(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベース基材上に形成された第1の電極層と、前記第1の電極層の前記ベース基材とは反対側に対向配置された第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に挟み込まれた情報表示層とを有し、前記第1の電極層が、複数の電極、または、複数の電極と、前記ベース基材上における形成高さが前記電極と同一となる土手部材とからなり、前記複数の電極に第1及び第2の電圧のいずれか一方を選択的に印加することにより、前記情報表示層を一方の面側から見た場合に、前記情報表示層の前記第1の電圧が印加された電極に対向する領域と前記情報表示層の前記第2の電圧が印加された電極に対向する領域とで互いに異なる色を表示する情報表示装置において、
前記複数の電極に電圧を印加するための配線が前記ベース基材上に形成され、該配線の両側に沿って、前記複数の電極のうち当該配線によって電圧が印加される電極以外の電極または土手部材が形成され、
前記電極または前記土手部材は、端辺部分が盛り上がって形成され、
前記配線は、前記ベース基材上における形成高さが、前記電極または前記土手部材の当該配線に沿う端辺部分の前記ベース基材上における形成高さよりも低く、その高さの差が3μm以上あり、
前記電極及び前記土手部材は、前記配線に沿う領域において、当該配線が延びる方向に直交する方向の幅が100μm以上であり、かつ、当該配線に当接せずにその間隔が410μm以下であることを特徴とする情報表示装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報を表示する表示装置として、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等が用いられており、これらは、テレビ受像機に用いられることによりテレビ局から送信されたテレビ映像を表示したり、パソコンのディスプレイとして用いられることにより、パソコンに保存された情報やインターネットを介して配信された情報を表示したりすることができる。
【0003】
近年、上述したような表示装置に加えて、デジタル情報を紙のように薄い表示媒体に表示する薄型の情報表示装置が普及しはじめている。このような薄型の情報表示装置としては、例えば、対向配置された2つの電極層間に、帯電性粒子が液体内に分散した情報表示層を挟み込み、2つの電極層に電圧が印加された場合に帯電性粒子が液体内を移動することにより、情報を表示する電気泳動ディスプレイがある。このような薄型の情報表示装置は、紙のように薄いために携帯がしやすいとともに、消費電力が少なく、また視野角が広く、さらには、電極に印加する電圧によって表示される情報を書き換えることができるとともに、電源を切断した場合でも表示内容を保持できることから、今後のさらなる普及が予想される。
【0004】
図7は、一般的な電気泳動ディスプレイの積層構造を示す図であり、(a)は全体の積層構造を示す図、(b)は(a)に示したA部拡大図である。
【0005】
一般的な電気泳動ディスプレイは
図7(a)に示すように、ガラスや透明フィルム等からなる透明基板122の一方の面に透明電極(例えば、ITO:Indium Tin Oxide)121が形成されてなる透明導電膜基板120と、ベース基材114上に積層された絶縁層117との間に情報表示層130が挟み込まれて構成されている。
【0006】
絶縁層117の情報表示層130に対向する面には、情報表示層130を用いて情報を表示するための複数の表示電極111及び背景電極113が形成されており、また、絶縁層117の情報表示層130とは反対側の面には、表示電極111に電圧を印加するための配線112が形成されており、複数の表示電極111は、絶縁層117に形成された導通部116を介して配線112に接続されている。また、背景電極113においても、背景電極113に電圧を印加するための配線(不図示)がベース基材114に形成されており、この配線に接続されている。
【0007】
情報表示層130は、
図7(b)に示すように、隔壁131とシール層134とで囲まれた領域に、帯電性粒子133が分散した隔壁内液体132が収容されて構成されている。隔壁131は、底部と、情報表示層130の外周部となる側部と、側部で囲まれた領域を複数の領域に区画するための壁部とからなり、底部とは反対側の面が開口した形状となっている。そして、底部側がベース基材114に対向するように積層されており、開口した側にシール層134が積層されている。
【0008】
