(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352586
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20180625BHJP
B43K 5/16 20060101ALI20180625BHJP
B43K 7/02 20060101ALI20180625BHJP
B43K 24/04 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
B43K29/02 F
B43K5/16
B43K7/02
B43K24/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-284672(P2012-284672)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124900(P2014-124900A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊宏
【審査官】
古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−139135(JP,A)
【文献】
特開平09−267596(JP,A)
【文献】
特開2003−291588(JP,A)
【文献】
特開平08−332798(JP,A)
【文献】
特開2012−250347(JP,A)
【文献】
特開2007−144991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 29/02
B43K 5/16
B43K 7/02
B43K 24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具を構成する筒体の一方の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦体を、保持部材を介して着脱自在に装着してなる熱変色性筆記具であって、前記摩擦体が、少なくとも前記筒体の一方の端部の内面に装着する装着部と、前記筒体又は保持部材の一方の端部から外方に突出し、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦する摩擦部とを有し、前記筒体の後端部内に設けた雌ねじ部と、保持部材の側面に設けた雄ねじ部とを、保持部材の後端が、前記筒体内に内在するように着脱自在に螺着してあり、前記摩擦体の装着部の側面に、凹部又は凸部を周方向に離間して複数個、設け、前記筒体又は保持部材の内面に、凸部又は凹部を周方向に離間して複数個、設けるとともに、前記装着部の凹部内に、前記筒体又は保持部材の凸部を配設、または前記筒体又は保持部材の凹部内に、前記装着部の凸部を配設してなり、前記摩擦部の側面に、長手方向に延びる窪み状の通溝を設け、前記保持部材の雄ねじ部の側面に、窪み状の通溝を設けてあり、前記摩擦部の通溝と保持部材の雄ねじ部の通溝が長手方向で連通させ、前記保持部材を取り外すのに必要な回転力が、200gf・cm以上であることを特徴する熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記保持部材を取り外すのに必要な回転力が、400gf・cm以上、1000gf・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記摩擦体の側面の外側に、外筒体を着脱自在に配設したことを特徴とする請求項1または2に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具を構成する筒体の一方の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具を構成する筒体の一方の端部に具備した、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦体については、特開2007−144991号公報「軟質部材の取付構造」等で開示されている。
【0003】
