(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
送電系統や配電系統などの電力系統には、通常、電気回路を開閉することにより電力系統や電力機器を保護する装置、いわゆる開閉装置(開閉保護装置とも称される)が設けられている。このような開閉装置には、例えば、電力系統の回路構成を変更する場合に加えて、電力系統に異常が生じた場合にも電気回路を開閉して当該回路を流れる電流を遮断可能な高圧交流用遮断器がある。
【0003】
このような開閉装置には、電気回路を閉路状態から開路状態にして当該回路を流れる電流を遮断する動作(以下、単に「遮断動作」と記す)を行うときに、電気回路を構成する電気接点の間には、電弧すなわちアーク放電(以下、単に「アーク」と記す)が生じる。このため、電気回路の開閉は、電気絶縁性及び消弧性が比較的優れた不活性ガス(以下、絶縁ガスと記す)中において行われる。このような絶縁ガスには、例えば、六フッ化硫黄がある。
【0004】
このような絶縁ガス中において電気回路の開閉を行う開閉装置(以下、ガス絶縁開閉装置と記す)は、通常、電気回路を構成する電気接点を収容する空間(以下、単に「収容空間」と記す)が内部に形成された容器(以下、ガス絶縁開閉装置用容器と記す)を有している。ガス絶縁開閉装置用容器は、その収容空間に比較的高い圧力(例えば、0.6MPa)で絶縁ガスが充填、封入されている。ガス絶縁開閉装置用容器は、電気的に接地(アース)されている。
【0005】
このようなガス絶縁開閉装置においては、地絡事故等により、電気接点と容器との間や電気接点間に予測されないアークが生じた場合、ガス絶縁開閉装置用容器内の絶縁ガスが高温となり膨張して、当該容器の内側にある収容空間から高い圧力が作用する虞がある。このため、ガス絶縁開閉装置用容器には、高い絶縁ガスの圧力に耐えることが求められており、当該圧力により、仮に、容器に亀裂が生じた場合であっても、当該容器が破裂しないことが求められている。
【0006】
このため、ガス絶縁開閉装置用容器を、複数の筒状の部材を溶接により接合して製作する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような板金溶接により製作されるガス絶縁開閉装置用容器は、当該容器の内側から過大なガス圧力が作用して、亀裂が生じた場合であっても、当該亀裂から絶縁ガスが外気に流出するため、鋳造により製作された容器に比べて、脆性破壊により破裂することが抑制される。
【0007】
一方、ガス絶縁開閉装置用容器は、鋳造により製作される場合もある(例えば、特許文献2参照)。鋳造により同一形状のガス絶縁開閉装置用容器を大量に製造することで、安価な容器を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0018】
〔第1の実施形態〕
(ガス絶縁開閉装置の構成)
まず、本実施形態のガス絶縁開閉装置の概略構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態のガス絶縁開閉装置の構成を示す縦断面図であり、容器本体に、その破片の飛散を防止する飛散防止用部材が装着される前の状態を示している。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のガス絶縁開閉装置1は、電力系統の電気回路を構成する電気接点10,15,20,25と、これら電気接点10,15,20,25を収容する空間(以下、単に「収容空間」と記す)33が内側に形成された部材(以下、容器本体と記す)31とを有している。容器本体31は、鋳造により製作された金属製の部材であり、いわゆる鋳物である。容器本体31は、例えば、鋳鉄製とすることができる。
【0020】
一方、容器本体31の外側には、容器本体31が脆性破壊した場合に、容器本体31の破片が外側に飛散することを防止するための部材(以下、飛散防止用部材と記す)50が設けられている。なお、
図1においては、理解を容易にするために、飛散防止用部材50の外面を二点鎖線で示している。つまり、ガス絶縁開閉装置用容器30は、内側を構成する容器本体31と、容器本体31の外側を構成する飛散防止用部材50とを有している。飛散防止用部材50の詳細な構成については、後述する。
【0021】
