特許第6352685号(P6352685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352685ゴム組成物、空気入りタイヤ及び該ゴム組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352685
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、空気入りタイヤ及び該ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20180625BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20180625BHJP
   C08L 63/08 20060101ALI20180625BHJP
   C08C 19/06 20060101ALI20180625BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08F236/04
   C08L63/08
   C08C19/06
   B60C1/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-115202(P2014-115202)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-229697(P2015-229697A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 顕哉
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和加奈
(72)【発明者】
【氏名】三木 みよ
(72)【発明者】
【氏名】今福 理沙
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−103948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
B60C 1/00
C08C 19/06
C08F 236/04
C08L 63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIを共重合して得られる共重合体を含有するゴム組成物であって、
前記ゴム組成物中に形成される前記共役ジエン系モノマーI由来のポリマー相(1)と前記共役ジエン系モノマーII由来のポリマー相(2)との界面の平均長さがゴム組成物の断面1μm当たり3μm以上、又は前記ポリマー相(1)と前記ポリマー相(2)は相容であり、
前記共重合体中における前記共役ジエン系モノマーI及び前記共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量がそれぞれ90モル%以上であり、
前記共重合体が補強充填剤と化学的に相互作用を有する官能基を付与することによって変性された変性共重合体であり、
前記共役ジエン系モノマーI及び前記共役ジエン系モノマーIIが、イソプレン及びブタジエンであるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分100質量%中、前記共役ジエン系モノマーIに由来する構成単位の含有量及び前記共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位の含有量をそれぞれ20〜80質量%ずつ、かつ前記共役ジエン系モノマーIに由来する構成単位及び前記共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位の合計含有量を40質量%以上含有し、ゴム成分100質量部に対して、補強充填剤を10〜150質量部含有する請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記共重合体100質量%中、前記共役ジエン系モノマーIに由来する構成単位の含有量が40〜60質量%、前記共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位の含有量が40〜60質量%である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記共重合体のガラス転移温度が−100〜−40℃、重量平均分子量が150,000〜2,000,000である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記共重合体が遷移金属含有化合物による配位アニオン重合によって得られる請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100質量%中、前記共重合体を5質量%以上含有する請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
【請求項8】
共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIを配位アニオン重合により共重合する工程と、前記工程により得られた共重合体を混練する工程とを含む請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びこれを用いて作製した空気入りタイヤ、並びに該ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の低燃費化の要請に伴い、タイヤの転がり抵抗を低減して、発熱を抑えたタイヤの開発が進められており、特にタイヤにおける占有比率の高いトレッドに対して、優れた低燃費性が要求されている。タイヤ用ゴム組成物の低燃費性の改善の方法として、従来から補強用充填剤として使用されているカーボンブラックをシリカに置換することや、補強用充填剤を減量すること、粒径の大きい補強用充填剤を用いることなどが知られているが、これらの方法では破壊性能や耐摩耗性が大きく低下する問題があり、補強用充填剤を減量すると更にウェットグリップ性能も低下するため、低燃費性と、破壊性能や耐摩耗性等の耐久性、ウェットグリップ性能とを両立することは一般的に背反性能となり、困難である。
【0003】
シランカップリング剤やシリカと相互作用を持つ官能基を有するシリカ用変性ポリマーを用いて、シリカの分散性を向上させたり、ゴムとシリカを化学的に結合することにより、低燃費性、破壊性能、耐摩耗性、ウェットグリップ性能などの性能の改善が図られているが、改良要求は大きく、加工性が低下する問題も生じるため、これらの性能バランスの更なる改善が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、良好な加工性を有し、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能及び耐摩耗性をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ、並びに該ゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIをそれぞれ単独重合及び/又は共重合して得られる重合体を含有するゴム組成物であって、前記ゴム組成物中に形成される前記モノマーI由来のポリマー相(1)と前記モノマーII由来のポリマー相(2)との界面の平均長さがゴム組成物の断面1μm当たり3μm以上、又は前記ポリマー相(1)と(2)は相容であり、前記重合体中における前記共役ジエン系モノマーI及びモノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量がそれぞれ90モル%以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0006】
