が積層された、光学積層部材を得た。
【0093】
実施例2
メチルイソブチルケトン7.96部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)34.72部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体10.06部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0094】
実施例3
メチルイソブチルケトン4.43部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)33.21部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体15.09部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0095】
実施例4
メチルイソブチルケトン15部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、放射線硬化性成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)36.60部、平均粒径が1.50μmのアクリル粒子(商品名:SSX−101、積水化成株式会社製)1.13部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0096】
実施例5
メチルイソブチルケトンが15部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、放射線硬化性成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)36.60部、平均粒径が4.95μmのアクリル粒子(商品名:SSX−105、積水化成株式会社製)1.13部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0097】
実施例6
防眩ハードコート層の膜厚を2μmとなるように塗布したこと以外は、実施例3と同様にして、光学積層部材を得た。
【0098】
実施例7
メチルイソブチルケトン9.72部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)35.47部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体7.55部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、下記表に記載の厚さを有する防眩ハードコート層を、実施例1と同様にして形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0099】
実施例8
メチルイソブチルケトン10.60部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)35.85部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体6.29部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0100】
実施例9
メチルイソブチルケトン7.99部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)34.55部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体6.29部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.25部、レベリング剤(BYK−UV3500 ビックケミージャパン製)を0.19部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0101】
実施例10
メチルイソブチルケトン8.02部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)34.39部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体6.29部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.24部、レベリング剤(Additive67 東レ・ダウコーニング株式会社)を0.37部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0102】
実施例11
実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物100部(固形分濃度36%)に対して、希釈溶媒(メチルイソブチルケトン/イソブタノール=30/70の混合溶媒)20部を加えて、固形分濃度30%であるクリヤーハードコーティング組成物を製造した。
こうして得られたクリヤーハードコーティング組成物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光学積層部材を得た。
【0103】
実施例12
放射線硬化性成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)94.34部および光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)5.66部を混合して、クリヤーハードコーティング組成物を製造した。得られたクリヤーハードコーティング組成物の固形分濃度は100%であった。
こうして得られたクリヤーハードコーティング組成物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光学積層部材を得た。
【0104】
比較例1
メチルイソブチルケトン14.12部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)37.36部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体1.26部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0105】
比較例2
メチルイソブチルケトン2.67部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)32.45部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体17.61部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0106】