また、前記した特開2007−144991号公報「軟質部材の取付構造」では、軸筒やキャップなどの筒体に設けた内向突起と、摩擦体の脚部に設けた外向突起とを乗り越え嵌合することで、筒体と摩擦体の装着力を高めた装着構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−144991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱変色性インキの筆跡を摩擦するときには、摩擦体を特に意識することなく紙面に当接させることが多く、その後、上下方向、左右方向などに摩擦することで、熱変色させている。また、カバンや筆箱に入れて移動する時など、摩擦体が不用意に、カバンや筆箱に当接することもあった。
【0006】
しかし、特許文献1では、回転方向へ力が加わると、摩擦体が回転し、摩擦熱の発生効率を低下する恐れがあった。また、摩擦体が回転によって、摩擦体及び/又は筒体に磨耗又は損傷によって、摩擦体が回転しやすくなるとともに、摩擦体と筒体に隙間が発生し、摩擦体にガタツキを生じる恐れがあった。
【0007】
本発明はこれらの従来技術に鑑みてなされたものであって、摩擦体の回転を抑制し、繰り返しの使用しても摩擦体にガタツキが発生し難い熱変色性筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記問題を解決するために、筆記具を構成する筒体の一方の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦体を
、保持部材を介して着脱自在に装着してなる熱変色性筆記具であって、前記摩擦体が、少なくとも前記筒体の一方の端部の内面に装着する装着部と、前記筒体又は保持部材の一方の端部から外方に突出し、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦する摩擦部とを有し、
前記筒体の後端部内に設けた雌ねじ部と、保持部材の側面に設けた雄ねじ部とを、保持部材の後端が、前記筒体内に内在するように着脱自在に螺着してあり、前記摩擦体の装着部の側面に、凹部又は凸部を周方向に離間して複数個、設け、前記筒体又は保持部材の内面に、凸部又は凹部を周方向に離間して複数個、設けるとともに、前記装着部の凹部内に、前記筒体又は保持部材の凸部を配設、または前記筒体又は保持部材の凹部内に、前記装着部の凸部を配設
してなり、前記摩擦部の側面に、長手方向に延びる窪み状の通溝を設け、前記保持部材の雄ねじ部の側面に、窪み状の通溝を設けてあり、前記摩擦部の通溝と保持部材の雄ねじ部の通溝が長手方向で連通させ、前記保持部材を取り外すのに必要な回転力が、200gf・cm以上であることを特徴する。
【0009】
また、前記摩擦体を、保持部材を介して装着するとともに、前記筒体の一方の端部に、前記保持部材を着脱自在に装着してあることを特徴とする。
【0010】
また、前記摩擦体の摩擦部と、保持部材の側面に通溝を設けてなり、少なくとも前記摩擦部の通溝の一部と、前記保持部材の通溝の一部が、長手方向において連通することを特徴とする。
【0011】
さらにまた、前記摩擦体の側面の外側に、外筒体を着脱自在に配設したことを特徴とする。
【0012】
本願発明の第1の構成によれば、前記摩擦体が、少なくとも前記筒体の一方の端部の内面に装着する装着部と、前記筒体又は保持部材の一方の端部から外方に突出し、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦する摩擦部とを有し、前記摩擦体の装着部の側面に、凹部又は凸部を設け、前記筒体又は保持部材の内面に、凸部又は凹部を設けるるとともに、前記装着部の凹部内に、前記筒体又は保持部材の凸部を配設、または前記筒体又は保持部材の凹部内に、前記装着部の凸部を配設することで、前記摩擦体の回転方向への移動を規制することができ、回転による摩擦熱発生効率の低下を抑制するとともに、繰り返しの使用しても摩擦体の回転による摩耗や損傷を抑制し、摩擦体と筒体又は保持部材とのガタツキを発生し難くすることができる。
【0013】
本発明の摩擦体は、筒体又は保持部材に、乗り越し嵌合、凹凸嵌合、圧入嵌合等によって装着することができる。また、装着部の凹部内に、前記筒体又は保持部材凸部を位置して配設、または前記筒体又は保持部材の凹部内に、円周方向において前記装着部の凸部が回転を抑制する位置に配設してあれば、遊嵌状や密嵌状等、特に限定されるものではないが、装着性を考慮して遊嵌状に配設することが好ましい。
【0014】