電気回路を構成する電気接点には、電気回路(主回路)が閉じているときに電流が流れる接触子(以下、「主接触子」と記す)10,20に加えて、主接触子10,20にアークが生じること(いわゆる「発弧」)を避けるため、電気回路(主回路)を流れる電流を遮断する動作(以下、単に「遮断動作」と記す)に伴って生じるアークを誘引する接触子(以下、「アーク接触子」と記す)15,25が、設けられている。
【0022】
主接触子10,20には、容器本体31に対して固定された主接触子(以下、固定主接触子と記す)10と、主回路が閉じて電流が流れる位置、いわゆる投入位置において固定主接触子10と接し、且つ固定主接触子10に対して移動可能に構成された主接触子(以下、可動主接触子と記す)20がある。
【0023】
同様に、アーク接触子15,25には、容器本体31に対して固定されたアーク接触子(以下、固定アーク接触子と記す)15と、投入位置において、固定アーク接触子15と接し、且つ固定アーク接触子15に対して移動可能に構成されたアーク接触子(以下、可動アーク接触子と記す)25がある。
【0024】
可動主接触子20および可動アーク接触子25は、遮断動作において、これらを操作するための操作機構(図示せず)により駆動されて、それぞれ、固定主接触子10および固定アーク接触子15から離間する方向に移動可能に構成されている。操作機構(図示せず)については、従来技術が用いられるため、説明を省略する。
【0025】
なお、以下の説明において、可動主接触子20及び可動アーク接触子25が移動する方向を「軸方向」と記す。軸方向のうち可動主接触子20及び可動アーク接触子25が、固定主接触子10及び固定アーク接触子15に対して離間する向きを「軸方向遮断側」と記して図に矢印A1で示す。一方、軸方向のうち可動主接触子20及び可動アーク接触子25が固定主接触子10及び固定アーク接触子15に対して近接する向きを「軸方向投入側」と記して図に矢印A2で示す。
【0026】
また、軸方向に移動可能な、可動接触子(可動主接触子20、可動アーク接触子25)と、これら可動接触子20、25に結合されている部材が、軸方向においてとり得る位置のうち、可動主接触子20が固定主接触子10に接する位置であって、可動アーク接触子25が固定アーク接触子15に接しており、これらが構成する主回路に所望の電流が流れる所定の位置を、以下に「投入位置」と記す。すなわち、投入位置は、主回路が閉路状態となる位置である。
【0027】
一方、可動主接触子20と固定主接触子10が接しておらず、主回路に電流が流れない位置を、以下に「遮断位置」と記す。すなわち、遮断位置は、主回路が開路状態となる位置である。
図1は、可動接触子20,25(可動主接触子20、可動アーク接触子25)と、これら可動接触子20,25に結合されている部材が、遮断位置に位置している状態を示している。なお、遮断位置のうち、可動接触子20,25が、可能な限り軸方向開放側に移動しており、固定接触子10,15と可動接触子20,25との間で電流が完全に遮断される位置を、特に「遮断完了位置」と記す。
【0028】
本実施形態において、固定アーク接触子15は、略棒状をなしており、軸方向に延びている。固定アーク接触子15の軸心を、一点鎖線Aで示す。固定主接触子10は、固定アーク接触子15と同軸に設けられており、当該固定アーク接触子15の径方向外側を囲う環状をなしている。
【0029】
また、収容空間33には、固定接触子10,15と同軸に設けられており、且つ略円筒状をなしており、且つ固定主接触子10から軸方向投入側(図に矢印A2で示す)に延びて絶縁ガスを軸方向投入側に導いて冷却する部材(以下、排気冷却筒と記す)12が配設されている。固定主接触子10は、排気冷却筒12の軸方向遮断側に結合されている。一方、固定アーク接触子15は、径方向に延びている導体(以下、径方向延伸導体と記す)17を介して、排気冷却筒12に結合されている。
【0030】
一方、可動アーク接触子25は、固定アーク接触子15と同軸に設けられており、円環状をなしている。可動アーク接触子25が、軸方向投入側に移動すると、可動アーク接触子25の径方向内側に固定アーク接触子15が挿入されて接触する。
【0031】
また、可動主接触子20は、可動アーク接触子25と同軸に設けられており、円環状をなしている。可動主接触子20は、可動アーク接触子25及び絶縁ノズル部材22の径方向外側を囲うように構成されている。可動主接触子20は、軸方向投入側に移動すると、固定主接触子10と当接する。このようにして可動主接触子20が投入位置に位置すると、可動主接触子20及び固定主接触子10を含む電気回路(主回路)が閉じられて、当該主回路に所望の電流を流すことが可能となる。