上記のように構成された電気泳動ディスプレイにおいては、透明電極121が基準電位とされた状態で、背景電極113に所定の電圧が印加されるとともに表示電極111に選択的に電圧が印加されると、隔壁内液体132内にて帯電性粒子133がクーロン力で移動し、背景電極113に対向する領域においては背景電極113と透明電極121とのうち決められた側に、また、表示電極111に対向する領域においてはその表示電極111に印加された電圧に応じて表示電極111と透明電極121とのいずれか一方の側にそれぞれ引き寄せられる。そして、隔壁内液体132が染料または顔料で着色されており、帯電性粒子133が高屈折率の光散乱成分を含むことにより、透明導電膜基板120側から見た場合、表示電極111側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が着色された状態に見え、また、透明電極121側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が白色に見える。これにより、表示電極111のうち所望の表示電極111に第1及び第2の電圧のいずれか一方を印加するとともに、それ以外の表示電極111と背景電極113に第1及び第2の電圧の他方を印加することで、所望の表示電極111に対向する領域のみがそれ以外の領域とは異なる色に見え、この色の違いによって所望の情報が表現されることになる。
【0009】
ここで、上述したような電気泳動ディスプレイにおいては、表示電極111と配線112とを接続するために絶縁層117に導通部116を形成する必要があるが、表示電極111に電圧を印加するための配線112を複数の表示電極111間に配置することにより、絶縁層117に導通部116を形成する必要がなくなり、そのための工程が不要となり、さらには、絶縁層117自体も不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0010】
ところが、複数の表示電極111間に配線112を配置した場合、表示電極111に配線112を介して選択的に電圧が印加されると、情報表示部130の配線112に対向する領域においても、上述したように隔壁内液体132内にて帯電性粒子133がクーロン力で移動し、透明導電膜基板120側から見た場合、配線112側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が着色された状態に見え、また、透明電極121側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が白色に見え、そのため、表示電極111によって表示される情報の視認性が低下してしまう。
【0011】
そこで、配線112のベース基材114上における形成高さを、その配線112に隣接する表示電極111のベース基材114上における形成高さよりも低くすることにより、情報表示層130の配線112に対向する領域において、配線112と情報表示層130との間隔を広くすることで配線112に印加された電圧の影響を受けにくくし、それにより、表示電極111によって表示される情報の視認性の低下を回避する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
また、ベース基材上に表示電極が島状に孤立した状態で形成された構成において、孤立した表示電極に電圧を印加するための配線のベース基材上における形成高さを表示電極の形成高さよりも低くするとともに、ベース基材上における形成高さが配線の形成高さよりも高い土手部材を配線の両側に沿って形成することにより、上記同様に、情報報表示層の配線に対向する領域において、配線と情報表示層との間隔を広くすることで配線に印加された電圧の影響を受けにくくし、それにより、表示電極によって表示される情報の視認性の低下を回避する技術が考えられている(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
これらの技術は、上記のように背景電極を有する構成においても、背景電極間に配線が形成されている場合、配線のベース基材上における形成高さを背景電極の形成高さよりも低くすることにより、情報の視認性の低下を回避することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、上記のような情報表示装置においては、決められた大きさの中で多くの情報を表示することが求められる場合が多い。そのため、表示電極及びそれに電圧を印加するための配線の数が多くなり、高集積化が求められる。
【0016】
情報表示装置の高集積化が図られた場合、上述したようにただ単に配線のベース基材上における形成高さを表示電極や土手部材の形成高さよりも低くしただけでは、情報の視認性の低下を回避するのに不十分なものとなる場合がある。