ゴム成分100質量%中、前記モノマーIに由来する構成単位の含有量及び前記モノマーIIに由来する構成単位の含有量をそれぞれ20〜80質量%ずつ、かつ前記モノマーIに由来する構成単位及びモノマーIIに由来する構成単位の合計含有量を40質量%以上含有し、ゴム成分100質量部に対して、補強充填剤を10〜150質量部含有することが好ましい。
【0007】
前記モノマーI及びモノマーIIが、イソプレン及びブタジエンであることが好ましい。
【0008】
前記モノマーI及びモノマーIIを共重合して得られる共重合体を含有することが好ましい。
【0009】
前記共重合体のガラス転移温度が−100〜−40℃、重量平均分子量が150,000〜2,000,000であることが好ましい。
【0010】
前記共重合体が遷移金属含有化合物による配位アニオン重合によって得られることが好ましい。
【0011】
ゴム成分100質量%中、前記共重合体を5質量%以上含有することが好ましい。
【0012】
前記共重合体が前記補強充填剤と化学的に相互作用を有する官能基を付与することによって変性された変性共重合体であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、前記タイヤ用ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【0014】
本発明はまた、共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIを配位アニオン重合により共重合する工程と、前記工程により得られた共重合体を混練する工程とを含む前記タイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定モノマーI及び特定モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量が所定量以上である前記モノマーI及びIIの各単独重合及び/又は共重合して得られる重合体を含有し、前記モノマーI由来のポリマー相(1)と前記モノマーIIに由来のポリマー相(2)との界面の平均長さが特定値以上、又は2種ポリマー相は相容であるタイヤ用ゴム組成物であるので、良好な加工性を有し、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能及び耐摩耗性をバランス良く向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】2種のモノマーからそれぞれ形成される2種のポリマー相の相構造の模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量がそれぞれ90モル%以上である前記モノマーI及びIIの各単独重合及び/又は共重合して得られる重合体を含有し、前記モノマーIに由来のポリマー相(1)と前記モノマーIIに由来のポリマー相(2)との界面の平均長さがゴム組成物の断面1μm当たり3μm以上、又は前記ポリマー相(1)と(2)は相容である。
なお、2種以上のポリマーを混合する場合、ポリマー間の相溶性の度合いにより、完全相溶・海島構造・共連続構造などの相構造を形成する。例えば、海島構造の場合、図1の(a)〜(c)のいずれかで示すようなポリマー相構造を形成し、ポリマー間の相溶性が大きいほど、図1(c)の相構造に近づくと推察される。本明細書において、相容とは、図1(c)に示すように、分子レベルでは不均一であるが、ある特定の大きさの領域では均一化していることを意味し、界面を判別できない状態で、前記界面の平均長さを測定できないことを示す。
また、界面の長さとは、1メッシュ内におけるポリマー相(1)、(2)の界面の長さの和を意味し、例えば、図1(a)、(b)(四角内が1メッシュ)では、ポリマー相(1)、(2)の境界(図1(a)、(b)の太線部)の長さの和を意味する。
【0018】
共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量がそれぞれ90モル%以上である前記モノマーI及びIIの各単独重合及び/又は共重合して得られる重合体を含有し、かつ共役ジエン系モノマーI由来のポリマー相(1)と共役ジエン系モノマーII由来のポリマー相(2)との間に形成される界面の平均長さがゴム組成物の断面1μm当たり3μm以上とすることにより、前記ポリマー相(1)及び(2)が微分散され、ポリマー相(1)及び(2)が均一な相構造を形成することが可能となり、充填剤等の分散性の向上にも寄与するため、加工性を良好とし、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能及び耐摩耗性を向上できると推察される。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分として、共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIの各単独重合及び/又は共重合して得られる重合体を含む。
すなわち、(i)モノマーIの単独重合体及びモノマーIIの単独重合体を含むもの、(ii)モノマーI及びモノマーIIの共重合体を含むもの、(iii)上記(i)及び(ii)をともに含むもの、等が具体的に挙げられる。該重合体としては、上記モノマーI及びモノマーIIを共重合して得られる共重合体を含むものが特に好ましく、上記モノマーIの単独重合体及び/又は上記モノマーIIの単独重合体は含んでも、含まなくてもよい。
【0020】
上記共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを挙げることができ、なかでも、本発明の効果が充分に得られる点で、1,3−ブタジエン及びイソプレンが特に好ましい。モノマーI、モノマーIIがそれぞれ、1,3−ブタジエン、イソプレンである場合、上記共重合体、モノマーIの単独重合体、モノマーIIの単独重合体はそれぞれ、1,3−ブタジエンとイソプレンの共重合体、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム(天然ゴムであってもよい)に該当する。
【0021】
上記モノマーI及びIIの共重合体並びに、上記モノマーIの単独重合体及び上記モノマーIIの単独重合体を含む場合、上記モノマーI及びIIの共重合体が上記2種の単独重合体の相溶性を向上させる相溶性向上剤として働き、上記モノマーI由来のポリマー相(1)と上記モノマーII由来のポリマー相(2)の微分散に寄与すると推察される。
【0022】
本発明における上記共重合体は、モノマーI及びモノマーIIを共重合して得られる。モノマーI及びモノマーIIの異なる成分を共重合することで、分子といったミクロレベルでは不均一となるものの、共重合されているため、ゴム組成物といったマクロレベルでは均一化させることが可能となり、上記モノマーI由来のポリマー相(1)と上記モノマーII由来のポリマー相(2)の相容化に寄与するとも推察される。
【0023】
<共重合体>
まず、上記共重合体について説明する。
上記共重合体としては、後述する重合方法等で得られる共重合体であれば、特に限定されないが、本発明の効果が顕著に得られる点で、共重合して得られた共重合体に、更に補強用充填剤と化学的に相互作用を有する官能基を付与することによって変性した共重合体が特に好ましい。
【0024】