【0032】
また、ガス絶縁開閉装置1は、遮断動作中において、可動アーク接触子25と固定アーク接触子15との間に生じるアークに対して、絶縁ガスを吹き付ける部材(以下、絶縁ノズル部材と記す)22が設けられている。絶縁ノズル部材22は、電気絶縁体で構成されている。絶縁ノズル部材22は、固定接触子10,15及び可動接触子20,25と同軸に設けられている。
【0033】
絶縁ノズル部材22は、軸方向遮断側の端部が、可動主接触子20の径方向内側に結合されており、可動アーク接触子25に対して径方向外側に所定の間隔をあけて配置されている。絶縁ノズル部材22の軸方向投入側の端部(以下、先端部と記す)22aは、固定アーク接触子15に向けて延びており、固定アーク接触子15に向かうに従って先細となるように構成されている。
【0034】
絶縁ノズル部材22の内部には、固定アーク接触子15と可動アーク接触子25との間に生じるアークを通し、且つ絶縁ガスを貫流させるための通路(以下、ノズル通路と記す)23が形成されている。遮断動作において、ノズル通路23には、後述するパッファ室からの絶縁ガスが流入する。
【0035】
また、ガス絶縁開閉装置1は、可動アーク接触子25から軸方向遮断側に延びており、可動アーク接触子25を操作する部材(以下、操作ロッドと記す)27が、設けられている。操作ロッド27は、軸方向投入側において略円筒状をなしている部分(以下、中空部と記す)27aと、軸方向遮断側において略円柱状をなしている部分(以下、中実部と記す)27cとを有している。可動アーク接触子25は、中空部27aの軸方向投入側に結合されている。なお、中実部27cのうち、軸方向遮断側は、電気絶縁体として構成されている。操作ロッド27は、図示しない操作機構により駆動されて、可動アーク接触子25と共に軸方向に移動する。
【0036】
ガス絶縁開閉装置1は、操作ロッド27の径方向外側に設けられており、当該操作ロッド27を軸方向に移動可能に支持する部材(以下、支持部材と記す)21を有している。支持部材21は、略円筒状をなしており、操作ロッド27と同軸に設けられている。なお、支持部材21のうち、軸方向遮断側の部分21cは、電気絶縁体で構成されており、容器本体31に結合されている。一方、支持部材21のうち、軸方向投入側の部分21aは、導体で構成されており、後述する主回路導体14が結合される。
【0037】
また、ガス絶縁開閉装置1は、電気回路(主回路)を構成する導体(以下、主回路導体と記す)14,24を有している。主回路が開かれた状態、すなわち
図1に示す遮断位置において、主回路導体14は、収容空間33内を、排気冷却筒12に向けて延びており、固定接触子10,15と電気的に接続されている。本実施形態において、主回路導体14は、排気冷却筒12に接続されており、当該排気冷却筒12を介して固定主接触子10と電気的に接続されている。また、主回路導体14は、排気冷却筒12及び径方向延伸導体17を介して固定アーク接触子15に電気的に接続されている。
【0038】
一方、主回路導体24は、遮断位置において、収容空間33内を、支持部材21に向けて延びており、可動接触子20,25と電気的に接続されている。本実施形態において、主回路導体24は、支持部材21の導体部21aに接続されている。すなわち、主回路導体24は、導体部21a、操作ロッド27の中空部27aを介して可動アーク接触子25と電気的に接続されている。また、主回路導体24は、導体部21aと、後述するピストン部材28a及びシリンダ部材28cを介して可動主接触子20と電気的に接続される。
【0039】
また、ガス絶縁開閉装置1は、遮断動作中において、絶縁ノズル部材22のノズル通路23に絶縁ガスの流れを形成するための機構(以下、パッファ機構と記す)28を備えている。パッファ機構28は、操作ロッド27の中空部27aから径方向外側に所定の間隔をあけて設けられており、略筒状をなしている部材(以下、シリンダ部材と記す)28cを有している。シリンダ部材28cのうち軸方向投入側には、可動主接触子20と絶縁ノズル部材22が結合されている。シリンダ部材28cは、操作ロッド27に結合されており、当該操作ロッド27と一体に軸方向に移動する。シリンダ部材28cは、操作ロッド27を介して、図示しない操作機構により駆動されて、可動主接触子20及び絶縁ノズル部材22と共に、軸方向に移動する。