【0017】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、電極の高集積化が図られた場合においても、電極に電圧を印加するための配線による視認性低下を回避することができる情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材上に形成された第1の電極層と、前記第1の電極層の前記ベース基材とは反対側に対向配置された第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に挟み込まれた情報表示層とを有し、前記第1の電極層が、複数の電極、または、複数の電極と、前記ベース基材上における形成高さが前記電極と同一となる土手部材とからなり、前記複数の電極に第1及び第2の電圧のいずれか一方を選択的に印加することにより、前記情報表示層を一方の面側から見た場合に、前記情報表示層の前記第1の電圧が印加された電極に対向する領域と前記情報表示層の前記第2の電圧が印加された電極に対向する領域とで互いに異なる色を表示する情報表示装置において、
前記複数の電極に電圧を印加するための配線が前記ベース基材上に形成され、該配線の両側に沿って、前記複数の電極のうち当該配線によって電圧が印加される電極以外の電極または土手部材が形成され、
前記電極または前記土手部材は、端辺部分が盛り上がって形成され、
前記配線は、前記ベース基材上における形成高さが、前記電極または前記土手部材の当該配線に沿う
端辺部分の前記ベース基材上における形成高さよりも低く、その高さの差が3μm以上あり、
前記電極及び前記土手部材は、前記配線に沿う領域において、当該配線が延びる方向に直交する方向の幅が100μm以上であり、かつ、当該配線に当接せずにその間隔が410μm以下であることを特徴とする。
【0019】
上記のように構成された本発明においては、ベース基材上に形成された第1の電極層を構成する複数の電極に第1及び第2の電圧のいずれか一方が選択的に印加されると、情報表示層を一方の面側から見た場合に、情報表示層の第1の電圧が印加された電極に対向する領域と情報表示層の第2の電圧が印加された電極に対向する領域とで互いに異なる色が表示されるが、この際、複数の電極に電圧を印加するための配線に対向する領域においてもその配線に印加される電圧に応じた色が表示されることになる。そのため、配線の両側に沿って形成された電極に印加される電圧がこの配線に印加される電圧と異なる場合、配線に対向する領域のみがその周辺とは異なる色が表示されてしまうことになる。ところが、配線のベース基材上における形成高さが、電極のその配線に沿う端部のベース基材上における形成高さよりも低く、その高さの差が3μm以上あることにより、配線の両側の電極が土手のように作用し、配線と情報表示層との間隔が、その配線の両側に沿う電極と情報表示層との間隔よりも広くなる。また、電極が配線に沿う領域において、配線が延びる方向に直交する方向における電極の幅が100μm以上であり、かつ、電極が配線に当接せずに電極の間隔が410μm以下であることにより、第1の電極層上に情報表示層が積層される際、配線が形成された領域において情報表示層が撓んで、上述したような配線と情報表示層との間隔が確保できなくなってしまうことが回避される。
【0020】
また、配線の両側に電極が存在しない場合は配線の両側に沿って土手部材が形成されており、この構成において、配線のベース基材上における形成高さが、土手部材のその配線に沿う端部のベース基材上における形成高さよりも低く、その高さの差が3μm以上あることにより、配線の両側の土手部材が土手のように作用し、配線と情報表示層との間隔が、その配線の両側に沿う土手部材と情報表示層との間隔よりも広くなる。また、土手部材が配線に沿う領域において、配線が延びる方向に直交する方向における土手部材の幅が100μm以上であり、かつ、土手部材が配線に当接せずに土手部材の間隔が410μm以下であることにより、第1の電極層上に情報表示層が積層される際、配線が形成された領域において情報表示層が撓んで、上述したような配線と情報表示層との間隔が確保できなくなってしまうことが回避される。
【0021】
このように、配線のベース基材上における形成高さや、電極や土手部材の形成条件を具体的に制限することにより、電極の高集積化が図られた場合においても、電極に電圧を印加するための配線による視認性低下が回避されることになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、配線のベース基材上における形成高さを、電極または土手部材の当該配線に沿う端部のベース基材上における形成高さよりも低くしてその高さの差を3μm以上とし、また、電極及び土手部材の、配線に沿う領域において、当該配線が延びる方向に直交する方向の幅を100μm以上とし、かつ、電極及び土手部材が配線に当接せずにその間隔を410μm以下とするというように、配線のベース基材上における形成高さや、電極や土手部材の形成条件を具体的に制限することにより、電極の高集積化が図られた場合においても、電極に電圧を印加するための配線による視認性低下を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の情報表示装置に用いられる表示装置用基板の実施の一形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したA部拡大図である。