上記官能基としては、公知のものを用いることができ、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子等を有する官能基が挙げられる。該酸素原子を有する官能基としては、エポキシ基、テトラヒドロフラニル基などのアルキレンオキシド基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブドキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基などのアルコキシアリール基を挙げることができる。また、トリメチルシリロキシ基、トリエチルシリロキシ基、t−ブチルジメチルシリロキシ基などのトリアルキルシリロキシ基を挙げることができる。また、水酸基を挙げることができる。該窒素原子を有する官能基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基などのジアルキルアミノアルキル基を挙げることができる。該ケイ素原子を有する官能基としては、トリメチルシリルメチル基などのトリアルキルシリルアルキル基を挙げることができる。本発明の効果が良好に得られる点で、酸素原子を有する官能基が好ましく、なかでも、エポキシ基が特に好ましい。
【0025】
上記共重合体がエポキシ基を有する場合、変性共重合体のエポキシ化度は、上記共重合体中の全二重結合100モル%中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上である。また該エポキシ化度は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。エポキシ化度が5モル%未満であると、本発明の効果が低下するおそれがあり、30モル%を超えると、低燃費性及び耐摩耗性が低下するおそれがある。エポキシ化度は、後述する実施例におけるエポキシ化度の測定方法により測定できる。
なお、本発明において、エポキシ化する方法としては、特に限定されず、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などを挙げられ、例えば、酢酸と過酸化水素と硫酸(触媒)を混合し、40℃で約1〜2日放置して過酢酸を作製し、得られた過酢酸と上記共重合体の共重合反応後の溶液を混合することでエポキシ化することができる。
【0026】
本発明における上記共重合体は、上記共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに基づく構成単位に加え、更に、他のモノマーに基づく構成単位を有していてもよい。該他のモノマーとしては、芳香族ビニル、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンを例示することができる。また、ビニルニトリルとしては、アクリロニトリルなどを、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルなどを例示することができる。これらの中では、芳香族ビニルが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0027】
上記共重合体中の共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量はそれぞれ、90モル%以上であり、好ましくは92モル%以上、より好ましくは93モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。該シス結合含有量が90モル%未満であると、破壊性能、耐摩耗性が悪化する傾向がある。上限は特に限定されない。
なお、本発明において、シス結合含有量は、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0028】
上記共重合体中の共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のビニル結合含有量はそれぞれ、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。該ビニル結合含有量が5モル%を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。下限は特に限定されない。
なお、本発明において、ビニル結合含有量は、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0029】
上記共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−100℃以上、より好ましくは−95℃以上であり、好ましくは−40℃以下、より好ましくは−50℃以下、更に好ましくは−86℃以下、特に好ましくは−89℃以下である。該Tgが−100℃未満であると、ウェットグリップ性能が悪化するおそれがあり、−40℃を超えると、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
なお、本発明において、Tgは、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0030】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150,000以上、より好ましくは200,000以上、更に好ましくは400,000以上、特に好ましくは550,000以上である。また、該Mwは、好ましくは2,000,000以下、より好ましく1,500,000以下、更に好ましくは1,200,000以下である。該Mwが150,000未満であると、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能及び耐摩耗性が悪化する傾向があり、2,000,000を超えると、混練時の加工性及びウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、Mwは、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0031】
上記共重合体100質量%中の共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位の含有量はそれぞれ、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量はそれぞれ、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。該構成単位の含有量が、20質量%未満であったり、80質量%を超えると、本発明の効果を充分に得られないおそれがある。例えば、モノマーIが1,3−ブタジエン、モノマーIIがイソプレンである場合、1,3−ブタジエン由来の構成単位の含有量が20質量%未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向があり、80質量%を超えると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、イソプレン由来の構成単位の含有量が20質量%未満であると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向があり、80質量%を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、構成単位の含有量は、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0032】