【0040】
また、パッファ機構28は、径方向においてシリンダ部材28cと中空部27aとの間に設けられており、ノズル通路23に連通する空間を画定する部材(以下、ピストン部材と記す)28aを有している。ピストン部材28aは、軸方向において絶縁ノズル部材22と対向して設けられている。ピストン部材28a、シリンダ部材28c、操作ロッド27及び絶縁ノズル部材22により囲まれており、ノズル通路23に連通する空間を、以下に「パッファ室」と記して符号29で示す。
【0041】
以上のように構成されたガス絶縁開閉装置1は、容器本体31の収容空間33に絶縁ガスが充填されて密閉される。絶縁ガスには、例えば、消弧性及び電気絶縁性が比較的高い不活性ガスである六フッ化硫黄が用いられる。絶縁ガスは、所定の圧力(例えば、6気圧)で容器本体31内に充填される。ガス絶縁開閉装置1は、六フッ化硫黄等の不活性ガスの絶縁耐力を利用し、高圧の絶縁ガスを、固定アーク接触子15と可動アーク接触子25との間に生じるアークに吹き付けて消弧する、いわゆる「ガス遮断器」として構成されている。ガス絶縁開閉装置1の動作については、説明を省略する。
【0042】
ガス絶縁開閉装置1においては、何らかの異常な事象により地絡事故等が生じて、例えば、可動主接触子20やシリンダ部材28cと、容器本体31との間にアークが生じることがある。容器本体31内において予測されないアークが生じると、当該アークの発生により絶縁ガスが高温となり、膨張して収容空間33の圧力が急激に上昇する場合がある。鋳造により製作された容器本体31は、収容空間33の圧力上昇に耐えられなくなると脆性破壊が生じる。容器本体31が脆性破壊により破裂すると、その破片が容器本体31の外側に飛散する虞がある。
【0043】
(ガス絶縁開閉装置用容器の詳細な構成)
本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器30は、鋳造により製作された容器本体31に加えて、容器本体31の破片が外側に飛散することを防止する飛散防止用部材50が設けられている。以下に、ガス絶縁開閉装置用容器30と、その飛散防止用部材50の詳細な構成について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器の縦断面図であり、飛散防止用部材が容器本体に装着された態様を示す図である。
図3は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器を構成する飛散防止用部材の部分断面図であり、飛散防止用部材に含まれる各層を説明する図である。
【0044】
図2に示すように、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器30において、容器本体31の外側には、複数の飛散防止用部材50,50B,50C,50D,50Eが設けられている。飛散防止用部材50,50B,50C,50D,50Eは、容器本体31の各部にそれぞれ対応して構成されている。飛散防止用部材50,50B,50C,50D,50Eは、それぞれ、容器本体31の対応する部分の外側に巻き付けられて、容器本体31に装着される。各飛散防止用部材50,50B,50C,50D,50Eは、幾何学的寸法以外は、実質的に同一の構造をなしている。以下の説明においては、飛散防止用部材50について、その構造の詳細を説明する。
【0045】
図3に示すように、本実施形態の飛散防止用部材50は、複数の層から構成されており、本実施形態においては、容器本体31側すなわち内側から、弾性層53、化学繊維層55及び保護層57を有している。
【0046】
化学繊維層55は、化学繊維を含む層であり、より具体的には、合成繊維の織物、又は合成繊維の不織布として構成されている。化学繊維層55を構成する合成繊維には、例えば、アラミド繊維を用いることができる。アラミド繊維は、比較的、軽量であり、強度が高く、耐熱性及び耐衝撃性にも優れている。なお、化学繊維層55には、化学繊維以外の材料が含まれていても良い。例えば、化学繊維を強化材として含み、母材(マトリックス)として熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂を含むものとしても良い。
【0047】
