(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1、第2、及び第3の屈折率をそれぞれ有する第1、第2および第3の材料から最適化OSC多層スタックを製造するステップを更に含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
最適化OSC多層スタックが合計7層以下の層を有し、等価13層OSC多層スタックと同様、狭い電磁放射線帯域の少なくとも75%を反射する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
製造された最適化OSC多層スタックを白色光の形をした前記広帯域電磁放射線で照射するステップと、0°〜45°の角度から見たときに500nm未満の狭い電磁放射線帯域を反射するステップとを更に含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】全方向構造色に必要な屈折率ゾーンを示すグラフである。
【
図1b】完全な全方向性を示す、計算された即ち理想的な帯域構造を示すグラフである。
【
図1c】製造された全方向反射体の実際の帯域構造を示すグラフである。
【
図1d】多層スタックの全方向帯域を示すグラフである。
【
図2】2つの異なる材料と該当する一個の等価層から形成された3層構造を示す。
【
図3】全方向反射体と一個の等価層設計の、オリジナルプロトタイプ構造を示す。
【
図4】屈折率2.5の低屈折率材料と屈折率2.89の高屈折率材料で形成された13層構造に置き換えた、第1の材料と第2の材料で形成される39層等価構造に対する、波長に対する反射率のグラフである。
【
図6】13層構造に等価の39層構造に対する、波長に対する反射率のグラフである。
【
図7】39層構造と13層構造間の、最大波長差(ΔX)と最大反射率差(ΔY)のグラフである。
【
図8】0°および45°の入射角に対する、13層周期構造と等価13層非周期的構造間のΔXの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【
図9】0°および45°の入射角に対する、23層周期構造と等価23層非周期的構造間のΔXの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【
図10】0°および45°の入射角に対する、13層周期構造と等価13層非周期的構造間のΔYの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【
図11】0°および45°の入射角に対する、23層周期構造と等価23層非周期的構造間のΔYの、低屈折率材料と高屈折率材料に対する屈折率値の関数としてのプロットである。
【
図12】本
開示の一実施形態に係る13層非周期構造の層に対する、層厚と屈折率のプロットである。
【
図13】本
開示の一実施形態に係る23層非周期構造の層に対する、層厚と屈折率のプロットである。
【
図14】全方位構造色多層構造体の改良を示す略図である。
【
図15】本
開示の1つの実施形態による多層スタックの略図である。
【
図16】本
開示の1つの実施形態による多層スタックを製造するプロセスのフローチャートである。
【
図17A】7層TiO
2−SiO
2−ZrO
2多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図18A】8層TiO
2−SiO
2−ZrO
2多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図19A】10層TiO
2−SiO
2−ZrO
2多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図20A】11層TiO
2−ZrO
2−Cr−Nb
2O
5多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図21A】12層TiO
2−Ag−Cr−ZrO
2−Nb
2O
5多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図22A】13層TiO
2−Ag−Cr−ZrO
2−Nb
2O
5多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図23A】3層TiO
2−SiO
2多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図24A】5層TiO
2−SiO
2−雲母多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図25A】7層TiO
2−SiO
2−雲母多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図26A】10層TiO
2−SiO
2−雲母多層スタックの各層の厚さと材料とを示したグラフである。
【
図27】P関数およびOSC多層スタックへの追加層の挿入を示すグラフである。
【
図28】本
開示の実施形態によるプロセスを示す図である。
【
図29A】5層および3層最適化SiO
2−TiO
2−多層スタックの波長に対する反射率を31層および13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図29B】3層、5層および7層最適化SiO
2−TiO
2−多層スタックの波長に対する反射率を31層および13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図29C】0°および45°の角度で見たときの3層、5層および7層最適化SiO
2−TiO
2多層スタックの波長に対する反射率を13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図29D】3層最適化SiO
2−TiO
2多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図29E】5層最適化SiO
2−TiO
2−雲母多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図29F】7層最適化SiO
2−TiO
