特許第6352718号(P6352718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352718アジュバント組成物及びアジュバント製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352718
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】アジュバント組成物及びアジュバント製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20180625BHJP
   A61K 31/401 20060101ALI20180625BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20180625BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61K39/39
   A61K31/401
   A61K31/4422
   A61P37/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-158587(P2014-158587)
(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-34924(P2016-34924A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徳
(72)【発明者】
【氏名】谷田 宣文
(72)【発明者】
【氏名】秋山 勝彦
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 International archives of allergy and applied immunology,1990年,Vol.93,No.2-3,pp.165-170
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 37/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプトプリル及びアムロジピンからなる群から選択される薬物又はその塩を含有する、アジュバント組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のアジュバント組成物を含有する、アジュバント製剤。
【請求項3】
経皮又は経粘膜製剤である、請求項2に記載のアジュバント製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジュバント組成物及びアジュバント製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバントは免疫原性を高める物質であり、抗原と共に投与された場合、その抗原に対する免疫応答が増強される。例えば、ワクチン接種においては、アジュバントを利用することでワクチンの用量及び投与回数を低減することが可能である。
【0003】
アジュバントには様々な種類が存在し、近年、脂質異常症治療薬を含有するアジュバント組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−40396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の目的は、新たなアジュバント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、カプトプリル及びアムロジピンに免疫応答の増強作用があることを見出した。カプトプリルはアンジオテンシン変更酵素(ACE)阻害剤として知られており、高血圧治療に用いられている。また、アムロジピンはカルシウムチャネル拮抗剤として知られており、高血圧及び狭心症の治療に用いられている。しかしながら、カプトプリル及びアムロジピンはその作用機序から考えて免疫応答に関与するとは考えられず、本発明者らの得た知見は驚くべきものであった。かかる知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、カプトプリル及びアムロジピンからなる群から選択される薬物又はその塩を含有するアジュバント組成物を提供する。また、本発明はかかるアジュバント組成物を含有するアジュバント製剤を提供する。かかるアジュバント製剤は経皮又は経粘膜製剤であってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、新たなアジュバント組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態に係るアジュバント組成物は、カプトプリル及びアムロジピンからなる群から選択される薬物又はその塩を含有することを特徴とする。
【0011】
上記のような構成を有するアジュバント組成物は、優れた免疫応答の増強作用(免疫賦活効果)を発揮し得る。
【0012】
また、本実施形態に係るアジュバント組成物は、それ自体で免疫応答の増強作用を発揮し得ることから、抗原と混合して投与する必要はなく、抗原とは別に投与することができる。アジュバント組成物の投与のタイミングは抗原投与前、抗原投与時又は抗原投与後のいずれであってもよい。抗原投与前又は抗原投与後に行うことが好ましい。さらに、アジュバント組成物の投与形態についても、抗原とは異なる投与形態で投与することができ、抗原とは独立した経路で投与してもよい。したがって、アジュバント組成物の投与時には、抗原の投与量等の条件を考慮する必要がなく、アジュバント組成物自体の投与量、投与時間、投与形態等を選択することができる。本実施形態に係るアジュバント組成物は、抗原と別に投与することができることから、抗原の投与時に発生する投与部位の腫脹、疼痛を回避してアジュバント組成物を投与することができる。
【0013】
カプトプリル又はその塩の含有量は、アジュバント組成物全質量基準で1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、アジュバント組成物の免疫応答の増強作用を充分に得ることができ、かつ、アジュバント組成物の皮膚刺激性を充分抑制することができる。
【0014】
アムロジピン又はその塩の含有量は、アジュバント組成物全質量基準で0.01〜0.1質量%であることが好ましく、0.01〜0.05質量%であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、アジュバント組成物の免疫応答の増強作用を充分に得ることができ、かつ、アジュバント組成物の皮膚刺激性を充分抑制することができる。アムロジピンの塩としては、例えば、ベシル酸アムロジピンが挙げられる。
【0015】
上記アジュバント組成物は、薬学的に許容される担体を含有してよい。薬学的に許容される担体としては、水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