【0026】
本形態における表示装置用電極基板は
図1に示すように、PET等からなるベース基材14の一方の面に、第1の電極層を構成する複数の表示電極11a〜11gと、表示電極11a〜11gに電圧を印加するための配線12a〜12gと、1つの背景電極13とが形成されるとともに、配線12a〜12gを介して表示電極11a〜11gに電圧を印加するコントローラ15が搭載されて構成されている。
【0027】
表示電極11a〜11gは、ベース基材14の一方の面上に、表示される情報に応じたパターンで形成されている。本形態は、この表示電極11a〜11gを用いて数字を表示するものであって、表示電極11a〜11gによって7つのセグメントからなる表示部を構成し、配線12a〜12gを介して、この表示電極11a〜11gに対して選択的に電圧が印加され、“0”〜“9”までの数字を表示することができる。
【0028】
表示電極11a〜11gに電圧を印加するための複数の配線12a〜12gは、その一端がそれぞれ表示電極11a〜11gに接続され、そこから7つのセグメントからなる表示部の外部に引き出され、他端がコントローラ15に接続されている。
【0029】
背景電極13は、表示電極11a〜11g及び配線12a〜12gが形成されていない領域を埋め尽くすようにベース基材14上に形成されており、表示電極11a〜11gの外周及び配線12a〜12gの両側に沿って、これら表示電極11a〜11g及び配線12a〜12gとは絶縁空間を保って形成されている。
【0030】
表示電極11a〜11gと背景電極13とは、ベース基材14上における形成高さが同一となっており、また、配線12a〜12gは、ベース基材14上における形成高さが表示電極11a〜11g及び背景電極13のベース基材14上における形成高さよりもh
1だけ低くなっている。
【0031】
上記のように構成された表示装置用電極基板10においては、ベース基材14上に印刷を施すことによって表示電極11a〜11g、配線12a〜12g及び背景電極13を形成することができる。例えば、ベース基材14上に、銀ペーストやカーボンペースト等の導電ペーストや導電インキを用いてスクリーン印刷によって、表示電極11a〜11g、配線12a〜12g及び背景電極13を印刷することが考えられる。
【0032】
以下に、上記のように構成された表示装置用電極基板1を用いた情報表示装置について説明する。
【0033】
図2は、
図1に示した表示装置用電極基板1を用いた情報表示装置の実施の一形態となる電気泳動ディスプレイの構成を示す図であり、(a)は表示装置用電極基板1が
図1(b)に示した部分に相当する領域の断面図、(b)は(a)に示したA部拡大図である。
【0034】
本形態は
図2に示すように、
図1に示した表示装置用電極基板1の表示電極11a〜11g、配線12a〜12g及び背景電極13が形成された面上に、表示装置用電極基板1の表示電極11a〜11g及び背景電極13に印加された電圧に応じて情報を表示する情報表示層30が積層され、この情報表示層30上に透明導電膜基板20が積層されて構成されている。
【0035】
透明導電膜基板20は、ガラスや透明フィルム等からなる透明基板22の一方の面に第2の電極層となる透明電極(例えば、ITO)21が形成されて構成されており、表示電極11a〜11g及び背景電極13と透明電極21とが対向配置し、これら表示電極11a〜11g及び背景電極13と透明電極21との間に情報表示層30が挟み込まれている。
【0036】
情報表示層30は、隔壁31とシール層34とで囲まれた領域に、帯電性粒子33が分散した隔壁内液体32が収容されて構成されている。そして、これら表示装置用電極基板10、情報表示層30及び透明導電膜基板20は、透明電極21と表示電極11a〜11g及び背景電極13とが、隔壁31とシール層34とで囲まれた領域に収容された隔壁内液体32を介して対向するように積層されている。なお、隔壁31は、底部と、情報表示層30の外周部となる側部と、側部で囲まれた領域を、例えば130μm□で複数の領域に区画するための壁部とからなり、底部とは反対側の面が開口した形状となっている。そして、底部側が表示装置用電極基板10に対向するように積層されており、開口した側にシール層34が積層されている。
【0037】
また、上述したように、表示装置用電極基板10においては、配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さが、表示電極11a〜11g及び背景電極13のベース基材14上における形成高さよりもh