2−雲母多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図30A】0°および45°の角度で見たときの6層最適化SiO
2−雲母−ZnS多層スタックの波長に対する反射率を
図29に示した13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図30B】6層最適化SiO
2−雲母−ZnS多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図31A】8層最適化TiO
2−Cr−ZnS−SiO
2−MgF
2多層スタックの波長に対する反射率を
図29に示した13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図31B】8層最適化TiO
2−Cr−ZnS−SiO
2−MgF
2多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図31C】6層最適化TiO
2−Cr−MgF
2−SiO
2多層スタックの波長に対する反射率を
図29に示した13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図31D】6層最適化TiO
2−Cr−MgF
2−SiO
2多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図32A】0°および45°の角度で見たときの5層最適化SiO
2−TiO
2−Cr多層スタックの波長に対する反射率を
図29に示した13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図32B】5層最適化SiO
2−TiO
2−Cr多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図33A】0°および45°の角度で見たときの5層最適化TiO
2−Cr−MgF
2多層スタックの波長に対する反射率を
図29に示した13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図33B】5層最適化TiO
2−Cr−MgF
2多層スタックの厚さ、彩度(C
*)、色相シフト(H(ab))および反射率(Max R)を示すグラフである。
【
図34A】1層、2層および3層最適化ZnS−SiO
2多層スタックの波長に対する反射率を示すグラフである。
【
図34B】1層最適化ZnS多層スタックの厚さおよび彩度(C
*)を示すグラフである。
【
図34C】2層最適化ZnS−SiO
2多層スタックの厚さおよび彩度(C
*)を示すグラフである。
【
図34D】3層最適化ZnS−SiO
2多層スタックの厚さおよび彩度(C
*)を示すグラフである。
【
図35A】0°および45°の角度で見たときの5層最適化ZnS−TiO
2−Nb
2O
5−SiO
2多層スタックの波長に対する反射率を
図29に示した13層HfO
2−TiO
2等価多層スタックと比較したグラフである。
【
図35B】5層最適化ZnS−TiO
2−Nb
2O
5−SiO
2多層スタックの厚さ、彩度(C
*)および反射率(Max R)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本
開示は、0°〜45°の角度から見たときに、500nm未満の電磁波帯域を反射可能な全方向反射体を開示する。言い換えると、この全方向反射体は、0°〜45°の角度から見たときに、500nm未満の全方向帯域を有している。この全方向反射体は、高屈折率材料の複数の層と低屈折率材料の複数の層とを有する多層スタックを含んでいても良い。高屈折率材料の複数の層と低屈折率材料の複数の層は交互に重なり合いおよび/または互いに交差し、かつ、非周期構造が形成されるような厚さを持つことができる。ある場合には、0°〜65°の角度から見たとき、この全方向帯域は200nm未満であり、その他の場合、全方向帯域は、0°〜80°の角度から見たときに200nm未満である。
【0017】
高屈折率材料は、1.5と2.6を含む間の屈折率を有し、低屈折率材料は、0.75と2.0を含む間の屈折率を有することができる。ある場合には、多層スタックは少なくとも全体で2層を有し、別の場合には、多層スタックは少なくとも全体で3層を有することができる。更に別の場合には、多層スタックは少なくとも7層を有する。更に他の例では、多層スタックは少なくとも13層を有し、或いは少なくとも19層を有する。
【0018】
非周期構造に関して、高屈折率材料の複数の層は、H1、H2、H3…Hnとして特定され、低屈折率材料の複数の層は、L1、L2、L3…Lmとして特定され、これらの層は、d
H1、d
H2、d
H3…d
Hnとd
L1、d
L2、d
L3…d
Lmとして特定される厚さを有する。更に、厚さd
H1は通常、厚さd
H2、d
H3またはd
Hnの少なくとも1つと同じではなく、厚さd
L1は通常、厚さd
L2、d
L3またはd
Lmの少なくとも1つと同じではない。ある場合には、厚さd
H1はd
H2とd
H3とは異なり、および/または、厚さd
L1はd
L2とd
L3とも異なる。その他の場合、厚さd
H1はd
H2、d
H3…およびd
Hnと異なり、および/または、厚さd
L1はd
L2、d
L3…およびd
Lmと異なる。
【0019】
多層スタックは、フレーク(薄片)の形状であっても良く、このフレークは0.5と5μm間の範囲の平均厚さおよび/または5と5μm間の平均径を有していても良い。このフレークは、塗料および/または紫外保護被膜を提供するために、バインダー(結合剤)と混合されても良い。
【0020】
電磁波の狭い帯域を全方向に反射する方法も又開示される。この方法は、H1、H2、H3…Hnとして特定される高屈折率材料の複数の層と、L1、L2、L3…Lmとして特定される低屈折率材料の複数の層とを有する多層スタックを準備するステップを含む。異なる材料の層が交互に重なり合いおよび/または交互に交差する。高屈折率材料と低屈折率材料の複数の層は、それぞれ、d
H1、d
H2、d
H3…d
Hnおよびd
L1、d
L2、d
L3…d
Lmとして特定される既定の厚さを有し、かつ、厚さd
H1はd
H2、d
H3…および/またはd
Hnと異なり、更に、厚さd
L1は、d
L2、d
L3…および/またはd