【0016】
上記アジュバント組成物は、これを含有するアジュバント製剤として使用することができる。
【0017】
アジュバント製剤中におけるアジュバント組成物の含有量は、使用の目的等に応じて調整することができるが、アジュバント組成物を高濃度で含有することが好ましい。アジュバント組成物の含有量は、アジュバント製剤全質量基準で、50〜100質量%とすることができるが、75〜100質量%であることが好ましく、85〜100質量%であることがより好ましく、95〜100質量%であることがさらに好ましい。アジュバント組成物の含有量を50質量%以上とすることで、アジュバント製剤の免疫応答の増強作用をより向上させることができる。
【0018】
アジュバント製剤は、使用の目的、製剤の態様等に応じて、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、増粘剤、湿潤剤、充填剤、溶解剤、溶解補助剤、吸収促進剤、薬効補助剤、安定化剤、抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤、架橋剤、重合剤、粘着剤、可塑剤、pH調整剤、防腐剤、賦形剤などが挙げられる。
【0019】
増粘剤は、水分を30〜80%安定に保持でき、かつ保水性を有するものであることが好ましい。増粘剤は、例えば、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム(アカシアガム)、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉等の植物系、ザンサンガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系などの天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マイレン酸共重合体等の合成高分子などの水溶性高分子などが挙げられる。これらの増粘剤のうち、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。ポリアクリル酸ナトリウムは、ゲル強度が強く、かつ保水性に優れる。平均重合度20000〜70000のポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。平均重合度が20000より大きいと増粘効果がより充分のものとなり、ゲル強度が向上する傾向にある。また、平均重合度が70000より小さいと増粘効果が強すぎることによる作業性の低下を抑制することができる。また、上記増粘剤を2種類以上併用することにより、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムが強イオン高分子と高分子コンプレックスを形成し、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。
【0020】
湿潤剤としては、ソルビトール等の多価アルコールなどを使用することができる。充填剤としては、カオリン、酸化亜鉛、タルク、チタン、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを使用することができる。湿潤剤及び充填剤の配合量は、アジュバント製剤全質量を基準として、合計で0.1〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。
【0021】
溶解補助剤又は吸収促進剤としては、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペート等を使用することができる。
【0022】
薬効補助剤としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムヒドロキシホスファイト硫酸塩等を使用することができる。
【0023】
界面活性剤としては、非イオン性活性剤、イオン性活性剤(カチオン、アニオン、両性)のいずれも使用することができる。安全性の面から通常医薬品基剤に用いられる非イオン性活性剤を使用することが望ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0024】
アジュバント製剤は、架橋剤、重合剤等を含有していてもよい。このような成分を含有させることにより、膏体を強固にするとともに保水性を持たせることができる。架橋剤や重合剤は、増粘剤等の種類に応じて適宜選択される。
【0025】
例えば、増粘剤にポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩を使用した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物の他、例えば、Ca、Mg、Alなどの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸塩、酸化亜鉛、無水珪酸等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物などの多価金属化合物が好適に用いられる。
【0026】
また、増粘剤にポリビニルアルコールを使用した場合は、アジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Cr等の錯化物などが好適に用いられる。
【0027】
また、増粘剤にポリビニルピロリドンを使用した場合は、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物又はそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸やタンニン酸及びその誘導体)などが好適に用いられる。
【0028】
また、増粘剤にポリエチレンオキサイドを使用した場合は、パーオキサイド、ポリスルホンアザイド等が好適に用いられる。
【0029】
また、増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を使用した場合は、多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩等が好適に用いられる。
【0030】
また、増粘剤にゼラチンを使用した場合は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプンなどのアルデヒド類、グリオキサール、ブタジエンオキシド等のジエポキシド類、ジビニルケトン等のジケトン類、ジイソシアネート類などが好適に用いられる。
【0031】
また、増粘剤にポリアクリル酸ナトリウムを使用した場合、架橋剤として、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ほう酸ナトリウム等の多価金属塩が好適に用いられる。とくに、亜鉛塩、アルミニウム塩が好ましい。架橋反応が促進されるからである。
【0032】