飛散防止用部材50のうち、化学繊維層55より内側には、弾性層53が設けられている。弾性層53は、常温で弾性変形可能な高分子化合物、いわゆるエラストマーで構成されている。エラストマーには、例えば、ニトリルゴム等の合成ゴムや、フッ素樹脂(フッ素ゴム)等の合成樹脂等を用いることができる。
【0048】
本実施形態において、弾性層53は、飛散防止用部材50のうち最も内側を構成しており、容器本体31に接している。弾性層53は、弾性変形することにより、容器本体31の熱による外側への変形を吸収する。これにより、熱による容器本体31の変形が、化学繊維層55に伝わることを抑制することができる。容器本体31の変形に応じて化学繊維層55が伸縮し、劣化することを抑制することができる。
【0049】
一方、化学繊維層55より外側には、保護層57が設けられている。保護層57は、飛散防止用部材50のうち最も外側の層であり、ガス絶縁開閉装置用容器30の外装をなしている。保護層57は、合成樹脂で構成されている。合成樹脂には、例えば、ポリエチレンやポリエステルを用いることができる。保護層57は、外部からの機械的な接触や汚損から化学繊維層55を保護することが可能である。なお、保護層57は、化学繊維層55の外側に、シート状の合成樹脂を貼り付けるものとしても良い。
【0050】
以上に説明した弾性層53、化学繊維層55及び保護層57を有する飛散防止用部材50は、例えば、長手方向及び幅方向が矩形をなしているシート状をなしており、容器本体31の所定の部位に巻き付けられて装着される。
【0051】
なお、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器30は、
図2に示すように、収容空間33を密閉するための部材(図示せず)を結合するためのフランジ81,82,83,84が、容器本体31の端部に形成されている。フランジ81,82,83,84は、鋳造により容器本体31と一体に成形される。また、ガス絶縁開閉装置用容器30は、容器本体31を、地面に対して所定の位置に支持するための支持脚88が、当該容器本体31に結合されている。支持脚88は、鋳造により容器本体31と一体に成形されるものとしても良い。また、容器本体31が鋳造により製作された後に、別途製作された支持脚を、容器本体31に結合するものとしても良い。
【0052】
(ガス絶縁開閉装置用容器の製造方法)
次に、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器30の製造方法について、
図2〜
図5を用いて説明する。
図4は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器を構成する飛散防止用部材の部分断面図であり、飛散防止用部材の端部の接合を説明する図である。
図5は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器のうち飛散防止用部材の端部周辺の外観図である。
【0053】
(1.容器本体の鋳造)
まず、容器本体31を鋳造により製作する。容器本体31には、鋳造により、収容空間33が内側に形成される。砂型等の鋳型に金属を流し込み、冷却することにより、鋳物として容器本体31を得ることができる。なお、具体的な、鋳造手法については、従来の技術であるため、説明を省略する。
【0054】
(2.飛散防止用部材の巻き付け)
次に、
図4に示すように、容器本体31の外側に、シート状の飛散防止用部材50を巻き付けて、その巻き付けの方向(以下、単に「巻き付け方向」と記して図に矢印Cで示す)の両側にある端部、すなわち第1端部61と、第2端部62とを重ね合わせる。
【0055】
ここで、本実施形態の飛散防止用部材50の第1端部61及び第2端部62の具体的な形状について説明する。第1端部61は、飛散防止用部材50の長手方向、すなわち飛散防止用部材50が容器本体31に巻き付けられた状態において、その巻き付け方向Cに突出する突出部63を複数有している。突出部63は、巻き付け方向Cに直交する方向、詳細には、飛散防止用部材50の幅方向(図に矢印Wで示す)に所定の間隔をあけて複数配列されている。同様に、第2端部62も、飛散防止用部材50の長手方向すなわち巻き付け方向Cに突出する突出部64を複数有している。突出部64は、巻き付け方向Cに直交する幅方向Wに所定の間隔をあけて複数配列されている。このような第1端部61及び第2端部62の形状は、容器本体31に巻き付けられるより前に、飛散防止用部材50に形成されている。