Lmと異なっても良い。このようにして、多層スタックは非周期層構造を有することができる。
【0021】
広帯域電磁波源が更に設けられ、かつ、多層スタックを照射するために使用される。その後、500nm未満の全方向帯域が、0°〜45°の角度から見たときに、多層スタックから反射される。ある場合には、0°〜65°の範囲の角度から見たとき、更に別の場合には、0°〜80°の範囲の角度から見たとき、200nm未満の全方向帯域は角度無依存である。全方向帯域は、可視光領域内であり、または、紫外領域内であり或いは赤外領域内であり得る。更に、多層スタックはフレーク(薄片)の形態とすることができ、そして、このフレークは、全方向構造色である塗料を作るために、バインダーと混合したり、或いは、しなくとも良い。
【0022】
発明性を有する多層スタックの開発を、理論的制約に捕らわれず、以下で議論する。等価層技術の研究において開発され、本
開示におけるように全方向性に対処するのではない等価層理論では、単一の材料の光学特性は、予め設定された高および低屈折率を有する3層構造の対称性のある組合せによって複製可能である、と述べている(Alexander V.Tikhonravov、Michael K. Trubetskov, Tatiana V. Amotchkina, and Alfred Thelen, “Optical coating design algorithm based on the equivalent layers theory”Appl.Optics, 45, 7, 1530, 2006参照)。例えば、
図2は、n1およびn2に等しい屈折率を有し、かつ、物理的厚さd1およびd2を有する3層2材料構造が、屈折率Nと厚さDを有する材料の1個の層に等価であることを示している。特性マトリックス(M)は構造光学特性の全てを記述することが可能であり、Herpinの理論は、等価のマトリックス(M
E)を達成することが出来れば、等価単層構造は、3層構造と同一の光学特性を有し得ることを記述している。
【0023】
M
Eに対する解は、結果として、オリジナル構造に近似する、非固有の解集合を生じる。それで、以下の式(1)、(2)に示すMおよびM
Eに対する表現は、2つのマトリックスMおよびM
Eの各マトリックス要素が互いに等しい、等価な3層構造の存在に対する基準を確立するために用いることができる。
【数1】
このようにすることによって、3層構造のために用いられる2つのマトリックスの構造パラメータに対して、以下の式が導出される。
【数2】
そして、理想的な全方向反射体のオリジナル設計が、異なる出発材料で形成された等価構造で複製することができる。
【0024】
以下に、全方向構造色を設計しおよび/または提供するために、等価層理論を使用する、説明的な事例について議論する。
【0025】
(事例)
屈折率2.89の高屈折率材料と屈折率2.5の低屈折率材料から出発し、4分の1波長厚み基準を使用して、与えられたターゲット波長λに対する高屈折率材料d
Hの厚さと低屈折率材料dLの厚さは、以下の式(5)から計算することができる。
d
H=λ/4n
H、d
L=λ/4n
L (5)
【0026】
ターゲット波長575nmを使用すると、高屈折率材料の層厚は約49.7nmとなり、低屈折率材料の層厚は約57.5nmとなる。このような構造の、結果的な波長対反射率は、MATLABのために書かれた一次元(1−D)フォトニック計算機(Photonic Calculator)を使用して生成することができる。この計算機は、1−D光学的層状媒質の反射率、透過率および吸収率を計算するために、行列方法を使用する。
【0027】
異なる出発材料を用いた等価構成に関して、屈折率1.28の第1の材料と屈折率2.0の第2の材料が仮定された。更に、50%のTEモードと50%のTMモードを有する自然光である照射電磁波に対して0°の入射角と、空気の移動媒体と、ガラス基板が仮定された。3個の等価層によってそれぞれのオリジナル層を置き換えた概略表現を
図3に示す。この図に示すように、オリジナルプロトタイプの各層に置き換えて使用される各等価層の厚さが、決定すべき値となる。
【0028】
オリジナルプロトタイプの高屈折率材料に対する屈折率と低屈折率材料に対する屈折率の入力によって、シミュレーションを開始することができる。更に、2つの材料の厚さを含めることができ、そして、1−Dフォトニック計算機が波長に対する反射率のプロットを生成することができる。
【0029】
各単層の光学特性に一致させるために3つの等価層を提供することに関して、第1の層と第3の層が等しいと仮定し、結果的な波長対反射率曲線をオリジナル基準と比較して、個々の等価層の厚さを変えることにより、最適化を行うことができる。オリジナル13層スタックの各層を3つの等価層で置き換えるシミュレーションの一例を
図4に示す。
図4では、
図3に示す全13層のオリジナル基準構造を、各オリジナル層を3個の等価層で複製している。従って、13×3=39層に対するシミュレーションを出発材料として選択し、ここで第1の材料(n1=1.28)と第2の材料(n2=2.0)の厚さを、1から500nmまで変化させた。
図4は、第1の材料の厚さ99nmと第2の材料の厚さ14nmの等価39層構造の最適化が、オリジナル13層構造と比較した場合に、波長の関数としての反射率に対して同様の結果を提供したことを示している。等価な39層構造は更に、オリジナルな13層構造に存在する側波帯を大きく減少させる結果となる。このように、屈折率2.89の高屈折率材料と屈折率2.5の低屈折率材料を有する、オリジナルな2材料の13層構造が、屈折率2.0の高屈折率材料と屈折率1.28の低屈折率材料を有する2材料の39層構造と置き換え可能であることを示している。
【0030】
材料選択と製造技術に関して更なる柔軟性を持たせるために、層厚の最適化計算において層を結合しない概念を導入する。このように、オリジナル13層スタックの層を等価な3層スタックの繰り返しと置き換える以前の概念は放棄され、そして、各層は、その最終的な厚さを決定する、それぞれの乗数を有する。例えば、39層構造は、39個の異なる多重変数を有し、従って、それぞれが異なる厚さを有する39層を持つことができる。
【0031】
図5は、2つの材料を使用し、その一個は高屈折率(N
high)を有し、もう一個は低屈折率(N
low)を有する、39層構造を示している。この図に示すように、これらの層のそれぞれの厚さは、乗数(Mult