1だけ低くなっているため、表示電極11a〜11g及び背景電極13が情報表示層30の隔壁31の底部に当接しているものの、配線12a〜12gは、背景電極13の配線12a〜12gの両側に沿う部分が土手のように作用して情報表示層30の隔壁31と当接しておらず、それにより、配線12a〜12gと情報表示層30との間隔が、表示電極11a〜11g及び背景電極13と情報表示層30との間隔よりも広くなっている。
【0038】
上記のように構成された情報表示装置1においては、透明電極21がGND電位とされ、背景電極13に配線(不図示)を介してマイナスの電圧が印加されるとともに、表示電極11a〜11gに配線12a〜12gを介してプラスまたはマイナスの電圧が選択的に印加されると、隔壁31及びシール層34で囲まれた領域に収容された隔壁内液体32が誘電性物質からなり、帯電性粒子33がマイナス電位に帯電しているものであることから、帯電性粒子33が隔壁内液体32内をクーロン力で移動し、表示電極11a〜11gのうちマイナスの電圧が印加された表示電極と背景電極13が形成された領域においては帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられる。また、同様に、表示電極11a〜11gのうちプラスの電圧が印加された表示電極が形成された領域においては、帯電性粒子33が表示電極側に引き寄せられる。
【0039】
そして、隔壁内液体32が染料または顔料で着色されており、帯電性粒子33が高屈折率の光散乱成分を含むことにより、この電気泳動ディスプレイを透明導電膜基板20側から見た場合、表示電極11a〜11g側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域、すなわち、表示電極11a〜11gのうちプラスの電圧が印加された表示電極に対向する領域が着色された状態に見え、また、透明電極21側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域、すなわち、表示電極11a〜11gのうちマイナスの電圧が印加された表示電極と背景電極13に対向する領域が白色に見え、それにより、白色の背景の中に着色された所望の情報が表示されることになる。
【0040】
ここで、配線12a〜12gによる情報表示への影響について説明する。
【0041】
まず、配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さが表示電極11a〜11g及び背景電極13のベース基材14上における形成高さよりもh
1だけ低くなっていることによる影響について説明する。
【0042】
上述したように、表示電極11a〜11gに配線12a〜12gを介して選択的に電圧が印加されると、情報表示部30の配線12a〜12gに対向する領域においても、上述したように隔壁内液体32内にて帯電性粒子33がクーロン力で移動し、透明導電膜基板20側から見た場合、配線12a〜12g側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域が着色された状態に見え、また、透明電極21側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域が白色に見え、そのため、表示電極11a〜11gによって表示される情報の視認性が低下してしまう。
【0043】
ところが、本形態においては、配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さが表示電極11a〜11g及び背景電極13のベース基材14上における形成高さよりもh
1だけ低くなっているため、配線12a〜12gの両側の背景電極13が土手のように作用し、配線12a〜12gと情報表示層30との間隔が、表示電極11a〜11gや背景電極13と情報表示層30との間隔よりも広くなり、それにより、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域においては、配線12a〜12gに印加された電圧による影響を受けにくくなる。
【0044】
ここで、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において、配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さを変えて、配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されるかどうかを評価した。
【0045】
図3は、
図2に示した情報表示装置1において配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さが情報表示に及ぼす影響を説明するための図であり、(a)は配線12a〜12gの幅による表示状態の良否を示す図、(b)は配線12a〜12gの幅に対する配線12a〜12gと表示電極11a〜11g及び背景電極13とのベース基材14上における形成高さの差を測定した結果を示す図である。なお、