尚、摩擦体の摩擦部には、ゴム状弾性を有する軟質樹脂、例えば、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリエステル系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー等、ゴム状弾性を有するゴム、エラストマー等の弾性体が挙げられ、適宜選択して用いることができる。また、摩擦体としては、ショアA硬度40以上、100以下が好ましい。また、摩擦体は、筒体又は保持部材に、乗り越し嵌合、凹凸嵌合、圧入嵌合等によって装着することができ、前記した凹部と凸部によってのみ装着することもできるが、装着性や引抜力(長手方向への力)を考慮して、前記した凹部と凸部とは長手方向及び/または円周方向の異なる部分にて、摩擦体の装着部と、筒体又は保持部材とを装着することが好ましく、さらに、凹部内に凸部が挿入した後、摩擦体の装着部と、筒体又は保持部材とを装着を開始することで、摩擦体が回転することによる組立性の低下を抑制することができるので好ましい。
【0015】
本願発明の第2の構成によれば、前記摩擦体を、保持部材を介して装着するとともに、前記筒体の一方の端部に、前記保持部材を着脱自在に装着することで、摩擦部に汚れが付着したときや、摩擦体及び/または摩擦体保持部を所望の色に交換するとき等、使用者が摩擦体を交換しやすくすることができ
る。
【0016】
但し、保持部材を螺着等、回転によって、着脱自在とする場合には、着脱に必要な回転力は、摩擦操作時に、保持部材が回転し難く、且つ保持部材の着脱性を考慮して、一定の回転トルクによって、回転を開始することが好ましく、具体的には、200gf・cm以上、より好ましくは、400gf・cm以上、1000gf・cm以下、好ましく800gf・cm以下とすることが好ましい。尚、保持部材を回転する力は、株式会社
東日製作所社製 トルクメーターを用いて測定することができる。
【0017】
本願発明の第3の構成によれば、前記摩擦体の摩擦部と、筒体の内面又は保持部材の側面に通溝を設けてなり、少なくとも前記摩擦部の通溝の一部と、前記筒体又は保持部材の通溝の一部が、長手方向において連通することで、摩擦体の装着時に筒体内の圧力が高まることなく装着することできるとともに、摩擦体及び保持部材が外れて、誤飲しても空気の流通を確保することができる。
【0018】
本願発明の第4の構成によれば、前記摩擦体の側面の外側に、外筒体を着脱自在に配設することで、熱変色性筆記具を持ち運ぶときに、摩擦部にゴミなどが付着する等、外部に露出する摩擦部の汚れを抑制することができる。
【0019】
本発明に用いる熱変色性インキには、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0020】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、摩擦体の回転を抑制し、繰り返しの使用しても摩擦体にガタツキが発生し難い熱変色性筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の熱変色性筆記具を示す縦断面図である。
【
図2】
図1における筆記先端部が突出した状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図1における一部省略した要部拡大断面図である。
【
図4】
図1における摩擦体及び保持部材を示す斜視図である。
【
図5】
図3における一部省略した要部A−A断面図である。
【
図6】
図1における摩擦体を使用する状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜
図5に、第1実施形態の熱変色性筆記具1を示す。熱変色性筆記具1は、軸筒内に収容したボールペンレフィルからなる筆記体14を、コイルスプリングからなる弾発体10によって、軸筒本体の後端方向に向かって、摺動自在に付勢して収容してある。軸筒本体は、前軸2、中間軸3、連結具4、後軸6からなり、前軸2と中間軸3とを連結具4を介して装着し、中間軸3の後端部には、長手方向に延びる細長状の窓孔6Aを形成した後軸6を装着して軸筒本体を得ている。
【0024】
軸筒は、前記した軸筒本体と先部材5とかなり、軸筒本体の前軸2の先端部に設けた雄ねじ部に、先部材5を着脱自在に螺着して軸筒を得ている。さらにまた、中間軸3の後端部に形成した係合凸部を、外筒12の被係合部に落とし込み嵌合して、外筒12を軸筒本体に外嵌してある。