i)に基準波長を掛けたものをそれぞれの屈折率と4または8の何れかで割ったものに等しい。更に、高屈折率材料の交互の層は、H1、H2、H3…Hnとして特定され、低屈折率材料の交互の層はL1、L2、L3…Lnとして特定される。更に、各層は、図示するように、d
H1、d
H2、d
H3…d
Hnおよびd
L1、d
L2、d
L3…d
Lmとして特定される厚さを有している。4分の1或いは8分の1の乗算を実施する必要はないが、しかし、この例では、以前の実験および/または計算の経験に単に基づいて、このような乗数が含まれている。
【0032】
以下の表1を参照すると、MATLABのOptimization Toolbox(商標)内のLSQCURVEFITモジュールを用いて、39層構造に対して決定された乗数値のリストが示されている。
【表1】
【0033】
表1の乗数と、入射角0、15、30および45°を使用して反射率の計算を行い、色変化、即ち反射帯域のシフトが異なる角度で起こるか否かを決定した。角度を増加させても平均波長は変化せず、その結果、真に全方向色となることが望ましい。
図6に示すように、入射角が増加すると、計算は、平均反射波長の連続した「ブルーシフト」を示した。しかし、このシフトは75nm未満であり、従って、全方向構造色を示す非周期的層構造が提供された。
【0034】
全方向反射体を作るために使用することができる可能な材料の広範囲の評価を展開するために、「高」屈折率材料に対して1.4から2.3の範囲で、「低」屈折率材料に対して1.2から2.1範囲の屈折率を有する材料に対して、計算を行った。最適化パラメータは、オリジナルのプロトタイプと等価層設計の間で最大波長差(ΔX)の絶対値として、かつオリジナルのプロトタイプと等価層設計の間での最大反射率差(ΔY)の絶対値として、定義した。
図7にΔXとΔYの例を示す。オリジナルなプロトタイプ構造と等価層設計に対するXおよびY座標を、ΔXおよびΔYを計算するために選択した。更に、屈折率ペアの関数として、ΔXおよびΔYを可視的に示すために、
図8〜
図11のようなプロットを展開し、以下に検討する。
【0035】
図8は、入射角0°および45°における、オリジナルの13層プロトタイプと等価13層非周期設計間のΔXにおける違いを示し、グラフに示す陰影を付した円の直径は、オリジナルプロトタイプと等価層設計間のΔXに比例している。陰影付きの円が大きくなれば成る程、ΔXの値が大きくなり、その結果、オリジナル13層プロトタイプとより低い屈折率を有する2つの材料で形成された等価非周期層設計との間の最大波長シフトも大きくなる。この方法で、オリジナル13層プロトタイプと等価非周期層設計間の最大波長において、小さな相違が存在する屈折率ペアを、容易に識別することができる。同様に、
図9は、入射角が0°および45°における、オリジナル23層プロトタイプと等価23層非周期設計間のΔXを示している。
【0036】
図10および11を参照すると、13層および23層オリジナルプロトタイプと等価13層および23層非周期層設計間のΔYがそれぞれ、入射角0°および45°に対して屈折率ペアの関数として示されている。
図8および9と同様に、
図10および11を再検討することによって、オリジナル多層プロトタイプと等価非周期多層構成間のΔXとΔYにおいて、差が小さな屈折率ペアを識別することができる。例えば、
図8〜
図11を検討することによって、1.5から1.7の範囲の屈折率を有する第1の材料と2.0から2.3の範囲の屈折率を有する第2の材料が、約575nmに中心を有する色/反射帯域を有する全方向構造色を提示する、非周期多層スタックを作るのに適していることが分かる。
【0037】
ターゲットの反射帯域(即ち、異なる色)を変えること或いは異なるものを選択することで、
図8〜
図11に示す実際の傾向を変化させることが好ましい。しかしながら、傾向は依然として存在し、その結果、適切な屈折率ペアの識別が提供される。
【0038】
非周期的全方向構造色に対して実際の設計厚さを示す
図12は、屈折率2.0を有する第1の材料と屈折率1.6を有する第2の材料とから形成される13層非周期的多層に対して、厚さの概略プロットを示している。種々の層の厚さを細長い四角によって示しており、この四角は左側のY軸に対応し、各層の屈折率を黒い菱形で示し、これは右側のY軸に対応する。同様に、屈折率2.2の第1の材料と屈折率1.7の第2の材料を使用して形成された23層非周期全方向構造色に対する層厚が、
図13に示されている。
【0039】
このように、以前に入手可能なものよりも大きな範囲の材料を使用して、殆ど全ての所望の波長に対して、全方向構造色を設計し、製造することができる。このような材料は、金属、半導体、セラミック、ポリマーおよびそれらの組合せを含む。より大きな範囲の材料を使用する機会は、所望の多層スタック/構造を作るために、より広い範囲の製造技術を利用可能とする。
【0040】
上述のことに加えて、多層スタックは、少なくとも1つの第3の屈折率材料層C1、少なくとも1つの第4の屈折率材料D1、および/または、少なくとも1つの第5の屈折率材料層E1を有することができる。少なくとも1つのA1、B1、C1、D1および/またはE1は各々、適切な屈折率を有し、今日または将来において、ゾルゲル材料、真空被着技術、積層技術などのプロセス、技術、設備等を用いて多層構造を生産するために使用されるものとしてまたは好適に使用可能なものとして公知である、当業者にとって公知の任意の材料から形成され得るさまざまな材料層を有することができる。
【0041】
図14を参照すると、低屈折率材料N
Lと高屈折率材料N
Bとから成る複数の層を交互に配設した多層スタック10から形成された全方向構造色(OSC)が概略的に例示されている。低屈折率材料および高屈折率材料の各々は、それぞれ対応した厚みh
1およびh
2を有する。OSCを形成する多層スタック20の他の変形例が本明細書において開示されている。この変形例では、低屈折率材料N
Lと高屈折率材料N
Hは、異なる厚みh
1、h
2、h
3、…h
6で示すように、多層スタック全体を通して必ずしも同じ厚みを有する必要がない。本明細書で開示されている更なる改良によると、OSCを形成する多層スタック構造30は、第1の屈折率材料N
1、第2の屈折率材料N
2、第3の屈折率材料N
3、第4の屈折率材料N
4および第5の屈折率材料N
5を含む。更に、材料層の各々は、異なる厚みh
