(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に示す実施形態1〜5は、血液検体に含まれる白血球、赤血球、血小板等を検出し、各血球を計数することにより、血液に関する検査および分析を行うための装置に本発明を適用したものである。
【0013】
<実施形態1>
図1に示すように、フローサイトメータ100は、フローセル110と、光源120と、照射光学系130と、検出部140と、を備える。便宜上、
図1には、互いに直交するXYZ座標軸が示されている。
【0014】
図2(b)に示すように、フローセル110は、シース液供給口111と、試料ノズル112と、細孔部113と、廃液口114と、を備える。シース液供給口111は、シース液をフローセル110内に供給する。試料ノズル112は、フローセル110内において測定試料を上方向に噴射する。測定試料は、シース液に包まれた状態で、細孔部113に形成されている流路115を通って廃液口114へと進む。流路115は、Y軸方向に延びている。測定試料は、血球などの粒子を含んでおり、各粒子は、一列に整列した状態で流路115を通る。
【0015】
図1に戻り、光源120は、レーザ光201をZ軸正方向に出射する。レーザ光201の波長は、約642nmである。光源120の出射光軸は、照射光学系130の光軸202に一致している。
【0016】
照射光学系130は、コリメータレンズ131と集光レンズ132を備える。コリメータレンズ131は、光源120から出射されたレーザ光201を平行光に変換する。集光レンズ132は、ガラスからなり、入射面132aと出射面132bを備える。入射面132aは、光軸対称非球面であり、出射面132bは、凸面形状かつ曲率一定のシリンドリカル面である。シリンドリカル面の母線132cは、
図2(c)に示すように、流路115に平行である。
図2(c)では、便宜上、集光レンズ132の入射面132aの図示が省略されている。また、
図2(c)では、シリンドリカル面の効果を模式的に表すために、便宜上、集光レンズ132のXY平面における外形を矩形で図示しているが、実際の外形は円形である。後述する
図7(a)〜(c)についても同様である。
【0017】
図2(a)、(c)に示すように、レーザ光201は、Y軸方向において、入射面132aにより収束され、位置203で合焦する。位置203は、フローセル110の流路115の位置と一致する。一方、
図1と
図2(c)に示すように、レーザ光201は、X軸方向において、入射面132aと出射面132bとにより収束され、位置204で合焦する。位置204は、フローセル110の流路115の位置よりもZ軸負側にある。
【0018】
こうして、
図2(b)、(c)に示すように、Y軸方向の幅がX軸方向の幅よりも小さい形状で、言い換えれば、流路115に平行な方向の幅が、流路115を横切る方向の幅よりも小さい形状で、レーザ光201が流路115に照射される。光軸対称非球面が、レーザ光201を位置203で合焦させるために用いられると、球面が用いられる場合に比べて、球面収差を効果的に抑制できる。球面収差の抑制については、追って
図4(a)、(b)と
図5(a)、(b)を参照して説明する。
【0019】
ここで、光軸202と入射面132aとの交点の接平面上において、交点からの距離をrとし、接平面から入射面132aまでの距離をzとする。距離zは、入射面132aの光軸対称非球面の形状を示す。入射面132aの曲率をcとし、i次非球面係数をα
iとし、コーニック定数をkとする。このとき、距離zは、以下の偶数次非球面式により規定される。
【0021】
たとえば、rの4次の項またはrの6次の項までを用いて入射面132aが設計される。これにより、入射面132aを所望の光軸対称非球面に設計し規定することができる。実施形態1では、rの4次の項までを用いて入射面132aの光軸対称非球面を規定し、rの2次の係数と、rの6次以降の係数とを0とする。実施形態1における各値は、たとえば以下の表1に示すように設定される。
【0023】
入射面132aの焦点距離、すなわち、Y軸方向における集光レンズ132の焦点距離は、5mm以上100mm以下に設定される。入射面132aの焦点距離は、好ましくは5mm以上70mm以下、より好ましくは5mm以上35mm以下に設定される。
【0024】
図1に戻り、流路115の粒子にレーザ光201が照射されることにより、前方散乱光211と、側方散乱光212と、蛍光213と、が生じる。前方散乱光211は、主として、フローセル110からZ軸正方向に向かう。側方散乱光212は、主として、フローセル110からX軸正方向とX軸負方向に向かう。蛍光213は、フローセル110の周囲に広がる。
【0025】
検出部140は、集光レンズ141と、ビームストッパ142と、ピンホール143と、光検出器144と、集光レンズ145と、ダイクロイックミラー146と、光検出器147と、分光フィルタ148と、光検出器149と、を備える。