比較例3
メチルイソブチルケトン15.00部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)35.85部、平均粒径が4.95μmのアクリル粒子(商品名:SSX−105、積水化成株式会社製)1.89部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0107】
比較例4
メチルイソブチルケトン7.96部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)34.72部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体10.06部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、下記表に記載の厚さを有する防眩ハードコート層を、実施例1と同様にして形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0108】
比較例5
メチルイソブチルケトン12.36部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)36.60部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体3.77部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、下記表に記載の厚さを有する防眩ハードコート層を、実施例1と同様にして形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0109】
比較例6
メチルイソブチルケトン15.00部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)32.08部、平均粒径が1.50μmのアクリル粒子(商品名:SSX−101、積水化成株式会社製)5.66部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
得られた防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして防眩ハードコート層を形成した。
次いで、得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0110】
以下の実施例13〜18は、重合性不飽和基含有バインダー成分を含む防眩層形成用コーティング組成物を塗布し、得られた未硬化塗布層に対して、表面に凹凸形状を有する鋳型基材を面接触させた状態で硬化させ、次いで鋳型基材を剥離することにより、表面に連続したランダムな凹凸を有する防眩ハードコート層を形成した実験例である。
【0111】
実施例13
表面に凹凸形状を有する鋳型基材Aの調製
メチルイソブチルケトン13.24部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)36.98部、第2成分である調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体2.52部、光重合開始剤(商品名:OMNIRAD184(IGM RESINS社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の鋳型基材形成用コーティング組成物を製造した。
厚さ75μである、PETフィルム(商品名:ルミラーU48、東レ株式会社製)の一方の面に、鋳型基材形成用コーティング組成物を塗布した。65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させた後、積算光量1500mJ/cm
2の紫外線照射処理により硬化させ、膜厚が5μmである、表面に凹凸形状を有する鋳型基材Aを得た。
【0112】
防眩層形成用コーティング組成物の製造
容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル29.84部、酢酸エチル 11.12部、酢酸ブチル 11.12部、アロニックスM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)22.24部、ユニディック V−6850(DIC株式会社製、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマー) 11.12部、OMNIRAD 184(IGM Resins社製、光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)0.98部、OMNIRAD TPO(IGM Resins社製、光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド)1.31部、MIBK-AC-2140Z(日産化学社製)12.27部を加え混合攪拌し、固形分濃度が35%となるようにハードコーティング組成物3を調製した。
【0113】
防眩ハードコート層の形成
厚さ1.0mmである、PMMA(ポリメチルメタクリレート)およびPC(ポリカーボネート)からなる3層(PMMA/PC/PMMA)シート(商品名:MT3LTR、クラレ株式会社製)の一方の面に、防眩層形成用コーティング組成物を塗布した。65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させた後、鋳型基材Aの凹凸面と、塗布した組成物の乾燥塗膜面とをラミネートさせ、積算光量140mJ/cm
2の紫外線照射処理により硬化させた。次いで鋳型基材Aを剥離させ、膜厚が5μmの防眩ハードコート層を得た。
【0114】
クリヤーハードコート層の形成
上記より得られた防眩ハードコート層上の一部に対して、実施例1で製造したクリヤーハードコーティング組成物を、インクジェットを用いて、下記表に記載の硬化後膜厚となるように塗布した。次いで実施例1と同様にして硬化させて、クリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0115】
実施例14
メチルイソブチルケトン7.96部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)34.72部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体10.06部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の鋳型基材形成用コーティング組成物を製造した。
得られた鋳型基材形成用コーティング組成物を用いて、実施例13と同様の手順により、表面に凹凸形状を有する鋳型基材Bを調製した。