1、h
2、h
3、h
4およびh
5により略示するように異なる厚みを有することができる。
【0042】
図15において、上記多層スタック30の1つの代替例の全体が参照番号32にて示されている。多層スタック32は複数の層320を有している。この複数の層は、例示のみを目的として、参照番号322で示す第1の屈折率材料層A1、324で示す第2の屈折率材料層B1、326で示す第1の屈折率材料の追加層A2および、328で示す第3の屈折率材料層C1として示されている。また
図15に示すように、330においてXαとして例示的に示すように異なる材料から形成することができる、第1、第2または第3の屈折率材料から形成された追加層を含むことが可能である。層322〜330の各々は、固有の厚み、d
A1、d
B1、d
A2、d
C1、…d
Xαを有することができる。このようにして、少なくとも2つの異なる材料から形成された、そして一部のケースでは少なくともここでは異なる材料で形成された少なくとも3つの層を有し、かつ非周期的層構造を有する多層スタックが提供され、全方向反射体として使用される。
【0043】
本明細書において全方向反射体とも称されるこのようなOSCを製造するプロセスは、
図16において参照番号34で全体として示されている。プロセス34は、ステップ340で所望の全方向反射帯域を有する全方向構造色のための2つの材料の四分の一波長設計を使用するステップを含むことができる。その後、ステップ342で展開されている四分の一波長設計に、等価層アプローチを適用して、四分の一波長設計を改良し、例えばより低い屈折率を有する材料などの代替的材料を使用できるようにすることができる。ステップ342で提供されるまたは得られる設計をステップ344で使用して、初期試験を提供することができ、或いは代替的に、ステップ340で展開された四分の一波長設計をステップ344での初期試験のために使用することができる。ステップ346では、材料の数を2つから少なくとも3つまで増大させるような形で、追加の最適化を提供することができる。
【0044】
ステップ348では、最適な着色、反射率、設計パラメータなどが達成されたか否かに関して、ステップ346で提供された設計を判定する。所望の特性またはパラメータが達成されていない場合、プロセスは、ステップ340から再開するかまたはステップ342から再開することができる。最適な着色、設計パラメータなどが達成された場合、プロセスはステップ350まで進むことができ、このステップにおいて、多層スタックが提供され、基板から取出され、顔料を調製するために使用される。一変形例では、多層スタックを薄いフィルムとして基板に適用し、そこに残して所望の着色を提供することができる。
【0045】
図16に示されているような方法を使用して、
図17〜
図26は、さまざまな多層スタック設計のための一連の結果を提供している。例えば
図17Aは、酸化チタン、酸化ケイ素および酸化ジルコニウムを用いた7層構成のための層厚みおよび材料をグラフを用いて示した図である。さまざまな層の厚みによって示されている通り、プロセス34により非周期的層構造が提供される。更に、
図17Bは、
図17Aに表現されている構造のための電磁放射線波長の一関数としての計算上の反射率を提供している。
図17Bに示すように、
図17Aの構造は、0°〜45°の角度から見たときにおよそ525nmの波長を有し100nm未満の狭い電磁放射線帯域の少なくとも50%を反射する。つまり、
図17Aの構造は、広い電磁放射線帯域に曝露された場合に100nm未満の全方向帯域を有し、広帯域放射は、0°〜45°の角度でこのような構造の表面上に入射する。
【0046】
図18A、18Bは、8層構成およびそれにより生成される全方向反射帯域の類似のグラフを示している。8層構成は、酸化チタンの初期層;酸化ケイ素、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの交互の層;それに続く酸化ケイ素の最終層を有する。
図18Bは、このような構造が、およそ525nmで狭い放射線帯域の少なくとも50%を反射する狭い全方向反射帯域を有する。更に、8層構成は、
図17の構成と比較した場合に、削減された側波帯を示す。
【0047】
図19は、酸化チタン、酸化ケイ素および酸化ジルコニウムから形成された10層構成についての結果を示す。
【0048】
図20を参照すると、酸化チタン、酸化ジルコニウム、クロムおよび酸化ニオブから形成された11層構成が示されている。
図20Aは、さまざまな層についてのさまざまな層厚を示し、
図20Bは、電磁放射線波長の一関数としての反射率を示す。
図20Bから理解されるように、
図20Aの構造は、0°〜45°の角度から見たときにおよそ525nmで狭い放射線帯域の少なくとも50%を反射する第1の全方向反射帯域を提供する。更に、およそ360nmで赤外線領域内の第2の全方向反射帯域が、
図20Aに示す構成によって提供される。
【0049】
図21は、酸化チタン、銀、クロム、酸化ジルコニウムおよび酸化ニオブ材料を用いた12層構成についての類似のグラフおよび波長の一関数としての反射率を提供している。
図22は、酸化ケイ素の添加を除いて、
図21で使用されたものと同じ材料についての13層構成を示す。
【0050】
多層スタック用の層の数を更に削減しようとして、
図23に示す3層スタックと
図24に示す5層構成を設計するために、プロセス34が使用された。酸化チタンと酸化ケイ素材料を含む3層構成は、
図23Bに示した通りの計算された反射率スペクトルを示し、酸化チタン、酸化ケイ素および雲母がプロセス34において使用された5層構成は、
図24Bに示した反射率スペクトルを示した。
【0051】
酸化チタン、酸化ケイ素および雲母である同じ材料を用いる7層構成および10層構成を、それぞれ
図25、26に示す。
図23〜
図26に示す3層、5層、7層および10層構成についての反射率スペクトルから、このような多層構造が、およそ350nmでの赤外線全方向反射帯域に加えて、例えば約525nmの可視光線内の全方向反射帯域を示すことが理解されよう。
【0052】
一実施形態では、多層スタックの層数を更に削減するために、OSC多層スタックを設計し製造するためのプロセスが提供