【0026】
集光レンズ141は、前方散乱光211をピンホール143の位置に集光させる。また、集光レンズ141は、粒子に照射されずにフローセル110を透過したレーザ光201を、ビームストッパ142の位置に集光させる。ビームストッパ142は、前方散乱光211の大部分を通過させ、フローセル110を透過したレーザ光201を遮光する。光検出器144は、フォトダイオードである。光検出器144は、ピンホール143の孔を通過した前方散乱光211を受光して、前方散乱光211に基づく信号を出力する。
【0027】
集光レンズ145は、側方散乱光212と蛍光213を集光させる。ダイクロイックミラー146は、側方散乱光212を反射し、蛍光213を透過する。光検出器147は、フォトダイオードである。光検出器147は、ダイクロイックミラー146により反射された側方散乱光212を受光して、側方散乱光212に基づく信号を出力する。分光フィルタ148は、蛍光213のみを透過する。光検出器149は、アバランシェフォトダイオードである。光検出器149は、蛍光213を受光して、蛍光213に基づく信号を出力する。
【0028】
図3に示すように、粒子分析装置10は、測定部20と、分析部30と、記憶部40と、を備える。測定部20は、上記フローサイトメータ100を含む。
【0029】
測定部20は、患者から採取された末梢血である血液検体に試薬等を混和して、測定に用いる測定試料を調製する。測定部20は、フローサイトメータ100の光検出器144、147、149から出力された信号を、分析部30に出力する。分析部30は、入力された信号の波形から、複数の特徴パラメータを算出する処理を行う。分析部30は、記憶部40に記憶されているコンピュータプログラムを用いて、算出した特徴パラメータに基づく分析を行い、分析結果を記憶部40に記憶させる。
【0030】
次に、
図4(a)、(b)と
図5(a)、(b)を参照して、球面収差のシミュレーション結果について説明する。以下のシミュレーションでは、集光レンズ132の入射面132aの性能を評価した。この評価のため、シミュレーションでは、集光レンズ132に代えて、非球面レンズからなる集光レンズ134を用いた。比較のため、さらに、従来例として球面レンズを貼り合わせた集光レンズ133の性能を評価した。シミュレーションでは、従来例の集光レンズ133を用いる場合と、集光レンズ134を用いる場合とで、スポットダイアグラムのサイズを取得して、球面収差の大きさを評価した。
【0031】
図4(a)に示すように、従来例の集光レンズ133は、ガラスからなる2枚の球面レンズの貼り合わせにより構成した。入射面133aと出射面133bは、何れも光軸対称球面とし、2枚のレンズが貼り合わせられた面133cも、光軸対称球面とした。シミュレーションでは、平行光を入射面133aに入射させ、従来例の集光レンズ133により最も集光された位置で、スポットダイアグラムを取得した。この場合のシミュレーションの条件は、以下の表2に示すとおりであった。
【0033】
図4(b)に示すように、従来例の集光レンズ133で平行光を集光した場合、スポットダイアグラムの半径は0.001161mmとなった。
【0034】
図5(a)に示すように、集光レンズ134は、ガラスからなる1枚の非球面レンズにより構成した。入射面134aは、実施形態1の入射面132aと同様の光軸対称非球面であり、表1の(1)〜(5)、(7)に示すように構成した。出射面134bは、X−Y平面に平行な面とした。シミュレーションでは、平行光を入射面134aに入射させ、集光レンズ134により最も集光された位置で、スポットダイアグラムを取得した。この場合のシミュレーション条件は、表2の(6)、(7)と同じであった。
【0035】
図5(b)に示すように、集光レンズ134で平行光を集光した場合、スポットダイアグラムの半径は4.561×10
−7mmとなった。
【0036】
上記シミュレーションの結果によれば、非球面レンズからなる集光レンズ134の場合、球面レンズからなる従来例の集光レンズ133の場合に比べて、スポットダイアグラムのサイズが小さく、球面収差を抑制してレーザ光を集光できることが分かる。このことから、
図1に示すフローサイトメータ100において、レーザ光201をフローセル110の流路115に集光させるために、光軸対称非球面の入射面132aを用いる方が、球面レンズからなる従来の集光レンズを用いる場合に比べて、より効果的にレーザ光201の球面収差を抑制できると言える。
【0037】
次に、集光レンズ132を用いた場合の、フローセル110の流路115の位置におけるビーム強度のシミュレーション結果について説明する。
【0038】
シミュレーションでは、平行光を入射面132aから入射させ、フローセル110の流路115の位置において、Y軸方向とX軸方向のビーム強度を取得した。この場合のシミュレーション条件は、表1の(1)〜(7)と、表2の(6)、(7)と、同じとした。流路115の直径は25μmとした。