得られた鋳型基材B、および実施例13で製造した防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例13と同様の手順により、防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0116】
実施例15
メチルイソブチルケトン4.43部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、第1成分としてM−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)33.21部、第2成分である不飽和二重結合含有アクリル共重合体15.09部、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、BASFジャパン株式会社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の鋳型基材形成用コーティング組成物を製造した。
得られた鋳型基材形成用コーティング組成物を用いて、実施例13と同様の手順により、表面に凹凸形状を有する鋳型基材Cを調製した。
得られた鋳型基材C、および実施例13で製造した防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例13と同様の手順により、防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0117】
実施例16
表面に凹凸形状を有する鋳型基材Dの調製
メチルイソブチルケトン15.00部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、M−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)36.60部、平均粒径が1.50μmのアクリル粒子(商品名:SSX−101、積水化成株式会社製)1.13部、光重合開始剤(商品名:OMNIRAD184(IGM RESINS社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の鋳型基材形成用コーティング組成物を製造した。
厚さ75μである、PETフィルム(商品名:ルミラーU48、東レ株式会社製)の一方の面に、鋳型基材形成用コーティング組成物を塗布した。65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させた後、積算光量1500mJ/cm
2の紫外線照射処理により硬化させ、膜厚が5μmである、表面に凹凸形状を有する鋳型基材Dを得た。
得られた鋳型基材D、および実施例13で製造した防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例13と同様の手順により、防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0118】
実施例17
表面に凹凸形状を有する鋳型基材Eの調製
メチルイソブチルケトン15.00部、イソプロピルアルコール28.20部およびイソブタノール16.80部を含む反応器に、M−402(東亜合成株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートを主成分とする多官能アクリレートモノマー混合物)36.60部、平均粒径が4.95μmのアクリル粒子(商品名:SSX−105、積水化成株式会社製)1.13部、光重合開始剤(商品名:OMNIRAD184(IGM RESINS社製)2.26部を混合して、固形分濃度40%の転写フィルム防眩層形成用コーティング組成物を製造した。
厚さ75μである、PETフィルム(商品名:ルミラーU48、東レ株式会社製)の一方の面に、防眩層形成用コーティング組成物を塗布した。65℃で4分間乾燥させて溶媒を揮発させた後、積算光量1500mJ/cm
2の紫外線照射処理により硬化させ、膜厚が5μmである、表面に凹凸形状を有する鋳型基材Eを得た。
得られた鋳型基材E、および実施例13で製造した防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例13と同様の手順により、防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0119】
実施例18
表面に凹凸形状を有する鋳型基材Fの調製
鋳型基材として、厚さ75μmである、ポリプロピレンフィルム(商品名トレファンZK−207、東レフィルム加工株式会社製)を用いた。
この鋳型基材F、および実施例13で製造した防眩層形成用コーティング組成物を用いて、実施例13と同様の手順により、防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層を形成し、光学積層部材を得た。
【0120】
上記実施例および比較例で得られた光学積層部材、および光学積層部材の調製に用いたコーティング組成物を用いて、下記評価を行った。評価結果を下記表に示す。
【0121】
ヘイズ値測定方法
防眩ハードコート層のヘイズ値(全ヘイズ値)Haおよび防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された部分のヘイズ値(全ヘイズ値)Hmは、ヘイズメーター(日本電色製 NDH2000)を用いて、JIS K7136に準拠した方法により、測定を行った。
防眩ハードコート層のヘイズ値(全ヘイズ値)Haの測定は、基材上に防眩ハードコート層が設けられた試験サンプルを、50mm×50mmに切り出し、サンプルを試料室内にセットし、測定した。測定条件は「ホウホウ3」とした。
防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された部分のヘイズ値(全ヘイズ値)Hmの測定は、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された試験サンプルを、50mm×50mmに切り出し、サンプルを試料室内にセットし、測定した。測定条件は「ホウホウ3」とした。
【0122】
内部ヘイズ値測定方法
防眩ハードコート層の試験サンプルを、50mm×50mmに切り出した。試験サンプルの塗膜凹凸面に、グリセリン(特級試薬 キシダ化学株式会社製)0.01mlを滴下し、次いでガラスプレート(18mm×18mm マツナミガラス株式会社製)を乗せて、表面凹凸を潰した試験片を作成した。前記ヘイズメーターを使用し、JIS K7136に準拠した方法により、防眩ハードコート層の内部ヘイズ値Hiを測定した。測定条件は、ホウホウ3とした。
防眩ハードコート層上にクリヤーハードコート層が積層された部分の内部ヘイズ値も、上記と同様にして測定した。