【0025】
弾発体10は、先部材5によって、直接、先端部を受け止めてあり、もう一方の端部(後端部)は、筆記体14のチップホルダー16に、直接、当接して、筆記体14を軸筒本体の後端方向に向かって付勢している。
【0026】
後軸6の外周面には、長手方向に延びる細長状の窓孔6Aが径方向に内外を連通して貫設してあり、この窓孔6Aから後軸6の外周面から径方向外方に突出するように操作体8が配設される。操作体8は、窓孔6Aから外方に突出する、クリップ13を装着する操作部8Aと、中間軸3の長孔3Bを挿通し、回転カム7を先方に移動するとともに回転を誘導するように先端に複数の鋸歯状のカム部(図示せず)を形成した軸部8Bとを具備している。
【0027】
後軸6の後端部には保持部材11を、後軸6の後端部内に設けた雌ねじ部と、保持部材11の側面に設けた雄ねじ部とを、保持部材11の後端が、後軸6内に内在するように着脱自在に螺着してある。また、保持部材11には、熱可塑性エラストマーからなるゴム状弾性を有する白色半透明の摩擦体9を、保持部材11の内方突起部11Aに摩擦体9の装着部9Bに設けた外方突起部9Cを乗り越し嵌合することによって装着してある。
【0028】
摩擦体9は、保持部材11の後端部から外方(後方)に突出する摩擦部9Aと、保持部材11に装着する装着部9Bとを有し、摩擦部9Aの側面には、長手方向に延びる窪み状の通溝9Dを周方向に離間して4個、設けてある。また、保持部材11の側面には窪み状の通溝11を周方向に離間して4個、設けてあり、摩擦部9Aの通溝9Dと保持部材11の通溝11Bは長手方向で連通し、後軸6後端部の内外を連通している。
【0029】
また、摩擦体9の装着部9Bの先端部の側面には溝状の凹部9Eを周方向に離間して2個、設けてあり、対向する保持部材11の内面にはリブ状の凸部11Cを周方向に離間して2個、設けてある。摩擦体9を保持部材11に装着するには、摩擦体9を後軸6の後方側から押し込み、装着部9Bの凹部9E内に保持部材11の凸部11Cの先端部が挿入した後、保持部材11の内方突起部11Aに摩擦体9の装着部9Bに設けた外方突突起9Cを乗り越し嵌合し始め、さらに、摩擦体9を押し込むと、乗り越し嵌合が終了し、装着部9Bの凹部9E内に保持部材11の凸部11Cが配設し、摩擦体9の回転を抑制して装着してある。
【0030】
また、後軸6後端部に保持部材11を螺着した後、保持部材11を取り外すのに必要な回転トルクは、400gfであって、保持部材11の内面の凸部11Cが、摩擦体9の装着部9Bの凹部9Eによって、回転方向の移動を規制する回転抑止力よりも小さくしてあるため、摩擦体9を把持して回転することで、保持部材11を着脱自在に装着することができる。
【0031】
また、後軸6の後端部及び摩擦体9の外側には、内外を連通する貫通孔20A以外は後端を閉鎖したドーム状の後端部と円筒状の側面からなる黒色の外筒体20を着脱自在に、後軸6の雄ねじ部に外筒体20内面の雌ねじ部とを螺着してある。
【0032】
出没機構は、クリップ13を装着した操作体8を先部材5の先端開口部5A方向にスライドすることによって、軸部8Bのカム部、回転カム7からなる従来から知られている回転カムによる出没機構を作動させ、ボールペンチップからなる筆記先端部17を、先部材5の先端開口部5Aから出没可能としてある。
【0033】
筆記先端部17が先部材5の先端開口部5Aより没入した状態で、操作体4の操作部を先部材5の先端開口部5A方向にスライドすると、回転カム機構が作動し、筆記先端部17が突出した状態を維持して筆記することができる。
【0034】
また、筆記体14の筆記先端部17が先部材5の先端開口部5Aから突出した状態で、再度、クリップ13を装着した操作体8を先部材5の先端開口部5A方向にスライドすることによって、軸部8Bのカム部、回転カム7からなる従来から知られている回転カムによる出没機構を作動させ、ボールペンチップからなる筆記先端部17を、先部材5内に没入することができる。
【0035】