上記共重合体100質量%中の共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位の合計含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。該含有量が40質量%未満であると、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。
【0033】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、上記共重合体の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは35質量%以上であり、100質量%であってもよい。該含有量が1質量%未満であると、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。
【0034】
上記共重合体を調製する際の重合において、重合手順は特に限定されず、すべてのモノマーを一度に重合させてもよいし、逐次、モノマーを加えて重合させてもよい。なお、該モノマー成分とは、上記の共役ジエン系モノマーI及びIIであり、上記他のモノマーを併用してもよい。
【0035】
上記共重合は、常法により実施することができ、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などにより実施することができるが、重合物のシス結合含有量が高く、耐摩耗性や破壊強度に優れる点で、配位アニオン重合が好ましい。
【0036】
重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれをも用いることができるが、このうち、溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、バッチ式及び連続式のいずれであってもよい。
【0037】
上記配位アニオン重合は、配位アニオン重合開始剤の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。配位アニオン重合開始剤としては、慣用のものをいずれも好適に用いることができ、そのような配位アニオン重合開始剤としては、例えば、ランタノイド化合物、チタン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物などの遷移金属含有化合物である触媒が挙げられる。配位アニオン重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、所望により、更にアルミニウム化合物、ホウ素化合物を助触媒として使用することができる。
【0038】
ランタノイド化合物としては、原子番号57〜71の元素(ランタノイド)のいずれかを含むものであれば特に限定されないが、これらランタノイドのうち、高シス含有量の重合体が得られる点で、ネオジウムが好ましい。ランタノイド化合物としては、例えば、これら元素のカルボン酸塩、β−ジケトン錯体、アルコキサイド、リン酸塩又は亜リン酸塩、ハロゲン化物などが挙げられる。これらの内、取り扱いの容易性から、カルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体が好ましい。チタン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換シクロペンタジエニル基又は置換インデニル基を1つ含み、かつハロゲン、アルコキシル基、アルキル基の中から選ばれる置換基を3つ有するチタン含有化合物などが挙げられるが、触媒性能の点から、アルコキシシリル基を1つ有するチタン含有化合物が好ましい。コバルト化合物としては、例えば、コバルトのハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体、有機ホスフィン錯体などが挙げられる。ニッケル化合物としては、例えば、ニッケルのハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体などが挙げられる。配位アニオン重合開始剤として用いる触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。配位アニオン重合を行う際の重合開始剤の使用量は特に限定はないが、例えば、重合に供する全モノマー100g当たり、約0.05〜35mmol用いるのが好ましく、約0.05〜0.2mmol用いるのがより好ましい。
【0039】
助触媒として用いるアルミニウム化合物としては、例えば、有機アルミノキサン類、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、水素化有機アルミニウム化合物などが挙げられる。有機アルミノキサン類としては、例えば、アルキルアルミノキサン類(メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、オクチルアルミノキサン、へキシルアルミノキサンなど)が、ハロゲン化有機アルミニウム化合物としては、例えば、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物(ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなど)が、有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルキルアルミニウム化合物(トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなど)が、水素化有機アルミニウム化合物としては、例えば、水素化アルキルアルミニウム化合物(ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなど)が挙げられる。また、ホウ素化合物としては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどのアニオン種を含む化合物が挙げられる。これら助触媒も、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、配位アニオン重合に用いる溶媒としては、配位アニオン重合開始剤を失活させたり、重合反応を停止させたりしないものであれば、いずれも好適に用いることができ、極性溶媒又は非極性溶媒のいずれも使用することができる。極性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒が挙げられ、非極性溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタンなどの鎖式炭化水素、シクロヘキサンなどの環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。これら溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
重合の際の反応温度は、好適に反応が進行する限り特に限定はないが、通常−10℃〜100℃であることが好ましく、25℃〜90℃であることがより好ましい。また、反応時間は、仕込み量、反応温度、その他条件により異なるが、通常、例えば、3時間程度行えば充分である。
【0042】
上記配位アニオン重合は、この分野で通常使用する反応停止剤の添加により、停止させることができる。そのような反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール又は酢酸などの活性プロトンを有する極性溶媒及びこれらの混液、又はそれらの極性溶媒とヘキサン、シクロヘキサンなどの無極性溶媒との混液が挙げられる。反応停止剤の添加量は、通常、配位アニオン重合開始剤に対し、同モル量又は2倍モル量程度で充分である。