図3(a)においては、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されなかった場合を“○”で示し、配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示された場合を“×”で示している。
【0046】
図3(a)に示すように、配線12a〜12gの幅が30μmの場合と40μmの場合においては、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されなかった。
【0047】
一方、配線12a〜12gの幅が50μmの場合と60μmの場合においては、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されてしまった。
【0048】
ここで、スクリーン印刷によって表示電極11a〜11g及び配線12a〜12gをベース基材14上に形成した場合、配線12a〜12gにおいてはその幅が狭いことから、ベース基材14上における形成高さはその幅に依存する。
【0049】
そこで、配線12a〜12gの幅に対する配線12a〜12gと表示電極11a〜11g及び背景電極13とのベース基材14上における形成高さの差を測定すると、
図3(b)に示すように、配線12a〜12gの幅が30μmの場合は、その高低差が5μm〜6.5μm程度であり、配線12a〜12gの幅が40μmの場合は、その高低差が3μm〜5μm程度であり、配線12a〜12gの幅が50μmの場合は、その高低差が1.5μm〜3μm程度であり、配線12a〜12gの幅が60μmの場合は、その高低差が0.5μm〜2.5μm程度であった。
【0050】
図3(a)に示した表示状態の良否と、
図3(b)に示した配線12a〜12gの幅に対する配線12a〜12gと表示電極11a〜11g及び背景電極13とのベース基材14上における形成高さの差の測定結果を鑑みると、配線12a〜12gと表示電極11a〜11g及び背景電極13とのベース基材14上における形成高さの差h
1が3μm以上であれば、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されないことになる。
【0051】
なお、
図1に示した表示装置用電極基板10において表示電極11a〜11gや背景電極13を、導電性インキを用いたスクリーン印刷によって形成した場合、表示電極11a〜11gや背景電極13を形成するための版のメッシュ部内において導電性インキが乳剤部の側面に吸着するように作用し、その結果、
図1(c)に示したように、表示電極11a〜11gや背景電極13の端辺部分が盛り上がることになる。そのため、配線12a〜12gと表示電極11a〜11g及び背景電極13とのベース基材14上における形成高さの差h
1は、厳密には、配線12a〜12gと背景電極13の配線12a〜12gに沿う端部とのベース基材14上における形成高さの差となる。
【0052】
図2に示したような情報表示装置1においては、
図1に示した表示装置用電極基板10上に情報表示層30及び透明導電膜基板20を積層してラミネートすることになるが、その際、配線12a〜12gと背景電極13の配線12a〜12gに沿う端部とのベース基材14上における形成高さの差h
1が上述したように3μm以上であっても、ラミネートによる外力によって情報表示層30が撓んで、配線12a〜12gと情報表示層30との間隔が確保できなくなってしまう虞れがある。
【0053】
そこで、
図1(c)に示したような、配線12a〜12gに沿う領域における背景電極13の幅w
1と、背景電極13の配線12a〜12gを介して沿う領域の間隔w
2を変えて、情報表示層30の撓みによって配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されてしまうかどうかを評価した。
【0054】
図4は、
図2に示した情報表示装置1において配線12a〜12gに沿う領域における背景電極13の幅による表示状態の良否を示す図である。
図5は、
図2に示した情報表示装置1において背景電極13の配線12a〜12gを介して沿う領域の間隔による表示状態の良否を示す図である。なお、
図4及び
図5においては、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されなかった場合を“○”で示し、配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示された場合を“×”で示している。
【0055】