筆記体14は、ボール抱持室と、ボール抱持室の中央にインキ流通孔と、このインキ流通孔に連通する放射状に延び、チップ後部孔に達しないインキ流通溝を有するとともに、ボール抱持室の底壁に、φ0.5mmのタングステンカーバイド製のボールを載置し、チップ先端部を内側にかしめことにより、ボールの一部がチップ先端縁より突出するように回転自在に抱持したボールペンチップからなる筆記先端部17を、インキ収容筒15の先端部に、チップホルダー16を介して装着してある。また、インキ収容筒15の後端部には尾栓19を装着してある。また、ボールの後方には、ボールを常時、押圧するスプリング18を配設してある。
【0036】
また、インキ収容筒15内には、図示はしてないが、レーザー解析よる体積基準での平均粒径が0.5μmの可逆熱変色性のマイクロカプセル顔料を含有し、EM型回転粘度計における1rpmでのインキ粘度が1020mPa・s(25℃)、100rpmでのインキ粘度が84mPa・s(25℃)で、剪断減粘指数が0.48の熱変色性インキと、このインキの後端に、グリース状のインキ追従体を直に収容してある。
【0037】
この筆記体14を筆記すると、筆記先端部17のボールの回転と、筆圧によって、ボールが底壁側に移動して、チップ先端部の内壁とボールに隙間を生じ、インキを吐出して筆記することができる。
【0038】
筆跡を熱変色するには、
図6に示すとおり、外筒体20を取り外して、摩擦体9の摩擦部9Aをノート等の筆記面Hに筆記した筆跡に圧接し、擦ることで発生する熱によって、熱変色性インキの筆跡を熱消色させることができる。
【0039】
本実施形態では、軸筒本体と先部材によって軸筒を構成し、便宜上、軸筒本体は、前軸、中間軸、連結具、後軸の4部品で構成しているが、前軸と後軸の2部品等、先部材の有無や部品点数は、特に限定されるものはない。
【0040】
また、筒体として、回転カムからなる出没機構を具備した出没式筆記具の軸筒(後軸)を例示しているが、筆記具を構成する筒体であれば、回転繰り出し等、出没機構は特に限定されるものではなく、キャップ式筆記具の軸筒やキャップ、ノック体を筒体としてあってもよい。また、操作体としてクリップを例示してあるが、操作体の形状やクリップの有無は特に限定されるものではない。但し、操作体の操作部やクリップの幅を摩擦体の最大幅よりも小さくすることで、摩擦体の使用時に、筆記面上の筆跡を視認し易いので、好ましい。
【0041】
また、本実施形態では、保持部材を後軸内に内在して装着することで、摩擦部の視認性が向上するので好ましいが、筒体後端部(一方の端部)であれば、保持部材の装着場所は特に限定されるものではない。また、凸部と凹部による摩擦体の回転抑制構造は、複数個設けることが好ましく、本実施形態では、周方向に離間して2箇所に配設しているが、1個、3個等、数は特に限定されるものでない。
【0042】
また、外筒体の装着構造は、本実施形態のように、後軸に設けた雄ねじ部と外筒体内面の雌ねじ部とを螺着することが、繰り返しの着脱による装着力の低下が抑制できるので好ましいが、凹凸嵌合、乗り越し嵌合、圧入装着など、摩擦体を保護する構造であれば、後軸と外筒体の装着構造は着脱自在であれば、特に限定されるものではない。
【0043】
外筒体の形状も特に限定されるものではなく、実施形態のように、一端を閉鎖して摩擦体の側面及び後端部の略全体を覆う形状とし、摩擦体を保護することが最も好ましいが、一端を開口し、開口端を摩擦部とした形状であってもよい。
【0044】
また、外筒体の色を軸筒と略同色又は同系色とすると、軸筒と外筒体との一体感が得られやすく好ましいが、外筒体の色は特に限定されるものではない。また、摩擦体の色は、特に限定されるものではないが、無色透明、無色半透明色、白色等とすることで、部品の共通化等のコストダウンに繋がるため、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の熱変色性筆記具は、利便性を考慮して出没式筆記具とすることが好ましいが、キャップ式筆記具等、熱変色性筆記具として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 熱変色性筆記具
2 前軸
3 中間軸
3A 当接部
3B 長孔
4 連結具
5 先部材
6 後軸
6A 窓孔
7 回転カム
8 操作体
8A 操作部
8B 押圧部
9 摩擦体
9A 摩擦部
9B 装着部
9C 外方突部
9D 通溝
9E 凹部
10 弾発体
11 保持部材
11A 内方突起部
11B 通溝
11C 凸部
12 外筒体
13 クリップ
14 筆記体
15 インキ収容筒
16 チップホルダー
17 筆記先端部
19 尾栓
20 外筒体
20A 貫通孔