【0043】
重合反応停止後、上記共重合体は、重合溶液から常法により溶媒を除去することにより、又は、重合溶液をその1倍量以上のアルコールに注ぎ、共重合体を沈殿させることにより、容易に単離することができる。
【0044】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、重合時に仕込むモノマー量や重合開始剤量を調節することにより制御することができる。例えば、全モノマー/配位アニオン重合開始剤比を大きくすればMwを大きくすることができ、逆に小さくすればMwを小さくすることができる。上記共重合体の数平均分子量(Mn)についても同様である。
【0045】
<単独重合体>
次に、上記単独重合体について説明する。
本発明における上記共役ジエン系モノマーIの単独重合体及び上記共役ジエン系モノマーIIの単独重合体中の共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量はそれぞれ、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは97モル%以上である。該シス結合含有量が90モル%未満であると、破壊性能、耐摩耗性が悪化する傾向がある。上限は特に限定されない。
【0046】
上記共役ジエン系モノマーIの単独重合体及び上記共役ジエン系モノマーIIの単独重合体中の共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のビニル結合含有量はそれぞれ、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。該ビニル結合含有量が5モル%を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。下限は特に限定されない。
【0047】
上記共役ジエン系モノマーIの単独重合体及び上記共役ジエン系モノマーIIの単独重合体のTgはそれぞれ、好ましくは−120℃以上、より好ましくは−115℃以上であり、また該Tgはそれぞれ、好ましくは−40℃以下、より好ましくは−50℃以下である。該Tgが−120℃未満であると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向があり、−40℃を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。特に、モノマーIが1,3−ブタジエン、モノマーIIがイソプレンである場合、ポリブタジエンゴム(モノマーIの単独重合体)の該Tgは、好ましくは−120〜−80℃、より好ましくは−115〜−100℃であり、ポリイソプレンゴム(モノマーIIの単独重合体、天然ゴムであってもよい)の該Tgは、好ましくは−90〜−40℃、より好ましくは−80〜−50℃である。
【0048】
上記共役ジエン系モノマーIの単独重合体及び上記共役ジエン系モノマーIIの単独重合体のMwはそれぞれ、好ましくは150,000以上、より好ましくは200,000以上、更に好ましくは300,000以上、特に好ましくは400,000以上である。該Mwの上限はそれぞれ特に限定されないが、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,500,000以下、更に好ましくは1,200,000以下である。150,000未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向があり、2,000,000を超えると、混練時の加工性が悪化する傾向がある。
【0049】
本発明における上記共役ジエン系モノマーIの単独重合体及び上記共役ジエン系モノマーIIの単独重合体は、上記共重合体の重合方法等、常法の方法で重合させたものである。その製法は、特に限定されないが、重合物のシス結合含有量が高く、耐摩耗性や破壊強度に優れる点で、上記共重合体と同様、配位アニオン重合により重合したものが好ましい。上記重合方法で重合させたものであれば、市販品を用いてもよい。市販品としては、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、例えば、モノマーI、IIが1,3−ブタジエン、イソプレンである場合、ポリブタジエンゴムとしては、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のUBEPOL BR130B、BR150B等が挙げられ、ポリイソプレンゴムとしては、日本ゼオン(株)製のNipol IR2200、JSR(株)製のJSR IR2200等が挙げられる。また、いずれかの上記モノマーがイソプレンである場合には、当該単独重合体として天然ゴム(NR)を用いることもでき、NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0050】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、上記共役ジエン系モノマーIの単独重合体及び上記共役ジエン系モノマーIIの単独重合体はそれぞれ、好ましくは50質量%未満、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは35質量%以下であり、0質量%であってもよい。上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる。
【0051】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、上記共役ジエン系モノマーIの単独重合体及び上記共役ジエン系モノマーIIの単独重合体の合計含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは65質量%以下であり、0質量%であってもよい。該合計含有量が90質量%を超えると、上記共重合体の配合量が少なくなりすぎて、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。
【0052】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位の含有量はそれぞれ、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量はそれぞれ、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。該構成単位の含有量が、20質量%未満であったり、80質量%を超えると、本発明の効果を充分に得られないおそれがある。例えば、モノマーIが1,3−ブタジエン、モノマーIIがイソプレンである場合、1,3−ブタジエン由来の構成単位の含有量が20質量%未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向があり、80質量%を超えると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、イソプレン由来の構成単位の含有量が20質量%未満であると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向があり、80質量%を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0053】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位の合計含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。該含有量が40質量%未満であると、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。