【0039】
図6(a)、(b)において、横軸は、光軸202と流路115との交点からの距離を示しており、縦軸は、最大値で正規化したビーム強度を示している。
図6(b)に示すX軸方向のビーム強度の形状は、
図6(a)に示すY軸方向のビーム強度の形状に比べて、光軸から離れる方向に緩やかな傾きを有する形状となった。X軸方向の位置が12.5μmおよび−12.5μmである位置において、ビーム強度は、
図6(b)に示すように最大値の97.4%となった。したがって、流路115に対して略均一な光が照射された。このように、集光レンズ132によれば、流路115を流れる測定試料中の粒子を検出できるように、流路115におけるY軸方向とX軸方向のビーム強度の形状を、適切に設定できる。
【0040】
以上、実施形態1によれば、複数の球面レンズを用いることなく、光源からの光を低収差で歪の少ない状態でフローセル110に照射できる。これにより、レーザ光201を集光させるためのレンズの厚みを低減できる。光軸対称非球面を用いたことで複数の球面レンズを用いる必要がなくなったため、シリンドリカル面と反対側の面、すなわち入射面132aを光軸対称非球面とすることができる。単一の集光レンズ132によりレーザ光201の集光と整形の両方を実現できるため、照射光学系130のレンズの点数を削減でき、照射光学系130を小型化できる。照射光学系130のレンズの点数を削減できるため、ホルダ等のレンズを保持および設置するための部材や構成が同様に削減される。これにより、照射光学系130を配置するためのスペースを大幅に削減でき、その結果、フローサイトメータ100を効果的に小型化できる。
【0041】
実施形態1によれば、集光レンズ132の入射面132aと出射面132bとが、それぞれ、光軸対称非球面とシリンドリカル面とで構成される。これにより、光源120からのレーザ光201が、低収差かつ歪の少ない状態でフローセル110の流路115に照射されるように、集光レンズ132のレンズ面を設計できる。
【0042】
実施形態1によれば、入射面132aの光軸対称非球面は、入射したレーザ光201を位置203に集光する形状を有する。出射面132bのシリンドリカル面は、フローセル110の流路115に照射されるレーザ光201を、流路115に平行な方向の幅が、流路115を横切る方向の幅よりも小さくなるように整形する形状を有する。このように、集光レンズ132の面ごとに機能が分けられると、集光レンズ132の各面の設計および製作が容易になる。
【0043】
実施形態1によれば、出射面132bのシリンドリカル面が凸面形状とされる。これにより、流路115を横切る方向におけるレーザ光201の焦点位置が、流路115よりも光源120側の位置203となる。よって、照射光学系130をさらに小型化できる。
【0044】
実施形態1によれば、入射面132aが光軸対称な形状であるため、入射面132aと出射面132bとの間に、光軸周りの位置ずれが生じることがない。よって、入射面と出射面の回転位置を厳密に管理して集光レンズ132を作製しなくても、集光レンズ132に所期の性能が担保される。
【0045】
<実施形態2>
実施形態2のフローサイトメータは、集光レンズ132の出射面の形状が異なる以外は、実施形態1のフローサイトメータと同じ構成を備えている。
図7(a)に示すように、実施形態2では、実施形態1と比較して、集光レンズ132の出射面132bが、凹面形状かつ曲率一定のシリンドリカル面となっている。
【0046】
この場合、レーザ光201は、Y軸方向において、入射面132aにより収束され、位置203で合焦する。位置203は、フローセル110の流路115の位置と一致する。一方、レーザ光201は、X軸方向において、入射面132aにより収束され、出射面132bにより拡散され、位置204で合焦する。位置204は、フローセル110の流路115の位置よりもZ軸正側にある。よって、実施形態2においても、実施形態1と同様、流路115に平行な方向の幅が、流路115を横切る方向の幅よりも小さい形状となるよう、レーザ光201を流路115に照射できる。
【0047】
実施形態2において、入射面132aは、上記実施形態1と同様、流路115に光を集光するように設計される。したがって、
図5(a)、(b)と同様、入射面132aは、球面収差を顕著に抑制できる。実施形態2においても、低収差かつ歪の少ない状態でフローセル110の流路115に照射されるように、集光レンズ132のレンズ面を設計できる。
【0048】
次に、実施形態2の集光レンズ132を用いた場合の、フローセル110の流路115の位置におけるビーム強度のシミュレーション結果について説明する。
【0049】