される。このプロセスは、非周期層構造を有するOSC多層スタックを設計し生産するために「ニードル最適化」を含むことができ、1または複数の異なる材料を使用することができる。本開示の目的において、「ニードル最適化」という用語は、メリット関数の最適化を介したOSC多層スタックの数学的最適化を意味する。詳細には、OSC多層スタックは、多重層間の境界から反射される電磁波間の干渉効果に関係する特性を有する干渉構造とみなされる。多層スタックの干渉効果は、反射された電磁波の位相および振幅によって決定され、メリット関数が小さくなればなるほど、ターゲットと実際の設計特性の間の対応は密になる。更に、
図27に示すように、構造の屈折率プロファイルを本質的に変更する少なくとも1つの新規層が、既存のOSC多層構造内に挿入される。
【0053】
メリット関数は、厚みδと屈折率nを有し、或る点zにおいて挿入された屈折率プロファイル(ニードルとしても公知)の単一層の変化を考慮している。メリット関数の変化は、新規層の厚みとの関係における級数として表現することができる。
【数3】
ここで、級数の係数は、OSC多層スタックの内部の新規層の位置ならびに新規層の屈折率によって左右される。
【0054】
屈折率はOSC多層スタックを製造するために使用すべき所望の材料に対応する値の表(例えば表3参照)から取り上げることができ、従って、新規層は任意の値をとり得ないということが理解されよう。更に、OSC多層スタックを生産または製造するために使用可能である材料の屈折率をn
1、n
2、…n
jと表示すると、下記式(7)のP関数を、
図27に示すように、プロットすることができ、ここで追加の層を挿入するための1または複数の位置はP関数の最も負の値で識別されている。
【数4】
【0055】
例えば、
図27において、厚みδ
1、δ
2およびδ
3を有する追加層のz軸上の位置が示されている。一部の場合において、新規層は、初期設計を生産するために使用される材料と同じ材料とすることができ、或いは変形例では、新規層は異なる材料とすることができる。例えば、3つ以上の材料を有するOSC多層スタックの場合については、
図27に例示されている通り対応するz軸上の位置において式(7)の最小値を与える屈折率値として、挿入された新規層の屈折率を選択することができる。
【0056】
典型的には、ニードル最適化技術は、初期設計の構造に新規層を挿入する手順と、その後、層の厚みを最適化する対応の手順とを含む。例えば、
図28は、ステップ400において初期設計が新規作成されるか入力され、その後、追加層402が挿入されるプロセス40を示している。
図27に示すように、追加層を挿入することができる。
図27は、多層構造内において、新規層を挿入する位置がP関数が最小値を有する位置によって決定されることを示している。更に新規層のために使用される材料は、P関数についての最小値を与える屈折率から選択可能である。
【0057】
ステップ402において、少なくとも1つの追加層を挿入した後、ステップ404で屈折率を選択すると共に、ステップ406においてメリット関数を最適化することができる。変形例では、屈折率は少なくとも1つの追加層の挿入前に選択可能である。その後、ステップ408でP関数を計算することができ、ステップ410でP関数がゼロより大きいことが判定された場合には、最終設計がステップ412で決定されるとみなされる。ステップ410でP関数がゼロ以下である場合、追加層の厚みが予め設定した値よりも小さいか否かをステップ414で判別することができる。
【0058】
追加層の厚みが予め設定した値以上である場合、すなわち追加で挿入される層(単複)の厚みが、所望の製造技術を用いて生産可能である場合には、ステップ402において1または複数の追加の層を挿入することができ、プロセスは、上述の通りに進行し得る。変形例では、挿入される層の追加層の厚みが予め設定した値よりも小さい場合、すなわち、追加で挿入される層(単複)の厚みを、所望の製造技術を用いて生産できない場合には、プロセスは、ステップ412の最終設計判定へと進むことができる。こうして、プロセスは、所望の光学特性を有するOSC多層スタックを決定する。
【0059】
ニードル最適化技術の主要な特性は、以下の通りであると考えられる:
1.出発設計の選択は、重要ではない。
2.全体の光学的厚みは、出発設計の選択にとってきわめて重要であり得、光学的厚みすなわち出発設計が大きくなると、最終設計の層数はより多くなり、メリット関数値はより低くなる。
3.単一層を所与の時点で挿入することができ、変形例では、複数の層を所与の時点で挿入することができる。
4.多層スタックの内部で、または所与の基板として、分散性材料を使用することができる。
5.該技術内においては、非吸収性、吸収性および分散性材料を使用することができる。
6.該技術の範囲内で、所望の光学特性またはターゲットを使用することができる。従って、所望の反射率、彩度、色相シフトなどが、P関数内に取込まれる所望のターゲットであり得る。
【0060】
プロセスの追加の教示を示し、かつ本
開示の範囲をいかなる形であれ限定しない、最適化OSC多層スタックの実施例を以下に提供する。
【0061】
実施例
図29A〜
図29Fを参照すると、本明細書において開示されている本発明のプロセスを用いて、3層、5層および7層最適化OSC多層スタックを設計した。3層スタックは、2層のTiO
2と1層のSiO
2(
図29D)を有し、5層スタックは、最終雲母層の追加を伴ってSiO
2とTiO
2の交互層を有し(
図29E)、7層スタックは、最終雲母層を伴ってSiO
2とTiO
2の交互層を有していた(
図29F)、
図29D〜Fは、
図28に例示されたプロセスを通して得られる、それぞれ3層、5層および7層構成のための各層の厚みを提供する。更に、
図29Aは、3層および5層最適化OSC多層スタックと、等価13層および31層HfO
2−TiO
2OSC多層スタックとの間の波長に対する反射率の比較を提供する。本
開示の目的において「等価」OSC多層スタックという用語は、最適化OSC多層スタックと同じ狭い電磁放射線帯域を反射する四分の一波長周期性設計を有するOSC多層スタックを意味することが理解されよう。
【0062】
図29Aに示すように、3層および5層のSiO
2−TiO
2最適化OSC多層スタックは、本質的に、13層等価HfO
2−TiO
2OSC多層スタックと同じ反射率を与える。更に、3層および5層最適化SiO
2−TiO
2OSC多層スタックは、13層および31層等価HfO
2−TiO