【0054】
本発明のタイヤ用ゴム組成物中に形成される上記モノマーI由来のポリマー相(1)と上記モノマーII由来のポリマー相(2)との界面の平均長さは、ゴム組成物の断面1μm当たり3μm以上、又は上記ポリマー相(1)と(2)は相容である。上記界面の平均長さは、好ましくは3.3μm以上、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4.0μm以上である。上限は特に限定されず、該平均長さが測定できない相容の状態であってもよい。3μm未満であると、ポリマー相の分散性が悪く、本発明の効果が充分に得られない。
なお、本発明において、界面の平均長さは、後述の実施例の測定方法により得られる値である。
【0055】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIの各単独重合及び/又は共重合して得られる重合体の他に、他のゴム成分を配合してもよく、該他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。これらのゴム成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び加工性をバランス良く改善できるという点から、共役ジエン由来の構成単位を50質量%以上含むものが好適に使用でき、なかでも、ブタジエン由来の構成単位を50質量%以上含むSBRが好ましい。
【0056】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、補強用充填剤として、シリカを含有することが好ましい。シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0057】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは40m/g以上、より好ましくは50m/g以上、更に好ましくは60m/g以上、特に好ましくは100m/g以上、最も好ましくは150m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは400m/g以下、より好ましくは360m/g以下、更に好ましくは300m/g以下、特に好ましくは250m/g以下、最も好ましくは200m/g以下である。40m/g未満であると、補強効果が小さく、耐摩耗性や破壊性能が低下する傾向があり、400m/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、低燃費性や加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAはASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0058】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは45質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。該含有量が10質量部未満であると、シリカを配合した効果が充分に得られず、耐摩耗性が低下する傾向があり、150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0059】
本発明では、シリカとともに、シランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。1質量部未満であると、未加硫ゴム組成物の粘度が高く、加工性が悪化する傾向があり、20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0061】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカの他に、他の補強用充填剤を配合することもでき、他の補強用充填剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられ、補強性の点で、カーボンブラックが特に好ましい。
【0062】
カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、N339、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイトなどを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
カーボンブラックのNSAは、好ましくは5m/g以上、より好ましくは50m/g以上、更に好ましくは90m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは200m/g以下、より好ましくは150m/g以下、更に好ましくは120m/g以下、特に好ましくは100m/g以下である。5m/g未満であると、補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、200m/gを超えると、分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し低燃費性が低下する傾向がある。
なお、該NSAは、JIS K6217−2:2001に準じて測定される値である。
【0064】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、好ましくは5ml/100g以上、より好ましくは80ml/100g以上、更に好ましくは100ml/100g以上である。また、該DBP吸収量は、好ましくは300ml/100g以下、より好ましくは180ml/100g以下、更に好ましくは150ml/100g以下である。5ml/100g未満であると、補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、300ml/100gを超えると、分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し低燃費性が低下する傾向がある。
なお、該DBP吸収量は、JIS K6217−4:2001に準じて測定される値である。
【0065】
カーボンブラックの市販品としては、東海カーボン(株)製のシースト6、シースト7HM、シーストKH、三菱化学(株)製のダイアブラックN339、ダイアブラックI、デグッサ社製のCK3、SpecialBlack4A等を用いることができる。
【0066】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。1質量部未満であると、充分な補強性が得られないおそれがあり、60質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0067】
補強用充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。10質量部未満であると、補強性が充分に得られないおそれがあり、150質量部を超えると、加工性が悪化するおそれがある。
【0068】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、オイルなどの伸展油、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等の材料を適宜配合することができる。