本評価においては、配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さを7μmとし、また、配線12a〜12gと背景電極13の配線12a〜12gに沿う端部とのベース基材14上における形成高さの差h
1を6μmとした。
【0056】
図4に示すように、
図2に示した情報表示装置1においては、配線12a〜12gに沿う領域における背景電極13の幅w
1が80μmの場合においては、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されてしまった。なお、配線12a〜12gに沿う領域における背景電極13の幅w
1とは、配線12a〜12gに沿う領域においてその配線12a〜12gが延びる方向に直交する方向における背景電極13の幅である。
【0057】
一方、配線12a〜12gに沿う領域における背景電極13の幅w
1が100μmの場合と200μmの場合においては、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されなかった。
【0058】
また、
図5に示すように、
図2に示した情報表示装置1において背景電極13の配線12a〜12gを介して沿う領域の間隔w
2が350μm〜410μmの場合は、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されなかった。
【0059】
一方、
図2に示した情報表示装置1において背景電極13の配線12a〜12gを介して沿う領域の間隔w
2が420μmの場合は、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域において配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されてしまった。
【0060】
これにより、背景電極13が、配線12a〜12gに沿う領域においてその配線が延びる方向に直交する方向の幅w
1が100μm以上であり、かつ、配線12a〜12gを介して沿う領域の間隔w
2が410μm以下であれば、
図1に示した表示装置用電極基板10上に情報表示層30及び透明導電膜基板20を積層してラミネートする際に、ラミネートによる外力によって情報表示層30が撓んで、配線12a〜12gと情報表示層30との間隔が確保できなくなってしまうことがなくなり、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域に配線12a〜12gに印加された電圧に応じた色が表示されることが回避されることになる。なお、背景電極13の配線12a〜12gを介して沿う領域の間隔は410μm以下であればよいが、背景電極13と配線12a〜12gとが当接せずにこれらの間に絶縁空間を保持しておく必要があることは言うまでもない。
【0061】
以下に、上述した情報表示装置1において
図1に示した7つのセグメントを用いて“0”を表示する場合の動作について説明する。
【0062】
図6は、
図2に示した情報表示装置1にて“0”を表示させる際の動作を説明するための図であり、(a)は部分的な断面を示す図、(b)は表示状態を示す図である。
【0063】
図2に示した情報表示装置1にて“0”を表示する場合、透明電極21をGND電位とし、表示電極11g及び背景電極13にマイナスの電圧を印加するとともに、表示電極11a〜11eにプラスの電圧を印加する。
【0064】
すると、上述したように、情報表示層30の帯電性粒子33が隔壁内液体32内をクーロン力で移動し、
図6(a)に示すように、マイナスの電圧が印加された背景電極13が形成された領域においては帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられる。また、同様に、マイナスの電圧が印加された表示電極11gが形成された領域においても帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられる。
【0065】
一方、プラスの電圧が印加された表示電極11a〜11eが形成された領域においては、帯電性粒子33が表示電極11a〜11e側に引き寄せられる。
【0066】
それにより、情報表示装置1を透明導電膜基板20側から見た場合、表示電極11a〜11e側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域、すなわち、表示電極11a〜11eに対向する領域が着色された状態に見え、また、透明電極21側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域、すなわち、表示電極11g及び背景電極13に対向する領域が白色に見え、それにより、
図6(b)に示すように、白色の背景3の中に、着色された状態となった情報2となる“0”が見えるようになる。
【0067】