2OSC多層スタックと比べて低い側波帯を有する。
【0063】
図29Bは、7層SiO
2−TiO
2最適化OSC多層スタックについての波長に対する反射率を含み、
図29Cは、0°および45°から見たときの反射率ピークのシフトすなわちその欠如を例示することによって、3層、5層および7層最適化OSC多層スタックの全方向挙動を例示している。
【0064】
3層、5層および7層最適化OSC多層スタックのための彩度および色相シフトに関しては、彩度および色相シフトの結果を
図29D〜
図29Fに示す。これらの図面に示すように、最低の彩度は、3層最適化OSC多層スタックについて示され、最高の彩度は、7層最適化OSC多層スタックについて示されている。更に、色相シフトは、3層最適化OSC多層スタックについて最低であり、5層および8層最適化OSC多層スタックについてほぼ等価であった。
【0065】
図30Aを参照すると、TiO
2に代えてZnSが使用された最適化6層OSC多層スタックについての結果が、
図29に示す等価13層構成に比較して示されている。さまざまな層の厚みは
図30Bに示されている。
【0066】
図31A〜
図31Dを参照すると、雲母に代えてMgF
2を使用し、TiO
2およびクロム(Cr)を組み込んで8層(
図31A、
図31B)および6層(
図31C、
図31D)の最適化OSC多層スタックを生産した。0°および45°の角度から見たときの、最適化8層OSC多層スタックおよび
図29に示す等価13層スタックについての波長に対する反射率を
図31Aに示す。
について示されている。更に、
図31Cは、0°および45°の角度から見たときの6層最適化TiO
2−Cr−MgF
2−SiO
2OSC多層スタックについての波長に対する反射率をを
図29に示す13層等価構成と比較して示している。これらの図により例示されているように、8層および6層最適化スタックは双方共、等価13層構成に比べて増大した反射率と等価の全方向挙動を提供する。更に、最適化8層構成の彩度は112であったのに対し、最適化6層構成については、彩度は108であった。所望の光学的特性、費用検討などに応じて、低い彩度と高い色相シフトを、好適な最適化OSC多層スタックを得るための妥協点の一部として使用できるということが理解されよう。
【0067】
図32Aは、0°および45°の角度から見たときの最適化5層SiO
2−TiO
2−CrOSC多層スタックの波長に対する反射率を
図29に示す13層等価構成と比較して示している。SiO
2、TiO
2およびCr層の厚みを彩度(C*)および最大反射率(Max R)と共に
図32Bに示す。
【0068】
図33Aは、0°〜45°の角度から見たときの5層TiO
2−Cr−MgF
2最適化OSC多層スタックについての波長に対する反射率を、
図29に示されている13層等価スタックにと比較して示している。TiO
2−Cr−MgF
2層の厚みは、
図33Bに示されている。これらの図に示すように、一般に等価の全方向挙動を伴う13層構成に比較して増大した反射率が得られた。
【0069】
図34Aを参照すると、最適化1層、2層および3層OSC多層スタックについての波長に対する反射率の結果が、
図34B〜
図34Dに示す層の厚みを伴う
図29に示す13層等価構成と共に示されている。これらの図に示すように、単一の最適化層であっても最高40%の反射率と40の彩度を提供できる(
図34B)。
【0070】
図35Aは、
図35Bに示す層の厚みを伴って0°および45°の角度から見たときの最適化5層ZrO
2−TiO
2−Nb
2O
5OSC多層スタックおよび
図29に示す13層等価構成についての波長に対する反射率を示している。
【0071】
既述した実施例から、本明細書に開示されているプロセスを用いて、さまざまなOSC多層スタックを設計し最適化可能であることが理解されよう。更に、材料費用検討、入手可能性などに応じて、該プロセスは、コーティング、顔料などとして使用可能である費用効果性の高いOSC多層スタックを設計するための強力な手段を提供する。同様に、このようなOSC多層スタックの製造は、特定の設計のための所与の材料を提供し、この設計により決定される厚みを有する多層構造を生産することによって実行可能であることもわかる。その後、多層構造をコーティングとして使用することができ、或いは、変形例では、犠牲基板から除去し、顔料、例えば塗料顔料として使用できるような所望のサイズに研削することができる。表2は、ニードル最適化削減層設計のまとめを提供しており、およそ550nmでのピーク反射率は緑色と等価である。
【表2】
【0072】
以上の開示から、具体的実施形態および実施例が例示目的でのみ提供されていることが理解されよう。従って、実施形態および実施例は、いかなる形であれ本
開示の範囲を限定するように意図されておらず、従って明細書は広義に解釈されるべきである。本
開示の範囲を定義するのは、特許請求の範囲と全ての等価物である。
【0073】
このようにして、これまで利用可能であったものよりも大きい範囲の材料を用いて、所与のほとんど全ての所望の波長のために、全方向構造光を設計し製造することができる。3つ以上の材料を使用する多層構成が完全に新規であることが理解されよう。このような材料としては、金属、半導体、セラミクス、ポリマーおよびそれらの組合せが含まれる。例えば、単なる例示を目的として、下表3は、多層スタックの生産のための例示的材料のリストを提供している。より広い範囲の材料を使用することが有利である状況によって、所望の多層スタック/構造を作るためのより広範囲の製造技術が提供されることが理解されよう。更に、本明細書において開示されている多層スタック/構造は、更に、塗料用顔料などを製造するためにも使用可能である。
【表3】
【0074】
本
開示は、上記の事例に限定されるものではない。これらの事例は、
開示の範囲を限定することを意図するものではなく、ここに記載された方法、装置、構成、材料などは、例示的であり、
開示の範囲を限定するべく意図されたものではない。当業者は、変更および他の使用方法を実施しうる。従って、本
開示の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
本開示は、下記の態様をさらに含む:
〈態様1〉
全方向構造色(OSC)多層スタックを設計し製造するための方法において、