シミュレーションでは、平行光を入射面132aに入射させ、フローセル110の流路115の位置において、Y軸方向とX軸方向のビーム強度を取得した。この場合のシミュレーション条件は、表1の(1)〜(5)、(7)と、表2の(6)、(7)と、同じであり、出射面132bの曲率半径は65mmとした。流路115の直径は25μmとした。
【0050】
この場合も、
図8(b)に示すX軸方向のビーム強度の形状は、
図8(a)に示すY軸方向のビーム強度の形状に比べて、光軸から離れる方向に緩やかな傾きを有する形状となった。X軸方向の位置が12.5μmおよび−12.5μmである位置において、ビーム強度は、
図8(b)に示すように最大値の97.8%であった。したがって、流路115に対して略均一な光が照射された。このように、実施形態2の集光レンズ132によれば、実施形態1と同様、流路115を流れる測定試料中の粒子を検出できるように、流路115におけるY軸方向とX軸方向のビーム強度の形状を、適切に設定できる。
【0051】
<実施形態3>
実施形態3のフローサイトメータは、集光レンズ132の出射面の形状が異なる以外は、実施形態1のフローサイトメータと同じ構成を備えている。
図7(b)に示すように、実施形態3では、実施形態1と比較して、出射面132bのシリンドリカル面の母線132cが、X軸方向、すなわち、流路115を横切る方向となっている。
【0052】
この場合、レーザ光201は、X軸方向において、入射面132aにより収束され、位置204で合焦する。位置204は、フローセル110の流路115の位置よりもZ軸正側にある。一方、レーザ光201は、Y軸方向において、入射面132aと出射面132bとにより収束され、位置203で合焦する。位置203は、フローセル110の流路115の位置と一致する。よって、実施形態3においても、実施形態1と同様、流路115に平行な方向の幅が、流路115を横切る方向の幅よりも小さい形状となるよう、レーザ光201を流路115に照射できる。
【0053】
実施形態3において、入射面132aは、上記実施形態1と異なり、流路115よりも遠い位置に光を集光するように設計される。Y軸方向における集光は、入射面132aの集光作用とともに球面である出射面132bの集光作用によって実現される。このため、実施形態3では、出射面132bの影響を考慮しながら、収差と歪が抑制されるように、入射面132aが設計される。このように、実施形態3では、出射面132bによる影響があるものの、これを加味して入射面132aを設計することにより、低収差かつ歪の少ない状態でフローセル110の流路115に光を照射できる。
【0054】
<実施形態4>
実施形態4のフローサイトメータは、集光レンズ132の出射面の形状が異なる以外は、実施形態1のフローサイトメータと同じ構成を備えている。
図7(c)に示すように、実施形態4では、実施形態1と比較して、出射面132bが、凹面形状かつ曲率一定のシリンドリカル面となっている。出射面132bのシリンドリカル面の母線132cは、X軸方向、すなわち、流路115を横切る方向となっている。
【0055】
この場合、レーザ光201は、X軸方向において、入射面132aにより収束され、位置204で合焦する。位置204は、フローセル110の流路115の位置よりもZ軸負側にある。一方、レーザ光201は、Y軸方向において、入射面132aにより収束され、出射面132bにより拡散され、位置203で合焦する。位置203は、フローセル110の流路115の位置と一致する。よって、実施形態4においても、実施形態1と同様、流路115に平行な方向の幅が、流路115を横切る方向の幅よりも小さい形状となるよう、レーザ光201を流路115に照射できる。
【0056】
実施形態4において、入射面132aは、上記実施形態1と異なり、流路115よりも近い位置に光を集光するように設計される。Y軸方向における集光は、入射面132aの集光作用とともに球面である出射面132bの拡散作用によって実現される。このため、実施形態4では、出射面132bの影響を考慮しながら、収差と歪が抑制されるように、入射面132aが設計される。このように、実施形態4では、出射面132bによる影響があるものの、これを加味して入射面132aを設計することにより、低収差かつ歪の少ない状態でフローセル110の流路115に光を照射できる。
【0057】
次に、
図9(a)、(b)を参照して、実施形態4の球面収差のシミュレーション結果について説明する。このシミュレーションでは、実施形態4における集光レンズ132の入射面132aの性能を評価した。上記のように、集光レンズ132は、入射面132aによる集光作用とともに出射面132bによる拡散作用によってY軸方向に光を集光する。シミュレーションでは、光を円形に集光した状態でスポットダイアグラムを取得して球面収差を評価できるように、集光レンズ132に代えて、入射面が光軸対称非球面で、出射面が光軸対称球面の集光レンズ135を用いた。
【0058】