【0069】
上記伸展油としては、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値):0.900〜1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値:0.850〜0.899)、パラフィン系鉱物油(V.G.C.値:0.790〜0.849)などを挙げることができる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。これらの伸展油は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0070】
上記加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどのチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらの加硫促進剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.2〜3質量部である。
【0071】
本発明のゴム組成物を製造する方法としては、公知の方法、例えば、各成分をロールやバンバリーのような公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
【0072】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50〜200℃であり、好ましくは80〜190℃であり、混練時間は、通常30秒〜30分であり、好ましくは1分〜30分である。加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温〜80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理を行って用いられる。加硫温度としては、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。
【0073】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤの各部材に用いることができ、特にトレッド(キャップトレッド)に好適に用いることができる。
【0074】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッド等の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを製造できる。
【0075】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、バス・トラックなどの重荷重用タイヤとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0076】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0077】
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
イソプレン:東京化成(株)製のイソプレン(特級)
1,3−ブタジエン:高千穂工業(株)製の1,3−ブタジエン
シクロヘキサン:関東化学(株)製のシクロヘキサン(特級)
バーサチック酸ネオジム(III):日亜化学工業(株)製のバーサチック酸ネオジム
トリオクチルアルミニウム:シグマアルドリッチ社製のトリオクチルアルミニウム(ヘキサン溶液)
tert−ブチルクロライド:東京化成工業(株)製のtert−ブチルクロライド
ヘキサン:関東化学(株)製のノルマルヘキサン(特級)
ジブチルヒドロキシトルエン:東京化成工業(株)製のジブチルヒドロキシトルエン
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール(特級)
酢酸:和光純薬工業(株)製(試薬1級、有効成分98%)
過酸化水素水:和光純薬工業(株)製(有効成分35%)
硫酸:和光純薬工業(株)製(有効成分98%)
メタノール:和光純薬工業(株)製のメタノール(試薬1級)
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
【0078】
<重合体の分析>
下記により得られた重合体の分析は以下の方法で行った。
【0079】
(重量平均分子量Mwの測定)
重合体の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0080】
(共重合体の構造同定)
重合体の構造同定は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて行った。測定結果から、重合体中の、モノマーI及びモノマーII由来の構成単位の含有量、シス結合含有量、ビニル結合含有量を算出した。
【0081】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することによリ、ガラス転移開始温度として求めた。
【0082】
(エポキシ化度の測定)
得られた共重合体の数カ所をサンプリングし、測定は日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのH−NMR装置を用いて行った。
エポキシ化度(%)は、下式により計算した。
エポキシ化度(%)=B/(A+B)×100
(式中Aは、シスのプロトンに由来するピーク(5.0−5.2ppm)の積分値、式中Bは、エポキシ基のプロトンに由来するピーク(2.6−2.8ppm)の積分値を表す。)
【0083】
<触媒溶液の調製>
200mlガラス容器を窒素置換し、イソプレン/シクロヘキサン溶液(3.0mol/L)21ml、バーサチック酸ネオジム(III)/シクロヘキサン溶液(0.4mol/L)6ml、トリオクチルアルミニウム/ヘキサン溶液(0.5mol/L)52mlを加え撹絆した。30分80℃で撹拌後、tert−ブチルクロライド/シクロヘキサン溶液(1mol/L)5mlを加え、60℃で撹拌して、触媒溶液を得た。
【0084】
<過酢酸の調製>
35%過酸化水素97.5gと酢酸30gと硫酸2gを混合し、40℃で1日放置して、過酢酸を作製した。
【0085】
<製造例1(共重合体1の合成)>
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを2L、1,3−ブタジエン(モノマーI)を80g、イソプレン(モノマーII)を80g、トリオクチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液(0.5mol/L)15mlを入れ30分間攪拌した後、上記触媒溶液を10ml添加し、更に80℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)/イソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させた。反応液を、冷却後、別途用意しておいたメタノール3L中に加え、こうして得られた沈殿物を1晩風乾し、さらに2日間減圧乾燥を行い、共重合体1を155g得た。重合転化率(「乾燥重量/仕込量」の百分率)はほぼ100%であった。
【0086】
<製造例2(共重合体2の合成)>