少なくとも1つのモジュールを実行するために動作可能なデジタルプロセッサーを準備するステップと、
OSC多層スタックを製造するために使用可能な異なる材料に対応する屈折率値の表を準備するステップと、
初期設計のOSC多層スタックが屈折率値表から選択される屈折率を伴う少なくとも1つの層を有するように、OSC多層スタックのための初期設計するステップと、
初期設計の少なくとも1つの材料と同じまたは異なる屈折率を有した少なくとも1つの追加の層を初期設計のOSC多層スタックに追加して、修正OSC多層スタックを作るステップと、
最適化OSC多層スタックが、0°〜45°の角度から見たときに500nm未満の狭い電磁放射線帯域を反射可能となるように、最適化OSC多層スタックが計算されるまでメリット関数モジュールを用いて修正OSC多層スタックの各層の厚みを計算するステップとを含む方法。
〈態様2〉
修正OSC多層スタックが第1の屈折率を有する第1の層と、第1の屈折率と等しくない第2の屈折率を有した第2の層とを有する態様1に記載の方法。
〈態様3〉
修正OSC多層スタックが、第1の屈折率または第2の屈折率と等しくない第3の屈折率を有した第3の層を有する態様2に記載の方法。
〈態様4〉
第1、第2および第3の屈折率をそれぞれ有する第1、第2および第3の材料を準備するステップと、メリット関数モジュールを用いて計算される最適化された厚みを有する第1、第2および第3の材料でOSC多層スタックを製造するステップとを更に含む態様3に記載の方法。
〈態様5〉
最適化OSC多層スタックが合計7層以下の層を有し、等価13層OSC多層スタックと同様、狭い電磁放射線帯域の少なくとも75%を反射する態様1に記載の方法。
〈態様6〉
最適化OSC多層スタックが、合計7層以下の層を有し、等価13層OSC多層スタックの25%以内の彩度を有する態様5に記載の方法。
〈態様7〉
最適化OSC多層スタックが、等価13層OSC多層スタックの10%以内の彩度を有する態様6に記載の方法。
〈態様8〉
最適化OSC多層スタックが合計7層以下の層を有し、等価13層OSC多層スタックの25%以内の色相シフトを有する態様5に記載の方法。
〈態様9〉
最適化OSC多層スタックが、等価13層OSC多層スタックの10%以内の色相シフトを有する態様8に記載の方法。
〈態様10〉
全方向構造色(OSC)多層スタックを設計し製造するための方法において、
ニードル最適化モジュールを実行するために動作可能なコンピュータを準備するステップと、
OSC多層スタックを製造するために使用可能な異なる材料に対応する屈折率値の表を準備するステップと、
初期設計のOSC多層スタックが屈折率値表から選択される屈折率を伴う少なくとも1つの層を有するOSC多層スタックのための初期設計を準備するステップと、
初期設計の少なくとも1つの層とは異なる屈折率を有する少なくとも1つの追加の層をニードル最適化モジュールを用いて初期設計のOSC多層スタックに追加し、修正OSC多層スタックを形成するステップと、
等価13層OSC多層スタックに比較して少なくとも75%の反射率で、0°〜45°の角度から見たときに500nm未満の狭い電磁放射線帯域を反射するように動作可能なように、最適化OSC多層スタックが計算されるまでニードル最適化モジュールを用いて修正OSC多層スタックの各層の厚みを計算するステップとを含む方法。
〈態様11〉
修正OSC多層スタックが第1の屈折率を有する第1の層と、第1の屈折率と等しくない第2の屈折率を有する第2の層とを有する態様10に記載の方法。
〈態様12〉
修正OSC多層スタックが、第1の屈折率または第2の屈折率と等しくない第3の屈折率を有する態様11に記載の方法。
〈態様13〉
第1、第2および第3の屈折率をそれぞれ有する第1、第2および第3の材料を準備するステップと、メリット関数モジュールを用いて計算される最適化された厚みを有する第1、第2および第3の材料でOSC多層スタックを製造するステップとを更に含む態様12に記載の方法。
〈態様14〉
最適化OSC多層スタックが合計7層以下の層を有し、等価13層OSC多層スタックに比較して、狭い電磁放射線帯域の少なくとも75%を反射する態様10に記載の方法。
〈態様15〉
最適化OSC多層スタックが、合計7層以下の層を有し、等価13層OSC多層スタックの彩度の25%以内の彩度を有する態様14に記載の方法。
〈態様16〉
最適化OSC多層スタックの彩度が、等価13層OSC多層スタックの彩度の10%以内である態様15に記載の方法。
〈態様17〉
最適化OSC多層スタックが合計7層以下の層を有し、等価13層OSC多層スタックの色相シフトの25%以内の色相シフトを有する態様14に記載の方法。
〈態様18〉
最適化OSC多層スタックの色相シフトが、等価13層OSC多層スタックの色相シフトの10%以内である態様17に記載の方法。
〈態様19〉
全方向構造色(OSC)多層スタックを設計し製造するための方法において
ニードル最適化モジュールを実行するために動作可能なコンピュータを準備するステップと、
OSC多層スタックを製造するために使用可能な異なる材料に対応する屈折率値の表を準備するステップと、
屈折率値表から選択される屈折率を伴う少なくとも1つの層を有したOSC多層スタックのための初期設計を準備するステップと、
ニードル最適化モジュールを用いて、少なくとも1つの追加の層を初期設計のOSC多層スタックに追加し、第1、第2および第3の屈折率を有する第1、第2および第3の層を有した修正OSC多層スタックを形成するステップと、
等価13層OSC多層スタックに比較して少なくとも75%の反射率で、0°〜45°の角度から見たときに500nm未満の狭い電磁放射線帯域を反射するように動作可能なように、最適化OSC多層スタックが計算されるまでニードル最適化モジュールを用いて修正OSC多層スタックの各層の厚みを計算するステップと、
それぞれ第1、第2および第3の屈折率を有する第1、第2および第3の材料を準備するステップと、
メリット関数モジュールで計算した最適化された厚みを有するそれぞれ第1、第2および第3の層の形で第1、第2および第3の材料を用いてOSC多層スタックを製造するステップとを含む方法。
〈態様20〉
製造されたOSC多層スタックを白色光の形をした広帯域電磁放射線で照射するステップと、製造されたOSC多層スタックを用いて0°〜45°の角度から見たときに500nm未満の狭い電磁放射線帯域を反射するステップとを更に含む態様19に記載の方法。