架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(又は水溶性高分子)1当量に対し0.5〜1.5当量が好ましい。多価金属塩の濃度を0.5当量以上とすることによって、反応が促進されてゲル強度が高くなり、多価金属塩の濃度を1.5当量以下とすることによって、反応を適度な速度において行わせしめ、ゲル化を均一とし、作業性を向上させることができる。
【0033】
粘着剤としては、アクリル系高分子又はゴム系の高分子が好ましい。
【0034】
アクリル系高分子としては、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等に代表される(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも一種含有させて共重合したものであればとくに限定されないが、好ましくは2−エチルヘキシルアクリレートを50%以上含有するものが好ましい。具体的な粘着剤としては、医薬品添加物事典2000(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に包含されるアクリル系高分子等の粘着剤、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)、オイドラギットシリーズ(樋口商会)などを使用することができる。ゴム系の高分子としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、SISと略記する)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(以下、PIBと略記する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、SBSと略記する)、スチレン−ブタジエンゴム(以下、SBRと略記する)、ポリシロキサン等が挙げられる。これらのゴム系の高分子のうち、SIS、PIB及びポリシロキサンが好ましく、SIS、PIBがより好ましい。これらの粘着剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
粘着剤の配合量は、アジュバント製剤全質量を基準として、5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。粘着剤の配合量をこのような範囲とすると、アジュバント製剤の皮膚又は粘膜への透過性の観点から好ましく、貼付剤を形成する場合には、粘着剤層の形成の観点から好ましい。
【0036】
粘着力が不足している場合には、別途、粘着付与樹脂を配合することが望ましい。粘着付与樹脂としては、ロジン誘導体(例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等)、脂環族飽和炭化水素樹脂(例えばアルコンP100、荒川化学工業)、脂肪族系炭化水素樹脂(例えばクイントンB170、日本ゼオン)、テルペン樹脂(例えばクリアロンP-125ヤスハラケミカル)、マレイン酸レジンなどが挙げられる。とくに水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂が好ましい。
【0037】
粘着付与樹脂の配合量は、貼付剤としての充分な粘着力及び剥離時の皮膚への刺激性を考慮して、アジュバント製剤全質量を基準として、5〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
可塑剤としては、石油系オイル(例えば、流動パラフィン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えば、液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンなどが挙げられる。これらの可塑剤の中でも、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチルが好ましく、流動パラフィン、液状ポリブテン及びミリスチン酸イソプロピルがより好ましい。これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
可塑剤の配合量は、アジュバント製剤全質量を基準として、10〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。可塑剤の配合量をこのような範囲とすると、アジュバント製剤の皮膚又は粘膜への透過性の観点から好ましく、貼付剤を形成する場合には、充分な凝集力の維持し得ることから好ましい。
【0040】
吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物であればいずれでも使用することができる。吸収促進剤は、例えば、炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、アミド、エーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル又はエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、また、環状、直鎖状、分枝状のいずれでもよい)、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油などが挙げられる。このような吸収促進剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
吸収促進剤の配合量は、充分な皮膚への透過性、及び、発赤、浮腫等の皮膚への刺激性などを考慮して、アジュバント製剤全質量を基準として、0.01〜40質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
アジュバント製剤はまた、種々の剤形として使用することができ、従来用いられている経皮又は経粘膜製剤と同じ剤形とすることができる。このようなアジュバント製剤の剤形としては、アジュバント組成物を経皮的又は経粘膜的に投与できるものであることが好ましく、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、座剤、パップ剤、パッチ製剤、ローション剤、液剤、含浸剤又はブリスター剤等の剤形であることが好ましく、パッチ製剤又は含浸剤の剤形であることがより好ましい。このような剤形である場合、外用形態のアジュバント製剤として非侵襲的体内投与が可能となる。
【0043】
パッチ製剤としては、マトリックス型のテープ製剤、積層型のテープ製剤及びリザーバー型のパッチ製剤が包含される。これらのうち、マトリックス型のテープ製剤及びリザーバー型のパッチ製剤としての使用が好ましく、リザーバー型のパッチ製剤としての使用がさらに好ましく用いられる。
【0044】
マトリックス型のテープ製剤とは、テープ製剤のうち、粘着性を備えた基剤中に薬理活性物質を分散・含有してなる粘着剤層を有するものをいう。マトリックス型テープ製剤は、粘着剤層の一方の面に支持体、他方の面に剥離ライナーを備える。基剤は、本質的にゴム状(ガラス状)ポリマー又はゲルを含む。