【0056】
容器本体31に飛散防止用部材50を巻き付けて、第1端部61と第2端部62を重ね合わせる際、
図4及び
図5に示すように、第1端部61の突出部63を、第2端部62の隣り合う突出部64の間に差し込むと共に、第2端部62の突出部64を、第1端部61の隣り合う突出部63の間に差し込む。これにより、飛散防止用部材50は、
図5に示すように、その幅方向Wにおいて、第1端部61の突出部63と第2端部62の突出部64が、交互に配列されることになる。
【0057】
(3.飛散防止用部材の結合)
そして、飛散防止用部材50の第1端部61と第2端部62とを結合する。本実施形態においては、第1端部61と第2端部62とを熱硬化性樹脂により接着する。熱硬化性樹脂には、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等を用いることができる。
【0058】
具体的には、飛散防止用部材50のうち、第1端部61の突出部63及び第2端部62の突出部64を含む領域に熱硬化性樹脂を塗布する。なお、熱硬化性樹脂が塗布される領域は、第1端部61及び第2端部62に限定されるものではない。例えば、飛散防止用部材50の内側すなわち容器本体31側の全体に、熱硬化性樹脂を塗布するものとしても良い。
【0059】
そして、塗布された熱硬化性樹脂を飛散防止用部材50の外側から加熱する。熱硬化性樹脂を加熱する手法には、例えば、ドライヤーやバーナーで加熱する手法がある。なお、化学反応により熱硬化性樹脂を加熱するものとしても良い。熱硬化性樹脂の加熱により、少なくとも第1端部61と第2端部62とを接着する。なお、接着以外の手法については、後述する。本実施形態においては、熱硬化性樹脂の硬化により、飛散防止用部材50の第1端部61と第2端部62は、結合される。
【0060】
以上のようにして飛散防止用部材50は、容器本体31に装着される。他の飛散防止用部材50B,50C,50D,50Eについても、上述した(2.飛散防止用部材の巻き付け)工程と、(3.飛散防止用部材の結合)工程とを行うことにより、容器本体31の外側の大部分を、複数の飛散防止用部材50,50B,50C,50D,50Eにより覆うことが可能である。
【0061】
このように構成されたガス絶縁開閉装置用容器30は、鋳造により製作された容器本体31に脆性破壊が生じて破裂した場合であっても、飛散防止用部材50のうち特に化学繊維層55により、容器本体31の破片が外側に飛散することを防止することができる。本実施形態のガス絶縁開閉装置1は、変電所や開閉所等、作業員の出入りがある施設に設置される電力機器として適している。
【0062】
なお、本実施形態において、飛散防止用部材50〜50Eは、弾性層53、化学繊維層55及び保護層57を有するものとしたが、本発明に係る飛散防止用部材は、この態様に限定されるものではない。飛散防止用部材は、化学繊維層55を有していれば良く、例えば、弾性層53や保護層57を省略することも可能である。また、本発明に係る飛散防止用部材は、上述した、弾性層53、化学繊維層55及び保護層57以外の層を有するものとしても良い。
【0063】
また、本実施形態においては、容器本体31を鋳造により製作した後、飛散防止用部材を装着するものとしたが、本発明に係るガス絶縁開閉装置用容器を実現する手法は、この態様に限定されるものではない。例えば、変電所等に既に設置されたガス絶縁開閉装置の容器(すなわち容器本体)の外側に、上述した化学繊維層55を有する飛散防止用部材を装着することにより、本発明に係るガス絶縁開閉装置を実現することも好適である。
【0064】
また、本実施形態において、飛散防止用部材50は、第1端部61と第2端部62が、熱硬化性樹脂の硬化により接着されることにより、結合されるものとしたが、本発明に係る飛散防止用部材の結合手法は、この態様に限定されるものではなく、以下に、その一例について説明する。
【0065】
〔第2の実施形態〕
第2実施形態のガス絶縁開閉装置用容器の構成について、
図2、
図3、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器を構成する飛散防止用部材の部分断面図であり、飛散防止用部材の端部の接合を説明する図である。
図7は、本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器のうち飛散防止用部材の端部周辺の外観図である。