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、シクロヘキサンを2L、1,3−ブタジエン(モノマーI)を80g、イソプレン(モノマーII)を80g、トリオクチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液(0.5mol/L)15mlを入れ30分間攪拌した後、上記触媒溶液を10ml添加し、更に80℃を保ったまま攪拌を行った。3時間後、0.01M−BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)/イソプロパノール溶液を10ml滴下し、反応を終了させ、更に上記過酢酸35gをゆっくり添加し、反応温度が60℃になるように、ヒーターとコントローラーで調整しながらプロペラ撹拌装置で30分間撹拌して反応させた。反応液を、冷却後、別途用意しておいたメタノール3L中に加え、こうして得られた沈殿物を1晩風乾し、さらに2日間減圧乾燥を行い、共重合体2を得た。重合転化率(「乾燥重量/仕込量」の百分率)はほぼ100%であった。また、エポキシ化度は15モル%であった。
【0087】
<製造例3(共重合体3の合成)>
3Lの耐圧ステンレス容器を窒素置換し、ヘキサン2L、1,3−ブタジエン(モノマーI)50g、イソプレン(モノマーII)50g、テトラメチルエチレンジアミン0.3mmol、n−ブチルリチウム0.25mmolを加えて、0℃で48時間撹拌した。その後、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.1gを添加後、溶液を別途用意しておいたメタノール3L中に加え、こうして得られた沈殿物を1晩風乾し、さらに2日間減圧乾燥を行い、共重合体3を得た。重合転化率(「乾燥重量/仕込量」の百分率)はほぼ100%であった。
【0088】
上記製造例1〜3で得られた共重合体1〜3、及び実施例で用いた単独重合体1、2の分析結果(Mw、Tg、各シス結合含有量、各ビニル結合含有量、各構成単位の含有量、エポキシ化度)を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
共重合体1〜3:上記製造例で調製
単独重合体1:宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B
単独重合体2:日本ゼオン(株)製のNipol IR2200
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3−G(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックN339(NSA:96m/g、DBP吸収量:124ml/100g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のX−140
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン3C
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:住友化学(株)製のソクシノールCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)
加硫促進剤2:住友化学(株)製のソクシノールD(ジフェニルグアニジン)
【0091】
(実施例及び比較例)
表2に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間加硫し、加硫ゴム組成物(試験用ゴム組成物)を得た。
得られた未加硫ゴム組成物、試験用ゴム組成物を以下に示す試験方法により評価し、結果を表2に示す。
【0092】
(界面の平均長さ)
得られた試験用ゴム組成物をミクロトーム(LEICA社製のウルトラミクロトームEM VC6)を用いて厚さ500nmのサンプルを作製し、このサンプルを四酸化オスミウムにより染色した。染色後のサンプルを日本電子(株)製の透過型電子顕微鏡JEM2100Fを用いてポリマー相の構造を観察した。観察された画像を1μm四方のメッシュに区切り、メッシュ内におけるポリマー相の界面の長さを測定した。図1(c)に示すような界面が判別できない状態である場合は、相容とし、5個のメッシュを測定し、その平均値を界面の平均長さとした。界面の平均長さが長いほど、ポリマー相の分散性が高いことを示す。
【0093】
(破壊性能)
得られた試験用ゴム組成物から試験片を切り出し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じ、3号ダンベルを用いて引張試験を実施し、各配合の破断強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定し、TB×EB/2の数値を破壊強度とし、比較例1の結果を100として下記計算式により各配合を指数表示した。指数が大きいほど、破壊性能に優れることを示す。
(破壊強度指数)=(各配合のTB×EB/2)/(比較例1のTB×EB/2)×100
【0094】
(混練加工性)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300−1に準じて、130℃で未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定し、比較例1のムーニー粘度を100とし、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほど粘度が低く、加工が容易である(加工性に優れる)ことを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合例のムーニー粘度)×100
【0095】
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、動歪み1%、温度70℃の条件下で各配合のtanδを測定した。比較例1のtanδの値を100として下記計算式により各配合を指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示している。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0096】
(ウェットグリップ性能)
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hz、歪0.1%、温度0℃の条件でtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、各配合を指数表示した。指数値が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
【0097】
(耐摩耗性)
ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用い、荷重2.5kgf、温度20℃、スリップ率20%の条件下で、5分間ランボーン摩耗試験を行った。各試験用ゴム組成物の容積損失量を測定し、比較例1を100として、各配合を下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
【0098】
【表2】
【0099】
共役ジエン系モノマーI及び共役ジエン系モノマーIIに由来する構成単位中の二重結合のシス結合含有量が所定量以上である前記モノマーI及びIIの各単独重合及び/又は共重合して得られる重合体を含有し、前記モノマーI由来のポリマー相(1)と前記モノマーIIに由来のポリマー相(2)との界面の平均長さが特定値以上、又は2種ポリマー相は相容である実施例は、良好な加工性を有し、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能及び耐摩耗性の性能バランスを顕著に改善した。
図1