集光レンズ135の入射面135aは、表3の(1)〜(4)に従って設計された光軸対称非球面とした。集光レンズ135の出射面135bは、表3の(5)に示す曲率半径を有する光軸対称球面であった。集光レンズ135の屈折率は、表3の(6)に示すとおりとした。シミュレーションでは、このように設計された集光レンズ135によって平行光を集光したときのスポットダイアグラムのサイズを取得して、球面収差の大きさを評価した。平行光の波長と半径は、表3の(7)、(8)に示すとおりとした。
【0060】
図9(b)に示すように、集光レンズ135で平行光を集光した場合、スポットダイアグラムの半径は3.548×10
−5mmとなった。
【0061】
このシミュレーション結果では、
図5(a)、(b)を参照して説明した実施形態1のシミュレーション結果に比べて、スポットダイアグラムのサイズはやや大きくなった。しかしながら、このシミュレーション結果によるスポットダイアグラムのサイズは、
図4(a)、(b)を参照して説明した球面レンズからなる従来例の集光レンズ133のシミュレーション結果に比べて、数段小さい値であった。よって、実施形態4の集光レンズ132においても、球面レンズからなる従来例の集光レンズに比べて、効果的に球面収差を抑制できる。
【0062】
実施形態3では、実施形態4と同じく、集光レンズ132の入射面132aと出射面132bの両方の光学作用によってY軸方向に光が集光される。したがって、入射面132aの設計を調整することにより、実施形態4と同等の球面収差の抑制効果が得られる。
【0063】
<実施形態5>
実施形態5のフローサイトメータは、集光レンズ132の入射面と出射面の形状が異なる以外は、実施形態1のフローサイトメータと同じ構成を備えている。
図10(a)、(b)に示すように、実施形態5では、実施形態1と比較して、集光レンズ132の入射面132aが、凸面形状かつ曲率一定のシリンドリカル面となり、出射面132bが、光軸対称非球面となっている。シリンドリカル面の母線は、流路115に平行である。実施形態5では、実施形態1に比べて、集光レンズ132の入射面と出射面の機能が置き換えられている。
図10(a)、(b)では、便宜上、フローセル110以降の構成の図示が省略されている。
【0064】
次に、実施形態5の球面収差のシミュレーション結果について説明する。以下のシミュレーションでは、実施形態5の集光レンズ132を用いる場合のスポットダイアグラムのサイズを取得して、球面収差の大きさを評価した。
【0065】
シミュレーションでは、平行光が入射面132aから入射され、
図10(b)に示す位置203でスポットダイアグラムを取得した。この場合のシミュレーション条件は以下の表4に示すとおりとした。なお、シミュレーションでは、位置203、すなわち、フローセル110の流路115の位置における球面収差の大きさを評価するために、入射面132aをX−Y平面に平行な面とした。
【0067】
実施形態5の集光レンズ132で平行光を集光した場合、スポットダイアグラムの半径は5.955×10
−5mmとなった。
【0068】
このシミュレーション結果では、
図5(a)、(b)を参照して説明した実施形態1のシミュレーション結果に比べて、スポットダイアグラムのサイズはやや大きくなった。しかしながら、このシミュレーション結果によるスポットダイアグラムのサイズは、
図4(a)、(b)を参照して説明した球面レンズからなる従来例の集光レンズ133のシミュレーション結果に比べて、数段小さい値であった。よって、実施形態5の集光レンズ132においても、球面レンズからなる従来例の集光レンズに比べて、効果的に球面収差を抑制できる。
【0069】
<変更例>
実施形態1〜5において、コリメータレンズ131が省略されても良い。この場合、レーザ光201が、実施形態1〜5と同様の形状でフローセル110の流路115に照射されるよう、集光レンズ132の設定値が変更される。
【0070】
実施形態1〜5では、集光レンズ132において、シリンドリカル面の曲率は一定であったが、これに限らず、シリンドリカル面の曲率は一定でなくても良い。この場合、フローセル110の流路115におけるレーザ光201の強度分布の形状を、頂上付近がより平坦に近い、いわゆるトップハット形状とすることができる。これにより、流路115を横切る方向の光の強度をより均一化でき、流路115に均一な光を照射できる。
【0071】
実施形態1〜5において、レーザ光201と、レーザ光201とは異なる波長のレーザ光とを、フローセル110の流路115に照射するよう、フローサイトメータ100が構成されても良い。この場合、他の光源が、フローサイトメータ100に配置され、レーザ光201と異なる波長のレーザ光を出射する。
【0072】
実施形態1〜5では、血液が測定対象とされたが、尿が測定対象であっても良い。本発明は、血液や尿等の生体試料中の粒子を測定する装置に適用できる。