【0066】
本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器は、結合用の部材である鋲により、飛散防止用部材の第1端部と第2端部を結合する点で、第1の実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施形態のガス絶縁開閉装置用容器30Cは、
図6に示すように、鋳造により製作された容器本体31の外側に、シート状の飛散防止用部材52を巻き付け、その巻き付け方向(図に矢印Cで示す)の両側にある第1端部61Cと、第2端部62Cとを重ね合わせる。
【0068】
本実施形態の飛散防止用部材52は、第1実施形態と同様に、
図3に示す弾性層53、化学繊維層55及び保護層57を有している。なお、本実施形態においては、第1端部61Cおよび第2端部62Cには、上述した「突出部」は、形成されておらず、それぞれの縁は、幅方向Wに直線状に延びている(
図7参照)。
【0069】
そして、飛散防止用部材52の第1端部61Cと第2端部62Cとを、これらを結合させる鋲(以下、結合鋲と記す)により結合する。本実施形態において、結合鋲には、リベット70が用いられている。リベット70は、飛散防止用部材52の幅方向Wに複数配列される。
【0070】
リベット70は、頭部71と胴部73とを有している。第1端部61Cと第2端部62Cとを重ね合わせる際に、頭部71を、飛散防止用部材52と容器本体31との間に配置し、胴部73を第1端部61Cと第2端部62Cの双方を貫通させる。本実施形態において、第1端部61Cと容器本体31との間に頭部71が配置され、胴部73のうち一部は、第2端部62Cより外側に突出している。
【0071】
そして、胴部73のうち飛散防止用部材52(第2端部62C)より外側に突出している部分75を、図に二点鎖線Dで示すように、塑性変形させることにより、第1端部61Cと第2端部62Cとを結合させる。
【0072】
以上のようにして飛散防止用部材52は、容器本体31に装着される。
図2に示す他の飛散防止用部材50,50B,50C,50D,50Eについても、同様に結合手法により容器本体31に装着することができ、容器本体31の外側の大部分を、複数の飛散防止用部材50,50B,50C,50D,50Eにより覆うことが可能である。
【0073】
このように構成されたガス絶縁開閉装置用容器30Cにおいても、鋳造により製作された容器本体31に脆性破壊が生じて破裂した場合に、飛散防止用部材50のうち特に化学繊維層により、容器本体31の破片が外側に飛散することを防止することができる。リベット70(結合鋲)の一部を塑性変形させるだけで、飛散防止用部材50Cを容器本体31に装着することができる。本実施形態は、変電所等に既に設置されたガス絶縁開閉装置用容器の外側に、飛散防止用部材を装着する場合に好適である。
【0074】
なお、本実施形態において、飛散防止用部材52の第1端部61Cと第2端部62Cは、頭部71と胴部73を有するリベット70により結合されるものとしたが、第1端部61Cと第2端部62Cとを結合させる結合鋲の態様は、これに限定されるものではない。本発明に係る結合鋲には、割鋲等の様々な鋲を用いることができる。
【0075】
〔他の実施形態〕
上述した各実施形態において、飛散防止用部材50,52は、化学繊維層55に加えて、その内側に弾性層53を、外側に保護層57を有しているものとしたが、本発明に係る飛散防止用部材は、この態様に限定されるものではない。化学繊維を含んで構成された化学繊維層を、少なくとも一つ有していれば良い。例えば、弾性層53、化学繊維層55及び保護層57は、それぞれ、複数の層で構成されているものとしても良い。
【0076】
また、上述した各実施形態において、ガス絶縁開閉装置1は、高圧の絶縁ガスを、固定アーク接触子15と可動アーク接触子25との間に生じるアークに吹き付けて消弧するガス遮断器として構成されているものとしたが、本発明に係るガス絶縁開閉装置は、ガス遮断器に限定されるものではない。本発明は、電気接点を収容する収容空間が内側に形成された容器本体を有し、当該収容空間に、絶縁ガスが充填されるものであれば、様々な開閉装置に適用することができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。