【0123】
膜厚測定方法
試験サンプルを10mm×10mmに切り出し、ミクロト−ム(LEICA RM2265)にて塗膜の断面を析出させた。析出させた断面をレーザー顕微鏡(VK8700 KEYENCE製)にて観察し、膜厚を測定した。
防眩ハードコート層の膜厚測定においては、凹部10点および凸部10点の膜厚を上記方法により測定し、その平均値を算出することによって、膜厚を求めた。
またクリヤーハードコート層の膜厚測定においては、10点の膜厚を上記方法により測定し、その平均値を算出することによって、膜厚を求めた。
【0124】
Rzjis測定方法
試験サンプルを50mm×50mmに切り出し、接眼レンズの倍率20倍、対物レンズの倍率50倍を備えたレーザー顕微鏡(VK8700 KEYECE製)にてJIS B0601;2001に準拠して測定し、Rz
jis値を得た。
【0125】
表面自由エネルギー評価方法
防眩ハードコート層の試験サンプルを50mm×50mmに切り出し、環境温度25度で濡れ試薬(ナカライテスク株式会社製 濡れ指数標準液)を用いて評価し、表面自由エネルギー値を得た。
【0126】
クリヤーハードコーティング組成物の接触角測定方法
防眩ハードコート層の試験サンプルを50mm×50mmに切り出した。クリヤーハードコーティング組成物をシリンジに充填した。環境温度25℃において、防眩ハードコート層の試験サンプル上に、シリンジから2μlを滴下した。自動接触角計(KRUSS製 DSA20)を用いて、JIS R3257に準拠した画像処理により、接触角を測定した。
【0127】
粘度測定方法
粘度を測定するコーティング組成物 100mlを、温度20℃に維持し、B型粘度計(東機産業株式会社製、TVB−22L)にて測定した。測定条件は、M1 Roterを使用し、60rpmとした。
【0128】
透明性評価方法
防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層(クリヤーハードコート層の膜厚:下記表の「クリヤーハードコート層の膜厚(Rzjisに対する比:100%)」に記載の膜厚)を積層した部分を、50mm×50mmに切り出し、内部ヘイズ測定値にて判断した。
○:内部ヘイズ値が2.0%以下であった。
×:内部ヘイズ値が2.1%以上であった。
【0129】
密着性評価方法
上記「透明性評価方法」で使用した試験片を用いて、JIS K5400に準拠して密着性試験を実施した。防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を積層した部分に、カッターナイフを用いて、1mm
2のカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープ(エルパック LP−24 24mm×35m ニチバン製)を完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、以下に記載の基準に沿って判定した。
10:剥がれなし
8:剥がれが5目以内であった
6:剥がれが5目を超えて15目以内であった
4:剥がれが15目を超えて35目以内であった
2:剥がれが35目を超えて65目以内であった
0:剥がれが65目を超えて100目以内であった
【0130】
平滑性評価方法
上記「透明性評価方法」で使用した試験片を用いて評価試験を行った。防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を積層した部分を、50mm×50mmに切り出し、目視評価にて下記基準に基づき評価した。
○ : 防眩ハードコート層の凹凸が無く、平滑であった
△ : 防眩ハードコート層の凹凸がわずかに確認された。
× : 防眩ハードコート層の凹凸に由来する防眩性が確認された。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
実施例の光学積層部材は、いずれも、透明性、密着性および平滑性に優れていることが確認できた。実施例の光学積層部材においてはまた、クリヤーハードコート層の膜厚を変化させることによって、防眩ハードコート層上にクリヤーハードコート層を積層した箇所のヘイズ値を効果的に変化させることができた。
比較例1は、防眩ハードコート層のヘイズ値Haが1%未満である例である。この場合は、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を積層しても、ヘイズ値が変化せず、本発明の技術的効果を有していないことが確認された。
比較例2は、防眩ハードコート層のヘイズ値Haが45%を超え、そして防眩ハードコート層表面の十点平均粗さが本発明の範囲を超える例である。この場合は、平滑性が劣ることが確認された。
比較例3は、防眩ハードコート層の内部ヘイズ値Hiが2%を超える例である。この場合は、透明性が劣ることが確認された。
比較例4は、防眩ハードコート層の厚さが1μm未満である例である。この場合は、防眩ハードコート層のヘイズ値Haが1%未満となり、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層を積層しても、ヘイズ値が変化せず、本発明の技術的効果を有していないことが確認された。
比較例5は、防眩ハードコート層の厚さが10μmを超える例である。この場合は、防眩ハードコート層表面の十点平均粗さが本発明の範囲を超えることとなり、平滑性が劣ることとなった。
比較例6は、防眩ハードコート層の内部ヘイズ値Hiが2%を超え、そして防眩ハードコート層表面の十点平均粗さが本発明の範囲に満たない例である。この場合は、透明性および平滑性が劣ることとなった。
本発明は、ディスプレイの画像表示部において求められる防眩性能および画像非表示部において求められる意匠性の両方を提供する光学積層部材を提供することを目的とする。
本発明は、透明高分子基材の少なくとも一方の面上に、防眩ハードコート層およびクリヤーハードコート層が順次積層された光学積層部材であって、防眩ハードコート層は、防眩層形成用コーティング組成物の硬化層であって、その表面に連続したランダムな凹凸を有する層であり、防眩ハードコート層表面の十点平均粗さRz
が0.1〜2μmであり、クリヤーハードコート層は、クリヤーハードコーティング組成物の硬化層であり、クリヤーハードコート層は、前記防眩ハードコート層の一部の上に積層されており、防眩ハードコート層は、厚さが1〜10μmであり、クリヤーハードコート層は、厚さが0.01〜10μmであり、防眩ハードコート層は、ヘイズ値Haが2〜45%であり、かつ、内部ヘイズ値Hiが0.01〜2%であり、防眩ハードコート層の上にクリヤーハードコート層が積層された部分のヘイズ値Hmは、0.05〜20%であり、および、HaおよびHmは所定数値範囲である、光学積層部材、を提供する。