【0045】
積層型のテープ製剤とは、テープ製剤のうち、粘着性を備えた基剤中に薬理活性物質を分散・含有してなる複数の粘着剤層を有し、粘着剤層の一方の面に支持体、他方の面に剥離ライナーを貼り合わせたものをいう。
【0046】
リザーバー型のパッチ製剤とは、薬理活性物質を貯蔵するリザーバーを有し、このリザーバーの一方の面に薬剤に対して不浸透性の裏あて部材(支持体)を備え、他方の面に剥離ライナー、又は、薬剤浸透性の粘着剤層及び剥離ライナーを備えるものをいう。
【0047】
含浸剤は、一般に、活性成分を含む液剤をパッドに含浸して保持させた状態で、粘着カバー材でパッド部を覆う製剤である。その構成は特に限定されるものではないが、支持体、液剤に対する不浸透性の裏あて部材(フィルム)、粘着カバー剤、パッド、ライナー等を備えることができる。含浸剤とすることで、パッド部に含浸させた液剤、軟膏又はゲル等を安定に保持可能である。また、ブリスター容器等に液剤などを保持させた状態で保管し、投与時にパッド部に含浸させ、含浸剤を調製してもよい。
【0048】
パッドとしては、例えば、パルプ等の天然部材、ガーゼ、脱脂綿等の天然織物部材、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニル等の合成繊維織物部材などを用いることができる。これらの部材を組み合わせて織布、不織布等に加工して使用することもできる。
【0049】
アジュバント製剤は上述した剤形として、皮膚又は粘膜に適用してもよいが、マイクロニードル穿刺、無針注射、皮膚研磨又は粘膜研磨により、皮膚又は粘膜に投与することもできる。
【0050】
アジュバント製剤の投与方法として、マイクロニードルの少なくとも一部にアジュバント製剤をコーティングして、穿刺により投与する方法を用いてもよい。マイクロニードルへのコーティングについては、例えば、特表2004−504120号公報、特表2004−528900号公報、国際公開2005/016440号に記載の方法で行うことができる。また、アジュバント製剤の投与方法としては、イオントフォレーシス、ソノフォレーシス又はエレクトロポレーションにより投与する方法であってもよい。
【0051】
抗原は、免疫細胞上の抗原レセプターに結合し免疫応答を惹起する物質であり、抗原としては、特に制限されるものではない。例えば、ポリヌクレオチド(DNAワクチン、RNAワクチン)、タンパク質ベースのワクチン等を使用することができる。このような抗原としては、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹等のウイルスを弱毒化又は不活性化したもの、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、グループA連鎖球菌属、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、コレラ菌等の細菌を弱毒化又は不活性化したもの、タンパク質、多糖、オリゴ糖、リポタンパク質、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
商業的に入手可能な、抗原性作用物質を含有するワクチンもまた、使用することができる。このようなワクチンとしては、例えば、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン等が挙げられる。さらには、癌、動脈硬化、神経疾患、アルツハイマー等のワクチン療法で使用される抗原も使用することができる。
【0053】
また、抗原性(感作性)を有するアレルゲン物質を抗原として使用してもよい。このようなアレルゲン物資としては、多種多様な金属、化学物質が挙げられる。例えば、アトピー性皮膚炎の抗原を明らかにするアレルギー検査及び治療の場合は、ホコリ、不活化ダニ等のハウスダスト、各種の花粉などが使用されてもよい。また、T細胞性介在性の自己免疫疾患又は症状に関連する炎症性T細胞により認識される抗原も包含される。
【0054】
抗原の投与方法は、とくに限定されないが、経口、注射(筋肉内、皮下、皮内)、マイクロニードル穿刺等による投与方法、経皮又は経粘膜投与方法等が使用できる。経皮投与の場合は、抗原の皮膚透過性と必要な投与量に応じた経皮投与手段が選択される。抗原が経皮投与可能であれば、アジュバント組成物と抗原とを含有する経皮的な非侵襲性製剤を形成することができる。抗原が充分な経皮又は経粘膜活性を有していない場合には、非経皮的又は非経粘膜的に投与してもよく、例えば、注射による投与、経口による投与が考えられる。注射による投与の場合は、アジュバント組成物と抗原とを同時に投与してもよい。
【0055】
アジュバント製剤の投与方法は、抗原を非経皮的もしくは非経粘膜的に投与する前または後に、あるいは、投与するのと同時に、アジュバント製剤(とくに好ましくは含浸剤やパッチ製剤)を投与することが好ましい。抗原を非経皮的又は非経粘膜的に投与した後に、アジュバント製剤を投与することがより好ましい。かかる場合には抗原の投与を行いながら、アジュバント製剤の投与(好ましくは貼付による投与)を継続して行うことができる。例えば、抗原をマイクロニードル穿刺等で投与したまま、アジュバント製剤を貼付等によって別途投与することができる。
【0056】
アジュバント製剤の投与方法が貼付である場合、その貼付時間は、アジュバント製剤が、皮膚又は粘膜を充分に透過してその効果を発揮できる時間であればとくに限定されないが、0.1〜96時間であることが好ましく、0.5〜48時間であることがより好ましく、2〜24時間であることがさらに好ましい。
【0057】
上記抗原と、アジュバント組成物又はアジュバント製剤とを混合して用いる場合、その配合量比は、抗原と、アジュバントの組み合わせによって適宜決定することができる。アジュバントが高濃度となるような配合で使用することが好ましい。
【実施例】
【0058】
試験例1:各種薬物の免疫応答の増強作用の評価
雄性7週齢のBALB/Cマウスに1週間に1回の頻度で、薬物及び0.1μgのオボアルブミン(OVA)を溶解した生理食塩液50μLを計2回皮内投与した。1回目の投与から3週間後までの血清中IgG抗体価をELISAにて測定した。実験はn=5で実施した。陰性対照としてOVAのみを投与し、陽性対照として1質量%アラム(水酸化アルミニウム)及びOVAを投与した。3週間後のIgG抗体価が陰性対照と比較して2倍以上となっている場合に免疫応答の増強作用ありと判断した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示した結果から明らかなように、アムロジピン及びカプトプリルに免疫応答の増強作用が認められた一方、他の薬物ではそのような作用は認められなかった。より詳細には、0.01w/v%のアムロジピンの場合に3.3倍のIgG抗体価を示し、1w/v%のカプトプリルの場合に5.6倍のIgG抗体価を示し、1w/v%のアラムの場合に7.0倍のIgG抗体価を示した。