ここで、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域においては、上述したように配線12a〜12gに印加された電圧の影響を受けにくいため、配線12a〜12gに印加された電圧によらずに、帯電性粒子33が隔壁内液体32内に分散した状態となっており、それにより、情報表示層30の配線12a〜12gに対向する領域においては、情報表示装置1を透明導電膜基板20側から見た場合、白色と着色された色との中間色に見えることになる。このように配線12a〜12gに対向する領域が白色と着色された色との中間色に見える場合、白色に見える領域間に着色された色が見えたり、着色した色に見える領域間に白色が見えたりすることがなくなり、配線12a〜12gによって視認性が低下してしまうことが回避されることになる。
【0068】
このように本形態においては、配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さを、背景電極13の配線12a〜12gに沿う端部のベース基材14上における形成高さよりも低くし、さらに、その具体的な数値として3μm以上低くし、また、背景電極13が配線12a〜12gに沿う領域において、その配線が延びる方向に直交する方向の背景電極13の幅を100μm以上とし、かつ、背景電極13が配線12a〜12gに当接せずにその間隔を410μm以下とすることにより、電極の高集積化が図られた場合においても、表示電極11a〜11gに電圧を印加するための配線12a〜12gによる視認性低下を回避することができる。
【0069】
なお、本形態においては、配線12a〜12gの両側に背景電極13が沿うように形成されている場合を例に挙げて説明したが、背景電極13を有さない構成等において、隣接する2つの表示電極間に、他の表示電極に接続された配線が形成された構成においても本発明を適用することができる。そのような構成においては、情報表示層の隣接する2つの表示電極に対向する領域にて同一の色を表示し、かつ、その2つの表示電極間に形成された配線に接続された表示電極にてそれとは異なる色を表示する場合、2つの表示電極間にてこの2つの表示電極に対向する領域にて表示される色とは異なる色のラインが表示されてしまうことになる。そこで、配線のベース基材上における形成高さと表示電極の形成高さの差を上述したようなものとするとともに、表示電極の幅や、配線を介した表示電極の間隔を上述したようなものとすることにより、情報表示層の配線に対向する領域において、配線に印加される電圧の影響を受けにくくなり、視認性が低下してしまうことを回避することができる。
【0070】
また、本形態においては、表示電極11a〜11gに電圧を印加するための配線12a〜12gのベース基材14上における形成高さや、配線12a〜12gに沿う領域における背景電極13の幅及び間隔について規定しているが、背景電極13に電圧を印加するための配線について、上記同様の構成としてもよい。すなわち、隣接する表示電極11a〜11g間に、背景電極13に電圧を印加するための配線が形成された構成において、この配線のベース基材上における形成高さと表示電極の形成高さとの差が上述したようなものであるとともに、表示電極の幅や、配線を介した表示電極の間隔が上述したようなものであれば、情報表示層の配線に対向する領域においては、配線に印加される電圧の影響を受けにくくなり、視認性が低下してしまうことを回避することができる。
【0071】
また、背景電極が設けられていない構成において、表示電極が島状に孤立して形成されたものにおいては、配線の両側に沿うように、ダミー電極や樹脂等からなる電圧が印加されない土手部材を、表示電極と同一の高さに形成しておき、配線のベース基材上における形成高さとこの土手部材の形成高さとの差を上述したようなものとするとともに、土手部材の幅や、配線を介した土手部材の間隔を上述したようなものとすることにより、情報表示層の配線に対向する領域においては、配線に印加される電圧の影響を受けにくくなり、視認性が低下してしまうことを回避することができる。
【0072】
また、本形態においては、表示電極11a〜11gに印加された電圧に応じて白色と着色された色とが表示されるものを例に挙げて説明したが、表示電極11a〜11gに印加された電圧に応じて表示される色は、互いに識別可能な2色であればこれらの色に限らない。
【0073】
また、本形態においては、情報表示層30として、隔壁内液体32に分散した帯電性粒子33が、表示電極11a〜11g及び背景電極13に対する電圧印加によって表示電極11a〜11iや背景電極13側または透明電極21側に移動して表示が切り替わる垂直型電気泳動方式の薄型表示部材を例に挙げて説明したが、情報表示層30としては、表示電極によって電圧が印加されることにより情報を表示する情報表示層を有するものであれば、コレステリック液晶や電子粉粒タイプのもの等、適宜適用することができる。